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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163868
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】グラフェン素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20221020BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221020BHJP
   C30B 29/02 20060101ALI20221020BHJP
   C01B 32/182 20170101ALI20221020BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 626C
H01L29/78 617N
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/02 C
H01L21/20
H01L29/28 250E
H01L29/28 100A
H01L29/28 310E
H01L21/205
C30B29/02
C01B32/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068970
(22)【出願日】2021-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「グラフェンナノリボンの合成・評価とシミュレーション」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
5F045
5F110
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BA02
4G077ED06
4G077EF02
4G077HA06
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD30
4G146BB23
5F045AA03
5F045AB07
5F045AC07
5F045AC16
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE15
5F110AA26
5F110CC01
5F110CC07
5F110CC10
5F110DD04
5F110DD05
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD17
5F110DD21
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE14
5F110EE30
5F110EE43
5F110FF01
5F110FF27
5F110FF28
5F110GG01
5F110GG05
5F110GG44
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK21
5F110NN02
5F110NN22
5F110QQ04
5F110QQ14
5F110QQ16
5F152LL03
5F152LL05
5F152LL09
5F152LL10
5F152LN34
5F152LP01
5F152LP08
5F152MM04
5F152NN03
5F152NN13
5F152NP09
5F152NP13
5F152NQ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラフェン転写時に使用する溶媒やレジストの残渣の影響を受けた特性のばらつきを抑制することができるグラフェン素子を提供する。
【解決手段】グラフェン素子100は、基板110と、窒化ホウ素層120と、グラフェン層130と、絶縁層140と、ソース電極151と、ドレイン電極152と、ゲート電極153と、を有する。窒化ホウ素層120は、互いに積層された、層状物質である窒化ホウ素を複数有する。グラフェン層130は、窒化ホウ素層120の上面121及び側面122に接触する。グラフェン層130は、互いに積層された、層状物質であるグラフェンを1又は複数有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱層構造を有する窒化ホウ素層と、
前記窒化ホウ素層に接触するグラフェン層と、
を有することを特徴とするグラフェン素子。
【請求項2】
基板を有し、
前記基板と前記グラフェン層との間に前記窒化ホウ素層が位置することを特徴とする請求項1に記載のグラフェン素子。
【請求項3】
基板を有し、
前記基板と前記窒化ホウ素層との間に前記グラフェン層が位置することを特徴とする請求項1に記載のグラフェン素子。
【請求項4】
前記グラフェン層に接触する第1電極と、
前記グラフェン層に接触する第2電極と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のグラフェン素子。
【請求項5】
前記グラフェン層の前記第1電極と前記第2電極との間の部分の電位を制御する制御電極を有することを特徴とする請求項4に記載のグラフェン素子。
【請求項6】
前記グラフェン層の少なくとも一部を覆う絶縁層を有し、
前記制御電極は、前記絶縁層の少なくとも一部を覆う第3電極を有することを特徴とする請求項5に記載のグラフェン素子。
【請求項7】
前記制御電極は、前記窒化ホウ素層の下に設けられた第4電極を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のグラフェン素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェン素子に関する。
【背景技術】
【0002】
上面に酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板の上に転写により六方晶の窒化ホウ素を転写し、窒化ホウ素の上に転写によりグラフェンを設けたグラフェン素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-522348号公報
【特許文献2】特開2016-58631号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Boron nitride substrates for high-quality graphene electronics, NATURE NANOTECHNOLOGY, VOL 5, OCTOBER 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグラフェン素子では、転写位置の制御は困難であることから商用には適しているとはいえない。合成により作製した大面積グラフェンを用いることで素子化は容易となるものの、転写時に使用する溶媒やレジストの残渣の影響を受けるため特性にばらつきが生じやすい。
【0006】
本開示の目的は、グラフェン転写時に使用する溶媒やレジストの残渣の影響を受けた特性のばらつきを抑制することができるグラフェン素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、乱層構造を有する窒化ホウ素層と、前記窒化ホウ素層に接触するグラフェン層と、を有するグラフェン素子が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、グラフェン転写時に使用する溶媒やレジストの残渣の影響を受けた特性のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その1)である。
図2】第1実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その2)である。
図3】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
図4】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
図5】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
図6】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
図7】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
図8】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
図9】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
図10】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す平面図(その1)である。
図11】第1実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す平面図(その2)である。
図12】第2実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その1)である。
図13】第2実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その2)である。
図14】第2実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
図15】第2実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
図16】第2実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
図17】第2実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
図18】第2実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
図19】第3実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その1)である。
図20】第3実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図(その2)である。
図21】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
図22】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
図23】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
図24】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
図25】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
図26】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
図27】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
図28】第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
図29】第5実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。
図30】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
図31】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
図32】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
図33】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
図34】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
図35】第5実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
図36】第6実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。
図37】ラマン分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。図1及び図2は、第1実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。図1は、図2中のI-I線に沿った断面図に相当し、図2は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0012】
第1実施形態に係るグラフェン素子100は、図1及び図2に示すように、基板110と、窒化ホウ素層120と、グラフェン層130と、絶縁層140と、ソース電極151と、ドレイン電極152と、ゲート電極153とを有する。
【0013】
基板110は、シリコン基板111と、シリコン基板111の上面に形成された酸化シリコン膜112とを有する。基板110は、例えば熱酸化膜付きシリコン基板である。基板110がサファイア基板等の絶縁基板であってもよい。
【0014】
窒化ホウ素層120は、基板110の上面の一部に設けられている。窒化ホウ素層120は乱層構造を有する。窒化ホウ素層120は、互いに積層された、層状物質である窒化ホウ素を複数有する。各窒化ホウ素は、例えば六方晶構造を有してもよい。窒化ホウ素層120の厚さは、例えば20nm~200nmである。
【0015】
グラフェン層130は窒化ホウ素層120を覆う。グラフェン層130は窒化ホウ素層120の上面121及び側面122に接触する。グラフェン層130は、互いに積層された、層状物質であるグラフェンを1又は複数有する。
【0016】
ソース電極151はグラフェン層130の一部に接触し、ドレイン電極152はグラフェン層130の他の一部に接触する。ソース電極151及びドレイン電極152は、例えば、チタン膜と、チタン膜上の金膜とを有する。チタン膜がグラフェン層130に接触する。例えば、チタン膜の厚さは1nm~10nmであり、金膜の厚さは20nm~100nmである。ソース電極151及びドレイン電極152は、第1電極及び第2電極の一例である。
【0017】
ソース電極151とドレイン電極152との間において、グラフェン層130が絶縁層140により覆われている。絶縁層140は、例えば厚さが5nm~20nmの酸化アルミニウム膜である。絶縁層140が、乱層構造を有する窒化ホウ素層であってもよい。
【0018】
ゲート電極153は、ソース電極151とドレイン電極152との間において、絶縁層140を覆う。ゲート電極153は、ソース電極151及びドレイン電極152から離れている。ゲート電極153は、例えば、チタン膜と、チタン膜上の金膜とを有する。チタン膜が絶縁層140に接触する。例えば、チタン膜の厚さは1nm~10nmであり、金膜の厚さは20nm~100nmである。ゲート電極153は、制御電極及び第3電極の一例である。
【0019】
第1実施形態では、絶縁層140がゲート絶縁膜として機能する。従って、グラフェン素子100は、トップゲート構造を有する電界効果トランジスタとして用いることができる。
【0020】
次に、第1実施形態に係るグラフェン素子100の製造方法について説明する。図3図9は、第1実施形態に係るグラフェン素子100の製造方法を示す断面図である。図10図11は、第1実施形態に係るグラフェン素子100の製造方法を示す平面図である。図5は、図10中のV-V線に沿った断面図に相当し、図6は、図11中のVI-VI線に沿った断面図に相当する。
【0021】
まず、図3に示すように、シリコン基板111及び酸化シリコン膜112を有する基板110を準備する。基板110は、例えば、シリコン基板の一方の面を熱酸化することにより形成することができる。基板110として、熱酸化膜付きシリコン基板を用いることができる。
【0022】
次いで、図4に示すように、酸化シリコン膜112の上に乱層構造を有する窒化ホウ素層120を形成する。乱層構造を有する窒化ホウ素層120は、例えば六方晶構造を有する窒化ホウ素ターゲットを用いたスパッタ法により形成することができる。スパッタ法を用いる場合は、使用ガスとしてはアルゴン若しくは窒素又はこれらの混合ガスを用いてよい。窒化ホウ素層120を電子ビーム法により形成してもよい。窒化ホウ素層120を形成する際の基板110の温度は、例えば20℃~1000℃とする。
【0023】
その後、図5及び図10に示すように、窒化ホウ素層120を、予め定められている形状に加工する。窒化ホウ素層120の加工は、例えば酸素プラズマ等を用いた反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)により行うことができる。
【0024】
続いて、図6及び図11に示すように、窒化ホウ素層120を覆うようにグラフェン層130を形成する。グラフェン層130は、例えば熱化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により合成することができる。グラフェン層130は、窒化ホウ素層120の上面121及び側面122から成長する。例えば、グラフェン層130を形成する際の基板110の温度は600℃~800℃とし、チャンバ内の圧力は0.8kPa~1.2kPaとする。グラフェン層130の原料としては、例えばアセチレンガスを用いることができる。アセチレンガスは、例えばアルゴンガス等の希釈ガスとの混合ガスとしてチャンバ内に供給される。混合ガス中のアルゴンガスの割合は、例えば5体積%~15体積%である。原料ガスとして、アセチレンガスに代えて、メタンガス及びエチレンガス等の炭化水素系ガスが用いられてもよく、エタノール及びメタノール等のアルコール系ガスが用いられてもよい。希釈ガスとして、アルゴンガスに代えて、ヘリウムガス又は水素ガスが用いられてもよい。また、希釈ガスを混合して用いてもよい。
【0025】
次いで、図7に示すように、ソース電極151及びドレイン電極152を形成する。ソース電極151及びドレイン電極152は、例えば、堆積及びリフトオフにより形成することができる。すなわち、ソース電極151及を形成する予定の領域及びドレイン電極152を形成する予定の領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法等により金属膜を堆積し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、チタン膜を形成し、その上に金膜を形成する。
【0026】
その後、基板110の上に、グラフェン層130、ソース電極151及びドレイン電極152を覆う絶縁層を形成する。続いて、図8に示すように、この絶縁層の、ソース電極151とドレイン電極152との間において、グラフェン層130を覆う部分以外を除去する。この結果、図8に示すように、絶縁層140が得られる。絶縁層140が酸化アルミニウム層である場合、例えば絶縁層は熱原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により形成することができる。絶縁層140が乱層構造を有する窒化ホウ素層である場合、例えば絶縁層はスパッタ法により形成することができる。
【0027】
次いで、図9に示すように、ゲート電極153を形成する。ゲート電極153は、例えば、堆積及びリフトオフにより形成することができる。すなわち、ゲート電極153を形成する予定の領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法等により金属膜を堆積し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、チタン膜を形成し、その上に金膜を形成する。
【0028】
このようにして第1実施形態に係るグラフェン素子100を製造することができる。
【0029】
第1実施形態では、乱層構造を有する窒化ホウ素層120にグラフェン層130が接触している。このため、グラフェン層130は、窒化ホウ素層120の上に直接合成することができる。従って、グラフェン層130の窒化ホウ素層120の上への転写を行う必要がない。
【0030】
グラフェン層130の窒化ホウ素層120の上への転写を行った場合、転写に用いる基板の除去等の際に使用した溶媒やレジストを原因とする残渣が生じ、この残渣に伴って特性がばらつきやすい。本実施形態によれば、グラフェン層130の窒化ホウ素層120の上への転写を行う必要がないため、転写に伴う残渣の発生を防止することができる。従って、グラフェン素子100の特性のばらつきを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態では、乱層構造を有する窒化ホウ素層120の上面121及び側面122からグラフェン層130が成長できる。このため、グラフェン層130と、ソース電極151及びドレイン電極152との間の接触面積を大きく確保して接触抵抗を低減することができる。更に、窒化ホウ素層120の上面121及び側面122から成長したグラフェン層130を用いて種々の構造を構築することもできる。
【0032】
なお、ソース電極151とドレイン電極152との間において、絶縁層140がグラフェン層130の上面及び側面の両方を覆う必要はなく、例えば絶縁層140がグラフェン層130の上面のみを覆っていてもよい。また、ゲート電極153が絶縁層140の上面及び側面の両方を覆う必要はなく、例えばゲート電極153が絶縁層140の上面のみを覆っていてもよい。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてゲート電極の構造の点で第1実施形態と相違する。図12及び図13は、第2実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。図12は、図13中のXII-XII線に沿った断面図に相当し、図13は、図12中のXIII-XIII線に沿った断面図に相当する。
【0034】
第2実施形態に係るグラフェン素子200は、図12及び図13に示すように、第1実施形態におけるゲート電極153に代えて、ゲート電極253を有する。
【0035】
ゲート電極253は、ソース電極151とドレイン電極152との間において、窒化ホウ素層120の下で基板110の上に設けられている。ゲート電極253は窒化ホウ素層120により覆われている。ゲート電極253は、例えば、チタン膜と、チタン膜上の金膜とを有する。ゲート電極253は、制御電極及び第4電極の一例である。
【0036】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0037】
第2実施形態では、窒化ホウ素層120がゲート絶縁膜として機能する。従って、グラフェン素子200は、埋込ゲート構造を有する電界効果トランジスタとして用いることができる。また、絶縁層140はグラフェン層130の保護層として機能する。絶縁層140が設けられていなくてもよい。
【0038】
次に、第2実施形態に係るグラフェン素子200の製造方法について説明する。図14図18は、第2実施形態に係るグラフェン素子200の製造方法を示す断面図である。
【0039】
まず、図14に示すように、第1実施形態と同様にして基板110を準備する。次いで、酸化シリコン膜112の上にゲート電極253を形成する。ゲート電極253は、例えば、堆積及びリフトオフにより形成することができる。すなわち、ゲート電極253を形成する予定の領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法等により金属膜を堆積し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、チタン膜を形成し、その上に金膜を形成する。
【0040】
その後、図15に示すように、ゲート電極253を覆うようにして、酸化シリコン膜112の上に乱層構造を有する窒化ホウ素層120を形成する。乱層構造を有する窒化ホウ素層120は、第1実施形態と同様に、例えば六方晶構造を有する窒化ホウ素ターゲットを用いたスパッタ法により形成することができる。
【0041】
続いて、図16に示すように、窒化ホウ素層120を、予め定められている形状に加工する。窒化ホウ素層120の加工は、第1実施形態と同様に、例えば酸素プラズマ等を用いたRIEにより行うことができる。
【0042】
次いで、図17に示すように、窒化ホウ素層120を覆うようにグラフェン層130を形成する。グラフェン層130は、第1実施形態と同様に、例えば熱CVD法により合成することができる。
【0043】
その後、図18に示すように、第1実施形態と同様にして、ソース電極151、ドレイン電極152及び絶縁層140を形成する。
【0044】
このようにして第2実施形態に係るグラフェン素子200を製造することができる。
【0045】
第2実施形態でも、乱層構造を有する窒化ホウ素層120にグラフェン層130が接触している。このため、第1実施形態と同様に、グラフェン素子200の特性のばらつきを抑制することができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主としてゲート電極の構造の点で第1実施形態等と相違する。図19及び図20は、第3実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。図19は、図20中のXIX-XIX線に沿った断面図に相当し、図20は、図19中のXX-XX線に沿った断面図に相当する。
【0047】
第3実施形態に係るグラフェン素子300は、図19及び図20に示すように、第1実施形態におけるゲート電極153に加えて、第2実施形態におけるゲート電極253を有する。
【0048】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0049】
第3実施形態では、窒化ホウ素層120及び絶縁層140がゲート絶縁膜として機能する。従って、グラフェン素子300はダブルゲート構造を有する電界効果トランジスタとして用いることができる。グラフェン素子300が、パーシャルなサラウンドゲート構造を有しているということもできる。
【0050】
第3実施形態に係るグラフェン素子300を製造する場合、例えば、第2実施形態と同様にしてゲート電極253を形成し、その後、窒化ホウ素層120の形成及びグラフェン層130の形成等を経て、第1実施形態と同様にしてゲート電極153を形成する。
【0051】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、製造方法の点で第1実施形態と相違する。図21図28は、第4実施形態に係るグラフェン素子の製造方法を示す断面図である。
【0052】
まず、図21に示すように、成長用の基板460を準備する。基板460は、例えば、シリコン基板461及び酸化シリコン膜462を有する。基板460は、例えば、シリコン基板の一方の面を熱酸化することにより形成することができる。基板460として、熱酸化膜付きシリコン基板を用いることができる。
【0053】
次いで、図22に示すように、酸化シリコン膜462の上に触媒金属層470を形成する。触媒金属層470は、例えば鉄、ニッケル又はコバルトを含む。触媒金属層470の厚さは、例えば20nm~500nmである。触媒金属層470は、例えばスパッタ法又は電子ビーム法により形成することができる。
【0054】
その後、図23に示すように、触媒金属層470の上に乱層構造を有する窒化ホウ素層420を形成する。乱層構造を有する窒化ホウ素層420は、例えば六方晶構造を有する窒化ホウ素ターゲットを用いたスパッタ法により形成することができる。窒化ホウ素層420を有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、電子ビーム(Electron Beam:EB)法又は分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法により形成してもよい。窒化ホウ素層420を形成する際の基板460の温度は、例えば20℃~1000℃とする。
【0055】
続いて、図24に示すように、窒化ホウ素層420の上にグラフェン層430を形成する。グラフェン層430は、例えば熱CVD法により合成することができる。グラフェン層430は、窒化ホウ素層420の上面421及び側面422から成長する。グラフェン層430は、グラフェン層130と同様の方法で形成することができる。
【0056】
次いで、図25に示すように、グラフェン層430の上面に転写用の支持部材480を形成する。支持部材480の材料としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の樹脂を用いることができる。
【0057】
その後、図26に示すように、触媒金属層470を除去することで、窒化ホウ素層420、グラフェン層430及び支持部材480の積層体を、基板460から分離する。触媒金属層470は、例えば塩酸等を用いて除去することができる。
【0058】
続いて、図27に示すように、窒化ホウ素層420及びグラフェン層430を基板410に転写する。基板410は、例えば、シリコン基板411及び酸化シリコン膜412を有する。基板410は、例えば、シリコン基板の一方の面を熱酸化することにより形成することができる。基板410として、熱酸化膜付きシリコン基板を用いることができる。窒化ホウ素層420及びグラフェン層430は、窒化ホウ素層420が酸化シリコン膜412に接するように転写する。基板410として、シリコン基板等を用いてもよい。窒化ホウ素層420及びグラフェン層430の転写に際して、支持部材480は、有機溶媒等を用いて除去することができる。
【0059】
次いで、図28に示すように、第1実施形態と同様にして、ソース電極151及びドレイン電極152の形成からゲート電極153の形成までの処理を行う。
【0060】
このようにして第4実施形態に係るグラフェン素子400を製造することができる。
【0061】
第4実施形態では、乱層構造を有する窒化ホウ素層420にグラフェン層430が接触している。このため、第1実施形態と同様に、グラフェン素子400の特性のばらつきを抑制することができる。また、触媒金属層470を用いて窒化ホウ素層420を形成しているため、特に良好な品質の窒化ホウ素層420及びグラフェン層430を得やすい。
【0062】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主として窒化ホウ素層及びグラフェン層の構成の点で第1実施形態等と相違する。図29は、第5実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。
【0063】
第5実施形態に係るグラフェン素子500は、図29に示すように、第1実施形態における基板110、窒化ホウ素層120及びグラフェン層130に代えて、基板410、窒化ホウ素層520及びグラフェン層530を有する。
【0064】
グラフェン層530は、基板410の上面の一部に設けられている。グラフェン層530は、互いに積層された、層状物質であるグラフェンを1又は複数有する。
【0065】
窒化ホウ素層520は、グラフェン層530の上に設けられている。窒化ホウ素層520は乱層構造を有する。窒化ホウ素層520は、互いに積層された、層状物質である窒化ホウ素を複数有する。各窒化ホウ素は、例えば六方晶構造を有してもよい。窒化ホウ素層520の厚さは、例えば20nm~200nmである。グラフェン層530は窒化ホウ素層520の下面523に接触する。
【0066】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0067】
第5実施形態では、絶縁層140及び窒化ホウ素層520がゲート絶縁膜として機能する。従って、グラフェン素子500は、トップゲート構造を有する電界効果トランジスタとして用いることができる。
【0068】
次に、第5実施形態に係るグラフェン素子500の製造方法について説明する。図30図35は、第5実施形態に係るグラフェン素子500の製造方法を示す断面図である。
【0069】
まず、図30に示すように、第4実施形態と同様にして、成長用の基板460を準備し、酸化シリコン膜462の上に触媒金属層470を形成し、触媒金属層470の上に乱層構造を有する窒化ホウ素層520を形成する。酸化シリコン膜462に代えて、酸化アルミニウム膜等の他の絶縁膜が用いられてもよい。
【0070】
次いで、図31に示すように、触媒金属層470と窒化ホウ素層520との間にグラフェン層530を形成する。グラフェン層530は、例えば熱CVD法により合成することができる。グラフェン層530は、触媒金属層470の上面から成長し、窒化ホウ素層520の下面523に接触する。
【0071】
その後、図32に示すように、窒化ホウ素層520の上面に転写用の支持部材580を形成する。支持部材580の材料としては、例えばPMMA等の樹脂を用いることができる。
【0072】
続いて、図33に示すように、触媒金属層470を除去することで、窒化ホウ素層520、グラフェン層530及び支持部材580の積層体を、基板460から分離する。触媒金属層470は、例えば塩酸等を用いて除去することができる。
【0073】
次いで、図34に示すように、窒化ホウ素層520及びグラフェン層530を基板410に転写する。窒化ホウ素層520及びグラフェン層530は、グラフェン層530が酸化シリコン膜412に接するように転写する。窒化ホウ素層520及びグラフェン層530の転写に際して、支持部材580は、有機溶媒等を用いて除去することができる。
【0074】
次いで、図35に示すように、第1実施形態と同様にして、ソース電極151及びドレイン電極152の形成からゲート電極153の形成までの処理を行う。
【0075】
このようにして第5実施形態に係るグラフェン素子500を製造することができる。
【0076】
第5実施形態では、乱層構造を有する窒化ホウ素層520にグラフェン層530が接触している。このため、第1実施形態と同様に、グラフェン素子500の特性のばらつきを抑制することができる。また、触媒金属層470を用いて窒化ホウ素層520及びグラフェン層530を形成しているため、特に良好な品質の窒化ホウ素層520及びグラフェン層530を得やすい。更に、支持部材580は、グラフェン層530ではなく窒化ホウ素層520に接触するため、支持部材580の残渣による特性のばらつきを抑制することができる。
【0077】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態は、主として基板の構成の点で第5実施形態等と相違する。図36は、第6実施形態に係るグラフェン素子を示す断面図である。
【0078】
第6実施形態に係るグラフェン素子600は、図36に示すように、第5実施形態における基板410に代えて、基板610を有する。基板610は、シリコン基板611と、シリコン基板611の上面に設けられた窒化ホウ素層612とを有する。窒化ホウ素層612は六方晶構造を有する。窒化ホウ素層612は、例えば、転写によりシリコン基板611の上に設けられている。
【0079】
他の構成は第5実施形態と同様である。
【0080】
本開示において、グラフェン層に接続される電極及び配線の形状は限定されない。例えば、グラフェン素子が、乱層構造を有する窒化ホウ素層の側面から成長したグラフェン層を利用した3次元構造を有してもよい。
【0081】
ここで、第5実施形態に倣って、乱層構造を有する窒化ホウ素層を基板の上に形成し、窒化ホウ素層の裏面からグラフェン層を成長させて作製した試料のラマン分析の結果について説明する。図37は、ラマン分析の結果を示す図である。図37には、グラフェン層を成長させる前に測定したラマンスペクトルS1と、グラフェン層を成長させた後に測定したラマンスペクトルS2とを示す。
【0082】
ラマンスペクトルS1では、1300cm-1近傍に窒化ホウ素層由来のDバンドのピークP11が現れている。ラマンスペクトルS2では、1300cm-1近傍に、窒化ホウ素層由来のDバンドのピークとグラフェン層由来のDバンドのピークとが重畳したピークP21が現れている。また、ラマンスペクトルS2では、1580cm-1近傍に、グラフェン層由来のGバンドのピークP22が現れ、2700cm-1近傍に、グラフェン層由来の2DバンドのピークP23が現れている。図37に示す分析結果から、良好な品質のグラフェン層が形成されているといえる。
【0083】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0084】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0085】
(付記1)
乱層構造を有する窒化ホウ素層と、
前記窒化ホウ素層に接触するグラフェン層と、
を有することを特徴とするグラフェン素子。
(付記2)
基板を有し、
前記基板と前記グラフェン層との間に前記窒化ホウ素層が位置することを特徴とする請求項1に記載のグラフェン素子。
(付記3)
基板を有し、
前記基板と前記窒化ホウ素層との間に前記グラフェン層が位置することを特徴とする付記1に記載のグラフェン素子。
(付記4)
前記グラフェン層に接触する第1電極と、
前記グラフェン層に接触する第2電極と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載のグラフェン素子。
(付記5)
前記グラフェン層の前記第1電極と前記第2電極との間の部分の電位を制御する制御電極を有することを特徴とする付記4に記載のグラフェン素子。
(付記6)
前記グラフェン層の少なくとも一部を覆う絶縁層を有し、
前記制御電極は、前記絶縁層の少なくとも一部を覆う第3電極を有することを特徴とする付記5に記載のグラフェン素子。
(付記7)
前記制御電極は、前記窒化ホウ素層の下に設けられた第4電極を有することを特徴とする付記5又は6に記載のグラフェン素子。
(付記8)
乱層構造を有する窒化ホウ素層を基板の上に形成する工程と、
前記窒化ホウ素層の表面からグラフェン層を成長させる工程と、
を有することを特徴とするグラフェン素子の製造方法。
【符号の説明】
【0086】
100、200、300、400、500、600:グラフェン素子
110、410、610:基板
120、420、520:窒化ホウ素層
130、430、530:グラフェン層
151:ソース電極
152:ドレイン電極
153、253:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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