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特開2022-152306燃料電池システムの運転方法および燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152306
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】燃料電池システムの運転方法および燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0444 20160101AFI20221004BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221004BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221004BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/249
H01M8/0606
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055023
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山野 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴司
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA21
5H127BA22
5H127BA57
5H127BB02
5H127DA01
5H127DB04
5H127DB93
5H127DC02
5H127DC08
5H127DC74
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックの劣化を抑制することが可能な燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池スタック11と、液体水素を貯蔵する液体水素タンク12と、液体水素タンク12から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガスタンク13と、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度を推定する水素濃度推定部14と、を備える。燃料電池システム10の運転方法は、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、ボイルオフガスタンク13に回収されているボイルオフガスを燃料電池スタック11の水素極に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵部と、
前記液体水素貯蔵部から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガス回収部と、
前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、を備える燃料電池システムを運転する方法であって、
前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項2】
前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給して前記燃料電池スタックを起動する、請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項3】
前記燃料電池システムは、複数の前記燃料電池スタックおよび前記水素濃度推定部を備え、
前記水素極の水素濃度が所定値未満である前記燃料電池スタックが2個以上存在する場合に、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを水素極に供給する燃料電池スタックを順次切り替える、請求項1または2に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項4】
前記燃料電池システムは、前記ボイルオフガスを燃焼させて前記燃料電池スタックの環境を加熱する加熱部と、前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度を検知する温度検知部と、をさらに備え、
前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記加熱部に供給する、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項5】
燃料電池スタックと、
液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵部と、
前記液体水素貯蔵部から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガス回収部と、
前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、
前記液体水素貯蔵部から放出され、気化される水素ガスおよび前記ボイルオフガス回収部に回収されるボイルオフガスを昇圧する昇圧部と、
前記昇圧された水素ガスを貯蔵し、貯蔵された水素ガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給することが可能な水素ガス貯蔵部と、
前記ボイルオフガス回収部を経由して、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部とを接続する第一流路と、
前記ボイルオフガス回収部をバイパスして、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部とを接続する第二流路と、
前記水素ガス貯蔵部を経由して、前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極とを接続する第三流路と、
前記水素ガス貯蔵部をバイパスして、前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極とを接続する第四流路と、
前記第一流路の前記ボイルオフガス回収部と前記昇圧部との間に設けられている第一弁体と、
前記第二流路の前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部との間に設けられている第二弁体と、
前記第三流路の前記昇圧部と前記水素ガス貯蔵部との間に設けられている第三弁体と、
前記第四流路の前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極との間に設けられている第四弁体と、を備える、燃料電池システム。
【請求項6】
前記第三流路の前記第三弁体の下流側に、前記昇圧されたボイルオフガスを貯蔵するボイルオフガス貯蔵部および弁体が順次設けられている、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記水素ガス貯蔵部は、カードルである、請求項5または6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
複数の前記燃料電池スタックおよび前記水素濃度推定部を備え、
前記第三流路と複数の前記燃料電池スタックとを接続する第一の分岐流路と、
前記第四流路と複数の前記燃料電池スタックとを接続する第二の分岐流路と、
前記第一の分岐流路および前記第一の分岐流路の分岐部に、それぞれ設けられている複数の弁体と、をさらに備える、請求項5から7のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記ボイルオフガスを燃焼させて前記燃料電池スタックの環境を加熱する加熱部と、
前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度を検知する温度検知部と、をさらに備え、
前記第一流路は、前記ボイルオフガス回収部を経由して、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部および前記加熱部とを接続し、
前記第一流路の前記ボイルオフガス回収部と前記加熱部との間に設けられている弁体をさらに備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池スタックは、発電機、電気自動車等に適用されている。
【0003】
燃料電池スタックを構成する燃料電池は、一般に、水素極(アノード)および酸素極(カソード)により固体高分子電解質膜が挟持されており、水素極に水素ガスを供給し、酸素極に空気を供給して発電する。このとき、タンクに貯蔵されている液体水素を気化した後、水素ガスを水素極に供給するが、外部からタンクに侵入した熱により、液体水素が気化してボイルオフガスが発生する。これにより、タンク内の圧力が上昇するため、タンク内のボイルオフガスを排出する必要がある。
【0004】
そこで、タンクから排出されたボイルオフガスを昇圧して貯蔵した後、水素極に供給して発電する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-56799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、燃料電池スタックの待機中に、外部から水素極に空気が侵入するが、この状態で、燃料電池スタックを起動すると、燃料電池スタックが劣化するという課題がある。
【0007】
本発明は、燃料電池スタックの劣化を抑制することが可能な燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、燃料電池スタックと、液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵部と、前記液体水素貯蔵部から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガス回収部と、前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、を備える燃料電池システムを運転する方法であって、前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給する。
【0009】
上記の燃料電池システムの運転方法は、前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給して前記燃料電池スタックを起動してもよい。
【0010】
前記燃料電池システムは、複数の前記燃料電池スタックおよび前記水素濃度推定部を備え、前記水素極の水素濃度が所定値未満である前記燃料電池スタックが2個以上存在する場合に、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを水素極に供給する燃料電池スタックを順次切り替えてもよい。
【0011】
前記燃料電池システムは、前記ボイルオフガスを燃焼させて前記燃料電池スタックの環境を加熱する加熱部と、前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度を検知する温度検知部と、をさらに備え、前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度が所定値未満になると、前記ボイルオフガス回収部に回収されているボイルオフガスを前記加熱部に供給してもよい。
【0012】
本発明の他の一態様は、燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックと、液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵部と、前記液体水素貯蔵部から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガス回収部と、前記燃料電池スタックの待機中の水素極の水素濃度を推定する水素濃度推定部と、前記液体水素貯蔵部から放出され、気化される水素ガスおよび前記ボイルオフガス回収部に回収されるボイルオフガスを昇圧する昇圧部と、前記昇圧された水素ガスを貯蔵し、貯蔵された水素ガスを前記燃料電池スタックの水素極に供給することが可能な水素ガス貯蔵部と、前記ボイルオフガス回収部を経由して、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部とを接続する第一流路と、前記ボイルオフガス回収部をバイパスして、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部とを接続する第二流路と、前記水素ガス貯蔵部を経由して、前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極とを接続する第三流路と、前記水素ガス貯蔵部をバイパスして、前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極とを接続する第四流路と、前記第一流路の前記ボイルオフガス回収部と前記昇圧部との間に設けられている第一弁体と、前記第二流路の前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部との間に設けられている第二弁体と、前記第三流路の前記昇圧部と前記水素ガス貯蔵部との間に設けられている第三弁体と、前記第四流路の前記昇圧部と前記燃料電池スタックの水素極との間に設けられている第四弁体と、を備える。
【0013】
上記の燃料電池システムは、前記第三流路の前記第三弁体の下流側に、前記昇圧されたボイルオフガスを貯蔵するボイルオフガス貯蔵部および弁体が順次設けられていてもよい。
【0014】
前記水素ガス貯蔵部は、カードルであってもよい。
【0015】
上記の燃料電池システムは、複数の前記燃料電池スタックおよび前記水素濃度推定部を備え、前記第三流路と複数の前記燃料電池スタックとを接続する第一の分岐流路と、前記第四流路と複数の前記燃料電池スタックとを接続する第二の分岐流路と、前記第一の分岐流路および前記第一の分岐流路の分岐部に、それぞれ設けられている複数の弁体と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
上記の燃料電池システムは、前記ボイルオフガスを燃焼させて前記燃料電池スタックの環境を加熱する加熱部と、前記燃料電池スタックの待機中の環境の温度を検知する温度検知部と、をさらに備え、前記第一流路は、前記ボイルオフガス回収部を経由して、前記液体水素貯蔵部と前記昇圧部および前記加熱部とを接続し、前記第一流路の前記ボイルオフガス回収部と前記加熱部との間に設けられている弁体をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池スタックの劣化を抑制することが可能な燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2図1の燃料電池システムの変形例を示す図である。
図3】本実施形態の燃料電池システムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1に、本実施形態の燃料電池システムの一例を示す。
【0021】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック11と、液体水素タンク12と、ボイルオフガスタンク13と、水素濃度推定部14と、圧縮機15と、蓄圧タンク16(例えば、カードル)と、制御部(例えば、コンピュータ)と、を備える。ここで、液体水素タンク12は、液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵部として、機能し、ボイルオフガスタンク13は、液体水素タンク12から発生するボイルオフガスを回収するボイルオフガス回収部として、機能する。また、水素濃度推定部14は、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度を推定する。さらに、圧縮機15は、液体水素タンク12から放出され、気化される水素ガスおよびボイルオフガスタンク13に回収されるボイルオフガスを昇圧する昇圧部として、機能する。また、蓄圧タンク16は、昇圧された水素ガスを貯蔵し、貯蔵された水素ガスを燃料電池スタック11の水素極に供給することが可能な水素ガス貯蔵部として、機能する。
【0022】
燃料電池システム10は、配管17aと、配管17bと、配管17cと、配管17dと、を備える。ここで、配管17aは、ボイルオフガスタンク13を経由して、液体水素タンク12と圧縮機15とを接続する第一流路として、機能し、配管17bは、ボイルオフガスタンク13をバイパスして、液体水素タンク12と圧縮機15とを接続する第二流路として、機能する。また、配管17cは、蓄圧タンク16を経由して、圧縮機15と燃料電池スタック11の水素極とを接続する第三流路として、機能し、配管17dは、蓄圧タンク16をバイパスして、圧縮機15と燃料電池スタック11の水素極とを接続する第四流路として、機能する。配管17cおよび17dは、分岐配管を形成しており、分岐配管の下流側が共通しているが、分岐配管の分岐している領域における配管17cに蓄圧タンク16が設けられている。
【0023】
なお、配管17cおよび17dを分岐配管とせずに、それぞれ独立した配管としてもよい。
【0024】
燃料電池システム10は、バルブ18aと、バルブ18bと、バルブ18cと、バルブ18dと、を備える。ここで、バルブ18aは、配管17aのボイルオフガスタンク13と圧縮機15との間に設けられている第一弁体として、機能し、バルブ18bは、配管17bの液体水素タンク12と圧縮機15との間に設けられている第二弁体として、機能する。また、バルブ18cは、配管17cの圧縮機15と蓄圧タンク16との間に設けられている第三弁体として、機能し、バルブ18dは、分岐配管の分岐している領域における配管17dの圧縮機15と燃料電池スタック11の水素極との間に設けられている第四弁体として、機能する。
【0025】
このとき、バルブ18aおよび18dを開状態とし、バルブ18bおよび18cを閉状態とすると、ボイルオフガスタンク13に回収されるボイルオフガスは、圧縮機15で昇圧された後、燃料電池スタック11の水素極に供給される。また、バルブ18aおよび18dを閉状態とし、バルブ18bおよび18cを開状態とすると、液体水素タンク12から放出され、気化される水素ガスは、圧縮機15で昇圧された後、蓄圧タンク16に供給される。
【0026】
なお、分岐配管の分岐している領域における配管17dのバルブ18dの下流側に、第二ボイルオフガスタンクおよびバルブが順次設けられていてもよい。ここで、第二ボイルオフガスタンクは、昇圧されたボイルオフガスを貯蔵するボイルオフガス貯蔵部として、機能する。この場合、制御部は、第二ボイルオフガスタンクの下流側に設けられているバルブの開閉により、昇圧されたボイルオフガスの燃料電池スタック11の水素極への供給を制御することができる。
【0027】
燃料電池システム10の待機時には、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、昇圧されたボイルオフガスを燃料電池スタック11の水素極に供給する。これにより、燃料電池スタック11の待機中に外部から水素極に侵入した空気をボイルオフガスで置換することができるため、燃料電池スタック11を起動しても、燃料電池スタック11の劣化が抑制される。また、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度を高く維持することで、燃料電池スタック11を起動する際に、ボイルオフガスを水素極に供給する時間を短くすることができる。さらに、ボイルオフガスを有効に利用することができる。このとき、昇圧されたボイルオフガスが水素極に供給された燃料電池スタック11を起動してもよい。
【0028】
水素濃度推定部14は、例えば、リアルタイムクロックにより取得される燃料電池スタック11の待機時間に基づいて、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度を推定することができる。この場合、制御部は、燃料電池スタック11の待機時間が所定値を超えると、昇圧されたボイルオフガスを燃料電池スタック11の水素極に供給するように制御する。
【0029】
なお、水素濃度推定部14は、燃料電池スタック11の水素極に水素センサーを設けて、水素センサーで取得されたデータに基づいて、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度を推定してもよい。
【0030】
図2に、燃料電池システム10の変形例を示す。
【0031】
燃料電池システム20は、複数の燃料電池スタック11A、11B、・・・および水素濃度推定部14A、14B、・・・が設けられているとともに、分岐配管21および複数のバルブ22A、22B、・・・が設けられている以外は、燃料電池システム10と同一の構成である。ここで、分岐配管21は、配管17cと燃料電池スタック11A、11B、・・・の水素極とを接続する第一の分岐流路および配管17dと燃料電池スタック11A、11B、・・・の水素極とを接続する第二の分岐流路を兼ねる。また、バルブ22A、22B、・・・は、開閉により、燃料電池スタック11A、11B、・・・のうち、1個以上の水素極に、昇圧されたボイルオフガスおよび水素ガスを供給することができるように、分岐配管21の分岐部に設けられている。例えば、燃料電池スタック11Aの水素極に、昇圧されたボイルオフガスおよび水素ガスを供給する場合は、バルブ22Aのみを開状態とし、それ以外のバルブ22B、・・・を閉状態とする。
【0032】
なお、燃料電池システム20は、燃料電池スタックの水素極に、昇圧された水素ガスおよびボイルオフガスを供給する供給部(燃料電池システム10の燃料電池スタック11および水素濃度推定部14以外の構成)を1個有しているが、供給部を複数個有していてもよい。
【0033】
燃料電池システム20を運転する際には、燃料電池スタック11A、11B、・・・のいずれかの待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、水素極の水素濃度が所定値未満である燃料電池スタックの水素極に、昇圧されたボイルオフガスを供給する。
【0034】
ここで、水素極の水素濃度が所定値未満である燃料電池スタックが2個以上存在する場合は、昇圧されたボイルオフガスを水素極に供給する燃料電池スタックを順次切り替える。この場合、制御部は、水素極の水素濃度が低い燃料電池スタックから、順次昇圧されたボイルオフガスを水素極に供給するように制御してもよい。このとき、昇圧されたボイルオフガスが水素極に供給された燃料電池スタックを起動してもよい。
【0035】
なお、昇圧されたボイルオフガスを水素極に供給する、2個以上の燃料電池スタックからなる燃料電池スタック群を順次切り替えてもよい。すなわち、燃料電池スタック群の水素極に昇圧されたボイルオフガスを供給する操作を繰り返してもよい。このとき、劣化度合いが小さい燃料電池スタック群から順次起動させてもよい。
【0036】
燃料電池システム20を用いると、1個以上の燃料電池スタックを輪番で待機させることができるため、燃料電池スタックの劣化が抑制される。
【0037】
図3に、本実施形態の燃料電池システムの他の例を示す。
【0038】
燃料電池システム30は、ヒーター32と、温度センサー33と、をさらに備える以外は、燃料電池システム10と略同一の構成である。ここで、ヒーター32は、ボイルオフガスを燃焼させて燃料電池スタック11の環境31を加熱する加熱部として、機能し、温度センサー33は、燃料電池スタック11の待機中の環境の温度を検知する温度検知部として、機能する。また、配管17aは、ボイルオフガスタンク13を経由して、液体水素タンク12と圧縮機15およびヒーター32とを接続する。また、燃料電池システム30は、配管17aのボイルオフガスタンク13とヒーター32との間に、バルブ34が設けられている。
【0039】
このとき、バルブ34を閉状態とすると、燃料電池システム10と同様にして、バルブ18aおよび18dを開状態とし、バルブ18bおよび18cを閉状態とすると、ボイルオフガスタンク13に回収されるボイルオフガスは、圧縮機15で昇圧された後、燃料電池スタック11の水素極に供給される。また、バルブ18aおよび18dを閉状態とし、バルブ18bおよび18cを開状態とすると、液体水素タンク12から放出され、気化される水素ガスは、圧縮機15で昇圧された後、蓄圧タンク16に供給される。さらに、バルブ34を開状態とし、バルブ18a、18b、18cおよび18dを閉状態とすると、ボイルオフガスタンク13に貯蔵されているボイルオフガスは、ヒーター32に供給される。このとき、ボイルオフガスタンク13に貯蔵されているボイルオフガスを昇圧した後に、ヒーター32に供給してもよい。
【0040】
燃料電池システム30を運転する際には、燃料電池システム10と同様にして、燃料電池スタック11の待機中の水素極の水素濃度が所定値未満になると、昇圧されたボイルオフガスを燃料電池スタック11の水素極に供給する。
【0041】
また、燃料電池スタック11の待機中の環境31の温度が所定値(例えば、0℃)未満になると、ボイルオフガスタンク13に回収されているボイルオフガスをヒーター32に供給する。これにより、ボイルオフガスが燃焼して環境31が加熱されて、環境31の温度が上昇するため、燃料電池スタック11の起動に要する時間が短くなる。その結果、燃料電池スタック11を非常用発電機に適用しやすくなる。また、ボイルオフガスを有効に利用することができる。
【0042】
この場合、制御部は、燃料電池スタック11の待機中の環境31の温度が所定値未満になると、ボイルオフガスタンク13に回収されているボイルオフガスをヒーター32に供給するように制御する。
【0043】
なお、燃料電池システム30を、燃料電池システム20と同様にして、複数の燃料電池スタック11A、11B、・・・および水素濃度推定部14A、14B、・・・が設けられているとともに、分岐配管21および複数のバルブ22A、22B、・・・が設けられている構成に適用してもよい。
【0044】
この場合、ヒーター32を用いて、複数の燃料電池スタック11A、11B、・・・の環境を一括して加熱してもよいし、複数の燃料電池スタック11A、11B、・・・の環境を個別に加熱してもよい。また、一部のボイルオフガスをヒーター32に供給するように制御し、残部のボイルオフガスを、水素極の水素濃度を高く維持するよう、燃料電池スタック11の水素極に供給するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30 燃料電池システム
11、11A、11B 燃料電池スタック
12 液体水素タンク
13 ボイルオフガスタンク
14、14A、14B 水素濃度推定部
15 圧縮機
16 蓄圧タンク
17a、17b、17c、17d 配管
18a、18b、18c、18d バルブ
21 分岐配管
22A、22B バルブ
31 環境
32 ヒーター
33 温度センサー
34 バルブ
図1
図2
図3