(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015482
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】開閉蓋装置およびそれを備えた自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118349
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】末成 元
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058FB01
2G058GB10
2G058GE10
2G058HA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】開閉蓋を開放位置で安定して維持することができるとともに、開閉蓋を上方からの付勢に応じて全閉位置に移動することができる開閉蓋装置およびそれを用いた自動分析装置を提供する。
【解決手段】前処理装置13を構成する第1領域を覆う領域カバー23に設けられた開口部を開閉自在に覆う開閉蓋16と、開閉蓋16と第1領域の内部の支軸37とを開口部を経由して接続し、支軸37に回動自在に支持される支持腕35と、開閉蓋の先端40が基準高さよりも高い場合には開閉蓋16が全開位置で保持されるように支持腕35を保持するとともに、開閉蓋の先端40が基準高さよりも低い場合には開閉蓋16が自重で全閉位置まで移動するように支持腕35の保持を解除する開放保持機構とを備え、開閉蓋16は、全開位置において先端40が支軸37側よりも高くなるように保持され、かつ全閉位置において支軸37側が先端40よりも高くなるように保持される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置の機能部の少なくとも一部を収納する筐体上の作業面に設けられた第1領域を、領域カバーとともに覆うように配置された開閉蓋装置であって、
前記第1領域の外部から内部にアクセスするために前記領域カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆う開閉蓋と、
前記開閉蓋の前記第1領域側の面と前記第1領域の内部に配置された支軸とを前記開口部を経由して接続し、前記支軸に対して前記開閉蓋を回動自在に支持する支持腕と、
前記開閉蓋の前記支軸から遠い側の一端が予め定めた基準高さよりも高い位置に移動された場合には前記開閉蓋が全開位置で保持されるように前記支持腕を保持するとともに、前記開閉蓋の前記一端が前記基準高さよりも押し下げられた場合に前記開閉蓋が自重で全閉位置まで移動するように前記支持腕の保持を解除する開放保持機構とを備え、
前記開閉蓋は、前記全開位置において前記支軸から遠い側の一端が前記支軸側の他端よりも高くなるように保持され、かつ、前記全閉位置において前記他端が前記一端よりも高くなるように保持されることを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項2】
請求項1記載の開閉蓋装置において、
前記開閉蓋の前記他端は、前記全開位置及び前記全閉位置の両方において前記支軸よりも上方に位置することを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項3】
請求項1記載の開閉蓋装置において、
前記開放保持機構は、
前記支持腕に設けられた受け部と、
前記開閉蓋が前記全開位置にある場合に、前記開閉蓋の自重による全閉位置への移動を阻止する保持力を前記受け部に付与する付勢部とを備えたことを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項4】
請求項3記載の開閉蓋装置において、
前記開放保持機構は、前記全開位置において前記開閉蓋の前記一端が予め定めた力以上の力で下方に押された場合に前記開閉蓋が自重で前記全閉位置まで移動するように前記受け部の前記付勢部による付勢を解除することを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項5】
請求項3記載の開閉蓋装置において、
前記支軸と前記開放保持機構とを下方から離間して覆うように配置された下面カバーを備えたことを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項6】
請求項1記載の開閉蓋装置において、
前記全閉位置における前記開閉蓋と前記領域カバーとの境界に配置され、前記第1領域の内部と外部の間の空気の流出入を抑制するとともに、前記第1領域の内部への光の侵入を抑制する気密部材を備えたことを特徴とする開閉蓋装置。
【請求項7】
分析対象の試料を収容した試料容器を載置して搬送する試料容器搬送機構と、
前記試料と反応させるための試薬を収容した試薬容器を載置して保持する試薬容器保持機構と、
前記試料と前記試薬とを反応させる反応容器を載置する反応機構と、
前記試料容器の試料を前記反応容器に分注する試料分注機構と、
前記試薬容器の試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、
前記反応容器に分注された前記試料と前記試薬の反応液に前処理を行う前処理装置と、
前記前処理装置で前処理を実施された反応液の測定を行う測定装置と、
前記前処理装置を含む第1領域を覆うように配置された領域カバーと、
請求項1記載の開閉蓋装置と
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉蓋装置およびそれを備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の生体試料に含まれる特定の成分の定性分析、或いは、定量分析を行う装置であり、例えば、病院や医療検査施設など、多くの患者検体を短時間で処理する必要のある施設では必須の装置となっている。
【0003】
このような自動分析装置においては、外部環境の分析結果への影響を抑制するために、反応液や試薬の分注、攪拌などの前処理を遮光および温度調整されたカバー領域内で行っている。また、測定結果を高精度に維持するためには、カバー領域内の清掃や部品交換などの保守作業を定期的に、或いは、使用状況に応じて行うことが求められる。
【0004】
保守作業を行う際には、前処理に係る装置を覆うカバーの上方ないし前面に設けられた開閉蓋を開放し、開閉蓋とカバーとの間に生じる隙間から保守員が手指ないし清掃具を挿入して保守作業を行う。保守作業が完了して開閉蓋を閉じれば、開閉蓋とカバーとの間が密閉され、カバー内部の領域は遮光と温度調整のなされた状態に戻る。作業時に開放される開閉蓋は、作業中に不意に閉じないよう全開状態を維持する手段を備える必要がる。
【0005】
開閉扉の開状態の維持に係る従来技術として、例えば、特許文献1には、開閉可能な蓋体が設けられた本体の内部にX線源とセンサを有し、前記本体の内部で前記X線源から照射されて被検査品を透過したX線を前記センサで検出することにより被検査品の検査を行なうX線検査装置において、前記本体に取り付けられた第1基板部と、前記蓋体に取り付けられた第2基板部と、前記第1基板部と第2基板部が相対的に回動可能となるように前記第1基板部と第2基板部を連結する回動部とを有し、前記蓋体を前記本体に対して開閉可能に連結する連結部材と、前記連結部材の前記第1基板部と前記第2基板部の少なくとも一方に取り付けられ、前記蓋体が前記本体を閉止する位置から開方向に所定の角度だけ回動したところで前記第1基板部と前記第2基板部の他方の側に当接する開角度設定部材と、を具備することを特徴とするX線検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の従来技術においては、出口カバーがその自重によって閉方向に付勢される力と実質的に同等の力を付勢手段により付勢することで、出口カバーが開放位置に固定されている。すなわち、出力カバーの閉方向にわずかでも力が作用すると出力カバーは自重により閉止位置まで移動してしまうため、例えば、保守員などが出口カバーに接触して閉方向への力が加わってしまうと、出口カバーの内部にアクセスして行う作業の妨げとなってしまう。また、出口カバーの開度を大きくすることで出口カバーを開放位置に安定に維持しようとしているが、保守員などの接触によって出口カバーに上方から力が加わる可能性があるため、回動部やストッパ部に過大な負荷が加わるおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、開閉蓋を開放位置で安定して維持することができるとともに、開閉蓋を上方からの付勢に応じて全閉位置に移動することができる開閉蓋装置およびそれを用いた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、分析装置の機能部の少なくとも一部を収納する筐体上の作業面に設けられた第1領域を、領域カバーとともに覆うように配置された開閉蓋装置であって、前記第1領域の外部から内部にアクセスするために前記領域カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆う開閉蓋と、前記開閉蓋の前記第1領域側の面と前記第1領域の内部に配置された支軸とを前記開口部を経由して接続し、前記支軸に対して前記開閉蓋を回動自在に支持する支持腕と、前記開閉蓋の前記支軸から遠い側の一端が予め定めた基準高さよりも高い位置に移動された場合には前記開閉蓋が前記全開位置で保持されるように前記支持腕を保持するとともに、前記開閉蓋の前記一端が前記基準高さよりも押し下げられた場合に前記開閉蓋が自重で前記全閉位置まで移動するように前記支持腕の保持を解除する開放保持機構とを備え、前記開閉蓋は、前記全開位置において前記支軸から遠い側の一端が前記支軸側の他端よりも高くなるように保持され、かつ、前記全閉位置において前記他端が前記一端よりも高くなるように保持されるものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開閉蓋を開放位置で安定して維持することができるとともに、開閉蓋を上方からの付勢に応じて全閉位置に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自動分析装置の全体構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】自動分析装置の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】自動分析装置の全体構成を概略的に示す左側面図である。
【
図4】自動分析装置の前処理装置を抜き出して拡大して示す図であり、開閉蓋の回動中心部付近を部分透視図とする正面図である。
【
図5】自動分析装置の前処理装置を抜き出して拡大して示す平面図である。
【
図6】
図4におけるB-B線断面図であり、全閉位置における開閉蓋と領域カバーとの境界部を拡大して示す断面図である。
【
図7】ヒンジ部を抜き出して示す断面図であり、開閉蓋が全閉位置の場合を示す図である。
【
図8】ヒンジ部を抜き出して示す断面図であり、開閉蓋が全閉位置から全開位置まで回動する様子を示す図である。
【
図9】ヒンジ部を抜き出して示す断面図であり、開閉蓋が全開位置の場合を示す図である。
【
図10】ヒンジ部を抜き出して示す断面図であり、開閉蓋が全開位置の場合を示す図である。
【
図11】前処理部を抜き出して示す下方斜視図であり、開閉蓋が全閉位置の場合を示す図である。
【
図12】前処理部を抜き出して示す下方斜視図であり、開閉蓋が全開位置の場合を示す図である。
【
図13】本実施の形態に係る前処理装置を抜き出して示す正面図であり、開閉蓋を全開位置とした様子を示す図である。
【
図14】比較例として示す前処理装置の構成を示す正面図であり、開閉蓋を全閉位置とした様子を示す図である。
【
図15】比較例として示す前処理装置の構成を示す正面図であり、開閉蓋を全開位置とした様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態を
図1~
図15を参照しつつ説明する。
【0013】
図1~
図3は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図であり、
図1は平面図、
図2は斜視図、
図3は左側面図である。なお、以下の説明において、自動分析装置の前方向は
図1における下方向、右方向は
図1における右方向、上方向は
図1における紙面手前方向と定義する。
【0014】
図1~
図3において、自動分析装置1は、試薬ディスク2、安全カバー4、サンプル搬送機構5、サンプル分注機構6、チップラック7、搬送機構8、インキュベータ9、攪拌機構9a、サンプル分注チップバッファ11、廃棄孔12、前処理装置13、試薬分注プローブ15、洗浄機構17、検出装置19、筐体21、及び試薬保冷庫24(試薬庫)を備える。
【0015】
筐体21は、例えば、鋼板を溶接やリベット締結などによって結合された剛性の高い筐体フレーム55の周囲を前板56、左右側板57、背面板58、及び上面板(すなわち作業面22)で覆われた略直方体の形状を有し、サンプル搬送機構5、洗浄機構17、試薬保冷庫24、及び図示しない基板や流路などの分析装置の構成部材を内部に収納している。前板56、左右側板57、背面板58は保守作業の際には取り外し可能に構成されている。
【0016】
安全カバー4は筐体21の背面上部に左右方向に沿って配置されたカバー支軸26を中心として回動可能(開閉可能)に軸支されて構成されている。
図1~
図3においては、安全カバー4を閉じた状態を実線で図示し、安全カバー4を開いた状態を一点鎖線で示す。安全カバー4には、例えば、ソレノイドなどを駆動源としたインターロック(図示せず)が設けられており、自動分析装置1の動作中はソレノイドに通電して閂をかけることにより、安全カバー4を閉じた状態に固定して維持する。すなわち、このとき、安全カバー4は操作者による開動作ができない。また、自動分析装置1の停止中は、ソレノイドへの通電が解除され、安全カバー4が開放可能となる。
【0017】
サンプル搬送機構5は、例えばベルトコンベヤやラックハンドラ等から構成されており、自動分析装置1内においてサンプル5aを移動し、サンプル分注機構6の可動域まで搬送する。
【0018】
チップラック7は、自動分析装置1に対して着脱可能に構成されており、複数の未使用のサンプル分注チップ10及び複数の未使用の反応容器14が載置された状態で操作者により自動分析装置1の上面に配置される。
【0019】
搬送機構8は、平面方向(前後左右方向)及びZ軸方向(上下方向)に移動可能に構成されており、チップラック7、インキュベータ9の一部、サンプル分注チップバッファ11、および廃棄孔12の上方を移動可能に構成されている。搬送機構8としては、例えば三軸ロボット等を用いることができる。搬送機構8は、チップラック7から反応容器14を一つずつ把持し、インキュベータ9へ移動させる。また、搬送機構8は、チップラック7からサンプル分注チップ10を一つずつ把持し、サンプル分注チップバッファ11まで移動させる。
【0020】
サンプル分注チップバッファ11は、搬送機構8によってチップラック7から搬送された未使用のサンプル分注チップ10を一時的に載置するバッファである。サンプル分注チップバッファ11は、複数のサンプル分注チップ10を載置可能に構成されている。
【0021】
インキュベータ9は、略円盤形状を有し、回転可能に構成されている。インキュベータ9は、周方向に沿って複数の反応容器14を保持可能であり、インキュベータ9の回転によって、各反応容器14を所定の位置まで移動させることができる。
【0022】
サンプル分注機構6は、サンプル分注チップバッファ11の上部に移動して、サンプル分注チップ10のいずれか1つを装着し、サンプル5aの上部に移動して、サンプル分注チップ10の内部にサンプル5aを吸引する。その後、インキュベータ9上の反応容器14の上部へ移動し、サンプル5aをサンプル分注チップ10内部から反応容器14内に吐出する。その後、サンプル分注機構6は、廃棄孔12の上部に移動し、サンプル分注チップ10を分離して廃棄孔12の内部に落下させる。
【0023】
試薬保冷庫24は、略円筒形状を有し、内部に試薬ディスク2を収容している。試薬保冷庫24の上面には、試薬ディスク2に対する試薬容器3の着脱を行うための試薬容器装填口20が設けられている。また、試薬容器装填口20には、開閉式の試薬容器装填口蓋(図示せず)が設けられている。試薬保冷庫24は、内部の試薬容器3に収容されている試薬の温度を一定に制御するための断熱機能を有している。
【0024】
試薬ディスク2は、上下軸方向に延びる中心軸のまわりに回転可能に構成されており、周方向に沿って試薬容器3を保持する複数のスロットを有している。スロットは、試薬容器3の長手方向が試薬ディスク2の半径方向となるように保持するように構成されている。したがって、試薬ディスク2には複数の試薬容器3が放射状に保持される。試薬ディスク2を回転することで、各試薬容器3を所定の位置へ移動させる。例えば、試薬ディスク2の回転により、目的の試薬を収容する試薬容器3を試薬分注位置15aに移動させることができる。
【0025】
試薬分注プローブ15は、例えばアクチュエータなどにより前後左右方向(水平方向)及び上下方向に移動可能に構成される。試薬分注プローブ15は、試薬分注位置15aに位置する試薬容器3から、所定量の試薬を試薬分注ピペット(図示せず)によって吸引し、インキュベータ9に保持された反応容器14に分注する。
【0026】
所定の試薬とサンプル5aが分注された反応容器14は、インキュベータ9により所定温度に管理され、また、必要に応じて攪拌機構9aによって攪拌されて、所定の時間の反応促進が行われる。
【0027】
インキュベータ9により反応促進が行われた反応溶液は、反応容器14ごと図示しない移載装置によって前処理装置13に送られ、例えば反応溶液の撹拌や、検出装置19への反応溶液の供給、測定の終了した反応溶液および反応容器14の廃棄などの一連の動作が行われる。なお、測定の種類によっては、1つの反応容器14を複数回の測定に使用しても良い。その場合は、分析が終了した反応容器14内の反応溶液を廃棄した後で、反応容器14を洗浄する。
【0028】
検出装置19によって検出される反応溶液の物理特性としては、例えば発光量、散乱光量、透過光量、電流値、電圧値などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、検出装置19は、反応容器14から供給される反応溶液を測定するものに限られず、反応容器14内に反応溶液を保持したまま測定を行う構成としても良い。
【0029】
自動分析装置1には、ホストコンピュータ200が接続され、自動分析装置1の上記構成の一連の動作は、ホストコンピュータ200によって制御される。
【0030】
自動分析装置1はホストコンピュータ200による制御によって上述の動作を組み合わせ、ないし繰り返すことで、複数のサンプルのサンプルに関して複数の分析項目を効率的に分析することができる。
【0031】
ここで、筐体21上の作業面22に設けられた前処理装置13を構成する領域(第1領域)を領域カバー23(外カバー)とともに覆うように配置された開閉蓋装置、及び作業面22上の作業領域(第2領域)を覆う安全カバー4についてさらに詳細に説明する。
【0032】
安全カバー4の前辺には、安全カバー4を閉じ位置から開放する際に手指を挿入する凹部である手掛け部27が設けられている。安全カバー4は、筐体21の背面上部に左右方向に沿って配置されたカバー支軸26を中心として軸支されており、全開位置と閉止位置との間で回動可能(開閉可能)に構成される。安全カバー4を開放して図示しないストッパに当接させ、図示しない支持機構によって自重で閉じないように支持すれば、安全カバー4は全開位置に保持されるので、操作者は作業面22と安全カバー4の前辺との隙間から腕や上半身を挿入して、前処理装置13の内部清掃や消耗品の交換を含む作業面22上での作業を行うことができる。なお、前処理装置13に対する作業では、操作者は領域カバー23の開口部に設けられた開閉蓋16(後述)を開いて内部にアクセスする。
【0033】
図4及び
図5は、自動分析装置の前処理装置を抜き出して拡大して示す図であり、
図4は開閉蓋の回動中心部付近を部分透視図とする正面図、
図5は平面図である。また、
図6は、
図4におけるB-B線断面図であり、全閉位置における開閉蓋と領域カバーとの境界部を拡大して示す断面図である。
【0034】
前処理装置13は、作業面22上に載置された(すなわち、作業面から上方に凸形状に形成された)箱体状の領域カバー23の内部領域(第1領域)に構成されている。前処理装置13は、試料に対する一連の分析処理として後段に位置する検出装置19において物理特性を精度良く測定するための前処理を行うものであり、内部には検体容器搬送機構や検体容器攪拌機構、測定終了後の検体や反応容器の廃棄を行う廃棄部などを備えている。
【0035】
前処理装置13は、例えば、ヒータや冷却素子などの温度調整装置(図示せず)を備えており、領域カバー23の内部を所定の温度に維持することができる。また、前処理装置13の外面を構成する領域カバー23には、領域カバー23の一部の上面から前面にかけて開口部が設けられており、開口部には上方に開放可能な開閉蓋16が設けられている。開閉蓋16を開放する(全開位置とする)ことで、操作者は前処理装置13の内部にアクセスすることが可能となり、定期的な、或いは必要に応じた前処理装置13の内部清掃、部品交換などを行うことができる。
【0036】
図4及び
図5に示すように、前処理装置13の右側上部にさらに凸形状に形成された領域カバー23内部には、開閉蓋16の前処理装置13の内部側(第1領域側)の面と領域カバー23の内部に配置された支軸37とを、領域カバー23に設けられた開口部を経由して接続し、支軸37に対して開閉蓋16を回動自在に支持する腕部35(支持腕)を備えたヒンジ部25が形成されている。
【0037】
開閉蓋16の上面形状は、例えば、左側(支軸37から遠い側)の前処理装置13の上面を覆う部分は水平面に沿った平面形状であり、右側(支軸37側)に行くにしたがって上向きに立ち上がる段差形状、及び、ヒンジ部25に沿った右上がりの傾斜面32を経て、最も上方に位置するヒンジ部上面33へと繋がる形状となっている。開閉蓋16の右端である開閉蓋後端部34は、傾斜面32のうちヒンジ部上面33に近接した位置に設けられる。
【0038】
開閉蓋16は、腕部35の一端に設けられた取り付け部36に対して前処理装置13の内側から固定されている。また、腕部35の他端は支軸37を形成しており、前処理装置13の上部に載置されたヒンジ部25の右上端近傍に設けられた支軸受け38に回動自在に軸支されている。すなわち、腕部35と開閉蓋16とは、支軸37(支軸受け38)を中心として一体的に回動する。
【0039】
開閉蓋16のうち支軸37から最も遠い側の端部(左端部)を開閉蓋16の先端部(開閉蓋先端部40)とすると、開閉蓋16が全閉位置の場合(全閉時)には、開閉蓋16の右端近傍の支軸37の方が左端の開閉蓋先端部40よりも高い。すなわち、支軸37を含む水平面と、支軸37と開閉蓋16の開閉蓋先端部40とを結んだ直線は左下がりの直線となり、それらのなす角α0は支軸37側から開閉蓋先端部40側を見て俯角となる(後の
図7参照)。
【0040】
図4に示すように、開閉蓋16と前処理装置13との境界である開閉蓋境界部28の形状は、正面視では最上部は支軸37の左側から、左に鉛直に近い角度で傾斜しつつ下方に延伸するA辺と、A辺よりも水平に対して緩やかな角度を成しつつA辺の下端に対して連続的に連なって左下方に延伸するB辺と、B辺の下端に連続的に連なって前処理装置13の下面近傍を左方に延伸するC辺と、C辺の左端部から左上方に延伸して開閉蓋先端部40に至るD辺とを有している。なお、D辺は途中に屈曲部などを設けても良いが、少なくとも支軸37を中心として開閉蓋先端部40を通る円弧である外周円弧41よりも内周側に位置するように形成し、開閉蓋16を開閉する際に開閉蓋16のD辺が領域カバー23のD辺ないし開閉蓋先端部40と干渉しないように形成する必要がある。このように、開閉蓋16の正面視における下縁部の形状は、右側の辺が左側の辺よりも長い略U字形状をなしている。
【0041】
図5に示すように、開閉蓋16の上面視における平面形状は、前処理装置13の周囲にある検出装置19や回転アーム状をなしたサンプル分注機構6などの動作軌跡を回避した形状としている。また、開閉蓋16は、最も前面に近い部分に前側に凸形状に形成されたつまみ部39を有しており、操作者が開閉蓋16を開閉操作する際に指でつまんで容易に開閉できる構成となっている。
【0042】
図6に示すように、開閉蓋16の外周、すなわち、開閉蓋境界部28には、例えば、スポンジゴム製の気密部材29が全周にわたって隙間なく貼り付けられており、開閉蓋16を閉じた状態(すなわち、全閉状態)においては、前処理装置13の内部が密閉されて外気の侵入及び内気の流出が防止されることで、前処理装置13の内部の温度が一定に維持されるとともに、外光の侵入も遮断される。また、開閉蓋境界部28において、開閉蓋16の外周に気密部材29の外側に沿って下向きのリブ44aを設けるとともに、領域カバー23の開口部の縁に気密部材29の内側に沿って上向きのリブ44bを設けて覆い部(リブ44a、44b)を形成すれば、所謂ラビリンス効果によって空気の流入がさらに妨げられるとともに、外光もより確実に遮断することができる。
【0043】
前処理装置13内部の温度を所定の温度を維持し、さらに外光の侵入を防止した状態で前処理装置13における一連の処理を行うことによって、検出装置19における物理特性の測定精度が向上する。したがって、前処理装置13の内部を清掃した後は、確実に開閉蓋16を閉じてから後に安全カバー4を閉じることが求められる。さらに望ましくは、開閉蓋16を開いたまま閉じ忘れた場合であっても、安全カバー4を閉じると連動して開閉蓋16が閉じる構成が望ましい。
【0044】
図7~
図10は、ヒンジ部を抜き出して示す断面図であり、
図7は開閉蓋が全閉位置の場合を、
図8は開閉蓋が全閉位置から全開位置まで回動する様子を、
図9及び
図10は開閉蓋が全開位置の場合をそれぞれ示す図である。
【0045】
図7~
図10に示すように、腕部35は正面視で略V字型をなしており、V字型の左端側は開閉蓋16を例えばネジ止め固定する取り付け部36を形成しており、V字型の右端側は開閉蓋16との一体的な開閉動作の回転中心となる支軸37を形成している。腕部35のV字型形状の下端の角部42は、後述する付勢部材46とともに、開閉蓋16を全開状態で保持するロック機構30を構成している。支軸37から角部42までを第一の腕部35a、角部42から取り付け部36までを第二の腕部35bと称する。第一の腕部35aは正面視で支軸37から角部42まで略直線状であり、第二の腕部35bは上方に向けて湾曲しており、大略は支軸37を中心とした円筒面の一部をなしている。
【0046】
開閉蓋16が全閉状態から全開状態に至るまで、第二の腕部35bは領域カバー23のうち、開閉蓋16によって開口した範囲内にあるように配置した、所謂持ち出しヒンジの形態をなしており、開閉蓋16を閉鎖した際(全閉位置に移動した際)には第二の腕部35bは取り付け部36を含めて開口部の内側に入るので、開閉蓋16と領域カバー23との開閉蓋境界部28は開閉蓋の全周にわたって連続した閉じた曲線を形成できる。したがって、境界部に沿って設けた気密部材29により、開閉蓋16を閉じた際の気密を保持しつつ外光の侵入を防止することができる。
【0047】
図11及び
図12は、前処理部を抜き出して示す下方斜視図であり、
図11は開閉蓋が全閉位置の場合を、
図12は開閉蓋が全開位置の場合をそれぞれ示す図である。
【0048】
図11及び
図12に示すように、ヒンジ部25には、その上面から懸架されて固定され、開閉蓋16を閉じた際に腕部35の下面、前面、および後面を覆うように配置された下面カバー45が設けられている。下面カバー45の左方の面は、第二の腕部35bに沿って上方に向けて湾曲しており、大略は支軸37を中心とした円筒面の一部をなしている。なお、下面カバー45には支軸受け38が一体で設けられていてもよい。例えば、開閉蓋16の開閉動作によって回転軸(支軸37及び支軸受け38)から摩耗粉などの異物が生じたとしても、それらの異物は下面カバー45の上に落下するので、異物が前処理装置13内にある検体や試薬内に落下することを抑制することができる。
【0049】
図7~
図10に示すように、下面カバー45の左方の面と、第二の腕部35bとの間には、下面カバー45に沿って湾曲した付勢部材46が設けられている。付勢部材46の右下方の一端は下面カバー底面47に対して、例えばねじ止めやスナップフィットなどで固定されており、上方に向けて下面カバー45に沿って湾曲した他端は片持ちの曲がり梁状をなし、支軸37を向いた突起部である爪部48を設ける。爪部48の上面はおおむね支軸37の方向を向いた平面状のロック面49とし、爪部48から下方に向けては斜面50をなしている。
図7に示すように、開閉蓋16を全閉位置とした際には、付勢部材46の爪部48は第二の腕部35bとは接しない構成である。
【0050】
本実施形態においては、下面カバー45、付勢部材46、腕部35、開閉蓋16、は樹脂製としてもよく、例えば開閉蓋16はアクリロニトリルブタジエン(ABS)樹脂製、下面カバー45、付勢部材46、腕部35は例えばポリアセタール(POM)樹脂製とすれば、部品数を低減して簡素化や低コスト化を実現する効果がある。
【0051】
図7に示す開閉蓋16の全閉位置から、
図8に示す位置を経て、
図9に示す全開位置に移動させる場合、操作者がつまみ部39を持ち上げて開閉蓋16を開き、開閉蓋16の開閉蓋先端部40が支軸37を基準として先端高さH3に至ると、V字型をした腕部35の角部42が付勢部材46の斜面50に接し、爪部48が支軸37から離反する方向に移動するように付勢部材46を弾性変形させる。さらに、開閉蓋先端部40の高さが開ロック高さH4(<H3)以上に至ると、角部42は付勢部材46の爪部48を乗り越え、爪部48は支軸37に近接する方向に付勢部材46の弾性力で復帰する。このとき、腕部35の角部42は付勢部材46のロック面49よりも高い位置にある。この状態で、操作者が開閉蓋16のつまみ部39から手を離すと、腕部35の角部42がロック面49に載置される。付勢部材46による腕部35への付勢力は、開閉蓋16が自重により閉じようとするモーメントよりも、付勢部材46のロック面49から角部42に対して生じる反力による支持モーメントの方が大きくなるように構成されており、したがって、開閉蓋16は全開状態(全開位置)を維持する。すなわち、開ロック高さH4とは、腕部35の角部42と付勢部材46とで構成されたロック機構30の作用によって開閉蓋16が全開状態を維持する際の開閉蓋先端部40の高さである。全開位置における開閉蓋先端部40の床面からの高さは、
図3及び
図9に示すようにH1となる。
【0052】
図9に示すように、開閉蓋16の重心位置をCG、支軸37から重心CGまでの水平距離をR1、開閉蓋16の自重をm、重力加速度をg、支軸37から角部42までの距離をR2とすると、自重による閉じモーメントはmg×R1、角部42に生じる反力F1は自重による閉じモーメントを回転半径R2で除すればよいから、F1=mg×R1/R2として表される。
【0053】
このとき、支軸37を含む平面と、支軸37と開閉蓋16の開閉蓋先端部40とを結んだ直線は左上がりの直線となり、それらのなす角α1は支軸37側から開閉蓋先端部40側を見て仰角となる。また、床面から開閉蓋先端部40までの高さはH1となる。
【0054】
すなわち、開閉蓋先端部40の高さがH3以下であれば、腕部35の角部42に対する付勢部材46のロック面49による支持モーメントが働かない位置関係となるので、開閉蓋16はロックがかからない状態となって自重で閉じ、開閉蓋先端部40の高さがH4より高ければ、角部42がロック面49により保持され、開閉蓋16が全開状態(全開位置)でロックされる。
【0055】
また、全開状態において、例えば、上方からの押下によって開閉蓋16の開閉蓋先端部40を高さがH3以下になるまで下降させると、ロック機構30による全開ロックが解除されて開閉蓋16は自重で閉じ、全閉位置まで回動する。以降、高さH3を開ロック解除高さと称する。
【0056】
全開状態で開閉蓋先端部40に下向きに力F2を加えると、開閉蓋16に加わる閉じモーメントは、自重モーメントに加えて力F2と支軸37から開閉蓋先端部40までの水平距離R3の積が加わるので、(mg×R1)+(F2×R3)となる。
【0057】
角部42はロック面49から反力F1を受けて開閉蓋16を全開状態で維持するものの、付勢部材46の生じる反力F1には限界があり、許容最大値F1max以上が加わると付勢部材46が支軸37から離れる方向にたわみ、角部42がロック面49から外れて全開状態から自重で閉じる。
【0058】
すなわち、全開状態で開閉蓋先端部40に下向きの閉じ力F2を加えて、[(mg×R1)+(F2×R3)]>(F1max×R2)なる関係となった場合に、全開ロックが外れて開閉蓋16は自重で閉じて、全閉位置に戻る(
図7参照)。
【0059】
すなわち、開閉蓋16の全開時には自重による閉じモーメントを支持して全開状態を維持できるとともに、開閉蓋先端部40に下向きの閉じ力が加わった際にはロックが外れて自重で閉じるよう、付勢部材46の剛性や爪部48、ロック面49の寸法を定める。
【0060】
また、
図10に示すように、開閉蓋16の全開状態で安全カバー4を閉じて、開閉蓋先端部40が安全カバー4の内側と当接した場合には、当接した際に生じる下向きの反力F2に加えて、反力F2と直交して開閉蓋16の閉じ動作を妨げる方向、すなわち右方向に摩擦力(μ×F2)が加わる。なお、摩擦力の計算に用いた係数μは当接部の摩擦係数である。開閉蓋先端部40の支軸からの高さR4と摩擦力(μ×F2)の積、すなわち、(R4×μ×F2)は摩擦力によって生じる支軸37まわりの摩擦モーメントであり、その方向は時計周り方向、すなわち開閉蓋16の閉じ動作を妨げる向きに作用する。ここで、開閉蓋16の開き角度α1として、支軸37と開閉蓋先端部40とを結んだ直線の水平とのなす角をとる。開き角度α1が大きくなる、すなわち開閉蓋16の開き角度が大きくなると、開閉蓋先端部40の支軸37からの水平距離R3が減少するので閉じモーメントは減少する。一方、開閉蓋先端部40の支軸37からの高さR4は増大するので、摩擦モーメントは増加する。したがって、開閉蓋16の開き角度α1が必要以上に増大し、また、開閉蓋先端部40と当接する安全カバー4内側面との間の摩擦係数μが増大すると、閉じモーメントよりも摩擦モーメントの方が大きくなり、開閉蓋16は所謂突っ張り棒となって、上から押されても閉じない条件となる。したがって、このような状態を避けるために、開閉蓋16の開き角度α1が過大にならないように、例えば、開き角度α1が45°程度以下となるように構成する。また、開閉蓋先端部40と当接する安全カバー4内側面との間の当接面は、滑らかで摩擦係数の小さい部材、例えばステンレス鋼板で形成するとともに、凹凸や段差のない形状とする。
【0061】
図3に示すように、全開時の開閉蓋16の開閉蓋先端部40の高さH1は、安全カバー4を閉じた際の上面高さH2よりも大なるように定める。すなわち、開閉蓋16を全開位置としたまま安全カバー4を閉じると、安全カバー4の上面内側が開閉蓋16の開閉蓋先端部40に当接し、開閉蓋先端部40を下方に強制的に高さH3以下に押し下げる。付勢部材46は撓んで腕部35の角部42は爪部48のロック面49から外れ、開閉蓋16は自重により閉じる。すなわち、操作者が開閉蓋16を閉じ忘れた場合であっても、安全カバー4を閉じると開閉蓋16は確実に閉じるので、前処理装置13の開閉蓋16周囲は気密部材29によって気密され、前処理装置13内部の温度調整や遮光が行われるので、信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。
【0062】
以上のように構成した本実施の形態の作用効果を比較例を参照しつつ説明する。
【0063】
図13は、本実施の形態に係る前処理装置を抜き出して示す正面図であり、開閉蓋を全開位置とした様子を示している。また、
図14及び
図15は、本実施の形態に対する比較例として示す前処理装置の構成を示す正面図であり、
図14は開閉蓋を全閉位置とした様子を、
図15は開閉蓋を全開位置とした様子をそれぞれ示している。
【0064】
図13に示すように、本実施の形態に係る前処理装置13は、支軸37の位置を前処理装置13の上部にさらに上方凸形状に形成した領域カバー23の上端近傍(すなわち、上方凸形状内部)に配置し、全閉位置における開閉蓋16を左下がりに配置している。一方、
図14及び
図15に示すように、比較例に係る前処理装置13Aは、領域カバー23には上方突起を設けず、支軸37を前処理装置13の右上端近傍に配置し、全閉位置における開閉蓋16Aを前処理部上面31と同じ高さに配置している。
【0065】
図13に示すように、本実施の形態に係る前処理装置13では、開閉蓋16を全開位置としたときに、開閉蓋16の下辺と、前処理装置13の間に生じる開口の概形を開口領域51とし、ハッチングで示す。開口領域51は、操作者が前処理装置の内部の清掃などを行うための開口である。本実施の形態に係る前処理装置13では、支軸37が前処理装置13よりも高い位置(前処理部上面31よりも高い位置)にあり、かつ、開閉蓋16は正面視で右側の辺が左側の辺よりも長い略U字形状をなしているので、開閉蓋16が全開位置にある場合おいては、開口領域51の上下方向の高さ寸法H5は、支軸37近傍を含む開口領域51の左右方向の全範囲においておおむね一定であり、また、内部の清掃作業を行うのに十分な開口スペースが得られる。
【0066】
一方、
図14及び
図15に示すように、比較例の前処理装置13Aでは、領域カバー23の上方突起を設けず、支軸37Aを前処理装置13の右上端近傍に配置したので、開閉蓋先端部40と支軸37Aとを結んだ直線は、開閉蓋16Aの全閉位置において左上がりであり、また、全開位置においても同様に左上がりのままである。このような比較例の前処理装置13Aにおいて、開閉蓋16Aの開閉蓋先端部40の高さを全開ロックの解除高さよりも高くするためには、支軸37Aの高さが低いために、開閉蓋16の開き角度α2をより大きく(例えば、α2>α1)とする必要がある。その結果、開閉蓋先端部40から支軸37Aまでの水平距離R3’は支軸位置が高い場合の水平距離R3より小さくなる(すなわち、R3’<R3となる)。
【0067】
しかし、先に説明したように、開き角度α2を大きくし、開閉蓋先端部40から支軸37Aまでの水平距離R3が小さくなると、開閉蓋先端部40に上方からの閉じ力F2を加えた際の閉じモーメントが小さくなる一方で、開閉蓋先端部40から支軸までの高さR4は大となって摩擦力による摩擦モーメントR4×μ×F2は大きくなる。そのため、閉じモーメントより摩擦モーメントが大となり、開閉蓋16Aは所謂突っ張り棒となって、上から押されても閉じない条件となりやすく、開閉蓋16Aの閉じ信頼性は著しく低下してしまう。
【0068】
また、比較例の前処理装置13Aの開閉蓋16Aを全開位置とした場合の開口領域51A(
図15にハッチングで示す)は、支軸37Aの近傍では開口高さH6は小さく、内部の清掃作業を行うのに十分な開口が得られない。
【0069】
これに対して本実施の形態においては、前処理装置13の上部にヒンジ部25を載置して、支軸37の高さを前処理装置13よりも上方に配置することにより、開閉蓋16が全閉位置においては左下がりとなり、かつ、全開位置においては左上がりとなるように構成したので、全開位置においては操作者のための十分な開口領域51を得られるとともに、全開位置では開閉蓋先端部40を上から押された際に確実に閉じる(すなわち、全閉位置まで回動する)ので、信頼性の高く使いやすい開閉蓋16を得ることができる。
【0070】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【0071】
例えば、本実施形態においては開閉蓋先端部40が支軸37よりも左方に設けられているので、開閉蓋16が全閉位置においては左下がりとなり、全開位置においては左上がりとなるように構成したが、例えば、開閉蓋先端部40が支軸37よりも右方に設けられた形態においては、開閉蓋16が全閉位置においては右下がりとなり、全開位置においては右上がりとなるように構成する。
【符号の説明】
【0072】
1…自動分析装置、2…試薬ディスク、3…試薬容器、4…安全カバー、5…サンプル搬送機構、5a…サンプル、6…サンプル分注機構、7…チップラック、8…搬送機構、9…インキュベータ、9a…攪拌機構、10…サンプル分注チップ、11…サンプル分注チップバッファ、12…廃棄孔、13,13A…前処理装置、14…反応容器、15…試薬分注プローブ、15a…試薬分注位置、16,16A…開閉蓋、17…洗浄機構、19…検出装置、20…試薬容器装填口、21…筐体、22…作業面、23…領域カバー、24…試薬保冷庫、25…ヒンジ部、26…カバー支軸、27…手掛け部、28…開閉蓋境界部、29…気密部材、30…ロック機構、31…前処理部上面、32…傾斜面、33…ヒンジ部上面、34…開閉蓋後端部、35…腕部、35a…第一の腕部、35b…第二の腕部、36…取り付け部、37,37A…支軸、39…つまみ部、40…開閉蓋先端部、42…角部、44a,44b…リブ、45…下面カバー、46…付勢部材、47…下面カバー底面、48…爪部、49…ロック面、50…斜面、51,51A…開口領域、55…筐体フレーム、56…前板、57…左右側板、58…背面板、200…ホストコンピュータ