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特開2022-147505アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ
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  • 特開-アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147505
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/02 20060101AFI20220929BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20220929BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01G9/02
H01G9/145
H01G9/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048773
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390032230
【氏名又は名称】ニッポン高度紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章祥
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓也
(57)【要約】
【課題】薄葉化したセパレータでありながら、導電性高分子分散液の含浸性を向上することができる、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータを提供する。
【解決手段】一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子と電解液とを有するアルミニウム電解コンデンサに用いられ、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなり、厚さが25~45μm、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上、長さ加重平均繊維長が1.8~3.0mmであり、繊維長0.2mm未満の繊維の割合が30~50%であり、長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合が25~65%であるアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子と電解液とを有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなる、厚さが25~45μm、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上のセパレータであって、
前記セパレータは、長さ加重平均繊維長が1.8~3.0mmであり、繊維長0.2mm未満の繊維の割合が30~50%であり、長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合が25~65%である
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項2】
前記一対の電極の間に前記セパレータを介在させて得た素子を用いて、導電性高分子分散液を含浸させる方法による比含浸時間が20秒/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項3】
前記セパレータは、密度が0.22~0.43g/cmであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項4】
前記セパレータは、前記非木材セルロース繊維として少なくともマニラ麻パルプを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、陰極材料として、導電性高分子と電解液とを用いた、アルミニウム電解コンデンサ(以下、ハイブリッド電解コンデンサ)が、自動車搭載用途で使われることが多くなった。
ハイブリッド電解コンデンサは、陰極材料として電解液を用いる従来のアルミニウム電解コンデンサと、陰極材料として導電性高分子を用いるアルミニウム電解コンデンサ(以下、固体電解コンデンサ)との長所を併せ持つコンデンサであり、従来のアルミニウム電解コンデンサと比較して、等価直列抵抗(以下、ESR)が低く、周波数特性が良好であり、高リプル電流を流すことができる。
【0003】
ハイブリッド電解コンデンサの製造工程では、始めに、電極箔とセパレータとを共に巻回した素子を再化成液に浸漬し、再化成させた後、乾燥させる。次いで、導電性高分子の分散液(導電性高分子を分散質とした分散液)を含浸させた後、分散媒を除去することで、導電性高分子層を形成する。その後、電解液を含浸させ、封口することで、ハイブリッド電解コンデンサが作製される。
【0004】
ハイブリッド電解コンデンサは、自動車搭載ECU(電子制御ユニット)、電動パワーステアリング(EPS)等、自動車電装部品に使用されている。これは、ハイブリッド電解コンデンサは、固体電解コンデンサとは異なり、コンデンサ素子内での修復化成能力があるためである。また、自動車の先進運転支援システム(ADAS)の標準化が進むことで、搭載されるECUの数が増加しているが、設置スペースに限りがあるためECUには小型化が求められている。そのため、ECUに搭載されるハイブリッド電解コンデンサには、容量特性を維持したまま小型化することが必要となる。
【0005】
ハイブリッド電解コンデンサの高容量化には、電極箔の箔長を長くすることが有効だが、コンデンサのサイズを維持するためにセパレータには薄葉化が必要となる。しかし、セパレータを薄葉化すると、電極箔間の物理的な距離が狭くなるため、例えばコンデンサのタブ部や箔バリなどのストレスによりショートが発生するリスクが高くなる。そのため薄葉化したセパレータを用いるためには、耐ショート性の向上が必要である。一方で、セパレータの耐ショート性を向上させると、セパレータの緻密性が高くなり、導電性高分子の含浸性が悪くなる場合があった。
【0006】
ハイブリッド電解コンデンサ用セパレータには、セルロース繊維や合成繊維などの繊維が使用される。なかでもセルロース繊維は、合成繊維よりも安価であり、またコンデンサ作製工程で使用される様々な液に対して親和性が高く、電解液溶媒に溶解することもないため、ハイブリッド電解コンデンサ用セパレータに使用されている。
セルロース繊維を用いたセパレータとして、例えば特許文献1乃至特許文献4に記載されたようなセパレータが使用されてきている。
【0007】
特許文献1において、少なくとも10重量%以上の叩解可能な再生セルロース繊維の叩解原料と、残部天然繊維パルプとを使用して、抄造されていることを特徴とするセパレータが開示されている。
【0008】
特許文献2において、長さ加重平均繊維長が0.30~1.19mmかつCSFが500~50mlである天然セルロース繊維Aを20~80質量%と、長さ加重平均繊維長が1.20~1.99mmかつCSFが500~50mlである天然セルロース繊維Bを10~50質量%と、叩解された再生セルロース繊維を10~50質量%からなり、高度に叩解した再生セルロース繊維からなるセパレータ並の緻密性及びインピーダンス特性を維持したまま、引張強さ及び耐ショート性を向上させたセパレータが開示されている。
【0009】
特許文献3において、叩解可能な再生セルロースからなり、厚さが15~100μm、密度が0.25~0.75g/cmであり、比引裂強さが20~100mN・m/gであり、縦方向の引張強さが4N/15mm以上であり、引張強さの縦横比が2.5以上の多層湿式不織布であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータが開示されている。
【0010】
特許文献4において、巻回素子の底面を電解液に浸した含浸速度が50秒以下であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5-267103号公報
【特許文献2】国際公開第2017/047699号
【特許文献3】特開2018-73856号公報
【特許文献4】特開2020-107769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
薄葉化したセパレータを用いる場合、ショート不良を発生させないために緻密性を高める必要がある。しかし、緻密性を高めると導電性高分子の含浸性が悪くなる。そのため、薄葉化したセパレータを用いるためには、導電性高分子分散液の含浸性を向上する必要がある。
【0013】
特許文献1に記載のセパレータは、再生セルロース繊維を10重量%以上含み、残部を天然繊維で構成するセパレータである。アルミニウム電解コンデンサのインピーダンス特性を良くするために、フィブリルがフィルム状にならない再生セルロース繊維を配合している。しかし、特許文献1のように、再生セルロースと天然セルロース繊維とを含有し、CSFを制御するだけでは、導電性高分子分散液の含浸性を制御することができなかった。そのため特許文献1のセパレータは、導電性高分子分散液の含浸性が悪いという課題があった。
【0014】
特許文献2に記載のセパレータは、再生セルロース繊維と、広葉樹パルプ、エスパルトパルプ、ワラパルプから選択される天然セルロース繊維Aと、サイザル麻パルプ、ジュートパルプ、ケナフパルプ、竹パルプから選択される天然セルロース繊維Bとからなり、各繊維の叩解度と配合割合を制御することで、高度に叩解した再生セルロース繊維からなるセパレータ並の緻密性及びインピーダンス特性を維持したまま、引張強さ及び耐ショート性を向上させたセパレータである。しかし、特許文献2のセパレータは、叩解した再生セルロース繊維からなるセパレータ並の緻密性を持ったセパレータであり、耐ショート性には優れるが、導電性高分子分散液の含浸性が悪いという課題があった。
【0015】
特許文献3に記載のセパレータは、再生セルロース繊維のみからなるため、セパレータの緻密性が高くなりすぎ、導電性高分子分散液の含浸性が悪いという課題があった。
【0016】
特許文献4に記載のセパレータは、素子状態での電解液の含浸速度を向上させたセパレータであり、導電性高分子分散液の含浸性に優れる。しかし、特許文献4のように導電性高分子分散液の含浸性が良いセパレータは、緻密性が不足するためショート不良が発生する場合があった。仮に、特許文献4のセパレータの緻密性を向上させようとすると、導電性高分子分散液の含浸性を維持することはできなかった。
【0017】
以上のように、従来の薄葉化したセパレータでは、電解液の含浸性は良好でも、ハイブリッド電解コンデンサに適用した場合に、導電性高分子分散液の含浸性が悪かった。
【0018】
導電性高分子分散液は、固体である導電性高分子を含むため、液体である電解液に比べて、セパレータ内部に浸透しにくい。そのため、薄葉化したセパレータの導電性高分子分散液の含浸性を向上するには、導電性高分子分散液がセパレータ内部に浸透する経路を維持する必要がある。しかし、薄葉化したセパレータは、耐ショート性を保つために緻密性を向上させているため、導電性高分子分散液がセパレータ内部に浸透する経路が少ない。再生セルロース繊維のみからなる薄葉化したセパレータは、叩解処理によって発生する微細なフィブリルによって緻密になっているため、導電性高分子分散液が浸透しにくい。また、天然セルロース繊維のみからなるセパレータは、叩解度を高めることによって発生するフィブリルがフィルム状になっており、導電性高分子分散液が浸透する経路が塞がれてしまっているため、含浸性が悪かった。再生セルロース繊維と天然セルロース繊維とを用いる場合でも、再生セルロース繊維のフィブリルによって緻密になりすぎて含浸性が悪い場合や、天然セルロース繊維がセパレータ内部に充填されることで含浸性が悪い場合があった。
【0019】
一方で、従来の導電性高分子分散液の含浸性が高いセパレータでは、含浸性を維持したまま耐ショート性を高めることができなかった。再生セルロース繊維のみからなるセパレータは、耐ショート性を向上するために叩解度を高くすると、微細なフィブリルが増えることによって、導電性高分子分散液がセパレータ内部に浸透する経路が失われてしまう。また、天然セルロース繊維からなるセパレータは、叩解度を高くすると、フィブリルがフィルム状になってしまい、含浸性が悪化する。再生セルロース繊維と天然セルロース繊維とからなるセパレータも、耐ショート性を高めると、導電性高分子分散液の含浸性が悪化してしまう。
【0020】
本発明は、上述した課題を解決し、薄葉化したセパレータでありながら、導電性高分子分散液の含浸性を向上することを目的として成された発明である。また、本発明は、該セパレータを用いることで、従来よりもESR特性の向上したハイブリッド電解コンデンサを提供するために成された発明である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決し、上述した目的を達成する手段として、本発明は、例えば以下の構成を備える。
すなわち、一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子と電解液とを有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなる、厚さが25~45μm、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上のセパレータであって、該セパレータは、長さ加重平均繊維長が1.8~3.0mmであり、繊維長0.2mm未満の繊維の割合が30~50%であり、長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合が25~65%であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを構成する。
【0022】
または、上記したセパレータを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを構成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、薄葉化したセパレータでありながら、導電性高分子分散液の含浸性を向上したアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る比含浸時間の測定方法を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態例について詳細に説明する。
【0026】
本発明者らが鋭意検討した結果、セパレータの繊維構成を制御することで、薄葉化したセパレータでありながら、導電性高分子分散液の含浸性を向上したセパレータとすることができることが判明した。
本発明者らは、薄葉化したセパレータの導電性高分子分散液の含浸性を向上するために、以下の構成を考案した。即ち、一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子と電解液とを有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなる、厚さが25~45μm、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上のセパレータであって、該セパレータは、長さ加重平均繊維長が1.8~3.0mmであり、繊維長0.2mm未満の繊維の割合が30~50%であり、長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合が25~65%であることを特徴とする。
【0027】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなる、厚さが25~45μm、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上のセパレータにおいて、長さ加重平均繊維長を1.8~3.0mm、繊維長0.2mm未満の繊維割合を30~50%、さらに長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合を25~65%とすることで、導電性高分子分散液の含浸性を向上することができることが判明した。
詳細は不明だが、セパレータの繊維構成を上記範囲とすることで、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とが強固に絡み合い、セパレータの緻密性を高めることができ、さらに、長繊維同士が適度に重なり合いセパレータの骨組みのような働きをすることで、導電性高分子が浸透する経路を維持することができるのではないかと考えられる。
セパレータの繊維構成が上記範囲を外れる場合、導電性高分子分散液が浸透する経路が塞がれてしまう、または、地合いが悪化することによってショート不良が発生する、などの不具合が発生することがある。
【0028】
本発明のセパレータは、絶縁破壊の強さが14kV/mm以上である。薄葉化したセパレータを用いる場合、アルミニウム電解コンデンサの陽極と陰極との極間距離が狭くなるため、ショート不良が発生する可能性が高くなる。
セパレータの絶縁破壊の強さが14kV/mm以上であれば、薄葉化したセパレータを用いる場合でも、ショート不良の発生を抑えることができる。絶縁破壊の強さは、16kV/mm以上がさらに好ましい。絶縁破壊の強さが14kV/mm未満の場合、電極箔のバリがセパレータを貫通することや、タブ部分に圧迫されるストレスによりセパレータが破損することにより、ショート不良が発生してしまう。
絶縁破壊の強さは、高い方が良いが、ハイブリッド電解コンデンサに要求される緻密性のレベルを考慮すると、25kV/mm程度が上限となる。
【0029】
本発明のセパレータにおいて、特に、一対の電極の間にセパレータを介在させて得た素子を用いて、導電性高分子分散液を含浸させる方法により測定した比含浸時間が、20秒/mm以下であることが好ましい。
【0030】
ここで、図1を参照して、本発明に係る比含浸時間の測定方法を説明する。
図1は、陽極リード線1及び陰極リード線2を備えた素子10と、容器に収容された導電性高分子分散液5とを使用して、比含浸時間の測定方法を示している。
素子10は、一対の電極(陽極箔、陰極箔)の間に、幅18mmのセパレータ(図示せず)を介在させることにより得られた、高さ18mmの素子10である。陽極リード線1は、図示しない陽極箔に接続されており、陰極リード線2は、図示しない陰極箔に接続されている。
導電性高分子分散液5としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる複合物を、1重量%で含む分散液を使用する。
なお、導電性高分子の分散媒は水が一般的であるので、本発明に係る測定方法でも、導電性高分子分散液5として水分散液を用いる。
【0031】
図1に示す素子10及び導電性高分子分散液5を使用して、以下に述べるようにして、比含浸時間を測定する。
まず、高さ18mmの素子10を、素子10の底面4から高さ9mmまで、導電性高分子分散液5に浸漬する。これにより、導電性高分子分散液5が、素子10のセパレータの内部に浸透していく。
やがて、素子10の導電性高分子分散液5に浸漬していない側の端面(上面)3に、導電性高分子分散液5が到達する。
そして、導電性高分子分散液5に素子10の底面4から高さ9mmまで浸漬してから、素子10の上面3の全体に導電性高分子分散液5が含浸されるまでの時間を測定し、この測定した時間を、「分散液の含浸時間」とする。
【0032】
比含浸時間は、上述した方法で測定された、分散液の含浸時間(秒)と、素子10の上面3の面積(mm)とを用いて、下記式(1)によって計算される。
比含浸時間(秒/mm)=分散液の含浸時間/素子の上面の面積 ・・(1)
【0033】
式(1)において、「素子の上面の面積」とは、下記式(2)によって計算される面積である。下記式(2)において、セパレータと陽極箔と陰極箔のそれぞれの厚さ及び長さは、mm単位で計算する。
素子の上面の面積(mm)=(セパレータの厚さ×長さ)+(陽極箔の厚さ×長さ)
+(陰極箔の厚さ×長さ) ・・(2)
【0034】
なお、本発明に係る比含浸時間の測定において、素子10の高さが18mmであれば、セパレータや電極箔(陽極箔、陰極箔)の厚さや長さは、特に限定されない。
【0035】
分散液の含浸性を高めるには、分散液が素子に浸透する時間を短くすることが重要である。
そのため、本発明では、分散液の含浸性の指標として、セパレータ単独の含浸性の指標ではなく、素子状態で測定する比含浸時間を用いた。さらに、電解液や水などを用いた測定の場合、液の浸透の挙動が分散液での測定とは異なる場合があるため、分散液を用いた指標とした。
【0036】
セパレータと電極箔とを巻回して得た円筒状のコンデンサ素子に、分散液を含浸させる場合は、一般的に、リード線が分散液に浸ることを避けるために、素子の上部は浸さず、素子の下部のみを分散液に浸すことが多い。素子には、マンドレルと呼ばれる素子巻回時に使用する仮押さえ冶具が素子から引き抜かれた後にできる間隙や、リード線のタブ部分によってセパレータと電極箔との間に形成されている間隙が存在する。
【0037】
素子の下部のみを分散液に浸した際に、分散液は、素子の底面から間隙を吸い上がって、分散液に浸していない側の端面(上面)に到達する。
さらに分散液は、分散液に浸していない側の端面(上面)を、セパレータと電極箔との巻回方向に沿って、らせん状に拡散する、或いは、セパレータの厚さ方向に沿って、上面を同心円状に拡散していく。その後、分散液は、素子の内部、つまりセパレータの内部と箔表面へと浸透していく。
このように、実際の素子の含浸では、セパレータ単独の影響ではなく、素子形状が大きく影響している。そのため、素子状態での含浸性を向上させることで、ハイブリッド電解コンデンサとした際のESRを低減することができる。
【0038】
比含浸時間が20秒/mm以下であれば、コンデンサ素子内部へ分散液が拡散しやすくなり、ハイブリッド電解コンデンサのESRを低くすることができる。比含浸時間は、15秒/mm以下がより好ましい。比含浸時間の値は、低い方が好ましいが、セパレータの機械的強度を考慮すると1秒/mm未満とすることは困難であり、1秒/mm程度が下限となる。
比含浸時間が20秒/mmを超える場合、分散液の拡散に時間がかかりすぎるため、分散液がセパレータ内部まで浸透せず、ハイブリッド電解コンデンサとした際にESRが高くなってしまう。
【0039】
本発明のセパレータは、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなる。
再生セルロース繊維としては、溶剤紡糸レーヨンやポリノジックレーヨンなどを使用することができる。再生セルロース繊維は、叩解処理によって微細なフィブリルが発生した再生セルロース繊維を含むことが好ましい。叩解された再生セルロース繊維を配合することで、緻密性の高いセパレータを作製することができ、セパレータの絶縁破壊の強さを高めやすい。但し、セパレータの絶縁破壊の強さが所望の範囲を満足できれば、叩解された再生セルロース繊維に加えて、フィブリルの発生していない再生セルロース繊維を含有しても良い。フィブリルの発生していない再生セルロース繊維を配合することで、ハイブリッド電解コンデンサとした際のESRを低くしやすい。
セパレータ中の再生セルロース繊維の割合は、20~70質量%が好ましい。セパレータ中の再生セルロース繊維の割合が20質量%未満の場合、セパレータの地合いが悪化しやすい。セパレータ中の再生セルロース繊維の割合が70質量%を超える場合は、セパレータの機械的強度が低下しやすい。
【0040】
本発明のセパレータは、再生セルロース繊維に加えて、非木材セルロース繊維を含み、非木材セルロース繊維として少なくともマニラ麻パルプを含む。
薄葉化したセパレータでは、セパレータの強度、特に引裂強さの低下が著しく、素子の巻回時にセパレータが破断しやすくなる。非木材セルロース繊維の中でも繊維長が長いマニラ麻パルプを含むことで、セパレータの引裂強さを高めやすい。また、非木材セルロース繊維のなかでも繊維長の長いマニラ麻パルプを用いることで、セパレータの骨組みとして機能することができる。マニラ麻パルプは叩解処理がされていても良いが、叩解処理のされていないマニラ麻パルプを用いることで、セパレータの骨組みとしての役割をより得やすい。
【0041】
マニラ麻パルプ以外の非木材セルロース繊維としては、長さ加重平均繊維長が1.0~2.0mmの非木材セルロース繊維を用いることが好ましい。マニラ麻パルプを含有することで、セパレータの地合いが悪化しやすいが、マニラ麻パルプに加えて平均繊維長が1.0~2.0mmの非木材セルロース繊維を用いることで、セパレータの地合いを良くすることができる。
平均繊維長が1.0~2.0mmの非木材セルロース繊維としては、サイザル麻パルプ、龍髭草パルプ、ジュート麻パルプ、竹パルプ、コットンリンターパルプを使用することが好ましい。これらの繊維は、叩解処理をせずに用いても良く、叩解処理がされていても良い。叩解処理のされていない非木材セルロース繊維を用いることで、比含浸時間を上昇させず、セパレータの地合いを良好とすることができる。
但し、セパレータとして適用できる程度の地合いを満足できれば、1.0~2.0mmの非木材セルロース繊維に限定されるものではなく、平均繊維長が上記範囲以外のものを使用しても良い。
【0042】
セパレータ中の非木材セルロース繊維の割合は、30~80質量%が好ましい。セパレータ中の非木材セルロース繊維の割合が30質量%未満の場合、セパレータの取扱い性が悪化しやすく、80質量%を超える場合は、セパレータの地合いが悪化しやすい。
但し、マニラ麻パルプを配合すると、セパレータの地合いが悪化してピンホールが発生しやすくなるため、マニラ麻パルプのセパレータ中の割合は50質量%以下が好ましい。
【0043】
本発明のセパレータは、厚さが25~45μmである。
本発明のセパレータは、密度が0.22~0.43g/cmであることが、さらに好ましい。
セパレータの密度を上記範囲とすることで、導電性高分子分散液の含浸性をより高めやすい。
【0044】
本発明のセパレータは、平均孔径が2.0~7.0μmであることが好ましい。
セパレータの平均孔径を上記範囲とすることで、導電性高分子分散液の含浸性をより高めやすい。
【0045】
本発明のセパレータは、引裂強さが700mN以上であることが好ましい。
セパレータの引裂強さを700mN以上とすることで、素子の巻回時の作業性がさらに向上する。
【0046】
本発明のセパレータの抄紙には、円網抄紙機を使用することが好ましく、円網抄紙機で抄紙された層を複数重ね合わせても良い。短網抄紙機や長網抄紙機を使用すると、セパレータを構成する繊維が長い場合に、地合いが悪化しやすくなる。円網抄紙機であれば、セパレータを構成する繊維が長い場合でも、良好な分散状態としやすい。
また、抄紙に際しては、コンデンサ用セパレータに影響を与えない程度の不純物含有量であれば、分散剤や消泡剤、紙力増強剤等の添加剤を加えてもよい。さらに、紙層形成後に紙力増強加工、親液加工、カレンダ加工、エンボス加工等の後加工を施してもよい。
【0047】
〔セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサの特性の測定方法〕
本実施の形態のセパレータ及びアルミニウム電解コンデンサの各特性の具体的な測定は、以下の条件及び方法で行った。
【0048】
〔厚さ〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 5.1 厚さ」に規定された、「5.1.1 測定器及び測定方法a外側マイクロメータを用いる場合」のマイクロメータを用いて、「5.1.3 紙を折り重ねて厚さを測る場合」の10枚に折り重ねる方法で、セパレータの厚さ(μm)を測定した。
【0049】
〔密度〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 7.0A 密度」のB法に規定された方法で、絶乾状態のセパレータの密度(g/cm)を測定した。
【0050】
〔CSF〕
「JIS P 8121-2 パルプ-ろ水度試験法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に規定された方法で、CSF(ml)を測定した。
【0051】
〔引張強さ〕
「JIS P 8113 『紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法』」に規定された方法で、試験幅15mmのセパレータの縦方向の最大引張荷重(N/15mm)を測定し、引張強さとした。
【0052】
〔引裂強さ〕
「JIS P 8116 『紙-引裂強さ試験方法-エルメンドルフ形引裂試験機法』」に規定された方法で、セパレータの幅方向の引裂強さ(mN)を測定した。
【0053】
〔平均孔径〕
平均孔径の測定では、PMI社製Parm-Porometerを用いて、バブルポイント法(ASTM F316-86,JIS K3832)により測定される孔径分布から、その平均孔径(μm)を求めた。平均孔径の測定には、試験液としてGALWICK(Porous Materials,Inc社製)を用いた。
【0054】
〔長さ加重平均繊維長、繊維長0.2mm未満の繊維の割合、及び長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合〕
長さ加重平均繊維長は、「JIS P 8226-2 『パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法』」(ISO16065-2『Pulps-Determination of Fibre length by automated optical analysis-Part2:Unpolarized light method』)に記載された装置、ここではFiber Tester PLUS(Lorentzen&Wettre製)を用いて測定した。
繊維長0.2mm未満の繊維の割合は、上記装置で測定したFinesの値である。
長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合は、上記装置で測定した長さ加重繊維長分布のうち、繊維長が3.0mm以上の繊維の割合を計算し求めた。
【0055】
〔絶縁破壊の強さ〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 24 絶縁破壊の強さ 24.2.2 直流の場合 B法」に規定された方法で、セパレータの絶縁破壊の強さを測定した。
【0056】
〔コンデンサ素子の作製工程〕
電極箔として、厚さ100μm×長さ150mm×幅15mmの陽極箔と、厚さ50μm×長さ150mm×幅15mmの陰極箔とを用い、長さ250mm×幅18mmのセパレータを介在させて巻回し、高さ18mmのコンデンサ素子を作製した。セパレータの厚さは、各実施例及び各比較例の通りである。
【0057】
〔比含浸時間〕
上記の作製工程で作製した高さ18mmのコンデンサ素子を使用して、図1を参照して説明した、前述の測定方法により、比含浸時間を測定した。
導電性高分子分散液5としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる複合物を1重量%で含む水分散液を使用した。
素子10の底面4から高さ9mmまで導電性高分子分散液5に浸漬してから、素子10の上面3の全体に導電性高分子分散液5が含浸するまでの時間を測定し、式(2)により計算した素子10の上面3の面積で除して、比含浸時間(秒/mm)とした。
【0058】
〔ハイブリッド電解コンデンサの作製工程〕
各実施例のセパレータを用いて、上記の〔コンデンサ素子の作製工程〕の通りにコンデンサ素子を作製した。
さらに、作製したコンデンサ素子に再化成処理を行い、導電性高分子の分散液を含浸、乾燥させた後、エチレングリコール系電解液を含浸させた。
その後、ケースに挿入、封口し、エージング処理を行うことで、定格電圧50V、直径10.0mm×高さ22mmのハイブリッド電解コンデンサを得た。
【0059】
〔ショート不良率〕
ショート不良率は、破断不良なく巻き取れたコンデンサ素子を用いて、エージング時のショート不良数を計数し、これらのショート不良となった素子数を、破断不良なく巻き取れた素子数で除して百分率とすることにより、計算した。
【0060】
〔ESR〕
作製したハイブリッド電解コンデンサのESRは、LCRメータを用いて、20℃で100kHzの周波数で測定した。
【0061】
〔実施例〕
以下、本発明に係る具体的な各実施例、各比較例、及び各従来例について、詳細に説明する。なお、以下の各例では、長さ加重平均繊維長を「平均繊維長」、0.2mm未満の繊維割合を「微細繊維割合」、長さ加重繊維長分布における繊維長が3.0mm以上の繊維の割合を「長繊維割合」、とそれぞれ称する。
【0062】
〔実施例1〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース50質量%と、CSFが680mlのマニラ麻パルプ30質量%と、長さ加重平均繊維長が1.2mmである龍髭草パルプ20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例1のセパレータを得た。実施例1のセパレータは、厚さ30μm、密度0.44g/cm、平均繊維長が1.90mm、微細繊維割合が49.8%、長繊維割合が25.8%、引裂強さが670mN、平均孔径が1.7μm、絶縁破壊の強さが24.8kV/mm、比含浸時間が19.8秒/mmであった。
【0063】
〔実施例2〕
CSF100mlに叩解したポリノジックレーヨン40質量%と、CSFが710mlのマニラ麻パルプ50質量%と、長さ加重平均繊維長が1.6mmである竹パルプ10質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例2のセパレータを得た。実施例2のセパレータは、厚さ45μm、密度0.21g/cm、平均繊維長が2.95mm、微細繊維割合が30.6%、長繊維割合が64.7%、引裂強さが780mN、平均孔径が7.6μm、絶縁破壊の強さが14.1kV/mm、比含浸時間が1.8秒/mmであった。
【0064】
〔実施例3〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース30質量%と、CSFが650mlのマニラ麻パルプ50質量%と、長さ加重平均繊維長が1.7mmであるジュート麻パルプ20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例3のセパレータを得た。実施例3のセパレータは、厚さ45μm、密度0.22g/cm、平均繊維長が1.85mm、微細繊維割合が31.5%、長繊維割合が64.2%、引裂強さが720mN、平均孔径が7.0μm、絶縁破壊の強さが16.1kV/mm、比含浸時間が10.1秒/mmであった。
【0065】
〔実施例4〕
CSF0mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維45質量%と、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維25質量%と、CSFが710mlのマニラ麻パルプ30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を二層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例4のセパレータを得た。実施例4のセパレータは、厚さ40μm、密度0.43g/cm、平均繊維長が1.88mm、微細繊維割合が49.1%、長繊維割合が64.5%、引裂強さが760mN、平均孔径が6.2μm、絶縁破壊の強さが18.5kV/mm、比含浸時間が5.4秒/mmであった。
【0066】
〔実施例5〕
CSF10mlに叩解した溶剤紡糸セルロース20質量%と、CSFが650mlのマニラ麻パルプ40質量%と、長さ加重平均繊維長が1.2mmである龍髭草パルプ40質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を二層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例5のセパレータを得た。実施例5のセパレータは、厚さ35μm、密度0.37g/cm、平均繊維長が2.85mm、微細繊維割合が31.3%、長繊維割合が25.8%、引裂強さが700mN、平均孔径が4.0μm、絶縁破壊の強さが20.3kV/mm、比含浸時間が14.7秒/mmであった。
【0067】
〔実施例6〕
CSF150mlに叩解した溶剤紡糸セルロース50質量%と、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維15質量%と、CSFが730mlのマニラ麻パルプ20質量%と、長さ加重平均繊維長が2.0mmであるサイザル麻パルプ15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例6のセパレータを得た。実施例6のセパレータは、厚さ30μm、密度0.39g/cm、平均繊維長が2.81mm、微細繊維割合が48.6%、長繊維割合が63.7%、引裂強さが835mN、平均孔径が5.6μm、絶縁破壊の強さが16.6kV/mm、比含浸時間が8.7秒/mmであった。
【0068】
〔実施例7〕
CSF150mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維45質量%と、CSFが650mlのマニラ麻パルプ40質量%と、長さ加重平均繊維長が1.2mmである龍髭草パルプ15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例7のセパレータを得た。実施例7のセパレータは、厚さ25μm、密度0.43g/cm、平均繊維長が2.91mm、微細繊維割合が48.7%、長繊維割合が26.1%、引裂強さが770mN、平均孔径が2.0μm、絶縁破壊の強さが21.7kV/mm、比含浸時間が17.0秒/mmであった。
【0069】
〔実施例8〕
CSF5mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維35質量%と、CSFが680mlのマニラ麻パルプ35質量%と長さ加重平均繊維長が1.4mmであるコットンリンターパルプ30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、実施例8のセパレータを得た。実施例8のセパレータは、厚さ30μm、密度0.40g/cm、平均繊維長が1.89mm、微細繊維割合が32.2%、長繊維割合は25.8%、引裂強さが780mN、平均孔径3.4μm、絶縁破壊の強さが16.1kV/mm、比含浸時間が14.9秒/mmであった。
【0070】
〔比較例1〕
CSF5mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維50質量%と、CSFが690mlのマニラ麻パルプ30質量%と、長さ加重平均繊維長が1.7mmであるジュート麻パルプ20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例1のセパレータを得た。比較例1のセパレータは、厚さ30μm、密度0.41g/cm、平均繊維長が1.90mm、微細繊維割合が48.6%、長繊維割合は22.1%、引裂強さが815mN、平均孔径1.9μm、絶縁破壊の強さが20.3kV/mm、比含浸時間が21.0秒/mmであった。
【0071】
〔比較例2〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維50質量%と、CSFが650mlのマニラ麻パルプ30質量%と、長さ加重平均繊維長が1.7mmであるジュート麻パルプ20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例2のセパレータを得た。比較例2のセパレータは、厚さ30μm、密度0.39g/cm、平均繊維長が1.54mm、微細繊維割合が47.6%、長繊維割合は26.0%、引裂強さが670mN、平均孔径3.6μm、絶縁破壊の強さが15.4kV/mm、比含浸時間が23.1秒/mmであった。
【0072】
〔比較例3〕
CSF100mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維15質量%と、CSFが440mlのマニラ麻パルプ60質量%と、長さ加重平均繊維長が1.2mmである龍髭草パルプ25質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例3のセパレータを得た。比較例3のセパレータは、厚さ30μm、密度0.41g/cm、平均繊維長が2.76mm、微細繊維割合が31.5%、長繊維割合は66.1%、引裂強さが760mN、平均孔径4.3μm、絶縁破壊の強さが14.0kV/mm、比含浸時間が20.4秒/mmであった。
【0073】
〔比較例4〕
CSF5mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維55質量%と、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維20質量%と、CSFが630mlのマニラ麻パルプ15質量%と長さ加重平均繊維長が1.2mmである龍髭草パルプ10質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例4のセパレータを得た。比較例4のセパレータは、厚さ30μm、密度0.40g/cm、平均繊維長が1.87mm、微細繊維割合が53.8%、長繊維割合は27.3%、引裂強さが680mN、平均孔径1.6μm、絶縁破壊の強さが22.8kV/mm、比含浸時間が22.7秒/mmであった。
【0074】
〔比較例5〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維40質量%と、CSFが615mlのマニラ麻パルプ45質量%と、長さ加重平均繊維長が1.4mmであるコットンリンターパルプ15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例5のセパレータを得た。比較例5のセパレータは、厚さ45μm、密度0.24g/cm、平均繊維長が1.96mm、微細繊維割合が28.6%、長繊維割合は37.3%、引裂強さが710mN、平均孔径5.2μm、絶縁破壊の強さが14.1kV/mm、比含浸時間が21.2秒/mmであった。
【0075】
〔比較例6〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維30質量%と、CSFが490mlのマニラ麻パルプ55質量%と、長さ加重平均繊維長が2.0mmであるサイザル麻パルプ15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、比較例6のセパレータを得た。比較例6のセパレータは、厚さ45μm、密度0.23g/cm、平均繊維長が3.15mm、微細繊維割合が33.8%、長繊維割合は25.7%、引裂強さが860mN、平均孔径6.4μm、絶縁破壊の強さが14.3kV/mm、比含浸時間が20.7秒/mmであった。
【0076】
〔従来例1〕
CSF10mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維100質量%の原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、従来例1のセパレータを得た。従来例1のセパレータは、厚さ30μm、密度0.40g/cm、平均繊維長が0.85mm、微細繊維割合が75.0%、長繊維割合は0.0%、引裂強さが720mN、平均孔径1.3μm、絶縁破壊の強さが26.1kV/mm、比含浸時間が29.0秒/mmであった。
【0077】
〔従来例2〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維70質量%と、長さ加重平均繊維長が2.0mmであるサイザル麻パルプ30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、従来例2のセパレータを得た。従来例2のセパレータは、厚さ45μm、密度0.32g/cm、平均繊維長が1.50mm、微細繊維割合が45.2%、長繊維割合は16.0%、引裂強さが490mN、平均孔径2.4μm、絶縁破壊の強さが16.5kV/mm、比含浸時間が26.2秒/mmであった。
【0078】
〔従来例3〕
マニラ麻パルプ30質量%と、長さ加重平均繊維長が2.0mmであるサイザル麻パルプ70質量%とを混合した原料をCSF440mlに叩解した原料を用いて円網抄紙した層を三層抄き合わせ、乾燥させることで、従来例3のセパレータを得た。従来例3のセパレータは、厚さ30μm、密度0.42g/cm、平均繊維長が2.22mm、微細繊維割合が23.5%、長繊維割合は20.5%、引裂強さが670mN、平均孔径12.0μm、絶縁破壊の強さが11.6kV/mm、比含浸時間が1.3秒/mmであった。
【0079】
〔従来例4〕
CSF30mlに叩解した溶剤紡糸セルロース繊維50質量%とCSFが510mlのマニラ麻パルプ50質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙した層を二層抄き合わせ、乾燥させることで、従来例4のセパレータを得た。従来例4のセパレータは、厚さ30μm、密度0.43g/cm、平均繊維長が2.04mm、微細繊維割合が51.3%、長繊維割合は22.1%、引裂強さが740mN、平均孔径2.6μm、絶縁破壊の強さが18.3kV/mm、比含浸時間が22.1秒/mmであった。
【0080】
上記の実施例、比較例、及び従来例のセパレータを用いて、定格電圧50Vハイブリッド電解コンデンサを作製した。各コンデンサについて、ショート不良率及びESRを測定した。
【0081】
上記の実施例、比較例、及び従来例のセパレータの原料と配合、平均繊維長、微細繊維割合、長繊維割合を、表1に示す。
また、上記の実施例、比較例、及び従来例の各セパレータ単体の評価結果、及び各セパレータを用いたハイブリッド電解コンデンサの性能評価結果を、表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
以下、各実施例、各比較例、及び各従来例のセパレータ物性、及び各セパレータを用いたハイブリッド電解コンデンサの評価結果を、詳細に説明する。
【0085】
実施例1~実施例8のセパレータを用いたコンデンサは、各比較例、各従来例のセパレータを使用したコンデンサに比べて、ESRが低かった。実施例1~実施例8のセパレータを用いたコンデンサのESRが低かったのは、導電性高分子分散液が浸透する経路を維持できているためと考えられる。このことから、薄葉化された耐ショート性の高いセパレータでは、平均繊維長を1.8~3.0mm、微細繊維割合を30~50%、長繊維割合を25~65%とすることで、ハイブリッド電解コンデンサのESR特性を向上できることが分かった。
【0086】
実施例1、実施例3~実施例8のセパレータを用いたコンデンサは、実施例2のセパレータを用いたコンデンサに比べて、ショート不良率が低かった。実施例1、実施例3~実施例8のセパレータは、絶縁破壊の強さが16.1~24.8kV/mmと、実施例2に比べて高い。このことから、絶縁破壊の強さは16kV/mm以上とすることで、コンデンサのショート不良率をより低くできることが分かった。
【0087】
実施例2~実施例6、実施例8のセパレータを用いたコンデンサは、実施例1及び実施例7のセパレータを用いたコンデンサに比べて、ESRが低かった。実施例2~実施例6、実施例8のセパレータは、比含浸時間が1.8~14.9秒/mmと低く、導電性高分子分散液が浸透する時間が早い。このことから、比含浸時間を15秒/mm以下とすることで、コンデンサのESRをより低くできることが分かった。
【0088】
比較例3、比較例5及び比較例6のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例のセパレータを用いたコンデンサに比べてショート不良率が若干高い。比較例3、比較例5及び比較例6のセパレータは、セパレータの繊維構成が悪く、地合いが悪化することでショート不良が発生しやすいのではないかと考えられる。このことから、平均繊維長を1.8~3.0mm、微細繊維割合を30~50%、長繊維割合を25~65%とすることで、ショート不良率も低くできることが分かった。
【0089】
従来例1のセパレータは、再生セルロース繊維のみからなるセパレータであり、絶縁破壊の強さは26.1kV/mmと高いが、比含浸時間は29.0秒/mmと高い。そのため、ショート不良を抑えることができても、ESRが高い結果となっている。
さらに、従来例3のセパレータは、非木材セルロース繊維のみからなるセパレータであり、比含浸時間は1.3秒/mmと低いが、絶縁破壊の強さが11.6kV/mmと低い。そのため、ESRが低くても、ショート不良が発生してしまう。
これらのことから、セパレータは再生セルロース繊維と非木材繊維とからなることが良いことが分かった。
【0090】
従来例2のセパレータは、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維とからなるセパレータだが、非木材セルロース繊維としてサイザル麻パルプのみを含んでいる。従来例2のセパレータは、平均繊維長が短く、長繊維の割合も少ない。さらに、従来例2のセパレータは引裂強さも若干低いため、素子の巻回時の作業性も低くなる。このことから、非木材セルロース繊維として、マニラ麻パルプを含むことが良いことが分かった。
【0091】
従来例4のセパレータは、再生セルロース繊維と非木材セルロース繊維としてマニラ麻パルプを用いたセパレータだが、微細繊維割合が高く、長繊維の割合が低い。従来例4のセパレータは、絶縁破壊の強さは18.3kV/mmと高いが、比含浸時間が35.8秒/mmと実施例よりも悪化しており、ESRも高い。従来例4のセパレータのESRが高くなっているのは、微細繊維割合が高く、長繊維割合が低いため、導電性高分子分散液が浸透する経路が塞がれているためだと考えられる。
【0092】
以上、説明したように、本実施の形態例によれば、薄葉化された耐ショート性の高いセパレータでありながら、導電性高分子分散液の含浸性を向上させたセパレータを提供することができる。また、該セパレータを用いることで、従来よりもESR特性の向上したアルミニウム電解コンデンサを提供することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 陽極リード線、2 陰極リード線、3 導電性高分子分散液に浸漬されていない側の端面(上面)、4 底面、5 導電性高分子分散液、10 素子
図1