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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152179
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054853
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC11
2C056EC14
2C056EC31
2C056EC33
2C056EC37
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA37
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、液体を印刷媒体Aに吐出するヘッド20と、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部30と、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ移動方向において前記印刷媒体Aと前記ヘッド及び前記光照射部とを相対的に移動させる相対移動装置40と、制御装置60と、を備え、前記制御装置は、前記印刷媒体に対する前記光照射部のギャップが第1ギャップのときは、前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、前記印刷媒体Aと前記光照射部の相対移動速度が遅くなるように、前記相対移動装置を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、
前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ移動方向において前記印刷媒体と前記ヘッド及び前記光照射部とを相対的に移動させる相対移動装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記印刷媒体に対する前記光照射部のギャップが第1ギャップのときは、前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、前記印刷媒体と前記光照射部の相対移動速度が遅くなるように、前記相対移動装置を制御する、印刷装置。
【請求項2】
前記印刷媒体を前記移動方向に交差する搬送方向に搬送する搬送装置を備え、
前記制御装置は、
前記相対移動装置により前記ヘッド及び前記光照射部を移動させる移動動作、前記ヘッドから前記液体を吐出させる吐出動作、及び、前記光照射部から前記光を照射させる光照射動作を含む走査と、前記搬送装置により前記印刷媒体を搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返しながら印刷する場合、
前記ヘッド及び前記光照射部を第1速度にて移動させながら、前記ギャップが前記第1ギャップである前記印刷媒体の第1ギャップ領域に前記光を照射させる第1光照射動作、及び、前記ヘッド及び前記光照射部を前記第1速度よりも速い第2速度にて移動させながら、前記ギャップが前記第2ギャップである前記印刷媒体の第2ギャップ領域に前記光を照射させる第2光照射動作を1つの前記走査で行う、又は、
前記走査は、前記第2光照射動作を含まずに前記第1光照射動作を含む第1走査、及び、前記第1光照射動作を含まずに前記第2光照射動作を含む第2走査を有し、前記第1走査及び前記第2走査を前記搬送動作と当該搬送動作に後続する前記搬送動作との間において別々に行う、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記ギャップが所定条件を満たす場合には、前記第1光照射動作及び前記第2光照射動作を1つの前記走査で行い、
前記ギャップが前記所定条件を満たさない場合には、前記第1走査及び前記第2走査を別々に行う、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記移動方向における前記ギャップの変化率が所定率未満である場合には、前記ギャップが前記所定条件を満たし、
前記ギャップの変化率が前記所定率以上である場合には、前記ギャップが前記所定条件を満たさない、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1走査及び前記第2走査を別々に行う場合であって、前記第2走査を実行してから前記第1走査を実行するときには、前記第1走査では前記第2ギャップ領域に加えて前記第1ギャップ領域に前記光を照射させる、請求項2~4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体を支持するステージを更に備え、
前記相対移動装置は、前記ステージを移動する、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として、特許文献1の印刷装置が知られている。この印刷装置は、記録媒体に液体を吐出可能なヘッドと、印刷媒体に吐出された液体に光を照射可能な発光素子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-58670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の印刷装置では、ヘッドから液体を吐出させ印刷媒体に着弾させてから、発光素子から光を印刷媒体に照射させ液体を印刷媒体に定着させることにより、画像を印刷媒体に印刷している。このような印刷装置において、例えば、印刷媒体が立体形状である場合、その凹凸に応じて発光素子と印刷媒体との間隔が変化し、液体が印刷媒体に着弾してから光が印刷媒体上の液体に照射されるまでの時間が変化する。このため、光によって硬化した液体の外観が不均一になり、画像の品質低下を招いてしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体上の前記液体に光を照射する光照射部と、前記ヘッド及び前記光照射部が並ぶ移動方向において前記印刷媒体と前記ヘッド及び前記光照射部とを相対的に移動させる相対移動装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記印刷媒体に対する前記光照射部のギャップが第1ギャップのときは、前記ギャップが前記第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、前記印刷媒体と前記光照射部の相対移動速度が遅くなるように、前記相対移動装置を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる、印刷装置を提供することが可能であるという効果を奏する。
【0008】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷装置の斜視図である。
図2図1の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3図1のヘッドユニットを下方から視た概略図である。
図4図1のヘッドユニット及びステージを前方から視た概略図である。
図5図5(a)は、第2ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。図5(b)は、第1ギャップ領域における光の照度の経時変化を示すグラフである。
図6図6(a)は、ヘッドユニット及び、凹凸を有する印刷媒体を前方から視た概略図である。図6(b)は、ヘッドユニット及び、傾斜を有する印刷媒体を前方から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0011】
(実施の形態)
<印刷装置の構成>
本発明の実施の形態に係る印刷装置10は、図1に示すように、例えば、ヘッド20から印刷媒体Aに液体を吐出し、光照射部30から光を印刷媒体Aに照射して、画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷媒体Aとしては、布帛及び紙等のシート、並びに、ボール及びマグカップなどの立体物が挙げられる。液体は、光硬化性の液体であって、例えば、紫外線又は赤外線等の光によって硬化するインクである。また、例えば、印刷装置10は、3Dプリンタであって、ヘッド20から吐出したインクで形成し光照射部30から照射した光により硬化した造形物を作成してもよい。この場合、作成している造形物が印刷媒体Aである。さらに、印刷装置10は、作成した造形物に対してヘッド20からインクを吐出して光照射部30からインクに光を照射して、造形物に画像を印刷してもよい。この場合、作成した造形物が印刷媒体Aである。
【0012】
印刷装置10は、ヘッドユニット11、相対移動装置40、搬送装置50、タンク12及び制御装置60(図2)を備えている。なお、制御装置60の詳細については後述する。また、ヘッド20及び光照射部30が並ぶ移動方向を左右方向と称し、移動方向に交差(例えば、直交)する搬送方向を前後方向と称し、左右方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0013】
相対移動装置40は、一対の移動レール41、キャリッジ42、駆動ベルト43、移動モータ44を有し、ヘッドユニット11を左右方向に移動させる。一対の移動レール41は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット11を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ42は、ヘッドユニット11を搭載し、移動レール41に沿って左右方向に移動可能に支持されている。駆動ベルト43は、無端ベルトであって、左右方向に移動レール41に沿って延び、キャリッジ42に接続され、プーリを介して移動モータ44に連結されている。移動モータ44が駆動ベルト43を駆動することにより、移動レール41に沿ってキャリッジ42が左右方向に往復移動する。これにより、相対移動装置40は、左右方向において印刷媒体Aとヘッド20及び光照射部30とを相対的に移動させる。
【0014】
搬送装置50は、ステージ51、搬送レール52、ステージ支持台53及び搬送モータ54(図2)を有している。ステージ51は、その上面に印刷媒体Aが載置され、印刷媒体Aを支持して、上下方向において印刷媒体Aとヘッド20とのギャップを規定する。搬送レール52は、前後方向に延びている。ステージ支持台53は、例えば、ステージ51を支持し、搬送レール52に沿って前後方向に移動可能に支持され、搬送モータ54に連結されている。搬送モータ54がステージ支持台53を駆動することにより、ステージ51を前後方向に移動する。
【0015】
ヘッドユニット11は、ヘッド20及び光照射部30を備えており、これらの下面がステージ51の上面に対向するように配置されている。タンク12は、液体を収容する容器であって、ヘッド20にチューブ等により接続されて液体を供給する。
【0016】
<ヘッドユニットの構成>
図3及び図4に示すように、ヘッド20は、複数のノズル21、液体流路、流路形成体24、及び、複数の駆動素子25(図2)を有している。複数のノズル21は、前後方向において互いに等間隔に並んでノズル列26を成している。複数のノズル列26は、左右方向において互いに等間隔に並んでいる。
【0017】
流路形成体24は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル21及び液体流路が形成されている。ノズル21は、流路形成体24の下面にて開口している。液体流路は、タンク12(図1)及びノズル21に接続されており、共通流路23及び複数の個別流路22を有している。共通流路23は前後方向に延び、共通流路23から複数の個別流路22が分岐している。個別流路22は、その上流端が共通流路23に接続され、その下流端がノズル21に接続されている。このため、液体は、タンク12から共通流路23に流れ、共通流路23において前後方向に流れる間に個別流路22に分流し、ノズル21に供給される。
【0018】
駆動素子25は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータ等であって、個別流路22に対応して設けられ、個別流路22の容積を変動させるよう駆動する。これにより、個別流路22の液体に、ノズル21から液体を吐出する圧力が付与される。
【0019】
光照射部30は、ヘッド20が液体を吐出しながら移動する方向においてヘッド20の上流に配置されている。一方向印刷では、例えば、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し、右側に移動する際には液体を吐出しない。この場合、光照射部30は、印刷時の左側への移動方向においてヘッド20の上流である右側に配置されている。光照射部30は、液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0020】
なお、双方向印刷では、印刷装置10は、左右方向においてヘッド20を挟むように一対の光照射部30が配置される。一対の光照射部30のうちの右側の光照射部30は、左側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して左側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。また、一対の光照射部30のうちの左側の光照射部30は、右側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して右側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0021】
光照射部30は、複数の光源31、及び、光源31が搭載された回路基板32を有している。回路基板32は、例えば、絶縁性材料から成り、矩形の平板形状であって、光源31が搭載された下面を有している。光源31は、例えば、LED等の発光素子であって、制御装置60により駆動されて、ノズル21から吐出された液体を硬化する光(例えば、紫外線又は赤外線)を発光する。
【0022】
この光源31が放射した光の強度は、光源31の単位面積から単位時間当たりに出射した放射束であって、例えば、放射発散度(mW/cm)である。これに対し、光源31から照射された印刷媒体Aにおける光の照度は、光源31から単位時間当たりに入射した光の印刷媒体Aの単位面積当たりの放射束であった、例えば、放射照度(mW/cm)である。なお、照度は、放射照度(mW/cm)と光の照射時間(s)とを掛け合わせた積算光量であってもよい。積算光量は、光照射部30から照射される光の印刷媒体Aにおける単位面積当たりの光エネルギ(mJ/cm)である。
【0023】
複数の光源31は、前後方向に並んで光源列33を構成している。複数(例えば、7本)の光源列33は、左右方向に間隔を空けながら並べられている。各光源31は、互いに等しい強度の光を印刷媒体Aに放射する。
【0024】
<制御装置の構成>
制御装置60は、図2に示すように、ヘッド駆動回路63を介して駆動素子25に接続され、駆動素子25の駆動を制御する。制御装置60は、光源駆動回路64を介して光源31に接続され、光源31の駆動を制御する。制御装置60は、移動駆動回路65を介して移動モータ44に接続され、移動モータ44の駆動を制御する。制御装置60は、搬送駆動回路66を介して搬送モータ54に接続され、搬送モータ54の駆動を制御する。これにより、制御装置60は、移動モータ44及び搬送モータ54の駆動、停止及び回転速度等を制御する。これにより、ステージ51及びそれに載置された印刷媒体Aとヘッドユニット11との相対移動速度が制御される。
【0025】
制御装置60は、商用電源等の外部電源Bに電源回路67を介して接続されている。電源回路67は、外部電源Bからの直流電圧から出力電圧を生成し、印刷装置10における駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54等の各部に電力を供給する。
【0026】
制御装置60は、演算部61及び記憶部62を有している。記憶部62は、演算部61がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、印刷データ等の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、制御装置60は、集中制御する単独の制御装置60であってもよいし、分散制御する複数の制御装置60であってもよい。また、プログラムは、記憶部62以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。さらに、プログラムは、単独の記憶媒体に記憶されていてもよく、また、複数の記憶媒体に分割されて記憶されていてもよい。
【0027】
演算部61は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部61は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54を制御して、印刷処理を実行する。
【0028】
<印刷処理>
このような印刷装置10において、制御装置60は、印刷データを取得し、印刷データに基づいて印刷処理を実行する。印刷データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。印刷データは、記憶部62に記憶されていてもよいし、ネットワーク、コンピュータ及び記憶媒体等の外部機器から取得されてもよい。
【0029】
制御装置60が、移動モータ44を制御して、ヘッドユニット11を左右方向に移動させる移動動作を実行する。また、制御装置60は、駆動素子25を制御して、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。さらに、制御装置60は、光源31を制御して、光源31から光を照射させる光照射動作を実行する。さらに、制御装置60は、搬送モータ54を制御して、印刷媒体Aを前方へ搬送させる搬送動作を実行する。そして、印刷装置10が移動動作、吐出動作及び光照射動作を含む走査と、搬送動作とを交互に繰り返し、印刷処理を進めていく。
【0030】
この走査では、図4に示すように、ヘッド20が左側へ移動しながら、ヘッド20から液体を吐出する。これにより、ヘッド20の下面に対向した、ステージ51上の印刷媒体Aに液体が着弾する。また、光照射部30がヘッド20に追随して左側へ移動しながら、光源31から光を照射する。これにより、光源31に対向した印刷媒体A上の液体に光が照射され、この液体が光により硬化して印刷媒体Aに定着する。このため、液体によって印刷媒体Aに画像が印刷される。
【0031】
この図4の例では、印刷媒体Aは、光照射部30とのギャップが左右方向において異なり、ギャップは所定値G1以上の第1ギャップ、及び、所定値G1未満の第2ギャップを有している。このため、印刷媒体Aは、第1ギャップの領域である第1ギャップ領域A1、及び、第2ギャップの領域である第2ギャップ領域A2を有している。
【0032】
この場合、図5(a)に示す照度の光が光照射部30から第2ギャップ領域A2に照射される。また、図5(b)に示す照度の光が光照射部30から第1ギャップ領域A1に照射される。これらのように、光照射部30が光を印刷媒体Aに向かって下方に照射すると、光は光照射部30から下方に離れるほど、上下方向に直交する方向において広がっている。印刷媒体Aにおける光の照度(mW/cm)は、上下方向に直交する方向において光照射部30の中心ほど大きくなり、この中心から離れるほど小さくなる。この照度が印刷媒体A上において所定の硬化照度以上の範囲を光照射範囲とする。所定の硬化照度は、例えば、印刷媒体A上の液体を硬化させる照度I0である。
【0033】
この硬化としては、本硬化及び仮硬化がある。仮硬化は、着弾直後の未硬化状態の液体よりも液体の粘度が高いが、液体が完全には硬化していない状態であって、印刷媒体Aにおいて流動しない粘度にまで液体の粘度が高まった状態であり、具体的には液体がゲル状である。本硬化は、液体が完全に硬化している状態であって、具体的には、液体に手で触れても液体が手につかない状態である。
【0034】
この図5(a)に示す第2ギャップ領域A2における光照射部30からの光の照射範囲よりも、図5(b)に示す第1ギャップ領域A1における光照射部30からの光の照射範囲は広くなる。このため、例えば、液体Jが第1ギャップ領域A1に着弾してから印刷媒体A上で広がる前に光により硬化すると、その硬化物の外観がマット調になる。一方、例えば、液体Jが第2ギャップ領域A2に着弾してから印刷媒体A上で広がった後に光により硬化すると、その硬化物の外観がグロス調になる。
【0035】
このように、ギャップに応じて液体Jの硬化時間が異なると、硬化物の外観の不均一による印刷画質が低下する。これに対して、印刷装置10では、制御装置60は、印刷媒体Aに対する光照射部30のギャップが第1ギャップのときは、ギャップが第1ギャップよりも小さい第2ギャップのときに比べて、ステージ51と光照射部30の相対移動速度が遅くなるように、相対移動装置40を制御する。これにより、印刷媒体Aに着弾した液体Jが硬化するまでの硬化時間差を減少し、画質の低下を低減することができる。
【0036】
具体的には、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割する。また、制御装置60は、例えば、印刷装置10に備えられたセンサによる計測、又は、印刷媒体Aの形状を示す仕様に基づいて、印刷媒体Aと光照射部30とのギャップを示すギャップ情報を得る。そして、制御装置60は、移動動作によりヘッドユニット11を左側に移動させながら、吐出動作によりヘッド20から液体Jを印刷媒体Aに走査用印刷データに基づいて吐出させつつ、光照射動作により印刷媒体A上の液体Jに光照射部30から光を照射する。この移動動作において、制御装置60は、ギャップ情報に基づいて、ヘッドユニット11の光照射部30の移動速度を第1速度と第2速度との間で切り替える。
【0037】
これにより、図5(a)の第2ギャップ領域A2において、時間t0でヘッド20から液J体が着弾してから時間ta0で光照射部30からの光の照度が所定の硬化照度I0に達し、この間の第2硬化時間Ta0で液体Jが硬化する。また、図5(b)の第1ギャップ領域A1において、時間t0で液体Jが着弾してから時間tb0で光の照度が所定の硬化照度I0に達し、この間の第1硬化時間Tb0で液体Jが硬化する。
【0038】
この第1ギャップ領域における第1光照射部30aの光照射範囲が第2ギャップ領域における第2光照射部30bの光照射範囲よりも広いが、第1ギャップ領域A1における光照射部30の移動速度を第2ギャップ領域A2における光照射部30の移動速度よりも遅くする。これにより、第1硬化時間Tb0を第2硬化時間Ta0に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0039】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置60は、相対移動装置40によりヘッド20及び光照射部30を移動させる移動動作、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作、及び、光照射部30から光を照射させる光照射動作を含む走査と、搬送装置50により印刷媒体Aを搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返しながら印刷する場合、ヘッド20及び光照射部30を第1速度にて移動させながら、ギャップが第1ギャップである印刷媒体Aの第1ギャップ領域に光を照射させる第1光照射動作、及び、ヘッド20及び光照射部30を第1速度よりも速い第2速度にて移動させながら、ギャップが第2ギャップである印刷媒体Aの第2ギャップ領域に光を照射させる第2光照射動作を1つの走査で行う、又は、走査は、第2光照射動作を含まずに第1光照射動作を含む第1走査、及び、第1光照射動作を含まずに第2光照射動作を含む第2走査を有し、第1走査及び第2走査を搬送動作と当該搬送動作に後続する搬送動作との間において別々に行う。
【0040】
具体的には、制御装置60は、1つの走査において、移動動作によりヘッドユニット11を左側に移動させながら、吐出動作によりヘッド20から液体Jを印刷媒体Aに走査用印刷データに基づいて吐出させつつ、光照射動作により印刷媒体A上の液体Jに光照射部30から光を照射する。ここで、制御装置60は、ギャップ情報に基づいて、ヘッドユニット11の光照射部30の移動速度を第1速度と第2速度との間で切り替える。つまり、制御装置60は、第1ギャップでは第1速度で光照射部30を移動させ、第2ギャップでは第1速度よりも速い第2速度で光照射部30を移動させる。
【0041】
この走査の光照射動作による印刷媒体Aにおける光照射部30の光照射範囲は、第1ギャップ領域が第2ギャップ領域よりも広い。これに対し、第1ギャップ領域に光を照射する光照射部30の第1速度が第2ギャップ領域に光を照射する光照射部30の第2速度よりも遅い。このため、第1ギャップ領域における光照射範囲に移動速度が第2ギャップ領域における光照射範囲に移動速度が遅くなる。よって、第1ギャップ領域における光照射部30による液体Jの第1硬化時間Tb0が、第2ギャップ領域における光照射部30による液体Jの第2硬化時間Ta0に一致又は近づき、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、第1光照射動作及び第2光照射動作を互いに別々の走査により実行してもよい。この場合、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データと第2ギャップ用印刷データに分割する。なお、以下では、第1走査の実行後に第2走査を実行する場合について説明するが、第2走査後に第1走査を実行してもよい。
【0043】
そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を第1速度で移動させながら、第1ギャップでは吐出動作を第1ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、第1光照射動作を実行する。この吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第2ギャップ領域A2にヘッド20から液体を吐出させずに、第1ギャップ領域A1にヘッド20から液体Jを吐出させる。また、第1光照射動作では、制御装置60は、第1ギャップ領域A1に対して光照射部30から光を照射する。これにより、第1ギャップ領域A1における光の照度が第1硬化時間Tb0で液体Jの硬化照度I0に達し、第1ギャップ領域A1上の液体Jが硬化し、印刷媒体Aに印刷する。
【0044】
それから、制御装置60は、搬送動作を行わずに、ヘッドユニット11を右側に移動させてから、第2走査を実行する。この第2走査では、制御装置60は、第1走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第2速度で左側に移動させながら、第2ギャップでは吐出動作を第2ギャップ用印刷データに基づいて実行すると共に、第2光照射動作を実行する。この吐出動作では、制御装置60は、印刷媒体Aのうち第1ギャップ領域A1にヘッド20から液体を吐出させずに、第2ギャップ領域A2にヘッド20から液体Jを吐出させる。また、第2光照射動作では、制御装置60は、第2ギャップ領域A2に対して光を照射する。これにより、第2ギャップ領域A2における光の照度が第2硬化時間で液体Jの硬化照度I0に達し、第2ギャップ領域A2の液体Jが硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0045】
この第1走査及び第2走査を搬送動作と、当該搬送動作に後続する搬送動作との間に実行する。この第1走査の第1光照射動作における光照射部30の第1速度を第2走査の第2光照射動作における光照射部30の第2速度よりも遅くする。これにより、第1ギャップでは第2ギャップよりも光照射部30による光照射範囲の移動を遅くなり、液体Jの第1硬化時間を第2硬化時間に一致又は近づけることができる。よって、液体Jの硬化物の外観の不均一性を低減し、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0046】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、変形例1において、制御装置60は、ギャップが所定条件を満たす場合には、第1光照射動作及び第2光照射動作を1つの走査で行い、ギャップが所定条件を満たさない場合には、第1走査及び第2走査を別々に行う。
【0047】
具体的には、図6(a)に示すように、制御装置60は、左右方向における第1ギャップ領域A1の長さL1及び第2ギャップ領域A2の長さL2をギャップ情報に基づいて取得する。印刷媒体Aに傾斜が小さい又はなく或いは段差が少ない又はなく、長さL1及び長さL2の両方の長さが所定長さ以上である場合、各走査において光照射部30の速度を切り替える数が少ない又はない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たすとして、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させて第1光照射動作及び第2光照射動作を行う。
【0048】
一方、印刷媒体Aに大きい傾斜又は多くの段差が設けられており、長さL1及び長さL2の少なくともいずれか一方の長さが所定長さ未満である場合、走査において光照射部30の速度を短時間に切り替えなければならない。この場合、制御装置60は、所定条件を満たさないとして、第1走査及び第2走査を別々に行う。これにより、制御装置60は、第1走査の第1光照射動作では光照射部30を第1速度で移動させ、第2走査の第2光照射動作では光照射部30を第2速度で移動させる。これにより、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させずに、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0049】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10では、変形例2において、移動方向におけるギャップの変化率が所定率未満である場合には、ギャップが所定条件を満たし、ギャップの変化率が所定率以上である場合には、ギャップが所定条件を満たさない。
【0050】
具体的には、図6(b)に示すように、印刷媒体Aと光照射部30とのギャップの閾値は、複数(例えば、上記の所定値G1である第1所定値G1、及び、第1所定値G1よりも小さい第2所定値G2)を有している。この場合、ギャップは、第1所定値G1以上である第1ギャップ、第1所定値G1未満且つ第2所定値G2以上である第2ギャップ、及び、第2所定値G2未満の第3ギャップを有している。このため、印刷媒体Aは、第1ギャップの領域である第1ギャップ領域A1、第2ギャップの領域である第2ギャップ領域A2、及び、第3ギャップの領域である第3ギャップ領域A3を有している。
【0051】
例えば、制御装置60は、左右方向における単位長さL当たりに変化する上下方向におけるギャップの長さHであるギャップの変化率H/Lをギャップ情報に基づいて取得する。印刷媒体Aに大きい傾斜が設けられていると、ギャップの変化率が所定率以上である。この場合、左右方向において印刷媒体Aにおける各ギャップ領域の距離が短く、印刷媒体A上を移動する光照射部30の速度を短時間に切り替えなければならない。このため、制御装置60は、所定条件を満たさないとして、第1走査、第2走査及び第3走査を別々に行う。
【0052】
よって、制御装置60は、印刷データを走査毎の走査用印刷データに分割し、さらに、この走査用印刷データをギャップ情報に基づいて第1ギャップ用印刷データ、第2ギャップ用印刷データ及び第3ギャップ用印刷データに分割する。そして、制御装置60は、第1走査を実行して、ヘッドユニット11を第1速度で移動させながら、ヘッド20から第1ギャップ領域A1に液体Jを第1ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第1ギャップ領域A1に光を照射する。これにより、第1ギャップ領域A1における液体Jが第1硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0053】
そして、制御装置60は、搬送動作を実行せずに、第2走査を実行する。この第2走査では、制御装置60は、第1走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第1速度よりも速い第2速度で移動させながら、ヘッド20から第2ギャップ領域A2に液体Jを第2ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第2ギャップ領域A2に光を照射する。これにより、第2ギャップ領域A2における液体Jが第2硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。
【0054】
さらに、制御装置60は、搬送動作を実行せずに、第3走査を実行する。この第3走査では、制御装置60は、第3走査による印刷範囲上においてヘッドユニット11を第2速度よりも速い第3速度で移動させながら、ヘッド20から第3ギャップ領域A3に液体Jを第3ギャップ用印刷データに基づいて吐出すると共に、光照射部30から第3ギャップ領域A3に光を照射する。これにより、第3ギャップ領域A3における液体Jが第3硬化時間で硬化して、印刷媒体Aに印刷する。このように、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させずに、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0055】
一方、印刷媒体Aにおいて傾斜が小さい又はないと、ギャップの変化率が所定率未満である。この場合、左右方向において印刷媒体Aにおける各ギャップ領域の距離が長く、1つの走査において印刷媒体A上を移動する光照射部30の速度を切り替える数が少ない又はない。このため、制御装置60は、所定条件を満たすとして、第1光照射動作、第2光照射動作及び第3光照射動作を1つの走査で行う。これにより、制御装置60は、第1光照射動作ではヘッドユニット11を第1速度で移動させ、第2光照射動作ではヘッドユニット11を第2速度で移動させ、第3光照射動作ではヘッドユニット11を第3速度で移動させる。このように、1つの走査において光照射部30の移動速度を変化させる。このように、印刷媒体Aの形状に応じた方法で印刷媒体Aを印刷することにより、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0056】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10では、変形例1~3において、制御装置60は、第1走査及び第2走査を別々に行う場合であって、第2走査を実行してから第1走査を実行するときには、第1走査では第2ギャップ領域に加えて第1ギャップ領域に光を照射させる。
【0057】
具体的には、制御装置60は、第2走査では、第2速度で移動するヘッドユニット11において、ヘッド20から第2ギャップ領域A2に液体Jを吐出させてから、光照射部30から第2ギャップ領域A2に対して光を照射する。そして、制御装置60は、印刷媒体Aを搬送させずに、ヘッドユニット11を右側に移動させてから、第1走査を実行する。
【0058】
ここで、制御装置60は、第1速度で移動するヘッドユニット11において、ヘッド20から第1ギャップ領域A1に液体Jを吐出させてから、光照射部30から第1ギャップ領域A1及び第2ギャップ領域A2に光を照射する。これにより、光は、第1ギャップ領域A1の液体J及び第2ギャップ領域A2の液体Jに照射されて、液体Jが硬化する。この際、第1ギャップ領域A1の光の照度は第2ギャップ領域A2よりも小さいが、第1ギャップ領域A1の液体Jには、第1走査及び第2走査の両方で光が照射されるため、第1ギャップ領域A1の液体Jを十分に硬化させることができる。
【0059】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例では、相対移動装置40は、左右方向において、印刷媒体Aを移動させずに、印刷媒体Aに対してヘッド20を移動させた。これに対し、相対移動装置40は、左右方向において、ヘッド20を移動させずに、ヘッド20に対して印刷媒体Aを移動させるようにステージ51を移動させてもよい。
【0060】
例えば、相対移動装置40がステージ51を移動させる場合、相対移動装置40は搬送装置50を含んでいてもよい。この場合、キャリッジ42はステージ51を搭載し、ステージ支持台53は移動レール41を支持する。これにより、ステージ51は移動レール41に沿って左右方向に移動可能であって、移動レール41は前後方向に移動可能である。よって、ステージ51は、ヘッドユニット12に対して左右方向及び前後方向に移動する。
【0061】
上記全ての実施の形態及び変形例において、例えば、左右方向において印刷媒体Aが傾斜している場合、制御装置60は、印刷媒体Aに対する光照射部30のギャップが大きくなるほど印刷媒体Aと光照射部30の相対移動速度が連続的に遅くなるように、相対移動装置40を制御してもよい。
【0062】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る印刷装置は、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 :印刷装置
20 :ヘッド
30 :光照射部
40 :相対移動装置
50 :搬送装置
60 :制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6