(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152178
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054852
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC14
2C056EC28
2C056FA10
2C056FB10
2C056FD20
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、液体を印刷媒体Aに吐出するヘッド20と、前記印刷媒体A上の前記液体に光を照射する光照射部30と、を備え、前記光照射部30には、前記ヘッド20及び前記光照射部30が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源31が並んで構成される光源列33が、前記第1方向に複数並べられており、前記複数の光源列33のうち前記第1方向において前記ヘッド20に最も近い第1光源列33aの前記光源31が放射すれる前記光の強度は、前記複数の光源列33のうち前記第1光源列33a以外の他の光源列33の前記光源31が放射する前記光の強度よりも小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、を備え、
前記光照射部には、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源が並んで構成される光源列が、前記第1方向に複数並べられており、
前記複数の光源列のうち前記第1方向において前記ヘッドに最も近い第1光源列の前記光源が放射する前記光の強度は、前記複数の光源列のうち前記第1光源列以外の他の光源列の前記光源が放射する前記光の光度よりも小さい、印刷装置。
【請求項2】
前記第1光源列の前記光源は、前記第1光源列以外の他の前記光源列の前記光源の光の強度よりも小さい強度の前記光を放射する発光素子を有している、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
制御装置を備え、
前記制御装置は、前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、前記第1光源列の前記光源の光の強度を小さくするように前記光源を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第2ギャップのときは、前記第1光源列の前記光源を点灯させ、
前記ギャップが第1ギャップのときは、前記第1光源列の前記光源を消灯させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記複数の光源列は、前記第1方向において、前記複数の光源列における前記第1方向の中央よりも前記第1光源列から離れて配置された第2光源列を含み、
前記第2光源列の前記光源が放射する前記光の強度は、前記複数の光源列のうち前記第2光源列以外の他の光源列の前記光源が放射する前記光の強度よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、前記第2光源列の前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、
制御装置と、を備え、
前記光照射部には、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源が並んで構成される光源列が、前記第1方向に複数並べられており、
前記複数の光源列のうち前記第1方向において前記ヘッドに最も近い近接光源列の前記光源は、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向において前記光源から離れるほど、前記第1方向において前記ヘッド側に延びる光軸を有する前記光を照射するように配置され、
前記制御装置は、
前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記近接光源列の前記光源を消灯させ、
前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、前記近接光源列の前記光源を点灯させる、印刷装置。
【請求項8】
液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記印刷媒体と前記ヘッドを相対移動方向に相対移動させる相対移動装置と、
前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光源を有する第1光照射部と、
前記相対移動方向において前記第1光照射部よりも前記ヘッドの近くに配置され、且つ、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光源を有する第2光照射部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記第1光照射部を点灯させて前記第2光照射部を消灯させ、
前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、前記第2光照射部を点灯させて前記第1光照射部を消灯させる、印刷装置。
【請求項9】
前記相対移動装置は、前記ヘッド、前記第1光照射部及び前記第2光照射部を搭載し、前記相対移動方向に移動するキャリッジを備え、
前記第1光照射部と前記第2光照射部は、前記相対移動方向において前記ヘッドを挟むように配置され、
前記制御装置は、
前記ギャップが前記第1ギャップのときは、前記第2光照射部が前記ヘッドよりも先行する方向に前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドから前記液体を吐出させて前記第1光照射部から前記光を照射させ、
前記ギャップが前記第2ギャップのときは、前記第1光照射部が前記ヘッドよりも先行する方向に前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドから前記液体を吐出させて前記第2光照射部から前記光を照射させる、請求項8に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として、特許文献1の印刷装置が知られている。この印刷装置は、記録媒体に液体を吐出可能なヘッドと、印刷媒体に吐出された液体に光を照射可能な発光素子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の印刷装置では、ヘッドから液体を吐出させ印刷媒体に着弾させてから、発光素子から光を印刷媒体に照射させ液体を印刷媒体に定着させることにより、画像を印刷媒体に印刷している。このような印刷装置において、例えば、印刷媒体が立体形状である場合、その凹凸に応じて発光素子と印刷媒体との間隔が変化し、液体が印刷媒体に着弾してから光が印刷媒体上の液体に照射されるまでの時間が変化する。このため、光によって硬化した液体の外観が不均一になり、画像の品質低下を招いてしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、を備え、前記光照射部には、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源が並んで構成される光源列が、前記第1方向に複数並べられており、前記複数の光源列のうち前記第1方向において前記ヘッドに最も近い第1光源列の前記光源が放射する前記光の強度は、前記複数の光源列のうち前記第1光源列以外の他の光源列の前記光源が放射する前記光の強度よりも小さい。
【0007】
本発明のある態様に係る印刷装置は、液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、制御装置と、を備え、前記光照射部には、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源が並んで構成される光源列が、前記第1方向に複数並べられており、前記複数の光源列のうち前記第1方向において前記ヘッドに最も近い近接光源列の前記光源は、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向において前記光源から離れるほど、前記第1方向において前記ヘッド側に延びる光軸を有する前記光を照射するように配置され、前記制御装置は、前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記近接光源列の前記光源を消灯させ、前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、前記近接光源列の前記光源を点灯させる。
【0008】
本発明のある態様に係る印刷装置は、液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体と前記ヘッドを相対移動方向に相対移動させる相対移動装置と、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光源を有する第1光照射部と、前記相対移動方向において前記第1光照射部よりも前記ヘッドの近くに配置され、且つ、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光源を有する第2光照射部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記光源と前記印刷媒体とのギャップが第1ギャップのときは、前記第1光照射部を点灯させて前記第2光照射部を消灯させ、前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、前記第2光照射部を点灯させて前記第1光照射部を消灯させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる、印刷装置を提供することが可能であるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1のヘッドユニットを下方から視た概略図である。
【
図4】
図1のヘッドユニット及びステージを前方から視た概略図である。
【
図5】
図5(a)は、第1光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも小さい場合の第2ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。
図5(b)は、第1光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも小さい場合の第1ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)は、第1光源列の光源が点灯したときの第2ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。
図6(b)は、第1光源列の光源が消灯したときの第1ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。
【
図7】
図7(a)は、第1光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも小さく且つ第2光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも大きい場合の第2ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
図7(b)は、第1光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも小さく且つ第2光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも大きい場合の第1ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は、第1光源列の光源が点灯し且つ第2光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度と同じ場合の第2ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
図8(b)は、第1光源列の光源が消灯し且つ第2光源列からの光の照度が他の光源列からの光の照度よりも大きい場合の第1ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
【
図9】近接光源が、第1方向及び第2方向に交差する第3方向において近接光源から離れるほど、第1方向においてヘッド側に延びる光軸を有する光を照射するように配置したヘッドユニットを前方から視た概略図である。
【
図10】
図10(a)は、
図9の近接光源を点灯した光照射部から光を照射したときの第2ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
図10(b)は、
図9の近接光源を消灯した光照射部から光を照射したときの第1ギャップ領域における照度の経時変化を示すグラフである。
【
図11】
図11(a)は、ヘッド、第1光照射部及び第2光照射部がこの順で左側から右側に並べられたヘッドユニットを前方から視た概略図である。
図11(b)は、第2光照射部、ヘッド及び第1光照射部がこの順で左側から右側に並べられたヘッドユニットを前方から視た概略図である。
【
図12】
図12(a)は、ヘッドユニット及び、凹凸を有する印刷媒体を前方から視た概略図である。
図12(b)は、ヘッドユニット及び、傾斜を有する印刷媒体を前方から視た概略図である。
【
図13】
図13(a)は、右側から左側を視たときに第1ノズルと第2ノズルとが重なるように第1ノズル列及び第2ノズル列が並んだヘッドユニットを下方から視た概略図である。
図13(b)は、右側から左側を視たときに第1ノズルと第2ノズルとがずれるように第1ノズル列及び第2ノズル列が並んだヘッドユニットを下方から視た概略図である。
【
図14】
図14(a)は、第2ノズル列から第2ギャップ領域に液体を吐出した場合の光の照度の経時変化を示すグラフである。
図14(b)は、第1ノズル列から第1ギャップ領域に液体を吐出した場合の光の照度の経時変化を示すグラフである。
【
図15】
図15(a)は、第1ヘッド、第2ヘッド及び光照射部がこの順で左側から右側に並べられたヘッドユニットを下方から視た概略図である。
図15(b)は、第1ヘッド、光照射部及び第2ヘッドがこの順で左側から右側に並べられたヘッドユニットを下方から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
(実施の形態1)
<印刷装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る印刷装置10は、
図1に示すように、例えば、ヘッド20から印刷媒体Aに液体を吐出し、光照射部30から光を印刷媒体Aに照射して、画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷媒体Aとしては、布帛及び紙等のシート、並びに、ボール及びマグカップなどの立体物が挙げられる。液体は、光硬化性の液体であって、例えば、紫外線又は赤外線等の光によって硬化するインクである。また、例えば、印刷装置10は、3Dプリンタであって、ヘッド20から吐出したインクで形成し光照射部30から照射した光により硬化した造形物を作成してもよい。この場合、作成している造形物が印刷媒体Aである。さらに、印刷装置10は、作成した造形物に対してヘッド20からインクを吐出して光照射部30からインクに光を照射して、造形物に画像を印刷してもよい。この場合、作成した造形物が印刷媒体Aである。
【0014】
印刷装置10は、ヘッドユニット11、相対移動装置40、搬送装置50、タンク12及び制御装置60(
図2)を備えている。なお、制御装置60の詳細については後述する。また、ヘッド20及び光照射部30が並ぶ第1方向を左右方向と称し、第1方向に交差(例えば、直交)する第2方向を前後方向と称し、左右方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0015】
相対移動装置40は、一対の移動レール41、キャリッジ42、駆動ベルト43、移動モータ44を有し、ヘッドユニット11を左右方向に移動させる。一対の移動レール41は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット11を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ42は、ヘッドユニット11を搭載し、移動レール41に沿って左右方向に移動可能に支持されている。駆動ベルト43は、無端ベルトであって、左右方向に移動レール41に沿って延び、キャリッジ42に接続され、プーリを介して移動モータ44に連結されている。移動モータ44が駆動ベルト43を駆動することにより、移動レール41に沿ってキャリッジ42が左右方向に往復移動する。これにより、相対移動装置40は、左右方向において印刷媒体Aとヘッド20及び光照射部30とを相対的に移動させる。
【0016】
搬送装置50は、ステージ51、搬送レール52、ステージ支持台53及び搬送モータ54(
図2)を有している。ステージ51は、その上面に印刷媒体Aが載置され、印刷媒体Aを支持して、上下方向において印刷媒体Aとヘッド20とのギャップを規定する。搬送レール52は、前後方向に延びている。ステージ支持台53は、例えば、ステージ51を支持し、搬送レール52に沿って前後方向に移動可能に支持され、搬送モータ54に連結されている。搬送モータ54がステージ支持台53を駆動することにより、ステージ51を前後方向に移動する。
【0017】
ヘッドユニット11は、ヘッド20及び光照射部30を備えており、これらの下面がステージ51の上面に対向するように配置されている。タンク12は、液体を収容する容器であって、ヘッド20にチューブ等により接続されて液体を供給する。
【0018】
<ヘッドユニットの構成>
図3及び
図4に示すように、ヘッド20は、複数のノズル21、液体流路、流路形成体24、及び、複数の駆動素子25(
図2)を有している。複数のノズル21は、前後方向において互いに等間隔に並んでノズル列26を成している。複数のノズル列26は、左右方向において互いに等間隔に並んでいる。
【0019】
流路形成体24は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル21及び液体流路が形成されている。ノズル21は、流路形成体24の下面にて開口している。液体流路は、タンク12(
図1)及びノズル21に接続されており、共通流路23及び複数の個別流路22を有している。共通流路23は前後方向に延び、共通流路23から複数の個別流路22が分岐している。個別流路22は、その上流端が共通流路23に接続され、その下流端がノズル21に接続されている。このため、液体は、タンク12から共通流路23に流れ、共通流路23において前後方向に流れる間に個別流路22に分流し、ノズル21に供給される。
【0020】
駆動素子25は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータ等であって、個別流路22に対応して設けられ、個別流路22の容積を変動させるよう駆動する。これにより、個別流路22の液体に、ノズル21から液体を吐出する圧力が付与される。
【0021】
光照射部30は、ヘッド20が液体を吐出しながら移動する方向においてヘッド20の上流に配置されている。一方向印刷では、例えば、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し、右側に移動する際には液体を吐出しない。この場合、光照射部30は、印刷時の左側への移動方向においてヘッド20の上流である右側に配置されている。光照射部30は、液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0022】
なお、双方向印刷では、印刷装置10は、左右方向においてヘッド20を挟むように一対の光照射部30が配置される。一対の光照射部30のうちの右側の光照射部30は、左側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して左側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。また、一対の光照射部30のうちの左側の光照射部30は、右側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して右側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0023】
光照射部30は、複数の光源31、及び、光源31が搭載された回路基板32を有している。回路基板32は、例えば、絶縁性材料から成り、矩形の平板形状であって、光源31が搭載された下面を有している。光源31は、例えば、LED等の発光素子であって、制御装置60により駆動されて、ノズル21から吐出された液体を硬化する光(例えば、紫外線又は赤外線)を発光する。
【0024】
この光源31が放射した光の強度は、光源31の単位面積から単位時間当たりに出射した放射束であって、例えば、放射発散度(mW/cm2)である。これに対し、光源31から照射された印刷媒体Aにおける光の照度は、光源31から単位時間当たりに入射した光の印刷媒体Aの単位面積当たりの放射束であった、例えば、放射照度(mW/cm2)である。なお、照度は、放射照度(mW/cm2)と光の照射時間(s)とを掛け合わせた積算光量であってもよい。積算光量は、光照射部30から照射される光の印刷媒体Aにおける単位面積当たりの光エネルギ(mJ/cm2)である。
【0025】
複数の光源31は、前後方向に並んで光源列33を構成している。複数(例えば、7本)の光源列33は、左右方向に間隔を空けながら並べられており、ヘッド20に最も近い第1光源列33aを含んでいる。第1光源列33aは、左右方向におけるヘッド20との間隔が他の光源列33よりも小さい。第1光源列33aを構成する光源31である第1光源31aが放射する光の強度は、第1光源31a以外の他の光源31が放射する光の強度よりも小さい。
【0026】
第1光源列33aの第1光源31aは、第1光源列33a以外の他の光源列33の他の光源31の光の強度よりも小さい強度の光を照射する発光素子を有している。すなわち、第1光源31aの発光素子は、他の光源31よりも光の最大強度が小さい。例えば、第1光源31aの発光素子は、他の光源31の発光素子と同じ電力が供給されたときに、他の光源31よりも小さい強度の光を照射する。
【0027】
<制御装置の構成>
制御装置60は、
図2に示すように、ヘッド駆動回路63を介して駆動素子25に接続され、駆動素子25の駆動を制御する。制御装置60は、光源駆動回路64を介して光源31に接続され、光源31の駆動を制御する。制御装置60は、移動駆動回路65を介して移動モータ44に接続され、移動モータ44の駆動を制御する。制御装置60は、搬送駆動回路66を介して搬送モータ54に接続され、搬送モータ54の駆動を制御する。これにより、制御装置60は、移動モータ44及び搬送モータ54の駆動、停止及び回転速度等を制御する。
【0028】
制御装置60は、商用電源等の外部電源Bに電源回路67を介して接続されている。電源回路67は、外部電源Bからの直流電圧から出力電圧を生成し、印刷装置10における駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54等の各部に電力を供給する。この電力は制御装置60により制御される。ここで、制御装置60は、光照射部30における第1光源31a及び他の光源31に互いに同じ電力を供給するように電源回路67を制御する。
【0029】
制御装置60は、演算部61及び記憶部62を有している。記憶部62は、演算部61がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、印刷データ等の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、制御装置60は、集中制御する単独の制御装置60であってもよいし、分散制御する複数の制御装置60であってもよい。また、プログラムは、記憶部62以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。さらに、プログラムは、単独の記憶媒体に記憶されていてもよく、また、複数の記憶媒体に分割されて記憶されていてもよい。
【0030】
演算部61は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部61は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54を制御して、印刷処理を実行する。
【0031】
<印刷処理>
このような印刷装置10において、制御装置60は、印刷データを取得し、印刷データに基づいて印刷処理を実行する。印刷データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。印刷データは、記憶部62に記憶されていてもよいし、ネットワーク、コンピュータ及び記憶媒体等の外部機器から取得されてもよい。
【0032】
制御装置60が、移動モータ44を制御して、ヘッドユニット11を左右方向に移動させる移動動作を実行する。また、制御装置60は、駆動素子25を制御して、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。さらに、制御装置60は、光源31を制御して、光源31から光を照射させる光照射動作を実行する。さらに、制御装置60は、搬送モータ54を制御して、印刷媒体Aを前方へ搬送させる搬送動作を実行する。そして、印刷装置10が移動動作、吐出動作及び光照射動作を含む走査と、搬送動作とを交互に繰り返し、印刷処理を進めていく。
【0033】
この走査では、
図4に示すように、ヘッド20が左側へ移動しながら、ヘッド20から液体を吐出する。これにより、ヘッド20の下面に対向した、ステージ51上の印刷媒体Aに液体が着弾する。また、光照射部30がヘッド20に追随して左側へ移動しながら、光源31から光を照射する。これにより、光源31に対向した印刷媒体A上の液体に光が照射され、この液体が光により硬化して印刷媒体Aに定着する。このため、液体によって印刷媒体Aに画像が印刷される。
【0034】
この
図4の例では、印刷媒体Aは、光照射部30とのギャップが左右方向において異なり、ギャップは所定値G1以上の第1ギャップ、及び、所定値G1未満の第2ギャップを有している。このため、印刷媒体Aは、第1ギャップの領域である第1ギャップ領域A1、及び、第2ギャップの領域である第2ギャップ領域A2を有している。
【0035】
この場合、
図5(a)に示す第2ギャップ領域A2における光照射部30からの光の照射範囲よりも、
図5(b)に示す第1ギャップ領域A1における光照射部30からの光の照射範囲は広くなる。このため、例えば、液体Jが第1ギャップ領域A1に着弾してから印刷媒体A上で広がる前に光により硬化すると、その硬化物の外観がマット調になる。一方、例えば、液体Jが第2ギャップ領域A2に着弾してから印刷媒体A上で広がった後に光により硬化すると、その硬化物の外観がグロス調になる。
【0036】
このように、ギャップに応じて液体Jの硬化時間が異なると、硬化物の外観の不均一による印刷画質が低下する。これに対して、印刷装置10では、複数の光源列33のうち左右方向においてヘッド20に最も近い第1光源列33aの第1光源31aから照射される光の強度が、複数の光源列33のうち第1光源列33a以外の他の光源列33の光源31から照射される光の強度よりも小さい。これにより、印刷媒体Aに着弾した液体Jが硬化するまでの硬化時間差を減少し、画質の低下を低減することができる。
【0037】
具体的には、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、光照射部30が光を印刷媒体Aに向かって下方に照射すると、光は光照射部30から下方に離れるほど、上下方向に直交する方向において広がっている。印刷媒体Aにおける光の照度(mW/cm
2)は、上下方向に直交する方向において光照射部30の中心ほど大きくなり、この中心から離れるほど小さくなる。この照度が印刷媒体A上において所定の硬化照度以上の範囲を光照射範囲とする。所定の硬化照度は、例えば、印刷媒体A上の液体Jを硬化させる照度I0である。
【0038】
この硬化としては、本硬化及び仮硬化がある。仮硬化は、着弾直後の未硬化状態の液体よりも液体の粘度が高いが、液体が完全には硬化していない状態であって、印刷媒体Aにおいて流動しない粘度にまで液体の粘度が高まった状態であり、具体的には液体がゲル状である。本硬化は、液体が完全に硬化している状態であって、具体的には、液体に手で触れても液体が手につかない状態である。
【0039】
図5(a)及び
図5(b)において、一点鎖線は、第1光源31aの光の強度が他の光源31の光の強度と等しい場合に、光照射部30から照射された光の印刷媒体A上における照度を示している。この一点鎖線で示すように、印刷媒体Aにおける光照射範囲は、ギャップが小さいほど狭くなっている。このため、印刷媒体A上における液体Jの着弾位置と光照射範囲との距離は、ギャップが小さいほど長くなっている。このため、
図5(a)における時間t0で液体Jが着弾してから時間ta0で光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間Ta0は、
図5(b)における時間t0で液体Jが着弾してから時間tb0で光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間Tb0よりも長い。
【0040】
図5(a)及び
図5(b)において、実線は、第1光源31aの光の強度が他の光源31の光の強度よりも小さい場合に、光照射部30から照射された光の印刷媒体A上における照度を示している。第1光源31aの光の強度が低いことにより、光照射部30に対してヘッド20側において、実線で示す光照射範囲は一点鎖線の光照射範囲よりも狭まる。このため、
図5(a)の実線で示すように、第2ギャップでは、時間t0で液体Jが着弾してから時間ta1で光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間Ta1は一点鎖線で示す硬化時間Ta0よりも長くなる。また、
図5(b)において実線で示すように、第1ギャップでは、時間t0で液体Jが着弾してから時間tb1で光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間Tb1は一点鎖線で示す硬化時間Tb0よりも長くなる。
【0041】
ここで、光照度範囲の減少量は、ギャップが大きいほど大きい。このため、第1ギャップにおける硬化時間Tb1と硬化時間Tb0との差は、第2ギャップにおける硬化時間Ta1と硬化時間Ta0との差よりも大きい。よって、硬化時間Tb1が硬化時間Ta1に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0042】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、実施の形態1において、制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとのギャップが第1ギャップのときは、第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、第1光源列33aの光源31の光の強度を小さくするように光源31を制御する。
【0043】
具体的には、第1光源31aは、供給された電力に応じて出射する光の強度が変更可能な発光素子である。第1光源31aの発光素子は、他の光源31の発光素子と同じ電力が供給されたときに、他の光源31と同じ強度の光を放射する。また、第1光源31aの発光素子は、他の光源31の発光素子よりも小さい電力が供給されたときに、他の光源31よりも小さい強度の光を放射する。例えば、この制御には、PWM制御により光の強度を下げる制御が含まれる。
【0044】
この場合、印刷処理の走査において、制御装置60は、例えば、印刷装置10に備えられたセンサによる計測、又は、印刷媒体Aの形状を示す仕様に基づいて、印刷媒体Aと光照射部30とのギャップを示すギャップ情報を得る。そして、制御装置60は、印刷媒体Aのうち、光照射部30とのギャップが第1ギャップである第1ギャップ領域A1と、光照射部30との間隔が第2ギャップである第2ギャップ領域A2とをギャップ情報に基づいて取得する。
【0045】
そして、第1ギャップでは、制御装置60は、第1光源31aの光の強度を他の光源31の光の強度よりも低下する。これにより、
図5(b)の実線で示すように、印刷媒体Aの第1ギャップ領域A1における光照射部30からの光の照度は、時間tb1にて所定の硬化照度I0に達し、第1ギャップ領域A1上の液体Jは硬化時間Tb0で硬化する。
【0046】
一方、例えば、第2ギャップでは、制御装置60は、第1光源31aの光の強度を他の光源31と同じ光の強度とする。これにより、
図5(a)の一点鎖線で示すように、印刷媒体Aの第2ギャップ領域A2における光照射部30からの光の照度は、時間ta0にて所定の硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域A2上の液体Jは硬化時間Ta0で硬化する。
【0047】
これにより、硬化時間Tb1が硬化時間Ta0に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。なお、第2ギャップでは、制御装置60は、第1光源31aの光の強度を他の光源31よりも低下させてもよい。この場合、
図5(a)の実線で示すように、第2ギャップ領域A2上の液体Jは硬化時間Ta1で硬化する。これにより、硬化時間Tb1が硬化時間Ta1に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0048】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10は、実施の形態1において、制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとのギャップが第2ギャップのときは、第1光源列33aの光源31を点灯させ、ギャップが第1ギャップのときは、第1光源列33aの光源31を消灯させる。
【0049】
具体的には、第1光源31aは、他の光源31と同じ電力が供給され、他の光源31と等しい強度の光を放射する。制御装置60は、電源回路67を制御して、第1光源31aへの供給電力を変化させることにより、或いは、第1光源31aと外部電源Bの間のスイッチを開閉することにより、第1光源31aの点灯と消灯とを切り替える。つまり、制御装置60は、第1光源31aへ他の光源31と同じ電力を供給することにより第1光源31aを点灯し、第1光源31aへの電力の供給を停止することにより第1光源31aを消灯する。
【0050】
印刷処理の走査では、制御装置60は、第1光源31aの点灯と消灯とをギャップ情報に基づいて切り替える。例えば、第2ギャップでは、制御装置60は、第1光源31aを含む光照射部30における全ての光源31を点灯する。これにより、
図6(a)の実線で示すように、印刷媒体Aの第2ギャップ領域A2における光照射部30からの光の照度は、時間ta0にて所定の硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域A2上の液体Jは硬化する。
【0051】
一方、第1ギャップでは、制御装置60は第1光源31aを消灯し、光照射部30における第1光源31a以外の他の光源31を点灯する。この第1光源31aを消灯したときの印刷媒体Aの第1ギャップ領域における光照度範囲は、
図7(b)の実線で示すように、光照射部30の中央よりもヘッド20側において、一点鎖線で示す第1光源31aを点灯したときの光照射範囲よりも狭まる。
【0052】
これにより、時間t0で液体Jが着弾してから時間tb2で光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間Tb2は一点鎖線で示す硬化時間Tb0よりも長くなる。このため、硬化時間Tb2が硬化時間Ta0に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0053】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10では、実施の形態1及び変形例1~2において、複数の光源列33は、第1方向において、複数の光源列33における第1方向の中央よりも第1光源列33aから離れて配置された第2光源列33bを含み、第2光源列33bの光源31が放射する光の強度は、複数の光源列33のうち第2光源列33b以外の他の光源列33の光源31が放射する光の強度よりも大きい。
【0054】
具体的には、
図3に示すように、第2光源列33bは、左右方向におけるヘッド20との間隔が、複数の光源列33の中央よりも大きく、例えば、複数の光源列33のうち左右方向においてヘッド20から最も遠い。第2光源列33bを構成する光源31である第2光源31bが放射する光の強度は、第2光源31b以外の別の光源31が放射する光の強度よりも大きい。この第2光源31bは、別の光源31と同じ電力が供給されたときに、別の光源31よりも大きい強度の光を出射する発光素子である。
【0055】
例えば、
図7(a)及び
図7(b)において、一点鎖線は、第1光源31a及び第2光源31bの光の強度が他の光源31の光の強度と等しい場合の印刷媒体A上における光の照度を示している。実線は、第1光源31aの光の強度が他の光源31の光の強度よりも小さく、且つ、第2光源31bの光の強度が別の光源31の光の強度よりも大きい場合の印刷媒体A上における光の照度を示している。第1光源31aの光の強度が他の光源31よりも低いことにより、光照射部30の中央よりもヘッド20側において、実線で示す照度は一点鎖線の照度よりも低下している。一方、第2光源31bの照度を上昇させることにより、光照射部30の中央よりもヘッド20側とは反対側において、実線で示す照度は一点鎖線の照度よりも増加している。
【0056】
このため、例えば、
図7(a)の実線で示すように、第2ギャップにおいて、液体Jは、硬化時間Ta1で仮硬化した後、第2光源31bにより一点鎖線で示す照度よりも高い照度の光を受けることにより十分に硬化することができる。また、
図7(b)において実線で示すように、第1ギャップにおいて、液体Jは、硬化時間Tb1で仮硬化した後、第2光源31bにより一点鎖線で示す照度よりも高い照度の光を受けることにより十分に硬化することができる。
【0057】
このように、第2光源列33bが、複数の光源列33における左右方向の中央よりも第1光源列33aから離れて配置されていることにより、光の照射範囲がヘッド20側へ広がることを低減して、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減することができる。また、第1光源列33aからの光の照度が低くても、第2光源列33bからの光の照度が高いことにより、液体Jを十分に硬化するため、液体Jの未硬化による印刷品質の低下を抑制することができる。
【0058】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10は、変形例3において、制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとのギャップが第1ギャップのときは、第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、第2光源列33bの光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0059】
具体的には、第2光源31bは、供給された電力に応じて光の強度が変更可能な発光素子である。この場合、制御装置60は、光照射部30において別の光源31よりも大きい電力を第2光源31bに供給するように電源回路67を制御することにより、第2光源31bが放射する光の強度を別の光源31が放射する光の強度よりも大きくする。また、制御装置60は、第1光源31a以外の別の光源31と同じ電力を第2光源31bに供給するように電源回路67を制御することにより、第2光源31bが放射する光の強度を別の光源31が放射する光の強度と同じにする。
【0060】
例えば、変形例2のように、制御装置60は、電源回路67を制御して、第1光源31aの消灯と点灯とを切り換える。ここで、
図8(a)に示すように、第2ギャップでは、制御装置60は第1光源31aを点灯すると共に、別の光源31と同じ電力を第2光源31bに供給する。これにより、光照射部30における全ての光源31は、点灯して、互いに同じ強度の光を放射する。このため、印刷媒体A上における光照射部30からの光の照度は、時間ta0にて所定の硬化照度I0に達し、印刷媒体A上の液体Jは硬化時間Ta0で硬化する。
【0061】
一方、第1ギャップでは、制御装置60は第1光源31aを消灯し、第1光源31a以外の他の光源31を点灯すると共に、別の光源31よりも多い電力を第2光源31bに供給する。これにより、第2光源31bは別の光源31よりも低い強度の光を放射する。このため、印刷媒体A上における光照射部30からの光の照度は、
図8(b)の実線で示すように、光照射部30の中央よりもヘッド20側において一点鎖線の第1光源31aを点灯したときの照度よりも低下し、光照射部30の中央よりもヘッド20側とは反対側において一点鎖線の照度よりも増加する。これにより、例えば、液体Jは、硬化時間Tb2で仮硬化した後、高い照度の光を受けることにより十分に硬化することができる。
【0062】
このように、第2光源列33bが、複数の光源列33における左右方向の中央よりも第1光源列33aから離れて配置されていることにより、光の照射範囲がヘッド20側へ広がることを低減して、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減することができる。また、第1光源列33aが消灯していても、第2光源列33bからの光の強度が高いことにより、液体Jを十分に硬化するため、液体Jの未硬化による印刷品質の低下を抑制することができる。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る印刷装置10では、光照射部30には、ヘッド20及び光照射部30が並ぶ第1方向に交差する第2方向に複数の光源31が並んで構成される光源列33が、第1方向に複数並べられている。複数の光源列33のうち第1方向においてヘッド20に最も近い近接光源列33cの近接光源31cは、第1方向及び第2方向に交差する第3方向において光源31から離れるほど、第1方向においてヘッド20側に延びる光軸34cを有する光を照射するように配置されている。制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとのギャップが第1ギャップのときは、近接光源列33cの光源31を消灯させ、ギャップが第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、近接光源列33cの光源31を点灯させる。
【0064】
具体的には、
図9に示すように、近接光源列33cは、光照射部30において複数の光源列33のうちヘッド20に最も近く、左右方向におけるヘッド20との間隔が他の光源列33よりも小さい。近接光源列33cを構成する光源31である近接光源31cから照射される光の光軸34cは、近接光源31c以外の他の光源31から照射される光の光軸34との間隔が下方ほど大きくなるように、他の光軸34に対して傾斜している。この他の光源31の光軸34は、自己の光源31から下方に向かっている。光軸34、34cは、光源31、31cから放出される光のなかで最も光量の多い方向である。なお、近接光源31cの光の強度は、他の光源31の光の強度よりも低くてもよいし、他の光源31の光の強度と等しくてもよい。
【0065】
制御装置60は、電源回路67を制御して、近接光源31cの消灯と点灯とを切り換える。これにより、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、光照射部30から照射された光の印刷媒体A上における照度が変化する。なお、
図10(a)及び
図10(b)において、一点鎖線は、近接光源31cの光軸34cが他の光源31の光軸34に対して傾斜せずに平行である場合に、近接光源31cを含む光源31を点灯した光照射部30から照射された光の印刷媒体A上における照度を示している。
【0066】
図10(a)の実線で示すように、第2ギャップでは、制御装置60は近接光源31cを含む光照射部30における全ての光源31を点灯する。この近接光源31cの光軸34cが傾斜している場合の第2ギャップ領域における光照射範囲は、光照射部30の中央よりもヘッド20側において、一点鎖線の近接光源31cの光軸34cが傾斜していない場合の光照射範囲よりも広がる。このため、光照射部30からの光の照度が所定の硬化照度I0に達する時間ta2は時間ta0よりも早くなり、液体Jの硬化時間Ta2は硬化時間Ta0よりも短くなる。
【0067】
一方、
図10(b)の実線で示すように、第1ギャップでは、制御装置60は近接光源31cを消灯し、光照射部30における近接光源31c以外の他の光源31を点灯する。この近接光源31cを消灯したときの第1ギャップ領域における光照射範囲は、光照射部30の中央よりもヘッド20側において、一点鎖線の近接光源31cを点灯したときの第1ギャップ領域における光照射範囲よりも狭まる。このため、光照射部30からの光の照度が所定の硬化照度I0に達する時間tb2は時間tb0よりも遅くなり、液体Jの硬化時間Tb2は硬化時間Tb0よりも長くなる。
【0068】
このように、第2ギャップ領域の光照射範囲がヘッド20側へ近づき、第1ギャップ領域の光照射範囲がヘッド20側から離れる。このため、第2ギャップ領域における液体Jの硬化時間Ta2及び第1ギャップ領域における液体Jの硬化時間Tb2が互いに一致又は近づく。よって、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、実施の形態2においても変形例4のように、複数の光源列33は、その左右方向における中央よりも近接光源31cから離れて配置された第2光源列33bを含んでいてもよい。この場合、制御装置60は、第2ギャップでは別の光源31と同じ電力を第2光源31bに供給する一方、第1ギャップでは別の光源31よりも多い電力を第2光源31bに供給してもよい。これにより、第1ギャップ領域において、液体Jは、硬化時間Tb2で仮硬化した後、第2光源列33bによる高い照度の光を受けることにより十分に硬化することができる。
【0070】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る印刷装置10は、液体を印刷媒体Aに吐出するヘッド20と、印刷媒体Aとヘッド20を相対移動方向に相対移動させる相対移動装置40と、印刷媒体A上の液体に光を照射する光源31を有する第1光照射部30aと、相対移動方向において第1光照射部30aよりもヘッド20の近くに配置され、且つ、印刷媒体A上の液体に光を照射する光源31を有する第2光照射部30bと、制御装置60と、を備えている。制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとのギャップが第1ギャップのときは、第1光照射部30aを点灯させて第2光照射部30bを消灯させ、ギャップが第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、第2光照射部30bを点灯させて第1光照射部30aを消灯させる。なお、以下では、相対移動方向を左右方向として説明するが、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0071】
具体的には、
図11(a)に示すように、ヘッドユニット11はヘッド20及び光照射部30を備え、光照射部30は第1光照射部30a及び第2光照射部30bを有している。第1光照射部30aは第2光照射部30bよりもヘッド20から離れている。第1光照射部30aとヘッド20との間隔E1は、第2光照射部30bとヘッド20との間隔E2よりも長い。
【0072】
第1光照射部30a及び第2光照射部30bはこの配置を除いて、光の強度等は互いに同じである。このため、光照射部30の光照射範囲は、第1ギャップ領域よりも第2ギャップ領域で狭くなる。これにより、液体Jが着弾してから光の照度が所定の硬化照度I0に達するまでの液体Jの硬化時間は、第1ギャップ領域よりも第2ギャップ領域で長くなる。このため、制御装置60は、電源回路67を制御して、第1光照射部30a及び第2光照射部30bの点灯を切り替える。
【0073】
図11(a)の例では、印刷処理の走査において、制御装置60は、ヘッドユニット11を左に移動しながら、ヘッド20から液体を印刷データに基づいて吐出させると共に、第1光照射部30a及び第2光照射部30bから光をギャップ情報に基づいて照射する。ここで、第1ギャップにおいて第1光照射部30aの光源31を点灯すると共に第2光照射部30bの光源31を消灯する。これにより、ヘッド20から液体Jが第1ギャップ領域に着弾した後、第1光照射部30aから第1ギャップ領域上の液体Jに光が照射され、液体Jが硬化する。
【0074】
また、第2ギャップにおいて第1光照射部30aの光源31を消灯すると共に第2光照射部30bの光源31を点灯する。これにより、ヘッド20から液体Jが第2ギャップ領域に着弾してから、第2光照射部30bから第2ギャップ領域上の液体Jに光が照射され、液体Jが硬化する。このように、第1ギャップ領域における第1光照射部30aの光照射範囲が第2ギャップ領域における第2光照射部30bの光照射範囲よりも広いが、第1光照射部30aとヘッド20との間隔E1が第2光照射部30bとヘッド20との間隔E2よりも大きい。このため、第1ギャップ領域における第1光照射部30aによる液体Jの硬化時間が、第2ギャップ領域における第2光照射部30bによる液体Jの硬化時間に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0075】
<変形例5>
変形例5に係る印刷装置10は、実施の形態3において、相対移動装置40は、ヘッド20、第1光照射部30a及び第2光照射部30bを搭載し、相対移動方向に移動するキャリッジ42を備えている。第1光照射部30aと第2光照射部30bは、相対移動方向においてヘッド20を挟むように配置されている。制御装置60は、ギャップが第1ギャップのときは、第2光照射部30bがヘッド20よりも先行する方向にキャリッジ42を移動させながらヘッド20から液体を吐出させて第1光照射部30aから光を照射させ、ギャップが第2ギャップのときは、第1光照射部30aがヘッド20よりも先行する方向にキャリッジ42を移動させながらヘッド20から液体を吐出させて第2光照射部30bから光を照射させる。
【0076】
具体的には、
図11(b)に示すように、ヘッドユニット11において、第2光照射部30b、ヘッド20及び第1光照射部30aがこの順で左側から右側に並んで配置されている。第1光照射部30aは第2光照射部30bよりもヘッド20から離れている。第1光照射部30aとヘッド20との間隔E1は、第2光照射部30bとヘッド20との間隔E2よりも長い。
【0077】
印刷処理の走査では、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を左側に移動させながら、ヘッド20から液体を第1ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、第1光照射部30aの光源31を点灯すると共に第2光照射部30bの光源31を消灯する。これにより、ヘッド20から液体Jが第1ギャップ領域に着弾した後、第1光照射部30aから第1ギャップ領域上の液体Jに光が照射され、液体Jが硬化し、印刷媒体Aに印刷する。
【0078】
そして、制御装置60は、搬送動作を実行せずに、第2走査を実行する。この第2走査において、制御装置60は、第1走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を右側に移動させながら、ヘッド20から液体を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、第2光照射部30bの光源31を点灯すると共に第1光照射部30aの光源31を消灯する。これにより、ヘッド20から液体Jが第2ギャップ領域に着弾した後、第2光照射部30bから第2ギャップ領域上の液体Jに光が照射され、液体Jが硬化する。これにより、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0079】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る印刷装置10では、制御装置60は、印刷媒体Aに対する光照射部30のギャップが第1ギャップのときは、第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、ステージ51と光照射部30の相対移動速度が遅くなるように、相対移動装置40を制御する。
【0080】
ここで、制御装置60は、相対移動装置40によりヘッド20及び光照射部30を移動させる移動動作、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作、及び、光照射部30から光を照射させる光照射動作を含む走査と、搬送装置50により印刷媒体Aを搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返しながら印刷する場合、ヘッド20及び光照射部30を第1速度にて移動させながら、ギャップが第1ギャップである印刷媒体Aの第1ギャップ領域に光を照射させる第1光照射動作、及び、ヘッド20及び光照射部30を第1速度よりも速い第2速度にて移動させながら、ギャップが第2ギャップである印刷媒体Aの第2ギャップ領域に光を照射させる第2光照射動作を1つの走査で行う、又は、走査は、第2光照射動作を含まずに第1光照射動作を含む第1走査、及び、第1光照射動作を含まずに第2光照射動作を含む第2走査を有し、第1走査及び第2走査を搬送動作と当該搬送動作に後続する搬送動作との間において別々に行う。
【0081】
具体的には、1つの走査において、制御装置60は、移動動作によりヘッドユニット11を左側に移動させながら、吐出動作によりヘッド20から液体Jを印刷媒体Aに走査用印刷データに基づいて吐出させつつ、光照射動作により印刷媒体A上の液体Jに光照射部30から光を照射する。ここで、制御装置60は、ヘッドユニット11の光照射部30の移動速度を第1速度と第2速度との間でギャップ情報に基づいて切り替える。つまり、制御装置60は、第1ギャップでは第1速度で光照射部30を移動させ、第2ギャップでは第1速度よりも速い第2速度で光照射部30を移動させる。
【0082】
この走査の光照射動作による印刷媒体Aにおける光照射部30の光照射範囲は、第1ギャップ領域が第2ギャップ領域よりも広い。これに対し、第1ギャップ領域に光を照射する光照射部30の第1速度が第2ギャップ領域に光を照射する光照射部30の第2速度よりも遅い。このため、第1ギャップ領域における光照射範囲に移動速度が第2ギャップ領域における光照射範囲に移動速度が遅くなる。よって、第1ギャップ領域における光照射部30による液体Jの硬化時間が、第2ギャップ領域における光照射部30による液体Jの硬化時間に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、第1光照射動作及び第2光照射動作を互いに別々の走査により実行してもよい。この場合、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。また、制御装置60は、ヘッドユニット11の移動速度を第1速度と第2速度との間でギャップ情報に基づいて切り替える。なお、以下では、第1走査の実行後に第2走査を実行する場合について説明するが、第2走査後に第1走査を実行してもよい。
【0084】
そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を第1速度で移動させながら、第1ギャップでは吐出動作を第1ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、第1光照射動作を実行する。この吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第2ギャップ領域A2にヘッド20から液体を吐出させずに、第1ギャップ領域A1にヘッド20から液体Jを吐出させる。また、第1光照射動作では、制御装置60は、第1ギャップ領域A1に対して光照射部30から光を照射する。これにより、第1ギャップ領域A1における光の照度が第1硬化時間で液体Jの硬化照度I0に達し、第1ギャップ領域A1上の液体Jが硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0085】
それから、制御装置60は、搬送動作を行わずに、ヘッドユニット11を右側に移動させてから、第2走査を実行する。この第2走査において、制御装置60は、第1走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第2速度で左側に移動させながら、第2ギャップでは吐出動作を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、第2光照射動作を実行する。この吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第1ギャップ領域A1にヘッド20から液体を吐出させずに、第2ギャップ領域A2にヘッド20から液体Jを吐出させる。また、第2光照射動作では、制御装置60は、第2ギャップ領域A2に対して光を照射する。これにより、第2ギャップ領域A2における光の照度が第2硬化時間で液体Jの硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域A2の液体Jが硬化する。
【0086】
この第1走査及び第2走査を搬送動作と、当該搬送動作に後続する搬送動作との間に実行する。この第1走査の第1光照射動作における光照射部30の第1速度を第2走査の第2光照射動作における光照射部30の第2速度よりも遅くする。これにより、第1ギャップでは第2ギャップよりも光照射部30による光照射範囲の移動を遅くなり、液体Jの第1硬化時間を第2硬化時間に一致又は近づけることができる。よって、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0087】
<変形例6>
変形例6に係る印刷装置10では、実施の形態4において、制御装置60は、ギャップが所定条件を満たす場合には、第1光照射動作及び第2光照射動作を1つの走査で行い、ギャップが所定条件を満たさない場合には、第1走査及び第2走査を別々に行う。
【0088】
具体的には、
図12(a)に示すように、制御装置60は、左右方向における第1ギャップ領域A1の長さL1及び第2ギャップ領域A2の長さL2をギャップ情報に基づいて取得する。印刷媒体Aに傾斜が小さい又はなく或いは段差が少ない又はなく、長さL1及び長さL2の両方の長さが所定長さ以上である場合、各走査において光照射部30の速度を切り替える数が少ない又はない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たすとして、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させて第1光照射動作及び第2光照射動作を行う。
【0089】
一方、印刷媒体Aに大きい傾斜又は多くの段差が設けられており、長さL1及び長さL2の少なくともいずれか一方の長さが所定長さ未満である場合、走査において光照射部30の速度を短時間に切り替えなければならない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たさないとして、第1走査及び第2走査を別々に行う。これにより、制御装置60は、第1走査の第1光照射動作では光照射部30を第1速度で移動させ、第2走査の第2光照射動作では光照射部30を第2速度で移動させる。これにより、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させずに、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0090】
<変形例7>
変形例7に係る印刷装置10では、変形例6において、移動方向におけるギャップの変化率が所定率未満である場合には、ギャップが所定条件を満たし、ギャップの変化率が所定率以上である場合には、ギャップが所定条件を満たさない。
【0091】
具体的には、
図12(b)に示すように、印刷媒体Aと光照射部30とのギャップの閾値は、複数(例えば、上記の所定値G1である第1所定値G1、及び、第1所定値G1よりも小さい第2所定値G2)を有している。この場合、ギャップは、第1所定値G1以上である第1ギャップ、第1所定値G1未満且つ第2所定値G2以上である第2ギャップ、及び、第2所定値G2未満の第3ギャップを有している。このため、印刷媒体Aは、第1ギャップの領域である第1ギャップ領域A1、第2ギャップの領域である第2ギャップ領域A2、及び、第3ギャップの領域である第3ギャップ領域A3を有している。
【0092】
例えば、制御装置60は、左右方向における単位長さL当たりに変化する上下方向におけるギャップの長さHであるギャップの変化率H/Lをギャップ情報に基づいて取得する。印刷媒体Aに大きい傾斜が設けられていると、ギャップの変化率が所定率以上である。この場合、左右方向において印刷媒体Aにおける各ギャップ領域の距離が短く、印刷媒体A上を移動する光照射部30の速度を短時間に切り替えなければならない。このため、制御装置60は、所定条件を満たさないとして、第1走査、第2走査及び第3走査を別々に行う。
【0093】
よって、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データ、第2ギャップ用印刷データ及び第3ギャップ用印刷データに分割する。そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を第1速度で移動させながら、ヘッド20から第1ギャップ領域A1に液体Jを第1ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第1ギャップ領域A1に光を照射する。これにより、第1ギャップ領域A1における液体Jが第1硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0094】
そして、制御装置60は、搬送動作を実行せずに、第2走査を実行する。この第2走査では、制御装置60は、第1走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第1速度よりも速い第2速度で移動させながら、ヘッド20から第2ギャップ領域A2に液体Jを第2ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第2ギャップ領域A2に光を照射する。これにより、第2ギャップ領域A2における液体Jが第2硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0095】
さらに、制御装置60は、搬送動作を実行せずに、第3走査を実行する。この第3走査では、制御装置60は、第2走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第2速度よりも速い第3速度で移動させながら、ヘッド20から第3ギャップ領域A3に液体Jを第3ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第3ギャップ領域A3に光を照射する。これにより、第3ギャップ領域A3における液体Jが第3硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。このように、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させずに、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0096】
一方、印刷媒体Aにおいて傾斜が小さい又はないと、ギャップの変化率が所定率未満である。この場合、左右方向において印刷媒体Aにおける各ギャップ領域の距離が長く、1つの走査において印刷媒体A上を移動する光照射部30の速度を切り替える数が少ない又はない。このため、制御装置60は、所定条件を満たすとして、第1光照射動作、第2光照射動作及び第3光照射動作を1つの走査で行う。これにより、制御装置60は、第1光照射動作ではヘッドユニット11を第1速度で移動させ、第2光照射動作ではヘッドユニット11を第2速度で移動させ、第3光照射動作ではヘッドユニット11を第3速度で移動させる。このように、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させる。このように、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0097】
<変形例8>
変形例8に係る印刷装置10では、実施の形態4及び変形例6~7において、制御装置60は、第1走査及び第2走査を別々に行う場合であって、第2走査を実行してから第1走査を実行するときには、第1走査では第2ギャップ領域に加えて第1ギャップ領域に光を照射させる。
【0098】
具体的には、制御装置60は、第2走査では、第2速度で移動するヘッドユニット11において、ヘッド20から第2ギャップ領域A2に液体Jを吐出させてから、光照射部30から第2ギャップ領域A2に対して光を照射する。そして、制御装置60は、印刷媒体Aを搬送させずに、ヘッドユニット11を右側に移動させてから、第1走査を実行する。
【0099】
ここで、制御装置60は、第1速度で移動するヘッドユニット11において、ヘッド20から第1ギャップ領域A1に液体Jを吐出させてから、光照射部30から第1ギャップ領域A1及び第2ギャップ領域A2に光を照射する。これにより、光は、第1ギャップ領域A1の液体J及び第2ギャップ領域A2の液体Jに照射されて、液体Jが硬化する。この際、第1ギャップ領域A1の光の照度は第2ギャップ領域A2よりも小さいが、第1ギャップ領域A1の液体Jには、第1走査及び第2走査の両方で光が照射されるため、第1ギャップ領域A1の液体Jを十分に硬化させることができる。
【0100】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る印刷装置10では、複数のノズル21は、第1方向に交差する第2方向に並んでノズル列26を成し、ノズル列26は、第1方向に並んで複数設けられ、第1ノズル列26a、及び、第1ノズル列26aよりも光照射部30に近い第2ノズル列26bを含む。制御装置60は、光照射部30に対する印刷媒体Aのギャップが第1ギャップのときは、第2ノズル列26bのノズル21から液体を吐出させずに第1ノズル列26aのノズル21から液体Jを吐出させ、ギャップが第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、第1ノズル列26aのノズル21から液体を吐出させずに第2ノズル列26bのノズル21から液体Jを吐出させる。
【0101】
ここで、制御装置60は、相対移動装置40によりヘッド20及び光照射部30を移動させる移動動作、ヘッド20から液体Jを吐出させる吐出動作、及び、光照射部30から光を照射させる光照射動作を含む走査と、搬送装置50により印刷媒体Aを搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返しながら印刷する場合、ギャップが第1ギャップである印刷媒体Aの第1ギャップ領域に第1ノズル列26aから液体Jを吐出させる第1吐出動作、及び、ギャップが第2ギャップである印刷媒体Aの第2ギャップ領域に第2ノズル列26bから液体Jを吐出させる第2吐出動作を1つの走査で行う、又は、走査は、第2吐出動作を含まずに第1吐出動作を含む第1走査、及び、第1吐出動作を含まずに第2吐出動作を含む第2走査を有し、第1走査及び第2走査を搬送動作と当該搬送動作に後続する搬送動作との間において別々に行う。
【0102】
具体的には、例えば、
図13(a)の例では、タンク12は、シアン用タンク12C、マゼンタ用タンク12M、イエロー用タンク12Y及びブラック用タンク12Kを有している。シアン用タンク12Cはシアンの液体を収容し、マゼンタ用タンク12Mはマゼンタの液体を収容し、イエロー用タンク12Yはイエローの液体を収容し、ブラック用タンク12Kはブラックの液体を収容している。
【0103】
また、ヘッドユニット11では、ヘッド20は8本のノズル列26を有している。8本のノズル列26は、シアンの第1ノズル列26a及び第2ノズル列26b、マゼンタの第1ノズル列26a及び第2ノズル列26b、イエローの第1ノズル列26a及び第2ノズル列26b、ブラックの第1ノズル列26a及び第2ノズル列26bを有している。シアンの各ノズル列26は、そのノズル21がシアン用タンク12Cに液体流路により接続され、シアン用タンク12Cから供給されたシアンの液体を吐出する。マゼンタの各ノズル列26は、そのノズル21がマゼンタ用タンク12Mに液体流路により接続され、マゼンタ用タンク12Mから供給されたマゼンタの液体を吐出する。イエローの各ノズル列26は、そのノズル21がイエロー用タンク12Yに液体流路により接続され、イエロー用タンク12Yから供給されたイエローの液体を吐出する。ブラックの各ノズル列26は、そのノズル21がブラック用タンク12Kに液体流路により接続され、ブラック用タンク12Kから供給されたブラックの液体を吐出する。なお、各液体の第1ノズル列26aと第2ノズル列26bとは、互いに異なるタンク12に接続されていてもよい。
【0104】
例えば、シアンの第1ノズル列26a、マゼンタの第1ノズル列26a、イエローの第1ノズル列26a、ブラックの第1ノズル列26a、シアンの第2ノズル列26b、マゼンタの第2ノズル列26b、イエローの第2ノズル列26b及びブラックの第2ノズル列26bが、左右方向において間隔を空けながら配置されている。右側から左側に視たときに、各ノズル列26のノズル21が互いに重なるように配置されている。
【0105】
各色において第1ノズル列26aは第2ノズル列26bよりも左側に配置されている。左右方向において、第1ノズル列26aと光照射部30との第1間隔F1は、第2ノズル列26bと光照射部30との第2間隔F2よりも大きい。
【0106】
印刷処理の走査では、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を左側に移動させながら、ヘッド20から印刷媒体Aに液体を基づいて吐出すると共に、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射する。
【0107】
ここで、シアンの液体を吐出するためには、第1ノズル列26aのノズル21である第1ノズル21a、及び、第2ノズル列26bのノズル21である第2ノズル21bのいずれかのノズル21から液体を吐出させる。このため、
図14(a)に示すように、制御装置60は、第2ギャップでは第2吐出動作を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行し、ヘッド20の第2ノズル21bから液体Jを吐出させる。このとき、時間t02で液体Jが印刷媒体Aに着弾してから時間ta3で印刷媒体Aにおける光の照度が所定の硬化照度I0に達し、この間の硬化時間Ta3で液体Jは硬化する。
【0108】
また、
図14(b)に示すように、制御装置60は、第1ギャップでは第1吐出動作を第1ギャップ用印刷データに基づいて実行し、ヘッド20の第1ノズル21aから液体Jを吐出させる。このとき、時間t01で液体Jが印刷媒体Aに着弾してから時間tb3で印刷媒体Aにおける光の照度が所定の硬化照度I0に達し、この間の硬化時間Tb3で液体Jは硬化する。
【0109】
この第1ギャップにおける光照射部30の光照射範囲は第2ギャップにおける光照射範囲よりも広い。これに対し、第2ギャップでは、第1ノズル21aよりも光照射部30に近い第2ノズル21bから液体Jを吐出させる。このため、硬化時間Tb3が硬化時間Ta3に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0110】
なお、
図13(a)に示すように、左右方向において、互いに隣接する第1ノズル列26a同士の間、及び、互いに隣接する第2ノズル列26b同士の間には、間隔F3がある。このため、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの第1ノズル列26aと、光照射部30との第1間隔F1同士には差(間隔F3)があり、また、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの第2ノズル列26bと、光照射部30との第2間隔F2同士にも差(間隔F3)がある。これにより、各ノズル列26からの液体Jが光照射部30からの光により硬化するまでの硬化時間に差が生じる。
【0111】
しかしながら、ノズル列26同士の間隔F3は、第1ノズル列26aと第2ノズル列26bとの間隔F4、第1間隔F1及び第2間隔F2よりも非常に小さい。このため、ノズル列26同士の間隔F3による液体Jの硬化時間の差は、各ノズル列26の液体Jの硬化時間よりも非常に小さい。よって、ノズル列26同士の間隔F3による液体Jの硬化時間の差による液体Jの硬化物の外観の差はほとんどない。
【0112】
また、第1吐出動作及び第2吐出動作を互いに別々の走査により実行してもよい。この場合、制御装置60は、第2走査を実行して、ヘッドユニット11を所定の速度で移動させながら、第2吐出動作を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、光照射動作を実行する。この第2吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第1ギャップ領域に対してヘッド20から液体を吐出させずに、第2ギャップ領域に対して第2ノズル21bから液体Jを吐出させる。また、光照射動作では、制御装置60は、第2ギャップ領域に対して光を照射する。これにより、第2ギャップ領域における光の照度が第2硬化時間Ta3で液体Jの硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域の液体Jが硬化して、印刷媒体Aに印刷する。なお、光照射動作では、第1ギャップ領域に光を照射してもよいし、照射しなくてもよい。
【0113】
そして、制御装置60は、印刷媒体Aを搬送させずに、ヘッドユニット11を右側に移動させてから、第1走査を実行する。この第1走査では、制御装置60は、第2走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を所定の速度で左側に移動させながら、第1吐出動作を第1ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、光照射動作を実行する。この第1吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第2ギャップ領域に対してヘッド20から液体を吐出させずに、第1ギャップ領域に対して第1ノズル21aから液体Jを吐出させる。また、光照射動作では、制御装置60は、第1ギャップ領域に対して光を照射する。これにより、第1ギャップ領域における光の照度が第1硬化時間Tb3で液体Jの硬化照度I0に達し、第1ギャップ領域の液体Jが硬化して、印刷媒体Aに印刷する。なお、光照射動作では、第2ギャップ領域に光を照射してもよいし、照射しなくてもよい。
【0114】
この第1走査及び第2走査を搬送動作と、当該搬送動作に後続する搬送動作との間に実行する。この第1走査の第1吐出動作において液体を吐出する第1ノズル21a、第2走査の第2吐出動作において液体を吐出する第2ノズル21bよりも光照射部30から離れている。これにより、液体Jの第1硬化時間Tb3を第2硬化時間Ta3に一致又は近づけることができる。よって、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0115】
<変形例9>
変形例9に係る印刷装置10では、実施の形態5において、制御装置60は、ギャップが所定条件を満たす場合には、第1吐出動作及び第2吐出動作を1つの走査で行い、ギャップが所定条件を満たさない場合には、第1走査及び前記第2走査を別々に行う。
【0116】
具体的には、
図12(a)に示すように、制御装置60は、左右方向における第1ギャップ領域A1の長さL1及び第2ギャップ領域A2の長さL2をギャップ情報に基づいて取得する。印刷媒体Aに傾斜が小さい又はなく或いは段差が少ない又はなく、長さL1、L2が所定長さ以上である場合、ヘッド20の第1吐出動作及び第2吐出動作を切り替える数が少ない又はない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たすとして、1つの走査においてヘッド20の第1吐出動作及び第2吐出動作を行う。
【0117】
一方、印刷媒体Aに大きい傾斜又は多くの段差が設けられており、長さL1、L2が所定長さ未満である場合、走査においてヘッド20の第1吐出動作及び第2吐出動作を短時間に切り替えなければならない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たさないとして、第1走査及び第2走査を別々に行う。これにより、制御装置60は、第1走査の第1吐出射動作では第1ノズル21aから液体を吐出させ、第2走査の第2吐出射動作では第2ノズル21bから液体を吐出する。これにより、1つの走査において液体を吐出させるノズル21を変化させずに、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0118】
なお、移動方向におけるギャップの変化率が所定率未満である場合には、ギャップが所定条件を満たし、ギャップの変化率が所定率以上である場合には、ギャップが所定条件を満たさなくてもよい。この場合、
図12(b)に示すように、制御装置60は、左右方向における単位長さL当たりに変化する上下方向におけるギャップの長さHであるギャップの変化率H/Lをギャップ情報に基づいて取得する。この変化率が所定率以上である場合、所定条件を満たさないとして、第1走査及び第2走査を別々に行ってもよい。一方、変化率H/Lが所定率未満である場合、所定条件を満たすとして、第1吐出動作及び第2吐出動作を1つの走査で行ってもよい。
【0119】
<変形例10>
変形例10に係る印刷装置10では、実施の形態5及び変形例9において、第1方向の一方側から視たときに、第1ノズル列26aのノズル21である第1ノズル21aと、第2ノズル列26bのノズル21である第2ノズル21bとは、重なっておらず且つ第2方向に所定のノズル間隔だけズレて位置している。この場合、制御装置60は、第1走査及び第2走査を別々に行う場合に、第1走査及び第2走査のいずれか一方の走査と、他方の走査との間において、印刷媒体Aをノズル間隔分、搬送させる。
【0120】
具体的には、
図13(b)に示すように、各液体の第1ノズル21aと第2ノズル21bとは、左右方向においては重ならずに、前後方向において位置がズレている。例えば、右側から視たときに前後方向に互いに隣接する第1ノズル21a同士の中間に第2ノズル21bが配置されるように、前後方向において第1ノズル21aと第2ノズル21bとはズレている。この場合、ズレ量である第1ノズル21aと第2ノズル21bとのノズル間隔は、前後方向に隣接する第1ノズル21a同士の間隔Dの半分のD/2となる。
【0121】
例えば、凹凸が小さい又はない印刷媒体Aに対して高画質印刷を行う場合、制御装置60は、第1ノズル21a及び第2ノズル21bを用いて吐出動作を実行する。これにより、第1ノズル21aからの液体の着弾位置と、前後方向においてこれに隣接する第1ノズル21aからの液体の着弾位置との間に、第2ノズル21bからの液体が着弾する。このため、画像の解像度が増加し、画質の向上が図られる。
【0122】
一方、凹凸が大きい印刷媒体Aに対しては、例えば、第1ノズル21aを第1ギャップ領域A1における印刷に用い、第2ノズル21bを第2ギャップ領域A2における印刷に用いる。この場合、制御装置60は、第1走査及び第2走査を別々に行う。ここで、制御装置60は、第1走査を実行し、ヘッドユニット11を所定速度で左側に移動しながら、第1ノズル21aから印刷媒体Aの第1ギャップ領域A1に液体が吐出させると共に、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射させる。
【0123】
この第1走査により、印刷媒体Aに印刷される第1印刷範囲は、前後方向において第1ノズル列26aに対応する範囲R1である。これに対し、第2走査により印刷媒体Aに印刷される第2印刷範囲は、前後方向において第2ノズル列26bに対応する範囲R2である。この第1印刷範囲と第2印刷範囲とは、第1ノズル21aと第2ノズル21bとのズレ量D/2、ずれている。このため、制御装置60は、第1走査の後、第1ノズル21aと第2ノズル21bとのズレ量D/2、印刷媒体Aを前方へ搬送する。
【0124】
そして、制御装置60は、ヘッドユニット11を右側に移動してから、第2走査を行う。この第2走査では、制御装置60は、ヘッドユニット11を所定速度で左側に移動しながら、第2ノズル21bから印刷媒体Aの第2ギャップ領域に液体が吐出させると共に、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射させる。この第2走査による第2印刷範囲は、前後方向において第1印刷範囲と重なる。このため、前後方向における第1ノズル21aと第2ノズル21bとのズレに起因する画像の低下を抑制することができる。
【0125】
そして、制御装置60は、第2走査の後、搬送動作を実行する。この搬送動作では、制御装置60は、第2印刷範囲に相当する距離、印刷媒体Aを前方に搬送する。これにより、印刷媒体Aのうち、前回の第1走査及び第2走査により印刷された画像の後方に隣接して、今回の第1走査及び第2走査により画像が印刷される。このように、第1走査及び第2走査と、搬送動作とを交互に繰り返すことにより、印刷データに基づいた画像が印刷媒体Aに印刷される。
【0126】
<変形例11>
変形例11に係る印刷装置10では、実施の形態5及び変形例9~10において、ヘッド20は、第1液体を吐出する第1ノズル列26aのノズル21を有する第1ヘッド20a、及び、第1液体よりも高粘度の第2液体を吐出する第2ノズル列26bのノズル21を有する第2ヘッド20bを含んでいる。
【0127】
具体的には、例えば、
図15(a)に示すタンク12は、第1液体を収容する第1タンク12a、及び、第1液体よりも粘度が高い第2液体を収容する第2タンク12bを有している。各タンク12は、シアン用タンク12C、マゼンタ用タンク12M、イエロー用タンク12Y及びブラック用タンク12Kを有している。この第2タンク12bのシアン用タンク12Cに収容されている第2液体であるシアンの液体は、第1タンク12aのシアン用タンク12Cに収容されている第1液体であるシアンの液体よりも高粘度である。なお、他の液体についても、シアンの液体と同様の粘度である。
【0128】
また、ヘッドユニット11は、第1ヘッド20a、第2ヘッド20b及び光照射部30を有し、これらはこの順に左側から右側に並んで配置されている。この第1ヘッド20aと光照射部30との第1間隔は、第2ヘッド20bと光照射部30との第2間隔と等しい。例えば、第1ヘッド20aは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの第1ノズル列26aを有し、第2ヘッド20bは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの第2ノズル列26bを有している。
【0129】
シアンの第1ノズル列26aの第1ノズル21aは第1タンク12aのシアン用タンク12Cに接続され、マゼンタの第1ノズル列26aの第1ノズル21aは第1タンク12aのマゼンタ用タンク12Mに接続され、イエローの第1ノズル列26aの第1ノズル21aは第1タンク12aのイエロー用タンク12Yに接続され、ブラックの第1ノズル列26aの第1ノズル21aは第1タンク12aのブラック用タンク12Kに接続されている。また、シアンの第2ノズル列26bの第2ノズル21bは第2タンク12bのシアン用タンク12Cに接続され、マゼンタの第2ノズル列26bの第2ノズル21bは第2タンク12bのマゼンタ用タンク12Mに接続され、イエローの第2ノズル列26bの第2ノズル21bは第2タンク12bのイエロー用タンク12Yに接続され、ブラックの第2ノズル列26bの第2ノズル21bは第2タンク12bのブラック用タンク12Kに接続されている。このため、シアンの液体は第1ノズル21a及び第2ノズル21bから吐出されるが、第2ノズル21bから吐出される第2液体の粘度は第1ノズル21aから吐出される第1液体の粘度よりも高い。なお、他の液体もシアンの液体と同様である。
【0130】
このような印刷装置10において、印刷処理を実行する場合、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。制御装置60は、走査において、ヘッドユニット11を左に移動しながら、ヘッド20から液体を吐出させると共に、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射する。
【0131】
ここで、制御装置60は、第1ノズル21aから第1ギャップ領域A1に第1ギャップ用印刷データに基づいて第1液体を吐出させ、第2ノズル21bから第2ギャップ領域A2に第2ギャップ用印刷データに基づいて第2液体を吐出させる。この際、第1液体よりも高粘度の第2液体は、第1液体よりも吐出タイミングが遅くなる。このため、第2ギャップ領域A2における液体の硬化時間を、第1ギャップ領域A1における液体の硬化時間に一致又は近づき、液体の硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0132】
(実施の形態6)
実施の形態6に係る印刷装置10は、第1液体を印刷媒体Aに吐出する第1ノズル21aを有する第1ヘッド20aと、第1液体よりも高粘度の第2液体を印刷媒体Aに吐出する第2ノズル21bを有する第2ヘッド20bと、第1ヘッド20aと第2ヘッド20bとの間に配置され、且つ、印刷媒体A上の液体に光を照射する光照射部30と、制御装置60と、を備えている。制御装置60は、光照射部30に対する印刷媒体Aのギャップが第1ギャップのときは、第2ノズル21bから第1液体を吐出させずに第1ノズル21aから第1液体を吐出させ、ギャップが第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときは、第1ノズル21aから第1液体を吐出させずに第2ノズル21bから第2液体を吐出させる。
【0133】
具体的には、例えば、
図15(b)に示すタンク12は、第1液体を収容する第1タンク12a、及び、第1液体よりも粘度が高い第2液体を収容する第2タンク12bを有している。各タンク12は、シアン用タンク12C、マゼンタ用タンク12M、イエロー用タンク12Y及びブラック用タンク12Kを有している。この第2タンク12bのシアン用タンク12Cに収容されている第2液体であるシアンの液体は、第1タンク12aのシアン用タンク12Cに収容されている第1液体であるシアンの液体よりも高粘度である。なお、他の液体についても、シアンの液体と同様の粘度である。
【0134】
また、ヘッドユニット11は、第1ヘッド20a、光照射部30及び第2ヘッド20bを有している。第1ヘッド20a、光照射部30及び第2ヘッド20bはこの順に左側から右側に並んで配置されている。この第1ヘッド20aと光照射部30との第1間隔F1は、第2ヘッド20bと光照射部30との第2間隔F2と等しい。
【0135】
第1ヘッド20aは、シアンの第1ノズル列26a、マゼンタの第1ノズル列26a、イエローの第1ノズル列26a、ブラックの第1ノズル列26aを有し、これらのノズル列26はこの順で左側から右側に並んで配置されている。また、第2ヘッド20bは、シアンの第2ノズル列26b、マゼンタの第2ノズル列26b、イエローの第2ノズル列26b、ブラックの第2ノズル列26bを有し、これらのノズル列26はこの順で左側から右側に並んで配置されている。
【0136】
このような印刷装置10において、印刷処理を実行する場合、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。制御装置60は、第1走査及び第2走査を別々に実行する。なお、以下では、第2走査の実行後に第1走査を実行する場合について説明するが、第1走査後に第2走査を実行してもよい。
【0137】
制御装置60は、第2走査を実行して、ヘッドユニット11を所定速度で左側に移動させながら、第2吐出動作を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、ヘッド20に追随する光照射部30から第2ギャップ領域A2に対して光を照射する。この第2吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第1ギャップ領域A1に対して第1ヘッド20aから第1液体を吐出させずに、第2ギャップ領域A2に対して第2ヘッド20bから第2液体を吐出させる。これにより、第2ギャップ領域における光の照度が第2硬化時間で液体の硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域A2の液体が硬化する。
【0138】
そして、制御装置60は、搬送動作を行わずに、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を所定速度で右側に移動させながら、第1吐出動作を第1ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、ヘッド20に追随する光照射部30から第1ギャップ領域A1に対して光を照射する。この第1吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第2ギャップ領域A2に対して第2ヘッド20bから第2液体を吐出させずに、第1ギャップ領域A1に対して第1ヘッド20aから第1液体を吐出させる。これにより、第1ギャップ領域A1における光の照度が第1硬化時間で液体の硬化照度I0に達し、第1ギャップ領域A1の液体が硬化する。
【0139】
この第1走査及び第2走査を、搬送動作と、当該搬送動作に後続する搬送動作との間に実行する。この際、第1液体よりも高粘度の第2液体は、第1液体よりも吐出タイミングが遅くなる。このため、第2ギャップ領域A2における液体の硬化時間を、第1ギャップ領域A1における液体の硬化時間に一致又は近づき、液体の硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0140】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例では、相対移動装置40は、左右方向において、印刷媒体Aを移動させずに、印刷媒体Aに対してヘッド20を移動させた。これに対し、相対移動装置40は、左右方向において、ヘッド20を移動させずに、ヘッド20に対して印刷媒体Aを移動させるようにステージ51を移動させてもよい。
【0141】
例えば、相対移動装置40がステージ51を移動させる場合、相対移動装置40は搬送装置50を含んでいてもよい。この場合、キャリッジ42はステージ51を搭載し、ステージ支持台53は移動レール41を支持する。これにより、ステージ51は移動レール41に沿って左右方向に移動可能であって、移動レール41は前後方向に移動可能である。よって、ステージ51は、ヘッドユニット11に対して左右方向及び前後方向に移動する。
【0142】
上記全ての実施の形態及び変形例において、光照射部30と印刷媒体Aとの間にレンズを配置してもよい。このレンズにより光照射部30からの光の照射範囲が狭くなる。このレンズがない時の光照射範囲からレンズをある時の光照射範囲の差は、光照射部30と印刷媒体Aとの間のギャップが大きくなるほど大きくなる。これにより、ギャップの差に起因する光照射範囲の差を小さくすることができる。よって、光による印刷媒体A上の液体の硬化時間の差を縮小し、液体の硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0143】
上記実施の形態4及び変形例6~8において、例えば、左右方向において印刷媒体Aが傾斜している場合、制御装置60は、印刷媒体Aに対する光照射部30のギャップが大きくなるほど印刷媒体Aと光照射部30の相対移動速度が連続的に遅くなるように、相対移動装置40を制御してもよい。
【0144】
上記実施の形態5~6及び変形例9~11では、粘度が異なる液体をギャップに応じて使い分けた。この粘度に代えて、仮硬化する照度が異なる液体をギャップに応じて使い分けてもよい。液体が仮硬化する照度は、液体に含まれている高分子を重合反応で合成する重合開始剤、及び、重合させる分子の少なくともいずれか一方の含有率及び種類により調整される。
【0145】
例えば、第1液体を第1ギャップ領域に吐出し、第1液体よりも仮硬化照度が高い第2液体を第1ギャップ領域によりギャップが小さい第2ギャップ領域に吐出してもよい。これにより、第2ギャップ領域における第2液体の硬化時間と、第1ギャップ領域における第1液体の硬化時間とを一致又は近づけ、各液体の硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0146】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明に係る印刷装置は、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0148】
10 :印刷装置
20 :ヘッド
30 :光照射部
30a :第1光照射部
30b :第2光照射部
31 :光源
31a :第1光源
31b :第2光源
31c :近接光源
33 :光源列
33a :第1光源列
33b :第2光源列
33c :近接光源列
40 :相対移動装置
42 :キャリッジ
60 :制御装置