(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156716
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】手洗い認識装置、手洗い認識方法、手洗い認識プログラム、及び手洗い認識システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/20 20170101AFI20221006BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
A47K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060544
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 源太
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA15
5L096FA32
5L096FA59
5L096FA60
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA02
5L096HA11
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】手洗いにおける洗い流しが適正に行われたか否かを判定する。
【解決手段】手洗い場の画像を取得する画像部と、前記画像から、人物の手を検出する第1検出部と、前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する監視部と、前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する第2検出部と、前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する判定部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手洗い場の画像を取得する画像部と、
前記画像から、人物の手を検出する第1検出部と、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する監視部と、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する第2検出部と、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する判定部とを有する
手洗い認識装置。
【請求項2】
前記第2検出部は、前記手が判定領域内に位置する時間が第2時間を経過したとき、前記手を濡らす工程を行っていると判定する
請求項1記載の手洗い認識装置。
【請求項3】
前記判定領域は、前記手洗い場において流水される位置に応じた設定される範囲を含む
請求項2記載の手洗い認識装置。
【請求項4】
前記第2検出部は、前記手洗い場における流水を検出してから第3時間後、前記手を濡らす工程を行っていると判定する
請求項1記載の手洗い認識装置。
【請求項5】
前記監視部は、前記手の領域内に位置する白色成分を前記推定泡と判定する
請求項1記載の手洗い認識装置。
【請求項6】
手洗い場の画像を取得し、
前記画像から、人物の手を検出し、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視し、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出し、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する
手洗い認識方法。
【請求項7】
手洗い場の画像を取得する工程と、
前記画像から、人物の手を検出する工程と、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する工程と、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する工程と、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する工程と、
をコンピュータに実行させる手洗い認識プログラム。
【請求項8】
手洗い場の画像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置から前記画像を取得し、
前記画像から人物の手を検出し、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視し、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出し、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する画像処理装置と、
を有する手洗い認識システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い認識装置、手洗い認識方法、手洗い認識プログラム、及び手洗い認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルスや病原菌などの流行により、感染予防策としての手洗いの重要度が見直されている。例えば、食品を扱う現場、病院、及び介護施設等において、作業従事者の衛生管理は特に重要であり、手洗いが慣行されている。特に、食品等関連業者を対象とし、衛生管理記録における国際標準HACCPがあり、衛生管理行動のチェック、モニタリング、及び記録等が求められている。
【0003】
手洗いに関する技術は、以下に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-211268号公報
【特許文献2】特開2020-048628号公報
【特許文献3】特開2020-091739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、手洗いでは、例えば、石けんの界面活性作用により、皮膚表面の細菌や汚れを浮かせることで、それらを石けんの泡内に取り込んでいる。つまり、手洗い後の石けんの泡には大量の細菌や汚れが含まれている。そのため、石けんの泡の洗い流し(流水にて手に付着する泡を洗い流す行為)が十分でないと、手の表面に細菌や汚れが残ってしまう。また、石けんの泡の洗い流しが十分でないと、手のこすれ等によって、細菌や汚れを広げてしまい、手洗い前よりも不衛生な状態となるような場合もある。
【0006】
そこで、一開示は、洗い流しが適正に行われたか否かを判定する手洗い認識装置、手洗い認識方法、手洗い認識プログラム、及び手洗い認識システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
手洗い場の画像を取得する画像部と、前記画像から、人物の手を検出する第1検出部と、前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する監視部と、前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する第2検出部と、前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する判定部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
一開示は、手洗いにおける洗い流しが適正に行われたか否かを判定する手洗い認識装置、手洗い認識方法、手洗い認識プログラム、及び手洗い認識システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、手洗い認識システム10の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、画像処理装置100の構成例を表す図である。
【
図3】
図3は、手洗い判定処理S100の処理フローチャートの例を示す図である。
【
図4】
図4は、推定泡量の算出の例を示す図である。
【
図5】
図5は、手を濡らしたときの推定泡量の算出の例を示す図である。
【
図6】
図6は、手洗いにおける推定泡量の変化の例を示す図である。
【
図7】
図7は、手洗いにおける手の動きの例を示す図である。
【
図8】
図8は、判定領域T10が多角形の場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について説明する。
【0011】
<手洗い認識システム10の構成例>
図1は、手洗い認識システム10の構成例を示す図である。手洗い認識システム10は、画像処理装置(手洗い認識装置)100及びカメラ200を有する。手洗い認識システム10は、カメラ200で撮影した映像の画像データを解析し、対象となる人物の手洗いにおける洗い流しが適正に行われたか否かを判定するシステムである。
【0012】
カメラ200は、手洗い場における対象人物の手元を撮影する撮影装置である。カメラ200は、例えば、トイレや炊事場など、人物が手を洗う場所に設置され、流し台などの手洗い場を中心に、対象人物の手元を映す。カメラ200は、例えば、有線(ネットワークケーブルなど)や無線(ブルートゥース(登録商標)など)を介して、画像処理装置100と接続し、撮影した画像データを画像処理装置100に送信する。カメラ200は、例えば、映像として動画を撮影し、所定データサイズ又は所定時間の動画データを、継続して画像処理装置100に送信する。また、カメラ200は、常時又は定期的に、動画を撮影する。さらに、カメラ200は、動画に代替し、連続した静止画を撮影してもよい。
【0013】
対象人物300は、手洗いを行っている人物であり、洗い流しが適正に行われたか否かを判定する対象となる人物である。対象人物300は、手洗い場において、石けんを用いて手を洗う。
【0014】
画像処理装置100は、カメラ200から取得した映像データを解析し、映像データに映る対象人物300の洗い流しが適正に行われたか否かを判定する装置であり、例えば、コンピュータやサーバマシンである。
【0015】
手洗い認識システム10において、カメラ200は、撮影した画像データを画像処理装置100に送信する。画像処理装置100は、画像データに対象人物300の手が映っていることを検出する。画像処理装置100は、手に付着した泡量(推定泡量)を測定(算出)し、泡量が洗い流し完了条件を満たすとき、対象人物300の洗い流しが適切に行われたと判定する。洗い流し完了条件は、例えば、推定泡量(推定泡量の平均値、最大値を含む)が、所定時間(第1時間)の間、閾値以下となることである。画像処理装置100は、例えば、手領域内の白い部分を泡(推定泡)とみなし、推定泡量を算出する。
【0016】
画像処理装置100は、対象人物300が石けんを付ける前に手を濡らした状態を検出し、手を濡らした状態の推定泡量(初期値)を算出する。実際には、石けんを付ける前の、水で手を濡らしただけの状態においても、光の反射などで手の一部が白く映り、この白い部分が泡と誤認識される場合がある。そこで、画像処理装置100は、濡れた手における推定泡量を初期値として測定し、閾値の設定に流用することで、手に残った泡量の判定精度を向上させる。
【0017】
<画像処理装置100の構成例>
図2は、画像処理装置100の構成例を表す図である。画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)110、ストレージ120、メモリ130、通信回路140、及びアクセラレータ150を有する。
【0018】
ストレージ120は、プログラムやデータを記憶する、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。ストレージ120は、手洗い判定プログラム121を記憶する。
【0019】
メモリ130は、ストレージ120に記憶されているプログラムをロードする領域である。また、メモリ130は、プログラムがデータを記憶する領域としても使用されてもよい。
【0020】
CPU110は、ストレージ120に記憶されているプログラムを、メモリ130にロードし、ロードしたプログラムを実行し、各部を構築し、各処理を実現するプロセッサである。
【0021】
通信回路140は、カメラ200と通信を行う回路である。通信回路140は、例えば、NIC(Network Interface Card)である。また、通信回路140は、ブルートゥースの接続アダプタである。通信回路140における通信手段は、無線及び有線のいずれであってもよい。
【0022】
アクセラレータ150は、例えば、CPU110の命令に従い特定の処理を行う、GPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)である。アクセラレータ150は、例えば、ハードウェアアクセラレータであり、画像処理や演算処理などを行う。
【0023】
CPU110は、手洗い判定プログラム121を実行することで、画像部、第1検出部、第2検出部、監視部、及び判定部を構築し、手洗い判定処理を行う。手洗い判定処理は、対象人物300の手洗いが適正に行われたか否かを判定する処理である。
【0024】
画像処理装置100は、手洗い判定処理において、カメラ200から画像データを取得する。そして、画像処理装置100は、画像データから、対象人物300の手を検出する。そして、画像処理装置100は、画像データから、対象人物300が手を濡らした工程を行っていることを検出する。そして、画像処理装置100は、対象人物300が手を濡らした工程において、推定泡量の初期値を算出し、初期値に基づき洗い流し閾値(第1閾値)を設定する。さらに、画像処理装置100は、手に付着した推定泡量を監視し、洗い流し完了条件を満たすとき、対象人物300の洗い流しが適切に行われたと判定する。
【0025】
CPU110は、手洗い判定プログラム121が有する手検出モジュール1211を実行することで、第1検出部を構築し、手検出処理を行う。手検出処理は、画像データから人物の手(右手、左手など)を検出する処理である。画像処理装置100は、例えば、畳み込みニューラルネットワークを用いて、画像から手を検出する。
【0026】
CPU110は、手洗い判定プログラム121が有する手濡らし工程検出モジュール1212を実行することで、第2検出部を構築し、手濡らし工程検出処理を行う。手濡らし工程検出処理は、画像データから、対象人物が手を濡らす工程を行っている(行った)ことを検出する処理である。
【0027】
CPU110は、手洗い判定プログラム121が有する泡量初期値算出モジュール1213を実行することで、判定部を構築し、泡量初期値算出処理を行う。泡量初期値算出処理は、画像データから、対象人物が手を濡らす工程を行っている(行った)ことを検出したとき、手の推定泡量の初期値を算出する処理である。なお、画像処理装置100は、泡量初期値算出処理において、例えば、右手、左手それぞれの推定泡量の初期値を算出する。
【0028】
CPU110は、手洗い判定プログラム121が有する泡量監視モジュール1214を実行することで、監視部を構築し、泡量監視処理を行う。泡量監視処理は、画像データから、対象人物が手を濡らす工程を行っている(行った)ことを検出した後の手の推定泡量を監視する処理である。画像処理装置100は、泡量監視処理において、右手、左手それぞれの推定泡量を監視する。
【0029】
CPU110は、手洗い判定プログラム121が有する洗い流し判定モジュール1215を実行することで、判定部を構築し、洗い流し判定処理を行う。洗い流し判定処理は、推定泡量を洗い流し完了条件(洗い流しが適切に行われたと判定する条件)と比較し、洗い流し完了条件を満たすか否かを判定する処理である。画像処理装置100は、洗い流し完了条件を満たす場合、対象人物300の洗い流しが適切に行われたと判定する。洗い流し完了条件は、例えば、所定時間の間、推定泡量が洗い流し閾値以下となることである。
【0030】
<手洗い判定処理について>
手洗い判定処理S100について説明する。
図3は、手洗い判定処理S100の処理フローチャートの例を示す図である。
【0031】
画像処理装置100は、手洗い判定処理S100において、画像の取得を開始する(S100-1)。画像は、例えば、カメラ200が撮影した画像データであり、定期的にカメラ200から取得する。また、画像データは、例えば、動画のデータである。
【0032】
画像処理装置100は、画像から対象人物の手を検出するのを待ち受ける(S100-2のNo)。画像処理装置100は、画像から対象人物の手を検出すると(S100-2のYes)、手を濡らす工程を検出するのを待ち受ける(S100-3のNo)。手を濡らす工程の検出方法については、後述する。画像処理装置100は、手を濡らす工程を検出すると(S100-3のYes)、推定泡量の初期値を算出する(S100-4)。
【0033】
図4は、推定泡量の算出の例を示す図である。
図4(A)は、手に泡を取ったタイミングの画像の例を示す図である。
図4(B)は、手の領域の例を示す図である。
図4(C)は、泡領域の例を示す図である。画像処理装置100は、
図4(A)の画像から、手を検出し、
図4(B)の手領域T1を検出する。そして、画像処理装置100は、
図4(A)の画像から、手領域T1内の白色成分を泡として検出し、
図4(C)の泡領域T2を検出する。そして、画像処理装置100は、手領域T1の面積に対する泡領域T2の面積の割合を、推定泡量として算出する。
【0034】
図5は、手を濡らしたときの推定泡量の算出の例を示す図である。
図5に示すように、手を濡らす工程を行うと、光の反射などにより、泡以外の要因で手の一部が白く映ることがある。画像処理装置100は、手領域内の白色成分を推定泡と判定するため、この光の反射などで白く映る領域T3及びT4についても、推定泡と判定する場合がある。そこで、画像処理装置100は、手を濡らしてから、泡を手に取るまでの間において、推定泡量の初期値を算出する。初期値は、手を濡らしたタイミングにおける推定泡の量(割合)を示す数値である。画像処理装置100は、推定泡量の初期値を、洗い流しが適切に行われたか否かの判定に用いる。初期値は、例えば、所定時間内における推定泡量の最大値や平均値などを含む。
【0035】
図3の処理フローチャートに戻り、画像処理装置100は、算出した初期値に基づき、洗い流し閾値を設定する(S100-5)。洗い流し閾値は、洗い流し完了条件に用いる閾値であって、十分に泡が洗い流されているか否かを判定する閾値である。画像処理装置100は、初期値、あるいは初期値の数パーセント増減させた数値を、洗い流し閾値に設定する。
【0036】
画像処理装置100は、手の推定泡量の監視を開始する(S100-6)。画像処理装置100は、監視において、所定タイミングごとに手領域内の推定泡量を算出する。
【0037】
画像処理装置100は、推定泡量を算出したタイミングで、推定泡量が洗い流し完了条件を満たすか否かを判定する(S100-7)。洗い流し完了条件は、例えば、推定泡量が、所定時間の間、洗い流し閾値以下となっていることである。あるいは、洗い流し完了条件は、例えば、所定時間の間の推定泡量の平均が、洗い流し閾値以下となっていることであってもよい。
【0038】
図6は、手洗いにおける推定泡量の変化の例を示す図である。推定泡量は、手を濡らす工程において、増加する。画像処理装置100は、増加しきった付近の値を、初期値とする。
【0039】
推定泡量は、石けんを泡立てる工程において、徐々に増加する。なお、推定泡量は、手に付着した泡量の推定したものであるため、手の向きや角度によっても増減する。石けんを泡立てる工程では、手を頻繁に動かすため、推定泡量は、増減を繰り返す場合があるが、概ね時間とともに増加する傾向を示す。
【0040】
推定泡量は、洗い流し工程において、減少する。推定泡量は、初期値付近まで減少する。洗い流し工程において、ほとんどの泡を洗い流したとき、手に水がついている状態となる。この状態における推定泡量は、手を濡らす工程において測定した初期値と近似する。
【0041】
画像処理装置100は、
図6に示すように、手を濡らす工程における推定泡量(初期値)と洗い流しが完了した状態における推定泡量が近似することに基づき、推定泡量が初期値より設定された洗い流し閾値以下となったとき、洗い流しが適切に行われたと判定する。なお、画像処理装置100は、推定泡量の測定誤差を考慮し、所定時間連続で推定泡量が洗い流し閾値以下となることを、洗い流し完了条件とする。また、画像処理装置100は、推定泡量の測定誤差を考慮し、所定時間の平均の推定泡量が洗い流し閾値以下となることを、洗い流し完了条件としてもよい。
【0042】
図3の処理フローチャートに戻り、画像処理装置100は、推定泡量が洗い流し完了条件を満たす場合(S100-7のYes)、洗い流しが適切に行われたと判定し(S100-8)、処理を終了する。
【0043】
一方、画像処理装置100は、推定泡量が洗い流し完了条件を満たさない場合(S100-7のNo)、画像に手が映っているか否かを判定する(S100-9)。画像処理装置100は、手を検出することで、対象人物が手洗いを続行しているか否かを判定する。
【0044】
画像処理装置100は、手を検出できない場合(S100-9のNo)、対象人物の手洗いが終了したとみなし、洗い流しが不適切であると判定し(S100-10)、処理を終了する。
【0045】
一方、画像処理装置100は、手を検出できた場合(S100-9のYes)、対象人物の手洗いが継続中であるとみなし、洗い流し完了条件を満たすか否かを判定する(S100-7)。このように、画像処理装置100は、対象人物が手洗いを継続している限り、洗い流し完了条件を満たすまで、もしくは手を検出できなくなるまで、推定泡量の監視を継続する。
【0046】
<洗い流し完了条件について>
推定泡量は、例えば、両手を統合して算出される。画像処理装置100は、右手の手領域と左手の手領域の合計面積、あるいは重なっている両手の手領域の面積に対する泡量を、推定泡量として算する。画像処理装置100は、洗い流しの完了条件を両手の推定泡量から洗い流しが適切に行われたこととしてもよい。画像処理装置100は、例えば、右手と左手の推定泡量の合計値が洗い流し閾値以下になったことを、一連の手洗いにおける洗い流しが適切に行われたと判定する条件としてもよい。
【0047】
また、推定泡量は、例えば、右手、左手それぞれについて算出されてもよい。画像処理装置100は、右手の手領域の面積に対する泡量を、右手の推定泡量として算する。画像処理装置100は、左手の手領域の面積に対する泡量を、左手の推定泡量として算する。画像処理装置100は、両手それぞれについて推定泡量を算出し、洗い流しの完了条件を両手それぞれの洗い流しが適切に行われたこととしてもよい。画像処理装置100は、例えば、右手又は左手のそれぞれについて、洗い流しが適切に行われたか否かを判定し、両手ともに洗い流しが適切に行われたことを、一連の手洗いにおける洗い流しが適切に行われたと判定する条件としてもよい。
【0048】
<手を濡らす工程の検出について>
手を濡らす工程の検出方法について説明する。手を濡らす工程の検出方法は、例えば、手の動きに基づき検出する方法(第1方法)と、流水を検知することで検出する方法(第2方法)がある。それぞれの方法について、以下に説明する。
【0049】
<1.手の動きに基づき検出する方法(第1方法)>
図7は、手洗いにおける手の動きの例を示す図である。動線L1は、手の動きの例を示す線である。
【0050】
対象人物が手洗いを開始するとき、シンクの外側の領域A1内に手が現れる。手は、動線L1に沿って移動し、判定領域T10内の領域A2内で1秒から数秒の短時間だけ留まる。このとき、対象人物は、手を濡らす工程を行っている。判定領域T10は、手を濡らす工程や、洗い流し工程を行っていると想定される領域であり、例えば、流水の下を中心として設定された範囲である。そして、手は、手を濡らす工程が終了すると、例えば石けんを手に取るため、動線L1に沿って判定領域T10外の領域A3内に移動する。
【0051】
画像処理装置100は、判定領域T10内に手が位置するとき、手を濡らす工程を行っていると判定する。これにより、画像処理装置100は、例えば、手に流水がかからない位置にあるにも関わらず、手を濡らす工程を行っているとする誤判定を減少させることができる。なお、洗い流し工程においても、手は判定領域T10内に移動する。そこで、画像処理装置100は、所定時間(第2時間)だけ手が判定領域T10内に滞留することを、手洗いの開始(例えば、初めて手を検出したとき)から数秒以内に検出したとき、あるいは手洗いの開始から初めて検出したときに、手を濡らす工程が行われた(行われている)と判定する。画像処理装置100は、例えば、畳み込みニューラルネットワークを用いて、画像から手を検出し、手の動きを監視する。
【0052】
なお、手が判定領域T10内に位置するか否かの判定は、例えば、手の重心(中心)位置が判定領域T10内に位置するか否かで判定する。また、手が判定領域T10内に位置するか否かの判定は、例えば、指先から手首までの手領域の一部が判定領域T10内に位置するか否かで判定してもよい。
【0053】
また、
図7において、判定領域T10は矩形であるが、判定領域T10は矩形に限定されない。
図8は、判定領域T10が多角形の場合の例を示す図である。判定領域T10は、例えば、手の指先から手首までを流水の下に移動したときの、手が位置する可能性がある範囲に基づき設定される。
【0054】
<2.流水を検知することで検出する方法(第2方法)>
画像処理装置100は、流水(流水の開始)を検知することで、手を濡らす工程が行われたことを検出する。流水の検知は、例えば、センサによって自動で流水する流水システムである場合、流水システムからセンサと連動して、流水が開始されたことを受信することで実現される。
【0055】
また、流水の検知は、例えば、画像から流水を認識することで実現されてもよい。画像処理装置100は、流水を検知した所定時間(第3時間)後、手を濡らす工程が行われたと判定する。所定時間は、手を濡らす工程を行っている時間を想定し、例えば、1秒などの短い時間である。画像処理装置100は、例えば、畳み込みニューラルネットワークを用いて、画像から流水を検出する。
【0056】
なお、手を濡らす工程の検出は、第1方法と第2方法の両方を用いてもよい。例えば、画像処理装置100は、第1方法かつ第2方法で検出されたことを、手を濡らす工程の検出とみなしてもよい。また、画像処理装置100は、第1方法または第2方法の少なくとも一方で検出されたことを、手を濡らす工程の検出とみなしてもよい。
【0057】
[その他の実施の形態について]
その他の実施の形態について説明する。
図9は、手洗いの工程の例を示す図である。対象人物は、例えば、手洗いを開始するとき、
図9に示すように、最初に手を濡らす工程を行う。手を濡らす工程においては、流水が行われる。そして、石けんを泡立てる工程は、流水が停止している。さらに、洗い流し工程は、再度流水が行われる。画像処理装置100は、流水が行われている手を濡らす工程と洗い流し工程を、誤認識しないように区別する必要がある。
【0058】
画像処理装置100は、例えば、初期値(洗い流し閾値)を検出してから、所定時間の間、推定泡量の監視を行わないことで、手を濡らす工程を監視対象から除外する。
【0059】
また、画像処理装置100は、例えば、自動(センサなど)で流水されるシステムでは、泡立ての間は流水が停止している場合がある。この場合、画像処理装置100は、手を濡らす工程における流水を検出し、泡立てで流水が止まったことを検出したのち、洗い流し工程における流水を検出することができる。画像処理装置100は、洗い流しの流水(一連の手洗いにおける2回目の流水)を検出することを契機として、推定泡量の監視を開始してもよい。
【0060】
以上、まとめると、付記のようになる。
【0061】
(付記1)
手洗い場の画像を取得する画像部と、
前記画像から、人物の手を検出する第1検出部と、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する監視部と、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する第2検出部と、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する判定部とを有する
手洗い認識装置。
【0062】
(付記2)
前記第2検出部は、前記手が判定領域内に位置する時間が第2時間を経過したとき、前記手を濡らす工程を行っていると判定する
付記1記載の手洗い認識装置。
【0063】
(付記3)
前記判定領域は、前記手洗い場において流水される位置に応じた設定される範囲を含む
付記2記載の手洗い認識装置。
【0064】
(付記4)
前記第2検出部は、前記手洗い場における流水を検出してから第3時間後、前記手を濡らす工程を行っていると判定する
付記1記載の手洗い認識装置。
【0065】
(付記5)
前記第2検出部は、自動で流水する流水システムから流水を開始したことを取得することで、前記流水を検出する
付記4記載の手洗い認識装置。
【0066】
(付記6)
前記第2検出部は、前記画像から前記流水を検出する
付記4記載の手洗い認識装置。
【0067】
(付記7)
前記監視部は、前記手の領域内に位置する白色成分を前記推定泡と判定する
付記1記載の手洗い認識装置。
【0068】
(付記8)
手洗い場の画像を取得し、
前記画像から、人物の手を検出し、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視し、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出し、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する
手洗い認識方法。
【0069】
(付記9)
手洗い場の画像を取得する工程と、
前記画像から、人物の手を検出する工程と、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視する工程と、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出する工程と、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する工程と、
をコンピュータに実行させる手洗い認識プログラム。
【0070】
(付記10)
手洗い場の画像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置から前記画像を取得し、
前記画像から人物の手を検出し、
前記手に付着する泡と推定される推定泡の量を示す推定泡量を監視し、
前記人物の手洗いにおける手を濡らす工程を検出し、
前記手を濡らす工程における前記推定泡量に基づき第1閾値を設定し、前記推定泡量が前記第1閾値以下となる時間が第1時間継続したとき、前記手洗いにおける泡の洗い流しが適切に行われたと判定する画像処理装置と、
を有する手洗い認識システム。
【符号の説明】
【0071】
10 :手洗い認識システム
100 :画像処理装置
110 :CPU
120 :ストレージ
121 :手洗い判定プログラム
1211 :手検出モジュール
1212 :手濡らし工程検出モジュール
1213 :泡量初期値算出モジュール
1214 :泡量監視モジュール
1215 :洗い流し判定モジュール
130 :メモリ
140 :通信回路
150 :アクセラレータ
200 :カメラ
300 :対象人物