(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152749
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】研磨用組成物及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221004BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055634
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石田 博之
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB03
4G059AC03
(57)【要約】
【課題】
リン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラスの表面を十分な研磨速度で研磨可能であり高品位な表面を得ることが可能な研磨用組成物及び研磨方法を提供する。
【解決手段】
リン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラスを研磨するための研磨用組成物として、砥粒と水とを含み、前記砥粒の新モース硬度は9以上13以下であり、前記砥粒の粒径が0.15μm以上3μm以下である、研磨用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラスを研磨するための研磨用組成物であって、
砥粒と水とを含み、前記砥粒の新モース硬度は9以上13以下であり、前記砥粒の粒径が0.15μm以上3μm以下である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記砥粒はアルミナ又はジルコニアの少なくとも一種を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記砥粒がアルミナであって、前記アルミナのα化率が30%以上である、請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記アルミナ又はジルコニアの円形度が0.5以上1.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記アルミナ又はジルコニアのBET比表面積が5m2/g以上90m2/g以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
リン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラスの研磨方法であって、
前記リン酸塩ガラス又は前記フツリン酸編ガラスの片面又は両面に、研磨用組成物を供給すること、
研磨パッドを前記リン酸塩ガラス又は前記フツリン酸編ガラスの片面又は両面に押し当てること、
前記研磨パッドと前記研磨対象物を相反する方向に移動させること、
を備え、
前記研磨用組成物は、砥粒と水とを含み、前記砥粒は新モース硬度が9以上13以下であり、前記砥粒の粒径が0.15μm以上3μm以下である、研磨方法。
【請求項7】
前記砥粒がアルミナ又はジルコニアの少なくとも一種を含む、請求項6に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記砥粒がアルミナであって、前記アルミナのα化率が30%以上である、請求項6又は7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記アルミナ又はジルコニアの円形度が0.5以上1.0以下である、請求項6~8のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記アルミナ又はジルコニアの比表面積が5m2/g以上90m2/g以下である、請求項6~9のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラスは、シリカをほとんど又は全く含まないガラスであり、ブルーガラス又は赤外カットフィルターと呼ばれる。リン酸塩ガラス及びフツリン酸ガラスは、センサーの感度を人の目に近づけ、より自然な色合いとするため、色や視感度の補正をする機能を有している。そのため、イメージセンサーの色補正のために、スマートフォンやデジタルカメラ、監視カメラ、車載カメラ等に幅広く使用されている。
従来から、ブルーガラスの表面のラッピング研磨による平坦化が行われてきた。しかしながら、従来の研磨剤を用いた方法では、表面粗さの低い高品位な表面を効率的に得ることができない場合があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、磁気ディスク基板などに用いられる平坦性が要求されるガラス基板をセリウム系研磨剤を用いて研磨することを開示しているが、研磨後の表面粗さや研磨効率は十分ではなかった。
また、例えば、特許文献2では、フツリン酸ガラス、又はリン酸塩ガラスからなるガラス球を、粒径0.01~100μmのアルミナ、セリア、ジルコニアなどを用いて、表面うねりを50μm以下とすることが開示されているが、研磨速度を速くすると粗加工しかできず、研磨効率を高めて、かつ研磨後の表面精度を高めるには十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2013/118648号
【特許文献2】特開2005-272292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、リン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラス(以下、「ブルーガラス」と記載することもある)の表面を十分な研磨速度で研磨可能であり高品位な表面を得ることが可能な研磨用組成物及び研磨方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る研磨用組成物は、砥粒と水とを含み、この砥粒の新モース硬度は9以上13以下であり、この砥粒の粒径が、0.15μm以上3μm以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラスの表面を十分な研磨速度で研磨可能であり、また、高品位な表面を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0009】
1.砥粒
<種類>
本実施形態の研磨用組成物は、新モース硬度は9以上13以下の砥粒を含有する。新モース硬度は9以上13以下を有するものであれば、砥粒の種類(組成)は限定されない。研磨用組成物に、上記特定の砥粒を添加することによって、本発明の所期の効果を奏すると考えられる。そのメカニズムは明らかではないが下記のとおりと推測される。すなわち、通常、硬い砥粒を用いると表面品位は低下する傾向にあるが、本発明では硬度が低い研磨対象物(例えば、新モース硬度が5程度であるリン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラス等)に対しては、新モース硬度が9以上13以下の特定の高い範囲にある硬度を有する砥粒(例えば、アルミナ又はジルコニア等)を接触させることで、切削に似た物理的相互作用を必要十分量与えることができ、凸部を効率的に加工できる。ゆえに、新モース硬度は9以上13以下の砥粒を使用することで、リン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラス等に対する研磨速度や研磨後の表面品位を効果的に改善させる傾向にあると推測される。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0010】
<新モース硬度>
本実施形態の研磨用組成物に含まれる砥粒の新モース硬度は、9以上であるが、10以上であることがより好ましい。また、砥粒の新モース硬度は、13以下である。本実施形態の研磨用組成物に含まれる砥粒の新モース硬度が上記範囲にあると、ブルーガラスを研磨する際に、研磨速度を向上させつつ表面粗さ等の表面特性を向上させることができる。なお、本実施形態における新モース硬度を有する砥粒としては、例えば、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。なお、新モース硬度はアルミナが12、ジルコニアが11を有する。
【0011】
<粒径>
上記砥粒の粒径が、0.15μm以上3μm以下であると、ブルーガラスを研磨する際に、研磨速度を向上させつつ表面粗さ等の表面特性を向上させることができる。ここで、砥粒の粒径とは、体積基準の積算粒子径分布における50%の平均二次粒子径(以下、「D50」と記載することもある)を意味する。砥粒の粒径は、研磨速度を向上させる観点で、0.15μm以上であることが好ましく、0.17μm以上であることがより好ましく、0.19μm以上であることがさらに好ましく、0.22μm以上であることがさらにより好ましい。また、砥粒の粒径は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましく、1.8μm以下であることが特に好ましく、1.5μm以下であることが最も好ましく、例えば、1.3μm以下(典型的には1.0μm以下)であってもよい。
【0012】
<平均一次粒子径>
本発明の一実施形態において、砥粒はアルミナ又はジルコニアの少なくとも1種を含んでもよい。この場合、アルミナ又はジルコニアの平均一次粒子径は特に限定されるものではない。アルミナの平均一次粒子径は、研磨速度を向上させる観点で、10nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることがさらに好ましい。また、アルミナの平均一次粒子径は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、1000nm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることがさらにより好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。ジルコニアの平均一次粒子径は、研磨速度を向上させる観点で、10nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることがさらに好ましい。また、ジルコニアの平均一次粒子径は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、1000nm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることがさらにより好ましく、300nm以下であることが特に好ましく、250nm以下であることが最も好ましく、例えば、200nm以下であってもよい。アルミナ又はジルコニアの平均一次粒子径は、例えば、株式会社日立ハイテク製S-4700等の走査型電子顕微鏡により撮影される写真に基づいて算出できる。例えば、倍率10,000~50,000倍で撮影されたアルミナ又はジルコニア粒子の電子顕微鏡写真から所定数(例えば、100個以上)の粒子を無作為に選択する。選択した粒子について、電子顕微鏡写真の画像から面積を計測し、その面積と同じ面積となる円の直径をアルミナ又はジルコニア粒子の一次粒子径として求める。そして、その一次粒子径の平均値(体積基準の積算分率における50%粒子径)を平均一次粒子径として算出する。なお、一次粒子径及び平均一次粒子径の算出は市販の画像解析装置を用いて行うことができる。
【0013】
<砥粒の含有量>
砥粒の含有量は特に限定されないが、研磨速度を向上させる観点で、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の含有量は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
<アルミナ砥粒の物性>
砥粒として、アルミナを使用する場合、以下の物性を有していてもよい。なお、以下の特性は、これらに限定されるものではなく、任意に選択できるものである。
アルミナのBET比表面積は特に限定されないが、研磨後の表面をより平坦、又は、平滑にさせる観点で、1m2/g以上であることが好ましく、3m2/g以上であることがより好ましく、5m2/g以上であることがさらに好ましく、10m2/g以上であることがさらにより好ましい。また、アルミナのBET比表面積は、十分な研磨速度を得る観点で、250m2/g以下であることが好ましく、150m2/g以下であることがより好ましく、90m2/g以下であることがさらに好ましく、70m2/g以下であることがさらにより好ましく、50m2/g以下であることが特に好ましく、35m2/g以下であることが最も好ましい。なお、アルミナのBET比表面積は、マイクロメリテックス社製の“Flow Sorb II 2300”を用いて測定することができる。比表面積を測定する際にアルミナに吸着させるガスとしては、窒素、アルゴン、クリプトン等があげられる。
【0015】
アルミナとしては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナ及びこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナ及びこれらの複合物が挙げられる。αアルミナを使用する場合、アルミナのα化率は特に限定されないが、十分な研磨速度を得る観点では、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることがさらにより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。また、アルミナのα化率は、表面粗さ等の表面特性を向上させる観点で、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましく、98%以下であることがさらに好ましく、97%以下であることがさらにより好ましく、60%以下であることが特に好ましく、50%以下であることが最も好ましい。なお、アルミナのα化率は、X線回折測定による(113)面回折線の積分強度比から求めることができる。
【0016】
アルミナの形状を示す円形度は特に限定されないが、0.5以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。また、アルミナの円形度は、1以下であることが好ましく、0.98以下であることがより好ましく、0.93以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることがさらにより好ましい。本実施形態の研磨用組成物に含まれるアルミナの円形度が上記範囲にあると、ブルーガラスを研磨する際に、研磨速度を向上させつつ表面粗さ等の表面特性を向上させることができる。なお、アルミナの円形度は、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の周長を粒子投影図の輪郭の長さで除することによって求められ、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)SU8000(株式会社日立ハイテク製)により撮影した砥粒の画像を解析して求めることができる。
【0017】
<ジルコニアの物性>
砥粒としてジルコニアを使用する場合、以下の物性を有していてもよい。なお、以下の特性は、これらに限定されるものではなく、任意に選択できるものである。
ジルコニアのBET比表面積は特に限定されないが、研磨後の表面をより平坦、又は、平滑にする観点で、1m2/g以上であることが好ましく、3m2/g以上であることがより好ましく、5m2/g以上であることがさらに好ましく、10m2/g以上であることがさらにより好ましい。また、ジルコニアのBET比表面積は、十分な研磨速度を得る観点で、90m2/g以下であることが好ましく、70m2/g以下であることがより好ましく、50m2/g以下であることがさらに好ましく、35m2/g以下であることがさらにより好ましい。ジルコニアのBET比表面積は、マイクロメリテックス社製の“Flow Sorb II 2300”を用いて測定することができる。比表面積を測定する際にジルコニアに吸着させるガスとしては、窒素、アルゴン、クリプトン等があげられる。
【0018】
ジルコニアの形状を示す円形度は特に限定されないが、0.5以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることがさらにより好ましい。また、ジルコニアの円形度は、1以下であることが好ましく、0.98以下であることがより好ましく、0.93以下であることがさらに好ましい。本実施形態の研磨用組成物に含まれるジルコニアの円形度が上記範囲にあると、ブルーガラスを研磨する際に、研磨速度を向上させつつ表面粗さ等の表面特性を向上させることができる。なお、ジルコニアの円形度は、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の周長を粒子投影図の輪郭の長さで除することによって求められ、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)SU8000(株式会社日立ハイテク製)により撮影した砥粒の画像を解析して求めることができる。
【0019】
2.分散媒又は溶媒
本実施形態の研磨用組成物は、研磨材を分散させ他の成分を分散又は溶解する分散媒又は溶媒として水を使用する。他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、又は蒸留水が好ましい。また、水以外の分散媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物なども例示できる。
【0020】
分散媒又は溶媒である水の研磨用組成物中の含有量は特に限定されないが、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましい。水の研磨用組成物中の含有量が高くなると、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
上記分散媒又は溶媒中の、水及び水以外の含有量の割合は、100:0~75:25であることが好ましく、100:0~85:15であることがより好ましく、100:0~93:7であることがさらに好ましい。水及び水以外の含有量の割合が上記範囲であれば、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0021】
3.他の任意添加物
本実施形態の研磨用組成物のpHは特に限定されないが、13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、11以下であることがさらに好ましい。また、本実施形態の研磨用組成物のpHは、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。研磨用組成物のpHが上記範囲にあると、研磨用組成物の安定性及び取り扱い上の安全性が得られやすい傾向にある。さらに、本発明に係る研磨用組成物のpHは、より高い研磨速度を得る観点では、pHは2以上7以下(例えば、3以上6以下)が好ましく、研磨装置及びその周辺部材の腐食を防ぐ観点では、pHは7以上13以下(例えば、8以上12以下)が好ましい。
【0022】
本実施形態の研磨用組成物のpHの調整は、添加剤であるpH調整剤によって行ってもよい。pH調整剤は、研磨用組成物のpHを調整し、これにより、研磨対象物の研磨速度や研磨材の分散性等を制御することができる。pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合しても用いてもよい。pH調整剤としては、公知の酸、塩基、又はそれらの塩を使用することができる。pH調整剤として使用できる酸の具体例としては、有機酸又は無機酸が挙げられる。pH調整剤として使用できる塩の具体例としては、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。pH調整剤の添加量は特に限定されるものではなく、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜調整すればよい。
【0023】
本実施形態の研磨用組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて、金属塩をさらに含有してもよい。例えば、研磨用組成物は、研磨速度及び表面品位をさらに高める作用を有する金属塩として価数が1価の酸のアルミニウム塩を含んでもよい。価数が1価の酸のアルミニウム塩の好ましい例としては、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)、塩化アルミニウム(AlCl3)が挙げられる。また、金属塩としては、価数が1価の酸のアルミニウム塩以外にも、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0024】
研磨用組成物中の価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有率は、研磨速度をさらに高める観点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、研磨用組成物中の価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有率は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。これらの含有率は、価数が1価の酸のアルミニウム塩が水和水を有する場合は、水和水を除いた含有率である。
【0025】
本実施形態の研磨用組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて、pH調整剤及び金属塩以外の添加剤をさらに含有してもよい。例えば、研磨用組成物は、研磨速度をさらに高める作用を有する添加剤を含有してもよい。研磨速度をさらに高める作用を有する添加剤の例としては、キレート剤、酸化剤、界面活性剤、有機酸等がある。また、研磨用組成物は、研磨対象物の表面や研磨材の表面に作用し、研磨対象物の表面品位を向上させる傾向にある添加剤、若しくは、保存時、又は、研磨時の研磨用組成物の安定性を維持させる傾向にある添加剤をさらに含有してもよい。表面品位を向上させる傾向にある添加剤、若しくは、保存時、又は、研磨時の安定性を維持させる傾向にある添加剤の例としては、水溶性化合物(例えば、水溶性高分子、水溶性多価アルコール類)、界面活性剤等がある。さらに、研磨用組成物は、研磨材の分散性を高める作用を有する添加剤を含有してもよい。研磨剤の分散性を高める作用を有する添加剤の例としては、分散剤や分散助剤(研磨材凝集体の再分散性を上げる化合物)等がある。
【0026】
キレート剤の例としては、グルコン酸等のカルボン酸系キレート剤や、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリメチルテトラアミン等のアミン系キレート剤や、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のポリアミノポリカルボン酸系キレート剤が挙げられる。また、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸等の有機ホスホン酸系キレート剤や、フェノール誘導体や、1,3-ジケトン等も、キレート剤の例として挙げることができる。
【0027】
キレート剤の研磨用組成物中の含有量は特に限定されないが、研磨速度を向上させる観点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、キレート剤の含有量は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
酸化剤の例としては、過酸化水素等の過酸化物;硝酸、その塩である硝酸鉄、硝酸銀、硝酸アルミニウム、その錯体である硝酸セリウムアンモニウム等の硝酸化合物;ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸等の過硫酸、その塩である過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸化合物;塩素酸やその塩、過塩素酸、その塩である過塩素酸カリウム等の塩素化合物;臭素酸、その塩である臭素酸カリウム等の臭素化合物;ヨウ素酸、その塩であるヨウ素酸アンモニウム、過ヨウ素酸、その塩である過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム等のヨウ素化合物;鉄酸、その塩である鉄酸カリウム等の鉄酸類;過マンガン酸、その塩である過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸類;クロム酸、その塩であるクロム酸カリウム、二クロム酸カリウム等のクロム酸類;バナジン酸、その塩であるバナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム等のバナジン酸類;過ルテニウム酸又はその塩等のルテニウム酸類;モリブデン酸、その塩であるモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸二ナトリウム等のモリブデン酸類;過レニウム酸又はその塩等のレニウム酸類;タングステン酸、その塩であるタングステン酸二ナトリウム等のタングステン酸類;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
酸化剤の研磨用組成物中の含有量は特に限定されないが、研磨速度を向上させる観点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、酸化剤の含有量は、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
界面活性剤の例としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が挙げられ、両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドが挙げられる。
【0031】
界面活性剤の研磨用組成物中の含有量は特に限定されないが、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、研磨速度を向上させる観点で、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
水溶性化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子や水溶性多価アルコール類がある。水溶性高分子のは種類は特に限定されないが、多糖類、N-ビニル化合物の(共)重合体、ヒドロキシ基含有(共)重合体、その他の水溶性高分子等が挙げられる。多糖類としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体が挙げられる。N-ビニル化合物の(共)重合体としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体等が挙げられる。その他の水溶性高分子としては、ポリアクリル酸(又はその塩)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、カプロラクタム化合物等が挙げられる。水溶性高分子は、研磨用組成物による有機物残渣の除去効果を向上させる。この効果は、水溶性高分子で研磨対象物の表面を覆うことで、有機物残渣と表面処理対象物との電位反発を強める作用に由来すると推測しているが、このメカニズムは推測に基づくものであり、本発明の一形態は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。をさらに含むことが好ましい。濡れ剤は、表面処理組成物による有機物残渣の除去効果を向上させる。この効果は、濡れ剤で表面処理対象物の表面を覆うことで、有機物残渣と表面処理対象物との電位反発を強める作用に由来すると推測しているが、このメカニズムは推測に基づくものであり、本発明の一形態は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。には、上記説明した「カルボキシ基含有(共)重合体」および上記説明した「SOの好ましい例としては、多糖類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0033】
水溶性多価アルコール類の例としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類や、グリセリンが挙げられる。なかでも、水溶性化合物がグリセリンであると、研磨用組成物の安定性を維持することができる。
【0034】
水溶性化合物の含有量は、研磨用組成物の保存時、又は、研磨時の研磨用組成物の安定性を維持させる観点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることがさらにより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。また、水溶性化合物の含有量は、研磨速度を向上させる観点で、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることさらに好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.8質量%以下であることが特に好ましく、0.6質量%以下であることが最も好ましい。
【0035】
分散助剤の例としては、特に限定されないが、ピロリン酸塩や、ヘキサメタリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。防食剤の例としては、特に制限されないが、界面活性剤、アルコール類、高分子、樹脂、アミン類、ピリジン類、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンゾトリアゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、安息香酸等が挙げられる。
【0036】
分散助剤及び防食剤の研磨用組成物中の含有量は特に限定されないが、分散助剤及び防食剤の研磨用組成物中の含有量は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散助剤及び防食剤の研磨用組成物中の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態の研磨用組成物は、防腐剤、防黴剤、防錆剤のような公知の添加剤を含有してもよい。防腐剤の例としては、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。また、防黴剤の例としては、オキサゾリジン-2,5-ジオン等のオキサゾリン等が挙げられる。これらの各種添加剤は、研磨用組成物において通常添加できるものとして、多くの特許文献等において公知であり、添加剤の種類及び添加量は特に限定されるものではない。ただし、これらの添加剤を添加する場合の添加量は、研磨用組成物全体に対してそれぞれ、1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましい。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
4.研磨用組成物の製造方法
本実施形態の研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、砥粒と、所望により各種添加剤とを、水等の液状溶媒中で撹拌、混合することによって製造することができる。例えば、アルミナと、pH調整剤等の各種添加剤とを、水中で撹拌、混合することによって製造することができる。各成分を混合する際の温度は特に限定されるものではないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を向上させるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
【0039】
本実施形態の研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型以上の多剤型であってもよい。また、研磨用組成物の供給経路を複数有する研磨装置を用いて研磨対象物の研磨を行う場合であれば、以下のようにして研磨を行ってもよい。すなわち、研磨用組成物の原料となる原料組成物を予め複数調製しておき、それら複数の原料組成物を供給経路を介して研磨装置内に供給し、研磨装置内でそれら複数の原料組成物が混合されて研磨用組成物を形成するようにして研磨を行ってもよい。
【0040】
(希釈)
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、そのまま研磨に使用してもよいし、濃縮液(原液)の状態の研磨用組成物を希釈した後に使用してもよい。本実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。研磨用組成物が二剤型である場合には、研磨用組成物の原料となる二つの原料組成物の混合と希釈の順序は任意である。例えば、一方の原料組成物を水で希釈した後、他方の原料組成物と混合してもよいし、両方の原料組成物の混合と水での希釈を同時に行ってもよいし、あるいは、両方の原料組成物を混合した後に水で希釈してもよい。
【0041】
濃縮液(原液)の状態の研磨用組成物を希釈して使用する時の希釈倍率は特に限定されないが、研磨用組成物の総量に対して体積基準で2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましく、5倍以上であることがさらにより好ましい。また、上記希釈倍率は、体積基準で凡そ50倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることがさらに好ましい。ここに開示される研磨用組成物が上記倍率で希釈されることにより、濃縮形態の研磨用組成物から、より研磨に適した組成を有する研磨用組成物が得られる。
【0042】
5.研磨装置及び研磨方法
本実施形態の研磨用組成物は、例えば、ブルーガラスの研磨で通常に用いられる研磨装置及び研磨条件で使用することができる。研磨装置としては、一般的な片面研磨装置や両面研磨装置が使用可能である。片面研磨装置を用いて研磨する場合には、キャリアと呼ばれる保持具を用いて研磨対象物を保持し、研磨用組成物を供給しながら、研磨パッドが貼付された定盤を研磨対象物の片面に押しつけ、定盤を回転させることにより研磨対象物の片面を研磨する。両面研磨装置を用いて研磨する場合には、キャリアを用いて研磨対象物を保持し、研磨用組成物を供給しながら、研磨パッドが貼付された定盤を研磨対象物の両面に押しつけ、研磨パッドと研磨対象物を相反する方向に回転させることにより研磨対象物の両面を研磨する。いずれの研磨装置を用いた場合でも、研磨パッド及び研磨用組成物と研磨対象物との間の摩擦による物理的作用と、研磨用組成物が研磨対象物にもたらす化学的作用によって、研磨対象物は研磨される。
【0043】
(研磨圧力)
研磨条件のうち研磨荷重(研磨時に研磨対象物に負荷する圧力)については特に限定されないが、一般に研磨荷重が大きいほど研磨材と研磨対象物との間の摩擦力が高くなる。その結果、機械的加工特性が向上し、研磨速度が上昇する。研磨荷重は、十分に高い研磨速度を得る観点で、1g/cm2(0.098kPa)以上であることが好ましく、10g/cm2(0.98kPa)以上であることがより好ましく、20g/cm2(1.96kPa)以上であることがさらに好ましい。また、研磨荷重は、研磨対象物の破損や表面欠陥の発生を低減する観点で、500g/cm2(49kPa)以下であることが好ましく、250g/cm2(24.5kPa)以下であることがより好ましく、150g/cm2(14.7kPa)以下であることがさらに好ましい。
【0044】
(表面粗さ)
本発明の研磨方法の用途は、特に制限されないが、例えば、後述の実施例に記載した条件で測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))が、 1nm~500μm程度のリン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラス用の研磨対象物を研磨して、研磨前の表面粗さの1/2以下の表面粗さRaに調整する用途であることが好ましく、研磨前の表面粗さの1/10以下の表面粗さRaに調整する用途であることがより好ましく、研磨前の表面粗さの1/50以下の表面粗さRaに調整する用途であることがさらに好ましい。また、本発明の一形態に係る研磨方法によって研磨するリン酸塩ガラス又はフツリン酸塩ガラス用の研磨対象物の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))は、より高品位な表面を得る観点から、10nm以下に調整する用途であることが好ましく、5nm以下に調整する用途であることがより好ましく、1nm以下に調整する用途であることがさらに好ましく、0.5nm未満に調整する用途であることがさらにより好ましい。
【0045】
(研磨対象物)
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、種々の形状を有するリン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラスの表面の研磨に適用されうる。リン酸塩ガラス又はフツリン酸ガラスの表面の形状は、平面、若しくは、曲面形状を有する面、例えばレンズのような全体が曲面の形状、又は、面取りをしたような端部が曲面の形状であってもよい。
研磨パッドの種類は特に限定されるものではなく、材質、厚さ、硬度等の物性が種々異なるものを用いることができる。例えば、ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の種々の材質の研磨パッドを用いることができる。なかでも、表面粗さの低減やスクラッチ等の欠陥を低減する観点で、研磨パッドの材質はスウェードタイプであることが好ましい。また、砥粒を含む研磨パッド、砥粒を含まない研磨パッドのいずれの研磨パッドも用いることができる。
【実施例0046】
(実施例1)
以下に実験例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
実験例1~11及び比較例1~15として、それぞれ表1に示される種類と粒径(D50)を有する砥粒とを混合し、pH調整剤として硝酸又は水酸化カリウムを添加して、表1に示されるpHとなるように調整して研磨用組成物を得た。なお、本実施例、比較例で使用した砥粒の新モース硬度は、アルミナが12、ジルコニアが11、セリアが6、シリカが9~10を有する。
【0047】
【0048】
次に、表1に示される研磨用組成物を使用して表1に示される研磨対象物の研磨を行い、研磨速度、被研磨面の表面粗さRaを測定した。研磨対象物は、実験例1~11及び比較例1~7、14、15ではリン酸塩ガラス、比較例8~13ではアルミノシリケートガラスを使用した。結果を表1に示した。
研磨条件は以下の通りである。
研磨装置:片面研磨装置(ENGIS社製 EJ-380N)
研磨パッド:スウェード型パッド
研磨荷重:100g/cm2(9.8kPa)
定盤の回転速度:80rpm(線速度:9.5m/分)
研磨時間:15分
研磨用組成物の供給速度:10mL/分
研磨対象物の測定面積:0.143×0.107mm
ピッチ:0.164μm
【0049】
研磨速度の測定方法は、研磨前後の基板の重量を測定し、その差から算出した。
研磨対象物の研磨後の被研磨面の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra)は、AMETEC社製の非接触式3D形状測定/表面粗さ測定機『NewView5032』を使用して、視野角が0.143×0.107mmとなる条件で測定した。
【0050】
表1に示す結果から分かるように、実験例1~11の砥粒として新モース硬度12を有するアルミナ又は新モース硬度11を有するジルコニアを含む研磨用組成物を使用すると、新モース硬度5程度を有するリン酸塩ガラスの表面が十分な研磨速度(0.57~1.24μm)で研磨されているとともに、表面粗さRaも良好であった。これに対して、比較例1~8は、砥粒として新モース硬度が9未満であるセリア又はシリカを使用したところ、研磨速度が十分でないか、又は表面粗さRaが不良であった。また、比較例8~13は、砥粒としてアルミナ又はセリアを使用して、新モース硬度9~10を有するアルミノシリケートガラスを研磨したが、研磨速度、表面粗さとも十分ではなかった。特に、比較例11~13は実験例4~6と同じ新モース硬度が12であるアルミナを砥粒とした研磨用組成物を使用したが、研磨対象物が新モース硬度9~10を有するアルミノシリケートに変更されると、研磨速度、表面粗さとも十分ではなかった。
【0051】
(実施例2)
次に、実験例12~18及び比較例8として、それぞれ砥粒として表2に示される粒径(D50 0.3μmを有するアルミナ又はセリアと、表2示される添加物と、水と混合し、pH調整剤として水酸化カリウムを添加して、添加物の含有量が0.17重量%、pHが11となるように調整して8種の研磨用組成物を得た。なお、本実施例、比較例で使用した砥粒の新モース硬度は、アルミナが12、セリアが6を有する。
【0052】
【0053】
次に、8種の研磨用組成物を使用してリン酸塩ガラスの研磨を行い、研磨速度、被研磨面の表面粗さRaを測定した。結果を表2に示した。
研磨条件は以下の通りである。
研磨装置:片面研磨装置(ENGIS社製 EJ-380N)
研磨パッド:スウェード型パッド
研磨荷重:40g/cm2(3.9kPa)
定盤の回転速度:11rpm(線速度:1.3m/分)
研磨時間:10分
研磨用組成物の供給速度:5mL/分
研磨対象物の測定面積:0.17×0.17mm
ピッチ:0.164μm
【0054】
研磨速度の測定方法は、研磨前後の基板の質量を測定し、その差から算出した。
研磨対象物の研磨後の被研磨面の表面粗さRaは、AMETEC社製の非接触式3D形状測定/表面粗さ測定機『NewView9000』を使用して、視野角が0.170×0.170mmとなる条件で測定した。
【0055】
表2に示す結果から分かるように、実験例12~18は砥粒として新モース硬度12を有するアルミナを含み、さらに研磨促進などに寄与する添加物を含む研磨用組成物を使用すると、新モース硬度5を有するリン酸塩ガラスの表面が十分な研磨速度(0.28~0.47μm)で研磨されているとともに、表面粗さRaも良好であった。これに対して、比較例16では、砥粒として新モース硬度6を有するセリアを含み、特に研磨速度を高める作用を有する添加物を含まないため、研磨速度が十分でなかった。
例えば、特許文献1では、磁気ディスク基板などに用いられる平坦性が要求されるガラス基板をセリウム系研磨剤を用いて研磨することを開示しているが、研磨後の表面粗さや研磨効率は十分ではなかった。
また、例えば、特許文献2では、フツリン酸塩ガラス、又はリン酸塩ガラスからなるガラス球を、粒径0.01~100μmのアルミナ、セリア、ジルコニアなどを用いて、表面うねりを50μm以下とすることが開示されているが、研磨速度を速くすると粗加工しかできず、研磨効率を高めて、かつ研磨後の表面精度を高めるには十分ではなかった。
水溶性化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子や水溶性多価アルコール類がある。水溶性高分子のは種類は特に限定されないが、多糖類、N-ビニル化合物の(共)重合体、ヒドロキシ基含有(共)重合体、その他の水溶性高分子等が挙げられる。多糖類としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体が挙げられる。N-ビニル化合物の(共)重合体としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体等が挙げられる。その他の水溶性高分子としては、ポリアクリル酸(又はその塩)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、カプロラクタム化合物等が挙げられる。水溶性高分子は、研磨用組成物による有機物残渣の除去効果を向上させる。この効果は、水溶性高分子で研磨対象物の表面を覆うことで、有機物残渣と表面処理対象物との電位反発を強める作用に由来すると推測しているが、このメカニズムは推測に基づくものであり、本発明の一形態は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
表1に示す結果から分かるように、実験例1~11の砥粒として新モース硬度12を有するアルミナ又は新モース硬度11を有するジルコニアを含む研磨用組成物を使用すると、新モース硬度5程度を有するリン酸塩ガラスの表面が十分な研磨速度(0.57~1.24μm)で研磨されているとともに、表面粗さRaも良好であった。これに対して、比較例1~8は、砥粒として新モース硬度が9未満であるセリア又はシリカを使用したところ、研磨速度が十分でないか、又は表面粗さRaが不良であった。また、比較例8~13は、砥粒としてアルミナ又はセリアを使用して、新モース硬度9~10を有するアルミノシリケートガラスを研磨したが、研磨速度、表面粗さとも十分ではなかった。特に、比較例11~13は実験例4~6と同じ新モース硬度が12であるアルミナを砥粒とした研磨用組成物を使用したが、研磨対象物が新モース硬度9~10を有するアルミノシリケートガラスに変更されると、研磨速度、表面粗さとも十分ではなかった。