(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163937
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】車両用システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/023 20060101AFI20221020BHJP
B60R 16/037 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B60R16/023 P
B60R16/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069092
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】谷本 亮
(72)【発明者】
【氏名】國枝 大佳
(57)【要約】
【課題】機能が異なる製品であってもリソーセスを削減して開発や設計をすることができるとともに、機能の拡張も容易に行うことができる車両用システムを提供する。
【解決手段】実施形態の車両用システム1は、製品の種類によらず共通する機能が実装されている車両用装置2と、製品の種類によって異なる機能が実装されており、通信回線5を介して車両用装置2に接続される外部装置3と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の種類によらず共通する機能が実装されている車両用装置(2)と、
製品の種類によって異なる機能が実装されており、通信回線(5)を介して前記車両用装置に接続される外部装置(3)と、を備える車両用システム。
【請求項2】
前記外部装置に実装されている機能を前記車両用装置から利用可能にした請求項1記載の車両用システム。
【請求項3】
前記車両用装置に実装されている機能を前記外部装置から利用可能にした請求項1または2記載の車両用システム。
【請求項4】
前記車両用装置と通信可能に接続されている電子制御装置(6)を備え、
前記外部装置は、前記車両用装置を介して前記電子制御装置と通信可能に接続され、前記電子制御装置に実装されている機能を利用可能にした、または、自身に実装されている機能を前記電子制御装置から利用可能にした請求項1から3のいずれか一項記載の車両用システム。
【請求項5】
前記外部装置は、製品の出荷後に更新が必要になることが想定される機能、または、前記車両用装置に実装されている機能に比べて更新頻度が相対的に多いことが想定される機能が実装されている請求項1から4のいずれか一項記載の車両用システム。
【請求項6】
前記車両用装置は、複数の前記外部装置と接続可能である請求項1から5のいずれか一項記載の車両用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両で利用される車両用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に示されているように、車両に搭載される装置に複数の機能を実装することがある。以下、車両に搭載される装置を車両用装置と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用装置に実装される機能は、製品の種類によって異なることがある。例えば、同じメーカの同一製品群であっても、相対的に高価な製品の方が相対的に安価な製品よりも機能の数や種類が多いことがある。そして、そのような製品は、異なるハードウェア構成やソフトウェア構成によって複数の製品が用意されていた。
【0005】
しかしながら、そのような構成ではハードウェアやソフトウェアを製品ごとに開発や設計をする必要があり、費用や人員において多大なリソーセスを必要としていた。また、出荷後に機能を追加あるいは拡張することも困難であった。
【0006】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機能が異なる製品であってもリソーセスを削減して開発や設計をすることができるとともに、機能の拡張も容易に行うことができる車両用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様としての車両用システムは、製品の種類によらず共通する機能が実装されている車両用装置と、製品の種類によって異なる機能が実装されており、通信回線を介して車両用装置に接続される外部装置と、を備える。これにより、車両用システムは、共通する機能については車両用装置に集約されることから製品として異なる場合であっても同じハードウェアを用いて開発や設計をすることが可能となり、機能が異なる製品であってもリソーセスを削減して開発や設計をすることができるとともに、機能の拡張も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による車両用システムの構成例を模式的に示す図
【
図2】車両用システムのソフトウェアの構成例を模式的に示す図
【
図3】データの送受信が行われる経路を模式的に示す図
【
図4】車両用システムの他のハードウェアの構成例を模式的に示す図
【
図5】車両用システムの他のソフトウェアの構成例を模式的に示す図
【
図6】車両用システムの他の接続例を模式的に示す図
【
図7】第2実施形態による車両用システムの構成例を模式的に示す図
【
図8】車両用システムの他のハードウェアの構成例を模式的に示す図
【
図9】データの送受信が行われる経路を模式的に示す図
【
図10】第3実施形態による車両用システムの構成例を模式的に示す図
【
図11】データの送受信が行われる経路を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について説明する。また、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付すものとする。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、車両用システム1は、車両用装置2と外部装置3とにより構成されている。これら車両用装置2および外部装置3は、例えばSoCで構成された半導体集積回路として実現されており、互いに通信可能に接続される。この車両用装置2には、車両に搭載されている各種の周辺機器4が車両用装置2との間で通信可能、あるいは、車両用装置2から制御可能に接続されている。ただし、詳細は後述するが、
図1は、車両用システム1の構成例の1つを示している。
【0011】
車両用装置2と外部装置3との間は、通信回線5を介して通信可能に接続される。そして、車両用装置2と外部装置3とが連携して作動することにより車両用システム1を構成している。本実施形態では通信回線5としてUSBによる通信経路を想定しており、通信回線5は物理的にはUSBケーブルで構成されている。なお、USBは、Universal Serial Busの略である。ただし、通信回線5はUSBに限らず、有線LANや無線LANあるいは近距離無線通信などで構成することができる。
【0012】
また、車両用装置2は、車両に搭載されている各種の電子制御装置であるECU6と車内ネットワーク6aによって通信可能に接続されている。車内ネットワーク6aは、例えばCANを採用することができる。なお、ECUはElectronic Control Unitの略であり、CANはController Area Networkの略である。また、
図1では説明の簡略化のために1つのECU6を示しているが、車両には複数のECU6が搭載されている。また、ECU6との間の接続はCANに限らず、LIN、FlexRayあるいはいわゆるIPネットワークで構成することができる。
【0013】
車両用装置2は、車両を利用する際に提供される機能を実行可能な制御部201、周辺機器4との間で各種の信号を入出力するための外部入出力回路202、制御部201と通信可能であって車両を利用する際に提供される機能を実行可能な外部装置3が接続されるUSBコネクタ203などを備えている。また、
図1では説明の簡略化のために外部入出力回路202を1つのブロックとして示しているが、周辺機器4に対応した複数の回路で構成することができる。
【0014】
制御部201は、CPU204、ROM205、RAM206、入出力ポート207、および通信回路208などを備えており、それらがバス209によって接続されている。CPU204は、ROM205に記憶されているプログラムを実行することにより、車両用装置2を制御するための各種の処理を実行し、自身に実装されている各種の機能を提供する。なお、CPU204は、1つあるいは複数の半導体装置によって構成することができる。
【0015】
ROM205は、例えばeMMCで構成された不揮発性のメモリである。なお、eMMCは、embedded Multi Media Cardの略である。このROM205には、CPU204が実行する各種のプログラム、プログラムを実行する際に参照されるデータ、および、周辺機器4の設定情報などの各種のデータを記憶している。また、ROM205は、例えばプログラムが記憶されている読み出し専用の領域と、例えばデータを記憶可能な書き込み可能な領域とが設けられており、車両用装置2の記憶部を構成している。
【0016】
RAM206は、揮発性のメモリで構成されており、演算結果等のデータを一時的に記憶する。なお、RAM206に一時的に記憶されるデータは、必要であればROM205の書き込み可能な領域に記憶される。このとき、ROM205への書き込みは、任意のタイミングで書き込むことができるが、データが更新されたタイミングや車両用装置2の電源がオフされるタイミングで書き込むことができる。
【0017】
入出力ポート207は、制御部201と周辺機器4や外部装置3との間で信号の入出力を行わせるための回路である。通信回路208は、本実施形態ではUSB方式に対応したものであり、通信回線5を介して外部装置3との間でデータの送受信を行う。外部装置3との接続は、USBコネクタ203経由で行われる。
【0018】
外部装置3は、例えばSoCで構成された半導体集積回路として実現されており、本実施形態では車両用装置2とUSBで接続されるUSBモジュールとして構成されている。この外部装置3は、通信回線5により車両用装置2の制御部201と通信可能に接続されており、車両用装置2との間でデータを送受信可能であるとともに、車両用装置2を介して周辺機器4やECU6へのアクセス、あるいは、ECU6との間のデータ通信が可能になっている。また、外部装置3は、通信回線5つまりはUSBケーブルを介して車両用装置2から電源が供給可能である。
【0019】
外部装置3は、自身に実装されている機能を実行する外部制御部301と、自身に接続されている周辺機器4などとの間で各種の信号を入出力するための外部入出力回路302を備えている。外部制御部301は、CPU304、ROM305、RAM306、入出力ポート307、および通信回路308を備えており、それらがバス309によって接続されている。なお、
図1では説明の簡略化のために外部入出力回路302を1つのブロックとして示しているが、接続される装置に対応した複数の回路で構成することができる。
【0020】
CPU304は、ROM305に記憶されているプログラムを実行することにより、外部装置3を制御するとともに、車両用装置2との間の通信や自身に実装されている各種の機能を提供する。このCPU304は、1つあるいは複数の半導体装置により構成することができる。本実施形態では、外部制御部301は、車両用装置2の制御部201と同じものを採用している。ただし、外部制御部301は、制御部201よりも処理性能が高いものを採用することができるし、制御部201よりも処理性能が低いものを採用することもできる。
【0021】
ROM305は、CPU304が実行するプログラムやプログラムを実行する際に参照されるデータなどを記憶する。このROM305は、外部装置3に設けられた外部側記憶部を構成している。また、外部装置3は、車両用装置2側から送信されたデータを記憶したり、自身が記憶しているデータを車両用装置2側に送信したりすることができる。
【0022】
入出力ポート307は、外部制御部301と他の装置との間で信号の入出力を行わせるための回路である。本実施形態では、他の装置として、車両用装置2、車両用装置2に接続されている周辺機器4やECU6、ユーザの外部端末7との間で通信を行う外部通信回路310などを想定している。
【0023】
通信回路308は、本実施形態では車両用装置2と通信するためのUSB規格に準拠したものである。外部通信回路310は、例えばWi-Fi(登録商標)による通信を行うWi-Fi通信回路310a、Bluetooth(登録商標)により通信を行うBT通信回路310b、電話回線網のような広域ネットワークを利用して通信を行う移動体通信回路310cなどにより構成されている。本実施形態では、外部端末7との間ではBT通信回路310bにより通信が行われる。ただし、外部通信回路310は、必ずしも上記した複数の方式を備えていなくてもよいし、例えば有線接続方式で通信するなど他の方式の構成とすることができる。
【0024】
周辺機器4は、例えばセンタディスプレイ4a、メータディスプレイ4b、ヘッドアップディスプレイ4c、スピーカ4d、カメラ4e、位置検出機4f、チューナ4g、DSM4h、LIDAR4iなどが想定される。ただし、
図1に示した周辺機器4の種類や数は一例であり、車両用装置2は必ずしもこれら全てと接続されている必要は無く、また、例示していない他の周辺機器4を接続することもできる。
【0025】
センタディスプレイ4aは、例えば運転席と助手席との間の前方に配置される。このセンタディスプレイ4aは、例えばナビゲーション機能などを実行する際の表示画面や、表示領域に対応して設けられている図示しないタッチパネルを利用する際の操作画面として使用される。つまり、センタディスプレイ4aは、ユーザの操作を入力する入力部としても機能する。
【0026】
ただし、入力部としては、タッチパネル以外にも例えば画面の周囲に図示しない機械式の操作スイッチを配置して操作を入力する構成とすることができる。また、入力部としては、他のディスプレイや図示しないステアリングスイッチなどを採用したり、それらをタッチパネルや操作スイッチとを共用したりすることができる。
【0027】
メータディスプレイ4bは、ステアリングの前方に配置されて、速度や回転数などのメータ表示、警告灯などの表示を行う。ヘッドアップディスプレイ4cは、運転者の前方に配置されているウィンドシールドやダッシュボードに配置された表示板に各種の情報を表示する。
【0028】
スピーカ4dは、車室内に設置され、車両用装置2あるいは外部装置3から出力される音声データに基づいた音声を出力する。スピーカ4dは、例えば車両用装置2や外部装置3からの警告や操作案内あるいは楽曲の再生などに用いられる。また、スピーカ4dは、外部端末7からの音声の出力に利用することができる。
【0029】
位置検出機4fは、図示しないGPS受信機やジャイロセンサなどによって構成されており、車両の現在位置や向きを取得する。なお、GPSは、Global Positioning Systemの略である。GPS受信機は、GPS衛星から送信されるGPS測位信号を受信して、受信したGPS測位信号を出力するものであり、ジャイロセンサは、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を中心とした回転の角速度を検出するものである。
【0030】
カメラ4eは、例えば、車両の後側に取り付けられており、車両の後方の状況を連続して撮影する。このカメラ4eで撮像された画像は、例えば画像内に存在する物体の検出結果や車両を誘導するための誘導ラインなどとともにセンタディスプレイ4aや他のディスプレイに表示される。チューナ4gは、AM放送およびFM放送のラジオ放送信号を受信する。また、チューナ4gとしてテレビ放送を受信するものを備えることもできる。
【0031】
DSM4hは、撮像装置などで構成されており、運転者の顔を撮影した顔画像を画像解析することにより運転者の状態を検出するドライバステータスモニタである。なお、DSMは、Driver Status Monitorの略である。LIDAR4iは、レーザ光を送受信することで、車両の周囲に存在する物体の位置を検出する。なお、LIDARは、Light Detection and Rangingの略である。
【0032】
ECU6は、車両に搭載されている電子機器である。一般的な車両には複数のECU6が搭載されており、車両用装置2は、これらのECU6からエンジンやモータのような駆動部の駆動状態やドアの開閉状態などの車両に関する各種の情報を取得する。なお、
図1では説明の簡略化のために1つのECU6を示しているが、車両用装置2は複数のECU6と車内ネットワーク6aを介して通信可能に接続されている。
【0033】
このECU6は、自身に実装されている機能を実行するECU制御部601と、車両用装置2や他のECU6あるいは自身に接続されているセンサ等の車載機器10など通信するための外部入出力回路602を備えている。ECU制御部601は、CPU604、ROM605、RAM606、入出力ポート607を備えており、それらがバス609によって接続されている。なお、
図1では説明の簡略化のために外部入出力回路602を1つのブロックとして示しているが、接続される装置に対応した複数の回路で構成することができる。
【0034】
CPU604は、ROM605に記憶されているプログラムを実行することによりECU6を制御するとともに、車両用装置2との間の通信や自身に実装されている各種の機能を提供する。このCPU604は、1つあるいは複数の半導体装置により構成することができる。ROM605は、CPU604が実行するプログラムやプログラムを実行する際に参照されるデータなどを記憶する。このROM605は、ECU6に設けられたECU側記憶部を構成している。
【0035】
入出力ポート607は、ECU制御部601と他の装置との間で信号の入出力を行わせるための回路である。本実施形態では、他の装置として、車両用装置2、車両用装置2に接続される外部装置3、外部装置3に接続される外部端末7などを想定している。そして、ECU6は、車両用装置2側からの要求に応じてデータを送受信可能になっている。
【0036】
外部端末7は、例えばいわゆるスマートフォンやタブレット端末などを想定している。ただし、後述するように外部装置3は車両から持ち出して利用することができるため、そのような場合には例えばパソコンなども外部端末7として想定される。
【0037】
次に、車両用システム1の基本的なソフトウェア構成について説明する。
図2に示すように、車両用システム1では、車両用装置2および外部装置3にそれぞれオペレーティングシステムが実装されている。以下、オペレーティングシステムをOS8と称する。なお、OSはOperating Systemの略である。また、
図2では、説明の簡略化のために幾つかの周辺機器4の図示を省略するとともに、各OS8が提供可能な機能を実現するアプリケーション9のうち幾つかを抜粋した例示している。ただし、車両用装置2および外部装置3が備えるアプリケーション9は
図2に示したものに限定されない。以下、アプリケーション9を単にアプリとも称する。
【0038】
車両用装置2は、制御部201上に、ハイパーバイザ211、サービスバス212、ファイアウォール213、RTOS81、MMOS82Aが実装されている。なお、RTOSはReal Time OSの略であり、MMOSはMulti Media OSの略である。
【0039】
つまり、本実施形態の場合、車両用装置2には複数のOS8が動作可能な仮想化環境が構築されている。ただし、本実施形態では車両用装置2と外部装置3にそれぞれMMOS82を実装していることから、両者を区別し易くするために、車両用装置2に実装されているMMOS82にはAを付し、外部装置3に実装されているMMOS82にはBを付して説明する。また、RTOS81やMMOS82に共通する事項を説明する場合には単にOS8と称することがある。また、MMOS82AとMMOS82Bとに共通する事項を説明する場合には単にMMOS82と称することがある。
【0040】
ハイパーバイザ211は、一般的な技術であるため詳細な説明は省略するが、RTOS81とMMOS82Aのような複数のOS8を制御部201上で並列に実行可能とするためのプログラムであり、各OS8を管理する機能や各OS8間の通信を補助する機能などを有している。ただし、ハイパーバイザ211は、例えばRTOS81が備える機能の一部として実装することもできる。
【0041】
サービスバス212は、各OS8のアプリケーション層と、それよりも下位の任意の層を示す下位層との間のデータのやり取りを行うためのプログラムである。このサービスバス212は、車両用装置2と外部装置3とがあたかも1つの装置であるかのようにデータをやり取りすることを可能とするために、下位層で用いるデータとアプリケーション層で用いるデータとの対応付けを行うためのデータベースを備えている。
【0042】
また、サービスバス212は、データベースを参照することによってアプリケーション層と下位層との間でデータの形式を変換し、車両用装置2内におけるRTOS81とMMOS82Aとの間、および、車両用装置2と外部装置3との間におけるデータのやり取りを可能にする。
【0043】
ファイアウォール213は、各OS8間の不正なアクセスや、外部からのRTOS81やMMOS82Aに対する不正なアクセスなどを制限する機能を備えている。なお、ファイアウォール213を実装するか否かは適宜選択すればよく、他の手法でセキュリティを確保できる場合にはファイアウォール213を実装しない構成とすることもできる。
【0044】
RTOS81は、リアルタイム性が求められる処理の実行に適したものであり、車両の制御や安全性に関わる処理などを主として実行する。このRTOS81には、HMI処理部220が実装されている。HMI処理部220は、周辺機器4や他のアプリケーション9から入力されるデータに基づいて、センタディスプレイ4aやメータディスプレイ4bあるいはヘッドアップディスプレイ4cへの表示制御に関する処理を実行する。また、HMI処理部220は、アプリケーション9から指示や画像作成の命令等に従って、図示しないGPUを利用した画像データの作成等の処理も実行する。なお、なお、HMIは、Human Machine Interfaceの略であり、GPUは、Graphics Processing Unitの略である。
【0045】
また、RTOS81では、各種の表示出力や音声出力などの処理が実行される。そのため、RTOS81にはアプリケーション9として例えばメータアプリ9a、HUDアプリ9b、カメラアプリ9cなどが実装されており、それぞれ機能を提供する。なお、HUDはHead Up Displayの略である。
【0046】
メータアプリ9aは、メータディスプレイ4bに表示する例えば速度計や警告灯などの画像を生成するための指示や必要になる画像を生成するための演算を行う。つまり、本実施形態のメータアプリ9aは、メータディスプレイ4bへのアクセスを直接的に行うのではなく、メータディスプレイ4bへの画像の表示はHMI処理部220に行わせる構成となっている。
【0047】
HUDアプリ9bは、ヘッドアップディスプレイ4cへの表示を制御するための機能を実現するものである。このHUDアプリ9bは、画像を生成するための指示や必要になる画像を生成するための演算を行う構成となっており、実際のヘッドアップディスプレイ4cへの画像の表示はHMI処理部220に行わせる構成となっている。
【0048】
カメラアプリ9cは、カメラ4eによる撮影画像の表示を制御する機能を実現するためのものであり、画像中に存在する物体を検出、車両がバックする際の誘導ラインの演算等の処理を行う。このカメラアプリ9cは、画像を生成するための指示や必要になる画像を生成するための演算を行うものであり、センタディスプレイ4aへの画像の表示や撮影画像と誘導ラインとの合成などはHMI処理部220に行わせる構成となっている。
【0049】
MMOS82Aは、例えば一般的な外部端末7などに利用されている汎用的なものであって、マルチメディア系の処理の実行に適したものである。本実施形態では、MMOS82としてAndroid(登録商標)を採用している。また、MMOS82A2とMMOS82Bは、同一のバージョンあるいは十分な互換性を有するバージョンであるものとする。
【0050】
このMMOS82Aには、例えばラジオアプリ9d、エアコンアプリ9e、ナビアプリ9fなどが実装されており、それぞれ機能を提供する。ラジオアプリ9dは、チューナ4gで受信したラジオ放送信号やテレビ放送信号に基づいてスピーカ4dに音声を出力する。エアコンアプリ9eは、車両に搭載されているエアコンディショナの制御を行う。ナビアプリ9fは、位置検出機4fが検出した位置情報などに基づいて、車両の現在地の表示、現在地から目的地までの経路の案内のための演算等を行うことでいわゆるナビゲーション機能を提供する。
【0051】
本実施形態において車両用装置2に実装されているこれらの機能は、製品が変わったとしても利用される機能となっている。換言すると、車両用装置2には、主として製品の種類によらず共通する機能が実装されている。ただし、ここで例示した機能の種類や数は一例であり、車両用装置2に実装される機能はこれらに限定されない。
【0052】
一方、外部装置3のMMOS82Bには、HMI処理部320や外部通信アプリ9gが実装されている。このHMI処理部320は、車両用装置2のHMI処理部220と同様に表示制御に関する処理を実行する。このとき、HMI処理部320は、外部装置3に接続されている周辺機器4であるリアシートディスプレイ4jへの表示に関する処理を実行する。また、外部通信アプリ9gは、外部端末7との間の通信に関する処理を実行する。つまり、車両用システム1では、車両用装置2には備わっていない機能、換言すると、製品の種類によって異なる機能が実装されている。ただし、ここで例示した機能の種類や数は一例であり、外部装置3に実装される機能はこれらに限定されない。
【0053】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
まず、車両用システム1は、上記したように各装置間での通信が可能な構成となっている。例えば、
図3に矢印T1で示したように、車両用システム1は、車両用装置2から外部装置3を介してリアシートディスプレイ4jに情報をシームレスに表示することができる。つまり、車両用システム1は、外部装置3側に実装されている機能を車両用装置2から利用可能に構成されている。
【0054】
また、矢印T2で示したように、車両用システム1は、外部装置3から車両用装置2を介してセンタディスプレイ4aに情報をシームレスに表示することができる。つまり、車両用システム1は、車両用装置2側に実装されている機能を外部装置3側から利用可能に構成されている。なお、外部装置3側とは、外部装置3と外部端末7とを含む意味である。
【0055】
この場合、車両用装置2から直接的にリアシートディスプレイ4jに表示したり、外部装置3から直接的にセンタディスプレイ4aに表示したりする構成としてもよいが、表示するデータを相手に受け渡し、相手側で表示制御を行う構成とすることもできる。すなわち、車両用システム1は、例えば車両用装置2の処理の一部を外部装置3に移管したり、外部装置3の処理の一部を車両用装置2に移管したりすることができる。
【0056】
あるいは、車両用システム1は、矢印T3で示したようにECU6が車載機器10から収集したデータを車両用装置2に送信して車両用装置2で利用したり、矢印T4で示したように車両用装置2を経由して外部装置3に送信して外部装置3で利用したり、矢印T5で示したように、外部装置3を経由して外部端末7のデータをECU6に送信してECU6で利用したりすることができる。つまり、車両用システム1は、外部装置3から車両用装置2を介してECU6に実装されている機能を利用可能であるとともに、自身に実装されている機能をECU6から利用可能になっている。
【0057】
さて、ここまでは車両用システム1の1つの利用形態について説明してきたが、前述のように、車両用システム1に求められる機能は製品の種類によって異なることがある。例えば、同じメーカの同一製品群の車両用装置2であっても、その仕様は、例えば相対的に高価な製品のほうが実装されている機能の数や種類が多いことがある。また、車両用装置2は、車両に搭載されている周辺機器4の種類や数に応じて要求されるハードウェア構成やソフトウェア構成が異なることも想定される。
【0058】
そして、従来では、その仕様や要求されるハードウェア構成やソフトウェア構成に応じた複数種類の車両用装置2を個別に開発や設計していた。しかし、その場合には、車両用装置2の種類ごとにハードウェアやソフトウェアを開発する必要があり、費用や人員において多大なリソーセスを必要としていた。また、仮に予め拡張性を持たせておいたとしても、出荷後に機能を追加あるいは拡張するためにはディーラやメーカでの作業が必要になっていた。さらに、将来の拡張性を見越して予め高性能のハードウェアを用意することは、主にコスト面から好ましくない。
【0059】
そこで、車両用システム1は、求められる機能が異なる製品であってもリソーセスを削減して開発や設計をすることができるとともに、製品の種類や搭載される車両に応じて機能の拡張も容易に行うことができるようにしている。
【0060】
まず、上記したように
図1は車両用システム1の構成例の1つであり、リアシートディスプレイ4jを備えた車両に用いることを想定したものである。そして、
図4は、リアシートディスプレイ4jは備えていないものの、音声を入力するためのマイク4kを備えた車両に用いる場合の車両用システム1の構成例を示している。また、
図5は、
図4に示した車両用システム1のソフトウェア構成例を示している。
【0061】
そして、車両用システム1は、
図1の構成例と
図4の構成例とを比較することで明らかなように、外部装置3に接続される周辺機器4がリアシートディスプレイ4jであってもマイク4kであっても、車両用装置2のハードウェア構成は共通したものになっている。また、
図2の構成例と
図5の構成例とを比較することで明らかなように、外部装置3に接続される周辺機器4がリアシートディスプレイ4jであってもマイク4kであっても、車両用装置2のソフトウェア構成は共通したものになっている。なお、
図5では、HMI処理部320にて音声入力に関する処理を実行することを想定しているが、音声処理用のアプリケーション9を実装することもできる。
【0062】
つまり、車両用システム1では、周辺機器4の種類や数が異なっていても、車両用装置2を基本的に同じハードウェア構成および同じソフトウェア構成とすることができる。これにより、車両用装置2については、同じハードウェアを用いて開発や設計をすることができる。そして、外部装置3は、例えば車両に搭載されている周辺機器4によって異なるソフトウェア構成となっている。なお、外部装置3のハードウェア構成は、周辺機器4に種類や数によって変更することもできる。
【0063】
すなわち、車両用システム1は、製品の種類によって共通する機能については車両用装置2に実装し、製品の種類によって異なる機能については外部装置3に実装している。これにより、車両用装置2は、共通する機能を提供する構成での開発や設計、つまりは、製品の種類によらず共通するハードウェアを利用した開発や設計を行うことができる。
【0064】
そして、車両用装置2と外部装置3との間は、本実施形態ではUSBケーブルによって接続されている。そのため、車両用装置2と外部装置3との接続を容易に行うことができる。換言すると、車両用装置2に対して、製品の種類によって異なる機能を容易に追加および拡張することができる。また、出荷後において機能を追加あるいは拡張する場合であっても、容易に作業することができる。
【0065】
したがって、機能が異なる製品であってもリソーセスを削減して開発や設計をすることができるとともに、機能の拡張も容易に行うことができる車両用システム1を提供することができる。
【0066】
また、車両用システム1は、外部装置3に実装されている機能を車両用装置2から利用可能になっている。これにより、車両用装置2が備えていない機能を、車両用装置2が主体となってシームレスに制御することができる。
【0067】
また、車両用システム1は、車両用装置2に実装されている機能を外部装置3側から利用可能になっている。これにより、外部装置3が備えていない機能を、外部装置3が主体となってシームレスに制御することができる。
【0068】
また、車両用システム1は、外部装置3から車両用装置2を介してECU6に実装されている機能を利用可能であるとともに、自身に実装されている機能をECU6から利用可能になっている。これにより、各装置のリソースを有効活用することができる。
【0069】
また、車両用システム1は、
図6に示すように、車両用装置2と複数の外部装置3とを接続することができる。この場合、
図6に他の構成例その1として示すように、車両用装置2に接続されている外部装置3にさらに他の外部装置3を接続するデイジーチェーン方式で複数の外部装置3を接続する構成とすることができる。この場合、外部装置3間を例えばUSBケーブルで接続することにより、機能の拡張を容易に行うことができる。
【0070】
あるいは、車両用システム1は、他の構成例その2として示すように、車両用装置2に対して複数の外部装置3を接続する構成とすることができる。この場合、例えば車両用装置2に複数のUSBポートを設け、各外部装置3との間をそれぞれUSBケーブルで接続することにより、機能の拡張を容易に行うことができる。また、車両用装置2との間の接続、および外部装置3間の接続は、他の有線方式あるいは無線方式で接続することができる。このとき、無線通信方式で接続することにより、機能の拡張をさらに容易に行うことができる。
【0071】
また、外部装置3に対して、製品の出荷後に更新が必要になることが想定される機能、または、車両用装置2に実装されている機能に比べて更新頻度が相対的に多いことが想定される機能を実装する構成とすることができる。この場合、機能としてはOS8およびアプリケーション9の双方を含んでいる。例えば、本実施形態で外部装置3側のOS8として採用しているAndroidOSは、車両用装置2の製品寿命に比べると、バージョンアップによる更新の頻度が非常に高いと考えられる。また、OS8がバージョンアップした場合にはアプリケーション9の更新も必要になると考えられるとともに、アプリケーション9をバージョンアップしたい場合にはOS8の更新が必要になることもある。
【0072】
そこで、外部装置3にそれらの機能を集約することにより、製品の出荷後であってもOS8やアプリケーション9の更新をすることができる。また、外部装置3そのものを更新することも可能となり、更新の作業などを容易に行うことができる。また、車両用装置2側には基本的に更新が必要ないことから、例えば安全にかかわる処理を担っていることが想定される車両用装置2に影響を与えることも防止できる。
【0073】
また、ハイパーバイザ211を各OS8から独立した形で実装し、そのハイパーバイザ211上で各OS8を動作させる例を示したが、他の構成とすることができる。例えばRTOS81がハイパーバイザ211機能を備えている場合には、まずRTOS81を起動してハイパーバイザ211機能を有効化した後、そのRTOS81上でMMOS82Aを実行させる構成とすることもできる。
【0074】
車両用装置2に複数のOS8を実装し、外部装置3に1つのOS8を実装するソフトウェア構成例を示したが、他のソフトウェア構成とすることができる。例えば、車両用装置2に1つのRTOS81を実装し、外部装置3に複数のOS8を実装する構成とすることができる。
【0075】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、車両用システム1の具体的な利用形態であって、主として外部装置3側のデータを車両用装置2側で利用する例について説明する。また、車両用システム1の基本的なハードウェアおよびソフトウェアの構成は、外部装置3の一部構成を除いて概ね第1実施形態と共通することため
図1から
図6も参照しながら説明する。
【0076】
車両用装置2は、搭乗者がいない運転停止状態ではメイン電源からの電源供給がオフされている。そのため、車両用装置2が利用するナビゲーション時の目的地などの設定用のデータや、ECU6から取得される車速や燃料の残量あるいはバッテリの状態といった制御用または制御系のデータは、実際に車両に搭乗し、エンジンキーをオンしたり始動スイッチを操作したりすることによって車両用装置2を動作させる必要があった。
【0077】
換言すると、車両用装置2側に対して何らかの設定等をしたり、車両用装置2側から何らかのデータを受け取ったりするためには、基本的に車両用装置2の近くで操作する必要があった。なお、車両用装置2側とは、車両用装置2、車両用装置2に接続されている周辺機器4やECU6を意味している。
【0078】
そこで、本実施形態の車両用システム1は、車両に搭乗することなく、事前にあるいは遠隔から車両用装置2側に対して設定やデータの受け渡しを可能にしている。具体的には、第1実施形態で説明したように、車両用システム1の外部装置3は、外部端末7と通信可能に接続されることで、外部端末7との間でデータの送受信が可能になっている。また、車両用システム1を構成する車両用装置2、外部装置3およびECU6は、互いに通信可能に接続されることで、同様にデータの送受信が可能になっている。
【0079】
そして、本実施形態では、外部装置3に実装されている外部通信アプリ9gは、外部端末7との間の通信に関する処理を実行するとともに、外部端末7から車両用装置2や周辺機器4あるいはECU6に受け渡すためのデータを受け取り、受け取ったデータを車両用装置2や周辺機器4あるいはECU6に受け渡す処理を実行する。
【0080】
つまり、外部装置3は、外部端末7からアクセスが可能に構成されているとともに、そのアクセスの結果である例えばデータを車両用装置2や周辺機器4あるいはECU6に反映可能になっている。このとき、受け渡されるデータとしては、外部端末7で検索して車両用装置2が備えるナビアプリ9fで利用するための目的地のデータ、外部端末7に記憶されていて周辺機器4であるスピーカ4dから出力される楽曲データ、例えばシートの位置や傾きを好みに合わせて変更するために電子制御装置であるECU6に送信したいシートポジションなどが想定される。ただし、受け渡すデータの種類や数はこれらに限定されない。
【0081】
このとき、外部装置3は、
図7に示すように、車両用装置2を経由して、車両に搭載されている車載バッテリ11からバックアップ電源供給を受ける構成となっている。なお、
図7では、バックアップ電源を+Bと示している。この場合、通信回線5を電源供給可能なケーブルで構成することにより、電源供給を受けることができる。
【0082】
あるいは、外部装置3は、
図8に示すように、内蔵している内蔵バッテリ311から電源供給を受けることにより、車両用装置2と物理的に接続されていなくても単体で動作が可能な構成とすることができる。この場合、外部装置3を車両の外に持ち出すことも可能になる。なお、
図8では、車両用装置2を破線とすることにより、外部装置3が車両用装置2と接続されていないことを模式的に示している。
【0083】
また、
図8では、車両用装置2と接続されている場合にはバックアップ電源から電源供給を受け、車両用装置2との接続が解除された場合には内蔵バッテリ311から電源供給を受ける構成を示している。以下、車載バッテリ11と内蔵バッテリ311とを併用する構成を例にして説明する。ただし、外部装置3は、車載バッテリ11と内蔵バッテリ311の少なくとも一方から電源供給を受ける構成であればよい。また、外部装置3は、車載バッテリ11からではなく、USBケーブルを接続した外部端末7などの別の装置から電源供給を受ける構成とすることもできる。
【0084】
この場合、外部端末7との通信にBT通信回路310bを利用することで電力消費を抑制すれば、車載バッテリ11からバックアップ電源が供給されている場合であっても、例えば車両の外部のスマートフォンなどとの間で通信することができる。なお、
図7では、車両用装置2側を破線とすることにより、車両用装置2が動作していない状態であることを模式的に示している。
【0085】
そして、このような構成の車両用システム1は、車両停止状態であっても外部端末7との間で通信可能であるとともに、外部端末7から例えば目的地の設定を行うことが可能になる。なお、外部端末7からアクセスされた結果、例えば設定や制御のためのデータは、外部装置3のROM305の書き込み可能な領域に記憶される。
【0086】
このとき、外部装置3に対する操作は、外部端末7を用いることにより行うことができる。これにより、比較的メーカごとにメニュー表示等が異なり、ある程度操作に慣れている必要がある車両用装置2ではなく、ユーザが普段から利用していると想定されるスマートフォンなどから設定等の操作を行うことが可能になり、操作性を向上させることもできる。
【0087】
そして、車両用システム1は、
図9に示すように車両用装置2に接続された際、記憶しているデータつまりは外部端末7からのアクセスの結果を、矢印T21にて示すように車両用装置2に対して、あるいは、矢印T22にて示すようにECU6に対して送信つまりは反映させる。なお、
図9では、外部端末7を破線とすることにより、アクセス結果を反映させる際には外部端末7は不要であることを模式的に示している。
【0088】
このような構成とすることにより、車両用システム1では、車両に搭乗するよりも前の時点で、また、必ずしも車両用装置2の近くに居る必要が無い遠隔で、車両用装置2側に対する設定等を行うことができる。また、例えば遠隔から操作可能であることから、実際に搭乗する人物とは異なる人物による設定等を行うこともできる。
【0089】
以上説明したように、車両用システム1は、車両用装置2と、単体で動作可能であり、車両用装置2と通信可能に接続される外部装置3と、を備えている。そして、外部装置3は、外部端末7からアクセスが可能であるとともに、当該アクセスの結果を車両用装置2に反映可能になっている。これにより、車両用システム1は、実際に車両に搭乗したり、車両用装置2を動作させたりすることなく、事前にあるいは遠隔から車両用装置2側に対して設定等を行うことができる。
【0090】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車両用装置2に実装されている機能に関して外部端末7からアクセスが可能であり、車両用装置2に接続された際、当該外部端末7からのアクセスの結果を車両用装置2側に反映させる。これにより、車両用装置2を直接的に操作しなくても設定等を行うことができ、車両用装置2の操作に不慣れな者であっても容易に設定を行うことができる。
【0091】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車両用装置2に接続されている周辺機器4に関して外部端末7からアクセスが可能であり、車両用装置2に接続された際、当該外部端末7からのアクセスの結果を車両用装置2側に反映させる。これにより、車両用装置2だけでなく、周辺機器4に対する設定も外部端末7から行うことができ、車両用装置2の操作に不慣れな者であっても容易に設定を行うことができる。
【0092】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車両用装置2が動作していない場合であっても、あるいは、車両用装置2と接続されていない状態であっても、単体で動作が可能である。これにより、車両に搭乗しなくても、遠隔からでも車両の外に持ち出したような場合であっても、車両用装置2側に設定等を行うことができる。
【0093】
また、車両用システム1では、外部装置3は、有線方式または無線方式の通信経路によって外部端末7と通信可能に接続される。これにより、外部端末7から外部装置3へのアクセスを容易に行うことができる。
【0094】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車載バッテリ11から電源供給を受けることにより単体での動作を可能にする。これにより、車両用装置2が動作していなくても外部端末7からアクセスすることができる。
【0095】
また、車両用システム1では、外部装置3は、内蔵している内蔵バッテリ311から電源供給を受けることにより単体での動作を可能にする。これにより、車両用装置2と接続しなくても、また、外部装置3を車両の外に持ち出したりした場合であっても、外部端末7からアクセスすることができる。
【0096】
また、本実施形態の車両用システム1によっても、製品の種類によって異なる機能を容易に追加および拡張することができるとともに、車両用装置2と外部装置3との接続を容易に行うことができることから出荷後において機能の追加や拡張の作業を容易に行うことができるなど、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、車両用システム1の他の具体的な利用形態であって、主として車両用装置2側のデータを外部装置3側で利用する例について説明する。また、車両用システム1の構成は概ね第2実施形態と共通するため
図6から
図8を参照しつつ、基本的なハードウェアおよびソフトウェアの構成については
図1から
図5も参照しながら説明する。
【0098】
車両用装置2は、搭乗者がいない運転停止状態ではメイン電源からの電源供給がオフされている。そのため、車両用装置2に記憶されている例えばDSM4hのモニター結果のデータや、ECU6から取得される車速や燃料の残量あるいはバッテリの状態といった制御用または制御系のデータを外部で利用したい場合には、実際に車両に搭乗し、エンジンキーをオンしたり始動スイッチを操作したりすることによって車両用装置2を動作させる必要があった。
【0099】
換言すると、車両用装置2側からデータを取得するためには、基本的に車両用装置2の近くで操作する必要があった。なお、車両用装置2側とは、車両用装置2、車両用装置2に接続されている周辺機器4やECU6を意味している。
【0100】
そこで、本実施形態の車両用システム1は、車両に搭乗することなく、また、車両用装置2を始動させることなく、あるいは、遠隔からであっても、車両用装置2側から取得したデータに対して、外部装置3あるいは外部端末7からのアクセスを可能にしている。
【0101】
車両用システム1では、第1実施形態で説明したように、車両用装置2、外部装置3、周辺機器4およびECU6との間が通信可能に接続されている。そのため、
図10に示すように、外部装置3を車両用装置2に接続した状態では、矢印T31にて示すように車両用装置2に記憶されているデータを外部装置3に送信したり、矢印T32にて示すようにECU6が例えば車載機器10から収集したデータを外部装置3に送信したりすることができる。
【0102】
このとき、車両用装置2側から外部装置3側へのデータの送信、つまりは、外部装置3側からのデータの吸い上げは、車両用装置2の動作中に所定の周期で定期的に行ったり、データが変更されたタイミングで行ったり、走行データに異常があるなど外部に通知すべきデータが発生したタイミングで行うなど、適宜あるいは任意のタイミングで行うことができる。
【0103】
そして、外部装置3は、外部端末7との間でのデータの送受信も可能になっている。つまり、外部装置3は、車両用装置2側から受信したデータに対する外部端末7からのアクセスを可能にしている。そのため、矢印T33にて示すように例えばBT通信回路310bにより外部装置3からユーザが所有するスマートフォン等の外部端末7にデータを送信したり、矢印T34にて示すように移動体通信回路310cにより広域ネットワーク網12を介して例えばクラウドサーバやストレージで構成された外部端末7aにデータを送信したりすることができる。
【0104】
このとき、移動体通信回路310cを経由したデータの吸い上げであれば、車両が走行中であっても行うことができ、搭乗者特には運転者の状態や車両の状態をリアルタイムに吸い上げることができる。ただし、外部端末7で吸い上げるデータの種類や数はこれに限定されず、必要なデータを適宜選択することができる。また、外部端末7aは、クラウドサーバやストレージに限らず、ユーザが所有する携帯端末やパソコン等であってもよい。以下、それらを単に外部端末7と総称する。
【0105】
また、外部装置3は、第2実施形態で説明したように、また、
図11に示すように、車両用装置2が動作していない状態であっても、また、車両用装置2側との接続が解除された状態であっても、単体で動作することができる。なお、
図11では、車両用装置2側を破線にて示すことにより、接続が解除された状態および車両用装置2が動作していない状態を模式的に示している。
【0106】
そして、単体で動作が可能な外部装置3と外部端末7との間で通信することにより、車両用装置2の電源がオフされている場合であっても、あるいは、外部装置3を車両の外に持ち出した状態であっても、外部装置3に記憶されている上記した各種のデータを外部端末7で収集することができる。また、外部端末7にデータを送信せず、外部装置3が単体でそれらのデータを利用することもできる。
【0107】
以上説明したように、車両用システム1は、車両用装置2と、単体で動作可能であり、車両用装置2と通信可能に接続される外部装置3と、を備えている。そして、外部装置3は、車両用装置2側からデータを受信するとともに、受信したデータに対する外部端末7からのアクセスを可能にする。
【0108】
これにより、車両用システム1は、車両に搭乗することなく、また、車両用装置2を始動させることなく、あるいは、遠隔からであっても車両用装置2側から取得したデータに対して、外部装置3あるいは外部端末7からアクセスすることができる。
【0109】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車両用装置2が動作していない場合であっても、あるいは、車両用装置2と接続されていない状態であっても、単体で動作が可能である。これにより、車両に搭乗しなくても、遠隔からでも車両の外に持ち出したような場合であっても、車両用装置2側に設定等を行うことができる。
【0110】
また、車両用システム1では、外部装置3は、有線方式または無線方式の通信経路によって外部端末7と通信可能に接続される。これにより、外部端末7から外部装置3へのアクセスを容易に行うことができる。
【0111】
また、車両用システム1では、外部装置3は、車載バッテリ11から電源供給を受けることにより単体での動作を可能にする。これにより、車両用装置2が動作していなくても外部端末7からアクセスすることができる。
【0112】
また、車両用システム1では、外部装置3は、内蔵している内蔵バッテリ311から電源供給を受けることにより単体での動作を可能にする。これにより、車両用装置2と接続しなくても、また、外部装置3を車両の外に持ち出したりした場合であっても、外部端末7からアクセスすることができる。
【0113】
また、本実施形態の車両用システム1によっても、製品の種類によって異なる機能を容易に追加および拡張することができるとともに、車両用装置2と外部装置3との接続を容易に行うことができることから出荷後において機能の追加や拡張の作業を容易に行うことができるなど、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
さらに、第2実施形態と組み合わせて、外部装置3を外部端末7からアクセスが可能であるとともに、当該アクセスの結果を車両用装置2に反映可能にすることにより、車両用システム1は、実際に車両に搭乗したり、車両用装置2を動作させたりすることなく、事前にあるいは遠隔から車両用装置2側に対して設定等を行うことができるなど、第2実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0115】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に含まれるものである。
【0116】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0117】
図面中、1は車両用システム、2が車両用装置、3は外部装置、4は周辺機器、5は通信回線、6はECU(電子制御装置)、7は外部端末、8はOS(機能)9はアプリケーション(機能)、10は車載機器、11は車載バッテリ、220、320はHMI処理部(機能)、311は内蔵バッテリを示す。