(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016604
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】プラズマエッチング装置用の電極
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190711
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2021095063の分割
【原出願日】2015-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2014266571
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014266572
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014266573
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014266574
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014266575
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314016328
【氏名又は名称】エーサット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
(57)【要約】
【課題】ガス導入孔の状態が高精度に測定されたプラズマエッチング装置用の電極を提供すること。
【解決手段】プラズマエッチング装置用の電極は、主材料がシリコン、石英を含む少なくとも2種類の材料、および炭化珪素のうちのいずれかであり、複数のガス導入孔が設けられた基材を備え、基材を非破壊の状態で、かつ複数のガス導入孔の全てについて、以下の測定方法により測定した場合、測定結果の標準偏差が一定の値以下となる複数のガス導入孔を備える。測定方法は、基材の一方面側からガス導入孔に向けて光を照射する照射工程と、ガス導入孔を介して基材の他方面側に透過した光の2次元画像を取得する2次元画像取得工程と、2次元画像の少なくとも境界部分での信号変化を演算する画像処理工程と、画像処理工程での2次元画像の信号処理の結果に基づいてガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する測定工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマエッチング装置用の電極であって、
主材料がシリコン、石英を含む少なくとも2種類の材料、および炭化珪素のうちのいずれかであり、厚さ方向に貫通する複数のガス導入孔が設けられた板状の基材を備え、
前記基材を非破壊の状態で、かつ前記基材に設けられた前記複数のガス導入孔の全てについて以下の測定方法により測定した場合、測定結果の標準偏差が一定の値以下となる前記複数のガス導入孔を備えたことを特徴とするプラズマエッチング装置用の電極。
前記測定方法は、
前記基材の一方面側から前記ガス導入孔に向けて光を照射する照射工程と、
前記ガス導入孔を介して前記基材の他方面側に透過した前記光の2次元画像を取得する2次元画像取得工程と、
前記2次元画像の少なくとも境界部分での信号変化を演算する画像処理工程と、
前記画像処理工程での前記2次元画像の信号処理の結果に基づいて前記ガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する測定工程と、
を備える。
【請求項2】
プラズマエッチング装置用の電極であって、
主材料がシリコン、石英を含む少なくとも2種類の材料、および炭化珪素のうちのいずれかであり、厚さ方向に貫通する複数のガス導入孔が設けられた板状の基材を備え、
前記基材を非破壊の状態で測定した場合、前記基材の一方面側の前記ガス導入孔の直上からカメラで取得した前記ガス導入孔の開口部画像に基づく直径と、前記基材の一方面側の前記ガス導入孔の直上から前記ガス導入孔に向けて光を照射し、前記ガス導入孔を介して前記基材の他方面側の前記ガス導入孔の真下に透過した前記光の2次元画像に基づく直径と、がほぼ等しくなる前記ガス導入孔を備えたことを特徴とするプラズマエッチング装置用の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング装置用の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置は、真空チャンバ内でプラズマを発生させて半導体ウェーハ等の対象物にエッチングを施す装置である。真空チャンバ内には対象物を載置する載置台と、この載置台に対向して配置される上部電極とが設けられる。載置台には下部電極が設けられる。また、上部電極には真空チャンバ内にガスを導入するための孔(ガス導入孔)が設けられる。対象物に処理を施す際には、この孔から真空チャンバ内にガスを導入し、下部電極と上部電極との間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させて対象物のエッチングを行う。
【0003】
この装置の低温プラズマを用いた半導体素子のエッチング微細加工はドライエッチングとも呼ばれる。ドライエッチングは半導体素子のプロセスである。ドライエッチングは、フォトリソグラフィ後に硬化した被エッチング膜上のフォトレジストパターンをマスクにして、反応性ガスのプラズマによりシリコン・絶縁物膜(例えば、SiO2、PSG、BPSG)・金属膜(例えば、Al、W、Cu)などに溝やホールのパターンをつけるプロセスである。これにより、リソグラフィ装置で形成したパターンに従い、正確に微細化加工が施される。
【0004】
ドライエッチングを行うには、真空チャンバ内に被エッチング膜に合わせてエッチングガスを導入し、高周波を印加してプラズマを発生させる。ドライエッチングは、レジスト(マスク材)に覆われていない領域をイオンの衝突により削る反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)の工程を経て行われる。
【0005】
プラズマ放電により生成したイオンをシリコンウェーハ上の被エッチング膜と表面化学反応をさせて、その生成物を真空排気することによってすることによってドライエッチングを進行させる。このプロセス後にレジストの有機物をアッシングプロセスにより、燃焼させる。微細パターンの寸法が被エッチング膜の厚みに近づくと、RIEが採用される。
【0006】
現在の半導体素子の形成は、このドライエッチングが主流となっている。特に、300mm(ミリメートル)サイズのシリコンウェーハを用いた半導体素子の超微細加工では集積度が高まり、線幅(Line)と線間(Space)とのピッチが厳しくなってきている。このため、ドライエッチングによる加工特性、歩留まり、生産性の向上がより求められる。
【0007】
CMOS半導体素子のデザインルールは14nm(ナノメートル)でゲート長9nmまで進み、エッチングの線幅と線間も同様に厳しくなる傾向にある。このような半導体素子の製造では、パターンの寸法精度だけではなく、パターンの腐蝕、発塵、チャージアップによるダメージ、経時変化等も克服すべき課題である。さらには、ウェーハの大口径化に対応できる反応ガスの導入により、発生させるプラズマを制御する技術が要望されている。
【0008】
ドライエッチングにおいては、加工精度、パターン形状、エッチング選択比、ウェーハ面内での加工の均一性、エッチング速度などが重要な要素となる。例えば、ドライエッチングによって形成されるパターンの加工断面を垂直にするためには、側壁保護膜と呼ばれるデポジション膜が厚くなり過ぎてはならない。また、側壁保護膜の膜厚バラツキがあると寸法変動の原因となる。したがって、側壁保護膜を不要とする理想的な低温エッチングのような技術が重要である。また、パターンの底部での不十分な側壁保護膜形成、表面をマイグレートする粒子、表面の温度、底部でのガスの流れなども考慮する必要がある。
【0009】
また、エッチングの均一性については、反応ガスの流れ、プラズマの均一性、バイアスの均一性、温度の均一性、反応生成物再付着の均一性など、各種条件の均一性が必要である。特に大口径(例えば、300mmサイズ)のウェーハに対して反応生成物再付着の不均一性は、エッチング処理の均一性にとって影響が大きい。
【0010】
プラズマエッチング装置やエッチング処理のコストを低減するためには、効率のよいプラズマ処理、連続処理、部品の長寿命化によるランニングコスト低減などが必要である。効率のよいプラズマ処理技術あるいは高スループットであるためには、加工不良発生低減、シーズニング時問削減、高稼働率(低故障率)、メンテナンス頻度低減などをどのように実現するかが課題である。特に、プラズマエッチング装置の上部電極はエッチング処理とともに消耗していく部品である。したがって、エッチング処理とともに変化する上部電極の状態、ガス導入孔の状態や、未使用時の電極の状態および使用前後での状態を非破壊でモニタリングする技術は、ドライエッチングの各種の課題を解決するために非常に重要である。
【0011】
ここで、プラズマエッチング装置において上部電極を製造するには、例えばシリコン単結晶の円盤にダイヤモンドドリルによるドリル加工などによってガス導入孔を形成している。特許文献1には、処理装置の構成部品(例えば、ガス噴出孔を有するシャワーヘッド部や上部電極)をエッチング液で表面処理する洗浄方法が開示されている。この技術では、ドリス穿孔加工時に発生するバリ等が除去され、構成部品の表面が平坦化される。
【0012】
この上部電極に設けられるガス導入孔の内径は200μm(マイクロメートル)から500μm程度と非常に小さい。しかも、板厚を貫通する必要があるため、ガス導入孔の長さは10mmを超えることも多い。このようなガス導入孔が精度良く形成されていないと、プラズマエッチングに必要なガスをチャンバ内に均一に導入することができず、対象物への処理が面内で不均一になりやすい。近年ではウェーハ等の対象物が大型化しており、数多くのガス導入孔を精度良く形成することは非常に重要となっている。
【0013】
ここで、上部電極に設けられた細長いガス導入孔の状態を非破壊で測定することは非常に難しい。このため、上部電極の寿命はガス導入孔の状態では管理されておらず、使用時間によって管理されている。すなわち、予め上部電極の使用時間とパーティクル発生量との関係をデータ取りしておき、このデータからパーティクル発生量が許容範囲を超える使用時間になった場合に上部電極の寿命であると判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ドライエッチングの被エッチング膜には、Si、poly-Si、Si3N4、SiO2、Al、W、cu、Ta2O5、TiN等が挙げられる。反応エッチングガスとしては、CF4、SF6、CL2、Hbr、CHF3、CH2F2、H2、C2F6、C4F8、BCL3等のハロゲン元素の化合物ガスが主に使用される。プラズマエッチング装置による被エッチング膜は、Siおよびpoly-Si膜用、絶縁膜用、メタル膜用の3種に大別される。被エッチング膜の種類によってプラズマエッチング装置の構成要素に大きな差はなく、エッチングガスが違うことと、エッチングチャンバ内部の材質、エッチングの終点検出方法が被エッチング材料に応じて最適に設定される。
【0016】
RIEにおいて、300mmサイズのシリコンウェーハのような広い面積に均一にイオンを発生させるためには、高密度プラズマを安定的に発生させる必要がある。このため、上部電極に反応生成物の付着があると、ウェーハ面内に均一にイオンシャワーを提供することができなくなり、エッチッグの規格外れを起こす程度のダストが発生する恐れもある。
【0017】
ドライエッチング装置は、当初、上部・下部電極を備えた平行平板型の構造で電極間にエッチングガスを流し排出するタイプが用いられていた。現在では、上部電極に貫通孔を設け、蒸気圧の低い被エッチングガスをシャワー状に噴出させるRIE装置が用いられる。
【0018】
このRIE装置では、エッチングのプロセスチャンバ内にウェーハサセプタが下部電極上に設置される。このプロセスチャンバにはエッチングガス供給システムと真空(0.1Pa前後)システムが接続される。下部電極には高周波電源とサセプターの温調システムが設けられる。
【0019】
さらに、常にプロセスチャンバを真空に保つためにロードロックの前室を具備している。生産性と信頼性の向上のために、シリコンウェーハはエッチングチャンバに真空下で搬送される。この搬送機構はロードロック機構と呼ばれる。シリコンウェーハを枚葉式(Single Wafer)で処理するエッチング装置では、シリコンウェーハを通常25枚格納できるカセットボックスを使い、このカセットボックスをロボットによって搬送する。これにより、シリコンウェーハはセット・ツー・カセットで自動搬送される。
【0020】
線幅1μm以下の超微細加工では、プラズマ発生において、従来1Torr~数百mTorrであったガス圧力を下げ、シリコンウェーハ表面に衝突するイオンの方向を改善することと、プラズマ密度を高めてスループット向上を計る必要性がある。そのために、0.5μm程度の貫通孔があるシリコン上部電極の貫通孔内面粗さ等の非破壊での把握は重要である。
【0021】
パターンの加工寸法(CD:Critical Dimension)は、複雑反応であるドライエッチング生成物質とラジカルとイオンの不均一性に左右される。シリコン上部電極の貫通孔から導入されるエッチングガスと反応生成物の排気、下部シリコン電極の温度のシリコンウェーハ面内全体の均質性が要求される。
【0022】
しかしながら、上部電極に設けられた細長いガス導入孔の状態を非破壊で測定することは非常に難しい。ここで、非破壊の測定としてX線画像による測定が考えられるが、上部電極には多数のガス導入孔が設けられているため、孔の長さ方向と直交する方向にX線画像を取得した場合、測定対象とするガス導入孔の画像に他の孔の画像が重複してしまい、精度の高い測定を行うことができないという問題が生じる。
また、実際にはまだ使用できるにもかかわらず時間管理によって寿命であると判断された場合には上部電極を新しいものに交換しなければならないという問題がある。
しかも、プラズマエッチング装置に装着された状態で上部電極のガス導入孔の状態を測定することは困難である。
また、上記のように、上部電極に設けられたガス導入孔の状態を非破壊で測定することは困難であるため、上部電極に設けられた多数のガス導入孔の状態を容易に把握できるようにする技術は開示されていない。このため、上部電極の管理は使用時間での管理にせざるを得ない。
【0023】
本発明の目的は、プラズマエッチング装置用の電極に設けられたガス導入孔を高精度に測定することができる測定方法、精度の高いガス導入孔を備えた電極、電極の再生方法及びプラズマエッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、プラズマエッチング装置用の電極における基材を厚さ方向に貫通するよう設けられたガス導入孔を測定する方法であって、基材の一方面側からガス導入孔に向けて光を照射する照射工程と、ガス導入孔を介して基材の他方面側に透過した前記光の2次元画像を取得する2次元画像取得工程と、2次元画像の少なくとも境界部分での信号変化を演算する画像処理工程と、画像処理工程での2次元画像の信号処理の結果に基づいてガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様は、プラズマエッチング装置用の電極であって、厚さ方向に貫通する複数のガス導入孔が設けられた板状の基材を備え、複数のガス導入孔の内壁面の粗さ及び垂直度合いの少なくとも1つは、上記測定方法で測定した場合に予め設定された一定の範囲内に収まることを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様は、基材の厚さ方向に貫通するガス導入孔が設けられたプラズマエッチング装置用の電極の再生方法であって、プラズマエッチング装置において所定時間使用された電極のガス導入孔の状態を測定する工程と、ガス導入孔の状態の測定結果に基づき基材の表面の研磨及びガス導入孔の内壁面の加工の少なくとも一方を行う工程と、加工後の前記ガス導入孔の状態を測定する工程と、を備え、ガス導入孔の状態を測定する工程は、基材の一方面側からガス導入孔に向けて光を照射する照射工程と、ガス導入孔を介して基材の他方面側に透過した光の2次元画像を取得する2次元画像取得工程と、2次元画像の少なくとも境界部分での信号変化を演算する画像処理工程と、画像処理工程での2次元画像の信号処理の結果に基づいてガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する測定工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の一態様は、チャンバと、チャンバ内に設けられ、基材の厚さ方向に貫通するガス導入孔を有する上部電極と、チャンバ内に設けられ上部電極と対向する下部電極と、チャンバ内における上部電極と下部電極との間に高周波を印加する高周波印加部と、ガス導入孔の状態を測定する測定部と、を備え、測定部は、基材の一方面側からガス導入孔に向けて光を照射する発光部と、ガス導入孔を介して基材の他方面側に透過した光の2次元画像を取得する受光部と、2次元画像の少なくとも境界部分での信号変化を演算した信号処理の結果に基づいてガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する処理を行う画像処理部と、を備えたことを特徴とするプラズマエッチング装置である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、プラズマエッチング装置用の電極を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、プラズマエッチング装置の構成を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、測定装置を備えたプラズマエッチング装置の構成を例示する模式図である。
【
図4】
図4は、電極の製造方法を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、電極の再生方法を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、再加工の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るガス導入孔の測定方法を例示する模式図である。
【
図8】
図8(a)~(d)は、ガス導入孔の状態と画像との関係を例示する模式図である。
【
図9】
図9(a)~(d)は、ガス導入孔の状態と画像との関係を例示する模式図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、ガス導入孔と2次元画像とを示す写真である。
【
図11】
図11(a)及び(b)は、ガス導入孔の他の測定方法を例示する模式図である。
【
図12】
図12(a)~(h)は、カメラで取得した画像と2次元画像とを例示する模式図である。
【
図13】
図13は、ガス導入孔の角度について例示する模式図である。
【
図14】
図14(a)及び(b)は、本実施形態に係る状態分布図を説明する図である。
【
図15】
図15(a)及び(b)は、状態分布図の表示方法を説明する図である。
【
図16】
図16(a)及び(b)は、状態分布図の表示例(その1)を示す図である。
【
図17】
図17は、状態分布図の表示例(その2)を示す図である。
【
図18】
図18は、状態(測定結果)の変化及び予測を説明する図である。
【
図19】
図19(a)~(c)は、予測分布図の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0029】
(プラズマエッチング装置用の電極および再生電極)
図1(a)及び(b)は、プラズマエッチング装置用の電極および再生電極を例示する模式図である。
図1(a)には電極の斜視図が表され、
図1(b)には電極の一部の拡大断面図が表される。なお、本実施形態においては、再生される前の電極を再生前電極10Bとし、再生前電極10B及び再生電極10Rを区別しない場合には総称して電極10と言うことにする。
【0030】
図1(a)に表したように、電極10は、例えば円盤状の基材11に多数のガス導入孔12が設けられた構造を備える。複数のガス導入孔12は、基材11の厚さ方向を貫通するように設けられる。複数のガス導入孔12は、基材11の表面の縦横に所定の間隔で配列される。複数のガス導入孔12は、基材11の中心に同心円状に配列されていてもよい。
【0031】
基材11の直径は、プラズマエッチングを施す対象物(ウェーハ等)の大きさに合わせて設定される。例えば、直径100mm(ミリメートル)程度のウェーハを対象物とする場合、電極10の直径は約150mm以上200mm以下、直径150mm程度のウェーハを対象物とする場合、電極10の直径は約200mm以上280mm以下、直径200mm程度のウェーハを対象物とする場合、電極10の直径は約280mm以上320mm以下、直径300mm程度のウェーハを対象物とする場合、電極10の直径は約320mm以上376mm以下、直径450mm程度のウェーハを対象物とする場合、電極10の直径は約450mm以上である。
【0032】
基材11の材料としては、シリコン、石英及び炭化珪素などが用いられる。基材11は、2種類以上の材料によって構成されていてもよい。例えば、基材11は、導電性材料を絶縁性材料で被覆した構成であってもよい。
【0033】
図1(b)に表したように、基材11の厚さtは、例えば5mm以上13mm以下である。ガス導入孔12の径dは、例えば200μm以上600μm以下である。ガス導入孔12の径dの基材11の厚さtに対する比率は、例えば2%以上6%以下である。
【0034】
一例として、本実施形態では、基材11の直径は376mm、基材11の厚さtは10mm、ガス導入孔12の径dは500μm、ガス導入孔12の数は912個である。このように、電極10には非常に細長いガス導入孔12が多数設けられていることで、プラズマエッチングに必要な反応性ガスを均一に導入できるようになる。
【0035】
ガス導入孔12は、基材11にドリル加工を施して形成される。このドリル加工の際にガス導入孔12の内壁にバリが発生する。本実施形態に係る電極10においては、ガス導入孔12の内壁のバリが除去され、内壁面の粗さが抑制されている。ガス導入孔12の状態は、後述する測定方法によって測定される。なお、本実施形態では、この測定方法を本測定方法とも言う。
【0036】
ここで、再生前電極10B及び再生電極10Rのそれぞれにおいては、ガス導入孔12の状態が定量的に測定されている。すなわち、本実施形態に係る再生電極10Rにおいては、再生前電極10Bのガス導入孔12の状態が測定されているとともに、再生電極10Rのガス導入孔12の状態も測定されている。
【0037】
再生電極10Rは、再生前電極10Bのガス導入孔12の状態の測定結果に基づいて、基材11の表面の研磨及びガス導入孔12の内壁面の加工の少なくとも一方が施されたものである。再生前後のガス導入孔12の状態が測定されていることで、再生前から再生後にかけてのガス導入孔12の状態の変化(履歴)を客観的に管理することができる。ガス導入孔12の状態を測定することで、時間管理で寿命と判断された再生前電極10Bであっても、基材11の表面やガス導入孔12の内壁面の加工によって再度使用可能な再生電極10Rとなる。
【0038】
本実施形態において、再生前電極10B及び再生電極10Rともに本測定方法によって測定されることが望ましい。
【0039】
本実施形態に係る電極10は、この測定方法によって測定されたガス導入孔12を備える。例えば、複数のガス導入孔12の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つは、本実施形態に係る測定方法によって測定した場合に予め設定された一定の範囲内に収まっている。
【0040】
一例として、本実施形態に係る測定方法により基材11に設けられた全て(例えば、912個)のガス導入孔12の直径を測定する。測定した直径から例えば標準偏差(σ)を求め、このσや3σなどが一定の値以下となる電極10を構成する。本実施形態に係る測定方法によって測定される内壁面の粗さや垂直度合いについても同様である。
【0041】
このようなガス導入孔12を備えた本実施形態に係る電極10では、径や垂直度合いのばらつきが抑制され、内壁面の粗さが抑制されていることから、ガス導入を円滑に行うことができ、プラズマの均一性が向上する。このため、プラズマエッチングの際のダメージを受けにくく、電極10のロングライフ化を達成することができる。
【0042】
また、基材11に設けられるガス導入孔12の径は、基材11の面内において必ずしも一定でなくてもよい。すなわち、ガスの導入分布を意図的に変えるため、基材11の面内の位置によってガス導入孔12の径を変化させてもよい。本実施形態に係る測定方法によればガス導入孔12の径を測定できることから、基材11の面内におけるガス導入孔12の径の分布を正確に得ることができる。
【0043】
例えば、基材11の面内における中央部分の孔径よりも周辺部分の孔径を大きくしたり、反対に、中央部分の孔径よりも周辺部分の孔径を小さくする。ガス導入孔12の径の設定でガスの導入分布を制御して、プロセスに反映させることができる。本実施形態に係る測定方法を用いることで、ガス導入孔12の径を正確に測定して、プロセスに反映させることができる電極10を提供することが可能になる。
【0044】
また、再生前電極10Bに設けられたガス導入孔12の状態を本測定方法により測定しておき、この測定結果と再生電極10Rの測定結果とを比較できるようにしておいてもよい。本測定方法では、従来では困難であった細長いガス導入孔12の状態を精度良く測定することができる。再生前後で同じ本測定方法でガス導入孔12を測定することにより、1つの電極10の再生による履歴を残しておくことができる。電極10にシリアルナンバが付与されている場合には、このシリアルナンバと再生の履歴とのデータベースに記憶しておくとよい。シリアルナンバによってデータベースを検索することで、再生電極10Rの履歴を迅速かつ正確に把握することができる。
【0045】
なお、本実施形態では電極10のガス導入孔12の状態を測定したが、電極10の電気的特性(例えば、抵抗値)を測定してもよい。すなわち、再生前電極10Bの抵抗値と、再生電極10Rの抵抗値とを測定しておく。電極10の抵抗値は使用時間によって変化することから、再生前後の抵抗値を測定しておくことで再生電極10Rの特性の多面的な管理を行うことができる。
【0046】
(プラズマエッチング装置)
図2は、プラズマエッチング装置の構成を例示する模式図である。
図2に表したように、プラズマエッチング装置100は、チャンバ110、上部電極120、下部電極130、ガス導入路140、排気路150、ポンプ160及び高周波印加部170を備える。すなわち、プラズマエッチング装置100は、RIE(Reactive Ion Etching)装置である。
【0047】
チャンバ110内はポンプ160によって減圧状態に維持される。上部電極120及び下部電極130は、チャンバ110内において互いに対向して配置される。本実施形態に係る電極10は、上部電極120として適用される。上部電極120は、ガス導入路140のチャンバ110側に設けられた保持部141に取り付けられる。下部電極130は、静電チャック等によってウェーハ等の対象物Wを載置する載置部でもある。
【0048】
プラズマエッチング装置100によって対象物Wを処理するには、対象物Wを下部電極130の上に載置し、ポンプ160によってチャンバ110内を減圧状態にする。その後、ガス導入路140からチャンバ110内に反応性ガスを導入する。反応性ガスは、ガス導入路140から上部電極120のガス導入孔121(12)からチャンバ110内に導入される。そして、反応性ガスを導入しながら高周波印加部170によって上部電極120と下部電極130との間に高周波(例えば、13.56MHz)を印加する。これによりチャンバ110内にプラズマPが発生して、対象物Wの表面にエッチングや成膜等の処理が施される。
【0049】
プラズマエッチング装置100の場合には、反応性ガスとしてCF4、SF6、CHF3、CCl4、SiCl4、Cl2、Br2、HBrなどが用いられる。反応性ガスは、エッチングする対象物Wの材料によって適宜が選択される。
【0050】
プラズマエッチング装置100の上部電極120として本実施形態に係る電極10を用いると、反応性ガスは滑らかにガス導入孔121(12)を通過してチャンバ110内に導入される。このため、反応性ガスは上部電極120と下部電極130との間に均一性高く導入され、対象物Wに対して安定した処理が施される。
【0051】
ここで、プラズマエッチング装置100は、例えばCF4のプラズマで発生した反応性の高いF原子がSiと反応し、SiF4となってエッチングが可能となる。そして、高周波(RF)を印加したカソード電極にイオンを加速するDCバイアスが発生することで、異方性エッチングが行われる。
【0052】
反応性ガスとしてCF4にH2を加えるとSiのエッチング速度が低下し、選択比が向上する。Siの表面では反応の中間生成物を含む反応層が形成されながらエッチングが進む。エッチング種が吸着した表面をイオンが衝撃することで、エッチング種と被エッチング材料との反応が促進される。イオンが衝撃するパターンの底面ではこの薄膜が除去されるために、異方性の加工が可能となる。
【0053】
近年では、デバイス性能の物理限界を拡張するために、多岐にわたる新材料(ポーラスlow-k、high-k、高感度エキシマレジストなど)や新構造(ダマシン配線、歪みシリコン、Fin 型ゲートなど)が次々に登場している。これらに対応するため、プラズマエッチング装置およびプラズマエッチング技術においては、モニタリングとフィードバックとが重要である。
【0054】
例えば、外部パラメータ(ガス種、圧力、RF電力など設定条件)と内部パラメータ(プラズマ密度、ラジカル組成・密度、イオン種・エネルギーなど)、エッチング特性(エッチング速度、形状など)の相関を科学的に理解することが必要である。また同時に基礎反応過程データベースの充実が必要である。これによりハードウェアによらず普遍的に活用できる反応データを蓄積していくことが可能となる。
【0055】
また、数nmの薄膜や界面層での高い選択比の実現が一層困難となっている状況で、均一性向上の効果は大きい。また,パターンの加工寸法(CD:Critical Dimension)の変換差の制御においても均一性が強く影響する。
【0056】
さらに、半導体素子に用いられる絶縁膜のエッチングにおいては、イオンによりSi-Oの結合を切り、C-Oの結合によりOを除去し、比較的弱いSi-Fの結合を可能にさせ,エッチングが進行すると考えられる。このような絶縁膜のエッチング反応に重要な条件設定を明確にする必要がある。エッチングメカニズムを解明するためには、様々なモニタリング技術を創出する必要がある。
【0057】
(測定装置を備えたプラズマエッチング装置)
図3は、測定装置を備えたプラズマエッチング装置の構成を例示する模式図である。
図3に表したように、プラズマエッチング装置100Bは、チャンバ110、上部電極120、下部電極130、ガス導入路140、排気路150、ポンプ160、高周波印加部170及び測定装置200を備える。チャンバ110、上部電極120、下部電極130、ガス導入路140、排気路150、ポンプ160および高周波印加部170は、プラズマエッチング装置100と同様である。
【0058】
プラズマエッチング装置100の上部電極120のガス導入孔121(12)の状態は、測定装置200によって測定される。測定装置200は、発光部210と、受光部220と、画像処理部225と、を備える。
【0059】
発光部210は、基材11の一方面側からガス導入孔121(12)に向けて光L1を照射する。発光部210は、例えば上部電極120を保持する保持部141に設けられる。発光部210は移動可能に設けられていてもよい。
【0060】
受光部220は、ガス導入孔121(12)を介して基材11の他方面側に透過した光L2の2次元画像を取得する。受光部220は、上部電極120と下部電極130との間に進退可能に設けられていてもよい。受光部220は発光部210と連動して動くようになっていてもよい。
【0061】
画像処理部225は、2次元画像に基づいてガス導入孔121(12)の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する処理を行う。
【0062】
本実施形態に係るプラズマエッチング装置100では、上部電極120が装着された状態でガス導入孔121(12)の状態を測定装置200によって測定することができる。ガス導入孔121(12)の状態は、この測定装置200を用いて後述する本測定方法によって測定される。
【0063】
本測定方法で測定したガス導入孔121(12)を有する上部電極120を用いると、反応性ガスは滑らかにガス導入孔12を通過してチャンバ110内に導入される。このため、反応性ガスは上部電極120と下部電極130との間に均一性高く導入され、対象物Wに対して安定した処理が施される。
【0064】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング装置100では、予め設定されたエッチング処理時間を経過したタイミングで測定装置200によってガス導入孔121(12)の状態を測定することができる。測定装置200による測定は、上部電極120を保持部141から取り外すことなく、そのままの状態で行うことができる。
【0065】
測定の結果、ガス導入孔121(12)の径や内壁面の粗さ、垂直度合いのうち少なくとも1つを判定基準と比較して規定内であれば上部電極120はそのまま使用可能であると判断される。一方、規定外であれば上部電極120を交換する時期であると判断する。
【0066】
このように、上部電極120を保持部141に装着したままガス導入孔121(12)の状態を測定できるため、測定のために上部電極120を取り外す作業が不要となるとともに、上部電極120に触れることがなくなり汚染を発生させることなく測定を行うことが可能になる。さらに、プラズマエッチング処理で用いられる上部電極120のそのもののガス導入孔121(12)の状態をモニタリングすることができる。
【0067】
(電極の製造方法)
次に、本実施形態に係る電極10の製造方法について説明する。
図4は、電極の製造方法を例示するフローチャートである。
先ず、基材11を用意する(ステップS101)。基材11としては、シリコン、石英及び炭化珪素などが用いられる。本実施形態では、一例として単結晶シリコンを用いる場合を説明する。ここでは、単結晶シリコンのインゴッドを約12mmの厚さに切り出した円盤状の基材11を用意する。切り出した後、基材11の上下面の研削処理を行い、面精度を50μm以下にする。
【0068】
次に、基材11にガス導入孔12を形成する(ステップS102)。本実施形態では、焼結ダイヤモンドドリルを用いて基材11にガス導入孔12を形成する。ここでは、先端が多面になっている焼結ダイヤモンドドリルを用いる。この焼結ダイヤモンドドリルを用いて基材11にステップバック工法によって穿孔を行う。基材11の厚さに対してドリル長が短い場合には、基材11を反転させて表裏両面から孔を形成して、貫通させるようにしてもよい。
【0069】
シリコンの基材11にドリルによって微細孔加工を施すと、孔の内壁面に微細破砕層が形成される。本実施形態では、先端が多面になっている焼結ダイヤモンドドリルによって、微細破砕層の厚さが10μm以下になるようにすることが望ましい。
【0070】
基材11へのドリル加工を行う場合、ドリルにシリコンスラッジが付着することがある。このため、定期的に基材11を超音波洗浄装置で浸漬洗浄することが望ましい。これにより、ドリルの性能が維持され、孔の内壁面への微細破砕層の発生が抑制される。
【0071】
次に、ガス導入孔12を形成した基材11を洗浄する(ステップS103)。ガス導入孔12を形成した基材11の孔内や基材11の表面などにはドリル加工時の汚染物質が付着している。この汚染物質を除去するため、基材11の洗浄が行われる。ここでの洗浄としては、例えば脱気超音波洗浄装置による洗浄が行われる。円筒状に形成された脱気超音波洗浄装置によって基材11の孔内や表面に付着した汚染物質が洗浄させる。この洗浄を行うことで、後のエッチングによる溶解促進と、基材11に発生する変色の抑制効果が高まる。
【0072】
次に、基材11のエッチングを行う(ステップS104)。このエッチングによってガス導入孔12の内壁面に形成された微細破砕層が除去される。例えば、40℃の酸溶液に基材11を浸漬する。これにより、基材11の表面(露出面)が溶解され、ガス導入孔12の内壁面の微細破砕層が除去される。
【0073】
このエッチングでは、酸溶液が入った槽に基材11を浸漬し、回転運動を加えることで微細なガス導入孔12に酸溶液を循環させる。この際、回転運動とともに揺動運動を行うことが好ましい。これにより、ガス導入孔12の内部にしっかりと酸溶液を行き渡らせることができる。
【0074】
基材11の浸漬時間は10秒以上1200秒以下の間である。酸溶液への浸漬によるエッチングでは、エッチング作業の回数や時間によって溶解速度に相違が生じる。溶解処理を安定化させるため、エッチング時間や処理枚数を管理することが望ましい。
【0075】
次に、基材11の研削及び研磨を行う(ステップS105)。ここでは、例えばフライス加工機を用いて基材11の外周部や取り付け穴の加工を行う。使用する工具としては、例えばメタルボンドタイヤモンド、レジンボンドダイヤモンド、電着ダイヤモンドが用いられる。
【0076】
研削加工後、基材11の表面にラップ加工及び平面研削加工を施す。この加工によって基材11の厚さを調整するとともに、基材11の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を例えば「1」以下にする。ここまでの処理で基材11には金属等の汚染物質が付着しているため、再度、酸溶液を用いたエッチングを行う。この酸溶液は、ステップS104で用いたものと同様である。
【0077】
その後、超純水を用いて基材11を洗浄し、純水槽に基材11を浸す水中保管する。水中保管によって基材11の表面の酸化、染み及び汚れが抑制される。次に、基材11を例えばコロイダルシリカ含有の研磨溶剤を用いて研磨装置で鏡面研磨する。鏡面研磨によって基材11の表面粗さRaを例えば「0.1」以下にする。
【0078】
基材11を鏡面研磨した後、純水洗浄を行い、温水引き上げ装置にて温水乾燥を行う。これにより、基材11の水垢、染み等が抑制される。
【0079】
次に、ガス導入孔12の検査を行う(ステップS106)。ここで行うガス導入孔12の検査として、後述する本実施形態の測定方法が適用される。検査後、最終精密洗浄を行う。これにより、電極10が完成する。
【0080】
このような方法によって製造された電極10では、微細破砕層が除去された非常に滑らかな内壁面を有するガス導入孔12を備えることになる。したがって、この電極10を上部電極120として用いることで、反応性ガスを均一に導入できるとともに、ガス導入孔12へのダメージが抑制されて電極10の長寿命化を達成することができる。
【0081】
(電極の再生方法)
図5は、本実施形態に係る電極の再生方法を例示するフローチャートである。
図5に表したように、本実施形態に係る電極10の再生方法は、ガス導入孔12の測定(ステップS201)と、基材11の再加工(ステップS202)と、ガス導入孔12の再度の測定(ステップS203)と、を備える。ガス導入孔12の測定では、所定時間使用された電極10のガス導入孔12の状態を測定する処理を行う。ガス導入孔12の測定方法は後述する。
【0082】
プラズマエッチング装置100においては、処理条件にもよるが、一般的に2000時間程度使用することで電極10の新品への交換が行われる。ステップS201では、例えば2000時間を経過した電極10(再生前電極10B)をプラズマエッチング装置100から取り出し、後述する測定方法によってガス導入孔12の状態を非破壊で測定する。
【0083】
測定するガス導入孔12の状態としては、例えば、ガス導入孔12の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つである。また、測定では、ガス導入孔12のガス放出側の開口の丸みの生じた領域の大きさを測定してもよい。
【0084】
ステップS202の基材11の再加工では、ステップS201の測定結果に基づき基材11の表面の研磨及びガス導入孔12の内壁面の加工の少なくとも一方を行う。ステップS202では、ステップS201の測定結果に基づき最適な加工方法を選択する。
【0085】
例えば、ガス導入孔12の内壁面の粗さが予め設定された範囲内に収まっている場合には、基材11の表面の研磨を行う。つまり、この場合にはガス導入孔12の内壁面の粗さは規定範囲内であることから、内壁面に対する処理は不要と判断する。基材11の表面は使用によって荒れていることから、基材11の表面の研磨を施すことで再生を行う。
【0086】
ここで、ガス導入孔12の開口の丸みの生じた領域の大きさが測定されている場合には、その領域の大きさから丸みを除去できる研磨量を算出することができる。この研磨量の研磨を施すことで、ガス導入孔12の開口の丸みが除去された電極10を再生することができる。
【0087】
図6(a)にはガス導入孔12の開口の丸みが除去された再生電極10Rが表される。使用によってガス導入孔12のガス放出側の開口には丸みが生じやすい。基材11の表面を研磨することで開口の丸みが除去されたガス導入孔12へ再生できることになる。基材11の表面加工の一例は、先ず、基材11のガス放出側の面を研削し、基材11の縁のR面取りを行う。次に、基材11の表面のラッピングを行い、次にエッチングを施した後、ポリッシングを行う。
【0088】
また、ガス導入孔12の内壁面の粗さが予め設定された範囲内に収まっていない場合には、ガス導入孔12の内壁面の加工を行う。内壁面の加工としては、ガス導入孔12の径を大きくする穿孔加工及びガス導入孔12の内壁面のエッチング加工の少なくともの一方である。
【0089】
ガス導入孔12の内壁面の粗さだけを除去する場合にはエッチング加工を施すことが望ましい。これにより、ガス導入孔12の径をほとんど変更することなく滑らかな内壁面のガス導入孔12を有する電極10が再生される。
【0090】
また、ガス導入孔12の内壁面の粗さの除去だけでは不十分な場合や、元のガス導入孔12よりも大きな径のガス導入孔12を有する電極10に再生したい場合には、ガス導入孔12の径を大きくする穿孔加工を施す。この穿孔加工は、元のガス導入孔12を基準として、元の孔径よりも大きなドリルによる再度の穿孔を施す加工である。これにより、元のガス導入孔12を基準として径の拡大したガス導入孔12を有する電極10への再生が行われる。
【0091】
図6(b)にはガス導入孔12に再度の穿孔を施した再生電極10Rが表される。再度の穿孔によってガス導入孔12の径は大きくなるものの、内壁面の粗さが除去されて滑らかな内壁面を有するガス導入孔12へ再生できることになる。
【0092】
なお、穿孔加工を行った場合には、ガス導入孔12の内壁面にバリが生じている場合もあるため、穿孔加工の後にエッチング加工を行うことが望ましい。これにより、穿孔加工で生じた内壁面のバリを除去して滑らかな内壁面のガス導入孔12を有する電極10への再生が行われる。
【0093】
加工を施した後は、ステップS203に示すように、加工後のガス導入孔12の状態の測定を行う。この測定方法はステップS201で行った測定方法と同じである。この測定によって加工後のガス導入孔12の状態(例えば、径、内壁面の粗さ、垂直度合い)が非破壊で測定される。これにより、再生された電極10のガス導入孔12の状態を客観的に把握することができる。
【0094】
ステップS203の測定結果によって、例えばガス導入孔12の径が予め設定された一定の範囲内に収まっているものを良品として判定すればよい。内壁面の粗さや垂直度合いについても同様である。また、ガス導入孔12の状態を客観的に測定できるため、仕様に合致したガス導入孔12を有する電極10への再生も可能である。
【0095】
(ガス導入孔の測定方法)
次に、ガス導入孔12の測定方法について説明する。
図7は、本実施形態に係るガス導入孔の測定方法を例示する模式図である。
図7に表したように、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法は、発光部210からガス導入孔12に光L1を照射し、ガス導入孔12を透過する光L2を受光部220で受けて、受光像に基づき測定を行う方法である。
【0096】
ガス導入孔12の測定を行うための測定装置200は、発光部210、コントローラ215、受光部220及び画像処理部225を備える。発光部210は、例えばレーザ光やLED光を出射する。先に説明したように、発光部210は上部電極120の保持部141に移動可能に設けられていてもよい。測定に用いる光L1としては、コヒーレント光が望ましい。本実施形態では、発光部210としてレーザ光を出射するレーザ光源が用いられる。コントローラ215は、発光部210から出射する光L1の量や出射タイミングを制御する。
【0097】
発光部210から出射される光L1の波長は、例えば620nm以上750nm以下程度の赤色、495nm以上570nm以下程度の緑色、450nm以上495nm以下程度の青色、750nm以上1400nm以下程度の赤外が用いられる。
【0098】
光L1のスポット径は、ガス導入孔12の内径よりも大きい。これにより、光L1をガス導入孔12に確実に入射する。光L1は、基材11の表面に対して実質的に垂直に出射される。ここで、実質的に垂直とは、基材11の厚さをt、ガス導入孔12の径をdとした場合、垂直に対してtan(d/t)°未満のことをいう。
【0099】
受光部220は、ガス導入孔12を透過した光L2を2次元像として受けるエリアセンサである。光L2は、発光部210から出射された光L1のガス導入孔12の透過光である。受光部220は、この光L2を2次元像として受けて電気信号に変換する。
【0100】
なお、光L1として赤外を用いる場合であっても、受光部220は基材11を透過する光ではなく、ガス導入孔12を透過した光を受ける。つまり、光L1として赤外を使用する場合、基材11を透過する光もあるが、受光部220は、基材11を透過する光をほとんど受けることなく、ガス導入孔12を抜けてくる光を受ける。
【0101】
ここで、受光部220はガス導入孔12を透過した光L2を直接受けても、半透過スクリーンSCLを介して光L2を受けるようにしてもよい。半透過スクリーンSCLは、基材11と受光部220との間に配置される。半透過スクリーンSCLは、受光部220とともに進退可能に設けられていてもよい。また、半透過スクリーンSCLは基材11の面に密着させてもよい。光L2の強度が高い場合には、半透過スクリーンSCLに投影された光L2の像を受光部220で受けるようにすれば、半透過スクリーンSCLによるフィルタ効果を得られる。
【0102】
画像処理部225は、受光部220から出力される電気信号に基づき画像処理を行い、ガス導入孔12の測定を行う。すなわち、画像処理部225は、受光部220で受けた光L2の2次元像を画像処理して、この処理結果に基づきガス導入孔12の状態を測定結果として出力する。
【0103】
本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法では、ガス導入孔12の状態によってガス導入孔12を透過する光L2の量、進路、反射状態などが変化することを利用して、光L2の2次元画像に基づきガス導入孔12の状態を非破壊で測定する。電極10に設けられたガス導入孔12は非常に細く、アスペクト比が高く、しかも基材11に多数設けられている。このため、電極10の表面画像からはガス導入孔12の内部まで検査することはできない。また、表面に沿った方向でX線画像を取得しても、他のガス導入孔12の画像と重複するため、精度の高い測定を行うことができない。ガス導入孔12をドリルで穿孔し、内面粗さを規定したい場合、電極10を破壊しなければ分からない。本実施形態のように、ガス導入孔12に光L1を照射し、透過する光L2の2次元画像を取得し、2次元画像とガス導入孔12の状態との相関からガス導入孔12を非破壊で高精度に測定することができる。
【0104】
次に、ガス導入孔12と光L2の2次元画像との相関について説明する。
図8(a)~
図9(d)は、ガス導入孔の状態と画像との関係を例示する模式図である。
図8(a)には、内壁面の平坦度が高く、基材11に対してほぼ垂直に設けられたガス導入孔12の断面図が表される。このようなガス導入孔12に光L1が照射された場合、光L1の多くはガス導入孔12を真っ直ぐ透過していくことになる。
【0105】
図8(b)には、
図8(a)に表したガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像G1の例が表される。この2次元画像G1では、ガス導入孔12の像がシャープに現れている。
図8(b)には、2次元画像G1の走査線SL1上での信号SG1の例が示される。画像処理部225は、2次元画像G1の走査線SL1上に沿った信号SG1の変化(傾斜等)を演算する。例えば、信号SG1の境界部分での信号変化(微分値、2次微分値など)によってガス導入孔12の内壁面の平坦性を測定することができる。また、画像処理部225は、2次元画像G1の境界からガス導入孔12の真円度を測定することができる。
【0106】
図8(c)には、内壁面の平坦性が高くないガス導入孔12の断面図が表される。このようなガス導入孔12に光L1が照射された場合、光L1はガス導入孔12の内壁面の凹凸に当たり、反射を繰り返しながら透過していくことになる。
【0107】
図8(d)には、
図8(c)に表したガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像G2の例が表される。この2次元画像G2では、ガス導入孔12の像がシャープに現れない。
図8(d)には、2次元画像G2の走査線SL2上での信号SG2の例が示される。画像処理部225は、信号SG2の境界部分での信号変化によってガス導入孔12の内壁面の平坦性を測定することができる。2次元画像G2では、2次元画像G1に比べて境界部分の信号変化が緩くなる。この信号変化によってガス導入孔12の内壁面の平坦性を測定することができる。
【0108】
さらに、画像処理部225は、信号SG2の変化から2次元画像G2の中央領域(輝度の高い領域)R1と周辺領域(中央領域R1よりも輝度の低い領域)R2とを領域分けし、これらの面積の比率によってガス導入孔12の内壁面の平坦性を定量的に求めるようにしてもよい。例えば、2次元画像G2として表れる全体の領域をR0として、領域R0の面積に対する周辺領域R2の面積の割合によって内壁面の平坦性を求める。内壁面の平坦性が低い(凹凸が多い)ほど、領域R0の面積に対して周辺領域R2の面積の割合が高くなる。この特性を利用することで、内壁面の平坦性を定量的に求めることができる。
【0109】
図9(a)には、基材11に対して斜めに設けられたガス導入孔12の断面図が表される。このようなガス導入孔12に光L1が照射された場合、ガス導入孔12に入った光L1の一部は内壁面で遮られることになる。
【0110】
図9(b)には、
図9(a)に表したガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像G3の例が表される。この2次元画像G3では、境界部分はシャープに現れるものの全体の形状が真円にならない。すなわち、ガス導入孔12の光の入口側の開口の中心と出口側の開口の中心とがずれるため、基材11の真上から見て両開口の重複する領域R3だけ光が透過する。したがって、2次元画像G3は、この領域R3に相当する略楕円形となる。画像処理部225は、2次元画像G3の形状に基づき、ガス導入孔12の基材11に対する垂直度合いを測定することができる。垂直度合いとしては、例えばガス導入孔12の基材11の表面に対する垂直軸を基準とした角度のほか、垂直軸からの角度ずれが許容範囲内であるか否かを含む。
【0111】
図9(c)には、ガス出射側の開口の隅部が消耗したガス導入孔12の断面図が表される。電極10が劣化するとガス導入孔12のガス出射側の開口の隅部が丸みを帯びるようになる。このようなガス導入孔12に光L1が照射された場合、光L1の多くはガス導入孔12を真っ直ぐ透過する。また、光L1の一部はガス導入孔12のガス出射側の開口の隅部に当たり散乱することになる。
【0112】
図9(d)には、
図9(c)に表したガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像G4の例が表される。この2次元画像G4では、中央領域R1にガス導入孔12の像が比較的シャープに現れるとともに、その周辺領域R2には散乱光の像が現れる。画像処理部225は、中央領域R1に現れる比較的シャープな像の大きさがガス導入孔12の径とほぼ等しく、その周辺領域R2に拡散光の像が現れている場合に、ガス導入孔12のガス出射側の開口の隅部に丸みが発生していると判断することができる。
【0113】
また、ガス出射側の開口の隅部に丸みが発生していると判断した場合、周辺領域R2の面積によって隅部の丸みの大きさが判断される。すなわち、偶部の丸みが大きいほど周辺領域R2の面積が大きくなる。この特性を利用することで、ガス出射側の開口の偶部の丸みの大きさを定量的に求めることができる。
【0114】
このように、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法では、受光部220で受ける光L2の2次元画像とガス導入孔12の状態との関係を利用して、画像処理部225で2次元画像を処理することで、ガス導入孔12がどのような状態であるかを非破壊で測定することが可能になる。
【0115】
また、本実施形態に係る測定方法によってガス導入孔12の状態を測定することができることから、この測定結果に基づきプラズマエッチング装置100の電極10としての寿命を判断することができる。先ず、電極10として使用する前(新品)のガス導入孔12の状態を本実施形態に係る測定方法で測定しておく。次に、ある時間使用したあとの電極10のガス導入孔12の状態を同様な方法で測定する。
【0116】
この使用後に測定したガス導入孔12の状態が予め定めた規定を超えている場合には電極10の寿命であると判断する。また、定期的にガス導入孔12の状態を測定することで、測定結果の変化に基づき電極10の残りの寿命を予測することも可能である。
【0117】
図10(a)~(c)は、ガス導入孔の2次元画像を例示する写真である。
図10(a)には、シリコンを用いた電極10の使用前のガス導入孔12の2次元画像G10が表される。この画像は、ガス導入孔12を透過した光L2を受光部220で直接撮影したものである。使用前においては、輪郭がシャープに表れた2次元画像G10となっている。
【0118】
図10(b)には、シリコンを用いた電極10の使用後のガス導入孔12の2次元画像G20が表される。この画像は、ガス導入孔12を透過した光L2を半透過スクリーンSCLに投影して受光部220で撮影したものである。この電極10は、プラズマエッチング装置100で約2000時間使用されたものである。使用後においては、輪郭がボケた2次元画像G20となっていることが分かる。また、2次元画像G20のガス導入孔12の内壁面における凹凸が生じた部分に対応して色調(または濃淡)の変化が認められる。この変化している領域に基づいてガス導入孔12の内壁面の状態を定量的に測定することができる。
【0119】
図10(c)には、石英を用いた電極10の使用前のガス導入孔12の2次元画像G30が表される。この画像は、ガス導入孔12を透過した光L2を半透過スクリーンSCLに投影して受光部220で撮影したものである。石英を用いた電極10においては照射した光がガス導入孔12の周辺の基材11に当たって拡散するため、シャープな2次元画像G30にはならない。しかし、2次元画像G30の信号波形を用いることで、使用前後の信号波形の相違からガス導入孔12の状態を測定することができる。
【0120】
測定対象物であるガス導入孔12の径dは非常に小さく、また厚さtに対する径dの比率は数%程度である。このように非常に細長いガス導入孔12に光を照射して、ガス導入孔12を透過する光の像を得る場合、一般的な対象物に対して光を用いた測定では得られない特殊な画像を得ることができる。例えば、シリコン単結晶からなる基材11に設けられたガス導入孔12に青色のレーザ光を照射した場合、ガス導入孔12を透過する光の2次元画像では、ガス導入孔12の内壁面の凹凸に対応した部分に色の変化が認められる。このように、基材11の材料、光の波長、ガス導入孔12の状態との関係を利用することで、単に光を照射して得られた画像から測定を行う方法とは異なる特徴的な測定を行うこともできる。
【0121】
(ガス導入孔の他の測定方法)
次に、ガス導入孔12の他の測定方法について説明する。
図11(a)及び(b)は、ガス導入孔の他の測定方法を例示する模式図である。
この測定方法は、先に説明した光L1の照射による2次元画像の取得とともに、基材11の表面側からガス導入孔12の画像(開口部画像)を取得して、これらの画像に基づき測定を行う方法である。
【0122】
この測定を行うための測定装置300は、先に説明した測定装置200の構成に加え、カメラ310と画像処理部315とを備える。カメラ310は、電極10の表面の画像を取り込む。カメラ310は電極10の保持部141に移動可能に設けられていてもよい。カメラ310によってガス導入孔12の光L1の入射側の開口部の画像を取得する。画像処理部315は、カメラ310で取得した開口部画像の処理を行う。なお、画像処理部315は、画像処理部225と兼用でもよい。
【0123】
この測定装置300によってガス導入孔12の測定を行うには、先ず、
図11(a)に表したように、カメラ310によってガス導入孔12の開口部画像を取得する。すなわち、カメラ310を測定対象となるガス導入孔12の直上に配置して、ガス導入孔12の開口部画像を取得する。
【0124】
次に、
図11(b)に表したように、測定対象となるガス導入孔12の直上に発光部210を配置するとともに、ガス導入孔12の真下に受光部220を配置する。そして、発光部210からガス導入孔12に光L1を照射し、ガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像を受光部220で取得する。
【0125】
次に、カメラ310で取得した開口部画像を画像処理部315で処理するとともに、受光部220で取得した2次元画像を処理することで、ガス導入孔12の状態を測定する。つまり、この測定方法では、カメラ310で取得したガス導入孔12の開口部の画像と、ガス導入孔12を透過した光L2の2次元画像との両方を用いてガス導入孔12の状態を非破壊で測定する。
【0126】
図12(a)~(h)は、カメラで取得した画像と2次元画像とを例示する模式図である。
図12(a)、(c)、(e)及び(g)にはカメラ310で取得した開口部画像の例が表され、
図12(b)、(d)、(f)及び(h)には受光部220で取得した2次元画像が表される。
【0127】
図12(a)及び(b)に表した例は、
図8(a)に表したガス導入孔12の測定例である。このガス導入孔12は、平坦度の高い内壁面を有し、基材11に対してほぼ垂直に設けられている。このような場合、
図12(a)に示すカメラ310で取得した開口部画像G11の直径と、
図12(b)に示す受光部220で取得した2次元画像G12の直径とはほぼ等しくなる。また、2次元画像G12はシャープに現れる。したがって、このような開口部画像G11及び2次元画像G12が得られた場合には、ガス導入孔12の入口から出口にかけて真っ直ぐ孔が形成され、内壁面の平坦度も高いと判断される。
【0128】
図12(c)及び(d)に表した例は、
図8(c)に表したガス導入孔12の測定例である。このガス導入孔12は、平坦度の高くない内壁面を有している。このような場合、
図12(c)に示すカメラ310で取得した開口部画像G13の直径はガス導入孔12の径の設計値とほぼ等しい。
図12(d)に示す受光部220で取得した2次元画像G14はシャープに現れない。したがって、このような開口部画像G13及び2次元画像G14が得られた場合には、設計値に近い径のガス導入孔12は形成されているものの、内壁面の平坦度は高くないと判断される。
【0129】
図12(e)及び(f)に表した例は、
図9(a)に表したガス導入孔12の測定例である。このガス導入孔12は、基材11に対して斜めに形成されている。このような場合、
図12(e)に示すカメラ310で取得した開口部画像G15の直径はガス導入孔12の径の設計値とほぼ等しい。
図12(f)に示す受光部220で取得した2次元画像G16は、領域R16に相当する略楕円形となる。したがって、このような開口部画像G15及びG16が得られた場合には、設計値に近い径のガス導入孔12は形成されているものの、基材11に対して斜めに形成されていると判断される。
【0130】
また、受光部220と基材11のガス導入孔12のエッジとの距離によって傾斜角度が演算される。
図13に示すように、基材11の厚さをd1、受光部220上に投影されるガス導入孔12のエッジの位置と、基材11側のガス導入孔12のエッジの位置との受光部220の受光面に沿った距離をd2とした場合、tan
-1(d2/d1)によってガス導入孔12の傾斜角度θを演算することができる。
【0131】
図12(g)及び(h)に表した例は、ガス導入孔12の径が小さい場合の測定例である。このガス導入孔12の径は、設計値よりも小さくなっている。このような場合、
図12(g)に示すカメラ310で取得した開口部画像G17の直径と、
図12(h)に示す受光部220で取得した2次元画像G18の直径とはほぼ等しくなる。しかしながら、この直径は設計値よりも小さくなる。したがって、このような開口部画像G17及び2次元画像G18が得られた場合には、ガス導入孔12の入口から出口にかけて真っ直ぐ孔が形成されているものの、設計値よりも径が小さいと判断される。
【0132】
なお、設計値よりも径が大きいガス導入孔12の場合には、カメラ310で取得した開口部画像の直径と、受光部220で取得した2次元画像の直径とはほぼ等しくなるとともに、その径が設計値よりも大きく現れることになる。
【0133】
このように、カメラ310で取得した画像と、受光部220で取得した2次元画像との関係に基づいて、より詳細なガス導入孔12の状態を測定することが可能となる。なお、上記は一例であり、これらの組み合わせや、他の関係によってガス導入孔12の種々の状態を検出することが可能になる。
【0134】
特に、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法は、ガス導入孔12に光L1を照射し、ガス導入孔12を透過する光L2を受けて測定を行うため、内壁面の平坦性に優れたガス導入孔12を測定する場合に好適である。したがって、基材11にドリル加工で穿孔した後、エッチング処理によって内壁面を平坦化したガス導入孔12の測定に特に有効である。
【0135】
また、プラズマエッチング装置100においてドライエッチングを行うことにより生成される物質がガス導入孔12の内壁に付着する場合もある。このように物質が付着したガス導入孔12であっても、ガス導入孔12を透過した光L2を取り込むことで、物質の付着の状態を定量的に測定することもできる。
【0136】
なお、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法において、ガス導入孔12は基材11の一方面から他方面にかけて真っ直ぐ設けられたものを対象として説明したが、基材11の途中で屈曲したガス導入孔12を対象としてもよい。ガス導入孔12が屈曲していても、基材11の一方面から照射した光L1は、ガス導入孔12の内壁で反射しながら進むことができ、光L2となって受光部220で取り込まれる。光L1として基材11を透過しない波長の光を用いることで、屈曲したガス導入孔12であってもガス導入孔12の内部を通過してきた光を受光部220で受けることができ、ガス導入孔12の状態を測定することができる。
【0137】
また、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法を適用することにより、ガス導入孔12の均一性を判断することができる。したがって、基材11に複数のガス導入孔12を備えた電極10において、基材11の一方面側から照射した光L1が、複数のガス導入孔12を通して基材11の他方面側まで到達する電極10を選別することができる。
【0138】
この選別では、電極10において、複数のガス導入孔12を透過した光L2の強度のばらつき(例えば、標準偏差σ)が予め設定された一定の値以下であれば、良品の電極10であると判断することができる。
【0139】
上記のような電極10(複数のガス導入孔12において光L1を透過可能な電極、または光L2の強度ばらつきが一定の値以下の電極)を上部電極120として用いたプラズマエッチング装置100によれば、上部電極120と下部電極130との間に反応性ガスを均一性高く導入することができ、対象物Wに対して安定した処理を施すことができるようになる。
【0140】
プラズマエッチング装置用の電極におけるガス導入孔については、反応ガスの導入に均一性やメンテナンス等の観点から様々な形態が考えられている。しかし、いずれの形態において、実際の電極のガス導入孔に適用した場合、設定された形状になっているのかを非破壊で把握することは困難である。
【0141】
本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法によれば、実際にプラズマエッチング装置100に使用される(または使用中の)電極10そのものを非破壊で測定することができ、ガス導入孔12の客観的なデータを得ることができる。本願発明者はこのような測定方法によってガス導入孔12の客観的なデータを得ることができるという新たな知見を得た。そして、本実施形態に係るガス導入孔12の測定方法で測定して複数のガス導入孔12の状態を特定し、その測定が行われた電極10を用いてプラズマエッチング装置100によるドライエッチングを施す。これにより、ドライエッチングによる加工特性、歩留まり、生産性の向上を図ることができる。
【0142】
また、実際にプラズマエッチング装置100に用いる電極10のガス導入孔12の詰まり、ガス導入孔12の内径の拡がり、ガス導入孔12の内壁面への堆積物の付着の状態を把握することができるため、電極10からシリコンウェーハ上へ堆積物が落下したり、チャンバ内にパーティクルとして浮遊したりすることで、半導体素子が不良品になるリスクを軽減または回避することができる。
【0143】
(状態分布図)
図14(a)及び(b)は、本実施形態に係る状態分布図を説明する図である。
図14(a)には状態分布
図MPの一例が表され、
図14(b)には状態分布図を作成するためのデータの一例が表される。
図14(a)に表したように、本実施形態に係る状態分布
図MPは、プラズマエッチング装置用の電極10における基材11を厚さ方向に貫通するよう設けられた複数のガス導入孔の状態を表示する図である。状態分布
図MPは、基材11の面内における複数のガス導入孔の位置に対応して複数のガス導入孔のそれぞれの状態を、その状態に対応した表示態様で表示したものである。
【0144】
ここで、本実施形態に係る状態分布
図MPの詳細な説明を行うにあたり、プラズマエッチング装置用の電極10、この電極10が用いられるプラズマエッチング装置及び電極10の製造方法について説明する。
【0145】
(状態分布図の表示方法)
次に、状態分布図の表示方法について説明する。
図15(a)及び(b)は、状態分布図の表示方法を説明する図である。
図15(a)には状態分布
図MPを表示するためのコンピュータ500の構成が表され、
図15(b)には状態分布
図MPの表示方法を例示するフローチャートが表される。
【0146】
状態分布
図MPの表示方法は、例えばコンピュータ500によるプログラム処理によって実現される。このプログラムはCD-ROM等の媒体に記録されたり、サーバ等の記憶装置に記憶されたり、ネットワークを介して配信されたりする。
【0147】
コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)511、インタフェース512、出力部513、入力部514、主記憶部515及び副記憶部516を備える。
【0148】
CPU511は、各種プログラムの実行によって各部を制御する。CPU511は、状態分布
図MPを表示するプログラムを実行する部分でもある。インタフェース512は、外部機器との情報入出力を行う部分である。インタフェース512は、コンピュータ500をLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)に接続する部分でもある。インタフェース512は、後述する測定装置200からガス導入孔12の状態の測定結果(データ)を入力する部分でもある。
【0149】
出力部513は、コンピュータ500で処理した結果を出力する部分である。出力部513は、状態分布
図MPを表示する部分でもある。入力部514は、ユーザから情報を受け付ける部分である。入力部514には、キーボードやマウスなどが用いられる。また、入力部514は、記録媒体MMに記録された情報を読み取る機能を含む。
【0150】
主記憶部515には、例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。主記憶部515の一部として、副記憶部516の一部が用いられてもよい。副記憶部516には、例えばHDD(Hard disk drive)やSSD(Solid State Drive)が用いられる。副記憶部516は、ネットワークを介して接続された外部記憶装置であってもよい。
【0151】
図15(b)に表したように、状態分布
図MPの表示方法は、先ず、複数のガス導入孔12のそれぞれの状態の測定結果(データ)をコンピュータ500に取り込む処理を行う(ステップS301)。データは、少なくとも
図13(b)に表したようなX,Y座標及び状態の測定結果である。CPU511は、このデータから所定の条件に基づいて良好、普通、不良の判定を行うとともに、判定結果に対応した表示対応を求める。
【0152】
次に、状態分布
図MPへの変換処理を行う(ステップS302)。CPU511は、取り込んだデータのX,Y座標及び各座標に対応した表示態様に基づき、状態分布
図MPを表示するための画像データに変換する処理を行う。
【0153】
次に、状態分布
図MPの表示を行う(ステップS303)。CPU511は、先のステップS302で変換した画像データを出力部513に画像として表示する処理を行う。これにより、出力部513に状態分布
図MPが表示される。
【0154】
(状態分布図の表示例)
図16(a)及び(b)は、状態分布図の表示例(その1)を示す図である。
図16(a)には電極10の画像10G及び基材11の画像11Gの面内にガス導入孔12の状態の分布がXY平面上に表される。この状態分布
図MPによって、電極10(基材11)における複数のガス導入孔12の状態の面内分布を視覚的に把握することができる。
【0155】
また、
図16(b)には、
図16(a)における状態分布
図MPのスキャンラインSLに沿った状態分布が表される。コンピュータ500の出力部513に表示された
図16(a)に示す状態分布
図MPを参照しながら、ユーザは入力部514(マウス等)を操作してスキャンラインSLを所望の位置に設定する。これにより、スキャンラインSL上に沿ったガス導入孔12の状態が
図16(b)に示すように表される。ユーザがスキャンラインSLを移動させると、これに合わせて
図6(b)に示す状態が連動して変化する。
【0156】
図16(b)に示すスキャンラインSL上のガス導入孔12の状態表示では、それぞれのガス導入孔12の状態に対応した色分けの表示とともに、測定結果が高さに対応して表示されている。ユーザは、孔径や内壁面粗さなどの任意の測定項目を選択することで、その測定結果を高さでも把握できるようになる。
【0157】
なお、スキャンラインSLはX軸に沿った方向に限定されず、Y軸に沿った方向、斜め方向であってもよい。また、スキャンラインSLは直線に限定されず、折れ曲がり線や曲線など、任意に設定可能である。
【0158】
図17は、状態分布図の表示例(その2)を示す図である。
図17に表した状態分布
図MPでは、電極10の画像10G及び基材11の画像11Gが3次元表示されるとともに、複数のガス導入孔12の状態を示す表示を高さで表したものである。また、この表示では、ガス導入孔12の状態を高さで表すとともに、状態に対応した色分けでも表示している。状態分布
図MPを3次元表示することで、電極10の全体としてのガス導入孔12の状態をより把握しやすくなる。
【0159】
なお、状態分布
図MPの3次元表示の角度はユーザによって任意に設定可能である。例えば、入力部514(マウス等)の操作によって傾斜角度や参照角度を任意に選択することができる。
【0160】
また、本実施形態に係る状態分布
図MP及びその表示方法においては、電極10をプラズマエッチング装置100に使用する時間の経過とともに状態分布
図MPを求めておいてもよい。これにより、電極10の消耗具合を時系列に並ぶ状態分布
図MPで把握することができる。
【0161】
また、時系列に並ぶ状態分布
図MPにおける各時間の差分を求めて状態分布
図MPとして表示させてもよい。この差分を示す状態分布
図MPから、電極10の面内位置と対応したガス導入孔12の劣化具合を容易に把握することができる。
【0162】
(状態の予測)
次に、状態の予測について説明する。
本測定方法ではガス導入孔12の状態を定量的に測定できることから、定期的に測定を行うことで測定結果の変化から電極10の交換時期を予測することも可能になる。
図18は、状態(測定結果)の変化及び予測を説明する図である。
図18の横軸は時間、縦軸は状態(測定結果)を表している。
【0163】
図18には、一例として3つのガス導入孔12の測定結果m1、m2及びm3の経時変化(時間t1~t4)が示されている。この各測定結果m1、m2及びm3の時間t1~t4のプロットから近似曲線を求める。そして、この近似曲線と閾値Thとが交わる時間が、ガス導入孔12の不良となる時間であると予測される。
【0164】
例えば、測定結果m1では、近似曲線と閾値Thとの交わる時間がtx1である。時間tx1は時間t4と時間t5との間であり、この時間tx1でガス導入孔12の状態が不良になると予測される。また、測定結果m2では、近似曲線と閾値Thとの交わる時間がtx2である。時間tx2は時間t5と時間t6との間であり、この時間tx2でガス導入孔12の状態が不良になると予測される。測定結果m3では、近似曲線と閾値Thとの交わる時間が時間t6までの間には生じない。したがって、このガス導入孔12では、時間t6までに状態が不良になるとは予測されない。このように、各ガス導入孔12の測定結果の経時変化から、それぞれのガス導入孔12の状態を予測でき、これに基づき電極10の交換時期を予測することができる。
【0165】
図19(a)~(c)は、予測に基づく状態分布図の例を示す図である。
先に説明したように、本測定方法によってガス導入孔12の状態を定期的に測定して経時変化を求めておくと、その測定結果からガス導入孔12の状態の変化を予測することができる。
図19(a)~(c)には、この予測結果を状態分布
図MP(1)~MP(3)として表した例が示される。
図19(a)に示す状態分布
図MP(1)、
図19(b)に示す状態分布
図MP(2)、
図19(c)に示す状態分布
図MP(3)の順に予測時間が進んでいる。予測結果を状態分布
図MP(1)~MP(3)で表すことで、視覚的に電極10の状態や交換時期を把握することができる。
【0166】
以上説明したように、本実施形態に係るガス導入孔の測定方法及び電極によれば、プラズマエッチング装置用の電極に設けられたガス導入孔を高精度に測定することができ、精度の高いガス導入孔を備えた電極を提供することができる。
【0167】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング装置用の電極10の再生方法によれば、使用済みの電極10を再生させることができる。これにより、時間管理する場合に比べて同じ基材11の電極10を長く使用することができ、プラズマエッチング装置100のランニングコストを低下させることが可能となる。
【0168】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング装置用の電極10の再生方法によれば、使用済みの電極10を再生させることができる。これにより、時間管理する場合に比べて同じ基材11の電極10を長く使用することができ、プラズマエッチング装置100のランニングコストを低下させることが可能となる。
【0169】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング装置によれば、プラズマエッチング装置用の電極に設けられたガス導入孔を高精度に測定することができ、精度の高いガス導入孔を備えた電極を提供することができる。
【0170】
また、本実施形態に係る状態分布
図MP及びその表示方法によれば、プラズマエッチング装置用の電極に設けられたガス導入孔の状態を容易に把握することができ、電極10の状態や寿命を客観的かつ視覚的に判断することができる。
【0171】
なお、上記に本実施形態およびその他の例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態ではガス導入孔12の測定として本測定方法を適用したが、本測定方法以外の測定方法を用いてガス導入孔12の状態を測定してもよい。また、本実施形態で表した状態分布
図MPは一例であり、判定や表示態様はこれに限定されるものではない。また、前述の各実施形態またはその他の例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0172】
10…電極
11…基材
12…ガス導入孔
100…プラズマエッチング装置
110…チャンバ
120…上部電極
121…ガス導入孔
130…下部電極
140…ガス導入路
141…保持部
150…排気路
160…ポンプ
170…高周波印加部
200…測定装置
210…発光部
215…コントローラ
220…受光部
225…画像処理部
300…測定装置
310…カメラ
315…画像処理部
L1,L2…光
MP,MP(1),MP(2),MP(3)…状態分布図
SCL…半透過スクリーン
W…対象物