(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158052
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221006BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221006BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 101
B41J2/01 451
B41J2/165 211
B41J2/175 131
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062676
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 貴文
(72)【発明者】
【氏名】洞田 竜児
(72)【発明者】
【氏名】林 将芳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA20
2C056EA25
2C056EB08
2C056EB23
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB39
2C056EB40
2C056EB59
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC62
2C056FA10
2C056JC21
(57)【要約】
【課題】環境によらず適切にリーク電流が流れているか否かを判定する
【解決手段】ノズルが異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、制御部は、キャップ処理によって複数のノズルがキャップで覆われたキャップ状態とし(S101)且つキャップ内の検出用電極76に電圧を印加した状態で(S102)、検出用電極の電圧の直流成分に対応する信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かに基づいて、リーク電流が流れているか否かを判定する(S103)。信号の値Vが閾値Vt以上であり、リーク電流が流れていると判定された場合には(S103:NO)、空吸引処理によりキャップ内のインクを排出させ(S105)、キャップがノズルから離れたアンキャップ状態で検出用電極76に電圧を印加したときの検出用電極76に電圧の直流成分に対応する信号の値に基づいて閾値Vtを更新する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、
閾値を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、
前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、
前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、
前記リーク判定処理及び前記検査用駆動を行わない所定タイミングにて、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にし、このときの前記非駆動時信号の値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値の情報を更新する更新処理を実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記電極が収容され、前記ノズルを覆うキャップと、
前記ノズルが前記キャップで覆われたキャップ状態と、前記キャップが前記ノズルから離れたアンキャップ状態とを切り換える切換手段と、を備え、
前記制御部は、
前記検査用駆動を行わせるときには、前記切換手段を制御して前記キャップ状態にし、
前記更新処理において前記電圧印加部を制御し前記電圧印加状態にするときには、前記切換手段を制御して前記アンキャップ状態にすることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記更新処理において、前記記憶部に記憶されている前記閾値の情報を、前記電圧印加部を制御し前記電圧印加状態にしたときの前記非駆動時信号の値との差が所定量となる値に更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記信号出力部は、
前記電極の電圧の直流成分に応じた信号を出力する第1回路と、
前記印加状態で前記ノズルから前記電極に向けて液体が吐出されたときに、前記電極の電圧の変化に応じて所定周期で変化する信号を出力する第2回路と、を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記所定タイミングは、前記リーク判定処理で前記リーク電流が流れていると判定された直後のタイミングを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記所定タイミングは、前記液体吐出装置の製造時の、前記液体吐出ヘッドへの液体の導入が完了した直後のタイミングを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッド内の液体を排出するパージを行うパージ手段と、
前記液体吐出ヘッドと接続され、前記ノズルから吐出させるための液体が貯留された液体タンクと、を備え、
前記液体吐出装置の製造時に、前記液体吐出ヘッドに、前記ノズルから吐出させるための液体とは種類の異なる保存液が充填されており、
前記制御部は、
前記液体吐出装置の初回の使用の前に、前記パージ手段に前記パージを行わせることによって、前記液体吐出ヘッド内の前記保存液を排出させるとともに、前記液体タンクから前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから吐出させるため液体を導入させる初期導入を行わせ、
前記所定タイミングは、前記初期導入が完了した直後のタイミングを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記所定タイミングは、前回の更新処理から所定時間が経過したタイミングを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッド内の液体を排出するパージを行うパージ手段、を備え、
前記制御部は、定期的に前記パージ手段に前記パージを行わせ、
前記所定タイミングは、定期的に前記パージ手段に前記パージを行わせるタイミングを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記所定タイミングは、前記検査指示信号の受信後、前記リーク判定処理の直前のタイミングを含むことを特徴する請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
温度を検出する温度検出部、を備え、
前記記憶部は、前記更新処理を実行したときに前記温度検出部によって検出される温度の情報を記憶し、
前記所定タイミングは、
前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出される温度と、前回前記更新処理を実行したときに前記温度検出部によって検出されて前記記憶部に記憶された温度との温度差が所定温度差以上の場合の、前記検査指示信号の受信後、前記リーク判定処理の前のタイミングを含むことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
温度を検出する温度検出部、を備え、
前記記憶部は、
互いに重複しない複数種類の温度範囲の情報と、
前記更新処理を実行したときに前記温度検出部によって検出される温度が、前記複数種類の温度範囲のうち、どの温度範囲内の温度であるかの情報と、を記憶し、
前記所定タイミングは、
前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出される温度を含む前記温度範囲と、前回前記更新処理を実行したときに前記温度検出部によって検出されて前記記憶部に記憶された温度を含む前記温度範囲とが異なる場合の、前記検査指示信号の受信後、前記判定処理の前のタイミングを含むことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記所定タイミングは、前記切換手段による前記キャップ状態から前記アンキャップ状態への切り換えを含む所定動作が行われるタイミングを含むことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
時刻を示す時刻信号を出力する時計部、を備え、
前記検査指示信号として、所定時刻になったことを示す前記時刻信号を受信したときには、
前記更新処理を実行せず、前回の前記更新処理によって前記記憶部に記憶された前記閾値を用いて前記リーク判定処理を実行し、
前記所定時刻となったことを示す前記時刻信号とは別の前記検査指示信号を受信したときに、
前記更新処理を実行し、
当該更新処理によって更新された前記閾値を用いて前記リーク判定処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、
閾値を記憶する記憶部と、
温度を検出する温度検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、
前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新し、
前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、
前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、
前記記憶部は、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出される温度の情報を記憶し、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新するときに、
前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出された温度と、前回前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出された温度との温度差に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項16】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、
閾値を記憶する記憶部と、
温度を検出する温度検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、
前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新し、
前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、
前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、
前記記憶部は、
互いに重複しない複数種類の温度範囲の情報と、
前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出される温度が、前記複数種類の温度範囲のうち、どの温度範囲内の温度であるかの情報と、を記憶し、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新するときに、
前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出された温度を含む前記温度範囲と、前回前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出された温度を含む前記温度範囲とに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、印刷ヘッドの各ノズルからインクが正常に吐出されるかを検査するヘッド検査ルーチンを実行する。ヘッド検査ルーチンでは、印刷ヘッドと、キャッピング部材内の検査領域との間に所定の電位差を発生させ、ヘッドを通常検査位置に位置させることによって、印刷ヘッドのノズルプレートと検査領域とを接触させる。そして、印刷ヘッドのキャビティプレートと検査領域との間の実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定する。実測電圧が検査許容範囲を下回っていない場合には、各ノズルからインクが正常に吐出されるか否かの検査に進む。
【0003】
実測電圧が検査許容範囲を下回っている場合には、大きな電流のリークが発生しているとみなし、印刷ヘッドをキャッピング部材から離間させて空吸引処理を行わせる。空吸引処理とは、キャッピング部材に接続された吸引ポンプを駆動させて、キャッピング部材内に溜まったインクを排出させる処理である。そして、空吸引処理後に、実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定し、実測電圧が検査許容範囲を下回っている場合には、各ノズルからインクが正常に吐出されるか否かの検査に進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、上記のように、印刷ヘッドのキャビティプレートと検査領域との間の実測電圧が検査許容範囲を下回っているか否かを判定することによって、大きな電流のリークが発生しているか否かを判定している。しかしながら、上記検査許容範囲が固定されたものである場合、環境によっては、かなり大きな電流のリークが発生している場合にしか、リークが発生していると判定することができない虞がある、あるいは、実際にはリークが発生していないときにリークが発生していると判定してしまい、不必要に空吸引処理を実行してしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、環境によらず適切にリークが発生しているか否かを判定することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、閾値を記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、前記リーク判定処理及び前記検査用駆動を行わない所定タイミングにて、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にし、このときの前記非駆動時信号の値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値の情報を更新する更新処理を実行する。
【0008】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、閾値を記憶する記憶部と、温度を検出する温度検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新し、前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、前記記憶部は、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出される温度の情報を記憶し、前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新するときに、前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出された温度と、前回前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出された温度との温度差に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新する。
【0009】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、閾値を記憶する記憶部と、温度を検出する温度検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新し、前記電圧印加部を制御し前記電極に電圧が印加された印加状態にして、前記液体吐出ヘッドを駆動させずに前記信号出力部より取得した信号である非駆動時信号の値が前記閾値以下であるか否かに基づいて、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間にリーク電流が流れているか否かを判定するリーク判定処理を実行し、前記リーク判定処理において前記リーク電流が流れていないと判定した場合に、前記電圧印加部を制御し前記印加状態にして、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから前記電極に向けて液体を吐出させるための検査用駆動を行わせ前記信号出力部より信号を取得し、前記記憶部は、互いに重複しない複数種類の温度範囲の情報と、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出される温度が、前記複数種類の温度範囲のうち、どの温度範囲内の温度であるかの情報と、を記憶し、前記制御部は、前記記憶部に前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新するときに、前記検査指示信号を受信したときに前記温度検出部によって検出された温度を含む前記温度範囲と、前回前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新したときに前記温度検出部によって検出された温度を含む前記温度範囲とに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記閾値を更新する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電極と液体吐出ヘッドとの間にリーク電流が流れているか否かをより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)は検出用電極に電圧が印加され且つ検査用駆動が行われていない場合、及び、検査用駆動によってノズルからインクが吐出されなかった場合に、第2回路から出力される信号を示す図であり、(b)は検査用駆動によってノズルからインクが吐出された場合に、第2回路から出力される信号を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態におけるインク導入時の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態における初期導入時の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第4実施形態において、プリンタに電力が供給されている間制御部によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第5実施形態において、プリンタに電力が供給されている間制御部によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第6実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】(a)は第7実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は温度範囲の情報を説明するための図である。
【
図13】第8実施形態において記録指令を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第9実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】第9実施形態において記録指令を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】第10、第11実施形態において検査指示信号を受信したときの制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】(a)は第10実施形態における、温度変化量と閾値の変化量とを関連付けたテーブルを説明するための図であり、(b)は第11実施形態における、温度範囲の変化量と閾値の変化量とを関連付けたテーブルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0013】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8(本発明の「パージ手段」)などを備えている。
【0014】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0015】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14(本発明の「液体タンク」)が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0016】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0017】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0018】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0019】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われたキャップ状態となる。また、キャップ昇降機構88によりキャップ71を降下させると、キャップ71がノズル面4aから離れたアンキャップ状態となる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0020】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上記キャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0021】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0022】
また、メンテナンスユニット8では、上記アンキャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、キャップ71内のインクを排出させる空吸引を行うことができる。空吸引によって排出されたインクも廃液タンク73に貯留される。
【0023】
また、
図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77(本発明の「電圧印加部」)に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する判定用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の電圧(例えば600V程度)が印加される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。
【0024】
そして、第1実施形態では、高電圧電源回路77によって検出用電極76に電圧が印加された印加状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動させる検査用駆動を行わせることができる。
【0025】
インクジェットヘッド4と検出用電極76との間には電位差が生じているため、検査用駆動によってノズル10からインクが吐出されると、吐出されたインクは帯電している。そして、ノズル10から検出用電極76に向けてこの帯電したインクが吐出されると、検出用電極76の電位が変化する。一方、検査用駆動によってノズル10からインクが吐出されなかった場合には、検出用電極76の電位が変化しない。
【0026】
このように、第1実施形態では、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かによって、検査用駆動を行わせたときに検出用電極76の電位が変化するか否かが変わる。
【0027】
また、検出用電極76には、信号処理回路78が接続されている。信号処理回路78は、第1回路78aと第2回路78bとを有する。
【0028】
第1回路78aは、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの、検出用電極76の電圧に応じた信号(本発明の「非駆動時信号」)を出力するための回路である。第1回路78aは、検出用電極76の電圧の直流成分の大きさに応じた電圧を出力し続けるよう構成されている。より詳細には、第1回路78aは、例えば、検査用駆動が行われたときの検出用電極76における電圧の変化の周期成分をカットするフィルタ回路等を含み、第1回路78aから出力される信号は、検査用駆動による検出用電極76の電圧の変化をカットするよう構成されている。
【0029】
また、第1回路78aから出力される信号は、検出用電極76の直流成分の大きさの変化に応じて連続的に値が変化するアナログ信号であってもよいし、検出用電極76の直流成分に大きさの変化に応じて段階的に変化するデジタル信号であってもよい。
【0030】
第2回路78bは、検査用駆動が行われたときの検出用電極76の電圧の変化量に応じた信号を出力するための回路である。第2回路78bは微分回路等を含み、検出用電極76に電圧をかける制御信号に連動して微分回路に電源が供給され、検出用電極76の電圧の変化に応じて微分された信号が出力される。例えば、高電圧電源回路77によって検出用電極76に印加され、且つ、検査用駆動が行われていない状態である場合、及び、検査用駆動によってノズル10からインクが吐出されなかった場合に、
図3(a)に示すように、第2回路78bから出力される信号の値は一定のV0となる。検査用駆動によってノズル10からインクが吐出された場合には、
図3(b)に示すように、第2回路78bから出力される信号は、所定の周期で変化する信号となる。このとき、第2回路78bから出力される信号は、値がV0から最大値V1まで上昇し、その後、V0よりも小さい最小値V2まで降下し、その後、減衰しつつ増減を繰り返す信号となる。
【0031】
なお、第1実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と信号処理回路78とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。
【0032】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、メモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77等の動作を制御する。また、制御部80は、信号処理回路78(第1回路78a、第2回路78b)からの信号を受信する。
【0033】
また、プリンタ1は、以上で説明した構成のほかに、時計部70及び温度センサ69を備えている。時計部70は時刻を計時し、現在の時刻を示す時刻信号を出力する。制御部80は、時計部70から時刻信号を受信する。温度センサ69は温度を検出し、温度を示す温度信号を出力する。制御部80は、温度センサ69から温度信号を受信する。
【0034】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0035】
<記録指令の受信時の処理>
次に、記録用紙Pに記録を行うことを指示する記録指令を受信したときに制御部80が行う処理について説明する。記録指令を受信したときに、制御部80は、キャップ昇降機構88を制御してキャップ71を降下させることによってアンキャップ状態とする。その後、制御部80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Pへの記録を行わせる。
【0036】
<検査指示信号の受信時の処理>
次に、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときに制御部80が行う処理について説明する。検査指示信号を受信したときに、制御部80は
図5のフローに沿って処理を行う。例えば、ユーザが、プリンタ1の図示しない操作部、プリンタに接続されたPC等を操作して、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示したときに、操作部、PC等から検査指示信号が送信され、制御部80がこの検査指示信号を受信する。あるいは、所定時刻になる毎に異常ノズルであるか否かの検査を行うように設定されている場合に、時計部76から所定時刻となったことを示す信号が送信されたときに、制御部80がこの信号を検査指示信号として受信する。
【0037】
図5のフローについてより詳細に説明すると、検査指示信号を受信したときに、制御部80は、キャップ処理を実行する(S101)。キャップ処理では、制御部80は、キャップ昇降機構88を制御して、キャップ71を上昇させることにより、上記キャップ状態とする。ただし、キャップ処理の直前の時点でキャップ状態となっている場合には、S101のキャップ処理において、キャップ状態を維持する。以下のキャップ処理においても同様である。続いて、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76に電圧を印加させる(S102)。
【0038】
続いて、制御部80は、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かを判定する(S103、本発明の「リーク判定処理」)。ここで、第1実施形態では、キャップ71内のインクを介して検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしていることがある。この場合、キャップ状態で高電圧電源回路77によって検出用電極76に電圧が印加されると、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間に大きなリーク電流が流れ、ノズル10にダメージを与えてしまう。
【0039】
また、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間にリーク電流が流れているときには、リーク電流が流れていない場合と比較して、検出用電極76の電圧が低くなり、第1回路78aから出力される信号の値が小さくなる。したがって、S103では、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かに基づいて、上記リーク電流が流れているか否かを判定することができる。なお、閾値Vtは、メモリ84に記憶されている。
【0040】
第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt以上の場合には(S103:NO)、そのまま、S109に進む。第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満の場合には(S103:YES)、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76への電圧の印加を解除させる(S104)。続いて、制御部80は、空吸引処理を実行する(S105)。空吸引処理では、制御部80は、キャップ昇降機構88を制御して、キャップ71を降下させることによって上記アンキャップ状態としたうえで、吸引ポンプ72を駆動させることによって、上記空吸引を行わせる。
【0041】
続いて、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、再度、検出用電極76に電圧を印加させる(S106)。S105の空吸引処理において、アンキャップ状態とされているため、S106では、アンキャップ状態で検出用電極76に電圧を印加されることになる。そして、制御部80は、第1回路78aから出力される信号の値に基づいて、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する(S107)。S107では、制御部80は、閾値Vtを、第1回路78aから出力される信号の値よりも所定量大きい又は小さい値、すなわち、第1回路78aから出力される信号の値との差が所定量となる値に更新する。なお、第1実施形態では、S106,S107の処理が本発明の「更新処理」に相当する。そして、S107の処理の後、制御部80は、S101と同様のキャップ処理を実行してから(S108)、S109に進む。
【0042】
S109では、制御部80は、検査用駆動処理を実行する(S109)。検査用駆動処理では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、検査用駆動を行わせて第2回路78bから出力される信号を取得する。
【0043】
続いて、制御部80は、検査用駆動処理において取得した信号に基づいて、異常ノズルが存在するか否かを判定する(S110)。異常ノズルが存在しない場合には(S110:NO)、そのまま処理を終了する。異常ノズルが存在する場合には(S110:YES)、制御部80は、パージ処理を実行し(S111)、処理を終了する。パージ処理では、制御部80は、吸引ポンプ72等を制御して、吸引パージを行わせる。
【0044】
<効果>
第1実施形態では、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加したときの、検出用電極76の電圧に応じて、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かに応じて、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間にリーク電流が流れているか否かを判定することができる。また、第1実施形態では、検査用駆動が行われない所定タイミングに、第1回路78aから出力される信号に基づいてメモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、環境が変化した場合などにも、閾値Vtを、検出用電極76とインクジェットヘッド4との間にリーク電流が流れているか否かの判定に適切なものとすることができる。
【0045】
また、第1実施形態では、キャップ状態で検査用駆動を行わせることにより、検査用駆動の際に検出用電極76とインクジェットヘッド4を近づけることができる。これにより、検査用駆動を行わせたときの検出量電極76における電気的な変化を大きくすることができる。また、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときには、アンキャップ状態として検出用電極76に電圧を印加する。したがって、キャップ状態で検出用電極76に電圧を印加させると大きなリーク電流が流れてしまうような状況でも、閾値Vtを適切な値に更新することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する際に、閾値Vtを、第1回路78aから出力される信号の値との差が所定量となる値に更新する。これにより、閾値Vtをリーク電流が流れているか否かを判定するのに適切な値とすることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、信号処理回路78が、高電圧電源回路77により検出用電極76に印加された電圧(検出用電極76の電圧の直流成分)に応じた信号を出力する第1回路78aと、検査用駆動による検出用電極76の所定周期での電圧の変化に応じた信号を出力する第2回路78bとを有する。これにより、リーク電流が流れているか否かの判定に用いる検出用電極76の電圧の直流成分の変化の信号と、異常ノズルであるか否かの判定に用いる検出用電極76の電圧の所定周期での変化の信号とを分離して取得することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、S103において、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt以上であり、リーク電流が流れていると判定される場合、実際にリーク電流が流れている場合と、実際にはリーク電流が流れていないが閾値Vtが現在の環境に適切でないために誤ってリーク電流が流れていると判定されてしまう場合とがある。そこで、第1実施形態では、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt以上であり、リーク電流が流れていると判定された直後に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、メモリ84に記憶されている閾値Vtが現在の環境に適切でない場合に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを適切なものに更新することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。第2実施形態も、第1実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。ただし、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図6のフローに沿って処理を行う。
【0050】
より詳細に説明すると、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、第1実施形態と同様、S101,S102の処理を実行する。そして、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt以上の場合には(S103:NO)、S109に進む。第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満の場合には(S103:YES)、第1実施形態と同様、S104,S105の処理を実行する。ただし、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、その後、閾値Vtを更新するためのS106,S107の処理を実行せず、代わりにS201,S202の処理を順に実行する。
【0051】
S201では、制御部80は、S108と同様のキャップ処理を実行する。S202では、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76に電圧を印加させる(S202)。そして、その後、制御部80は、第1実施形態と同様、S109~S111の処理を実行する。
【0052】
また、第2実施形態では、プリンタ1の製造時にメモリ84に閾値Vtの初期値が記憶され、その後、インクジェットヘッド4等にインクが導入される。そして、インクジェットヘッド4等へのインクの導入時に、制御部80が
図7のフローに沿って処理を行う。
【0053】
より詳細に説明すると、制御部80は、インク導入処理を実行する(S301)。インク導入処理では、制御部80は、吸引パージを行わせることによって、インクジェットヘッド4内にインクを導入させる。
【0054】
続いて、制御部80は、アンキャップ処理を実行し(S302)、高電圧電源回路77を制御して検出用電極76に電圧を印加させる(S303)。S302のアンキャップ処理では、制御部80は、キャップ昇降機構88を制御してキャップ71を降下させることによってアンキャップ状態にする。そして、この状態で、S107と同様に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新させる(S304)。その後、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76への電圧の印加を解除させ(S305)、処理を終了する。
【0055】
<効果>
第2実施形態では、インクジェットヘッド4へのインクの導入が完了したときに、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、メモリ84に記憶されている閾値Vtをインクジェットヘッド4へのインクの導入の完了時の環境に適切なものとすることができる。
【0056】
また、第2実施形態では、吸引パージを行わせることによってインクジェットヘッド4内にインクを導入させたが、これには限られない。例えば、プリンタ1の製造設備に設けられた専用の装置を用いてインクジェットヘッド4内にインクを導入させ、インクジェットヘッド4へのインクの導入後に、制御部80がS302~S305の処理を実行するようにしてもよい。
【0057】
[第3実施形態]
次に、本発明の好適な第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1、第2実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第3実施形態では、第2実施形態と同様、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図6のフローに沿って処理を行う。
【0058】
また、第3実施形態では、第2実施形態異なり、プリンタ1の製造時にインクジェットヘッド4等にインクを導入せず、代わりにインクとは種類の異なる保存液を導入している。そして、初回のプリンタ1の使用時、すなわち、プリンタ1において最初に、カートリッジホルダ13にインクカートリッジ14が装着され、且つ、電源がオンにされた状態となったときに、制御部80が
図8のフローに沿って処理を行う。
【0059】
より詳細に説明すると、制御部80は、初期導入処理を実行する(S401)。初期導入処理では、制御部80は、吸引パージを行わせることによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内の保存液を排出させるとともに、インクカートリッジ14からインクジェットヘッド4にインクを導入させる初期導入を行わせる。そして、初期導入の後、制御部80は、S301~S304と同様の、S402~S405の処理を実行する。
【0060】
<効果>
第3実施形態では、初期導入が完了した直後に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、メモリ84に記憶されている閾値Vtを初期導入直後の環境に適切なものとすることができる。
【0061】
[第4実施形態]
次に、本発明の好適な第4実施形態について説明する。第4実施形態も、第1~第3実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第4実施形態でも、第2、第3実施形態と同様、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図6のフローに沿って処理を行う。
【0062】
また、第4実施形態では、プリンタ1に電力が供給されている間、制御部80が
図9のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御部80は、前回メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新してから所定時間が経過するまでは待機している(S501:NO)。そして、前回メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新してから所定時間が経過したときに(S501:YES)、制御部80は、S301~S304と同様のS502~S505の処理を実行することによって、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。すなわち、第4実施形態では、所定時間が経過する毎に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。
【0063】
<効果>
第4実施形態では、所定時間が経過する毎に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、メモリ84に記憶されている閾値Vtを、時間の経過による環境の変化に応じた適切なものとすることができる。
【0064】
[第5実施形態]
次に、本発明の好適な第5実施形態について説明する。第5実施形態も、第1~第4実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第5実施形態でも、第2~第4実施形態と同様、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図6のフローに沿って処理を行う。
【0065】
また、第5実施形態では、プリンタ1に電力が供給されている間、制御部80が
図10のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御部80は、前回吸引パージが行われてから所定時間が経過するまでは待機している(S601:NO)。そして、前回吸引パージが行われてから所定時間が経過したときに(S601:YES)、制御部80は、S111と同様のパージ処理を実行し、その後、S301~S304と同様のS603~S606の処理を実行することによって、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。すなわち、第5実施形態では、定期的に吸引パージが行われ、定期的に吸引パージが行われる際に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。
【0066】
<効果>
第5実施形態では、定期的な吸引パージを行わせており、定期的な吸引パージを行うタイミングに、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、メモリ84に記憶されている閾値Vtを時間の経過による環境の変化に応じた適切なものとすることができる。
【0067】
なお、第5実施形態では、S602のパージ処理の後に、S603~S606の処理を実行したが、S602のパージ処理の前に、S603~S606の処理を実行してもよい。
【0068】
[第6実施形態]
次に、本発明の好適な第6実施形態について説明する。第6実施形態も、第1~第5実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第6実施形態では、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図11のフローに沿って処理を行う。
【0069】
より詳細に説明すると、制御部80は、検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出される温度と、前回検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出される温度との温度差ΔTが所定値ΔTt以下である場合には(S701:NO)、キャップ処理を実行し(S702)、高電圧電源77を制御して検出用電極76に電圧を印加させ(S703)、S709に進む。
【0070】
温度差ΔTが所定値ΔTtよりも大きい場合には(S701:YES)、制御部80は、アンキャップ処理を実行し(S704)、高電圧電源77を制御して検出用電極76に電圧を印加させ(S705)、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新させる(S706)。続いて、制御部80は、温度センサ69によって検出された温度の情報を、メモリ84に記憶させる(S707)。その後、キャップ処理を実行してから(S708)、S709に進む。
【0071】
S709では、S103と同様、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vtよりも小さいか否かを判定する。第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vtよりも小さい場合には(S709:YES)、第1実施形態と同様にS109~S111の処理を実行する。
【0072】
第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt以上の場合には(S709:NO)、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して検出用電極76への電圧の印加を解除させ(S710)、空吸引処理を実行する(S711)。続いて、制御部80は、キャップ処理を実行してから(S712)、高電圧電源回路77を制御して、再度、検出用電極76に電圧を印加させる(S713)。そして、その後、第1実施形態と同様にS109~S111の処理を実行する。
【0073】
<効果>
第6実施形態では、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かに基づいてリーク電流が流れているか否かを判定する直前に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。したがって、メモリ84に記憶されている閾値Vtを、リーク電流が流れているか否かを判定するときの環境に適切なものとすることができる。
【0074】
また、温度が大きく変化したときには、適切な閾値Vtが変化している可能性が高い。そこで、第6実施形態では、検査指示信号を受信したときの温度と、前回メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新したときの温度との温度差ΔTが所定温度差ΔTt以上の場合に、リーク電流が流れているか否かを判定する直前に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、前回の閾値Vtの更新時から温度が大きく変化しており、適切な閾値Vtが変化している可能性が高いときには、閾値Vtをリーク電流が流れているか否かを判定するときの環境に適切なものに更新したうえで、リーク電流が流れているか否かを判定することができる。一方、前回の閾値Vtの更新時から温度がそれほど変化しておらず、適切な閾値Vtが変化している可能性が低い場合に不必要な閾値Vtの更新を行わないようにすることができる。
【0075】
[第7実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。第7実施形態も、第1~第6実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第7実施形態では、制御部80が、検査指示信号を受信したときに、
図12(a)のフローに沿って処理を行う。
図12(a)のフローは、
図11のフローにおいて、S701をS801に置き換えたものである。
【0076】
ここで、第7実施形態では、メモリ84に、
図12(b)に示すような、複数種類の温度範囲の情報が記憶されている。そして、S801では、制御部80は、
図12(b)に示す複数種類の温度範囲のうち、検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出される温度を含む温度を含む温度範囲が、前回検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出される温度を含む温度範囲から変化しているか否かを判定する。そして、温度範囲が変化していない場合には(S801:NO)、S702に進む。また、温度範囲が変化している場合には(S801:YES)、S704に進む。
【0077】
また、第7実施形態では、S707において温度センサ69によって検出された温度の情報を記憶させており、この温度の情報と
図12(b)のテーブルとから、温度センサ69によって検出された温度を含む温度範囲を取得することができる。すなわち、第7実施形態では、S707でメモリ84に記憶させる温度の情報が、温度範囲の情報を示すものとなっている。ただし、第7実施形態では、S707において、温度センサ69によって検出された温度の情報の代わりに、温度センサ69によって検出された温度を含む温度範囲そのものの情報をメモリ84に記憶させてもよい。
【0078】
<効果>
第7実施形態では、第1回路78aから出力される信号の値Vが閾値Vt未満であるか否かに基づいてリーク電流が流れているか否かを判定する直前に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。したがって、メモリ84に記憶されている閾値Vtを、リーク電流が流れているか否かを判定するときの環境に適切なものとすることができる。
【0079】
また、温度が大きく変化したときには、適切な閾値Vtが変化している可能性が高い。そこで、第7実施形態では、検査指示信号を受信したときの温度を含む温度範囲と、前回の閾値Vtの更新時の温度を含む温度範囲とが異なる場合に、リーク電流が流れているか否かを判定する直前に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、前回の閾値Vtの更新時から温度が大きく変化しており、適切な閾値Vtが変化している可能性が高いときには、閾値Vtをリーク電流が流れているか否かを判定するときの環境に適切なものに更新したうえで、リーク電流が流れているか否かを判定することができる。一方、前回の閾値Vtの更新時から温度がそれほど変化しておらず、適切な閾値Vtが変化している可能性が低い場合に不必要な閾値Vtの更新を行わないようにすることができる。
【0080】
[第8実施形態]
次に、本発明の好適な第8実施形態について説明する。第8実施形態も、第1~第7実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第8実施形態では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、第2、第3実施形態と同様、
図6のフローに沿って処理を行う。また、第7実施形態では、制御部80が、記録指令を受信したときに、
図13のフローに沿って処理を行う。
【0081】
より詳細に説明すると、制御部80は、記録指令を受信したときに、アンキャップ処理を実行し(S901)、高電圧電源回路77を制御して検出用電極76に電圧を印加させる(S902)。そして、S107と同様に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新させる(S903)。その後、制御部80は、高電圧電源回路77を制御して、検出用電極76への電圧の印加を解除させ(S904)、記録処理を実行する(S905)。記録処理では、制御部80は、第1実施形態で説明したように、記録パスと搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Pへの記録を行わせる。
【0082】
<効果>
ここで、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときにはアンキャップ状態として、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加する。一方、記録用紙Pへの記録を行うときには、キャップ状態からアンキャップ状態への切り換えを行う必要がある。そこで、第8実施形態では、記録用紙Pへの記録を行うタイミングで、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、記録用紙Pへの記録を行うときの、キャップ状態からアンキャップ状態への切り換えを利用して、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新することができる。
【0083】
[第9実施形態]
次に、本発明の好適な第9実施形態について説明する。第9実施形態も、第1~第8実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第9実施形態では、制御部80は、検査指示信号として、時計部76から送信される所定時刻となったことを示す時刻信号、及び、プリンタ1の図示しない操作部、PC等から送信される、上記時刻信号とは別の検査指示信号を受信する。
【0084】
また、第9実施形態では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、
図14のフローに沿って処理を行う。また、第9実施形態では、制御部80は、記録指令を受信したときに、
図15のフローに沿って処理を行う。
【0085】
図14のフローについて詳細に説明すると、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、まず、受信した検査指示信号が、所定時刻となったことを示す時刻信号であるか否かを判定する(S1001)。
【0086】
受信した検査指示信号が、所定時刻となったことを示す時刻信号である場合には(S1001:YES)、制御部80は、第7、第8実施形態と同様のS702,S703の処理を実行し、その後、S709~S713,S109,S110の処理を実行する。受信した検査指示信号が、所定時刻となったことを示す時刻信号でない場合には(S1001:NO)、制御部80は、第7、第8実施形態と同様のS704~S706,S708の処理を実行し、その後、S709~S713,S109,S110の処理を実行する。
【0087】
また、第9実施形態では、S110において異常ノズルが存在しないと判定された場合には(S110:NO)、そのまま処理を終了する。
【0088】
また、S110において異常ノズルが存在しないと判定され(S110:YES)、且つ、受信した検査指示信号が、所定時刻となったことを示す時刻信号である場合には(S1002:YES)、制御部80は、メモリ84に回復フラグを記憶させ(S1003)、処理を終了する。
【0089】
また、S110において異常ノズルが存在しないと判定され(S110:YES)、且つ、受信した検査指示信号が、所定時刻となったことを示す時刻信号でない場合には(S1002:NO)、制御部80はパージ処理を実行し(S1004)、処理を終了する。
【0090】
図15のフローについてより詳細に説明すると、制御部80は、記録指令を受信したときに、メモリ84に回復フラグが記憶されていない場合には(S1101:NO)、S905と同様の記録処理を実行する(S1104)。
【0091】
メモリ84に回復フラグが記憶されている場合には(S1101:YES)、制御部80は、パージ処理を実行し(S1102)、メモリ84に記憶されている回復フラグを消去してから(S1103)、記録処理を実行する(S1104)。
【0092】
<効果>
第9実施形態では、所定時刻となる毎に異常ノズルであるか否かの検査が行われる。この場合、所定時刻は例えば深夜などプリンタ1が使用されない時間帯に設定されることが多い。一方、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときには、キャップ状態からアンキャップ状態に切り換える必要があり、このときのキャップ71の移動によってある程度大きな音が発生する。これらのことから、第9実施形態と異なり、所定時刻にメモリ84に記憶されている閾値Vtを更新すると、騒音が問題となることがある。
【0093】
そこで、第9実施形態では、検査指示信号として、所定時刻となったことを示す時刻信号を受信したときには、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新せず、前回の更新によってメモリ84に記憶された閾値Vtを用いて、リーク電流が流れているか否かを判定する。一方、所定時刻となったことを示す時刻信号とは別の検査指示信号を受信したときには、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新し、更新後の閾値Vtを用いてリーク電流が流れているか否かを判定する。
【0094】
[第10、第11実施形態]
次に、本発明の好適な第10、第11実施形態について説明する。第10、第11実施形態も、第1~第9実施形態と同様、プリンタ1に係るものである。また、第10、第11実施形態では、例えばプリンタ1の製造時などに、そのときの温度の情報と、この温度に応じて設定された閾値Vtとがメモリ84に記憶されている。そして、第10、第11実施形態では、検査指示信号を受信したときに、
図16のフローに沿って処理を行う。
【0095】
より詳細に説明すると、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、温度センサ69によって検出された温度と、前回のメモリ84に記憶されている閾値Vtの更新時に温度センサ69によって検出された温度との温度差に基づいて、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新し(S1201)、温度センサ69によって検出された温度の情報をメモリ84に記憶させる(S1202)。そして、S1201,S1202の処理の後、制御部80は、第2実施形態と同様、S101~S105,S201,S202,S109~S111の処理を実行する。
【0096】
ただし、第10実施形態と第11実施形態とで、S1201における閾値Vtの更新の方法が異なる。
【0097】
より詳細に説明すると、第10実施形態では、メモリ84に、
図17(a)に示すような、検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出された温度から、前回のメモリ84に記憶されている閾値Vtの更新時に温度センサ69によって検出された温度を差し引いた温度変化量ΔTの範囲と、閾値Vtの変化量ΔVtとを関連付けたテーブルが記憶されている。
【0098】
ここで、
図17(a)において変化量ΔVtについて、正の値が閾値Vtを増加させることを示し、負の値が閾値Vtを減少させることを示し、±0が閾値Vtを変化させないことを示している。また、
図17(a)では、ΔVt1,ΔVt2は、|ΔVt2|>|ΔVt1|>0の大小関係にある。
【0099】
そして、第10実施形態では、S1201において、検査指示信号を受信したときの上記温度変化量ΔTと
図16(b)のテーブルとに基づいて、閾値Vtの変化量ΔVtを決定し、メモリ84に記憶されている閾値Vtを、現在の値から変化量ΔVt変化させた値に更新する。
【0100】
一方、第11実施形態では、メモリ84に、第7実施形態と同様、
図12(b)に示すような、複数種類の温度範囲の情報が記憶されている。また、第11実施形態では、メモリ84に、
図17(b)に示すような、検査指示信号を受信したときに温度センサ69によって検出された温度を含む温度範囲の、前回のメモリ84に記憶されている閾値Vtの更新時に温度センサ69によって検出された温度を含む温度範囲からの変化量と、閾値Vtの変化量ΔVtとを関連付けたテーブルが記憶されている。
【0101】
そして、第11実施形態では、S1201において、検査指示信号を受信したときの上記温度範囲の変化量と
図17(b)のテーブルとに基づいて、閾値Vtの変化量ΔVtを決定し、メモリ84に記憶されている閾値Vtを、現在の値から変化量ΔVt変化させた値に更新する。
【0102】
なお、第11実施形態では、S1202において、第7実施形態と同様、温度センサ69によって検出された温度の情報を記憶させる代わりに、温度センサ69によって検出された温度を含む温度範囲の情報を記憶させてもよい。
【0103】
<効果>
温度によって適切な閾値が変わる。そこで、第10実施形態では、検査指示信号を受信したときの温度と、前回の閾値Vtの更新時の温度との温度差ΔTに基づいて、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、閾値Vtを温度に応じた適切なものとすることができる。また、第11実施形態では、検査指示信号を受信したときの温度を含む温度範囲の、前回の閾値Vtの更新時の温度を含む温度範囲からの変化に基づいて、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する。これにより、閾値Vtを温度に応じた適切なものとすることができる。
【0104】
<変形例>
以上、本発明の好適な第1~第11実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0105】
第6、第7実施形態では、検査指示信号を受信したときの温度が、前回の閾値Vtの更新時の温度から大きく変化しているときにのみ、リーク電流が流れているいか否かを判定する直前に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新したが、これには限られない。例えば、リーク電流が流れているいか否かを判定する直前に、常に、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するようにしてもよい。
【0106】
また、第8実施形態では、記録用紙Pへの記録を行うタイミングで、記録時のキャップ状態からアンキャップ状態への切り換えを利用して、メモリ84に記憶されている閾値Vtの更新を行ったが、これには限られない。キャップ状態からアンキャップ状態への切り換えを含む記録用紙Pへの記録以外の所定動作のタイミングに、所定動作におけるキャップ状態からアンキャップ状態への切り換えを利用して、メモリ84に記憶されている閾値Vtの更新を行ってもよい。
【0107】
また、第1~第11実施形態では、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するタイミングについての種々の例について説明したが、これらのうち2種類以上のタイミングでメモリ84に記憶されている閾値Vtを更新してもよい。
【0108】
また、以上の例では、信号処理回路78が、第1回路78aと第2回路78bとを有するものであったが、これには限られない。例えば、信号処理回路78は、高電圧電源回路77により検出用電極76に印加された電圧(直流成分)の変化と、検査用駆動による検出用電極76の電圧の変化とに応じた信号を出力するものであってもよい。
【0109】
また、以上の例では、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する際に、閾値Vtを、第1回路78aから出力される信号の値との差が所定量となる値に更新したが、これには限られない。例えば、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新する際に、閾値Vtを、第1回路78aから出力される信号の値と同じ値に更新してもよい。
【0110】
また、第1~第8、第10、第11実施形態で異常ノズルが存在する場合、及び、第9実施形態で、異常ノズルが存在し、且つ、検査指示信号が所定時刻となったことを示す時刻信号以外の信号である場合に、直ちに吸引パージを行う。また、第9実施形態で、異常ノズルが存在し、且つ、検査指示信号が所定時刻となったことを示す時刻信号である場合に、メモリ84に回復フラグを記憶させ、記録指令を受信したときに、メモリ84に回復フラグが記憶されている場合に、吸引パージを行わせてから、記録用紙Pへの記録を行わせたが、これには限られない。
【0111】
例えば、第1~第8、第10、第11実施形態で異常ノズルが存在する場合に、メモリ84に回復フラグを記憶させ、記録指令を受信したときに、メモリ84に回復フラグが記憶されている場合に、吸引パージを行わせてから、記録用紙Pへの記録を行わせてもよい。また、第9実施形態で、異常ノズルが存在する場合に、検査指示信号が所定時刻となったことを示す時刻信号であるか否かによらず、直ちに吸引パージを行わせてもよい。あるいは、第9実施形態で、異常ノズルが存在する場合に、検査指示信号が所定時刻となったことを示す時刻信号であるか否かによらず、メモリ84に回復フラグを記憶させ、記録指令を受信したときに、メモリ84に回復フラグが記憶されている場合に、吸引パージを行わせてから、記録用紙Pへの記録を行わせてもよい。
【0112】
また、以上の例では、検査用駆動を行わせるときには、キャップ状態で検出用電極76に電圧を印加し、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときには、アンキャップ状態として検出用電極76に電圧を印加したが、これには限られない。例えば、検査用駆動を行わせるとき、及び、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときのいずれにおいても、キャップ状態で検出用電極76に電圧を印加してもよい。あるいは、検査用駆動を行わせるとき、及び、メモリ84に記憶されている閾値Vtを更新するときのいずれにおいても、アンキャップ状態で検出用電極76に電圧を印加してもよい。
【0113】
また、以上の例では、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させ、インクジェットヘッド4を駆動させていないときの検出用電極76の電圧に応じた信号の値Vが閾値Vt以上のとき、すなわち、リーク電流が流れていると判定したときに、空吸引を行わせることで、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしなくなるようにしてから検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、プリンタにノズル面4aに付着したインクを拭き取るためのワイパーを設け、リーク電流が流れていると判定したときに、ワイパーにノズル面4aを拭き取らせることによって、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしなくなるようにしてから検査用駆動を行わせてもよい。あるいは、リーク電流が流れていると判定したときに、検出用電極76とインクジェットヘッド4とがショートしなくなるようにするための動作を行わせずに、検査用駆動を行わせることなく処理を終了してもよい。
【0114】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、一律の吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、異常ノズルの数が多い場合ほど、インクの排出量の多い吸引パージを行わせるなどしてもよい。
【0115】
また、以上の例では、パージとして吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。
【0116】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。
【0117】
また、パージによって異常ノズルを回復させることにも限られない。例えば、インクジェットヘッド4を制御して、少なくとも異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせることによって異常ノズルを回復させてもよい。また、パージとフラッシングとによって異常ノズルを回復させてもよい。
【0118】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、制御部80が自動的に吸引パージなどを行わせて異常ノズルを回復させたが、これには限られない。例えば、異常ノズルが存在する場合に、その旨をユーザに報知して吸引パージを行うか否かを選択させてもよい。そして、ユーザにより吸引パージを行うことが選択された場合に、吸引パージを行わせてもよい。
【0119】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、検査用駆動を行わせたノズル10が異常ノズルであるか否かの判定結果に基づいて、異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0120】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルとしたが、これには限られない。例えば、インクの吐出方向に異常のあるノズル10など、吐出されたか否か以外の異常のあるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0121】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0122】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0123】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
10 ノズル
14 インクカートリッジ
69 温度センサ
70 時計部
71 キャップ
76 検出用電極76
77 高電圧電源回路
78 信号処理回路
78a 第1回路
78b 第2回路
79 抵抗
80 制御部
84 メモリ
88 キャップ昇降機構