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特開2022-146083樹脂撚り線を利用した眼鏡用部品の製造方法
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  • 特開-樹脂撚り線を利用した眼鏡用部品の製造方法 図1
  • 特開-樹脂撚り線を利用した眼鏡用部品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146083
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】樹脂撚り線を利用した眼鏡用部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/14 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G02C5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046876
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504394755
【氏名又は名称】有限会社ジェイ企画
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 一十三
(57)【要約】
【課題】 豊富な色のバリエーションを実現できる樹脂製の撚り線(樹脂撚り線)を利用した眼鏡用部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、エボナイトで形成され、少なくとも一本が他と異なる色又は模様に予め着色された複数本の線材を準備し、複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させた。エボナイトで形成された複数本の線材を準備した後に、複数本の前記線材のうちの少なくとも一本を他と異なる色又は模様に着色するようにしてもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、
エボナイトで形成され、少なくとも一本が他と異なる色又は模様に予め着色された複数本の線材を準備し、
複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、
前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、
前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させたこと、
を特徴とする眼鏡用部品の製造方法。
【請求項2】
複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、
エボナイトで形成された複数本の線材を準備し、
複数本の前記線材のうちの少なくとも一本を他と異なる色又は模様に着色し、
複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、
前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、
前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させたこと、
を特徴とする眼鏡用部品の製造方法。
【請求項3】
複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、
エボナイトで形成された複数本の線材を準備し、
複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、
前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、
前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させた後、前記撚り線を個々の前記線材に分離し、
複数本の前記線材のうちの少なくとも一本を着色した後、複数本の前記線材を再度組み合わせて撚り線としたこと、
を特徴とする眼鏡用部品の製造方法。
【請求項4】
前記線材の外側に着色チューブを外嵌したことを特徴とする請求項2又は3に記載の眼鏡用部品の製造方法。
【請求項5】
前記着色チューブが熱収縮チューブであることを特徴とする請求項4に記載の眼鏡用部品の製造方法。
【請求項6】
前記熱収縮チューブが、ポリオレフィン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレン、シリコーンゴム、フッ素系ポリマー又は熱可塑性エストラマーのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の眼鏡用部品の製造方法。
【請求項7】
前記線材の表面にウルシオール系の塗料を塗布して着色したことを特徴とする請求項3に記載の眼鏡用部品の製造方法。
【請求項8】
前記複数の線材を離間した状態で配置し、両端を固定して捩り力を加えることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の眼鏡用部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてテンプルに利用される眼鏡用部品の製造方法に関し、複数本の樹脂線材からなる撚り線を利用した眼鏡用部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数本の細い線材を撚ってなる撚り線をテンプルやモダンなどに利用した眼鏡フレームが普及してきており(例えば特許文献1参照)、デザインの多種多様化が進む近年においては人気が高まってきている。
このような撚り線を利用した眼鏡において、前記撚り線はチタンやステンレスといった金属が主流である。
本願出願人は、樹脂撚り線を利用した眼鏡の要望の高まりに応じて、エボナイトを利用した樹脂(エボナイトは天然ゴム由来であるが「樹脂」に含めるものとする)撚り線の眼鏡を特許文献2で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-310754号公報
【特許文献2】特開2019-3061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼鏡フレーム用の材料としては、アセテートやセルロースが一般的であるが、これら樹脂は塑性変形させると白化しやすいうえ、撚り線にすると曲がりやすく、かつ、一度曲がってしまうと元の形状に戻らないという問題があるが、エボナイトはこのような問題がなく、樹脂撚り線を利用した眼鏡の製品化が容易である。
【0005】
しかし、エボナイトは天然ゴムを原料とすることから黒色が基調で、模様付き(マーブル)のものも市販されてはいるが、色のバリエーションに乏しいという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、豊富な色のバリエーションを実現できる樹脂製の撚り線(樹脂撚り線)を利用した眼鏡用部品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第一の方法は、請求項1に記載するように、複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、エボナイトで形成され、少なくとも一本が他と異なる色又は模様に予め着色された複数本の線材を準備し、複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させた方法としてある。
この方法では、着色剤を混合するなどしてエボナイトを着色し、着色された棒状のエボナイトを束ねて捩り合わせている。
しかしこの方法では、エボナイトが黒色であるため着色できる色が限定され、未だバリエーションが限定されるという問題がある。
【0007】
そこで、請求項2に記載の方法では、複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、エボナイトで形成された複数本の線材を準備し、複数本の前記線材のうちの少なくとも一本を他と異なる色又は模様に着色し、複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させた方法としてある。
【0008】
この方法によれば、エボナイトの線材を着色しているので、種々の色に着色できバリエーションを豊富にすることができる。なお、着色は捩った後でもよく、この場合は請求項3に記載するように、複数本の樹脂線材の撚り線から形成され、前記撚り線を構成する前記樹脂線材が二色以上に塗り分けられている眼鏡用部品において、エボナイトで形成された複数本の線材を準備し、複数本の前記線材を束ねてその両端を固定し、前記線材を加熱しつつ相対的に逆方向の捩り力を前記両端に加え、前記複数本の線材の撚り数が単位長さ当り予め設定された数となるように所定角度捩り、前記所定角度捩ったところで前記線材を冷却して形状を維持させた後、前記撚り線を個々の前記線材に分離し、複数本の前記線材のうちの少なくとも一本を着色した後、複数本の前記線材を再度組み合わせて撚り線とするとよい。
【0009】
エボナイトの線材を着色する方法としては、請求項4に記載するように前記線材の外側に着色チューブを外嵌するとよい。前記着色チューブは、請求項5に記載するように熱収縮チューブとすることができ、棒状の前記線材に熱収縮性の着色チューブを外嵌し、捩り加工の際の加熱によって熱収縮させて前記線材に密着させるようにしてもよいし、前記線材を捩り加工した後に熱収縮チューブを外嵌し、加熱して収縮・密着させるようにしてもよい。熱収縮チューブとしては、請求項6に記載するようにポリオレフィン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレン、シリコーンゴム、フッ素系ポリマー又は熱可塑性エストラマーのいずれかを用いることができる。
【0010】
請求項7に記載するように、捩り加工後に前記線材の表面にウルシオール系の塗料を塗布するようにしてもよい。天然漆やウルシラッカーなどのウルシオール系の塗料はエボナイトとの密着性が良好である。また、福井県工業技術センターが2018年に開発した透明性の高い漆を利用することで、多種多様な着色が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)に示すように、エボナイトで形成された線材1を複数本(図示の例では3本)準備して束ねる。
【0012】
線材1の断面形状は円形、楕円形の他に、三角形、四角形、五角形又はこれ以上の多角形、不定形状を挙げることができる。そして、種々の断面形状のものを選択することで、種々の形態の撚り線2を得ることができ、デザインの幅を拡げることが可能になる。
線材1の直径又は幅は、1mm~3mm程度を目安とするとよい。また、線材1の長さは、眼鏡部品として用いる部分の長さに予め合わせたものとしてもよいし、ある程度長尺の撚り線2を形成しておいて、使用しようとする眼鏡部品の長さに合わせて撚り線2を切断するようにしてもよい。
【0013】
エボナイト製の線材1から撚り線2を形成するには、まず複数本(図示の例では三本)の線材1を準備して束ね、図1(b)に示すようにその両端を固定部材3,3に固定する。固定部材3としては、例えば、ハンドルなどを使って軸線Cの周りに回転させることができる回転体3aの端面に、束ねた線材1の端部を挿入できる孔3bを形成したものを用いることができる。孔3bに挿入した前記端部は、クランプで締め付けて固定するようにしてもよいし、接着剤を充填して固定するようにしてもよい。
このようにして固定部材3,3に線材1の両端を固定した後は、エボナイトが軟化する温度まで線材1を加熱する。エボナイトの軟化温度は80℃程度であることから、80℃程度の温風の吹き付け又は温浴によって加熱を行うことができる。軟化させた後は、図示するように前記両端を互いに逆方向(符号I,IIで示す方向)に捩って固定部材3,3を軸線Cの周りに回転させる。


これにより、線材1の各々が伸び方向に変形しつつ撚りが形成される。捩り力は、単位長さあたりの撚り数が予め設定した数になるまで加える。所定の前記撚り数に達した後は、そのままで所定時間放置して冷却し、撚りが戻らないように形状を維持させる。
【0014】
このようにして形成された撚り線2を使って形成された眼鏡用部品を使った眼鏡フレームの一例を図1(c)及び(d)に示す。
図1(c)の例では、テンプルTの一部に撚り線2を使用している。また、図1(d)の例では、撚り線2に曲げ加工を施してテンプルTのモダンMとして利用している。このような曲げ加工を行う際には、必要に応じて撚り線2を加熱する。
【0015】
図2は本発明の他の実施形態の説明図である。
先の実施形態では複数本の線材1を密着状態で束ねているのに対し、この実施形態では複数本(図示の例では三本)の線材1を離間させて平行に配置し、その両端を固定部材3に固定して軸線Cの周りに捩り力を加えている。これ以外の形成手順などは先の実施形態と同様である。この実施形態の撚り線2は、図2(b)に示すように撚り線2を形成する複数本の線材1の間に隙間が形成され、先の実施形態の撚り線2とは異なる外観となっている。
この実施形態の撚り線2も、図2(c)に示すようにテンプルTの一部に使用することが可能であるほか、特に図示はしないが、曲げ加工を施すことでモダンなど他の眼鏡用部品に使用することも可能である。
【0016】
[着色の第一の実施形態]
本発明の着色の第一の実施形態では、少なくとも一本が他と異なる色又は模様に予め着色された複数本のエボナイト製の線材1を準備する。マーブル模様に着色されたエボナイトは市販されており、ボウリングのボールや万年筆の軸に利用されていて、このようなエボナイトを原料とすることでマーブル模様の線材1を得ることができる。また、黒を基調とするエボナイトであっても、色素を混合することで緑系や青系、赤系などの濃暗色系の色には着色することが可能である。そのため、このようなエボナイトを原料とすることで濃暗色系の色に着色された線材1を得ることができる。
この第一の実施形態では、このようにして予め所定の色や模様に着色された線材1を用いて、図1(a)(b)の手順で眼鏡用部品を形成する。
【0017】
[着色の第二の実施形態]
本発明の着色の第二の実施形態では、エボナイト製の線材1を所定の色又は模様に着色するものである。
着色の方法としては、エボナイト製の線材1の表面に塗料を塗布することが挙げられるが、エボナイトと一般的な塗料(エナメル系、ラッカー系、ウレタン系などの塗料とは相性が悪く、剥がれや割れが生じやすい。その一方でエボナイトは、ウルシオール系の塗料との相性が良く、強固に密着して剥がれや割れが生じにくい。ウルシオール系の塗料としては、天然漆が代表的なものであるが、ラッカー系の塗料でもウルシオールを含む人工漆は高い密着性を得ることができる。
この実施形態の着色方法では、図1(a)(b)の手順で撚り線2を形成した後、撚り線2を個々の線材1に分離し、分離した線材1をウルシオール系の塗料で着色した後、再度組み合わせて撚り線2を形成する。
【0018】
[着色の第三の実施形態]
本発明の着色の第三の実施形態では、エボナイト製の線材1に着色チューブを外嵌するものである。
着色チューブとしては弾性を有する着色ウレタンや着色シリコンなどを用いるのが好ましい。着色チューブと線材1との密着性を高めるために、着色チューブの内径は線材1の直径よりも僅かに小さくするのがよい。
また、着色された熱収縮チューブを線材1に外嵌して加熱し、収縮させて線材1に密着するようにしてもよい。熱収縮チューブとしては、請求項6に記載するようにポリオレフィン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレン、シリコーンゴム、フッ素系ポリマー又は熱可塑性エストラマーのいずれかを用いることができる。
線材1に熱収縮チューブを外嵌し、線材1を加熱して捩り加工する際に熱収縮チューブが収縮するようにしてもよいし、捩り加工した後に撚り線2を個々の各線材1に分離し、分離した線材1に熱収縮チューブを外嵌して加熱するようにしてもよい。エボナイトの軟化温度が80℃程度であることから、80℃~110℃程度の温度で熱収縮するものを選択するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の眼鏡用部品の製造方法の一実施形態にかかり、(a)は複数本の樹脂線材を束ねた状態を示す図、(b)は(a)の樹脂線材の束に捩りを加えて撚り線を形成する様子を示す図、(c)及び(d)は撚り線の使用態様の一例を示す図である。
図2】本発明の眼鏡用部品の製造方法の他の実施形態にかかり、(a)は複数本の樹脂線材を束ねた状態を示す図、(b)は(a)の樹脂線材の束に捩りを加えて撚り線を形成する様子を示す図、(c)は撚り線の使用態様の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 樹脂線材
2 撚り線
3 固定部材
3a 回転体
3b 孔
T テンプル
M モダン
図1
図2