(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158122
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】建築物用の断熱防水構造および断熱防水方法
(51)【国際特許分類】
E04D 11/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
E04D11/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062816
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】505015587
【氏名又は名称】株式会社日本アクア
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】中村 文隆
(72)【発明者】
【氏名】永田 和久
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄哉
(57)【要約】
【課題】施工性および品質の向上が可能な建築物の断熱防水の構造および方法を提供する。
【解決手段】建築物の躯体や内外装材の表面である対象面Aに直接又は間接的に設ける、現場発泡式のウレタンフォームからなる断熱層10と、断熱層10上に設けるポリウレア系樹脂からなる防水層20と、防水層20上に設ける骨材31を混合した防水材からなる骨材防水層30と、骨材防水層30上に設けるトップコート層40とを少なくとも有して構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に直接又は間接的に設ける、現場発泡式のウレタンフォームからなる、断熱層と、
前記断熱層上に設ける、ポリウレア系樹脂からなる、防水層と、
前記防水層上に設ける、骨材を混合した防水材からなる、骨材防水層と、
前記骨材防水層上に設ける、トップコート層と、
を少なくとも有することを特徴とする、
建築物用の断熱防水構造。
【請求項2】
建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に直接又は間接的に、現場発泡式のウレタンフォームからなる断熱層を形成する工程と、
前記断熱層上にポリウレア系樹脂からなる防水層を設ける工程と、
前記防水層上に骨材を混合した防水材からなる骨材防水層を設ける工程と、
前記骨材防水層上にトップコート層を設ける工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、
建築物用の断熱防水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に適用する断熱防水構造および断熱防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に適用する断熱防水構造として、例えば以下の非特許文献に記載の技術が知られている。
非特許文献1に記載される「SPRF工法」では、躯体表面に配置するウレタンボードやポリスチレンボードなどからなる平板状の断熱材と、当該断熱材の表面に配置する絶縁シートと、前記断熱材および絶縁シートを躯体に機械的に固定するためのアンカーと、その上に超速硬化ウレタンを吹き付けてなる防水層と、当該防水層上に設けるトップコート層とを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://www.dyflex.co.jp/free_document/fileshare/catalog/%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%80%90%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%80%91.pdf 「超速硬化ウレタン防水システム クイックスプレー 10頁目「SPRF工法」」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の断熱防水構造では、以下に記載する課題のうち少なくとも何れか1つの課題を有していた。
(1)対象面に断熱材を機械的に固定するべく、下地、断熱材、絶縁シートへの穴あけ作業や、アンカーの打込み作業、アンカーの端部処理などの諸工程が必要となる。
(2)平板状の断熱材を敷設する場合、断熱材間に継ぎ目が発生するため、メッシュテープなどで補強する作業が発生する。
(3)断熱材間の継ぎ目部分が断熱欠損部となる。
(4)躯体形状に合わせるための断熱材の切断作業が発生する。
(5)斜面に断熱材を敷設する際に断熱材の仮止め等の追加作業や施工手順に制約が生まれる。
(6)斜面での適用時には施工後の表面が特に滑りやすくなる。
【0005】
よって、本発明は、建築物の断熱防水構造において、施工性および品質の向上が可能な手段の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、建築物用の断熱防水構造であって、建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に直接又は間接的に設ける、現場発泡式のウレタンフォームからなる、断熱層と、前記断熱層上に設ける、ポリウレア系樹脂からなる、防水層と、前記防水層上に設ける、骨材を混合した防水材からなる、骨材防水層と、前記骨材防水層上に設ける、トップコート層と、を少なくとも有することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、建築物用の断熱防水方法であって、建築物の躯体や内外装材の表面である対象面に直接又は間接的に、現場発泡式のウレタンフォームからなる断熱層を形成する工程と、前記断熱層上にポリウレア系樹脂からなる防水層を設ける工程と、前記防水層上に骨材を混合した防水材からなる骨材防水層を設ける工程と、前記骨材防水層上にトップコート層を設ける工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)現場発泡式のウレタンフォームを用いて断熱層を形成するため、ウレタンフォームが具備する自己接着力によって、躯体や内外装材などの施工対象に対し、機械的な固定作業が不要となる。
(2)現場発泡式のウレタンフォームを用いて継ぎ目のない断熱層を形成できるため、継ぎ目の補強作業が不要となる。
(3)現場発泡式のウレタンフォームを用いて継ぎ目のない断熱層を形成できるため、継ぎ目による断熱欠損の問題が生じない。
(4)建築物の躯体形状に対し、施工上の制約を受けない。
(5)斜面での適用に際し、施工上の制約を受けない。
(6)トップコート層の直下に骨材防水層を設けることで、防滑性を付与できる。
(7)防水層と骨材防水層とを別々に設けることで、防水層を摩耗から保護できる。また、骨材防水層が摩耗により薄くなってきた場合、骨材防水層以降を施工するだけで構造を維持できる。
(8)トップコート層に骨材を配合する際には、トップコート層の層厚が薄いことから骨材の粒径も必然的に小さくせざるを得ないところ、トップコート層よりも層厚の大きな骨材防水層を別途設けることで、骨材の粒径を大きくでき、施工後の使用に伴う骨材の摩耗に対する耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る断熱防水構造の全体構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係る断熱構造は、建築物の躯体や内外装材などの施工対象の表面である対象面から順に、断熱層10、防水層20、骨材防水層30、およびトップコート層40と、を少なくとも有して構成する。
本発明に係る断熱構造の施工対象は、屋内、屋外の如何を問わず、建築物の躯体や内外装材等として、コンクリート製の床スラブや壁材、工場等の屋根材、地下ピット、ALCパネルなどの外壁材、駐車場のアスファルト下地などが含まれる。
以下、各層の詳細について説明する。
【0011】
<2>断熱層(
図1)
断熱層10は、断熱効果を発揮するための層である。
本発明では、断熱層10を、ポリイソシアネート化合物からなる主剤とポリオール化合物からなる硬化剤とを、吹き付け機および吹き付けガンを用いて現場で混合吹き付けしてなるウレタンフォームで形成する。
本発明に係る断熱層10を形成するウレタンフォームは、JIS A9526のA種1~3、B種等の独立気泡構造硬質ウレタンフォームに代表される、断熱材として使用される公知のウレタンフォームを用いることができる。
また、本発明では、断熱層10の層厚t1は10mm~30mm程度を想定する。
【0012】
<3>防水層(
図1)
防水層20は、防水効果を発揮するための材料層である。
本発明では、防水層20を、ウレタン樹脂系やポリウレア系樹脂などの一般的な防水樹脂材料で構成し、断熱層10の直上に、塗布または吹き付け等によって形成する。
防水樹脂材料の吹き付け作業には、吹き付け機および吹き付けガンを用いる事ができる。
防水層20に、ポリウレア系樹脂を用いると、高い強度と防水性を両立できる点で好ましい。
本発明においてポリウレア系樹脂は、ポリウレア樹脂だけでなく、ウレタン結合とウレア結合の両者を有するポリウレアウレタン樹脂も含まれる。
ポリウレアウレタン樹脂は、比較的高い強度と柔軟性を有し、防水性の面からも好ましい。
本発明では、防水層の層厚t2は1.5mm~2.5mm程度を想定する。
【0013】
<4>骨材防水層(
図1)
骨材防水層30は、防水効果と防滑効果を発揮するための材料層である。
本発明では、骨材防水層30を、骨材31を混合した防水材を塗布または吹き付け等によって形成する。
骨材防水層30を構成する防水材には、前記した防水層20に使用可能な防水樹脂材料を用いることができる。
骨材31を混合した防水材の吹き付け作業は、防水材用の吹き付け機および吹き付けガンと、骨材供給装置との併用でもって実施することができる。
本発明では、骨材防水層30の層厚t3は1mm~2mm程度を想定する。
【0014】
<4.1>骨材(
図1)
骨材31は、滑り止め機能を発揮するための材料である。
骨材31は、滑り止め効果を発揮できる公知の材料から適宜選択することができる。
骨材31の平均粒径は、摩耗に対する耐久期間を確保する観点から、骨材防水層30の層厚と同等程度、若しくはそれ以上とすることが好ましい。
【0015】
<4.2>防水材
骨材防水層30を構成する防水材は、防水層20でも説明したとおり、ウレタン樹脂系やポリウレア系樹脂(ポリウレア樹脂、ポリウレアウレタン樹脂)などの一般的な防水樹脂材料で構成する。防水材を構成する材料は、防水層で用いる材料と同一でも異なるものであってもよい。
【0016】
<5>トップコート層(
図1)
トップコート層40は、骨材防水層30の表面を水分、紫外線、熱、塩害等から長期間保護するための材料層である。
トップコート層40に用いる材料は、ウレタン系、シリコン系、フッ素系等の、表面保護効果を発揮できる公知の材料から適宜選択することができる。
トップコート層40の層厚t4は0.15mm~0.25mmを想定する。
【0017】
<6>施工手順(
図1)
次に、本発明に係る断熱防水構造の形成手順の一例について説明する。
【0018】
(1)下地処理
まず、必要に応じて、前記した建築物の躯体や内外装材の表面である対象面の下地処理(水分除去、破損箇所補修、ゴミ除去等)を行う。
【0019】
(2)断熱層の形成工程
現場発泡式のウレタンフォームの混合吹き付け作業を行い、断熱層10を形成する。ウレタンフォームは高い自己接着力を有するため、対象面に強固に接着されるため、従来の平板状の断熱材の敷設作業のように、アンカーでの固定や、アンカー孔の形成などの作業が不要となる。
また、現場吹き付け式のウレタンフォームは、継ぎ目の発生もなく、対象面の形状や斜度にも影響を受ける事無く施工することができる。
断熱層10の表面は、できる限り平滑面とするべく、ガンの先端にフラットチップを使用して平滑に吹き付ける方法や、吹き付け後の断熱層10に対し、ベルトサンダーによる削り作業で平滑面を形成する方法などを採用すればよい。
また、断熱層10の圧縮強度を向上させるために、一度の吹き付け厚さを5~10mm程度とし、例えば厚み30mmの場合には6回を重ね吹きすることが好ましい。
【0020】
(3)防水層の形成工程
断熱層10が所望の層厚まで形成されたことを確認したのち、断熱層10に防水層20を積層形成する。
【0021】
(4)骨材防水層30の形成工程
防水層20が所望の層厚まで形成されたことを確認したのち、防水層20に骨材防水層30を積層形成する。
骨材防水層30の表面は、内部に混合してある骨材31の一部が露出して凹凸を形成した状態となる。
【0022】
(5)トップコート層の形成工程
骨材防水層30が所望の層厚まで形成されたことを確認したのち、骨材防水層30に、トップコート層40を積層形成する。
トップコート層40の層厚は比較的薄いことから、トップコート層40の形成後であっても、その表面は、直下の骨材防水層30における凹凸面が維持された状態となる。
【0023】
<7>従来工法との対比
同一条件で、従来工法と、本発明に係る工法(本願工法)で施工を行った場合の作業期間の対比結果を以下に示す。
【0024】
施工面積が200m2程度の現場において、各工法での作業時間や待機時間を累計すると、以下の通りとなった。
[1]従来工法:断熱材設置(6時間)+絶縁シート設置(13時間)+防水層施工(6時間)+トップコート施工(4時間)+待機時間(6時間)=計35時間
[2]本願工法:断熱材吹付け(3時間)+防水層吹付け(6時間)+骨材防水層吹付け(3時間)+トップコート施工(4時間)+待機時間(4時間)=計20時間
このように、本発明は、従来工法と比較して、個別の作業時間の累計を45%程度短縮でき、また作業期間に待機期間を含めた工期も43%短縮化することができた。