(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157769
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のシート支持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B62J1/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062190
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(57)【要約】
【課題】防振しながらも剛性を持ってシートを支持できる鞍乗り型車両のシート支持構造を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両のシート支持構造は、シート(17)がシートヒンジ(50)を介して車体(11)に支持される鞍乗り型車両のシート支持構造において、車体側接続部(52)とシート接続部(53)とが揺動可能に接続され、車体側接続部(52)は車体側ブラケット(61)に弾性部材(64)を介して支持されており、車体側接続部(52)はボルト挿通孔(52A1)を有し、弾性部材(64)は、車体側接続部(52)の上面(52A2)に位置する上部(64A)と、車体側接続部(52)の下面(52A3)と車体側ブラケット(61)の上面(61A)の間に位置する下部(64B)と、ボルト(62)を覆う中間部(64C)と、を有し、下部(64B)は上部(64A)よりも、前後および左右で幅が大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート(17)がシートヒンジ(50)を介して車体(11)に支持される鞍乗り型車両のシート支持構造において、
前記シートヒンジ(50)は車体側接続部(52)とシート接続部(53)とを備え、
前記車体側接続部(52)とシート接続部(53)とが揺動可能に接続され、
前記車体側接続部(52)は車体側ブラケット(61)に弾性部材(64)を介して支持されており、
前記車体側接続部(52)はボルト挿通孔(52A1)を有し、
前記弾性部材(64)は、前記ボルト挿通孔(52A1)を通って前記車体側接続部(52)の上面(52A2)に位置する上部(64A、264A)と、前記車体側接続部(52)の下面(52A3)と前記車体側ブラケット(61)の上面(61A)の間に位置する下部(64B、264B)と、前記上部(64A、264A)と前記下部(64B、264B)を接続しボルト(62)を覆う中間部(64C、264C)と、を有し、前記下部(64B、264B)は前記上部(64A、264A)よりも、前後および左右で幅が大きいことを特徴とする鞍乗り型車両のシート支持構造。
【請求項2】
前記弾性部材(64)は、二つの弾性部材(65、66)からなり、前記車体側接続部(52)の上面(52A2)と当接する第1の上部(66C)と、前記車体側接続部(52)の下面(52A3)に当接する第1の下部(66E)と、前記第1の上部(66C)と前記第1の下部(66E)とを接続する第1の中間部(66D)と、を有し、前記第1の上部(66C)と前記第1の下部(66E)は略同一サイズとする第1の弾性部材(66)と、前記車体側接続部(52)の下面(52A3)と前記車体側ブラケット(61)の上面(61A)に当接し、前記第1の下部(66E)を覆う第2の弾性部材(65)と、からなることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
【請求項3】
前記第1の弾性部材(66)よりも前記第2の弾性部材(65)の硬度が高いことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
【請求項4】
前記車体側接続部(52)は少なくとも二つの前記ボルト挿通孔(52A1)を有し、
前記第1の弾性部材(66)は前記ボルト挿通孔(52A1)と同数設置され、前記第2の弾性部材(65)は少なくとも二つの前記第1の弾性部材(66)を覆うことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
【請求項5】
前記ボルト(62)はカラー(63)を介して前記弾性部材(64)と接続されており、
前記カラー(63)は下端にフランジ部(63B)を有し、
前記第2の弾性部材(65)は、前記第1の弾性部材(66)と前記カラー(63)のフランジ部(63B)間に入り込む底部(65D)を有することを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
【請求項6】
前記第1の弾性部材(66)と前記第2の弾性部材(65)は一体であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のシート支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、シートヒンジを介してシートを車体に支持させる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のシートヒンジでは、燃料タンクの当て板に取付けられたボルトに、ラバー片を介在させながら、タンク側ヒンジ片を取り付けている。なお、タンク側ヒンジ辺の取付穴には、ラバー片を介在させずにボルトが嵌められており、取付穴とボルトが当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、シートは剛性を持ちながらも車体振動を抑制するように防振して支持する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、剛性を得るために取付孔の内周面とボルトが当接しており、金属同士で接続するため振動が伝わりやすい部位が存在してしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、防振しながらも剛性を持ってシートを支持できる鞍乗り型車両のシート支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両のシート支持構造は、シートがシートヒンジを介して車体に支持される鞍乗り型車両のシート支持構造において、前記シートヒンジは車体側接続部とシート接続部とを備え、前記車体側接続部とシート接続部とが揺動可能に接続され、前記車体側接続部は車体側ブラケットに弾性部材を介して支持されており、前記車体側接続部はボルト挿通孔を有し、前記弾性部材は、前記ボルト挿通孔を通って前記車体側接続部の上面に位置する上部と、前記車体側接続部の下面と前記車体側ブラケットの上面の間に位置する下部と、前記上部と前記下部を接続しボルトを覆う中間部と、を有し、前記下部は前記上部よりも、前後および左右で幅が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
金属同士での接続がないため、より振動が伝達され難い構造とすることができて防振効果が向上する。また、車体側接続部と車体側ブラケット間に入る弾性部材の下部が、弾性部材の上部よりも大きくなり車体側接続部と車体側ブラケットとの間の弾性部材に対する接触面積を大きくできるため、剛性を持ってシートを支持することができる。したがって、防振しながらも剛性を持ってシートを支持できる鞍乗り型車両のシート支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】シートの周辺を示す鞍乗り型車両の平面図である。
【
図7】
図6からシートヒンジの図示を省略した図である。
【
図8】第2の実施の形態の弾性部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態では、フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びるメインフレーム19aと、メインフレーム19aの後端部から下方に延びてピボット軸22が支持されるセンターフレーム19bと、を備える。また、リアフレーム20は、メインフレーム19aの後部の中間部から後方斜め上方に延びている左右一対のシートフレーム20aと、メインフレーム19aの後端部からシートフレーム20aの後端部まで延びる左右一対のリアサブフレーム20bとを備える。
【0016】
図2は、シート17の周辺を示す鞍乗り型車両10の平面図である。
図1、
図2に示すように、鞍乗り型車両10は、車体フレーム11及びパワーユニット12等によって構成される車体を覆う車体カバー30を備える。
車体カバー30は、フロントフォーク14の前側を覆うフロントカバー31と、フロントカバー31の後方に配置されて、乗員である運転者の脚部を前方から覆うレッグシールド32と、レッグシールド32の車幅方向中央部の後端に接続されてシート17の下方まで延びるセンターカバー33と、センターカバー33の左右に配置され、レッグシールド32の左右外側後端からシート17の下方を後方に延びる左右一対のボディカバー34、35(
図2参照)と、左右それぞれのボディカバー34、35に取り付けられる左右一対のサイドカバー36、37(
図2参照)と、を備える。
【0017】
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図5は、
図3の要部拡大図である。
センターカバー33は、前後方向に厚みを有する湾曲板状である。センターカバー33は、レッグシールド32の後端部から後方に延び、後部では上方に湾曲している。
センターカバーの左右両側には、ボディカバー34、35(
図2参照)が接続される。ボディカバー34、35は、車幅方向に厚みを有する板状である。ボディカバー34、35は、センターカバー33の左右外端部から後方に延びて燃料タンク29(
図1参照)などを車幅方向外側から覆う。ボディカバー34、35の後部上端には、車幅方向内側に湾曲する接続部34Z、35Z(
図2参照)が形成されている。接続部34Z、35Zでボディカバー34、35同士が接続される。センターカバー33と、左右のボディカバー34、35の囲み形状で燃料タンク29を上方に露出させる開口状のタンク開口部38(
図3、
図4参照)が形成される。このタンク開口部38の上方にはシート17が配置される。シート17はタンク開口部38を上方から覆う。
【0018】
図3、
図4に示すように、シート17は、運転者のみが座るように構成されている。シート17は、シート17の底部を構成するシート底板40と、シート底板40に支持されるクッション41と、クッション41を上方から覆ってシート底板40の裏面に固定されるシートカバー42とを有する。
シート底板40の前部には、シート底板40の下面から下方に突出するヒンジ接続部44が形成されている。ヒンジ接続部44は、シート底板40に埋め込まれたプレート部44Aとプレート部44Aに固定されシート底板40から下方に突出するボルト部44Bとを備える。ボルト部44Bには、シートヒンジ50が固定される。
【0019】
シート17は、シートヒンジ50のヒンジ軸51を中心に回動可能に支持される。シート17は、燃料タンク29の上方を閉塞する閉塞位置(
図1参照)と、燃料タンク29の上方を開放する開放位置(不図示)との間を回動する。
【0020】
図3、
図4に示すように、本実施の形態では、シートヒンジ50は燃料タンク29に支持される。
燃料タンク29は、お椀状の上半体29Aと下半体29Bとの合わせ構造で形成されている。燃料タンク29は、上半体29Aと下半体29Bとの合わせ面に対応するフランジ部29Cを有する。燃料タンク29は、図示しないタンクステーを介してシートフレーム20aにラバーマウントされる。燃料タンク29は、左右のシートフレーム20aに跨った状態で支持される。
【0021】
燃料タンク29の前側上部には、給油口29Dが設けられている。給油口29Dには、リッド29Eが閉塞可能に支持されている。給油口29Dの周囲には、給油口トレー29Fが配置されている。リッド29Eや給油口29Dには、シート17が開放されることで、運転者などの作業者がアクセス可能となる。
【0022】
図6は、
図2からシート17の図示を省略した図である。
図7は、
図6からシートヒンジ50の図示を省略した図である。
車体フレーム11に固定された燃料タンク29には、シートヒンジ50を介してシート17が開閉可能に支持される。
シートヒンジ50は、燃料タンク29にラバーマウントされる車体側ヒンジステー(車体側接続部)52と、シート17にラバーマウントされるシート側ヒンジステー(シート接続部)53とを備え、車体側ヒンジステー52と、シート側ヒンジステー53とが、ヒンジ軸51を中心として揺動可能に接続される。
【0023】
詳細には、燃料タンク29の前部上面29A1には、車体側ブラケット61が固定されている。車体側ブラケット61は、上下方向に厚みを有して左右方向に延びる板状に形成されている。車体側ブラケット61は車両中心線Lに対して左右対称状に形成される。車体側ブラケット61は、左右方向両端で前方に屈曲しており、燃料タンク29の前部に固定されている。車体側ブラケット61には、左右一対のボルト62が固定されている。ボルト62は、それぞれ、上方に延びている。
【0024】
図4、
図5に示すように、ボルト62には、カラー63が装着される。カラー63は、上方に延びる筒部63Aと、筒部63Aの下端に形成されたフランジ部63Bと、を有する。カラー63は、筒部63Aにボルト62が挿通され、フランジ部63Bの下面63B1が車体側ブラケット61の上面61Aに当接した状態でボルト62に装着される。
【0025】
カラー63には、弾性部材64が装着される。
本実施の形態の弾性部材64は、左右一対の第1ラバー(第1の弾性部材)66と、第2ラバー(第2の弾性部材)65と、により構成される。
【0026】
第1ラバー66は、所定の樹脂材料で形成された弾性部材である。第1ラバー66は、ボルト孔66Aが形成された円筒状である。第1ラバー66のボルト孔66Aの内径は、カラー63の筒部63Aの外径と同一の径に形成されており、カラー63の筒部63Aが押し込むようにして挿通可能である。ボルト孔66Aには、カラー63およびボルト62が挿通される。第1ラバー66の軸方向中央部の外周面には円環状の凹溝66Bが形成されている。凹溝66Bには、車体側ヒンジステー52が嵌合する。
【0027】
すなわち、
図5に示すように、第1ラバー66は円環状の上部66Cと、上部66Cの下端に接続され上部66Cよりも小径となる円環状の中間部66Dと、中間部66Dの下端に接続され上部66Cと同一の径(同一のサイズ)の下部66Eと、を備える。中間部66Dの外径は、車体側ヒンジステー52のボルト挿通孔52A1の内径に対応する。中間部66Dは、第1ラバー66がボルト挿通孔52A1に装着された場合に、その外周面が、車体側ヒンジステー52のボルト挿通孔52A1の内周面に当接する。このとき、上部66Cの下面66C1が車体側ヒンジステー52の上面52A2に当接し、下部66Eの上面66E1が車体側ヒンジステー52の下面52A3に当接する。
【0028】
第1ラバー66は第2ラバー65を介して車体側ブラケット61に支持される。
第2ラバー65は、所定の樹脂材料で形成された弾性部材である。第2ラバー65は、第1ラバー66とは異なる樹脂材料で形成されており、第1ラバー66に比べて硬度が高くなっている。第2ラバー65は、
図4、
図7に示すように、上下方向に厚みを有して左右方向に延びる板状である。第2ラバー65は、第1ラバー66に比べて前後および左右で幅が大きい。本実施の形態の第2ラバー65は、左側のボルト62と右側のボルト62の間隔よりも左右方向に大きく、左右一対の第1ラバー66の全体を下方から被覆可能な大きさに形成されている。なお、第2ラバー65は、左側のカラー63と右側のカラー63との全体を上方から被覆可能である。
【0029】
第2ラバー65には、第1ラバー66のボルト孔66Aに対応して、左右一対のボルト孔65A(
図4参照)が形成されており、左右一対のボルト62がカラー63を介してボルト孔65Aに挿通される(
図4参照)。
【0030】
第2ラバー65の上面65Bには、下方に凹んだ円形状のラバー凹部65B1が形成されている。ラバー凹部65B1は、ボルト孔65Aと同心状に形成されている。
第2ラバー65の下面65Cには、上方に凹んだ円形状のカラー凹部65C1が形成されている。カラー凹部65C1は、ボルト孔65Aと同心状に形成されている。
本実施の形態では、ラバー凹部65B1とカラー凹部65C1は内径が同じであり、第1ラバー66の下部66Eの外径に対応する大きさに形成されている。
【0031】
ここで、第2ラバー65は、上下方向の長さ、すなわち、厚みが、第1ラバー66の下部66Eよりも厚く形成されている。ラバー凹部65B1は、第1ラバー66の下部66Eの厚みに応じた深さを有している。ラバー凹部65B1には、第1ラバー66の下部66Eが嵌入される。これにより、第1ラバー66の下部66Eの上面66E1と第2ラバー65の上面65Bは面一形状を形成する。第1ラバー66の下部66Eの上面66E1および第2ラバー65の上面65Bは、車体側ヒンジステー52の下面52A3に当接する。
【0032】
また、下側のカラー凹部65C1は、カラー63のフランジ部63Bの厚みに応じた深さを有している。カラー凹部65C1は、ラバー凹部65B1よりも深さが浅く形成されている。カラー凹部65C1には、カラー63のフランジ部63Bが嵌入される。これにより、カラー凹部65C1には、カラー凹部65C1の上底面(天井面)および内周面に、カラー63のフランジ部63Bの上面および外周面が当接した状態で、フランジ部63Bが嵌入される。第2ラバー65の下面65C(
図5参照)とカラー63の下面63B1(
図5参照)は面一形状を形成し、車体側ブラケット61の上面61A(
図5参照)に当接する。
【0033】
第2ラバー65は、上側のラバー凹部65B1の底面に対応し且つ下側のカラー凹部65C1の上底面に対応する底部65Dを備える。
本実施の形態では、第1ラバー66の上部66Cにより、車体側ヒンジステー52の上面52A2に位置する弾性部材64の上部64Aが構成される。また、第1ラバー66の下部66Eおよび第2ラバー65により、車体側ヒンジステー52の下面52A3と車体側ブラケット61の上面61Aの間に位置する弾性部材64の下部64Bが構成される。さらに、弾性部材64の上部64Aおよび下部64Bを接続しボルト62を覆う弾性部材64の中間部64Cが、第1ラバー66の中間部66Dにより構成される。弾性部材64の下部64Bは、弾性部材64の上部64Aよりも、前後および左右で幅が大きくなっている。
【0034】
第2ラバー65には、
図7に示すように、前後方向内側に凹んで切り欠かれた形状の給油口回避部65Eが前後一対形成されている。給油口回避部65Eには、給油口29Dに応じて前方に膨出した給油口トレー29Fが位置し、後方の給油口トレー29Fと干渉せずに第2ラバー65が配置される。したがって、第2ラバー65は、前後方向を逆にして取り付け可能となっている。
【0035】
第1ラバー66の上方には、ワッシャ67が配置される。ワッシャ67は、第1ラバー66の上部66Cの外径よりも小径に形成されている。ワッシャ67を介して、ボルト62の上端(先端)にはナット68が締結される。これにより、シートヒンジ50の車体側ヒンジステー52が、車体フレーム11の燃料タンク29にラバーマウントされる。
【0036】
車体側ヒンジステー52は、弾性部材64に対して、上面52A2では、第1ラバー66の上部66Cの下面66C1(
図5参照)のみで接触する。これに対して、車体側ヒンジステー52は、下面52A3では、第1ラバー66の下部66Eの上面66E1(
図5参照)に加え、第2ラバー65の上面65B(
図5参照)にも接触し、弾性部材64との接触面積が大きくなっている。これにより、車体側ブラケット61と車体側ヒンジステー52との間に入る弾性部材64の面積が大きくなり、運転者がシート17に着座した場合に体重で加圧されて荷重を受ける接触面積が大きくなるために、車体側ヒンジステー52がより剛性をもって支持される。
【0037】
特に、本実施の形態では、下面52A3では、ボルト62、62の近傍部は第1ラバー66と接触し、ボルト62、62から離間した第1ラバー66の径方向外側では、硬度の高い第2ラバー65と接触する構成である。よって、体重で加圧され易い方向となるボルト62の軸方向の振動は、第1ラバー66および第2ラバー65の二つで剛性をもたせつつ吸収し易くできると共に、ボルト62の径方向では、第1ラバー66を第2ラバー65よりもボルト62に近接させることで、ボルト62からの径方向の振動を吸収し易くしている。
よって、本実施の形態では、車体側ヒンジステー52は、防振しながらも剛性を持って支持できる。
【0038】
図3、
図4に示すように、車体側ヒンジステー52は平板状の固定部52Aと、固定部52Aから前方に進むに連れて下方に湾曲する湾曲部52Bとを備える。固定部52Aおよび湾曲部52Bの左右両側には、側壁部52C(
図4参照)が設けられている。側壁部52Cは、車幅方向外側に進むに連れて上方に湾曲している。側壁部52Cには、その前部に、車幅方向に延びるヒンジ軸51(
図3参照)が支持されている。
【0039】
ヒンジ軸51には、シート側ヒンジステー53が接続される。シート側ヒンジステー53は、車体側ヒンジステー52よりも幅広に形成されている。シート側ヒンジステー53は、車体側ヒンジステー52と上下逆にしたような形状をしている(
図4参照)。
【0040】
シート側ヒンジステー53は、平板状の固定部53Aと、固定部53Aから前方に進むに連れて下方に湾曲する湾曲部53Bとを備える。固定部53Aおよび湾曲部53Bの左右両側には、側壁部53C(
図4参照)が設けられている。側壁部53Cは、車幅方向外側に進むに連れて下方に湾曲している。側壁部53Cには、その前下端に、車体側ヒンジステー52のヒンジ軸51が挿通される。これにより、車体側ヒンジステー52に対して、シート側ヒンジステー53がヒンジ軸51(
図3参照)を中心に揺動可能に支持される。
【0041】
シート側ヒンジステー53の固定部53Aには、左右一対のボルト孔53A1(
図6参照)が形成されている。固定部53Aが
図3に示すように、上下一対のラバー46及びワッシャ45で挟まれた状態で、ボルト孔53A1には、ヒンジ接続部44のボルト部44Bが挿通され、ボルト部44Bの下端(先端)にはナット47が締結される。これにより、シート側ヒンジステー53がシート底板40にラバーマウントされる。
【0042】
以上説明したように、本発明を適用した本実施の形態によれば、シート17がシートヒンジ50を介して車体を構成する車体フレーム11に支持される鞍乗り型車両10のシート支持構造において、シートヒンジ50は車体側ヒンジステー52とシート側ヒンジステー53とを備え、車体側ヒンジステー52とシート側ヒンジステー53とが揺動可能に接続され、車体側ヒンジステー52は車体側ブラケット61に弾性部材64を介して支持されており、車体側ヒンジステー52はボルト挿通孔52A1を有し、弾性部材64は、ボルト挿通孔52A1を通って車体側ヒンジステー52の上面52A2に位置する上部64Aと、車体側ヒンジステー52の下面52A3と車体側ブラケット61の上面61Aの間に位置する弾性部材64の下部64Bと、上部64Aと、下部64Bとを接続しボルト62を覆う中間部64Cと、を有し、下部64Bは上部64Aよりも、前後および左右で幅が大きい。したがって、金属同士での接続がないため、より振動が伝達され難い構造とすることができて防振効果が向上する。また、車体側ヒンジステー52と車体側ブラケット61間に入る弾性部材64の下部64Bが、弾性部材64の上部64Aよりも大きくなり車体側ヒンジステー52と車体側ブラケット61との間の弾性部材64に対する接触面積を大きくできるため、剛性を持ってシート17を支持することができる。したがって、防振しながらも剛性を持ってシート17を支持できるシート支持構造を提供することができる。
【0043】
本実施の形態では、弾性部材64は、二つの弾性部材65、66からなり、車体側ヒンジステー52の上面52A2と当接する上部66Cと、車体側ヒンジステー52の下面52A3に当接する下部66Eと、上部66Cと下部66Eとを接続する中間部66Dと、を有し、上部66Cと下部66Eは略同一サイズとする第1ラバー66と、車体側ヒンジステー52の下面52A3と車体側ブラケット61の上面61Aに当接し、下部66Eを覆う第2ラバー65と、からなる。したがって、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、従来の円筒形状の弾性部材を流用して機能を付加することが可能であるとともに、組付けがしやすくできる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1ラバー66よりも第2ラバー65の硬度が高い。したがって、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、ラバーマウントでありながらより剛性を持ってシート17を支持できる。また防振、剛性について機能を分けれるのでレイアウト自由度が高くできる。例えば、ボルト62から近い部分とボルト62から遠い部分とで弾性部材64の硬度を使い分けるなどが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態では、車体側ヒンジステー52は少なくとも二つのボルト挿通孔52A1を有し、第1ラバー66はボルト挿通孔52A1と同数設置され、第2ラバー65は少なくとも二つの第1ラバー66を覆う。したがって、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、部品点数を削減しながら剛性を持ったシート17を支持できる。
【0046】
また、本実施の形態では、ボルト62はカラー63を介して弾性部材64と接続されており、カラー63は下端にフランジ部63Bを有し、第2ラバー65は、第1ラバー66とカラー63のフランジ部63B間に入り込む底部65Dを有する。したがって、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、カラー63のフランジ部63Bと第1ラバー66の間に高度の高い第2ラバー65を配置するので剛性を持って支持できる。
【0047】
なお、本実施の形態では、第1ラバー66と第2ラバー65は別体である。したがって、第1ラバー66と第2ラバー65とで樹脂材料を変えても、第1ラバー66と第2ラバー65を容易に製造し易くなっている。
【0048】
[第2の実施の形態]
本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0049】
図8は、第2の実施の形態の弾性部材264の説明図である。
図8は、第1の実施の形態の
図5に対応する。
第2の実施の形態では、弾性部材264は、第1ラバー66と第2ラバー65とが一体である。弾性部材264は、例えば、第1ラバー66の樹脂材料と第2ラバー65の樹脂材料との二色成形により、第1ラバー66と第2ラバー65とが一体に形成される。もしくは、硬度の高い第2ラバー65の樹脂材料のみで第1ラバー66と第2ラバー65を一体とした形状に形成される。第2の実施の形態の弾性部材264の外観形状は、第1の実施の形態における弾性部材64の外観形状と同様であり、弾性部材64のボルト孔65A、66Aやカラー凹部65C1に対応して、ボルト孔264Dやカラー凹部264Eが形成されている。
【0050】
第2の実施の形態では、弾性部材264は、車体側ヒンジステー52の上面52A2に位置する上部264Aと、車体側ヒンジステー52の下面52A3と車体側ブラケット61の上面61Aの間に位置する下部264Bと、弾性部材264の上部264Aおよび下部264Bを接続しボルト62を覆う弾性部材264の中間部264Cとを備える。弾性部材264の下部264Bは、弾性部材264の上部264Aよりも、前後および左右で幅が大きくなっている。
【0051】
弾性部材264の上部264Aの下面264A1は、車体側ヒンジステー52の上面52A2に当接する。
弾性部材264の下部264Bの上面264B1は、車体側ヒンジステー52の下面52A3に当接する。
また、下側のカラー凹部264Eには、カラー63のフランジ部63Bが嵌入される。これにより、弾性部材264の下部264Bの下面264B2とカラー63の下面63B1は面一形状を形成し、車体側ブラケット61の上面61Aに当接する。
【0052】
よって、第2の実施の形態でも、車体側ヒンジステー52は、弾性部材264に対して、上面52A2では、弾性部材264の上部264Aの下面264A1で接触し、下面52A3では、上部264Aよりも幅が大きい弾性部材264の下部264Bで接触し、弾性部材264との接触面積が大きくなっている。よって、第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態でも、車体側ブラケット61と車体側ヒンジステー52との間に入る弾性部材264の面積が大きくなり、運転者がシート17に着座した場合に体重で加圧されて荷重を受ける接触面積が大きくなるために、車体側ヒンジステー52がより剛性をもって支持される。
なお、この上下でサイズの異なる弾性部材264とする場合に、左右で弾性部材を別体としても良い。
【0053】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、弾性部材264は、第1ラバー66と第2ラバー65とが一体とされており、第1の実施の形態と同様に、防振しながらも剛性を持ってシート17を支持できるシート支持構造を提供することができる。
【0054】
また、第2の実施の形態では、第1ラバー66と第2ラバー65は一体である。したがって、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、部品点数を削減することができる。
【0055】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0056】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0057】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0058】
(構成1)シートがシートヒンジを介して車体に支持される鞍乗り型車両のシート支持構造において、前記シートヒンジは車体側接続部とシート接続部とを備え、前記車体側接続部とシート接続部とが揺動可能に接続され、前記車体側接続部は車体側ブラケットに弾性部材を介して支持されており、前記車体側接続部はボルト挿通孔を有し、前記弾性部材は、前記ボルト挿通孔を通って前記車体側接続部の上面に位置する上部と、前記車体側接続部の下面と前記車体側ブラケットの上面の間に位置する下部と、前記上部と前記下部を接続しボルトを覆う中間部と、を有し、前記下部は前記上部よりも、前後および左右で幅が大きいことを特徴とする鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、金属同士での接続がないため、より振動が伝達され難い構造とすることができて防振効果が向上する。また、車体側接続部と車体側ブラケット間に入る弾性部材の下部が、弾性部材の上部よりも大きくなり車体側接続部と車体側ブラケットとの間の弾性部材に対する接触面積を大きくできるため、剛性を持ってシートを支持することができる。したがって、防振しながらも剛性を持ってシートを支持できる鞍乗り型車両のシート支持構造を提供することができる。
【0059】
(構成2)前記弾性部材は、二つの弾性部材からなり、前記車体側接続部の上面と当接する第1の上部と、前記車体側接続部の下面に当接する第1の下部と、前記第1の上部と前記第1の下部とを接続する第1の中間部と、を有し、前記第1の上部と前記第1の下部は略同一サイズとする第1の弾性部材と、前記車体側接続部の下面と前記車体側ブラケットの上面に当接し、前記第1の下部を覆う第2の弾性部材と、からなることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、鞍乗り型車両のシート支持構造において、従来の円筒形状の弾性部材を流用して機能を付加することが可能であるとともに、組付けがしやすくできる。
【0060】
(構成3)前記第1の弾性部材よりも前記第2の弾性部材の硬度が高いことを特徴とする構成2に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、鞍乗り型車両10のシート支持構造において、ラバーマウントでありながらより剛性を持ってシートを支持できる。また防振、剛性について機能を分けれるのでレイアウト自由度が高くできる。
【0061】
(構成4)
前記車体側接続部は少なくとも二つの前記ボルト挿通孔を有し、前記第1の弾性部材は前記ボルト挿通孔と同数設置され、前記第2の弾性部材は少なくとも二つの前記第1の弾性部材を覆うことを特徴とする構成3に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、鞍乗り型車両のシート支持構造において、部品点数を削減しながら剛性を持ったシートを支持できる。
【0062】
(構成5)前記ボルトはカラーを介して前記弾性部材と接続されており、前記カラーは下端にフランジ部を有し、前記第2の弾性部材は、前記第1の弾性部材と前記カラーのフランジ部間に入り込む底部を有することを特徴とする構成4に記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、鞍乗り型車両のシート支持構造において、カラーのフランジ部と第1の弾性部材の間に高度の高い第2の弾性部材を配置するので剛性を持って支持できる。
【0063】
(構成6)前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材は一体であることを特徴とする構成2乃至5のいずれかに記載の鞍乗り型車両のシート支持構造。
この構成によれば、鞍乗り型車両のシート支持構造において、部品点数を削減することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム(車体)
17 シート
50 シートヒンジ
52 車体側ヒンジステー(車体側接続部)
52A1 ボルト挿通孔
52A2 上面
52A3 下面
53 シート側ヒンジステー(シート接続部)
61 車体側ブラケット
61A 上面
62 ボルト
63 カラー
63B フランジ部
64 弾性部材
64A 弾性部材の上部
64B 弾性部材の下部
64C 弾性部材の中間部
65 第2ラバー(第2の弾性部材)
65D 底部
66 第1ラバー(第1の弾性部材)
66C 上部(第1の上部)
66D 中間部(第1の中間部)
66E 下部(第1の下部)
264 弾性部材
264A 弾性部材の上部
264B 弾性部材の下部
264C 弾性部材の中間部