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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152171
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】燃料合成装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/02 20060101AFI20221004BHJP
   B01J 23/80 20060101ALN20221004BHJP
   B01J 23/63 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
C10L1/02
B01J23/80 Z
B01J23/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054844
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】米田 英昭
【テーマコード(参考)】
4G169
4H013
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BB02B
4G169BB04B
4G169BC31B
4G169BC35B
4G169BC43B
4G169BC71B
4G169BC72B
4G169BC75B
4G169CB02
4H013BA01
4H013BA02
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で触媒反応器内での燃料生成率を向上させた燃料合成装置を提供する。
【解決手段】本発明は、水素及び二酸化炭素より燃料を合成する燃料合成装置1である。燃料合成装置1は、水素を供給する水素タンク10と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素タンク20と、水素タンク10から供給された前記水素と前記二酸化炭素供給部から供給された二酸化炭素とを化学反応させる触媒31を具備し燃料を生成するリアクタ30と、を有する。リアクタ30は、リアクタ30に対して電場を印加する電場印加部35を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び二酸化炭素より燃料を合成する燃料合成装置であって、
前記水素を供給する水素供給部と、
前記二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、
前記水素供給部から供給された前記水素と前記二酸化炭素供給部から供給された前記二酸化炭素とを化学反応させる触媒を具備し、燃料を生成する触媒反応器と、を有し、
前記触媒反応器は、前記触媒反応器に対して電場を印加する電場印加部を有することを特徴とする燃料合成装置。
【請求項2】
前記触媒反応器から排出された流体の気液を分離する気液分離部と、
前記気液分離部にて分離された気体を前記触媒反応器の上流側に導く還流通路と、を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料合成装置。
【請求項3】
前記触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、
前記電場印加部により印加する前記電場の強さを制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度に応じて前記電場の強さを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料合成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度が所定範囲内に収まるように前記電場印加部が印加する前記電場の強さを制御することを特徴とする請求項3に記載の燃料合成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度が所定値以上となった場合に、前記電場印加部による電場の印加を停止することを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の燃料合成装置。
【請求項6】
前記還流通路を通過する流体中の水の濃度を検出する水濃度検出部と、
前記水素供給部から供給される前記水素の量を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記水濃度検出部により検出される濃度に応じて、前記水素供給部から供給される前記水素の量を制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料合成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記水濃度検出部により検出される濃度が多くなるにつれて、前記水素供給部から供給される水素の量を少なくなるように制御することを特徴とする請求項6に記載の燃料合成装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び二酸化炭素より燃料を合成する燃料合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素と二酸化炭素を混合し、触媒を有する反応器(触媒反応器)を通過させることで、燃料を合成する技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、内燃機関より排出された排気中の二酸化炭素(CO)をいったん吸着した後、当該二酸化炭素を脱離させる。脱離された二酸化炭素は、別途供給された水素と混合されて、圧縮機で昇圧された後、触媒を有する反応器に入れられる。反応器を通過した流体は、気液分離により、燃料が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-164424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、実際には、反応器を通過した流体は、すべてが燃料になるわけではない。反応器を通過した流体のうち、気液分離の過程で気相中に残る水(HO)やメタノール(CHOH)は、再び反応路の上流側に還流される。還流される流体が所定の量になると、反応器内でそれ以上反応が進まなくなる反応平衡という現象が起こる。このとき、反応平衡が起こった場合の燃料生成率が低く、燃料を生成する上で効率が悪いという問題があった。この場合、反応器内における燃料生成率を上げるために、反応器の温度を下げる手段を付帯したり、気液分離の性能を上げたりする必要があったが、このような構成を導入すると大型化の問題やコストがかかるという問題につながる。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、シンプルな構成で触媒反応器内での燃料生成率を向上させた燃料合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に係る燃料合成装置(1)は、水素(H)及び二酸化炭素(CO)より燃料を合成する燃料合成装置(1)であって、前記水素を供給する水素供給部(水素タンク10)と、前記二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部(二酸化炭素タンク20)と、前記水素供給部から供給された前記水素と前記二酸化炭素供給部から供給された二酸化炭素とを化学反応させる触媒(31)を具備し、燃料を生成する触媒反応器(リアクタ30)と、を有し、前記触媒反応器は、前記触媒反応器に対して電場を印加する電場印加部(35)を有することを特徴とする。
【0007】
このように、触媒反応器が電場印加部を有する構成とすると、触媒反応器における触媒を用いた化学反応が促進され、燃料生成率を向上させることができる。また、触媒反応器に電場印加部を付帯させるだけの構成であるので、シンプルな構成となる。よって、シンプルな構成で触媒反応器内での燃料生成率を向上させた燃料合成装置を提供することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の燃料合成装置であって、前記触媒反応器から排出された流体の気液を分離する気液分離部(凝縮器40)と、前記気液分離部にて分離された気体を前記触媒反応器の上流側に導く還流通路(50)と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように、気液分離部にて分離された気体を還流する還流通路を有する構成であると、気液分離部で分離され、気相中に残留したHOが還流通路を介して触媒反応器に再び供給される。HOは、Hを供給する素となるため、水素供給部から触媒反応器に供給すべき水素の量を減らすことができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の燃料合成装置であって、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出部(32)と、前記電場印加部により印加する前記電場の強さを制御する制御手段(ECU60)と、を有し、前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度(触媒温度Tc)に応じて前記電場の強さを制御することを特徴とする。
【0011】
このように、触媒温度検出部により検出される温度に応じて電場印加部が印加する電場の強さを制御することで、触媒を活性化させるか否かを調整し、触媒の温度を調整することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の燃料合成装置であって、前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度が所定範囲内に収まるように前記電場印加部が印加する前記電場の強さを制御することを特徴とする。
【0013】
このように、触媒温度検出部により検出される温度に応じて電場印加部が印加する電場の強さを制御することで、触媒の温度を燃料生成率が高くなる所定範囲内の温度に調整することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項請求項3又は4に記載の燃料合成装置であって、前記制御手段は、前記触媒温度検出部により検出される温度が所定値以上となった場合に、前記電場印加部による電場の印加を停止することを特徴とする。
【0015】
このように、制御手段が、触媒温度検出部により検出される温度が所定値以上となった場合に、電場印加部による電場の印加を停止することとすると、触媒による反応を抑制させ、触媒による燃料生成率が低くなる温度である所定温度以上になることを抑制することができる。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載の燃料合成装置であって、前記還流通路を通過する流体中の水の濃度を検出する水濃度検出部(51)と、を有し、前記制御手段は、前記水素供給部から供給される前記水素の量を制御し、前記制御手段は、前記水濃度検出部により検出される濃度に応じて、前記水素供給部から供給される前記水素の量を制御することを特徴とする。
【0017】
このように、制御手段が、水濃度検出部により検出される水濃度に応じて、水素供給部から供給される水素の量を制御することとすると、還流通路に含まれ且つ水素の素となる水の量に応じて、水素供給部から触媒反応器に供給すべき水素の量を調整することができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の燃料合成装置であって、前記制御手段は、前記水濃度検出部により検出される濃度が高くなるにつれて、前記水素供給部から供給される水素の量を少なくなるように制御することを特徴とする。
【0019】
このように、制御手段が、水濃度検出部により検出される水濃度が高くなるにつれて、水素供給部から供給される水素の量を少なくなるように制御することとすると、還流通路に含まれ且つ水素の素となる水の量が多くなった場合、水素供給部から触媒反応器に供給すべき水素の量が少なくなる。これにより、水素供給部から供給される水素の量を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】燃料合成装置の全体構造を示す図である。
図2】電場印加部を用いた触媒温度制御のフローチャートである。
図3】触媒温度に応じた水素供給部の弁開度制御のフローチャートである。
図4】還流通路の水の濃度に応じた水素供給部の弁開度制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の燃料合成装置1を詳細に説明する。なお、下記の説明において、上流側や下流側という用語は、説明対象となる装置に流れる流体の流れる方向における上流側と下流側を表す。
【0022】
図1は、燃料合成装置1の全体構造を示す図である。燃料合成装置1は、水素(H)及び二酸化炭素(CO)より燃料を合成する。燃料合成装置1は、原料の供給源として、水素を供給する水素タンク10と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素タンク20と、を有する。燃料合成装置1は、水素タンク10から供給された水素と二酸化炭素タンク20から供給された二酸化炭素とを化学反応させる触媒31を具備し、燃料を生成するリアクタ30を有する。また、リアクタ30は、触媒31の温度を検出する触媒温度検出部32と、リアクタ30に対して電場を印加する電場印加部35とを有する。
【0023】
また、燃料合成装置1は、リアクタ30から排出された流体の気液を分離する凝縮器40と、凝縮器40にて分離された気体をリアクタ30の上流側に導く還流通路50と、を有する。また、燃料合成装置1は、リアクタ30の上流側に、水素及び二酸化炭素を圧縮する圧縮機37及び加熱器38を有し、凝縮器40の下流側に抽出された燃料を貯蔵する燃料タンク80を有する。また、燃料合成装置1の各部に配置されるセンサの検出値の信号は、ECU60(Electronic Control Unit)に伝達される。ECU60は、少なくとも、電場印加部35が印加する電場の強さと、水素タンク10により供給される水素の量とを制御する。次に、各部の説明を詳細に行う。
【0024】
水素タンク10は、水素(H)を貯蔵するタンクである。水素タンク10は、水素流量計11及び水素流量調整弁V1を付帯した水素配管15を有する。ECU60は、水素流量計11により得られた流量の値に基づいて、水素流量調整弁V1を用いて調整しながら、水素タンク10に貯蔵された水素を、水素配管15へ送り込む。これにより、水素タンク10に貯蔵された水素は、その流量が調整されながら、水素配管15を介して後述の上流側配管33に供給される。
【0025】
二酸化炭素タンク20は、二酸化炭素(CO)を貯蔵するタンクである。二酸化炭素タンク20は、二酸化炭素流量計21及び二酸化炭素流量調整弁V2を付帯した二酸化炭素配管25を有する。ECU60は、二酸化炭素流量計21により得られた流量の値に基づいて、二酸化炭素流量調整弁V2を用いて調整しながら、二酸化炭素タンク20に貯蔵された二酸化炭素を、二酸化炭素配管25へ送り込む。これにより、二酸化炭素タンク20に貯蔵された二酸化炭素は、その流量が調整されながら、二酸化炭素配管25を介して後述の上流側配管33に供給される。
【0026】
なお、二酸化炭素タンク20は、自動車等の車両における内燃機関から排出された排気中のCOを吸着剤にて吸着したものであってもよい。この場合、必要に応じてCOを脱離させれば、二酸化炭素タンクとして用いることができる。
【0027】
リアクタ30は、触媒31を具備し、上流側配管33から供給される水素と二酸化炭素とを反応筒30a内において所定比で化学反応させることにより、二酸化炭素を還元するとともにメタノール(CHOH)を合成する。反応筒30aは、触媒31が配置され、上流側配管33からの流体が導入される筒である。反応筒30aの上流側には、上流側配管33が接続され、反応筒30aの下流側には、下流側配管34が接続される。上流側配管33には、反応筒30aへ供給される流体を圧縮する圧縮機37と、反応筒30aへ供給される流体を昇温する加熱器38とが配置される。なお、リアクタ30や反応筒30aの構成は、図1のものに限られるものではない。
【0028】
リアクタ30における燃料合成の過程は、周知の技術を用いて行うことができる。例えば、反応筒30a内における二酸化炭素と水素の比が所定比になるように計量した水素を、Hインジェクタから反応筒30a内に噴射し、さらに圧縮機37や加熱器38によって反応筒30a内のガスを昇温、圧縮する。これにより、反応筒30a内では二酸化炭素還元触媒の作用下で、二酸化炭素の水素化反応(下記式(1)参照)が進行し、メタノールが生成される。また同時に、この二酸化炭素還元触媒の作用により、逆水性ガスシフト反応(下記式(2)参照)、及び一酸化炭素の水素化反応(下記式(3)参照)も進行し、メタノールを含む合成ガスが生成される。
CO+3H→CHOH+HO …(1)
CO+H→CO+HO …(2)
CO+2H→CHOH …(3)
【0029】
触媒31は、二酸化炭素還元触媒であり、二酸化炭素及び水素の存在下において二酸化炭素を還元するとともにメタノールを生成する二酸化炭素の水素化反応を促進する。二酸化炭素還元触媒としては、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)等の酸化物からなる担体に、銅(Cu)や亜鉛(Zn)等の遷移金属からなる触媒金属が担持された銅-亜鉛酸化物系触媒等の既知のものが用いられる。また、本実施形態では、電場印加部35による電場の印加が可能であるので、二酸化炭素還元触媒として、ロジウムや白金、パラジウムを微量セリア担体に担持したものを用いることができる。
【0030】
触媒温度検出部32は、触媒31の温度を検出するために、反応筒30aに配置された温度センサ、又は反応筒30aの周辺に配置された温度センサである。触媒温度検出部32は、触媒31の温度状態を把握することができればよく、触媒31の温度を直接的に取得するものに限られず、反応筒30aの温度を取得するなどして、触媒31の温度を間接的に取得するものも含む。触媒温度検出部32の検出値は、ECU60に伝達され、水素流量調整弁V1の制御の基礎となる。
【0031】
電場印加部35は、触媒31を挟むように配置された一対の電極に対して、静的な微小電流によって発生する電場を触媒31に印加するものである。電場印加部35が触媒31に電場を印加することにより、150℃程度の低温でもメタノール合成反応が進行する。なお、メタノール合成反応を行う温度は、これに限るものではない。
【0032】
凝縮器40は、リアクタ30から供給される合成ガスからメタノール(CHOH)を回収し、これを、液相ポート41を介して燃料タンク80に供給する。より具体的には、凝縮器40は、リアクタ30から排出される合成ガスを熱交換によって凝縮することにより、メタノールを主成分とする液相と、副生成物の一酸化炭素(CO)、未反応の二酸化炭素及び窒素(N)を含む気相とに分離する。ここで、未反応の気相には、未回収となったメタノールや水も含まれる。そして、凝縮器40にて気相として分離された、未反応及び未回収となった気体は、還流通路50を介してリアクタ30の上流側に導かれる。一方、凝縮器40にて液相として分離されたメタノールは、上述のように、液相ポート41を介して燃料タンク80に導かれる。
【0033】
還流通路50は、凝縮器40にて分離された気体をリアクタ30の上流側に導く。還流通路50の上流側端部は、凝縮器40の気相側に接続される。また、還流通路50の下流側端部は、リアクタ30の上流側配管33に接続され、且つ上流側配管33においては、圧縮機37よりも上流側に接続される。
【0034】
還流通路50は、還流通路50を通過する流体中の水の濃度を検出する水濃度検出部51を有する。水濃度検出部51は、少なくとも、還流通路50を通過する流体の流量を検出する流量検出部52と、湿度検出部53とを有する。流量検出部52は、還流通路50内を流れる流体の流量を検出する。湿度検出部53は、還流通路50内の湿度を検出する。なお、還流通路50には、凝縮器40と水濃度検出部51との間に窒素分離部54が配置される。窒素分離部54は、還流通路50内の窒素を分離して還流通路50外へ排出する。
【0035】
本実施形態における水濃度検出部51は、流量検出部52及び湿度検出部53の検出値から、水の濃度を検出する。水濃度検出部51の検出値、または、流量検出部52の検出値及び湿度検出部53の検出値は、ECU60に伝達され、水素流量調整弁V1の制御の基礎となる。なお、還流通路50における水濃度の検出は、本実施形態の構成に限るものではない。例えば、流量検出部52と湿度検出部53の検出値から、ECU60が水の濃度を算定してもよい。
【0036】
ECU60は、上述の触媒温度検出部32、水濃度検出部51、流量検出部52、湿度検出部53等の各種センサの検出値を信号にて受信する。これらの信号に基づいて、ECU60は、水素流量調整弁V1の開度、二酸化炭素流量調整弁V2の開度、電場印加部35により印加する電場の強さ等を制御する。なお、ECU60が受信する検出信号の種類や、ECU60が制御する対象となる機器は、本実施形態のものに限るものではない。また、ECU60は、燃料合成装置1内に付帯される不図示のセンサの検出信号を受信するとともに、圧縮機37、加熱器38、凝縮器40等、燃料合成装置1の各部を制御する。
【0037】
次に、図2を参照して、電場印加部35による電場の印加を制御することで、触媒温度Tcを所定範囲に収める制御方法について説明する。図2は、電場印加部35を用いた触媒温度制御のフローチャートである。
【0038】
メタノール合成反応は、発熱反応であるため、電場印加部35による電場の印加を増加させると、発熱反応を促進することとなり、触媒温度Tcを増加させる。一方、電場印加部35による電場の印加を減少させると、発熱反応を抑制することとなり、触媒温度Tcを減少させる。なお、以下の説明において、目標温度Ttとは、触媒温度制御において目標となる温度であり、本実施形態においては、触媒31による燃料生成率が最も高くなる温度である。
【0039】
本制御は、触媒温度検出部32の検出値に基づいて、ECU60が、電場印加部35に対して行う。ECU60は、電場印加部35を用いた触媒温度制御を開始する。ステップS01において、触媒温度検出部32により、触媒温度Tcを検出する。
【0040】
ステップS02において、触媒温度Tcが、所定値Tmax以上であるか否かを判断する。触媒温度Tcが所定値Tmax以上である場合、触媒31の温度が目標温度Ttと比べて非常に高く、触媒31による効率の良い反応が見込めない。また、高温にさらされることで、触媒31を劣化させる恐れもある。このため、ステップS02で、触媒温度Tcが所定値Tmax以上であると判断される場合、ステップS03に遷移し、電場印加部35による電場の印加を停止する。一方、ステップS02で、触媒温度Tcが所定値Tmax未満である場合、ステップS04に遷移し、通常の制御を行う。
【0041】
ステップS04において、通常の運転時、触媒温度Tcが所定範囲内の温度に収まっているか否かを判断する。ここで、所定範囲内の温度とは、目標温度Ttを基準とした所定の範囲内の温度ということである。より具体的には、目標温度Ttを基準として所定温度高い温度Thと、目標温度Ttを基準として所定温度低い温度Tlとの間に、触媒温度Tcがある場合(Th>Tc>Tl)である。温度Thや温度Tlの値は、適宜設定した設定値でもよいし、固定値でもよい。
【0042】
ステップS04で、触媒温度Tcが、所定範囲内の温度に収まると判断される場合、制御を終了する。触媒温度Tcが所定範囲内の温度に収まる場合、触媒温度Tcが目標温度Ttに近い温度(Tc≒Tt)であるため、電場印加部35を制御して触媒温度Tcの変更を促す必要がないからである。
【0043】
一方、ステップS04で、触媒温度Tcが、所定範囲内の温度に収まらないと判断される場合、触媒温度Tcが目標温度Ttから遠いことを意味する。この場合、ステップS05に遷移し、電場印加部35を制御して触媒温度Tcの変更を促す。
【0044】
ステップS05において、触媒温度Tcが、目標温度Ttを基準として所定温度高い温度Th以上(Tc≧Th)であるか否かを判断する。ステップS05で、Tc≧Thと判断される場合、電場印加部35が印加する電場を減少させる(ステップS06)。これにより、触媒31の反応が抑制され、触媒温度Tcを下げることで、触媒温度Tcを目標温度Ttに近づける。
【0045】
一方、ステップS05で、Tc≧Thでないと判断される場合、ステップS04においてはTh>Tc>Tlではなかったのであることも含めて考えると、Tc≦Tlであることになる。この場合、電場印加部35が印加する電場を増加させる(ステップS07)。これにより、触媒31の反応が促進され、触媒温度Tcを上げることで、触媒温度Tcを目標温度Ttに近づける。
【0046】
以上のように、ECU60は、電場印加部35を用いた触媒温度制御を行う。なお、上述の触媒温度制御は、燃料合成装置1の運転中に継続して行われる。
【0047】
次に、図3を参照して、触媒温度Tcに応じて水素の供給量を制御する制御方法について説明する。図3は、触媒温度Tcに応じた水素供給部の弁開度制御のフローチャートである。なお、図2と同様の説明については、同符号を付して説明を省略する。
【0048】
本制御は、触媒温度Tcの検出値に基づいて、ECU60が、水素流量調整弁V1に対して行う。ECU60は、触媒温度Tcに応じた水素供給部の弁開度制御を開始する。ステップS11において、触媒温度検出部32により、触媒温度Tcを検出する。
【0049】
ステップS12において、触媒温度Tcが、所定値Tmax以上であるか否かを判断する。ステップS12で、触媒温度Tcが所定値Tmax以上であると判断される場合、ステップS13に遷移し、水素流量調整弁V1による水素の供給を停止する。これにより、触媒31の反応を抑制し、触媒温度Tcを下げることを促す。なお、この場合、同時に、二酸化炭素流量調整弁V2による二酸化炭素の供給をも停止する。一方、ステップS12で、触媒温度Tcが所定値Tmax未満である場合、ステップS14に遷移し、通常の制御を行う。
【0050】
ステップS14において、通常の運転時、触媒温度Tcが所定範囲内の温度に収まっているか否かを判断する。ステップS14で、触媒温度Tcが、所定範囲内の温度に収まると判断される場合、制御を終了する。一方、ステップS14で、触媒温度Tcが、所定範囲内の温度に収まらないと判断される場合、ステップS15に遷移し、水素流量調整弁V1を制御して触媒温度Tcの変更を促す。
【0051】
ステップS15において、触媒温度Tcが、Tc≧Thであるか否かを判断する。ステップS15で、Tc≧Thと判断される場合、水素流量調整弁V1の開度を減少させる(ステップS16)。これにより、触媒31の反応が抑制され、触媒温度Tcを下げることで、触媒温度Tcを目標温度Ttに近づける。
【0052】
一方、ステップS15で、Tc≧Thでないと判断される場合、ステップS14においてはTh>Tc>Tlではなかったのであることも含めて考えると、Tc≦Tlであることになる。この場合、水素流量調整弁V1の開度を増加させる(ステップS17)。これにより、触媒31の反応が促進され、触媒温度Tcを上げることで、触媒温度Tcを目標温度Ttに近づける。
【0053】
以上のように、ECU60は、水素流量調整弁V1を用いた触媒温度制御を行う。なお、上述の触媒温度制御は、燃料合成装置1の運転中に継続して行われる。
【0054】
次に、図4を参照して、還流通路50の水の濃度に応じて水素の供給量を制御する制御方法について説明する。図4は、還流通路50の水の濃度に応じた水素供給部の弁開度制御のフローチャートである。本制御は、流量検出部52の検出値に基づいて、ECU60が、水素流量調整弁V1に対して行う。
【0055】
還流通路50の流量に応じた水素タンク10の水素流量調整弁V1の弁開度制御が開始すると、水濃度検出部51により、還流通路50を流れる水の濃度(水濃度)を検出する(ステップS21)。
【0056】
ステップS22において、水濃度が0であるか否かを判断する。ステップS22で、水濃度が0であると判断される場合、リアクタ30における水素は、すべて水素タンク10から供給されることとなるため、水素流量調整弁V1の開度を最大または大きい値とする(ステップS23)。一方、ステップS22で、水濃度が0でないと判断される場合、ステップS24に遷移する。
【0057】
ステップS24において、水濃度が増加しているか否かを判断する。ステップS24で水濃度が増加していると判断される場合、水素流量調整弁V1の開度を減らす(ステップS25)。なお、水濃度の増加の判断手法は、単位時間当たりの水濃度の増加に基づく判断であってもよいし、増加の基準となる所定濃度に基づく判断でもよいし、その他の判断手法であってもよい。一方、ステップS24で、水濃度が増加していないと判断される場合、ステップS26に遷移する。
【0058】
ステップS26において、水濃度が減少しているか否かを判断する。ステップS26で水濃度が減少していると判断される場合、水素流量調整弁V1の開度を増やす(ステップS27)。なお、水濃度の減少の判断手法は、単位時間当たりの水濃度の減少に基づく判断であってもよいし、減少の基準となる所定濃度に基づく判断でもよいし、その他の判断手法であってもよい。一方、ステップS26で、水濃度が減少していないと判断される場合、制御を終了する。この場合、水濃度の増減がない状態で流体が流れており、水素流量調整弁V1の開度を調整する必要がないためである。
【0059】
以上のように、ECU60は、還流通路50の水濃度に応じた水素供給部の弁開度制御を行う。なお、上述の触媒温度制御は、燃料合成装置1の運転中に継続して行われる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、リアクタ30が電場印加部35を有する構成である。これにより、リアクタ30における触媒31を用いた化学反応が促進され、燃料生成率を向上させることができる。また、リアクタ30に電場印加部35を付帯させるだけの構成であるので、シンプルな構成となる。よって、シンプルな構成でリアクタ30内での燃料生成率を向上させた燃料合成装置1を提供することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、凝縮器40にて分離された気体を還流する還流通路50を有する構成である。これにより、凝縮器40で分離され、気相中に残留したHOが還流通路50を介してリアクタ30に再び供給される。HOは、Hを供給する素となるため、水素タンク10からリアクタ30に供給すべき水素の量を減らすことができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、触媒温度検出部32により検出される温度に応じて電場印加部35が印加する電場の強さを制御することで、触媒温度Tcを調整することができる。この場合、触媒温度検出部32により検出される温度に応じて電場印加部35が印加する電場の強さを制御して、触媒温度Tcを所定範囲(Th>Tc>Tl)内の温度に収まるようにすれば、燃料生成率が高くなる温度に触媒温度Tcを調整することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、触媒温度検出部32により検出される温度が所定値(Tmax)以上となった場合に、電場印加部35による電場の印加を停止することとすると、触媒31による反応を抑制させる。この結果、触媒31による燃料生成率が低くなる温度である所定温度以上になることを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、水濃度検出部51により検出される濃度に応じて、水素タンク10から供給される水素の量を制御する。これにより、還流通路50に含まれ且つ水素の素となる水の濃度に応じて、水素タンク10からリアクタ30に供給すべき水素の量を調整することができる。また、この場合、水濃度検出部51により検出される濃度が高くなるにつれて、水素タンク10から供給される水素の量を少なくなるように制御することもできる。これにより、還流通路50に含まれ且つ水素の素となる水の濃度が高くなった場合、水素タンク10からリアクタ30に供給すべき水素の量を少なくすることで、水素タンク10から供給される水素の量を節約することができる。
【0065】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…水素タンク(水素供給部)
20…二酸化炭素タンク(二酸化炭素供給部)
30…リアクタ(触媒反応器)
31…触媒
32…触媒温度検出部
35…電場印加部
40…凝縮器(気液分離部)
50…還流通路
51…水濃度検出部
52…流量検出部
53…湿度検出部
60…ECU(制御手段)
Tc…触媒温度
V1…水素流量調整弁


図1
図2
図3
図4