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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158051
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221006BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062675
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】洞田 竜児
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】新藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】洞出 賢太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 啓典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056EB08
2C056EB23
2C056EB38
2C056EB39
2C056EB40
2C056EB59
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC38
2C056HA23
2C056JA13
2C056JC21
(57)【要約】
【課題】電流のリークによってノズルにダメージを与えてしまうのを抑える。
【解決手段】複数のノズルを覆うキャップ内のインク量Xが閾値Xt未満の場合に(S101:YES)、検査処理を実行する。検査処理では、複数のノズルをキャップで覆うキャップ処理を実行し(S102)、キャップ内に配置された検出用電極に電圧を印加する(S103)。そして、この状態で複数のノズルの各々について順に検査用駆動を行わせて、検出用電極に接続された判定回路から異常ノズルであるか否かに応じた信号を取得する検査用駆動処理を実行する(S104)。上記インク量Xが閾値Xt以上の場合には(S101:NO)、検査処理を実行しない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルを覆うキャップと、
前記キャップ内の液量を検出する液量検出手段と、
前記キャップ内に配置された電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた判定用信号を出力する信号出力部と、
前記キャップ内の液量に関する閾値を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、
前記液量検出手段にて検出された前記キャップ内の液量が前記閾値未満の場合には、前記ノズルが前記キャップで覆われ、且つ、前記電圧印加部により前記電極に電圧が印加された検査受付状態で、前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、前記信号出力部から前記判定用信号を取得し、前記判定用信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定する検査処理を実行し、
前記キャップ内の液量が前記閾値以上の場合には、前記検査処理を実行しない、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルを覆うキャップと、
前記キャップ内の液量を検出する液量検出手段と、
前記キャップ内に配置された電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた判定用信号を出力する信号出力部と、
前記キャップ内の液量に関する閾値を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、
前記液量検出手段にて検出された前記キャップ内の液量が前記閾値未満の場合には、前記ノズルが前記キャップで覆われ、且つ、前記電圧印加部により前記電極に電圧が印加された検査受付状態で、前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、前記信号出力部から前記判定用信号を取得し、前記判定用信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定する検査処理を実行し、
前記キャップ内の液量が前記閾値以上の場合には、前記検査処理とは異なる所定処理を実行した後に前記検査処理を実行する、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記キャップ内の液体を排出させる排出動作を行う液体排出手段、を備え、
前記所定処理は、前記液体排出手段に前記排出動作を行わせる排出処理である、ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記所定処理は、前記電圧印加部を制御して一時的に前記検査受付状態にし、このときに前記信号出力部から出力される信号に基づいて、前記検査受付状態で前記電極と前記液体吐出ヘッドとがショートするか否かを判定するショート判定処理を含み、
前記制御部は、
前記ショート判定処理において前記検査受付状態で前記電極と前記液体吐出ヘッドとがショートしないと判定した場合に、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記キャップ内の液体を排出させる排出動作を行う液体排出手段、を備え、
前記所定処理は、前記液体排出手段に前記排出動作を行わせる排出処理をさらに含み、
前記制御部は、
前記ショート判定処理において前記検査受付状態で前記電極と前記液体吐出ヘッドとがショートすると判定した場合には、
前記排出処理を実行してから、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記キャップ内の液体を排出する排出動作を行う液体排出手段と、
時刻を示す時刻信号を出力する時計部と、を備え、
前記検査指示信号が、前記時計部からの所定時刻となったことを示す前記時刻信号を含み、
前記制御部は、
前記所定時刻となったことを示す前記時刻信号を受信したときに、
前記液量判定処理において前記キャップ内の液量が前記閾値未満と判定した場合には、
前記検査処理を実行し、
前記液量判定処理において前記キャップ内の液量が前記閾値以上と判定した場合には、
前記所定時刻には前記検査処理を実行せず、
その後、最初に、前記ノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出することを指示する吐出指示信号を受信したときに、
前記液体排出手段に前記排出動作を行わせてから前記検査処理を実行し、
前記検査処理の実行後に、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
記憶部、を備え、
前記電圧印加部は、前記電極に、第1電圧及び前記第1電圧よりも低い第2電圧のいずれかを選択的に印加し、
前記記憶部は、
前記検査受付状態において前記電圧印加部により前記電極に前記第1電圧が印加される場合に対応する前記閾値である第1閾値と、
前記検査受付状態において前記電圧印加部により前記電極に前記第2電圧が印加される場合に対応する前記閾値であって前記第1閾値よりも大きい第2閾値と、を記憶し、
前記制御部は、
前記検査受付状態において前記電圧印加部に前記電極に前記第1電圧を印加させる場合には、
前記液量判定処理において、前記キャップ内の液量が前記第1閾値未満であるか否かを判定し、
前記検査受付状態において前記電圧印加部に前記電極に前記第2電圧を印加させる場合には、
前記液量判定処理において、前記キャップ内の液量が前記第2閾値未満であるか否かを判定することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
記憶部、を備え、
前記電圧印加部は、前記電極に、第1電圧及び前記第1電圧よりも低い第2電圧のいずれかを選択的に印加し、
前記記憶部は、
前記検査受付状態において前記電圧印加部により前記電極に前記第1電圧が印加される場合に対応する前記閾値である第1閾値と、
前記検査受付状態において前記電圧印加部により前記電極に前記第2電圧が印加される場合に対応する前記閾値であって前記第1閾値よりも大きい第2閾値と、を記憶し、
前記制御部は、
前記液量判定処理において前記キャップ内の液量が前記第1閾値未満であると判定したときには、
前記検査処理において、前記電圧印加部を制御して前記電極に前記第1電圧を印加させることによって前記検査受付状態とし、
前記液量判定処理において前記キャップ内の液量が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満であると判定したときには、
前記検査処理において、前記電圧印加部を制御して前記電極に前記第2電圧を印加させることによって前記検査受付状態とすることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記キャップ内の液体を排出させる排出動作を行う液体排出手段と、
時刻を示す時刻信号を出力する時計部と、を備え、
前記検査指示信号が、前記時計部から出力される第1時刻となったことを示す前記時刻信号を含み、
前記制御部は、
前記時計部から、前記第1時刻よりも前の第2時刻となったことを示す前記時刻信号を受信したときに、前記液量検出手段によって検出される前記キャップ内の液量が閾値未満であるか否かを判定する前液量判定処理を実行し、
前記前液量判定処理において前記キャップ内の液量が前記閾値以上であると判定した場合には前記液体排出手段に前記排出動作を行わせる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記閾値は、前記キャップ内の液体と前記ノズル内の液体とが接触しておらず、且つ、前記検査受付状態で前記キャップ内の液体と前記ノズル内の液体との間で放電が発生する最小の液量以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記閾値は、前記キャップ内の液体と前記ノズル内の液体とが接触する最小の液量以下であることを特徴する請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記閾値は、前記キャップ内の液体が前記液体吐出ヘッドと前記電極とをつなぐ液柱を発生させる最小の液量以下であることを特徴する請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記ノズルから液体を排出させる回復動作を行う回復手段、を備え、
前記制御部は、
前記検査処理において前記異常ノズルであると判定された前記ノズルが存在する場合に、前記回復手段に前記回復動作を行わせることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記検査処理において前記異常ノズルであると判定された前記ノズルが存在する場合には、
前記検査処理の後、最初に、前記ノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出することを指示する吐出指示信号を受信したときに、
前記回復手段に前記回復動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、印刷ヘッドの各ノズルからインクが正常に吐出されるかを検査するヘッド検査ルーチンを実行する。ヘッド検査ルーチンでは、印刷ヘッドと、キャッピング部材内の検査領域との間に所定の電位差を発生させ、ヘッドを通常検査位置に位置させることによって、印刷ヘッドのノズルプレートと検査領域とを接触させる。そして、印刷ヘッドのキャビティプレートと検査領域との間の実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定する。実測電圧が検査許容範囲を下回っていない場合には、各ノズルからインクが正常に吐出されるか否かの検査に進む。
【0003】
実測電圧が検査許容範囲を下回っている場合には、大きな電流のリークが発生しているとみなし、印刷ヘッドをキャッピング部材から離間させて空吸引処理を行わせる。空吸引処理とは、キャッピング部材に接続された吸引ポンプを駆動させて、キャッピング部材内に溜まったインクを排出させる処理である。そして、空吸引処理後に、実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定し、実測電圧が検査許容範囲を下回っている場合には、各ノズルからインクが正常に吐出されるか否かの検査に進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-136858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上記の通り、キャッピング部材内の検査領域との間に所定の電位差を発生させた状態で、印刷ヘッドのノズルプレートと検査領域とを接触させる。そして、この状態で、上記実測電圧が検査許容範囲を下回っている場合に、空吸引処理を実行し、再度、上記実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定する。そして、特許文献1では、この間、キャッピング部材内の検査領域との間に所定の電位差を発生させた状態が継続されている。そのため、大きな電流のリークが発生している場合には、空吸引処理によってキャッピング部材内のインクが排出されて、上記実測電圧が検査許容範囲内に上昇するまでの期間、大きな電流のリークが発生している状態が継続し、ノズルにダメージを与えてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、電流のリークによってノズルにダメージを与えてしまうのを抑えることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルを覆うキャップと、前記キャップ内の液量を検出する液量検出手段と、前記キャップ内に配置された電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた判定用信号を出力する信号出力部と、前記キャップ内の液量に関する閾値を記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、前記液量検出手段にて検出された前記キャップ内の液量が前記閾値未満の場合には、前記ノズルが前記キャップで覆われ、且つ、前記電圧印加部により前記電極に電圧が印加された検査受付状態で、前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、前記信号出力部から前記判定用信号を取得し、前記判定用信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定する検査処理を実行し、前記キャップ内の液量が前記閾値以上の場合には、前記検査処理を実行しない。
【0008】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルを覆うキャップと、前記キャップ内の液量を検出する液量検出手段と、前記キャップ内に配置された電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた判定用信号を出力する信号出力部と、前記キャップ内の液量に関する閾値を記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、前記液量検出手段にて検出された前記キャップ内の液量が前記閾値未満の場合には、前記ノズルが前記キャップで覆われ、且つ、前記電圧印加部により前記電極に電圧が印加された検査受付状態で、前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、前記信号出力部から前記判定用信号を取得し、前記判定用信号に基づいて前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定する検査処理を実行し、前記キャップ内の液量が前記閾値以上の場合には、前記検査処理とは異なる所定処理を実行した後に前記検査処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、電極と液体吐出ヘッドとがショートしてノズルにダメージを与えてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電位の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電位の変化を示す図である。
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図5】(a)検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートであり、(b)が記録指令を受信したときに制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図6】キャップ内のインクとノズル面との間の放電を説明するための図である。
図7】変形例1において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図8】変形例2において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図9】(a)が変形例3において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートであり、(b)が変形例3において記録指令を受信したときに制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図10】(a)が変形例4において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートであり、(b)が変形例4における検出用電極に印加する電圧を閾値とを関連付けたテーブルを説明するための図である。
図11】変形例5において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図12】(a)は変形例6においてプリンタに電力が供給されているときに制御部が行う処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は変形例6において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図13】(a)がキャップ内のインクがノズル面に接触する場合を説明する図であり、(b)が検出用電極とノズル面との間にインクの液柱が形成される場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0012】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8(本発明の「回復手段」)などを備えている。
【0013】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0014】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0015】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0016】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0017】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0018】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われたキャップ状態となる。また、キャップ昇降機構88によりキャップ71を降下させると、キャップ71がノズル面4aから離れたアンキャップ状態となる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0019】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上記キャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージ(本発明の「回復動作」)を行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0020】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0021】
また、メンテナンスユニット8では、アンキャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、キャップ71内のインクを排出させる空吸引を行うことができる。空吸引によって排出されたインクも廃液タンク73に貯留される。
【0022】
また、図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77(本発明の「電圧印加部」)に接続されている。高電圧電源回路77は、検出用電極76に所定の正の電圧(例えば600V程度)を印加する。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、判定回路78が接続されている。判定回路78は、検出用電極76から出力された信号の電圧値と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0023】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極76との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されるインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電圧Vaから低下し、電圧Vaよりも低い電圧Vbに達する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電圧が徐々に上昇して電圧Vaに戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電圧が変化する。
【0024】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電圧は、電圧Vaからほとんど変化しない。そこで、判定回路78は、これらを区別するために閾値Vt(Vb<Vt<Va)が設定されている。そして、判定回路78は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76から出力される電圧の最小値と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた判定用信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と判定回路78とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する。
【0025】
また、ここでは、高電圧電源回路77により、検出用電極76に正の電圧が付与されているが、高電圧電源回路77により、検出用電極76に負の電圧(例えば-600V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が電圧Vaから上昇し、検出用電極76にインクが着弾した後、検出用電極76の電圧が徐々に低下して電圧Vaに戻る。
【0026】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図4に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77等の動作を制御する。また、制御部80は、判定回路78から判定用信号を受信する。
【0027】
また、プリンタ1は、以上で説明した構成のほかに、時計部67を備えている。時計部67は時刻を計時し、現在の時刻を示す時刻信号を出力する。制御部80は、時計部67から時刻信号を受信する。
【0028】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0029】
<検査指示信号の受信時の処理>
次に、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに制御部80が行う処理について説明する。検査指示信号を受信したときに、制御部80は図5(a)のフローに沿って処理を行う。例えば、ユーザが、プリンタ1の図示しない操作部、プリンタに接続されたPC等を操作して、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示したときに、操作部、PC等から検査指示信号が送信され、制御部80がこの検査指示信号を受信する。あるいは、所定時刻になる毎に異常ノズルであるか否かの検査を行うように設定されている場合に、時計部67から所定時刻となったことを示す信号が送信されたときに、制御部80がこの信号を検査指示信号として受信する。
【0030】
図5(a)のフローについてより詳細に説明すると、検査指示信号を受信したときに、制御部80は、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満であるか否かを判定する(S101)(本発明の「液量判定処理」)。ここで、制御部80は、最後に空吸引が行われてからの、各ノズル10からのインクの吐出回数、吸引パージの回数などをフラッシュメモリ84に記憶させている。S101では、これらに基づいてインク量Xを算出し、算出したインク量Xが閾値Xt未満であるか否かを判定する。なお、この場合には、制御部80が、本発明の「液量検出部」を兼ねる。あるいは、キャップ71に、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上となったことを検出する液量センサが設けられており、S101では、この液量センサの検出結果に基づいて、インク量Xが閾値Xt未満であるか否かを判定する。なお、この場合には、液量センサが本発明の「液量検出部」に相当する。
【0031】
また、閾値Xtは、図6に示すように、キャップ状態で検出用電極76に電圧が印加されたときに、キャップ71内のインクIとノズル10内のインクとの間で放電が発生することによって、検出用電極76とノズル面4aとがショートしてしまう最小のインク量よりも少ないインク量に設定されている。
【0032】
インク量Xが閾値Xt以上である場合には(S101:NO)、そのまま処理を終了する。すなわち、制御部80は、次に説明する、ノズル10が異常ノズルであるか否かの検査を行わせない。
【0033】
インク量Xが閾値Xt未満である場合には(S101:YES)、制御部80は、続いて、キャップ処理を実行する(S102)。キャップ処理では、制御部80は、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88等を制御して、上記キャップ状態にする。なお、検査指示信号を受信した時点でキャップ状態となっている場合には、S102において、キャップ状態を維持する。続いて、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76に電圧を印加させる(S103)。これにより、キャップ状態で高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧が印加されている状態(本発明の「検査受付状態」)となる。
【0034】
そして、制御部80は、上記検査受付状態で、検査用駆動処理を実行する(S104)。検査用駆動処理では、制御部80は、インクジェットヘッド4を制御して、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、検査用駆動を行わせ、判定回路78から判定用信号を取得する。検査用駆動とは、ノズル10からインクを吐出させるためのインクジェットヘッド4の駆動のことである。なお、本実施形態では、S102~S104の処理を合わせたものが、本発明の「検査処理」に相当する。
【0035】
上記検査用駆動処理の後、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76への電圧の印加を解除させる(S105)。続いて、制御部80は、検査用駆動処理の際に取得した判定用信号に基づいて、異常ノズルが存在するか否かを判定する(S106)。異常ノズルが存在しない場合には(S106:NO)、そのまま処理を終了する。異常ノズルが存在する場合には(S106:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に回復フラグを記憶させてから(S107)、処理を終了する。
【0036】
<記録指令の受信時の処理>
次に、記録用紙Pへの記録を行うことを指示する記録指令(本発明の「吐出指示指示信号」)を受信したときに制御部80が行う処理について説明する。記録指令を受信したときに、制御部80は、図5(b)のフローに沿って処理を行う。
【0037】
より詳細に説明すると、記録指令を受信したときに、制御部80はフラッシュメモリ84に回復フラグが記憶されているか否かを判定する(S201)。フラッシュメモリ84に回復フラグが記憶されていない場合には(S201:NO)、そのままS204に進む。フラッシュメモリ84に回復フラグが記憶されている場合には(S201:YES)、制御部80は、パージ処理を実行し(S202)、フラッシュメモリ84に記憶されている回復フラグを消去させてから(S203)、S204に進む。S202のパージ処理では、制御部80は、吸引ポンプ72等を制御して吸引パージを行わせる。これにより、本実施形態では、検査処理において異常ノズルが存在すると判定された場合に、検査処理後、最初に記録指令を受信したときに、吸引パージによって異常ノズルを回復させることになる。
【0038】
S204では、制御部80は、記録処理を実行する。記録処理では、制御部80は、キャリッジモータ86を制御して、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Pへの記録を行わせる。
【0039】
<効果>
ここで、本実施形態では、キャップ71内のインクを介して、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートすることがある。検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートすると、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加したときに、インクジェットヘッド4に大きなリーク電流が流れ、ノズル10にダメージを与えてしまう。一方、キャップ71内のインク量Xが少ない(閾値Xt未満の)ときには、キャップ71内のインクを介して検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性は低い。これに対して、キャップ71内のインク量Xが多い(閾値Xt以上の)ときには、キャップ71内のインクを介して検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が高い。
【0040】
そこで、本実施形態では、検査指示信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満の場合に、検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が低い状態で、検査処理を実行することができる。
【0041】
一方、検査指示信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合に、検査処理を実行しない。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が高いときに、検出用電極76への電極の印加を伴う検査処理を実行しないことにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしてノズル10にダメージを与えてしまうのを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、閾値Xtを、検出用電極76に電圧が印加されたときに、キャップ71内のインクIとノズル10内のインクとの間での放電によって、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする最小のインク量以下の量に設定している。このようにすれば、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満であるか否かに基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートするか否かを判定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、異常ノズルが存在する場合には、吸引パージによって異常ノズルを回復させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、異常ノズルが存在する場合に、検査処理後、最初に吐出指示信号を受信したときに、吸引パージによって異常ノズルを回復させる。これにより、ノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出して記録を行う直前に異常ノズルを回復させることができる。
【0045】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0046】
上述の実施形態では、インク量Xが閾値Xt以上である場合に、ノズル10が異常ノズルであるか否かの検査を行わなかったが、これには限られない。
【0047】
変形例1では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図7のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、変形例1では、上述の実施形態と同様、制御部80は、インク量Xが閾値Xt未満の場合には(S101:YES)、S102~S107の処理を実行する。
【0048】
一方で、変形例1では、制御部80は、インク量Xが閾値Xt以上の場合には(S101:NO)、空吸引処理(本発明の「所定処理」、「排出処理」)を実行してから(S301)、S102~S107の処理を実行する。S301の空吸引処理では、制御部80は、キャップ昇降機構88を制御して上記アンキャップ状態としたうえで、吸引ポンプ72を駆動させることによって空吸引を行わせる。なお、変形例1では、吸引パージと空吸引を行うためのメンテナンスユニット8が、本発明の「回復手段」と「排出手段」とを兼ねている。
【0049】
変形例1では、検査指示信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満の場合に、検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が低い状態で、検査処理を実行することができる。
【0050】
一方、検査指示信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合に、空吸引によってキャップ71内のインクを排出させてから、検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が低い状態で、検査処理を実行することができる。
【0051】
また、変形例1では、インク量Xが閾値Xt以上であるときに、直ちに空吸引を行わせたが、これには限られない。
【0052】
変形例2では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図8のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、変形例2では、上述の実施形態と同様、制御部80は、インク量Xが閾値Xt未満の場合には(S101:YES)、S102~S107の処理を実行する。
【0053】
一方で、変形例2では、制御部80は、インク量Xが閾値Xt以上の場合には(S101:NO)、制御部80は、上記キャップ状態で、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76に一時的に(例えば10ms程度)電圧を印加させる(S401)。そして、検出用電極76に一時的に電圧を印加したときの検出用電極76の電圧に基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートしているか否かを判定する(S402、本発明の「ショート判定処理」)。検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしている場合、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間に電流が流れることにより、検出用電極76に電圧を印加したときの検出用電極76の電圧の絶対値が小さくなる。したがって、検出用電極76の電圧が所定電圧よりも低いか否かに基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートしているか否かを判定することができる。
【0054】
検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にはショートしていない場合には(S402:NO)、制御部80は、そのまま、S102~S107の処理を実行する。検出用電極76の電位に基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートしている場合には(S402:YES)、制御部80は、変形例1と同様に空吸引処理を実行してから(S301)、S102~S107の処理を実行する。
【0055】
ここで、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合でも、キャップ状態で検出用電極76に電圧を印加したときに、実際には検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしないことはある。
【0056】
そこで、変形例2では、検査指示信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合には、一時的にキャップ状態で検出用電極76に電圧を印加して、判定回路78から出力される信号に基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートするか否かを判定するショート判定処理を実行する。そして、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしていない場合には、検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしていない状態で検査処理を実行することができる。また、このとき、一時的に検出用電極76に電圧を印加するだけであるので、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする場合でも、ノズル10に大きなダメージを与えてしまうことはない。
【0057】
一方、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートする場合には、空吸引を行わせてキャップ71内のインクを排出させてから検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が低い状態で検査処理を実行することができる。
【0058】
また、変形例2では、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートする場合に、空吸引を行わせてキャップ71内のインクを排出させてから検査処理を実行したが、これには限られない。検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートする場合に、検査処理を実行しないようにしてもよい。
【0059】
また、検出用電極76とインクジェットヘッド4とが実際にショートすると判断した場合に、アンキャップ状態にして、検査処理を実行してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、検査指示信号がユーザの操作によって送信された検査指示信号であるか、所定時刻となったことを示す信号であるか等に関係なく、インク量Xが閾値Xt以上である場合に同じ処理を実行したが、これには限られない。
【0061】
変形例3では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図9(a)のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、変形例3では、上述の実施形態と同様、制御部80は、インク量Xが閾値Xt未満の場合には(S101:YES)、S102~S107の処理を実行する。
【0062】
一方で、変形例3では、インク量Xが閾値Xt以上の場合には(S101:NO)、制御部80は、受信した検査指示信号が、所定時刻であることを示す時刻信号であるか否かを判定する(S501)。受信した検査指示信号が、所定時刻であることを示す時刻信号でない場合には(S501:NO)、制御部80は、変形例1と同様、空吸引処理を実行してから(S301)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。
【0063】
受信した検査指示信号が、所定時刻であることを示す時刻信号である場合には(S501:YES)、制御部80は、検査フラグをフラッシュメモリ84に記憶させ(S502)、S102~S107の処理を実行することなく、処理を終了する。
【0064】
また、変形例3では、制御部80は、記録指令を受信したときに、図9(b)のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御部80は、記録指令を受信したときに、フラッシュメモリ84に検査フラグが記憶されているか否かを判定する(S601)。フラッシュメモリ84に検査フラグが記憶されていない場合には(S601:NO)、制御部80は、上述の実施形態と同様のS201~S204の処理を実行する。
【0065】
フラッシュメモリ84に検査フラグが記憶されている場合(S601:YES)、制御部80は、S301と同様の空吸引処理を実行してから(S602)、S102~S105と同様のS603~S606の処理を実行する。
【0066】
そして、異常ノズルが存在しない場合には(S607:NO)、制御部80は、S204の記録処理を実行する。異常ノズルが存在する場合には(S607:YES)、制御部80は、S202~S204の処理を実行する。
【0067】
変形例3では、所定時刻となる毎に検査指示信号を受信する。このような場合、所定時刻は、例えばプリンタ1を使用しない深夜の時刻など、プリンタ1において音を発生させることが好ましくない時刻に設定されることが多い。一方、空吸引では、アンキャップ状態とするためにキャップ71を降下させたり、吸引ポンプ72を駆動させたりするため、検査用駆動と比較して大きな音が発生してしまう。そのため、変形例3と異なり、所定時刻において、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合に、空吸引を行ってから検査処理を実行するようにすると、空吸引によって発生する音が騒音となってしまう。
【0068】
そこで、変形例3では、検査指示信号として、所定時刻になったことを示す信号を受信したときに、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合には、所定時刻には検査処理を実行しない。そして、この後、最初に記録指令を受信したときに、空吸引を行わせてから検査処理を実行し、その後に、記録処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性が低い状態で検査処理を実行することができる。また、ノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出して記録を行う直前に検査処理を実行することができる。また、所定時刻に空吸引を行わせないことにより、所定時刻に騒音となるような大きな音が発生しないようにすることができる。
【0069】
また、上述の実施形態では、検出用電極76に印加する電圧が1種類であり、これに対応して、閾値Xtも1種類であったが、これには限られない。
【0070】
変形例4では、高電圧電源回路77が、例えばプリンタ1の使用環境などに応じて、検出用電極76に第1電圧V1、及び、第1電圧よりも低い第2電圧V2のいずれかを選択的に印加する。例えば、外気温度が高い場合には外気温度が低い場合よりも、キャップ71においてインクの水分が蒸発しやすく、キャップ71内の空気中の水分量が多いため、リーク電流が流れやすい。また、例えば、湿度が高い場合には湿度が低い場合よりも、キャップ71内の空気中の水分量が多いため、リーク電流が流れやすい。また、例えば、ノズル10からキャップ71に向けてインク排出させるフラッシングを行わせた直後には、キャップ71内の空気中の水分量が多いため、リーク電流が流れやすい。そこで、変形例4では、例えば、キャップ71内の空気中の水分量が少ないと推定される状況では、検出量電極76に第1電圧V1を印加し、キャップ71内の空気中の水分量が多いと推定される状況では、検出量電極76に第2電圧V2を印加する。
【0071】
また、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図10(a)のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、変形例4では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、閾値Xtを設定してから(S701)、上述の実施形態と同様のS101~S107の処理を実行する。
【0072】
ここで、変形例4では、フラッシュメモリ84に、図10(b)に示すような、検出用電極76に印加する電圧Vと閾値Xtとを関連付けたテーブルが記憶されている。S701では、高電圧電源回路77により検出用電極76に印加する電圧と、図10(b)のテーブルとに基づいて、閾値Xtを設定する。
【0073】
図10(b)における第1閾値Xt1は、例えば、キャップ状態で検出用電極76に第1電圧V1が印加されたときに、キャップ71内のインクIとノズル面4aとの間で放電が発生することによって、検出用電極76とノズル面4aとがショートしてしまう最小の量よりも少ない量に設定されている。また、図10(b)における第2閾値Xt2は、第1閾値Xt1よりも大きい。第2閾値Xt2は、例えば、キャップ状態で検出用電極76に第2電圧V2が印加されたときに、キャップ71内のインクIとノズル面4aとの間で放電が発生することによって、検出用電極76とノズル面4aとがショートしてしまう最小の量よりも少ない量に設定されている。
【0074】
検出用電極76に印加する電圧が高いほど、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間の電位差が大きくなり、検査用駆動を行わせたときの検出用電極76の電圧の変化を大きくすることができるが、キャップ71内のインク量Xがより少ない状態で検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしやすい。一方、変形例4では、検査処理の際に、プリンタ1の使用環境などに応じて、検出用電極76に、第1電圧V1及び第2電圧V2のいずれかを選択的に印加する。
【0075】
そこで、変形例4では、検査処理において検出用電極76に第1電圧V1を印加する場合には、キャップ71内のインク量Xが第1閾値Xt1未満の場合に検査処理を実行する。検査処理において検出用電極76に第2電圧V2を印加する場合には、キャップ71内のインク量Xが第2閾値Xt2未満の場合に検査処理を実行する。これにより、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間に印加する電圧によらず、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性の低い状態で検査処理を実行することができる。また、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性の高い状態であるのに検査処理が実行されないといったことを起こりにくくすることができる。
【0076】
なお、変形例4では、上述の実施形態において、検出用電極76に印加する電圧Vに応じて閾値Xtを設定する例について説明したが、これには限られない。変形例1~3において、変形例4と同様に、検出用電極76に印加する電圧Vに応じて閾値Xtを設定してもよい。
【0077】
変形例5では、高電圧電源回路77が、検出用電極76に第1電圧V1、及び、第1電圧よりも低い第2電圧V2のいずれかを選択的に印加する。また、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図11のフローに沿って処理を行う。
【0078】
より詳細に説明すると、変形例5では、インク量Xが第1閾値Xt1よりも少ない場合には(S801:YES)、制御部80は、検出用電極76に印加する電圧Vを第1電圧V1に設定し(S802)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。この場合、S103において、検出用電極76に第1電圧V1が印加される。
【0079】
インク量Xが、第1閾値Xt1以上で(S801:NO)、且つ、第1閾値Xt1よりも多い第2閾値Xt2よりも少ない場合には(S803:YES)、制御部80は、検出用電極76に印加する電圧Vを第2電圧V2に設定し(S804)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。この場合、S103において、検出用電極76に第2電圧V2が印加される。
【0080】
インク量Xが、第2閾値Xt2以上の場合には(S803:NO)、制御部80は、S301と同様の空吸引処理を実行したうえで(S805)、検出用電極76に印加する電圧Vを第1電圧V1に設定し(S806)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。この場合、S103において、検出用電極76に第1電圧V1が印加される。
【0081】
検出用電極76に印加する電圧が高いほど、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間の電位差が大きくなり、検査用駆動を行わせたときの検出用電極76の電圧の変化を大きくすることができる。すなわち、検査用駆動を行わせたときの検出用電極76の電圧の変化を大きくするという観点からは、検査用電極76に印加する電圧が高いことが好ましい。一方で、検査用電極76の電圧が高いほど、キャップ71内のインク量Xがより少ない状態で検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしてしまう。すなわち、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしないようにするという観点からは、検査用電極76に印加する電圧が低いことが好ましい。
【0082】
そこで、変形例5では、キャップ71内のインク量Xが第1閾値Xt1未満の場合には、検査処理において検出用電極76に第1電圧V1を印加する。また、キャップ71内のインク量Xが第1閾値Xt1以上且つ第2閾値Xt2未満の場合には、検査処理において検出用電極76に第2電圧V2を印加する。これにより、キャップ71内のインク量Xに応じて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする可能性の低い範囲で、できるだけ高い電圧を検出用電極76に印加して検査用駆動を行わせることができる。
【0083】
変形例6では、プリンタ1に電力が供給されている間、制御部80が、図12(a)のフローに沿って処理を行う。また、変形例6では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、図12(b)のフローに沿って処理を行う。
【0084】
図12(a)のフローについて詳細に説明すると、制御部80は、時計部67から第2時刻となったことを示す信号を受信していないときには待機している(S901:NO)。ここで、第2時刻とは、第1時刻よりも前の時刻である。第1時刻は、例えば、深夜の時刻など、プリンタ1において音が発生することが好ましくない時刻である。第2時刻は、例えば、夕方の時刻など、プリンタ1において音が発生することが許容される時刻である。
【0085】
時計部67から第2時刻となったことを示す信号を受信したときに(S901:YES)、制御部80は、インク量Xが閾値Xtよりも少ないか否かを判定する(S902、本発明の「前液量判定処理」)。インク量Xが閾値Xtよりも少ない場合には(S902:YES)、S901に戻る。また、インク量Xが閾値Xt以上の場合には(S902:NO)、制御部80は、S301と同様の空吸引処理を実行したうえで(S903)、S901に戻る。
【0086】
図12(b)のフローについて詳細に説明すると、検査指示信号を受信したときに、制御部80は、インク量Xが閾値Xt未満の場合には(S101:YES)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。
【0087】
インク量Xが閾値Xt以上であり(S101:NO)、且つ、検査指示信号が、時計部67から受信した第1時刻であることを示す時刻信号である場合(S1001:YES)、S102~S107の処理を実行せずに、そのまま処理を終了する。検査指示信号が、時計部67から受信した第1時刻であることを示す時刻信号以外の信号である場合(S1001:NO)、制御部80は、S301と同様の空吸引処理を実行してから(S1002)、上述の実施形態と同様のS102~S107の処理を実行する。
【0088】
変形例6では、第1時刻となる毎に検査指示信号を受信する。このような場合、第1時刻は、例えばプリンタ1を使用しない深夜の時刻など、プリンタ1おいて音を発生させることが好ましくない時刻に設定されることが多い。一方、空吸引では、アンキャップ状態とするためにキャップ71を降下させたり、吸引ポンプ72を駆動させたりするため、検査用駆動と比較して大きな音が発生してしまう。そのため、変形例6と異なり、第1時刻において、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合に、空吸引を行ってから検査処理を実行するようにすると、空吸引によって発生した音が騒音となってしまう。
【0089】
そこで、変形例6では、第1時刻よりも前の第2時刻におけるキャップ71内のインク量Xが閾値Xt以上の場合に、第2時刻に空吸引を行わせて、キャップ71内のインクを排出させる。これにより、第1時刻においてキャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満となる可能性を高くすることができる。その結果、第1時刻となったときに検査処理を実行することのできる可能性を高くすることができる。
【0090】
また、変形例6では、インク量Xが閾値Xt以上で(S101:NO)、検査指示信号が、時計部67から受信した第1時刻であることを示す信号である場合(S1001:YES)、そのまま処理を終了したが、これには限られない。例えば、インク量Xが閾値Xt以上の場合に(S101:NO)、検査指示信号が、時計部67から受信した第1時刻であることを示す信号であるか否かによらず、空吸引処理を実行してからS102~S107の処理を実行してもよい。この場合、第1時刻において、空吸引処理が実行されることがあり得る。ただし、この場合でも、第2時刻において、インク量Xが閾値Xt以上の場合に空吸引処理を実行するため、第2時刻の空吸引処理を実行しない場合と比較すれば、第1時刻において、インク量Xが閾値Xt以上となる可能性は低い。したがって、第1時刻において、騒音が問題となる空吸引が行われる頻度を低くすることができる。
【0091】
また、上述の実施形態では、閾値Xtが、キャップ状態で検出用電極76に電圧が印加された状態で、キャップ71内のインクIとノズル面4aとの間で放電が発生することによって、検出用電極76とノズル面4aとがショートしてしまう最小の量よりも少ない量に設定されていたが、これには限られない。
【0092】
例えば、閾値Xtが、図13(a)に示すように、キャップ状態で、キャップ71内のインクIがノズル面4aに接触する最小のインク量よりも少ない量に設定されていてもよい。
【0093】
閾値Xtを、キャップ71内のインクとノズル10内のインクとが接触して、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする最小のインク量以下の量とすれば、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満であるか否かに基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートするか否かを判定することができる。
【0094】
あるいは、例えば、閾値Xtが、図13(b)に示すように、キャップ状態で、検出用電極76とノズル面4aとの間に、これらをつなぐインクの液柱Jが形成されてしまう最小のインク量よりも少ない量に設定されていてもよい。液柱Jとは、キャップ71内のインクIの一部が、自身の表面張力によって、検出用電極76とノズル面4aとの間にわたって延びて、これらをつなぐものある。
【0095】
閾値Xtを、ノズル面4aと検出用電極76との間に形成された液柱Jを介して、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートする最小のインク量以下の量とすれば、キャップ71内のインク量Xが閾値Xt未満であるか否かに基づいて、検出用電極76とインクジェットヘッド4がショートするか否かを判定することができる。
【0096】
あるいは、閾値Xtを、キャップ状態で検出用電極76に電圧が印加された状態で、キャップ71内のインクを介して検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしない範囲内の別の値に設定してもよい。
【0097】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合にフラッシュメモリ84に回復フラグを記憶させ、記録指令が入力されたときに、フラッシュメモリ84に回復フラグが記憶されている場合に、パージ処理により吸引パージを行わせてから記録処理を実行したが、これには限られない。例えば、異常ノズルが存在する場合に直ちに吸引パージを行わせてもよい。
【0098】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、ノズル10からインクを排出させて異常ノズルを回復させるための回復動作として、一律の吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、異常ノズルの数が多い場合ほど、インクの排出量の多い吸引パージを行わせるなどしてもよい。
【0099】
また、以上の例では、パージとして吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。この場合には、加圧ポンプが本発明の「回復手段」に相当する。
【0100】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「回復手段」に相当する。
【0101】
また、ノズル10からインクを排出させて異常ノズルを回復させるための回復動作は、パージであることにも限られない。例えば、回復動作として、インクジェットヘッド4を制御して、少なくとも異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせることによって異常ノズルを回復させてもよい。なお、この場合には、インクジェットヘッド4が、本発明の「液体吐出ヘッド」と「回復手段」とを兼ねる。また、パージとフラッシングとによって異常ノズルを回復させてもよい。
【0102】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、制御部80が自動的に吸引パージなどを行わせて異常ノズルを回復させたが、これには限られない。例えば、異常ノズルが存在する場合に、その旨をユーザに報知して吸引パージを行うか否かを選択させてもよい。そして、ユーザにより吸引パージを行うことが選択された場合に、吸引パージを行わせてもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、検査用駆動を行わせたノズル10が異常ノズルであるか否かの判定結果に基づいて、異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0104】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルとしたが、これには限られない。例えば、インクの吐出方向に異常のあるノズル10など、吐出されたか否か以外の異常のあるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0105】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0106】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0107】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
67 時計部
71 キャップ
76 検出用電極
77 高電圧電源回路
78 判定回路
79 抵抗
80 制御部
84 フラッシュメモリ
図1
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