(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150933
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220929BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220929BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053748
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 草介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB02
2C056EB06
2C056EB12
2C056EB30
2C056EB39
2C056EB44
2C056EC02
2C056EC18
2C056EC32
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA16
2C056KC01
2C056KC14
2C056KC16
2C056KC22
2C056KC27
(57)【要約】
【課題】気温が上昇するなど外部環境が変化しても、ヘッドのノズルから液体が漏れ出すのを低減することができる液体吐出装置
【解決手段】複合機10は、液体を吐出するノズル39を有するヘッド38と、少なくとも一部がノズル39の開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留されるタンク80と、大気開放口88を通じてタンク80の気体層78と外部とを連通する大気連通路90と、大気開放口88又は大気連通路90を連通状態または非連通状態にするバルブユニット91と、を備える。バルブユニット91は、電源がオンからオフに移行されるときに、非連通状態から連通状態となる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、
大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、
上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態または非連通状態にするバルブユニットと、を備えており、
上記バルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記非連通状態から上記連通状態となる液体吐出装置。
【請求項2】
上記バルブユニットを駆動する駆動機構と、
コントローラと、を更に具備しており、
上記コントローラは、電源をオンからオフに移行するときに、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
上記コントローラは、電源がオフである状態において、予め定められた第1条件に基づいて、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記コントローラは、電源がオフである状態において、予め定められた第2条件に基づいて、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、
上記キャリッジを駆動する駆動源と、
コントローラと、を更に備えており、
上記バルブユニットは、上記キャリッジの移動に連動して状態変化し、
上記コントローラは、電源をオンからオフに移行するときに、上記駆動源を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化するものであり、
上記駆動機構は、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態に姿勢変化させる第1電気アクチュエータと、上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態に姿勢変化させる第2電気アクチュエータと、を有する請求項2から4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化するものであり、
上記駆動機構は、上記バルブユニットを姿勢変化させる偏心カムを有する回動機である請求項2から4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
上記バルブユニットを駆動する駆動機構を更に備えており、
上記駆動機構は、
上記バルブユニットを上記連通状態に保持する付勢部材と、
電源が供給されることにより、上記付勢部材に抗して上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態とする電気アクチュエータと、を備える請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
上記ヘッドを搭載する上記キャリッジを更に具備しており、
上記貯留部は、少なくとも一部が上記ヘッドの上方に位置した状態で上記キャリッジに搭載されている請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
上記キャリッジは、走査方向に移動するものであり、
上記ヘッドは、上記キャリッジが上記走査方向へ移動しているときに液体を吐出する請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
上記貯留部は、
第1貯留室と、
上記第1貯留室及び上記ヘッドと液体が流通可能に接続された第2貯留室を有する請求項1から10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
上記大気連通路は、ラビリンス構造又は半透膜の少なくともいずれか一方を有する請求項1から11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
上記ノズルを被覆した被覆位置及び上記ノズルから離間した離間位置に移動可能なキャップと、
キャップ開放口を通じて上記キャップの内部空間と外部とを連通するキャップ連通路と、
上記キャップ開放口又は上記キャップ連通路を上記連通状態又は上記非連通状態にするキャップバルブユニットと、を更に備えており、
上記キャップバルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記非連通状態から上記連通状態となる請求項1から12のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、
大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、
上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態または非連通状態にするバルブユニットと、を備えており、
上記バルブユニットは、電源がオンからオフに移行された後に、上記非連通状態から上記連通状態となる液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部から供給された液体を吐出するヘッドを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置としてインクジェット記録装置が公知である。インクジェット記録装置では、インクの吐出安定性を担保するために、ヘッドのノズルに、ヘッドの外から見て凹型のメニスカスが形成される。
【0003】
特許文献1に記載されたインクジェット記録装置では、ヘッドがインクを吐出する状態において、弁体201が空気流入調整部62を開放している。これにより、空気流入調整部62を通じてインクタンク54内に空気が流入する。インクタンク54が操作部202の下方に移動すると、操作部202との当接により弁体201が姿勢変化して、空気流入調整部62が閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたインクジェット記録装置において、弁体201が空気流入調整部62を閉塞した状態で、装置の電源がオフにされることがある。電源がオフにされている間に、例えば気温が上昇してインクタンク54の空気層が膨張すると、ヘッドのノズルにおいてメニスカスが壊れることがある。その結果、ヘッドのノズルからインクが漏れ出すおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドのノズルから液体が漏れ出すことを低減することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態または非連通状態にするバルブユニットと、を備える。上記バルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記非連通状態から上記連通状態となる。
【0008】
装置の電源がオフである間に、気温が上昇するなど外部環境が変化しても、ヘッドのノズルから液体が漏れ出すことが低減される。
【0009】
(2) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記バルブユニットを駆動する駆動機構と、コントローラと、を更に具備しており、上記コントローラは、電源をオンからオフに移行するときに、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする。
【0010】
(3) 好ましくは、上記コントローラは、電源がオフである状態において、予め定められた第1条件に基づいて、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態とする。
【0011】
例えば、電源がオフである間に気温の変化等がなければ、バルブユニットが非連通状態とされることによって貯留部から大気開放口を通じて液体が蒸発したり、装置の移動により大気開放口から液体が流出したりすることが低減される。
【0012】
(4) 好ましくは、上記コントローラは、電源がオフである状態において、予め定められた第2条件に基づいて、上記駆動機構を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする。
【0013】
バルブユニットが非連通状態となった後に、気温が上昇するなど外部環境が変化しても、ヘッドのノズルから液体が漏れ出すことが低減される。
【0014】
(5) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、上記キャリッジを駆動する駆動源と、コントローラと、を更に備えており、上記バルブユニットは、上記キャリッジの移動に連動して状態変化し、上記コントローラは、電源をオンからオフに移行するときに、上記駆動源を駆動して、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態とする
【0015】
(6) 好ましくは、上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化するものであり、上記駆動機構は、上記バルブユニットを上記非連通状態から上記連通状態に姿勢変化させる第1電気アクチュエータと、上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態に姿勢変化させる第2電気アクチュエータと、を有する。
【0016】
(7) 好ましくは、上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化するものであり、上記駆動機構は、上記バルブユニットを姿勢変化させる偏心カムを有する回動機である。
【0017】
(8) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記バルブユニットを駆動する駆動機構を更に備えており、上記駆動機構は、上記バルブユニットを連通状態に保持する付勢部材と、電源が供給されることにより、上記付勢部材に抗して上記バルブユニットを上記連通状態から上記非連通状態とする電気アクチュエータと、を備える。
【0018】
(9) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記ヘッドを搭載するキャリッジを更に具備しており、上記貯留部は、少なくとも一部が上記ヘッドの上方に位置した状態で上記キャリッジに搭載されている。
【0019】
(10) 好ましくは、上記キャリッジは、走査方向に移動するものであり、上記ヘッドは、上記キャリッジが上記走査方向へ移動しているときに液体を吐出する。
【0020】
(11) 好ましくは、上記貯留部は、第1貯留室と、上記第1貯留室及び上記ヘッドと液体が流通可能に接続された第2貯留室を有する。
【0021】
(12) 好ましくは、上記大気連通路は、ラビリンス構造又は半透膜の少なくともいずれか一方を有する。
【0022】
(13) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記ノズルを被覆した被覆位置及び上記ノズルから離間した離間位置に移動可能なキャップと、キャップ開放口を通じて上記キャップの内部空間と外部とを連通するキャップ連通路と、上記キャップ開放口又は上記キャップ連通路を連通状態又は非連通状態にするキャップバルブユニットと、を更に備えており、上記キャップバルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記非連通状態から上記連通状態となる。
【0023】
キャップがノズルを被覆することにより、ノズルから液体が蒸発することが低減される。電源がオフであるとき、キャップ開放口又はキャップ開放路が連通状態であるので、気温が上昇するなど外部環境が変化しても、キャップの内部空間の空気がノズルへ進入してメニスカスが壊れることが低減される。
【0024】
(14) 本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態または非連通状態にするバルブユニットと、を備える。上記バルブユニットは、電源がオンからオフに移行された後に、上記非連通状態から上記連通状態となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ヘッドのノズルから液体が漏れ出すことが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る複合機10の斜視図である。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す断面図であり、キャリッジ40がメンテナンス位置に位置し且つキャップ70が被覆位置に位置する状態が示されている。
【
図4】
図4は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40がメンテナンス位置に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図5】
図5は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が媒体通過領域36の上方に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る大気連通装置48の断面図であって、
図6(a)は、バルブユニット91が連通状態であるとき、
図6(b)は非連通状態であるときについて示す図である。
【
図7】
図7は、複合機10の機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、通常の印刷時におけるバルブユニット91の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、ソフトスイッチにより複合機10の電源がオフにされる場合のバルブユニット91の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、複合機10が待機状態になった後のバルブユニット91の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1実施形態の変形例1に係る複合機10の断面図である。
【
図12】
図12(a)は、第1実施形態の変形例2に係る複合機10のタンク80の上壁82に設けられたラビリンス構造を示す図であり、
図12(b)は、第1実施形態の変形例3に係る複合機10の大気開放口88に設けられる半透膜を示す図である。
【
図13】
図13(a)は、第2実施形態に係る複合機10の大気連通装置48Cを示す断面図であって、第1電気アクチュエータ49Cに給電されている状態のバルブユニット91の状態を示し、
図13(b)は、第1電気アクチュエータ49Cに給電された後に給電が停止された状態のバルブユニット91の状態を示す図である。
【
図14】
図14(a)~(d)は、第2実施形態の変形例1に係る複合機10の大気連通装置48Dを示す断面図であって、バルブユニット91Dが連通状態又は非連通状態に姿勢変化する状態について示す図である。
【
図15】
図15(a)~(c)は、第2実施形態の変形例2に係る大気連通装置48Dを一部断面で示す図であって、バルブユニット91Eが連通状態又は非連通状態に姿勢変化する状態について示す図である。
【
図16】
図16(a)は、第3実施形態に係る大気連通装置48Bを示す断面図であって、バルブ96Fが大気開放口88に対して離間してバルブユニット91Fが非連通状態にあるときの状態を示す図であり、
図16(b)は、バルブ96Fが大気開放口88に当接してバルブユニット91Fが連通状態にあるときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている面を前面23として前後方向8が定義され、複合機10を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は互いに直交している。
【0028】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について説明される。
【0029】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(液体吐出装置の一例)は、概ね直方体形状の筐体14を有する。筐体14の下部に、プリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で用紙12の片面に画像記録する機能を有している。なお、複合機10は、用紙12の両面に画像記録するものであってもよい。筐体14の上部に、操作部17が設けられている。操作部17は、画像記録の指示や各種設定のために操作されるボタンや電源ボタン、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。操作部17は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されている。
【0030】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ20、給送部16、外ガイド部材18、内ガイド部材19、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、プラテン42、記録部24、キャップ70(
図3参照)、大気連通装置48(
図3参照)、温度センサ115、シートセンサ120、ロータリエンコーダ75(
図7参照)、コントローラ130(
図7参照)、及びメモリ140(
図7参照)を備えている。これらは、筐体14の内部に配置されている。
【0031】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11の前面23に、開口13が形成されている。給送トレイ20が、前後方向8へ移動することによって、開口13を介して筐体14に対して挿入及び抜去可能である。
【0032】
図2に示されるように、給送トレイ20が給送位置のとき、給送トレイ20に支持された用紙12が搬送路65へ給送可能である。
【0033】
[給送部16]
図2に示されるように、給送部16は、記録部24の下方且つ給送トレイ20の上方に配置されている。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、駆動伝達機構27、及び軸28を備えており、搬送路65に用紙12を給送可能である。
【0034】
[搬送路65]
図2に示されるように、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、湾曲部33と直線部34とを備える。湾曲部33は、上方へ向かいつつ後方から前方へUターンするように延び、直線部34は、概ね前後方向8に沿って延びている。
【0035】
湾曲部33は、所定間隔を隔てて互いに対向する外ガイド部材18と内ガイド部材19とによって形成されている。直線部34は、記録部24が配置されている位置では所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されている。
【0036】
給送トレイ20に支持された用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33を搬送されて、搬送ローラ対59に到達する。搬送ローラ対59に挟持された用紙12は、直線部34を記録部24へ向けて前方へ搬送される。記録部24の直下に到達した用紙12は、記録部24により画像記録される。画像記録された用紙12は、直線部34を前方へ搬送されて排出トレイ21に排出される。以上より、用紙12は、
図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15に沿って搬送される。
【0037】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、直線部34に、搬送ローラ対59が配置されている。直線部34における搬送ローラ対59よりも搬送向き15の下流に、排出ローラ対44が配置されている。
【0038】
搬送ローラ対59は、搬送ローラ60と、搬送ローラ60の下方に搬送ローラ60と対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。ピンチローラ61は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60に押圧されている。搬送ローラ対59は、用紙12を挟持可能である。
【0039】
排出ローラ対44は、排出ローラ62と、排出ローラ62の上方に排出ローラ62と対向して配置された拍車ローラ63とを備えている。拍車ローラ63は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって排出ローラ62へ向けて押圧されている。排出ローラ対44は、用紙12を挟持可能である。
【0040】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送用モータ101(
図7参照)から駆動力を付与されて回転する。搬送ローラ対59に用紙12が挟持されている状態で搬送ローラ60が回転すると、当該用紙12は、搬送ローラ対59によって搬送向き15へ搬送され、プラテン42上に搬送される。排出ローラ対44に用紙12が挟持されている状態で排出ローラ62が回転すると、当該用紙12は、排出ローラ対44によって搬送向き15へ搬送され、排出トレイ21上に排出される。
【0041】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線部34に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向している。プラテン42は、搬送路65を搬送される用紙12を下方から支持する。
【0042】
搬送路65を搬送される用紙12は、左右方向9において、プラテン42の右端及び左端の間の媒体通過領域36(
図3~
図5参照)を通過する。
【0043】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、プラテン42の上方にプラテン42と対向して配置されている。記録部24は、キャリッジ40と、ヘッド38と、タンク80とを備えている。
【0044】
キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56、57によって搬送向き15と直交する左右方向9(走査方向の一例)に沿って移動可能に支持されている。キャリッジ40は、ヘッド38を搭載して移動する。キャリッジ40は、少なくとも一部がヘッド38の上方に位置した状態でタンク80が搭載されている。キャリッジ40は、左右方向9において媒体通過領域36よりも右方から媒体通過領域36よりも左方に亘って移動可能である。なお、キャリッジ40の移動方向は、左右方向9に限らず、搬送向き15と交差する方向であればよい。
【0045】
ガイドレール56、57は、左右方向9において搬送路65の直線部34の外方に配置された一対のサイドフレーム(不図示)によって支持されている。キャリッジ40は、
図7に示されるように、キャリッジ駆動用モータ103から駆動力を付与されることにより移動する。
【0046】
ガイドレール56またはガイドレール57には、エンコーダ35(
図7参照)が配置されている。エンコーダ35は、左右方向9に延びたエンコーダストリップと、キャリッジ40におけるエンコーダストリップに対向する箇所に設けられた光学センサとを備えている。光学センサによってエンコーダストリップの透光部及び遮断部が検出されることによってパルス信号が検出される。パルス信号は、キャリッジ40の左右方向9の位置に応じた信号であり、コントローラ130(
図7参照)に出力される。
【0047】
ヘッド38は、キャリッジ40に支持されている。ヘッド38の下面68は、下方へ露出しており、プラテン42と対向している。ヘッド38は、キャリッジ40が左右方向9へ移動しているときにインクを吐出する。ヘッド38は、複数のノズル39と、インク流路37と、圧電素子(不図示)とを有する。
【0048】
複数のノズル39は、ヘッド38の下面68に開口されており、インク(液体の一例)を吐出する。インク流路37は、タンク80と複数のノズル39とを繋ぐ。圧電素子は、インク流路37の一部を変形させることでノズル39から下方へインク滴を吐出させる。
【0049】
タンク80(貯留部の一例)は、キャリッジ40に搭載されている。タンク80は、インク室81を有している。インク室81には、インクが液面を形成して貯留される。インク室81は、インクの液面によって気体層78とインク層79とに区画される。タンク80の近傍には温度センサ115が設置されている。なお、温度センサ115は、気体層78の温度を検知できるものであればよい趣旨であり、タンク80の外に設けられていてもよい。
【0050】
本実施形態では、記録部24は、一つのタンク80を備えている。タンク80は、ヘッド38より上方に位置している。なお、本実施形態では、タンク80の全てがヘッド38より上方に位置しているが、タンク80は、少なくとも一部がノズル39の開口よりも上方に位置していてもよい。
【0051】
インク室81のインク層79は、インク流路37を介して複数のノズル39と連通している。インク流路37を通じて、インク室81からノズル39へインクが供給される。タンク80の上壁82には、インク室81へインクを注入するための注入口83が設けられている。
【0052】
図3~
図5に示されるように、タンク80の上壁82において大気開放口88が設けられている。大気開放口88は、インク室81の気体層78と外部とを連通させる。
【0053】
[大気連通装置48]
図6は、第1実施形態に係る複合機10の大気連通装置48を示している。大気開放口88の近傍には、大気連通装置48が設けられている。大気連通装置48は、バルブユニット91と、バルブユニット91を駆動する駆動機構92とを備えている。バルブユニット91は、大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。連通状態とは、大気開放口88が開放されてインク室81の気体層78と外部とを連通させている状態である。非連通状態とは、大気開放口88が閉塞されて、インク室81の気体層78と外部とが気密に遮断されている状態である。
【0054】
バルブユニット91は、回動片96と、回動軸97と、回動支持台98とを備える。回動片96は、中央付近で折れ曲がった平板形状であり、前後方向8から視てV字形状である。回動片96において折れ曲がった箇所から左方に延びる部分が第1回動片99と称され、右方に延びる部分が第2回動片100と称される。第1回動片99と第2回動片100との境界から前後方向8に沿って回動軸97が回動片96から突出している。
【0055】
回動支持台98は、タンク80の上壁82から上方へ突出する。回動支持台98は、大気開放口88の左方に位置する。回動支持台98は、回動軸97を前後方向8に沿って回動可能に支持する。回動軸97周りに回動片96が回動することによって、第2回動片100が、大気開放口88を閉塞したり、開放したりする。
【0056】
駆動機構92は、電気アクチュエータ49と、コイルバネ51(付勢部材の一例)とを備えている。駆動機構92は、コントローラ130から給電されることで動作し、バルブユニット91を駆動する。駆動機構92は、タンク80の上壁82に設けられている。
【0057】
電気アクチュエータ49は、例えば、上壁82において回動支持台98より右方に位置するバネ座105に支持されている。電気アクチュエータ49は、コイル部107と、プランジャ125とを備えている。プランジャ125の先端部分は当接部127である。当接部127の下端は、回動軸97の上端付近にある。電気アクチュエータ49は、所謂電磁弁である。
【0058】
コイル部107は、内部に電磁コイルを有する。プランジャ125は、コイル部107に挿入された軸部分が磁性を有しており、コイル部107に対して左右方向9に沿って移動可能である。通電によりコイル部107に誘導磁界が発生すると、プランジャ125がコイル部107に対して右方へ移動する。
【0059】
図6に示されるように、タンク80の上壁82の右端付近において、バネ座105が上方へ突出している。バネ座105は、大気開放口88よりも右方に位置する。バネ座105と電気アクチュエータ49の当接部127とに支持されて、コイルバネ51が左右方向9に沿って延びている。コイルバネ51は、当接部127を左方に付勢する。
【0060】
電気アクチュエータ49は、上壁82上のバネ座105と大気開放口88との間に設けられた支持台94によって支持されている。
【0061】
コイル部107に給電されていない状態において、
図6(a)に示されるように、プランジャ125は、コイルバネ51により左方へ付勢されて、コイル部107に対して最も左方へ移動した状態となる。この状態において、当接部127は回動軸97よりも左方に位置して、第1回動片99と当接する。第1回動片99が当接部127と当接することによって、回動片96は、最も反時計回りに回動した状態となり、第2回動片100が大気開放口88から離間する。
【0062】
コイル部107に給電されると、
図6(b)に示されるように、コイル部107に生じた誘導磁界によって、プランジャ125が、コイルバネ51の付勢力に抗して、コイル部107に対して右方へ移動した状態となる。この状態において、当接部127は回動軸97よりも右方に位置して、第2回動片100と当接する。これにより、回動片96が最も時計回りに回動した状態となり、第2回動片100が大気開放口88を閉塞する。
【0063】
[キャップ70]
図3~
図5に示されるように、左右方向9におけるプラテン42の外、本実施形態では媒体通過領域36よりも右方のメンテナンス位置(
図3及び
図4に示される位置)にキャップ70が位置する。キャリッジ40がメンテナンス位置にあるとき、キャップ70はキャリッジ40の下方に位置して、キャリッジ40(詳細には、ヘッド38のノズル39)と対向する。キャップ70は、上方が開放された箱形状の部材である。キャップ70は、ゴムなどの弾性材料からなる。
【0064】
キャップ70は、公知の可動機構71を介してフレーム46に支持されており、キャップ駆動用モータ104(
図7参照)から駆動力を付与された可動機構71によって上下動可能である。フレーム46は、プラテン42より右方に位置しており、前後方向8及び左右方向9に拡がった板状の部材である。可動機構71は、例えばボールネジを用いた機構や、カムを用いた機構などである。
【0065】
キャップ70は、
図3に示されるノズル39を被覆した被覆位置と、
図4に示されるノズルから離間した離間位置に移動可能である。
図3に示されるように、被覆位置のキャップ70は、その上端が下方からヘッド38の下面68に圧接される。これにより、キャップ70は、下面68に開口された複数のノズル39を下方から覆った状態となる。このとき、キャップ70とヘッド38の下面68によって画定されるキャップ内部空間76(キャップの内部空間の一例)が形成される。離間位置は、被覆位置より下方の位置である。離間位置のキャップ70は、ヘッド38の下面68から離間している。キャップセンサ147(
図7参照)は、キャップ70が被覆位置にあることを検出する。
【0066】
キャップ70の底面70Aに、貫通孔72が(キャップ開放口の一例)設けられている。貫通孔72にはチューブ73の一端が接続されている。チューブ73は、可撓性を有する樹脂チューブである。チューブ73の一端が貫通孔72に接続されることで、貫通孔72を通じてキャップ内部空間76と外部とを連通するキャップ連通路74が形成される。チューブ73の他端は、貫通孔72又はキャップ連通路74を連通状態又は非連通状態にするキャップバルブユニット67に接続されている。
【0067】
キャップバルブユニット67は、貫通孔72又はキャップ連通路74を連通状態又は非連通状態にする。連通状態とは、貫通孔72又はキャップ連通路74がキャップ内部空間76と外部とを連通させている状態である。非連通状態とは、貫通孔72又はキャップ連通路74が閉塞された状態である。
【0068】
キャップ内部空間76は、ポンプ77と接続されている。ポンプ77は、キャップ内部空間76に吸引圧を付与する。キャップ70が被覆位置に位置してノズル39を覆っており、且つキャップバルブユニット67が連通状態であるときにポンプ77が駆動されると、キャップ内部空間76が負圧となり、ノズル39からインクとともに異物がキャップ内部空間76へ吸い出される。
【0069】
[シートセンサ120]
図2に示されるように、シートセンサ120は、搬送路65における搬送ローラ対59よりも搬送向き15の上流に設けられている。シートセンサ120は、軸121と、軸121を中心に回動可能な検出子122と、発光素子及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子を有する光学センサ123とを備えている。
【0070】
[温度センサ115]
図2に示されるように、温度センサ115は、タンク80内に設けられている。温度センサ115は、タンク80内の温度を検知する。
【0071】
[ロータリエンコーダ75]
図7に示されるロータリエンコーダ75は、搬送用モータ101(
図7参照)の軸に設けられて搬送用モータ101と共に回転するエンコーダディスクと光学センサとからなる。ロータリエンコーダ75は、生成されたパルス信号に基づいて、搬送用モータ101の回転量を算出する。
【0072】
[コントローラ130及びメモリ140]
以下、
図7が参照されて、コントローラ130及びメモリ140の構成が説明される。コントローラ130は、複合機10の全体動作を制御するものである。コントローラ130は、CPU131及びASIC135を備えている。メモリ140は、ROM132、RAM133、及びEEPROM134を備えている。CPU131、ASIC135、ROM132、RAM133、及びEEPROM134は、内部バス137によって接続されている。
【0073】
ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0074】
ASIC135には、搬送用モータ101、キャリッジ駆動用モータ103、及びキャップ駆動用モータ104が接続されている。ASIC135には、各モータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131は、各モータを回転させるための駆動信号を各モータに対応する駆動回路に出力する。駆動回路は、CPU131から取得した駆動信号に応じた駆動電流を対応するモータへ出力する。これにより、対応するモータが回転する。つまり、コントローラ130は、搬送用モータ101を制御して、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に用紙12を搬送させる。また、コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を制御して、キャリッジ40を移動させる。また、コントローラ130は、キャップ駆動用モータ104を制御して、可動機構71を駆動させて、キャップ70を移動させる。
【0075】
また、ASIC135には、シートセンサ120が接続されている。コントローラ130は、シートセンサ120の配置位置に用紙12が存在するか否かを検知する。
【0076】
また、ASIC135には、温度センサ115が接続されている。コントローラ130は、温度センサ115の出力結果に基づいて、タンク80の環境温度を検知する。コントローラ130は、温度センサ115から受け取った情報から温度変化を算出する。コントローラ130は、算出した値に基づいて駆動機構92を駆動させる。
【0077】
また、ASIC135には、ロータリエンコーダ75の光学センサが接続されている。コントローラ130は、ロータリエンコーダ75の光学センサから受け取った電気信号に基づいて、搬送用モータ101の回転量を算出する。
【0078】
コントローラ130は、シートセンサ120から受け取った電気信号がローレベルからハイレベルに変化してから(つまりシートセンサ120の配置位置に用紙12の先端が到達したことを検知してから)の搬送用モータ101の回転量によって、用紙12の位置を認識する。
【0079】
また、ASIC135には、エンコーダ35が接続されている。コントローラ130は、エンコーダ35から受け取ったパルス信号に基づいて、キャリッジ40の位置や移動の有無を認識する。
【0080】
また、ASIC135には、電気アクチュエータ49が接続されている。コントローラ130は、電気アクチュエータ49内のコイル部107に給電することによって、プランジャ125を駆動させる。
【0081】
[コントローラ130によるバルブユニット91の制御]
上述のように構成された複合機10では、コントローラ130によって、バルブユニット91の制御が実行される。以下、回動片96が回動することにより非連通状態と連通状態とに姿勢変化するバルブユニット91の動作について、
図8~
図10のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、
図8~
図10において、バルブユニット91についてはBUと表し、キャリッジ40についてはCRと表している。
【0082】
図8は、通常の印刷時におけるバルブユニット91の制御を示している。
図8に示されるように、コントローラ130は、ステップS10~S110を実行する。まず、コントローラ130は、操作部17を通じて印刷開始の入力を受け付けたことに応じて、或いは、外部情報機器から印刷データを受信したことに応じて、電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態にする(S10)。このとき、タンク80のインク室81の圧力(気圧)は大気圧である。次に、コントローラ130は、給送用モータ102を駆動して、用紙12を給送トレイ20から搬送路65へ給送する(S20)。給送トレイ20から給送された用紙12は、シートセンサ120により前端が検知される。コントローラ130は、シートセンサ120が用紙12の前端を検知したことに応じて、搬送用モータ101を駆動し、搬送ローラ対59によって用紙12の前端を記録部24の下方に位置させる頭出しを行う(S30)。
【0083】
コントローラ130は、頭出しされた用紙12を、記録部24の直下において間欠して搬送し(S40)、用紙12が停止しているときに、キャリッジ駆動用モータ103を駆動してキャリッジ40を移動しつつヘッド38のノズル39からインクを吐出してパス印字を行う(S50)。用紙12全体への印字が終了するまで(S60:No)、間欠搬送(S40)とパス印字(S50)とを繰り返す。このパス印字によりタンク80においてインクが減少し、インク室81内の圧力(気圧)が大気圧から低下する。用紙12全体への印字が終了すると(S60:Yes)、コントローラ130は、インク室81内の圧力が予め設定した閾値未満であるか否かについて判断する。具体的には、コントローラ130は、用紙12に対して吐出したインク量をカウントして累積し、そのカウント値がメモリ140に格納された閾値に到達したかを判定する。閾値は、ノズル39に形成されるメニスカスが破壊されない程度の値として予め設定されている。
【0084】
インク室81内の圧力が閾値未満でないと判断したとき(S70:No)、コントローラ130は、画像記録を行うべき次ページがあるか否かについて判断を行う(S110)。コントローラ130は、画像記録を行う次ページがあるとき(S110:Yes)、用紙12を給送トレイ20から搬送路65へ給送させる(S20)。一方、インク室81内の圧力が閾値未満であると判断したとき(S70:Yes)、コントローラ130は、電気アクチュエータ49への電力供給を停止して、バルブユニット91を連通状態とする(S80)。バルブユニット91が連通状態になると、インク室81内の圧力が大気圧になる。その後、コントローラ130は、電気アクチュエータ49を駆動して、バルブユニット91を非連通状態とする(S90)。バルブユニット91を非連通状態にした後、コントローラ130は、累積していたカウント値をリセットする(S100)。一方、画像記録を行う次ページがないとき(S110:No)、コントローラ130は、キャリッジ40をメンテナンス位置(媒体通過領域36より右方)に位置させて、ヘッド38をキャップ70で覆って、印刷動作終了する。
【0085】
次に、複合機10の電源ボタンが押下されて省電力待機状態(以下、待機状態とも称する)へ切り替えられた後におけるバルブユニット91の動作について説明する。
【0086】
複合機10は、例えば、当該複合機10に電力を給電する給電状態又は電力を給電しない非給電状態に切り替える電源スイッチを有している。更に、複合機10は、当該複合機10に電力が給電されている状態において、複合機10を待機状態又はスタンバイ状態に切り替える所謂ソフトスイッチによる電源ボタンを有している。複合機10に電力が供給されていない状態においてユーザによって電源スイッチが操作されたとき、コントローラ130は、複合機10への給電を開始するとともに複合機10をスタンバイ状態にする。コントローラ130は、複合機10がスタンバイ状態にあるとき、ユーザの入力に応じて各駆動源を駆動する。コントローラ130は、複合機10がスタンバイ状態にあるときにおいて、ユーザによる電源ボタンの押下操作が行われたことに応じて、以下に示すように、複合機10を待機状態に切り替える。コントローラ130は、待機状態にあるときにおいて、各駆動源への給電を停止し、ユーザからの入力を待つ。電源スイッチが入れられて複合機10に電力が供給されると、コントローラ130は、複合機10をスタンバイ状態にして各駆動源を稼働可能な状態にする。
【0087】
図9は、ソフトスイッチにより複合機10の電源がオフにされ待機状態にされた場合のバルブユニット91の動作について示しており、コントローラ130は、ステップS210~S270を実行する。
【0088】
まず、コントローラ130は、操作部17において電源ボタンがオフされたか否かを判断する(S210)。電源ボタンのオフ操作を受けて(S210:Yes)、コントローラ130は、エンコーダ35の出力に基づいてキャリッジ40がメンテナンス位置にあるか否かを判断する(S220)。コントローラ130は、電源ボタンのオフ操作がないとき(S210:No)、電源ボタンのオフ操作があるまで待機する。
【0089】
コントローラ130は、キャリッジ40がメンテナンス位置にない判断をしたことに応じて(S220:No)、キャリッジ駆動用モータ103を駆動してキャリッジ40をメンテナンス位置に移動させる(S230)。その後、コントローラ130は、キャップ70を被覆位置へ移動させ(S250)、電気アクチュエータ49への電力供給を停止してバルブユニット91を連通状態にする(S260)。一方、コントローラ130は、キャリッジ40がメンテナンス位置にあると判断したことに応じて(S220:Yes)、キャップセンサ147の信号に基づいてキャップ70が被覆位置であるか否かを判断する(S240)。コントローラ130は、キャップ70が被覆位置でないと判断したとき(S240:No)、キャップ駆動用モータ104を駆動して、キャップ70を被覆位置へ移動する(S250)。その後、コントローラ130は、キャップ70が被覆位置であることを条件として(S240:Yes)、電気アクチュエータ49への給電を停止してバルブユニット91を連通状態にする(S260)。
【0090】
コントローラ130は、バルブユニット91を連通状態にさせた後、複合機10を待機状態として(S270)電源オフ動作を終了する。ここで待機状態とは、操作部17への操作を受け付けたり、外部情報機器からデータを受信したりするまでは、操作部17のディスプレイやLEDなどを発光したりせずに消費電力を制限した状態をいう。
【0091】
次に、複合機10が待機状態であるときの動作が説明される。
【0092】
図10では、待機状態の際にバルブユニット91を非連通状態から連通状態にされた後に、例えば温度上昇によるインクの蒸発を抑制するために第1条件に基づいてバルブユニット91を連通状態から非連通状態にする動作(ステップS310からS350)が示される。また、第1条件に基づいてバルブユニット91を非連通状態から連通状態にした後に、例えば温度上昇によるインクの漏れを抑制するために第2条件に基づいてバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする動作(ステップS360からS410)が示される。
【0093】
図10に示されるように、コントローラ130は、ステップS310~S420を実行するが、まず、コントローラ130がバルブユニット91を連通状態から非連通状態にするステップS310からS350の制御が説明される。
【0094】
コントローラ130は、バルブユニット91が連通状態である複合機10が待機状態であるか否かを判断する(S310)。コントローラ130は、複合機10が待機状態であると判断したことに応じて(S310:Yes)、タイマーをセットして複合機10が待機状態になってからの経過時間のカウントを開始する(S320)。タイマーは、例えばコントローラ130が有する内部クロックに基づいて駆動する。一方、コントローラ130は、待機状態でないと判断したとき(S310:No)、複合機10が待機状態になるまで継続判断する。
【0095】
コントローラ130は、タイマーをセットした後の現在の時間が、メモリ140に予め設定された所定時間であるか判断する(S330)。コントローラ130は、現時点において、所定時間が経過したと判断すると(S330:Yes)、電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を連通状態から非連通状態にする。
【0096】
コントローラ130は、バルブユニット91を非連通状態にした後、タイマーリセットする(S360)。また、コントローラ130は、タイマーをリセットしたときの温度情報を温度センサ115から取得してメモリ140に格納する。コントローラ130は、ステップS330において、所定時間が経過していないと判断したことに応じて(S330:No)、複合機10の操作部17において電源ボタンにおいてオン操作を受け付けたか判断する(S340)。コントローラ130は、複合機10の電源ボタンにおいてオン操作を受け付けていないと判断すると(S340:No)、所定時間が経過したか否かを継続して判断する(S330)。一方、コントローラ130は、複合機10の電源ボタンにおいてオン操作を受け付けたと判断したことに応じて(S340:Yes)、複合機10の待機状態を終了する(S420)。
【0097】
次に、コントローラ130がバルブユニット91を非連通状態から再び連通状態にするステップS360からS410の制御について説明する。
【0098】
コントローラ130は、バルブユニット91を非連通状態にし(S350)、タイマーリセットした(S360)後、予め設定された所定時間が経過したか否かを判断する(S370)。コントローラ130は、ステップS370において所定時間が経過したと判断したことに応じて(S370:Yes)、インク室81内の温度が予め設定された温度に対してΔT以上アップしたか否かを判断する(S390)。具体的には、温度センサ115から温度情報を取得して、メモリ140に格納された温度情報との温度差を算出する。そして、算出した温度差がΔT以上であるかを判定する。コントローラ130は、インク室81内の温度がΔT以上アップしたと判断したことに応じて(S390:Yes)、電気アクチュエータ49への電力供給を停止してバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする(S400)。
【0099】
コントローラ130は、バルブユニット91を連通状態にした後、タイマーリセットして(S410)、ステップS330へ戻る。一方、コントローラ130は、温度差がΔT未満であると判断したことに応じて(S390:No)、タイマーをリセットし(S360)、再び所定時間が経過したか否かについて判断を行う(S370)。コントローラ130は、ステップS370においては、所定時間経過していないと判断したことに応じて(S370:No)、複合機10の操作部17において電源ボタンのオン操作を受け付けたか判断する(S380)。コントローラ130は、電源ボタンのオン操作を受け付けていないと判断したことに応じて(S380:No)、所定時間が経過したか否かについて継続判断する(S370)。一方、コントローラ130は、電源ボタンのオン操作を受け付けたと判断したことに応じて(S380:Yes)、複合機10の待機状態を終了する(S420)。
【0100】
次に、複合機10のプラグがコンセントから抜去されたときの動作について説明する。
【0101】
図6(a)に示されるようにコイル部107に給電されていない状態においては、プランジャ125は、コイルバネ51により左方に付勢される。このとき、回動片96が大気開放口88から離間し、バルブユニット91は連通状態となる。連通状態において複合機10の電源プラグがコンセントから抜去されると、バルブユニット91は、プランジャ125がコイルバネ51によって左方に付勢された状態のままである。したがって、バルブユニット91は、連通状態のままである。
【0102】
図6(b)に示されるようにコイル部107に給電された状態においては、プランジャ125は、コイルバネ51の付勢に抗して右方に移動する。このとき、回動片96が大気開放口88を閉塞し、バルブユニット91は非連通状態となる。非連通状態において、複合機10の電源プラグがコンセントから抜去されると、コイル部107への給電が途絶え、バルブユニット91は、プランジャ125がコイルバネ51によって左方に付勢されて、非連通状態から連通状態となる。
【0103】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態によれば、複合機10の電源がオフであるときにバルブユニット91が連通状態となるので、気温が上昇する等してタンク80内の圧力が上昇するといった外部環境の変化があっても、ノズル39に形成されるメニスカスが破壊されヘッド38からインクが漏れ出すことが低減される。
【0104】
また、第1実施形態によれば、複合機10の電源がオフとなり待機状態となってから所定時間が経過すると、バルブユニット91が非連通状態になるので、タンク80から大気開放口88を通じてインクが蒸発したり、複合機10の移動により大気開放口88からインクが流出したりすることが低減される。
【0105】
また、第1実施形態によれば、複合機10の待機状態において、バルブユニット91が非連通状態となった後に、気温が上昇するなどしてタンク80内の圧力が上昇するといった外部環境の変化があっても、バルブユニット91が連通状態とされることで、ノズル39に形成されるメニスカスが破壊されヘッド38からインクが漏れ出すことが低減される。
【0106】
また、第1実施形態によれば、キャリッジ40がメンテナンス位置に移動した際、キャップ70が被覆位置に移動してノズル39を被覆することにより、ノズル39からインクが蒸発することが低減される。複合機10の電源がオフであるとき、キャップバルブユニット67が連通状態であるので、気温が上昇するなどしてキャップ内部空間76内の圧力が上昇するといった外部環境の変化があっても、キャップ内部空間76の空気がノズル39へ進入してメニスカスが壊れることが低減される。
【0107】
[第1実施形態の変形例1]
第1実施形態では、記録部24に、1つのタンク80を備える場合を例に挙げて説明したが、タンク80は、例えば、
図11に示されるように、第1貯留室80A及び第2貯留室81Aで構成されるものであってもよい。
【0108】
第1貯留室80Aは、内部に第1インク室82Aを有している。また、第2貯留室81Aは、第2インク室83Aを有している。第1インク室82Aは、インク流通路163によって、第2インク室83Aとインクが流通可能に接続されている。また、第2インク室83Aは、ヘッド38とインクが流通可能に接続されている。
【0109】
インク流通路163は、内部に空間を有する管状の部材である。インク流通路163の内部の空間は、第1貯留室80A及び第2貯留室81Aに設けられた貫通孔を通じて第1インク室82Aと第2インク室83Aとを連通している。
【0110】
第1貯留室80Aの大気開放口88には、大気連通装置48が設けられており、バルブユニット91は、駆動機構92によって駆動されて大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。
【0111】
[第1実施形態の変形例2]
第1実施形態では、タンク80においてインク室81の気体層78と外部とを連通させる大気開放口88が設けられている場合を例に挙げて説明したが、タンクの気体層と外部とを連通するものとして、大気連通路90Bが設けられていてもよい。大気連通路90Bは、大気開放口88までの通路として構成される。なお、大気連通路90Bは、大気開放口88から外方へ延びる通路として構成されてもよい。
【0112】
本変形例では、大気連通路90Bは、大気開放口88までの通路として構成されており、
図12(a)に示されるように、ラビリンス構造187を有する。
【0113】
大気連通路90Bは、インク室(不図示)と外部とを連通するための連通路である。換言すると、大気連通路90Bは、インク室を大気開放するための連通路である。
【0114】
大気連通路90Bは、上壁82上において溝状に形成されており、上方がフィルム189によって閉塞されている。大気連通路90Bの一端は、上壁82に形成された開口190を介してインク室に連通している。大気連通路90Bの他端は、上壁82に形成された大気開放口88を介して外部に連通している。本変形例では、大気連通路90Bは、前後方向8のUターンを繰り返しつつ左右方向9に沿って延びるラビリンス構造187を有している。
【0115】
[第1実施形態の変形例3]
第1実施形態において、大気開放口88は、連通状態において外部に開放されているが、当該大気開放口88は半透膜188を有するものであってもよい。
【0116】
例えば、
図12(b)に示されるように、外部に連通している大気連通路90Bの他端側には、当該大気開放口88を閉塞するように半透膜188が設けられている。
【0117】
半透膜188は、インクの通過を遮断し且つ気体の通過を許容する微小な孔を有する多孔質膜である。例えば、半透膜188は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。これにより、インク室に貯留されたインクは、半透膜188によって阻まれて、大気連通路90B及び大気開放口88を通じてタンクの外部へ流出できない。一方、空気は、インク室とタンクの外部との間を自由に移動可能である。
【0118】
[第2実施形態]
第2実施形態では、大気連通装置48に代えて、直列に配置された2つの電気アクチュエータを含んで構成される大気連通装置48Cがタンク80に設けられた構成が説明される。
【0119】
図13(a)は、大気連通装置48Cにおいて、第1電気アクチュエータ49Cに給電されているが第2電気アクチュエータ50Cに給電されていない状態のバルブユニット91の状態を示している。また、
図13(b)は、大気連通装置48Cにおいて、第1電気アクチュエータ49Cに給電された後に、第1電気アクチュエータ49C及び第2電気アクチュエータ50Cの両方が給電停止された状態のバルブユニット91の状態を示している。
【0120】
本実施形態における大気連通装置48Cは、バルブユニット91と、駆動機構92Cとを備える。
【0121】
バルブユニット91は、第1実施形態と同じ構成であるためバルブユニット91の各構成については説明を省略する。第2実施形態では、回動支持台98は、大気開放口88の右方に位置する。回動軸97周りに回動片96が回動することによって、第1回動片99が、大気開放口88を閉塞したり、開放したりする。
【0122】
駆動機構92Cは、第1電気アクチュエータ49Cと、第2電気アクチュエータ50Cと、第1コイルバネ51Cと、第2コイルバネ52Cとを備えている。駆動機構92Cは、コントローラ130から給電されることで動作し、バルブユニット91を駆動する。駆動機構92Cは、タンク80の上壁82に設けられている。第1電気アクチュエータ49Cは、例えば、上壁82の右方に設けられた第1バネ座105Cに支持され、第2電気アクチュエータ50Cが、上壁82の左方に設けられた第2バネ座106Cに支持されている。第1電気アクチュエータ49Cは、第1コイル部107Cと、第1プランジャ125Cとを備えている。第2電気アクチュエータ50Cは、第2コイル部108Cと、第2プランジャ126Cとを備えている。第1電気アクチュエータ49Cと第2電気アクチュエータ50Cは、先端同士が互いに対向するように配置されている。
【0123】
第1プランジャ125Cの先端と、第2プランジャ126Cの先端とは、当接部127Cにそれぞれ連結されている。当接部127Cの下端は、回動軸97の上端付近にある。当接部127Cは、回動片96の上面に当接している。当接部127Cは、回動片96に対して左右方向9に移動可能である
【0124】
第1プランジャ125C及び第2プランジャ126Cは、第1コイル部107C及び第2コイル部108Cに対して左右方向9に沿って移動可能である。第1プランジャ125Cは、通電により第1コイル部107Cに誘導磁界が発生すると、第1コイル部107Cに対して右方に移動する。第2プランジャ126Cは、通電により第2コイル部108Cに誘導磁界が発生すると、第2コイル部108Cに対して左方に移動する。
【0125】
図13に示されるように、タンク80の上壁82であって大気開放口88の左方付近においては、第1バネ座105Cが上方に突出している。タンク80の上壁82の右端付近において、第2バネ座106Cが上方に突出している。第2バネ座106Cは、大気開放口88よりも右方に位置する。
【0126】
第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cは、第1バネ座105C又は第2バネ座106Cと当接部127Cとにそれぞれ支持されており、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cは、それぞれが左右方向9に沿って延びている。第1コイルバネ51Cは、当接部127Cを右方に付勢する。第2コイルバネ52Cは、当接部127Cを左方に付勢する。第1コイルバネ51Cの付勢力と第2コイルバネ52Cの付勢力とは同等である。
【0127】
第1電気アクチュエータ49Cは、上壁82上の第1バネ座105Cと大気開放口88との間に設けられた第1支持台94Cによって支持されている。第2電気アクチュエータ50Cは、上壁82上の第2バネ座106Cと大気開放口88との間に設けられた第2支持台95Cによって支持されている。
【0128】
第1コイル部107C及び第2コイル部108Cに給電されていない状態において、当接部127Cは、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cにそれぞれ付勢されて、
図13(b)に示すように、回動軸97近傍に位置する。
【0129】
第1コイル部107Cに給電され、第2コイル部108Cには給電されない状態では、
図13(a)に示されるように、当接部127Cが、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cの付勢力に抗して右方へ移動した状態となる。この状態において、当接部127Cは、回動軸97よりも右方に位置して、第2回動片100と当接する。これにより、第1回動片99が大気開放口88から離間する。すなわち、大気開放口88が連通状態となる。
【0130】
また、第1コイル部107Cには給電されておらず第2コイル部108Cに給電されている状態では、
図13(a)において破線で示されるように、当接部127Cが、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cの付勢力に抗して左方へ移動した状態となる。この状態において、当接部127Cは、回動軸97よりも左方に位置して、第1回動片99と当接する。これにより、第1回動片99が大気開放口88を閉塞する。すなわち、大気開放口88が非連通状態となる。
【0131】
第1電気アクチュエータ49Cの第1コイル部107Cに給電された後、第1電気アクチュエータ49Cの第1コイル部107Cへの給電が停止されたときは、
図13(b)に示されるように、当接部127Cは、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cによる付勢力によって第2回動片100上を左方に移動し、回動軸97の上方に位置する。このとき、バルブユニット91は、姿勢変化することなく保持され、大気開放口88は連通状態のままで保持される。第2電気アクチュエータ50Cの第2コイル部108Cに給電された後、第2電気アクチュエータ50Cの第2コイル部108Cへの給電が停止されると、当接部127Cは、第1コイルバネ51C及び第2コイルバネ52Cによる付勢力によって第1回動片99C上を右方に移動し、回動軸97の上方に位置する。このとき、バルブユニット91は、姿勢変化することなく保持され、大気開放口88は非連通状態のままに保持される。
【0132】
[第2実施形態の変形例1]
第2実施形態の駆動機構92は、当接部127Cを左右方向9に移動させてバルブユニット91を連通状態又は非連通状態に姿勢変化させていた。しかし、駆動機構92は、例えば、
図14に示すような、偏心カムを回動させてバルブユニット91Dを連通状態又は非連通状態に姿勢変化させるものあってもよい。
【0133】
図14に示されるように、大気連通装置48Dは、バルブユニット91Dと、回動機92Dとを備える。バルブユニット91Dは、回動片96Dと、回動軸97Dとを備える。
【0134】
回動片96Dは、中央付近で折れ曲がった形状であり、前後方向8から視てV字形状である。回動片96Dは、大気開放口88の右方に設けられている。回動片96Dにおいて折れ曲がった箇所から左方に延びる部分が第1回動片99Dと称され、右方に延びる部分が第2回動片100Dと称される。第1回動片99Dと第2回動片100Dとの境界から前後方向8に沿って回動軸97Dが回動片96Dから突出している。
【0135】
第1回動片99Dは、先端側の上面に、第1上側面116を有している。第1上側面116は、第1回動片99Dが水平な状態であるときに水平となる。また、第1回動片99Dは、基端側の上面に、第1傾斜面117を有する。第1傾斜面117は、第1回動片99Dが水平な状態であるときに傾斜した状態となる。
【0136】
第2回動片100Dは、先端側の上面に、第2上側面118を有している。第2上側面118は、第2回動片100Dが水平な状態であるときに水平となる。第2回動片100Dは、基端側の上面に、第2傾斜面119を有している。第2傾斜面119は、第2回動片100Dが水平な状態であるときに傾斜した状態となる。
【0137】
回動機92Dは、支持壁156と、カム軸157と、規制軸158と、偏心カム159とを備える。回動機92Dは、コントローラ130から給電されることで回動し、バルブユニット91Dを駆動する。
【0138】
支持壁156は、上壁82に設けられている。支持壁156は、例えば、平板状に形成されており、大気開放口88の近傍に設置されている。支持壁156には、前方向に延びるカム軸157が設けられている。また、支持壁156には、カム軸157の左右両側に、偏心カム159の回動を規制するための規制軸158がそれぞれ設けられている。
【0139】
偏心カム159は、カム軸157によって回動自在に支持されている。偏心カム159には、バルブユニット91Dの回動片96Dに向かって延びる当接部127Dが形成されている。偏心カム159には、規制軸158に当接する規制部161が形成されている。規制部161は、偏心カム159の回動する範囲を制限する。
【0140】
以下、回動機92Dの電源のオンオフによる偏心カム159の動作について説明する。
【0141】
図14(a)及び(b)に示されるように、回動機92Dに給電されると、偏心カム159が回動し、当接部127Dが回動軸97の上方位置から左方に回動する。回動した当接部127Dは、第1回動片99Dに駆動力を伝達して回動片96Dを回動させる。このとき、偏心カム159は、
図14(b)に示されるように、左方に配置された規制軸158に規制部161が当接することで移動が規制される。その結果、当接部127Dは、第1上側面116Dと第1傾斜面117の境界部分付近で停止する。そして、バルブユニット91Dは、連通状態から非連通状態に姿勢変化する。
【0142】
回動機92Dへの給電が停止されると、偏心カム159は、
図14(c)に示されるように、右方に回動し、当接部127Dが回動軸97の上方位置で停止する。このとき、バルブユニット91Dは、姿勢変化することなく保持され、大気開放口88は非連通状態のままとなる。
【0143】
回動機92Dに上述の電流の向きとは逆向きの電流が供給されると、偏心カム159は、
図14(c)及び(d)に示されるように、右方に回動し、当接部127Dが回動軸97の上方位置の右方に回動する。回動した当接部127Dは、第2回動片100Dに駆動力を伝達して回動片96Dを回動させる。このとき、偏心カム159は、
図14(d)に示されるように、右方に配置された規制軸158に規制部161が当接することで移動が規制される。その結果、当接部127Dは、第2上側面118と第2傾斜面119の境界部分付近で停止する。そして、バルブユニット91Dが、非連通状態から連通状態に姿勢変化する。
【0144】
[第2実施形態の変形例2]
第2実施形態では、
図13に示されるような、バルブユニット91と、第1電気アクチュエータ49C及び第2電気アクチュエータ50Cを備えた駆動機構92Cとで構成される大気連通装置48Cを例に挙げて説明したが、大気連通装置48は、他の装置が使用されてもよい。例えば、
図15に示すような機構を有する装置が使用されてもよい。
【0145】
本変形例では、大気連通装置48Eが、インクを貯留するタンク80Eの上壁82Eに設けられている。大気連通装置48Eは、上壁82Eにおいてタンク80Eのインク室81Eを外部に連通させる大気開放口88上に設けられている。
【0146】
大気連通装置48Eは、駆動機構92Eと、バルブユニット91Eとを備える。
【0147】
駆動機構92Eは、バルブユニット91Eを上下方向7に駆動する。駆動機構92Eは、プランジャ125Eと、電気アクチュエータ(不図示)とを備えている。駆動機構92Eは、給電されることで上下方向7に動作し、バルブユニット91Eを駆動する。駆動機構92Eは、タンク80Eの上壁82Eに設けられている。
【0148】
バルブユニット91Eは、パッキン165と、ベース部166と、スライド部167と、一対の弾性部168,168と、規制ピン169とを備える。
【0149】
パッキン165は、バルブユニット91Eが非連通状態のときに隙間から空気が漏れるのを防止するための部材である。パッキン165は、下方がベース部166に当接している。パッキン165は、後述の蓋部173に押圧されることで弾性変形する。
【0150】
ベース部166は、中央部に貫通穴170を有し略円盤状に形成されている。ベース部166は下面が平坦に形成されている。貫通穴170は、ベース部166が設置された状態で大気開放口88に連続する。つまり、ベース部166がタンク80Eに設置された状態において、大気開放口88は、インク室81Eの気体層78Eを外部に連通させる。また、ベース部166の上面には、パッキン165をベース部166上に保持するため突起171が形成されている。突起171は、パッキン165の内周側と外周側において上方に突出するように形成されている。
【0151】
スライド部167は、ベース部166に一対の弾性部168,168を介して連結されており、駆動機構92Eによって駆動力が付与されることで上下方向7に移動する。また、スライド部167は、例えばタンク80Eに固定された固定部材172に対してスライド移動可能に構成されている。スライド部167は、蓋部173と、本体部174と、柱部175とを備える。
【0152】
蓋部173は、大気開放口88を閉塞したり解放したりして大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。蓋部173は、パッキン165を挟んだ状態でベース部166に近接する。蓋部173は、例えば、円盤状に形成されている。
【0153】
柱部175は、上端が本体部174に固定されており、本体部174から下方に延びている。柱部175は、蓋部173を下端において支持する。
【0154】
本体部174は、一対の弾性部168,168によって支持されている。本体部174は、固定部材172に対して上下方向7に相対移動可能である。本体部174は、
図15に示されるように、上下方向の移動範囲を規制する規制ピン169を介して固定部材172に連結されている。本体部174の前面には、溝部176が形成されている。
【0155】
規制ピン169は、一端側が固定部材172にスライド可能に連結されている。規制ピン169は、他端側が固定部材172に回動可能に支持されている。
【0156】
溝部176は、
図15に示されるように、本体部174の下方から右斜め上方に延びる第1溝177と、第1溝177の右上端部から上方に延びる第2溝178と、第2溝178の上端部から左斜め下方に延びる第3溝179と、第3溝179の左下端から左斜め上方に延びる第4溝180と、第4溝180の左上端から下方に延びる第5溝181と、第5溝181の下端から右斜め下方に延びる第6溝182とを有する。
【0157】
第1溝177の始点は第6溝182の終点と一致している。第1溝177と第3溝179とは平行であり溝の長さが同じである。第2溝178と第5溝181とは平行であり溝の長さが同じである。第4溝180と第6溝182とは平行であり溝の長さが同じである。第2溝178は、第1溝177よりも深く形成されており、規制ピン169が第1溝177から第2溝178に移動した後、第2溝178から第1溝177に戻らないように構成されている。同様に、第3溝179は第2溝178よりも深く形成されており、第4溝180は第3溝179よりも深く形成されており、第5溝181は第4溝180よりも深く形成されている。そして、第1溝177は、第6溝182よりも深くなるように形成されている。すなわち、規制ピン169は、第1溝177、第2溝178、第3溝179、第4溝180、第5溝181、第6溝182の順番に移動する。
【0158】
以下、規制ピン169に対するスライド部167の動作について説明する。
【0159】
図15(a)に示されるように、規制ピン169は、スライド部167が最も上方に位置するとき、溝部176の最も下方である第1溝177の始点に位置する。このとき、蓋部173は、ベース部166から離間した状態であり、大気開放口88は、連通状態である。次に、電気アクチュエータに給電されると、規制ピン169は、スライド部167がプランジャ125Eによって下方に押され、第1溝177の終点に移動する。さらに規制ピン169は、スライド部167が下方に押されるため、
図15(b)に示されるように、第2溝178の始点から第2溝178の終点に移動する。このとき、蓋部173は、パッキン165を弾性変形させた状態でベース部166に近接し、大気開放口88が非連通状態となる。
【0160】
次に、電気アクチュエータへの給電が停止されると、
図15(c)に示されるように、プランジャ125Eは上方に戻り、スライド部167は一対の弾性部168,168によって上方に付勢される。これにより、規制ピン169は、第3溝179の始点から第3溝179の終点に移動して停止する。このとき、蓋部173は、ベース部166から離間して上方に移動するが復元するパッキン165に当接したままの状態となる。このため、大気開放口88は、非連通状態で保持される。
【0161】
この後、再び電気アクチュエータに給電されると、規制ピン169は、第4溝180の始点から第4溝180の終点まで移動する。次に、電気アクチュエータへの給電が停止されると、規制ピン169は、第5溝181の始点から第5溝181の終点を経て第6溝182の終点に移動して停止する。このとき、蓋部173は、
図15(a)に示される状態となる。つまり、蓋部173は、ベース部166から離間した状態となり、大気開放口88は、連通状態となる。
【0162】
[第3実施形態]
第3実施形態では、バルブユニット91Fがキャリッジ40の移動に連動して状態変化し非連通状態又は連通状態になるように構成される。
【0163】
例えば、
図16に示されるように、大気連通装置48に代え、大気開放口88を非連通状態又は連通状態にさせるための機構として移動機構48Fを備えていてもよい。移動機構48Fは、キャリッジ40と、バルブユニット91Fと、当接部127Fとを備える。なお、実施形態では、大気開放口88がタンク80の側壁87の上方に設けられており、大気開放口88は、タンク80のインク室81と外部とを連通させる。
【0164】
キャリッジ40は、駆動源となるキャリッジ駆動用モータ103(
図7参照)によって駆動される。キャリッジ40は、ヘッド38を搭載して移動する。キャリッジ40は、コントローラ130(
図7参照)により給電されることで動作する。
【0165】
バルブユニット91Fは、バルブ96Fと、コイルバネ部材51Fとを備える。
【0166】
バルブ96Fは、大気開放口88に対して当接又は離間することで大気開放口88を非連通状態又は連通状態にする部材である。
【0167】
コイルバネ部材51Fは、バルブ96Fを大気開放口88に当接させるように右方に付勢するための部材である。コイルバネ部材51Fは、一端側がバルブ96Fに連結されており、他端側がタンク80内に形成されている側面86Fに連結されている。
【0168】
当接部127Fは、上下方向7に拡がるフレーム47Fから突出する部材である。当接部127Fは、大気開放口88と上下方向7及び左右方向9に同位置である。また、当接部127Fの径は、大気開放口88の径より小さい。
【0169】
以下、移動機構48Fの動作について説明する。
【0170】
キャリッジ40がメンテナンス位置へ移動する過程において、当接部127Fは、右方から大気開放口88を貫通して、バルブ96Fを左方へ押す。これにより、バルブ96Fがコイルバネ51Fの付勢力に抗して左方に移動するため、バルブユニット91Fは非連通状態から連通状態となる。
【0171】
一方、キャリッジ40がメンテナンス位置から左方へ移動すると、バルブ96Fが当接部127Fから離間するため、バルブユニット91Fは、コイルバネ部材51Fにより右方に付勢されて連通状態から非連通状態となる。
【0172】
つまり、コントローラ130は、複合機10の電源をオンからオフに移行するときに、キャリッジ駆動用モータ103を駆動して、バルブユニット91Fを非連通状態から連通状態にし、複合機10の電源をオフからオンに移行するときに、バルブユニット91Fを連通状態から非連通状態にする。
【符号の説明】
【0173】
9・・・・・・・・・・・・・・・・左右方向(走査方向)
10・・・・・・・・・・・・・・・複合機(液体吐出装置)
38・・・・・・・・・・・・・・・ヘッド
39・・・・・・・・・・・・・・・ノズル
40・・・・・・・・・・・・・・・キャリッジ
49・・・・・・・・・・・・・・・電気アクチュエータ
49C・・・・・・・・・・・・・・第1電気アクチュエータ
50C・・・・・・・・・・・・・・第2電気アクチュエータ
51・・・・・・・・・・・・・・・コイルバネ(付勢部材)
67・・・・・・・・・・・・・・・キャップバルブユニット
70・・・・・・・・・・・・・・・キャップ
72・・・・・・・・・・・・・・・貫通孔(キャップ開放口)
74・・・・・・・・・・・・・・・キャップ連通路
76・・・・・・・・・・・・・・・キャップ内部空間(キャップの内部空間)
78・・・・・・・・・・・・・・・気体層
80・・・・・・・・・・・・・・・タンク(貯留部)
80A・・・・・・・・・・・・・・第1貯留室
81A・・・・・・・・・・・・・・第2貯留室
88・・・・・・・・・・・・・・・大気開放口
90B・・・・・・・・・・・・・・大気連通路
91,91D,91E,91F・・・バルブユニット
92,92C,92E・・・・・・・駆動機構
103・・・・・・・・・・・・・・キャリッジ駆動用モータ(駆動源)
130・・・・・・・・・・・・・・コントローラ
159・・・・・・・・・・・・・・偏心カム
187・・・・・・・・・・・・・・ラビリンス構造
188・・・・・・・・・・・・・・半透膜