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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145338
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】透明導電性接合構造及び温度センサ
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20220926BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20220926BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220926BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20220926BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J5/00
C09J9/02
H01C7/02
H01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046701
(22)【出願日】2021-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】米澤 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和崇
【テーマコード(参考)】
4J040
5E034
【Fターム(参考)】
4J040DD071
4J040DF001
4J040EC001
4J040EK031
4J040HA136
4J040JB02
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA10
4J040NA19
5E034AA09
5E034AB04
5E034AC11
5E034BA09
5E034BB04
5E034BC20
5E034DC05
(57)【要約】
【課題】 高い透明性と導電性とが得られる透明導電性接合構造及び温度センサを提供すること。
【解決手段】 第1の接続電極2aを備えた第1の透明部材2と、第2の接続電極3aを備えた第2の透明部材3と、第1の透明部材と第2の透明部材とを接合させ互いに対向する第1の接続電極と第2の接続電極とを電気的に導通させる透明接着剤4とを備えている。特に、第1の接続電極と第2の接続電極との互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有し、透明接着剤が、透明導電性粒子4aを含有した透明樹脂である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続電極を備えた第1の透明部材と、
第2の接続電極を備えた第2の透明部材と、
前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とを接合させ互いに対向する前記第1の接続電極と前記第2の接続電極とを電気的に導通させる透明接着剤とを備え、
前記透明接着剤が、透明導電性粒子を含有した透明樹脂であることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電性接合構造において、
前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有していることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透明導電性接合構造において、
前記第1の接続電極及び前記第2の接続電極の少なくとも一方が、金属細線で構成された網目状に形成されていることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造において、
前記透明導電性粒子が、ITO粒子であることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造において、
前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とが前記透明接着剤で接合された状態の可視光域の光透過率が80%以上であることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造において、
前記第1の接続電極及び前記第2の接続電極の少なくとも一方が、ITOで形成されていることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造において、
前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とが前記透明接着剤で接合された状態のHaze値が12%未満であることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造において、
前記透明導電性粒子の粒度分布のD50が50nm以下であることを特徴とする透明導電性接合構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の透明導電性接合構造を備え、
前記第1の透明部材が、表面にサーミスタ材料で形成されたサーミスタ部と、
前記サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に互いに対向して形成された一対のサーミスタ電極と、
前記一対のサーミスタ電極に接続され表面に形成された一対の第1の配線とを備え、
前記第2の透明部材が、表面に形成された一対の第2の配線を備え、
前記第1の配線が、前記第1の接続電極を有し、
前記第2の配線が、前記第2の接続電極を有し、
前記第1の接続電極と前記第2の接続電極とが、前記透明接着剤で接合されていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れた透明導電性接合構造及び温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の回路基板では、透明性が必要とされる用途において、透明性の高いガラス基板やFPCなどが使用されるが、回路基板同士の接合部分においても透明性が要求される場合がある。回路基板の配線同士の接合も行うため、Agペースト等の導電性接着剤を用いた場合、接合部分の透明性が確保できないため、透明な導電性接着剤が必要とされる。このような透明な導電性接着剤として、従来、例えば特許文献1には、透明樹脂及び金属ナノワイヤを含んだ透明導電性接着剤が記載されている。また、特許文献2には、導電性球状粒子を含んだ透明導電性接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-138711号公報
【特許文献2】特開2017-141328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
回路基板等の部材同士を従来の透明導電性接着剤により接合しても十分な透明性と導電性とが得られない場合があった。特に、特許文献1では、透明導電性接着剤が金属ナノワイヤを含んでいるために、十分な透明性を得ることができない。また、特許文献2では、導電性球状粒子が不透明であるため、十分な透明性が得られないという問題があった。
なお、特許文献1は、部材同士の対向方向(縦方向)では、導電性が得られて導通するものの、平面方向(横方向)も導通してしまうため、同一平面上で隣接する電極や配線との間で透明導電性接着剤が介在すると、同一平面上の電極や配線の絶縁性を確保できない場合があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い透明性と導電性とが得られる透明導電性接合構造及び温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る透明導電性接合構造は、第1の接続電極を備えた第1の透明部材と、第2の接続電極を備えた第2の透明部材と、前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とを接合させ互いに対向する前記第1の接続電極と前記第2の接続電極とを電気的に導通させる透明接着剤とを備え、前記透明接着剤が、透明導電性粒子を含有した透明樹脂であることを特徴とする。
【0007】
この透明導電性接合構造では、透明接着剤が、透明導電性粒子を含有した透明樹脂であるので、高い透明性と導電性とを得ることができる。
なお、本発明で「透明」は可視光域で光透過率が80%以上であることを示す。
【0008】
第2の発明に係る透明導電性接合構造は、第1の発明において、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有していることを特徴とする。
すなわち、この透明導電性接合構造では、第1の接続電極と第2の接続電極との互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有しているので、凹凸の凸部では第1の接続電極と第2の接続電極との距離が短くなって透明導電性粒子が間に挟まれ、第1の接続電極と第2の接続電極とを電気的に導通させると共に、凹部では第1の接続電極と第2の接続電極との距離が長くなって透明樹脂の充填領域が確保でき、アンカー効果も得られて高い接着強度が得られる。
また、凹部の幅に応じて凹部内の透明導電性粒子が互いに離間し易くなって平面方向の導通性が低下し、絶縁性を確保することが可能になる。したがって、同一平面上に隣接する電極や配線の間に透明接着剤が介在しても、絶縁性を確保することが可能になる。さらに、透明接着剤が、透明導電性粒子を含む透明樹脂であるため、接合部分においても良好な透明性が得られる。
【0009】
第3の発明に係る透明導電性接合構造は、第1又は第2の発明において、前記第1の接続電極及び前記第2の接続電極の少なくとも一方が、金属細線で構成された網目状に形成されていることを特徴とする。
すなわち、この透明導電性接合構造では、第1の接続電極及び第2の接続電極の少なくとも一方が、金属細線で構成された網目状に形成されているので、金属細線で構成されていても網目状であるために透明性を確保できると共に電気抵抗を下げることができ、さらに高い接合強度も得ることができる。特に、第1の接続電極と第2の接続電極との対向方向(縦方向)では、金属細線が凸部となって電気的導通が確保できると共に、金属細線の間は凹部となって透明接着剤が充填されて高いアンカー効果を得ることができる。
【0010】
第4の発明に係る透明導電性接合構造は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記透明導電性粒子が、ITO粒子であることを特徴とする。
すなわち、この透明導電性接合構造では、透明導電性粒子が、ITO粒子であるので、透明接着剤として良好な導電性と透明性とを得ることができる。
【0011】
第5の発明に係る透明導電性接合構造は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とが前記透明接着剤で接合された状態の可視光域の光透過率が80%以上であることを特徴とする。
【0012】
第6の発明に係る透明導電性接合構造は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記第1の接続電極及び前記第2の接続電極の少なくとも一方が、ITOで形成されていることを特徴とする。
すなわち、この透明導電性接合構造では、第1の接続電極及び第2の接続電極の少なくとも一方が、ITOで形成されているので、透明接着剤と共に電極材料も透明であることで、高い透明性を得ることができる。特に、透明導電性粒子がITO粒子である場合、同じITOであるため、高い導通性と接合性とが得られる。
さらに、第1の接続電極及び第2の接続電極が共にITOである場合、全ての電極が酸化物であるため、マイグレーションのおそれがない。
【0013】
第7の発明に係る透明導電性接合構造は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、前記第1の透明部材と前記第2の透明部材とが前記透明接着剤で接合された状態のHaze値が12%未満であることを特徴とする。
【0014】
第8の発明に係る透明導電性接合構造は、第1から第7の発明のいずれかにおいて、前記透明導電性粒子の粒度分布のD50が50nm以下であることを特徴とする。
【0015】
第9の発明に係る温度センサは、第1から第8の発明のいずれかの透明導電性接合構造を備え、前記第1の透明部材が、表面にサーミスタ材料で形成されたサーミスタ部と、前記サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に互いに対向して形成された一対のサーミスタ電極と、前記一対のサーミスタ電極に接続され表面に形成された一対の第1の配線とを備え、前記第2の透明部材が、表面に形成された一対の第2の配線を備え、前記第1の配線が、前記第1の接続電極を有し、前記第2の配線が、前記第2の接続電極を有し、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極とが、前記透明接着剤で接合されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、第1の配線の第1の接続電極と第2の配線の第2の接続電極とが、透明接着剤で接合されているので、接合部も透明性を有し、ガラス窓等の透明性が要求される箇所に取り付けて温度を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る透明導電性接合構造によれば、透明接着剤が、透明導電性粒子を含有した透明樹脂であるので、高い透明性と導電性とを得ることができる。
特に、第1の接続電極と第2の接続電極との互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有することで、同一平面上に隣接する電極や配線の間に透明接着剤が介在しても、透明導電性粒子同士が離間して絶縁性を確保することが可能になると共に、透明接着剤が、透明導電性粒子を含む透明樹脂であるため、接合部分においても良好な透明性が得られる。
したがって、本発明の透明導電性接合構造を備えた温度センサによれば、ガラス窓等の透明性が要求される箇所でも透明性を有して設置可能になり、視認性を妨げることなく温度測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る透明導電性接合構造及び温度センサの一実施形態において、接合部を示す断面図(a),第2の電極を示す拡大底面図(b)及び接合部を示す拡大した模式的な断面図(c)である。
図2】本実施形態において、温度センサを示す接合前の断面図(a)及び接合後の平面図(b)である。
図3】本実施形態において、温度センサのセンサ本体を示す拡大平面図である。
図4】本発明に係る透明導電性接合構造及び温度センサの実施例において、接合前の断面図(a)及び接合後の平面図(b)である。
図5】本発明に係る実施例において、接合部を示す断面図(a)及び接合部を示す拡大した模式的な断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る透明導電性接合構造及び温度センサにおける一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
【0019】
本実施形態の透明導電性接合構造1は、図1の(a)に示すように、第1の接続電極2aを備えた第1の透明部材2と、第2の接続電極3aを備えた第2の透明部材3と、第1の透明部材2と第2の透明部材3とを接合させ互いに対向する第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとを電気的に導通させる透明接着剤4とを備えている。
上記透明接着剤4は、透明導電性粒子4aを含有した透明樹脂である。
【0020】
上記第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの互いの対向面のうち少なくとも一方は、複数の凹凸を有している。
また、第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aの少なくとも一方が、図1の(b)に示すように、金属細線3bで構成された網目状(メッシュ状)にパターン形成されている。
【0021】
本実施形態では、第2の透明部材3の接合される面に第2の接続電極3aが、例えばCu,Ag,Al等の金属細線3bにより格子網目状にパターン形成されて、複数の凹凸を有している。すなわち、第2の接続電極3aの金属細線3b自体が、第2の透明部材3の接合される面に形成された凸部となると共に、金属細線3bの間が凹部3cとなる。
例えば、金属細線3bの最小線幅は20μmであり、金属細線3bの最小間隔は20μmである。
【0022】
上記透明導電性粒子4aは、例えばITO粒子である。
透明導電性粒子4aのITO粒子は、粒径が約20nmである。すなわち、金属細線3bの線幅20μmに対して、ITO粒子の粒径は約20nmと小さく、金属細線3bの線幅の約1/1000のスケールである。
また、透明導電性粒子4aの粒度分布のD50は、50nm以下である。
透明接着剤4の透明樹脂は、例えばアクリル樹脂,シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,PVB樹脂等である。
透明接着剤4には、必要に応じて透明導電性粒子4aの凝集を防ぐために透明導電性粒子4aの分散処理を行ったり、分散剤を入れたりすることが好ましい。さらに、低温で分解や揮発する分散剤を用いることで、透明接着剤を乾燥する工程において分散剤が除去され、近接する粒子同士はより密着することで、導電性が向上するためより好ましい。
【0023】
上記第1の接続電極2aは、ITO(スズがドープされた酸化インジウム)で形成されている。
なお、第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aは、他にIGZO(インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn)を含む酸化物In-Ga-ZnO4),AZO(Alがドープされた酸化亜鉛)又はGZO(Gaがドープされた酸化亜鉛)等で形成しても構わない。
上記第1の透明部材2は、例えばガラス基板であり、上記第2の透明部材3は、例えば透明FPC基板である。
【0024】
本実施形態の透明導電性接合構造1を備えた温度センサ10は、図2及び図3に示すように、第1の透明部材2が、表面にサーミスタ材料で形成されたサーミスタ部12と、サーミスタ部12の上及び下の少なくとも一方に互いに対向してITOで形成された一対のサーミスタ電極13と、一対のサーミスタ電極13に接続され表面にパターン形成された一対の第1の配線14とを備えている。
上記サーミスタ部12及び一対のサーミスタ電極13は、図3に示すように、温度センサ10のセンサ本体を構成している。
また、上記第2の透明部材3は、表面にパターン形成された一対の第2の配線15を備えている。
【0025】
上記第1の配線14は、端部に第1の接続電極2aを有している。
また、上記第2の配線15は、第1の接続電極2aに対向配置された端部に第2の接続電極3aを有している。
第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとは、透明接着剤4で接合されている。
上記第1の透明部材2は、帯状のガラス基板であるが、透明FPC基板等の絶縁性フィルムでも構わない。
また、上記第2の透明部材3は、帯状の透明FPC基板であるが、ガラス基板でも構わない。
【0026】
上記サーミスタ部12は、第1の透明部材2の一端側に設けられた薄膜サーミスタである。サーミスタ部12の薄膜サーミスタ材料は、例えばTi-Al-Nのサーミスタ材料で形成されている。特に、この薄膜サーミスタ材料は、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
【0027】
上記一対のサーミスタ電極13は、薄膜サーミスタのサーミスタ部12の上に複数の櫛部13aを有して互いに対向してITOでパターン形成された一対の櫛型電極である。
上記一対の第1の配線14は、第1の透明部材2に沿って第1の透明部材2の他端部まで延在し、他端部に一対の第1の接続電極2aが形成されている。
一対の第1の接続電極2aは、同一平面内で互いに間隔を空けて隣接して配されている。
【0028】
上記一対の第2の配線15は、第2の透明部材3の一端部に第2の接続電極3aを有して第2の透明部材3に沿って第2の透明部材3の他端部まで延在し、他端部に端子電極16が形成されている。
一対の第2の接続電極3aは、同一平面内で互いに間隔を空けて隣接しており、対応する一対の第1の接続電極2aに対向して配されている。
一対の端子電極16は、外部の配線との接続を行うパッドであり、互いに間隔を空けて隣接している。
【0029】
一対の第1の接続電極2aと一対の第2の接続電極3aとが互いに対向している第1の透明部材2の他端部と第2の透明部材3の一端部とは、互いに透明接着剤4で接合された接合部となっている。なお、図1の(c)及び図2の(b)において、透明接着剤4で接着された接合部にハッチングを施している。
【0030】
上記サーミスタ電極13及び第1の配線14は、サーミスタ部12上に形成された膜厚0.1~5nmのTiの接合層と、接合層上にITO等の酸化物導電性材料で膜厚50~1000nmで形成された電極層とを有している。
櫛型電極である一対のサーミスタ電極13は、互いに対向状態に配されて交互に櫛部13aが並んだ櫛型パターンの部分を有している。
【0031】
サーミスタ部12及びサーミスタ電極13を含む第1の透明部材2の上面(接合側の面)には、接合部を除いて第1の保護膜17が形成されている。
また、第2の接続電極3aを含む第2の透明部材3の底面(接合側の面)には、接合部を除いて第2の保護膜18が形成されている。
上記第1の保護膜17及び第2の保護膜18は、絶縁性膜であり、例えば厚さ400nmのSiO膜が採用される。
【0032】
本実施形態では、第1の透明部材2と第2の透明部材3とが透明接着剤4で接合された状態の可視光域の光透過率が80%以上である。
また、第1の透明部材2と第2の透明部材3とが透明接着剤4で接合された状態のHaze値が12%未満である。なお、上記Haze値が1%未満であることがより好ましい。
【0033】
このように本実施形態の透明導電性接合構造1では、透明接着剤4が、透明導電性粒子4aを含有した透明樹脂であるので、高い透明性と導電性とを得ることができる。
また、第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの互いの対向面のうち少なくとも一方が、複数の凹凸を有し、透明接着剤4が、透明導電性粒子4aを含有した透明樹脂であるので、図1の(c)に示すように、凹凸の凸部では第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの距離が短くなって透明導電性粒子4aが間に挟まれ、第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとを電気的に導通させると共に、凹部3cでは第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの距離が長くなって透明樹脂の充填領域が確保でき、アンカー効果も得られて高い接着強度が得られる。
【0034】
また、平面方向の導通性が低下し、絶縁性を確保することが可能になる。したがって、同一平面上に隣接する一対の第1の接続電極2a及び一対の第2の接続電極3aの間に透明接着剤4が介在しても、絶縁性を確保することが可能になる。さらに、透明接着剤4が、透明導電性粒子4aを含む透明樹脂であるため、接合部分においても良好な透明性が得られる。
特に、透明導電性粒子4aが、ITO粒子であるので、透明接着剤4として良好な導電性と透明性とを得ることができる。
【0035】
また、第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aの少なくとも一方が、金属細線3bで構成された網目状に形成されているので、金属細線3bで構成されていても網目状であるために透明性を確保できると共に電気抵抗を下げることができ、さらに高い接合強度も得ることができる。特に、第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの対向方向(縦方向)では、金属細線3bが凸部となって電気的導通が確保できると共に、金属細線3bの間は凹部3cとなって透明接着剤4が充填されて高いアンカー効果を得ることができる。
【0036】
また、第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aの少なくとも一方が、ITOで形成されているので、透明接着剤4と共に電極材料も透明であることで、高い透明性を得ることができる。特に、透明導電性粒子4aがITO粒子であるので、同じITOであるため、高い導通性と接合性とが得られる。
本実施形態の透明導電性接合構造1を備えた温度センサ10では、第1の配線14の第1の接続電極2aと第2の配線15の第2の接続電極3aとが、透明接着剤4で接合されているので、接合部も透明性を有し、ガラス窓等の透明性が要求される箇所に取り付けて温度を測定することができる。
【実施例0037】
次に、本発明に係る透明導電性接合構造について、透明樹脂の種類を変えて実施例を作製し評価した結果を、図4及び図5を参照して具体的に説明する。
【0038】
本発明の透明導電性接合構造の実施例は、図4に示すように、接合面側にITOの第1の接続電極2aを形成したガラス基板の第1の透明部材2と、接合面側にITOの第2の接続電極3aを形成したガラス基板の第2の透明部材3とを、互いに端部で接合したものである。
上記一対の第1の配線14は、第1の透明部材2に沿って第1の透明部材2の他端部まで延在し、他端部に一対の第1の接続電極2aが形成されている。
一対の第1の接続電極2aは、同一平面上で互いに間隔を空けて隣接して配されている。
第1の透明部材2の一端部には、一対の第1の配線14に接続された一対の第1の端子電極16A,16Bが形成されている。
【0039】
上記一対の第2の配線15は、第2の透明部材3の一端部に第2の接続電極3aを有して第2の透明部材3に沿って第2の透明部材3の他端部まで延在し、他端部に第2の端子電極16C,16Dを有している。
一対の第2の接続電極3aは、同一平面上で互いに間隔を空けて隣接しており、対応する一対の第1の接続電極2aに対向して配されている。
【0040】
一対の第1の接続電極2aと一対の第2の接続電極3aとが互いに対向している第1の透明部材2の他端部と第2の透明部材3の一端部とは、図4の(b)及び図5の(a)に示すように、互いに透明接着剤4で接合された接合部となっている。なお、図4の(b)において、透明接着剤4で接着された接合部にハッチングを施している。
上記接合部の第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aでは、図5の(b)に示すように、互いの対向面に不規則な約20nm程度の凹凸が形成されている。
この第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとの凹凸による隙間には、透明接着剤4のITO粒子の透明導電性粒子4aが入り込んだ状態となり、透明導電性粒子4aを介して第1の接続電極2aと第2の接続電極3aとが導通される。
【0041】
このような上記実施例の構造において、透明接着剤の樹脂をそれぞれアクリル樹脂(実施例1),シリコーン樹脂(実施例2),エポキシ樹脂(実施例3),PVB樹脂(実施例4)、ITO粒子を分散させていないアクリル樹脂(実施例5)とした場合の厚み方向の抵抗値,面内方向(平面方向)の抵抗値,接合部の可視光域の光透過率,接合部のHaze値を測定した。その結果を、表1に示す。
【0042】
なお、厚み方向の抵抗値は、互いに対向し透明接着剤4で接合された第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aを介した第1の端子電極16Aと第2の端子電極16Cとの間の抵抗値を測定した。
また、面内方向(平面方向)の抵抗値は、第1の端子電極16A,16B間の抵抗値を測定した。すなわち、第1の端子電極16A,16B間の抵抗値は、これらに接続された一対の第1の接続電極2a間の抵抗値である。
なお、隣接する一対の第1の接続電極2a(1mm×2.4mm)の間隔は0.3mmに設定した。
また、ITOの第1の接続電極2a及び第2の接続電極3aは、厚み200nmとした。
また、比較例として、従来の導電性ペースト(Agペースト)を使用して接合させた場合についても、同様に測定した結果も表1に示す。
【0043】
以下に各実施例及び比較例に使用した透明接着剤の具体的な作製方法及び測定方法を示す。
<実施例1>
分散媒としての99%メタノール変性アルコール3.41gに三菱マテリアル電子化成製のITO粒子(粒径10~30nm)1.5g、分散剤としてアセチルアセトン0.09gを添加し、シェーカーを用いて5時間分散することで、ITO濃度30wt.%の分散液を作製した。次に、荒川化学製ウレタン変性アクリル樹脂ビームセット577を99%メタノール変性アルコールで30wt.%に希釈したモノマー溶液に、IGM Resins B.V製光重合開始剤イルガキュア907を樹脂モノマーに対して1wt.%になるように添加し、樹脂溶液を作製した。固形分比(重量)でITO:樹脂=1:1となるように混合した後、溶媒ショックによって凝集した粒子を再分散させるため5分間超音波分散し、透明接着剤4とした。この透明接着剤4をガラス基板(コーニング EagleXG 0.7mmt)にスピンコート、乾燥後、紫外線を照射、硬化させ、ヘーズメーター(スガ試験機)により可視光透過率とHaze、ハイレスタ(三菱化学アナリティック)によって面内方向の抵抗値を測定した。ITO膜を成膜したガラス基板(第1の透明部材2)に上記と同様に透明接着剤4をスピンコート、乾燥後、ITO膜を成膜したガラス基板を気泡が入らないように貼り合わせ、接着剤層を紫外線硬化させたのち、厚み方向の抵抗値を測定、接着面積で除すことで厚み方向の抵抗値を算出した。
【0044】
また、透明温度センサの評価として、図2に示したセンサ部分の第1の接続電極2aと第2の接続電極3aの各電極との接続部の重なりをそれぞれ2.5mmとし、接続部同士の間隔0.3mm、第2の配線15の長さを3cmでパターニングされたITO電極、または、メタルメッシュ電極(抵抗値10~10kΩ)を用いた。接合体としての電気特性評価の結果、接合体として評価したB定数とセンサ部分のみで評価したB定数との差が±3%以下の場合を「良」、センサ特性が得られなかった場合、B定数の差が±3%より大きかった場合を「不可」とした。実施例1は-0.9%であったため「良」と判断した。
【0045】
<実施例2>
分散媒をメチルエチルケトン(MEK)、樹脂を信越シリコーン社製シリコーン樹脂KE-106Fに変更し、実施例1と同様にITO分散液及び透明接着剤4を作製した。透明接着剤4をガラス基板(コーニング EagleXG 0.7mmt)にスピンコート、100℃10min乾燥することで、硬化させ、ヘーズメーター(スガ試験機)により可視光透過率とHaze、ハイレスタ(三菱化学アナリティック)によって面内方向の抵抗値を測定した。ITO膜を成膜したガラス基板(第1の透明部材2)に上記と同様に透明接着剤4をスピンコート、乾燥後、ITO膜を成膜したガラス基板を気泡が入らないように貼り合わせ、接着剤層を100℃10min乾燥させて効果させた後、厚み方向の抵抗値を測定、接着面積で除すことで厚み方向の抵抗値を算出した。
【0046】
<実施例3>
樹脂を三菱ガス化学社製エポキシ樹脂に変更し、実施例2と同様にITO分散液を作製した。次に、三菱ガス化学社製エポキシ樹脂M-100をメタノール:酢酸エチル=9:1で混合した溶剤に、30wt.%になるように希釈した。その後、硬化剤C-93をM-100:C-93=5:16の割合になるように添加し、樹脂溶液を作製した。その後、固形分比(重量)でITO:樹脂=1:1となるように混合した後、溶媒ショックによって凝集した粒子を再分散させるため5分間超音波分散し、透明接着剤4とした。その後、実施例2と同様に評価をした。
【0047】
<実施例4>
樹脂をポリビニルブチラール(PVB)に変更し、可塑剤として、トリエチレングリコールジ2エチルヘキサン塩酸をPVBに対して25wt%となるように添加し、実施例1と同様にITO分散液及び透明接着剤4を作製した。この樹脂溶液をITOを成膜したガラス基板にスピンコート、乾燥後、熱圧着して接合した。実施例2と同様に評価をした。
<実施例5>
実施例1において、ITO分散液を作製する際、シェーカーを用いて分散せずに、透明接着剤4を作製した。
<比較例>
市販の導電性ペーストを用いて、実施例1と同様な電気特性を評価したが、不透明であり、温度センサとしての評価も、接合部で短絡し、センサ特性が得られなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
これらの結果として、本発明の各実施例では、厚み方向の抵抗値が低いのに対し、面内方向(平面方向)の抵抗値が100MΩを越えて非常に大きく絶縁性が高かった。また、いずれも可視光域の光透過率が80%以上で、Haze値も低かった。
特に、ITO粒子を分散させている実施例1~4では、光透過率が89%以上と非常に透明性が高いと共に、Haze値も0.7%以下と低い曇り度であった。なお、ITO粒子を分散させていない実施例5では、光透過率82.8%、Haze値11.9%となり、透明性が低下した。
なお、導電性ペーストを使用した比較例では、厚み方向の抵抗値が0.1kΩ以下となったが、面内方向(平面方向)の抵抗値も0.1kΩ以下であり、面内方向も導通されてしまい、絶縁性を得られていない。また、比較例は、光透過率が10%以下、Haze値が30%以上であった。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…透明導電性接合構造、2…第1の透明部材、2a…第1の接続電極、3…第2の透明部材、3a…第2の接続電極、3b…金属細線、4…透明接着剤、4a…透明導電性粒子、10…温度センサ、12…サーミスタ部、13…サーミスタ電極、14…第1の配線、15…第2の配線
図1
図2
図3
図4
図5