(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152405
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221004BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/175 503
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/01 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055168
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】佐本 賢治
(72)【発明者】
【氏名】西本 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 健太
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢悟
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056EC11
2C056EC33
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA44
2C056HA60
2C056KB13
2C056KB19
(57)【要約】
【課題】キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を抑制できるプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ1は、ヘッド10、キャリッジ20、チューブ15、および板17Aを備える。ヘッド10は、印刷対象物Mへインクを吐出する。キャリッジ20は、ヘッド10を支持し、主走査モータの駆動によって主走査方向に移動する。チューブ15は、インクを収容するカートリッジからヘッド10にインクを供給する。板17Aは、走査方向に直交する上下方向において、チューブ15を下方から支持する。チューブ15は、板17Aによって支持された被支持部15Aと、被支持部15Aからヘッド10に向けて湾曲しながら延びる湾曲部15Bとを含む。湾曲部15Bの下端は、キャリッジ20がキャリッジ20の移動範囲のうち少なくとも一部の所定位置に位置する場合、板17Aよりも下方に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物へインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持し、駆動部の駆動によって走査方向に移動するキャリッジと、
前記インクを収容するインクタンクから前記ヘッドに前記インクを供給するチューブと、
前記走査方向に直交する上下方向において、前記チューブを下方から支持する板と
を備え、
前記チューブは、前記板によって支持された被支持部と、前記被支持部から前記ヘッドに向けて湾曲しながら延びる湾曲部とを含み、
前記湾曲部の下端は、前記キャリッジが前記キャリッジの移動範囲のうち少なくとも一部の所定位置に位置する場合、前記板よりも下方に配置される
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記板には、
前記上下方向に前記板を貫通する孔が設けられ、
前記湾曲部の下端は、前記キャリッジが前記所定位置に位置する場合、前記孔を介して前記板よりも下方に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記キャリッジは、前記走査方向において、前記所定位置である第1位置と、前記移動範囲のうち前記第1位置とは異なる第2位置との間を移動し、
前記キャリッジが前記第1位置に位置する場合、前記湾曲部の下端は、前記孔を介して前記板よりも下方に位置し、
前記キャリッジが前記第2位置に位置する場合、前記チューブの全体が前記板よりも上方に位置する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1位置は、前記ヘッドの待機位置であり、
前記第2位置は、前記ヘッドが前記印刷対象物に対して前記インクを吐出する印刷位置である
ことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記被支持部は、前記板に固定される
ことを特徴とする請求項3または4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記チューブは、前記キャリッジが前記所定位置に位置する場合において、
前記チューブの一端が前記インクタンクに接続し、
前記一端から前記走査方向の一方側に前記被支持部が延び、
前記湾曲部は、
前記被支持部の一方側の端部から前記走査方向の一方側且つ下方に向けて湾曲し、
前記湾曲部の下端から前記走査方向の一方側且つ上方に向けて湾曲し、
前記湾曲部の前記走査方向の一方側の端部から、前記走査方向の他方側且つ上方に向けて湾曲し、
前記湾曲部の上端から前記ヘッドに向けて延びるヘッド接続部を備え、
前記チューブの他端は、前記ヘッドに接続する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記板よりも下方に設けられ、前記上下方向に昇降するプラテンを備え、
前記湾曲部の下端は、前記プラテンが少なくとも最も上方の位置に位置する場合、前記プラテンの上面よりも下方に配置される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項8】
前記印刷対象物に紫外線を照射するランプを備え、
前記ヘッドは、前記印刷対象物に対して紫外線硬化型の前記インクを吐出する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項9】
印刷対象物へインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持し、駆動部の駆動によって走査方向に移動するキャリッジと、
前記インクを収容するインクタンクから前記ヘッドに前記インクを供給するチューブと、
前記走査方向に直交する直交方向において、前記チューブを一方から支持する板と
を備え、
前記チューブは、前記板によって支持された被支持部と、前記被支持部から前記ヘッドに向けて湾曲しながら延びる湾曲部とを含み、
前記湾曲部の前記一方における端部は、前記キャリッジが前記キャリッジの移動範囲のうち少なくとも一部の所定位置に位置する場合、前記板よりも前記一方に配置される
ことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の複合機は、記録ヘッド、記録キャリッジ、およびインク供給管を備える。記録ヘッドは、インク滴を吐出する。記録ヘッドは、記録キャリッジに搭載される。記録キャリッジは、モータの駆動により主走査方向に往復移動する。インク供給管は、記録キャリッジに結合され、インクタンクから記録キャリッジにインクを供給する。インク供給管は、中間固定部付近から記録キャリッジに向けて湾曲している。中間固定部は、記録キャリッジとインクタンクとの間で、装置フレームの係止部に固定された部分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記複合機では、記録キャリッジの停止時のインク供給管の姿勢が長時間続くことによってインク供給管がクリープ変形する。このため、インク供給管は、中間固定部において、クリープ変形による曲げ癖がつきやすい。インク供給管に曲げ癖がある状態で記録キャリッジが移動する場合、インク供給管への負荷が大きくなる。これにより、インク供給管に曲げ癖がある状態で記録キャリッジが移動する場合、インク供給管からの反力がモータに大きく働く。したがって、複合機は、インク供給管からの反力により記録キャリッジを加速させにくくなる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を抑制できるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るプリンタは、印刷対象物へインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、駆動部の駆動によって走査方向に移動するキャリッジと、前記インクを収容するインクタンクから前記ヘッドに前記インクを供給するチューブと、前記走査方向に直交する上下方向において、前記チューブを下方から支持する板とを備え、前記チューブは、前記板によって支持された被支持部と、前記被支持部から前記ヘッドに向けて湾曲しながら延びる湾曲部とを含み、前記湾曲部の下端は、前記キャリッジが前記キャリッジの移動範囲のうち少なくとも一部の所定位置に位置する場合、前記板よりも下方に配置されることを特徴とする。
【0007】
プリンタでは、板がヘッドの下方に設けられ、チューブの湾曲部の下端が板よりも下方に配置される。したがって、湾曲部の下端の位置は、湾曲部の下端が板の上方に配置されるよりもヘッドから離れた位置に配置される。このため、湾曲部の屈曲半径が大きくなる。これにより、プリンタは、キャリッジを移動させる場合のチューブの反力を低減できる。よって、プリンタは、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を低減できる。
【0008】
前記板には、前記上下方向に前記板を貫通する孔が設けられ、前記湾曲部の下端は、前記キャリッジが前記所定位置に位置する場合、前記孔を介して前記板よりも下方に配置されてもよい。
【0009】
この場合、プリンタは孔によってチューブをガイドできる。
【0010】
前記キャリッジは、前記走査方向において、前記所定位置である第1位置と、前記移動範囲のうち前記第1位置とは異なる第2位置との間を移動し、前記キャリッジが前記第1位置に位置する場合、前記湾曲部の下端は、前記孔を介して前記板よりも下方に位置し、前記キャリッジが前記第2位置に位置する場合、前記チューブの全体が前記板よりも上方に位置してもよい。
【0011】
この場合、プリンタは、キャリッジが第1位置にある場合、湾曲部の下端が板よりも下方に位置するので、チューブの反力が低減される。キャリッジが第1位置から第2位置に移動する場合、プリンタは、チューブの反力が低減された状態からキャリッジを第2位置へ移動させることができる。よって、プリンタはキャリッジを第1位置から移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を低減できる。
【0012】
前記第1位置は、前記ヘッドの待機位置であり、前記第2位置は、前記ヘッドが前記印刷対象物に対して前記インクを吐出する印刷位置であってもよい。
【0013】
プリンタは、待機位置から印刷位置にキャリッジを移動させる場合の駆動負荷を低減できる。よって、プリンタは、印刷時にキャリッジの移動を容易に制御できる。したがって、プリンタはキャリッジの移動を安定させ、印刷の品質を向上できる。
【0014】
前記被支持部は、前記板に固定されてもよい。
【0015】
この場合、プリンタでは、被支持部が板に固定される。よって、プリンタはチューブを安定して支持できる。
【0016】
前記チューブは、前記キャリッジが前記所定位置に位置する場合において、前記チューブの一端が前記インクタンクに接続し、前記一端から前記走査方向の一方側に前記被支持部が延び、前記湾曲部は、前記被支持部の一方側の端部から前記走査方向の一方側且つ下方に向けて湾曲し、前記湾曲部の下端から前記走査方向の一方側且つ上方に向けて湾曲し、前記湾曲部の前記走査方向の一方側の端部から、前記走査方向の他方側且つ上方に向けて湾曲し、前記湾曲部の上端から前記ヘッドに向けて延びるヘッド接続部を備え、前記チューブの他端は、前記ヘッドに接続してもよい。
【0017】
この場合、プリンタは、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を低減できる。
【0018】
前記板よりも下方に設けられ、前記上下方向に昇降するプラテンを備え、前記湾曲部の下端は、前記プラテンが少なくとも最も上方の位置に位置する場合、前記プラテンの上面よりも下方に配置されてもよい。
【0019】
この場合、プリンタでは、湾曲部の下端が、プラテンの上面よりも下方に配置される。プラテンが板よりも下方に設けられるので、プリンタは、湾曲部の屈曲半径をさらに大きくできる。よって、プリンタは、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷をさらに低減できる。
【0020】
前記印刷対象物に紫外線を照射するランプを備え、前記ヘッドは、前記印刷対象物に対して紫外線硬化型の前記インクを吐出してもよい。
【0021】
この場合、プリンタは、ランプを備えた場合にも、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を低減できる。
【0022】
本発明の第2態様に係るプリンタは、印刷対象物へインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、駆動部の駆動によって走査方向に移動するキャリッジと、前記インクを収容するインクタンクから前記ヘッドに前記インクを供給するチューブと、前記走査方向に直交する直交方向において、前記チューブを一方から支持する板とを備え、前記チューブは、前記板によって支持された被支持部と、前記被支持部から前記ヘッドに向けて湾曲しながら延びる湾曲部とを含み、前記湾曲部の前記一方における端部は、前記キャリッジが前記キャリッジの移動範囲のうち少なくとも一部の所定位置に位置する場合、前記板よりも前記一方に配置されることを特徴とする。
【0023】
プリンタでは、板がヘッドの一方に設けられ、チューブの湾曲部の一方における端部が板よりも一方に配置される。したがって、湾曲部の一方における端部の位置は、湾曲部の一方における端部が板の他方に配置されるよりもヘッドから離れた位置に配置される。このため、湾曲部の屈曲半径が大きくなる。これにより、プリンタは、キャリッジを移動させる場合のチューブの反力を低減できる。よって、プリンタは、キャリッジを移動させる場合に駆動部に作用する駆動負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】プリンタ1の右前上方から見た斜視図である。
【
図2】プリンタ1の右後上方から見た斜視図である。
【
図3】チューブ15が固定部材17に固定され、湾曲部15Bが孔17Bに収容された状態を示す斜視図である。
【
図4】キャリッジ20が待機位置P1にある場合のチューブ15の配置位置を示す正面図である。
【
図5】キャリッジ20が印刷位置P2にある場合のチューブ15の配置位置を示す正面図である。
【
図6】キャリッジ20が限界位置P3にある場合のチューブ15の配置位置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。
図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、および左上方が、それぞれ、プリンタ1の上方、下方、前方、後方、右方、および左方である。
【0026】
図1および
図2を参照し、プリンタ1の概略構成を説明する。
図1に示すように、プリンタ1は搬送機構6と昇降機構9とプラテン5と一対のレール11とキャリッジ20を備える。搬送機構6はプリンタ1の下部に設けられる。搬送機構6は、一対のレール12を含む。一対のレール12は前後方向に延び、互いに左右方向に並ぶ。
【0027】
昇降機構9は搬送機構6の上側に設けられる。昇降機構9は、一対のレール12によって支持される。昇降機構9は副走査モータの駆動により、一対のレール12に沿って前後方向に移動する。昇降機構9は昇降モータの駆動により、上下方向に伸縮する。
【0028】
プラテン5は昇降機構9の上側に設けられる。プラテン5は板である。プラテン5は、昇降機構9によって支持される。プラテン5は昇降機構9の上下方向の伸縮により、上下方向に移動する。なお、
図4~
図6に示すプラテン5の位置は、昇降機構9により最も上方に配置されている状態を示す。
【0029】
プラテン5は搬送機構6の前後方向の移動により、前後方向に移動する。プラテン5の上面には印刷対象物が載置される。印刷対象物は例えば板状、シート状であり、例えば布、紙、プラスチック、金属で構成される。
【0030】
一対のレール11はプラテン5よりも上方に設けられる。一対のレール11は左右方向に延び、互いに前後方向に並ぶ。キャリッジ20は一対のレール11の前後方向の間に設けられる。キャリッジ20は板である。キャリッジ20は、一対のレール11によって支持される。キャリッジ20は主走査モータ31の駆動によって、一対のレール11に沿って左右方向に移動する。
【0031】
キャリッジ20にはヘッド10が固定される。つまり、キャリッジ20は、ヘッド10を支持する。ヘッド10の個数は特定の個数に限定されないが、本実施形態では二つのヘッド10がキャリッジ20に搭載される。二つのヘッド10は直方体状であり、前後方向に並ぶ。
【0032】
ヘッド10の下面にはノズル面が形成される。ノズル面はプラテン5よりも上方に位置し、プラテン5に対して上方から対向する。ノズル面には複数のノズル孔が形成される。ヘッド10は、印刷対象物に対して、ノズル面のノズル孔からインクを下方に吐出する。一例として、インクは紫外線が照射されることによって硬化する、いわゆる紫外線硬化型インクである。
【0033】
ヘッド10の右側にはランプ50が設けられる。ランプ50の個数は特定の個数に限定されないが、本実施形態では二つのランプ50が設けられる。すなわち、本実施形態ではプリンタ1はヘッド10の個数分のランプ50を備える。ランプ50は直方体状であり、紫外線発光ダイオード(Ultraviolet Light Emitting Diode)を含む。
【0034】
ランプ50の下面には発光面が形成される。発光面はプラテン5よりも上方に位置し、プラテン5に対して上方から対向する。本実施形態では、発光面の上下方向の位置はノズル面の上下方向の位置と同じである。ランプ50は紫外線発光ダイオードを発光させることで、印刷対象物に対して、紫外線を発光面から下方に照射する。
【0035】
プリンタ1の右側には装着部8が設けられる。装着部8には、複数のカートリッジ3が装着される。各カートリッジ3は、それぞれ白インク、カラーインク等を収容する。一対のレール11のうち後側のレール11の後側には固定部材17が固定される。固定部材17はチューブ15を支持する。インクは各カートリッジ3からチューブ15の中を流れて各ヘッド10に供給される。
【0036】
上記プリンタ1の構成によれば、プラテン5に印刷対象物が載置され、プラテン5が後方に移動した状態から印刷が開始される。印刷が開始されると、ヘッド10がインクを吐出し、ランプ50が紫外線を照射した状態でキャリッジ20が左右方向に往復移動する。これにより、印刷対象物にインクが付着し、付着したインクに紫外線が当たる。インクが紫外線により硬化し、印刷対象物に定着する。キャリッジ20が往復した後、プラテン5が所定量前方へ移動する。プリンタ1はこれらの動作を繰り返すことで印刷対象物への印刷を行う。
【0037】
図3を参照し、固定部材17とチューブ15の詳細構造を説明する。固定部材17は、板17A、一対の側壁171で構成される。
【0038】
板17Aは、上下方向においてヘッド10の下方に設けられる。板17Aは、平面視において、長方形状であり、前後方向よりも左右方向に長い。一対の側壁171は、それぞれ板17Aの前端と後端から上方に延びる。つまり、固定部材17は、側面視U字状である。板17Aの左端部には、孔17Bが設けられる。孔17Bは、平面視、長方形状である。孔17Bは、板17Aを上下方向に貫通する。
【0039】
固定部材17には、サポート部材21が設けられる。サポート部材21は、前方から見た場合、孔17Bの右端から時計回りに湾曲しながら延びる。サポート部材21は前方から見てC字状である。サポート部材21は、可撓性を有し、例えばプラスチックで構成される。
【0040】
チューブ15の本数は特定の本数に限定されないが、本実施形態では八本である。各チューブ15は、可撓性を有する。各チューブ15は、前後方向に並んで、一つの束を構成する。
【0041】
各チューブ15は、被支持部15A、湾曲部15B、およびヘッド接続部15Cを備える。被支持部15Aは、左右方向に延びる。被支持部15Aは、板17Aによって下方から支持される。すなわち、チューブ15のうち板17Aによって支持される部位が、被支持部15Aである。被支持部15Aの右端は、対応するカートリッジ3にそれぞれ接続される。
図3では被支持部15Aの右端近傍の図示は省略される。被支持部15Aの左端は、孔17Bの右端の位置で湾曲部15Bに接続される。
【0042】
被支持部15Aの左右方向の中央部は、固定部18により上方から覆われる。固定部18は、板である。固定部18は、被支持部15Aの中央部を上方から覆った状態で、板17Aにねじ止めされる。これにより、固定部18は被支持部15Aを板17Aに固定する。
【0043】
湾曲部15Bは、サポート部材21の内周側によって支持される。このため、湾曲部15Bはサポート部材21に沿って延びる。すなわち、湾曲部15Bは、後方から見た場合、下方側の端部から上方側の端部に向けて、反時計回りに湾曲しながら延びる。湾曲部15Bは、サポート部材21によって支持されるので、湾曲した形状を維持しやすい。湾曲部15Bの上方側の端部は、ヘッド接続部15Cの後端に接続される。
【0044】
ヘッド接続部15Cは、湾曲部15Bの上方側の端部から前方に延びる。ヘッド接続部15Cの前後方向の中央部において、八本のチューブ15は右側の四本のチューブ15と左側の四本のチューブ15に分岐する。右側の四本のチューブ15は、前側のヘッド10に接続される。左側の四本のチューブ15は、後側のヘッド10に接続される。
【0045】
図4~
図6を参照し、キャリッジ20の移動範囲とキャリッジ20の各位置におけるチューブ15の形状を説明する。キャリッジ20は、左右方向において、
図4に示す待機位置P1と
図6に示す限界位置P3との間を、
図5に示す印刷位置P2を経由して移動する。待機位置P1は、キャリッジ20が左方へ移動可能な限界の位置である。キャリッジ20が待機位置P1に配置された場合、ヘッド10はプラテン5よりも左方に配置される。待機位置P1では、プリンタ1は、印刷開始までヘッド10を待機させる。待機位置P1では、プリンタ1は、ヘッド10のフラッシングなどのメンテナンスを実行する。
【0046】
キャリッジ20が
図5に示す印刷位置P2に配置される場合、ヘッド10はプラテン5に対して上方から対向する。ヘッド10は、印刷対象物Mに対してインクを吐出して、印刷を実行する。印刷位置P2は、左右方向において所定の範囲(プラテン5の左端から右端まで)を有する。
【0047】
図6に示す限界位置P3は、キャリッジ20が右方へ移動可能な限界の位置である。限界位置P3は、左右方向において印刷位置P2に対して待機位置P1とは反対側の位置である。キャリッジ20が限界位置P3に配置された場合、ヘッド10はプラテン5よりも右方に配置される。
【0048】
図4に示すように、キャリッジ20が待機位置P1に位置する場合、湾曲部15Bの下方側は、孔17Bに収容される。この場合、湾曲部15Bは、中心点Cを中心とした屈曲半径Rを有する円弧状となる。湾曲部15Bは、被支持部15Aの左端部から左方且つ下方に向けて湾曲する。湾曲部15Bは、湾曲部15Bの下端から左方且つ上方に向けて湾曲する。湾曲部15Bは、湾曲部15Bの左端から、右方且つ上方に向けて湾曲する。
【0049】
湾曲部15Bの下端の位置H1は、板17Aの位置H3よりも低い。つまり、湾曲部15Bの下端は、孔17Bを介して、板17Aよりも下方に配置される。湾曲部15Bの下端の位置H1は、プラテン5が最も上方の位置に位置する場合の上面の位置H2よりも低い。つまり、湾曲部15Bの下端は、プラテン5の上面よりも下方に配置される。
【0050】
キャリッジ20が
図4に示す待機位置P1から
図5に示す印刷位置P2へ移動する場合、被支持部15Aの左右方向の位置が固定された状態で、ヘッド接続部15Cが右方に移動する。これに伴って、湾曲部15Bの下端が上方に移動する。キャリッジ20が印刷位置P2へ到達した場合、湾曲部15Bの下端は、上下方向において、板17Aよりも上方に配置される。つまり、キャリッジ20が印刷位置P2へ到達した場合、チューブ15の全体が板17Aよりも上方に位置する。なお、キャリッジ20が限界位置P3へ移動した場合も、チューブ15の全体が板17Aよりも上方に位置する。
【0051】
以上説明したように、チューブ15の湾曲部15Bは、板17Aによって支持された被支持部15Aからヘッド10に向けて湾曲しながら延びる。湾曲部15Bの下端は、キャリッジ20が待機位置P1に位置する場合、板17Aよりも下方に配置される。これによれば、湾曲部15Bの下端の位置は、湾曲部15Bの下端が板17Aの上方に配置されるよりもヘッド10から離れた位置に配置される。このため、湾曲部15Bの屈曲半径Rが大きくなる。これにより、プリンタ1は、キャリッジ20を移動させる場合のチューブ15の反力を低減できる。よって、プリンタ1は、キャリッジ20を移動させる場合に主走査モータ31に作用する駆動負荷を低減できる。さらに、キャリッジ20が移動する場合の駆動負荷を低減できるので、主走査モータ31への負荷を低減できる。これにより、主走査モータ31の耐久性が向上する。また、プリンタ1は、予め想定した搬送速度でキャリッジ20を搬送できるので、印刷の品質を向上できる。プリンタ1は、主走査モータ31の駆動負荷が低減されるので、より大きな加速度で主走査モータ31を駆動できる。したがって、プリンタ1は、キャリッジ20の印刷位置P2への移動時間を、より短期間で実行できる。これにより、プリンタ1は、印刷の高速化を実現できる。
【0052】
板17Aには、上下方向に板17Aを貫通する孔17Bが設けられる。湾曲部15Bの下端は、キャリッジ20が待機位置P1に位置する場合、孔17Bを介して板17Aよりも下方に配置される。これによれば、プリンタ1は孔17Bによってチューブ15をガイドできる。
【0053】
キャリッジ20は、左右方向において、待機位置P1と、移動範囲のうち待機位置P1とは異なる印刷位置P2との間を移動する。キャリッジ20が待機位置P1に位置する場合、湾曲部15Bの下端は、孔17Bを介して板17Aよりも下方に位置する。キャリッジ20が印刷位置P2に位置する場合、チューブ15の全体は、板17Aよりも上方に位置する。これによれば、プリンタ1は、キャリッジ20が待機位置P1にある場合、湾曲部15Bの下端が板17Aよりも下方に位置するので、チューブ15の反力が低減される。キャリッジ20が待機位置P1から印刷位置P2に移動する場合、プリンタ1は、チューブ15の反力が低減された状態からキャリッジ20を印刷位置P2へ移動させることができる。よって、プリンタ1はキャリッジ20を待機位置P1から移動させる場合に主走査モータ31に作用する駆動負荷を低減できる。
【0054】
ヘッド10は、待機位置P1で待機する。印刷位置P2において、ヘッド10は、印刷対象物Mに対してインクを吐出する。これによれば、プリンタ1は、待機位置P1から印刷位置P2にキャリッジ20を移動させる場合の駆動負荷を低減できる。よって、プリンタ1は、印刷時にキャリッジ20の移動を容易に制御できる。したがって、プリンタ1はキャリッジ20の移動を安定させ、印刷の品質を向上できる。
【0055】
被支持部15Aは、板17Aに固定される。これによれば、プリンタ1はチューブ15を安定して支持できる。
【0056】
チューブ15の右端はカートリッジ3に接続する。被支持部15Aは、右端から右方に向けて延びる。湾曲部15Bは、被支持部15Aの左端部から左方且つ下方に向けて湾曲する。湾曲部15Bは、下端から左方且つ上方に向けて湾曲する。湾曲部15Bは、湾曲部15Bの左端部から、右方且つ上方に向けて湾曲する。ヘッド接続部15Cは、湾曲部15Bの上端から前記ヘッドに向けて延びる。チューブ15の他端は、ヘッド10に接続する。これによれば、プリンタ1は、キャリッジ20を移動させる場合に主走査モータ31に作用する駆動負荷を低減できる。
【0057】
プラテン5は、板17Aよりも下方に設けられ、上下方向に昇降する。湾曲部15Bの下端は、プラテン5が最も上方の位置に位置する場合、プラテン5の上面よりも下方に配置される。これによれば、プラテン5が板17Aよりも下方に設けられるので、プリンタ1は、湾曲部15Bの屈曲半径Rをさらに大きくできる。よって、プリンタ1は、キャリッジ20を移動させる場合に主走査モータ31に作用する駆動負荷をさらに低減できる。
【0058】
ランプ50は、印刷対象物Mに紫外線を照射する。ヘッド10は、印刷対象物Mに対して紫外線硬化型のインクを吐出する。プリンタ1は、ランプ50を備えた場合にも、主走査モータ31の駆動負荷を低減できる。
【0059】
上記実施形態において、印刷対象物Mが本発明の「印刷対象物」に相当する。ヘッド10が本発明の「ヘッド」に相当する。キャリッジ20が本発明の「キャリッジ」に相当する。主走査モータ31が本発明の「駆動部」に相当する。チューブ15が本発明の「チューブ」に相当する。カートリッジ3が本発明の「インクタンク」に相当する。板17Aが本発明の「板」に相当する。左右方向が本発明の「走査方向」に相当する。待機位置P1が本発明の「第1位置」に相当する。印刷位置P2が本発明の「第2位置」に相当する。ランプ50が本発明の「ランプ」に相当する。プラテン5が本発明の「プラテン」に相当する。
【0060】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。上記実施形態のプリンタ1では、板17Aは、前後方向と左右方向に延び、チューブ15を下方から支持した。これに対し、板17Aは、キャリッジ20の走査方向に直交する直交方向において、チューブ15を一方から支持してもよい。直交方向は、例えば上下方向または前後方向である。この場合、例えば板17Aは、上方からチューブ15を支持してもよい。さらに、板17Aは、上下方向と左右方向に延び、チューブ15を前方または後方から支持してもよい。
【0061】
例えば板17Aがチューブ15を後方から支持する場合、チューブ15のうち被支持部15Aが板17Aによって後方から支持される。湾曲部15Bは、上方から見た場合、被支持部15Aからヘッド10に向けて湾曲しながら延びる。湾曲部15Bの後端は、キャリッジ20がキャリッジ20の移動範囲のうち例えば待機位置P1に位置する場合、板17Aよりも後方に配置される。このような場合でも、プリンタ1は、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0062】
上記実施形態のプリンタ1は、ランプ50を備える。これに対して、プリンタ1は、ランプ50を省略してもよい。この場合、プリンタ1は光の照射によらず硬化するインクを採用してもよい。
【0063】
上記実施形態では、プリンタ1は紫外線硬化型インクを採用する。これに対し、プリンタ1は例えば可視光または赤外線が照射されることによって硬化するインクを採用してもよい。この場合、ランプ50は可視光または赤外線を発光する。
【0064】
上記実施形態では、ヘッド10は左右方向に移動しながら印刷を実行したが、ヘッド10はラインヘッドでもよい。この場合、ヘッド10は、プラテン5の移動によってプラテン5に対して前後方向に相対移動する。このため、ランプ50はヘッド10の後方および前方の一方または両方に設けられる。このような場合でも、ヘッド10が待機位置P1にある場合、湾曲部15Bの下端は、板17Aよりも下方に配置されるとよい。
【0065】
上記実施形態において、板17Aには孔17Bが設けられた。これに対し、孔17Bは無くてもよい。例えば、板17Aは、左右方向において、被支持部15Aの左端までを支持可能な長さであればよい。この場合、固定部材17の左側に所定の空間が形成されるので、その空間に湾曲部15Bが収容されればよい。
【0066】
上記実施形態において、被支持部15Aの中央部は、固定部18により板17Aに対して固定された。これに対し、被支持部15Aは、固定部18により固定されなくてもよい。つまり、被支持部15Aは、板17Aにより下方から支持されればよい。
【0067】
上記実施形態において、固定部材17は、板17Aと一対の側壁171で構成された。これに対して、一対の側壁171はなくてもよく、チューブ15を下方から支持可能であればよい。
【0068】
上記実施形態では、チューブ15がカートリッジ3に接続した。これに対して、チューブ15は、カートリッジ3以外のインクを収容するメインタンク、サブタンク等に接続してもよい。
【0069】
上記実施形態では、印刷位置P2から限界位置P3までキャリッジ20が移動する場合、チューブ15の全体は板17Aよりも上方に配置された。これに対し、印刷位置P2から限界位置P3にキャリッジ20がある場合でも、湾曲部15Bの下端が板17Aより下方に配置されてもよい。印刷位置P2から限界位置P3にキャリッジ20がある場合でも、湾曲部15Bの下端がプラテン5の上面より下方に配置されてもよい。
【0070】
上記実施形態では、キャリッジ20が待機位置P1に位置する状態でプラテン5が最も上方の位置に位置する場合、プラテン5の上面よりも湾曲部15Bの下端が下方に配置された。これに対し、キャリッジ20が待機位置P1に位置する状態でプラテン5が最も上方の位置よりも下方に位置する場合においても、湾曲部15Bの下端がプラテン5の上面よりも下方にあってもよい。
【0071】
上記実施形態では、キャリッジ20の待機位置P1が移動範囲の左端であり、限界位置P3がキャリッジ20の移動範囲の右端に位置した。これに対し、キャリッジ20の待機位置P1が移動範囲の右端であり、キャリッジ20の限界位置P3が移動範囲の左端であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、板17Aは、ヘッド10の下方に設けられた。これに対し、板17Aは、ヘッド10と同じ位置であってもよいし、ヘッド10よりも上方に設けられてもよい。
【0073】
上記実施形態では、固定部18によりチューブ15を板17Aに固定した。これに対し、チューブ15と板17Aをゴムバンド等で巻き付けることで固定してもよい。
【0074】
上記実施形態では、プラテン5が上下に移動した。これに対し、プラテン5は、上下方向に移動しなくともよい。
【符号の説明】
【0075】
1 プリンタ
3 カートリッジ
5 プラテン
10 ヘッド
15 チューブ
15A 被支持部
15B 湾曲部
15C ヘッド接続部
17 固定部材
17A 板
17B 孔
20 キャリッジ
50 発光装置
P1 待機位置
P2 印刷位置