(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156420
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】索道の空調装置付搬器
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20221006BHJP
B61D 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B61B12/02 C
B61D27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060100
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 元幸
(57)【要約】
【課題】索道の搬器の空調装置をバッテリーからの電力供給により駆動する場合において、バッテリーからの電力を変換するコンバータまたはインバータを特別な防水対策を施すことなく、また冷却可能に設置することを目的とする。
【解決手段】
搬器18に搭載したバッテリー25と、このバッテリー25の電力を変換するコンバータ36またはインバータ35と、搬器18の客車21上部に設置しコンバータ36またはインバータ35から電力を供給される空調装置24とを備え、空調装置24の空気吸入口27と客車21の内部とを連通し、空気吸入口27の下方にコンバータ36またはインバータ35を備えた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬器に搭載したバッテリーと、該バッテリーの電力を変換するコンバータまたはインバータと、前記搬器の客車上部に設置し前記コンバータまたは前記インバータから電力を供給される空調装置と、を備え、前記空調装置の空気吸入口と前記客車の内部とを連通し、前記空気吸入口の下方に前記コンバータまたは前記インバータを備えたことを特徴とする索道の空調装置付搬器。
【請求項2】
前記客車室内において、前記客車の屋根の下方に天井パネルを備え、前記屋根と前記天井パネルとの間に空間を形成し、該空間内に前記コンバータまたは前記インバータを備えたことを特徴とする請求項1に記載の索道の空調装置付搬器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道の搬器に関し、詳しくは空調装置等に電力を供給するバッテリーや制御機器を搭載した索道の搬器に関する。
【背景技術】
【0002】
索道設備は、空中に張架した索条に搬器を懸垂し、人員や物資を運ぶ輸送設備であり、多くは山岳傾斜地における人員の移動手段や、スキー場におけるスキーヤーやスノーボーダーの移動手段として利用されている。また、索道設備は、鉄道等のように地上にレール等を敷設する必要がなく線路に要する用地が少なくてすむために、特に海外においては都市部の公共交通機関として運用されるようになってきている。
【0003】
このように、都市部等においてゴンドラリフトやロープウェイのような閉鎖型搬器を運行する索道設備を運用するにあたっては、他の都市輸送機関と同程度の利便性や快適性を提供できることが望ましく、特に乗客の快適性を向上するために各搬器には空調装置を備えることが望ましい。しかしながら従来周知のように、索道設備においては、線路中を移動する搬器へ電力を供給することが困難であり、大量の電力を消費する空調装置を各搬器に備えることは困難であった。
【0004】
このようなことから従来、次のような技術が提案され、また、実施されている。この技術のうちの一例は、複数の搬器よりなる搬器グループを形成し、この搬器グループを複数備えて索条の循環移動とともに運行を行うようにしている。搬器グループ内のうち1台の搬器は、電源設備を搭載した電源搬器とし、他の搬器は乗客が乗車する乗客用搬器とする。そして、各乗客用搬器には空調設備を備えるとともに、電源搬器から各乗客用搬器へ給電ケーブルを介して電源を供給するようにし、乗客用搬器の空調を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、他の例としては、客車上部に乗客用スペースと隔離した機器用スペースを形成し、ここにガスタービンエンジン及び発電機と、これによって駆動される空調装置を備えて乗客用スペースの空調を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-257363号公報
【特許文献2】特開平9-24823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時においてはバッテリーの開発が急速に進められ、大容量で急速充電が可能なバッテリーが供給されている。このようなことから索道においては、搬器にバッテリーを搭載するとともに、搬器が停留場内で回送される間にバッテリーに電力を供給して急速充電を行い、このバッテリーからの電力供給により索道線路中で空調装置を連続駆動することが可能になってきた。このようにバッテリーで空調装置を駆動する場合には、電圧を変換するためのコンバータまたはインバータを備える必要があり、これらのコンバータまたはインバータの設置にあたっては、防水対策やコンバータまたはインバータの放熱等を考慮する必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、搬器の空調装置をバッテリーからの電力供給により駆動する場合において、バッテリーからの電力を変換するコンバータまたはインバータに特別な防水対策を施すことなく、またコンバータまたはインバータを冷却可能に設置することのできる索道の空調装置付搬器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、搬器に搭載したバッテリーと、該バッテリーの電力を変換するコンバータまたはインバータと、前記搬器の客車上部に設置し前記コンバータまたは前記インバータから電力を供給される空調装置と、を備え、前記空調装置の空気吸入口と前記客車の内部とを連通し、前記空気吸入口の下方に前記コンバータまたは前記インバータを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記客車室内において、前記客車の屋根の下方に天井パネルを備え、前記屋根と前記天井パネルとの間に空間を形成し、該空間内に前記コンバータまたは前記インバータを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンバータまたはインバータに対して特別な防水対策を施すことなく、搬器にコンバータまたはインバータを備えることができる。また、客車室内の空調を良好に行うことができるとともに、コンバータまたはインバータの冷却も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として単線自動循環式索道により説明を行う。
図1は、単線自動循環式索道の模式図である。単線自動循環式索道10は、線路の端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂されている。
【0013】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0014】
図2は搬器18の正面図、
図3は搬器18の側面図である。搬器18は、大別して握索機19と懸垂機20と客車21とからなっている。握索機19は、索条15を握放索可能に構成されており、線路中では索条15を握索して索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15を放索するとともに、走行レール16、17上を走行ローラー22が転動して移動する。握索機19には、進行方向に対し前後方向へ揺動自在に懸垂機20を枢着しており、この懸垂機20の下部に乗客を搭載する客車21が取り付けられている。
【0015】
客車21の上部には、上面26に空調装置24を備えている。空調装置24は、圧縮機、蒸発機、凝縮機等を内部に備えた一体型の空調装置24であって、客車21下部に備えたバッテリー25から電力を供給されて駆動し、客車21の上部に設けた通風口から客車21内へ温風または冷風を供給する。バッテリー25は、急速充電が可能なバッテリーであって、搬器18が停留場11、12内を移動するときに搬器18に備えた集電器23により電力の供給を受け急速充電される。
【0016】
図4は、空調装置24と客車21室内との間の通風路を示す断面図である。空調装置24の下部には、下方へ突出して空気吸入口27および送風口28が設けられており、空気吸入口27から吸入した空気を空調装置24内部で暖め、または冷やして送風口28から排出する。一方、客車21の屋根29には、空気吸入口27および送風口28と対応する位置に通風口30、31が開口している。
【0017】
客車21の屋根29の下方には、天井部を覆うように天井パネル32を備えており、天井パネル32と屋根29との間に空間33が形成されている。この空間33へは、空調装置24が動作して空気吸入口27から吸気することにより、客車21室内の空気が空間33へ送り込まれる。空間33の内部には、空気吸入口27および通風口31の下方にコンバータ36またはインバータ35が支持されており、このコンバータ36またはインバータ35によりバッテリー25の電力を変換して空調装置24に供給する。
【0018】
以上の構成により、吸気口34から空間33へ送り込まれた空気は、通風口31および空気吸入口27を介して空調装置24内へ吸入される。このとき、空気はコンバータ36またはインバータ35に接触し、コンバータ36またはインバータ35の放熱を吸収して空調装置24内へ吸入され、コンバータ36またはインバータ35が冷却される。この後空気は、空調装置24内で暖められ、または冷やされて送風口28側へ送られ、通風路37を介して客車21室内へ送り込まれる。
【0019】
以上説明したように上記の構成によれば、客車21室内の上部を天井パネル32で覆って空間33を形成し、この空間33内にコンバータ36またはインバータ35を設置したことにより防水対策が不要になる。また、コンバータ36またはインバータ35を空調装置24の空気吸入口27の下方に設置したことにより、コンバータ36またはインバータ35の放熱を吸収した空気は空調装置24へ吸入されるため、空間33ないし客車21室内に熱がこもることがない。さらには、天井パネル32によりコンバータ36またはインバータ35の放熱が遮断されるので、客車21室内の空調を良好に行うことができる。また、暖房の場合にはコンバータ36またはインバータ35により暖められた空気が空調装置24内に吸い込まれるので空調装置24の熱効率が向上する。
【符号の説明】
【0020】
10 単線自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
19 握索機
20 懸垂機
21 客車
22 走行ローラー
23 集電器
24 空調装置
25 バッテリー
26 上面
27 空気吸入口
28 送風口
29 屋根
30 通風口
31 通風口
32 天井パネル
33 空間
35 インバータ
36 コンバータ
37 通風路