(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162508
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】摩擦材料
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221017BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20221017BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C09K3/14 520M
C09K3/14 520H
C09K3/14 520J
C09K3/14 530G
F16D69/02 B
F16D13/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021091792
(22)【出願日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】17/227,677
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】フェン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ワンジュン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】遠山 和幸
【テーマコード(参考)】
3J056
3J058
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056EA26
3J056EA30
3J056GA12
3J058BA46
3J058FA01
3J058GA04
3J058GA07
3J058GA23
3J058GA27
3J058GA31
3J058GA73
3J058GA78
3J058GA82
3J058GA93
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多様な異なる湿式クラッチ用途において、改良された性能を有する摩擦材料を提供する。
【解決手段】摩擦材料は、摩擦発生表面及び摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する。摩擦材料は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維及び摩擦材料全体に配された樹脂を含む。摩擦材料は、粒子を実質的に含まず、且つ5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦発生表面及び前記摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する摩擦材料であって、
0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、
1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維、及び
前記摩擦材料全体に配された樹脂
を含み、
粒子を実質的に含まず、及び
5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定する、摩擦材料。
【請求項2】
前記複数の細孔は、7~13μmのD10値、15~23μmのD50値及び34~46μmのD90値を有する孔径分布を有する、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項3】
前記枝分かれしていない繊維は、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、鉱物質繊維、フェノール系繊維、ポリビニルアルコール繊維及びそれらの組合せから選択される、請求項1又は2に記載の摩擦材料。
【請求項4】
前記枝分かれした繊維は、アクリル繊維、アラミド繊維、セルロース繊維及びそれらの組合せから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項5】
前記枝分かれした繊維は、10~700のフィブリル化のカナダ標準形濾水(CSF)度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項6】
前記枝分かれしていない繊維は、1~25μmの直径及び0.5~10mmの長さを有し、及び
前記枝分かれした繊維は、2~20μmの直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項7】
前記枝分かれしていない繊維及び前記枝分かれした繊維は、前記摩擦材料中において1:5~1:1の体積比で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項8】
前記枝分かれしていない繊維及び前記枝分かれした繊維は、集合的に、前記摩擦材料中において、前記摩擦材料のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90重量パーセント超の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項9】
前記樹脂は、前記摩擦材料中において、前記摩擦材料のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして45~120重量パーセントの量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項10】
粒子を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項11】
複数の細孔を画定し、且つ摩擦発生表面及び前記摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する摩擦材料であって、
0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、
1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維、及び
前記摩擦材料全体に配された樹脂
を含み、
前記枝分かれしていない繊維及び前記枝分かれした繊維は、前記摩擦材料中において1:5~1:1の体積比で存在し、且つ集合的に、前記摩擦材料のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90重量パーセント超の量で存在する、摩擦材料。
【請求項12】
前記複数の細孔は、5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する、請求項11に記載の摩擦材料。
【請求項13】
摩擦発生表面及び前記摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する摩擦材料であって、
0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、
1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維、及び
前記摩擦材料全体に配された樹脂
を含み、
5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定し、及び
前記摩擦材料の前記摩擦発生表面上の沈着物を含み、前記沈着物は、摩擦調節粒子を含む、摩擦材料。
【請求項14】
前記枝分かれしていない繊維及び前記枝分かれした繊維は、集合的に、前記摩擦材料中において、前記摩擦材料のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90重量パーセント超の量で存在し、及び/又は
前記枝分かれしていない繊維及び前記枝分かれした繊維は、前記摩擦材料中において1:5~1:1の体積比で存在する、請求項13に記載の摩擦材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、トランスミッション内のクラッチアセンブリにおける摩擦プレートを含む多様な異なる用途で使用され得る摩擦材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の動力伝達系のいくつかの構成部品では、湿式クラッチを採用して、車両の動力発生源(例えば、内燃機関、電動モータ、燃料電池など)からの動力を、自動車両の車輪を駆動するために伝達することを容易にし得る。動力発生源から下流側に位置する、車両の発進、ギアの切換え及び他のトルク伝達作業を可能にするトランスミッションは、そのような構成部品の1つである。いくつかの形式の湿式クラッチは、現在、自動車両の運転に利用可能な多くの各種のタイプのトランスミッションを通して一般的に見出される。
【0003】
湿式クラッチは、2つ以上の対向する回転表面を、潤滑剤の存在下においてそれらの表面間に選択的な界面摩擦係合を課すことによってかみ合わせるアセンブリである。係合の点において、摩擦材料を利用して界面摩擦係合を起こす。摩擦材料は、摩擦クラッチプレート、ベルト、シンクロナイザーリング又はいくつかの他の部品で支持されている。摩擦界面に潤滑剤が存在することにより、摩擦材料を冷却し、その摩耗を低減させ、いくぶんの初期スリップを起こさせて、トルクの伝達を滑らかに且つ迅速に進めて、突然のトルク伝達事象に伴い得る不快感(すなわちシフトショック)を回避する。
【0004】
自動車両の動力伝達系において見出される各種の湿式クラッチで使用される摩擦材料は、典型的には、トランスミッションで係合及び離脱を繰り返えすことによって発生する、繰り返してかかる力及び昇温に耐えることができなければならない。使用時、摩擦材料は、比較的一体の係合を介した摩擦、すなわち摩擦係合を保持する一方、温度の上昇を抑制し、そのようなトランスミッションでの数千回にも及ぶ係合及び離脱で一貫した性能を確保して、構造的且つ粘着的一体性を維持することができなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の観点から、多様な異なる湿式クラッチ用途において、改良された性能を有する摩擦材料を開発する余地が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態では、摩擦材料は、摩擦発生表面及び摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する。摩擦材料は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維及び摩擦材料全体に配された樹脂を含む。摩擦材料は、粒子を実質的に含まず、及び5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定する。
【0007】
別の実施形態では、摩擦材料は、複数の細孔を画定し、且つ摩擦発生表面及び摩擦発生表面の反対側の接着表面を提供する。摩擦材料は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維、1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維及び摩擦材料全体に配された樹脂を含む。枝分かれしていない繊維及び枝分かれした繊維は、摩擦材料中において1:5~1:1の体積比で存在し、且つ集合的に、摩擦材料のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90重量パーセント超の量で存在する。
【0008】
摩擦材料が実質的に粒子を含まないにも関わらず、摩擦材料は、摩擦を引き起こし、典型的にはトランスミッションの係合及び離脱を繰り返す際に発生する繰り返しの力及び昇温に耐えることが有利である。枝分かれした繊維と、枝分かれしていない繊維とを組み合わせることにより、摩擦材料に強度が付与され、それにより、より大きくより均等な細孔を与える粒子の必要性がなくなる。したがって、摩擦材料は、多様な湿式クラッチ用途で使用され得、この多様な湿式クラッチ用途で最適な役割を果たすことができる。
【0009】
本開示の他の利点は、以下の詳細な説明を参照し、付属の図面を組み合わせて検討することでよりよく理解されることになるため、より容易に理解されるであろう。図面の1つ又は複数では、個々の構成要素が縮尺通りに示されていない可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】枝分かれしていない繊維、枝分かれした繊維及び樹脂を含む摩擦材料の1つの実施形態の拡大断面図である。
【
図2A】一例の枝分かれしていない繊維の拡大個別図である。
【
図2B】個別の一例の枝分かれしていない繊維の拡大写真である。
【
図3A】一例の枝分かれした繊維の拡大個別図である。
【
図3B】個別の一例の枝分かれした繊維の拡大写真である。
【
図4】
図1の摩擦材料を含む摩擦プレートの断面図である。
【
図5】その上に沈着物を有する、枝分かれしていない繊維、枝分かれした繊維及び樹脂を含む摩擦材料の実施形態の拡大断面図である。
【
図6】
図3の摩擦材料を含む摩擦プレートの断面図である。
【
図7】トランスミッション内に複数の摩擦プレート及び分離プレートを含むクラッチアセンブリの斜視図である。
【
図8】実施例5及び比較例1の孔径及び孔径分布を解析したグラフである。
【
図9】実施例7及び比較例1の動的COFを解析したグラフである。
【
図10】実施例7及び比較例1の剪断強度を解析したグラフである。
【
図11】実施例7及び比較例1の圧縮を解析したグラフである。
【
図12】異なる樹脂担持量を有する、実施例5~8の摩擦材料の「ホットスポットレベル」摩擦性能を解析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これらの図面は、本来、説明するためのものであり、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0012】
図を参照すると、いくつかの図では、対応する部分を同様の数字で示し、摩擦材料は、一般的に10で表される。摩擦材料10は、複数の細孔を画定し、且つ摩擦発生表面18及び摩擦発生表面18の反対側の接着表面20を提供する。ここで、
図1を参照すると、摩擦材料10は、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14並びに樹脂16を含み、これらについては、以下で順に説明する。
【0013】
本開示全体を通して、使用される場合、「包含する」、「包含する」及び「包含している」は、「含む」、「含む」及び「含んでいる」と同じであることを理解されたい。
【0014】
図1の断面図に示されているように、摩擦材料10は、枝分かれしていない繊維12を含む。枝分かれしていない繊維12は、フロック繊維と呼ばれることもある。
図2Aは、一例の枝分かれしていない繊維12の拡大個別図を表す図であり、
図2Bは、個別の一例の枝分かれしていない繊維12の拡大写真である。
【0015】
枝分かれしていない繊維12は、別の呼び方として複数の繊維又は枝分かれしていない繊維と呼ばれ得る。枝分かれしていない繊維12は、1つ又は複数のタイプの繊維を含み得る。したがって、枝分かれしていない繊維12は、以下から選択され得る:アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、鉱物質繊維、フェノール系繊維、ポリビニルアルコール繊維及びそれらの組合せ。各種の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、上述の枝分かれしていない繊維のタイプの1つ又は組合せを含む。上述の枝分かれしていない繊維のタイプの各種の組合せの重量範囲及び重量比のすべては、本明細で各種の非限定的な実施形態において明確に考慮される。
【0016】
各種の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、アラミドを含む。他の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、アラミドからなるか又はそれから実質的になる。1つ又は複数のタイプのアラミドを使用することができる。1つの実施形態では、アラミドは、ポリパラフェニレンテレフタルアミドである。別の実施形態では、アラミドは、2種以上のタイプのアラミドであって、例えば第一のポリパラフェニレンテレフタルアミド及び第一のものと異なる第二のポリパラフェニレンテレフタルアミドである。アラミドの各種の非限定的な例としては、例えば、以下の商品名が挙げられる:KEVLAR(登録商標)、NEW STAR(登録商標)、NOMEX(登録商標)、TEIJINCONEX(登録商標)及びTWARON(登録商標)。当然のことながら、他の実施形態では他の商品名のアラミド繊維を使用し得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、カーボンを含む。他の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、カーボンから実質的になるか又はそれからなる。当然のことながら、各種の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、アラミド繊維及び/又はカーボン繊維を含み得る。
【0018】
さらに他の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、アクリルを含む。アクリルは、1つ又は複数の合成アクリルポリマーから形成され、例えば少なくとも85重量%のアクリロニトリルモノマーから形成されたものである。他の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、アクリルから実質的になるか又はそれからなる。
【0019】
枝分かれしていない繊維12は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する。各種の実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、0.5~50μm、1~25μm又は2~20μmの平均直径及び0.2~15mm、0.5~10mm、1~9mm、1~8mm、1~7mm、2~9mm又は2~6mmの平均長さを有する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、直径及び長さのすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0020】
多くの実施形態では、枝分かれしていない繊維12は、摩擦材料10中の繊維の全体積を基準にして10~75体積%、15~50体積%、25~40体積%、28~37体積%又は30~35体積%の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、枝分かれしていない繊維12すべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0021】
図1の断面図にさらに示されているように、摩擦材料10は、枝分かれした繊維14も含む。枝分かれした繊維14は、パルプ繊維と呼ばれることもある。
【0022】
枝分かれした繊維14は、代わりに、複数の枝分かれした繊維又は枝分かれした繊維と記述され得る。枝分かれした繊維14は、1つ又は複数のタイプの繊維を含み得る。したがって、枝分かれした繊維14は、アクリル繊維、アラミド繊維、セルロース繊維及びそれらの組合せから選択することができる。各種の実施形態では、枝分かれした繊維14は、上述の枝分かれした繊維のタイプの1つ又は組合せを含む。上述の枝分かれした繊維のタイプの各種の組合せの重量範囲及び重量比のすべては、各種の非限定的な実施形態において本明細書で明確に考慮される。
【0023】
いくつかの実施形態では、枝分かれした繊維14は、アクリルを含む。アクリルは、1つ又は複数の合成アクリルポリマーから形成され、例えば少なくとも85重量%のアクリロニトリルモノマーから形成されたものである。他の実施形態では、枝分かれした繊維14は、アクリルから実質的になるか又はそれからなる。
【0024】
多くの実施形態では、枝分かれした繊維14は、アラミドを含む。他の実施形態では、枝分かれした繊維14は、アラミドからなるか又はそれから実質的になる。1つ又は複数のタイプのアラミドを使用することができる。1つの実施形態では、アラミドは、ポリパラフェニレンテレフタルアミドである。別の実施形態では、アラミドは、2種以上のタイプのアラミドであって、例えば第一のポリパラフェニレンテレフタルアミド及び第一のものと異なる第二のポリパラフェニレンテレフタルアミドである。各種の好ましい実施形態では、商品名KEVLAR(登録商標)又はTWARON(登録商標)のアラミド繊維を使用し得る。当然のことながら、他の実施形態では他の商品名のアラミド繊維を使用し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、枝分かれした繊維14は、例えば、木材、綿などからのセルロースを含む。他の実施形態では、枝分かれした繊維14は、セルロースから実質的になるか又はそれからなる。それらのセルロース繊維は、以下から選択することができる:アバカ繊維、バガス繊維、タケ繊維、コイヤ繊維、コットン繊維、フィキュー繊維、亜麻繊維、リネン繊維、麻繊維、ジュート繊維、カポック繊維、ケナフ繊維、ピナ繊維、パイン繊維、ラフィア繊維、ラミー繊維、トウ繊維、サイザル麻繊維、木材繊維及びそれらの組合せ。いくつかの特定の実施形態では、木材から取り出されたセルロース繊維、例えばカンバ繊維及び/又はユーカリ繊維が使用される。他の実施形態では、コットン繊維のようなセルロース繊維が使用される。当然のことながら、各種の実施形態では、枝分かれした繊維14は、アラミド繊維及び/又はセルロース繊維を含み得る。
【0026】
枝分かれした繊維14は、1~50μmの直径を有する。したがって、各種の実施形態では、枝分かれした繊維14は、0.5μm又は2~20μmの平均直径を有する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、直径のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0027】
各種の実施形態では、枝分かれした繊維14は、10~700のフィブリル化のカナダ標準形濾水(CSF)度を有する。多くの実施形態では、枝分かれした繊維14は、700、600、500、400、300、200又は100未満且つ10又は20超のフィブリル化のカナダ標準形濾水(CSF)度を有する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、CSFのすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0028】
「カナダ標準形濾水」(T227 om-85)という用語は、繊維のフィブリル化の程度が繊維の濾水の測定値として表され得ることを説明している。CSF試験は、1リットルの水中の3グラムの繊維の懸濁液が排出され得る速度についての任意の目安を与える実験的手順である。したがって、フィブリル化の程度が低い繊維は、他の繊維又はパルプよりも濾水が多い、すなわち摩擦材料10からの流体の排出速度が高い。とりわけ、CSF値は、ショッパー・リーグラー値に変換することが可能である。CSFは、摩擦材料10中のすべての枝分かれした繊維14のCSFを表す平均値であり得る。したがって、いずれか1つの特定のタイプの枝分かれした繊維14のCSFは、上で挙げた範囲から外れたとしても、その平均値がそれらの範囲内に収まることが理解される。
【0029】
多くの実施形態では、枝分かれした繊維14は、摩擦材料10中の繊維の全体積を基準にして25~90体積%、50~85体積%、60~75体積%、62~77体積%又は65~75体積%の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、枝分かれした繊維14のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0030】
いくつかの実施形態では、摩擦材料10は、1:5~1:1、1:3~1:1、1:3~2:3又は3:7~7:13の体積比において、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14を含む。さらに、多くの実施形態では、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14は、集合的に、摩擦材料10中において、摩擦材料10のすべての非樹脂成分の全体積を基準にして90、91、92、93、94、95、96、97又は98体積パーセント超で存在する。それらの残りの10、9、8、7、6、5、4、3又は2体積パーセントは、典型的には、各種の非粒子状の製紙のための添加物である。別の見方として、多くの実施形態では、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14は、集合的に、摩擦材料10中において、摩擦材料10のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90、91、92、93、94、95、96、97又は98重量パーセント超で存在する。それらの残りの10、9、8、7、6、5、4、3又は2重量パーセントは、典型的には、各種の非粒子状の製紙のための添加物である。
【0031】
例えば、1つの実施形態では、摩擦材料10は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維12、1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維14及び樹脂16を含む。この例では、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14は、摩擦材料10中において1:5~1:1(又はさらに1:3~1:1)の体積比で存在し、且つ集合的に、摩擦材料10中において、摩擦材料10のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして90重量パーセント超の量で存在する。この例では、残りの重量パーセント(例えば、残りの10重量パーセント以下)は、各種の非粒子状の製紙のための添加物を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、摩擦材料10中に含まれる非樹脂成分は、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14から実質的になるか又はそれらからなる。本開示全体を通して使用されている「実質的になる」という用語は、対象としている成分(例えば、枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14)を、含まれるすべての成分の合計重量(例えば、摩擦材料10の非樹脂成分の合計重量)を基準にして90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.95又は99.99重量パーセント超且つ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05又は0.01重量パーセント未満の量で含む実施形態を記述することを理解されたい。
【0033】
図1の断面図にさらに示されているように、摩擦材料10は、樹脂16も含む。各種の実施形態では、樹脂16は、摩擦材料10全体に均質又は不均質に分散されている。樹脂16は、当技術分野で公知のいずれのものでもあり得、また硬化可能であり得る。別の方法として、樹脂16は、硬化しないタイプであり得る。各種の実施形態では、摩擦材料10の形成ステージに応じて、樹脂16は、未硬化、部分硬化又は完全に硬化され得る。
【0034】
樹脂16は、摩擦材料10に構造的に強度を与えるのに適した各種の熱硬化性樹脂であり得る。使用可能な各種の樹脂16としては、フェノール樹脂及びフェノールベースの樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は、芳香族アルコール、典型的にはフェノールと、アルデヒド、典型的にはホルムアルデヒドとを縮合させることによって製造される熱硬化性樹脂のクラスである。フェノールベースの樹脂は、典型的には、すべての樹脂の合計重量を基準にして、各種の溶媒及び加工のための酸を除いて少なくとも50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂のブレンド物である。各種のフェノールベースの樹脂は、変性用成分、例えばエポキシ、ブタジエン、シリコーン、キリ油、ベンゼン、カシューナッツ油などを含み得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、5~80重量パーセントのシリコーン樹脂と、残りの重量パーセントがフェノール樹脂に属するようなものを含む、シリコーン変性フェノール樹脂又はフェノール樹脂及び他の異なる樹脂の組合せが使用される。他の実施形態では、5~80重量パーセントのエポキシ樹脂と、残りの重量パーセントがフェノール樹脂に属するようなものを含む、エポキシ変性フェノール樹脂又はフェノール樹脂及び他の異なる樹脂の組合せが使用される。
【0035】
いくつかの実施形態では、樹脂16は、シリコーン樹脂、すべての樹脂の合計重量を基準にして、各種の溶媒及び加工のための酸を除いて例えば5~100重量パーセント又は5~80重量パーセントのシリコーン樹脂を含む。使用可能なシリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーンシーラント及びシリコーンゴムが挙げられる。各種のシリコーン樹脂、例えばD、T、M及びQ単位を含むもの(例えば、DT樹脂、MQ樹脂、MDT樹脂、MTQ樹脂、QDT樹脂など)を使用し得る。
【0036】
各種の実施形態では、樹脂16は、摩擦材料10のすべての非樹脂成分の合計重量を基準にして45~120重量パーセント、45~100重量パーセント、45~80重量パーセント、50~75重量パーセント又は50~60重量パーセントの量で存在する。この数値は、別法として、樹脂の「ピックアップ」として記述されることもある。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、樹脂の量のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0037】
硬化すると、硬化された樹脂17は、摩擦材料10に対して強度及び剛性を付与し、適切な潤滑剤の流動及び保持に望ましい多孔度を維持しながら、構成部品を相互に接着させ、さらに摩擦材料10を基材32に接着させる(これについては、以下で説明する)。
【0038】
摩擦材料10は、実質的に粒子を含まなくてよいか又はさらに完全に粒子を含まなくてよい。本主題の開示の目的では、粒子は、一般的には、物質の球形部分(例えば、円形粒子、小板状など)である。粒子の非限定的な例として、摩擦材料10は、以下を実質的に含まないか又はさらに完全に含まない:珪藻土粒子、シリカ粒子、カーボン粒子、グラファイト粒子、アルミナ粒子、マグネシア粒子、酸化カルシウム粒子、チタニア粒子、セリア粒子、ジルコニア粒子、コーディエライト粒子、ムライト粒子、シリマナイト粒子、スポジューメン粒子、ペタライト粒子、ジルコン粒子、炭化ケイ素粒子、炭化チタン粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ハフニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化チタン粒子、ホウ化チタン粒子、カシューナッツ粒子及びゴム粒子。粒子は、ときに充填剤とも呼ばれる。本開示全体を通して使用されている「実質的に含まない」という用語は、摩擦材料中に含まれるすべて部の成分の合計重量を基準にして(例えば、摩擦材料10の合計重量を基準にして)7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05又は0.01重量パーセント未満の量においてのみ、対象とする成分(例えば、粒子)を含む実施形態を記述することを理解されたい。
【0039】
摩擦材料10は、当技術分野で公知の添加剤をさらに含み得る。
【0040】
摩擦材料10の初期厚みT1は、典型的には、0.3~4mm、0.4~3mm、0.4~2mm、0.4~1.6mm、0.4~1.5mm、0.5~1.4mm、0.6~1.3mm、0.7~1.2mm、0.8~1.1mm又は0.9~1mmである。この厚みT1は、基材32に接着させる前の厚みを指し、カリパー厚みとも呼ばれている。この厚みT1は、存在する未硬化の樹脂16も含めた摩擦材料10の厚み又は樹脂16を含まない原料の紙の厚みとも見なすことができる。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて厚みT1のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0041】
基材32と接着させ、樹脂を硬化させた後、摩擦材料10の合計した厚みT2は、典型的には、0.3~3.75mm、0.4~3mm、0.4~2mm、0.4~1.6mm、0.4~1.5mm、0.5~1.4mm、0.6~1.3mm、0.7~1.2mm、0.8~1.1又は0.9~1mmである。この厚みT2は、典型的には、基材32に接着させた後に測定される。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて合計した厚みT2のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0042】
摩擦材料10は、複数の細孔(ときに単に細孔とも呼ばれる)を含む。それぞれの細孔が孔径を有する。それらの細孔は、典型的には、摩擦材料10全体に分散されている。孔径は、アメリカ材料試験協会(「ASTM」)試験方法D4404-10を使用して測定することができる。
【0043】
それらの複数の細孔は、5~15μm、7~15μm、7~13μm又は9~15μmのD10値、15~30μm又は15~23μmのD50値及び30~60μm又は34~46μmのD90値を有する粒子サイズ分布を有し得る。D50は、(複数の細孔中の)細孔の分布における細孔の中央直径を表す。例えば、ある所定の摩擦材料10のサンプルにおいて、細孔の50%は、D50よりも小さい直径を有し、細孔の残りの50%は、D50よりも大きい直径を有する。D10は、細孔の分布における最も小さい10%の細孔の直径を表す。例えば、ある所定の摩擦材料10のサンプルにおいて、細孔の10%は、D10よりも小さい直径を有し、細孔の90%は、D10よりも大きい直径を有する。D90は、細孔の分布における大きい10%の細孔の直径を表す。例えば、ある所定の摩擦材料10のサンプルにおいて、細孔の90%は、D90よりも小さい直径を有し、細孔の10%は、D90よりも大きい直径を有する。
【0044】
例えば、1つの実施形態では、摩擦材料10は、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有する枝分かれしていない繊維12、1~50μmの直径を有する枝分かれした繊維14及び樹脂16を含む。この例において、摩擦材料10は、粒子を実質的に含まず、5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定する。
【0045】
他の実施形態では、摩擦材料10は、ASTM試験方法D4404-10に従って測定して50~85%、55~80%又は60~70%の多孔度を有する。摩擦材料10の多孔度は、大気に開放されている摩擦材料10のパーセントとして表すことができる。別の方法として、多孔度を、空気であるか又は固体ではない、体積基準の摩擦材料10のパーセントとして表すこともできる。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、多孔度のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0046】
摩擦材料10が多孔質であるほど、より十分な熱が放散される。使用時に摩擦材料10が係合しているときの、摩擦材料10に出入りするオイルの流れは、摩擦材料10が多孔質である場合により迅速に起きる。例えば、摩擦材料10がより高い平均流動細孔直径及び多孔度を有する場合、摩擦材料10は、摩擦材料10の細孔全体にわたり、より良好な自動的なトランスミッション流体の流動があるため、トランスミッションにおいてより冷たい状態で流動する可能性がある。トランスミッションの駆動中、特に高温における自動的トランスミッション流体の分解に起因して、摩擦材料10上に時間の経過と共にオイルの沈着物が発生する傾向がある。オイルの沈着物は、細孔のサイズを小さくする傾向を有する。したがって、摩擦材料10がより大きい細孔を用いて形成される場合、オイルの沈着後に残る/生じる孔径は、より大きくなる。
【0047】
各種の実施形態では、摩擦材料10は、高い多孔度を有し、その結果、使用時の流体浸透容量が高い。そのような実施形態では、摩擦材料10は、多孔質であるばかりでなく、圧縮可能であることが重要であり得る。例えば、摩擦材料10中に浸透した流体は、典型的には、トランスミッションの駆動時にかかる圧力下で摩擦材料10から速やかにしぼり出されるか又は放出されることが可能でなければならず、それでもなお摩擦材料10が典型的に崩壊してはならない。
【0048】
さらに他の実施形態では、摩擦材料10は、2MPaで2~30パーセント、6~20パーセント又は10~16パーセントの圧縮性能を有する。圧縮性能は、摩擦材料10の1つの物性であり、摩擦材料10を基材32上に配したとき(すなわち以下において記すように摩擦プレート30の一部のとき)又は摩擦材料10を基材32上に配していないときに測定することができる。典型的には、圧縮性能は、摩擦材料10をある程度の荷重下で圧縮したときの距離(例えば、mm)の尺度である。例えば、荷重をかける前に摩擦材料10の厚みを測定する。次いで、摩擦材料10に荷重をかける。所定の時間にわたって荷重をかけた後、摩擦材料10の新しい厚みを測定する。とりわけ、摩擦材料10のこの新しい厚みは、摩擦材料10が依然として荷重下にあるときに測定する。当業者が理解するように、その圧縮性能は、典型的に弾性と関連する。摩擦材料10の弾性が高いほど、圧縮後に観察されるであろう戻りがより大きい。これにより、典型的には、ライニングロスがより少なくなり、ホットスポットの形成がより少なくなるが、これは、共に望ましいことである。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、圧縮値のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0049】
いくつかの代替的な実施形態において且つ
図5を参照すると、摩擦材料10は、40で示される「沈着物」も含み得る。いくつかの実施形態では、沈着物40は、摩擦材料10の摩擦発生表面18上に沈着し、摩擦材料10中に沈着物40の独特で明確な層として含まれる。当然のことながら、沈着物40が利用される実施形態では、沈着物40は、摩擦発生表面18を少なくとも部分的に被覆し、摩擦を発生させる沈着物表面を形成する。他の実施形態では、沈着物40は、摩擦材料10上にあり、摩擦材料10中に(接着表面20の方向に)浸透することも起こり得るが、この場合、沈着物40の濃度は、摩擦発生表面18で最大となる。沈着物40が利用される実施形態では、沈着物40を、摩擦材料10によって画定された前の摩擦発生表面18を置き換えた新しい摩擦発生表面18を画定するものとして表すことが可能である。とりわけ、これらの実施形態の摩擦材料10は、まさに先に挙げたものである。
【0050】
例えば、いくつかのそのような実施形態では、摩擦材料10は、沈着物40を含み、沈着物40は、新しい摩擦発生表面18を画定する。この例では、摩擦材料10は、枝分かれしていない繊維12(例えば、0.5~50μmの直径及び0.2~15mmの長さを有するもの)、枝分かれした繊維14(例えば、1~約50μmの直径を有するもの)及び樹脂16を含む。当然のことながら、この実施形態の摩擦材料10は、例えば、5~15μmのD10値、15~30μmのD50値及び30~60μmのD90値を有する孔径分布を有する複数の細孔を画定する。
【0051】
そのような実施形態では、沈着物40は、10μm~600μm、12μm~450μm、12μm~300μm、12μm~150μm又は14μm~100μmの厚みT3を有する。他の場合、沈着物40の厚みT3は、150μm未満、125μm未満、100μm未満又は75μm未満であるが、10μm超である。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、厚みT3のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。厚みT3は、樹脂16の硬化前又は後の沈着物40の厚みを指し得る。
【0052】
沈着物40は、摩擦調節粒子42を含む。いくつかの実施形態では、沈着物40は、先に説明した枝分かれしていない繊維12及び枝分かれした繊維14のような摩擦調節繊維を含む。
【0053】
摩擦調節粒子42は、1つ又は複数の異なるタイプの粒子を含み得る。摩擦調節粒子42は、摩擦材料10に対して高い摩擦係数を与える。使用される摩擦調節粒子42の1つ又は複数のタイプは、摩擦の特性検討に応じて変化し得る。
【0054】
各種の実施形態では、摩擦調節粒子42は、以下から選択される:珪藻土粒子、シリカ粒子、カーボン粒子、グラファイト粒子、アルミナ粒子、マグネシア粒子、酸化カルシウム粒子、チタニア粒子、セリア粒子、ジルコニア粒子、コーディエライト粒子、ムライト粒子、シリマナイト粒子、スポジューメン粒子、ペタライト粒子、ジルコン粒子、炭化ケイ素粒子、炭化チタン粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ハフニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化チタン粒子、ホウ化チタン粒子、カシューナッツ粒子、ゴム粒子及びそれらの組合せ。いくつかの実施形態では、摩擦調節粒子42は、カーボン粒子、珪藻土粒子、カシューナッツ粒子及びそれらの組合せから選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、摩擦調節粒子42は、珪藻土粒子を含む。当然のことながら、他の実施形態では、摩擦調節粒子42は、珪藻土粒子から実質的になるか又はそれからなる。当然のことながら、いくつかのそのような実施形態では、摩擦材料10が珪藻土粒子から実質的になるか又はそれからなる。珪藻土は、シリカを含む鉱物質である。珪藻土は、比較的に高い摩擦係数を示す安価な研磨材である。CELITE(登録商標)及びCELATOM(登録商標)は、使用可能な珪藻土の2つの商品名である。
【0056】
各種の実施形態では、摩擦調節粒子42は、100nm~80μm、500nm~30μm又は800nm~20μmの平均直径を有する。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、平均直径のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0057】
各種の実施形態では、沈着物40の構成部材(例えば、摩擦調節粒子42、摩擦調節繊維及び/又は各種添加物)は、以下の量で使用される:0.5~100ポンド/3000ft2(0.2~45.4kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面、3~80ポンド/3000ft2(1.4kg~36.3kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面、3~60ポンド/3000ft2(1.4kg~27.2kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面、3~40ポンド/3000ft2(1.4kg~18.1kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面、3~20ポンド/3000ft2(1.4kg~9.1kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面、3~12ポンド/3000ft2(1.4kg~5.4kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面又は3~9ポンド/3000ft2(1.4kg~4.1kg/278.71m2)の摩擦材料10の表面。さらなる非限定的な実施形態では、上述の範囲の内部及び終点も含めて、量のすべての値及び範囲が本明細書において明確に考慮される。直前に記述された量は、ポンド/3000ft2の単位であり、これは、製紙産業において、表面積を基準にした重量の尺度として慣用されている単位である。上において、それらの単位は、摩擦材料10の表面3000ft2あたりの沈着物40の重量を表す。
【0058】
各種の実施形態では、摩擦材料10は、基材32(典型的には金属である)に接合される。基材32のいくつかの例としては、クラッチプレート、シンクロナイザーリング及びトランスミッションベルトなどが挙げられるが、これらに限定されない。摩擦材料10は、摩擦発生表面18と、それと反対側に面する接着表面20とを含む。摩擦発生表面18は、潤滑剤の存在下において、対向する回転表面との選択された界面摩擦係合に関わる。
【0059】
図4及び6に見られるように、本開示は、上で最初に導入したような摩擦材料10及び基材32(例えば、金属プレート)を含む摩擦プレート30も提供する。基材32は、少なくとも2つの表面34、36を有し、摩擦材料10は、典型的には、それらの表面34、36の一方又は両方に接合される。表面34、36の一方又は両方への摩擦材料10の接合又は接着は、任意の接着剤又は当技術分野で公知の手段、例えばフェノール樹脂又は先に述べた各種の樹脂16、17により達成することができる。
【0060】
ここで、
図7を参照すると、摩擦プレート30は、クラッチパック又はクラッチアセンブリ52を形成するために、分離プレートと共に使用、販売又は供給することができる。クラッチアセンブリ52は、流体の存在下で機能する「湿式」クラッチアセンブリ又は「湿式」クラッチであり得る。本開示は、摩擦材料10、並びに基材32、並びに摩擦プレート30及び分離プレートを含むクラッチアセンブリ52を含む摩擦プレート30自体も提供する。
【0061】
図7をさらに参照すると、本開示のクラッチアセンブリ52は、トランスミッション50に含まれ得る。トランスミッション50は、オートマチックトランスミッション又はマニュアルトランスミッションであり得る。
【0062】
本開示全体を通して、上述の実施形態のあらゆる組合せは、たとえそのような開示が上述の単一の段落又はセクションに逐語的に記載されていなくても、本明細書において1つ又は複数の非限定的な実施形態で明確に考慮される。別の言い方をすれば、明確に考慮される実施形態は、その開示のあらゆる点から選択され、組み合わされたあらゆる1つ又は複数の上述の要素を含み得る。以下の実施例は、本発明を説明することを目的とし、決して本発明を限定すると見なされてはならない。
【実施例0063】
枝分かれしていない繊維、枝分かれした繊維及び硬化させた樹脂を含む一方で粒子を含まず、本開示を代表する4種の摩擦材料の例(実施例1~4)を形成した。比較例1の、繊維及び粒子を含む慣用される摩擦材料も形成した。形成した後、実施例1~4及び比較例1を評価して各種の性能を調べた。
【0064】
実施例1~4を作製するために、枝分かれしていない繊維及び枝分かれした繊維をブレンドして、混合物を形成した。次いで、混合物を用いて、多孔質であり、粒子を含まない繊維基材材料を形成した。次いで、樹脂を用いて、繊維基材材料を含浸させた。樹脂を用いて繊維基材材料を含浸させてから、加熱して樹脂を硬化させ、実施例1~4の摩擦材料を成形した。より詳細には、樹脂及び混合物を用いて含浸させた繊維基材材料をオーブン中、約177℃で約30分の時間をかけて予備硬化させた。次いで、摩擦材料をオーブン中、約210℃で約30秒の時間をかけてコアプレートに接合させた。
【0065】
実施例1~4の組成を以下の表1に示す。
【0066】
【0067】
繊維基材材料中の成分は、繊維基材材料の全体積を基準にした体積パーセントで表す。
【0068】
使用したフェノール樹脂の量は、「樹脂ピックアップ」と呼ぶ。すなわち、表1に示した樹脂の量は、繊維基材材料の合計重量を基準にした重量パーセントである。
【0069】
枝分かれしていない繊維は、12μmの平均直径及び1.5mmの平均長さを有するアラミド繊維である。
【0070】
枝分かれした繊維Aは、300~680mLのCSF値を有するアラミド繊維である。
【0071】
フェノール樹脂は、標準的なフェノール樹脂である。
【0072】
繊維基材材料の実施例1~4について試験した。試験結果を以下の表2に示す。
【0073】
【0074】
湿式引張試験は、ASTM D829-97に従って実施し、摩擦材料の幅1インチ×長さ10インチのサンプルをアルコールで飽和させ、1インチ/分の速度で引張させる。
【0075】
上の表1及び2を参照すると、枝分かれしていない繊維対枝分かれした繊維の体積比が35:65及び30:70であるものは、以下の点で予想外に優れた結果を示す:(1)斤量(これは、重量及びコストの点でプラスの効果を有する)、(2)加工性、及び(3)湿式引張強度。
【0076】
枝分かれしていない繊維、枝分かれした繊維及び硬化させた樹脂を含む一方で粒子を含まず、本開示を代表するさらなる4種の摩擦材料の例(実施例5~8)を形成する。実施例5~8を作製するために、各種のタイプの繊維をブレンドして、混合物を形成する。次いで、混合物を用いて、多孔質であり、粒子を含まない繊維基材材料を形成した。次いで、樹脂を用いて、繊維基材材料を含浸させた。樹脂を用いて繊維基材材料を含浸させてから、加熱して樹脂を硬化させ、実施例5~8の摩擦材料を成形した。より詳細には、樹脂及び混合物を用いて含浸させた繊維基材材料をオーブン中、約177℃で約30分の時間をかけて予備硬化させた。次いで、摩擦材料をオーブン中、約210℃で約30秒の時間をかけてコアプレートに接合させた。
【0077】
実施例5~8の組成を以下の表3に示す。
【0078】
【0079】
枝分かれした繊維Bは、690mLのCSF値を有するセルロース繊維である。
【0080】
便宜上、実施例及び比較例のそれぞれに含まれる樹脂の量は、「樹脂ピックアップ(RPU)」として記述しているが、これは、単に先の表1及び2に開示されている樹脂含量である。
【0081】
作成されたら、実施例5~8及び比較例1を試験して各種の性能を調べた。試験結果を
図8~11に示す。
【0082】
ここで、
図8を参照すると、実施例5及び比較例1について、アメリカ材料試験協会(「ASTM」)試験方法D4404-10に従って孔径及び孔径分布の試験をした。図からもわかるように、実施例5は、複数の細孔を有し、それらは、比較例1の細孔よりも大きく且つばらつきが少ない。より具体的には、実施例5は、約13μmのD10値、約23μmのD50値及び約46μmのD90値を有する。対照的に、比較例1は、約3μmのD10値、約9μmのD50値及びの約28μmのD90値を有する。
【0083】
ここで、
図9を参照すると、実施例7及び比較例1の摩擦材料の摩擦係数(「COF」)について、SAE nl.2装置で試験した。4種の両面摩擦プレート及びトランスミッション流体を使用して、クラッチ条件をシフトする操作環境をシミュレートした。
図8において、実施例7の粒子を含まない摩擦材料は、驚くべきことに、粒子を含む比較例1よりも高いCOFを示している。
【0084】
ここで、
図10を参照すると、実施例7及び比較例1について、「剪断強度」の試験をした。驚くべきことに、粒子を含まない実施例7の摩擦材料は、粒子を含む比較例1と同等の剪断強度を示している。
【0085】
ここで、
図11を参照すると、実施例7及び比較例1について、「圧縮」の試験をした。
図11において、2MPaの下での実施例7の圧縮は、約13%である。驚くべきことに、粒子を含まない実施例7の摩擦材料は、粒子を含む比較例1と同等の圧縮を示している。
【0086】
実施例5~8の摩擦材料の摩擦係数(「COF」)について、SAE nl.2装置で試験した。ここで、
図12を参照すると、「ホットスポットレベル」が提示されているが、55%の樹脂荷重で優れたホットスポット性能が得られている。一般的に言うと、実施例5~8のホットスポット性能は、実施例5~8の細孔構造に起因して良好な摩擦性能及び優れた冷却を示唆している。
【0087】
上で記述した1つ又は複数の値は、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%などの変動を有する可能性があるが、そのような変動も本開示の範囲内に留まる。他のすべての部材から独立して、マーカッシュグループのそれぞれの構成要素から予想外の結果を得ることが可能である。それぞれの構成要素は、個別に及び/又は組み合わせた形態で信頼性があり、添付の請求項の範囲内で特定の実施形態に対して十分な支持を与える。独立請求項及び(単一の項及び複数の項に従属する)従属請求項のすべての組合せの主題は、本明細書で明確に考慮される。本開示は、限定的ではなく、記述言語も含めて説明のためのものである。上述の教示を参照して、本開示の多くの修正形態及び変更形態が可能であり、その開示は、本明細書で具体的に記述されたものと異なる方法で実施することも可能である。
【0088】
本開示の各種の実施形態の記述に依存する任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び集合的に、添付の請求項の範囲に包含されることも理解されたく、さらに本明細書で明確に記載されていないような数値であったとしても、本明細書の全体及び/又は部分的な数値を含めたすべての範囲が記述され、考慮されるものと理解されたい。当業者が容易に認識するように、列挙された範囲及び部分範囲は、本開示の各種の実施形態を十分に記述し、可能にするものであり、そのような範囲及び部分範囲は、関連するものの二等分、三等分、四等分、五等分などのいくつかにさらに細分化され得る。ごく一例を挙げれば、「0.1~0.9」の範囲は、下側の1/3、すなわち「0.1~0.3」、中央の1/3、すなわち「0.4~0.6」及び上側の1/3、すなわち「0.7~0.9」にさらに細分化され得、それらは、個別又は集合的に添付の請求項の範囲内にあり、添付の請求項の範囲内の特定の実施形態に個別及び/又は集合的に依存し、十分な支持を与えることができる。加えて、ある範囲を特定又は修正する用語、例えば「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などに関して、そのような用語は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲は、本来、「少なくとも10~35」の部分範囲、「少なくとも10~25」の部分範囲、「25~35」の部分範囲などを含み、それぞれの部分範囲は、添付の請求項の範囲内の特定の実施形態に個別及び/又は集合的に依存し得、十分な支持を与える。最後に、開示された範囲内の個々の数字は、添付の請求項の範囲内の特定の実施形態に依存し得、十分な支持を与える。例えば、「1~9」の範囲は、各種の個々の整数、例えば3及びさらに小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、それらは、添付の請求項の範囲内の特定の実施形態に依存し、十分な支持を与えることができる。