(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166153
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】熱伝達媒体としての生分解性炭化水素流体の使用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C09K5/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127772
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019521767の分割
【原出願日】2017-10-26
(31)【優先権主張番号】16196115.6
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】クラリス ドゥーセ
(72)【発明者】
【氏名】ローレント ゲルマナウド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化石由来ではなく生物由来であって、熱伝達に有用な改良された性質を示し、生分解性であって、特に適切な粘度、熱伝達能力および適当な操作範囲を示すであろう、熱伝達媒体を提供する。
【解決手段】200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の液相熱伝達媒体としての使用であり、流体は、95重量%超えのイソパラフィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量とを含み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の、液相熱
伝達媒体としての使用であって、前記流体は、95重量%を超えるイソパラフィンと、3
重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量と、100重量
ppm未満の芳香族化合物を含む、使用。
【請求項2】
熱伝達流体として、または冷却剤として、好ましくは車両エンジン、より好ましくは自
動車エンジン用の冷却剤としての、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
閉ループ系で、好ましくは非加圧での、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記流体が、220℃~340℃、好ましくは240℃~340℃、より好ましくは2
50℃~340℃の範囲の沸点を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記沸点範囲が、240℃~275℃、または250℃~295℃、または285℃~
335℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
動作温度範囲が、-50℃~260℃、好ましくは-50℃~220℃である、請求項
1または2に記載の使用。
【請求項7】
流体が、240℃~275℃の沸点範囲または250℃~295℃の沸点範囲を有する
、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
動作温度範囲が、-30℃~315℃である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
流体が、285℃~335℃の沸点範囲を有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記流体が、80~180℃の温度、50~160barの圧力、0.2~5時-1の
液空間速度および200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で、95重量%を超
える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含む供給原料、または95質量%を
超える合成ガス由来原料を含む供給原料を接触水素化するステップを含むプロセスによっ
て得られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記供給原料が、98重量%を超える、好ましくは99重量%を超える水素化脱酸素化
異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは、水素化脱酸素化異性化炭化水素
バイオマス原料からなり、特に前記バイオマスが、植物油、そのエステルまたはそのトリ
グリセリドであり、前記供給原料は、より好ましくは、HVO供給原料であるか、または
前記供給原料は、合成ガス、より好ましくは再生可能な合成ガスに由来する原料を98重
量%超、好ましくは99重量%超含む、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記水素化ステップの前、または前記水素化ステップの後、またはその両方で分留ステ
ップを行う、請求項10または11に記載の使用
【請求項13】
前記流体が、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の芳香族化合物を含
む、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記流体が、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には50ppm未満の
ナフテンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記流体が、5ppm未満、さらに3ppm未満、さらに好ましくは0.5ppm未満
の硫黄を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記流体が、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で少なくとも60%
、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有利には少なくとも
80%の生分解性を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達媒体としての特定の生分解性流体の使用に関する。本発明で使用され
る流体(以下、改良された流体と呼ぶ)は、狭い沸点範囲および非常に低い芳香族含有量
を有し、それらを熱伝達流体および冷却剤を含む、熱伝達媒体としての使用に特に適した
ものにする価値ある特性を示す。
【背景技術】
【0002】
炭化水素流体は、熱伝達流体としての使用を含めて広く使用されている。熱伝達流体は
、液体または液体/気体流体として使用することができ、後者の場合は物理的状態変化を
伴う。
【0003】
例えば、液相熱伝達媒体は、-115℃~400℃の広い温度範囲にわたって作動し、
非加圧システムおよび低~中加圧システムで使用されるように設計されている。液体熱伝
達の主な利点は、低コストの設置と運用である。大口径配管、安全弁、スチームトラップ
、水処理設備を排除することで資本コストが削減される。メンテナンスの必要が少なく、
補充が少ないことによって、運用コストが削減される。液相/気相熱伝達流体も存在する
。それらは広い動作温度範囲と均一な熱伝達を提供する。その他の主な利点には、正確な
温度管理と低い機械メンテナンスコストが含まれる。また、気相媒体を利用する熱伝達シ
ステムは、装置が液体ではなく蒸気で満たされるため、通常、類似の液相システムよりも
必要とする流体が少ない。
【0004】
そのため、非加圧または加圧装置で使用することができる多くの異なるタイプの熱伝達
流体、液体または液体/蒸気が存在する。
【0005】
また、最終用途に応じて動作の温度範囲が選択される。例えば、最終用途としては、一
次回路および二次回路の有無にかかわらず、ラジエータの有無にかかわらず、固定式熱交
換器、オフロード熱交換器、ポンプ、チラー、ヒーター、クーラー、温度制御ユニット、
注入ユニット、LBGユニット、CSPプラントなどが挙げられる。一般に、熱伝達媒体
は、熱伝達流体として(すなわち産業において)および冷却剤として(すなわち自動車エ
ンジンなどにおいて)の用途がある。
【0006】
伝熱媒体はまた、温度範囲によって分類される。例えば、熱伝達媒体は、以下のように
分類できることが広く認識されている:
-非常に低い温度、-115℃~175℃(例:医薬品製造、環境試験室における用途
)、
-低温、-50℃~220℃(例:HVAC、医薬品製造、合成繊維製造、食品および
飲料、環境試験室における用途)、
-中温、-30℃~315℃(例:石油およびガス処理、化学工業、プラスチック処理
、バイオディーゼル製造、天然ガス精製における用途)、
-高温、-20℃~350℃(例:石油およびガス処理、化学工業、プラスチック処理
、バイオディーゼル製造、太陽エネルギー、気液化、プラスチック成形における用途)、
-超高温、-10℃~400℃(例:集光型太陽光発電(CSP)、バイオディーゼル
生産、化学工業、気液化、精製アスファルトにおける用途)。
【0007】
熱伝達媒体を提供する多数のプレーヤーが存在する。しかしながら、これまでに知られ
ている熱伝達媒体は、特に、アルキル化芳香族流体などの鉱油である。
【0008】
NesteOy社とAvantherm社は、冷却媒体の製造に関する協力を発表した
。2016年4月28日のプレスリリースによると、「Neste Renewable
Isoalkaneは、Avantherm社の再生可能な製品の冷熱の伝達に使用さ
れる」という。使用されている製品は、同社独自のNEXBTLテクノロジのおかげで使
用されている、Neste Renewable Isoalkaneである。しかし、
この製品は、特にその引火点を考えると適切ではない。
【0009】
国際公開第2015/044289号は、溶媒および機能性流体用途に使用することが
できるフィッシャートロプシュ誘導軽油留分を開示している。前記文献は、限定されたバ
イオカーボン含有量を有する流体を開示していない。さらに、前記文献は、熱伝達流体ま
たは冷却剤などの、液相熱伝達媒体としての流体の使用を開示していない。
【0010】
欧州特許第2368967号明細書は、生物由来の原料から製造された、5~30重量
%のC10~C20ノルマルアルカンおよび70~95重量%のC10~C20イソアル
カンを含む溶媒組成物を開示している。前記文献は、その発明で具体的に定義されている
流体の具体的な使用を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
化石由来ではなく生物由来であって、熱伝達に有用な改良された性質を示し、生分解性
であって、特に適切な粘度、熱伝達能力および適当な操作範囲を示すであろう、熱伝達媒
体が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体
の、液相熱伝達媒体としての使用を提供し、前記流体は、95重量%を超えるイソパラフ
ィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量と、
100重量ppm未満の芳香族化合物を含む。
【0013】
当業者にはよく理解されているように、80℃未満の沸点範囲は、終点と初留点との差
が80℃未満であることを意味する。
【0014】
一実施形態によれば、熱伝達媒体は、熱伝達流体として、または冷却剤として、好まし
くは車両エンジン、より好ましくは自動車エンジン用の冷却剤として使用される。
【0015】
一実施形態によれば、熱伝達媒体は、閉ループ系で、好ましくは非加圧で使用される。
【0016】
一実施形態によれば、流体は、220℃~340℃、好ましくは240℃~340℃、
より好ましくは250℃~340℃の範囲の沸点を有する。
【0017】
一実施形態によれば、沸点範囲は、240℃~275℃または250℃~295℃また
は285℃~335℃である。
【0018】
一実施形態によれば、動作温度範囲は-50℃~260℃、好ましくは-50℃~22
0℃である。この実施形態では、好ましくは流体は、240℃~275℃の沸点範囲また
は250℃~295℃の沸点範囲を有する。
【0019】
他の実施形態によれば、動作温度範囲は-30℃~315℃である。この実施形態では
、好ましくは流体は、285℃~335℃の沸点範囲を有する。
【0020】
一実施形態によれば、流体は、80~180℃の温度、50~160barの圧力、0
.2~5時-1の液空間速度および200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で
、95重量%を超える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含む供給原料、ま
たは95重量%を超える合成ガス由来原料を含む供給原料を接触水素化するステップを含
むプロセスによって得られ;好ましくは、供給原料は、98%を超える、好ましくは99
%を超える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは、水素
化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料からなり、特にバイオマスが植物油、そのエス
テルまたはそのトリグリセリドである場合が好ましく、供給原料は、より好ましくは、水
素処理化植物油(HVO)供給原料、特にNEXBTLであり、または供給原料は、合成
ガス、より好ましくは再生可能な合成ガスに由来する原料を98%超、好ましくは99%
超含む。
【0021】
一変形形態によれば、前の実施形態では、水素化ステップの前、または水素化ステップ
の後、またはその両方で分留ステップが行われる。
【0022】
一実施形態によれば、流体は、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の
芳香族化合物を含む。
【0023】
一実施形態によれば、流体は、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には
50ppm未満のナフテンを含む。
【0024】
一実施形態によれば、流体は、5ppm未満、さらに3ppm未満、さらに好ましくは
0.5ppm未満の硫黄を含む。
【0025】
一実施形態によれば、流体は、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で
少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有
利には少なくとも80%の生分解性を有する。
【0026】
したがって、改良された流体は、多くの用途、特に閉ループ系、好ましくは非加圧を含
むものの用途に用途を見出すであろう。流体はまた、開ループ系と同様に、加圧(低~中
)閉ループ系においても用途を見出すことができる。したがって、改良された流体は、医
薬品製造、合成繊維製造、食品および飲料、環境試験室、石油およびガス処理における用
途、化学工業、プラスチック加工、バイオディーゼル製造、天然ガス精製などの多くの用
途において使用することができる。
【0027】
熱伝達媒体としての改良された流体は、熱伝達流体として(すなわち産業において)お
よび冷却剤として(すなわち自動車エンジンなどにおいて)用途があり、後者は本発明の
改良された流体の好ましい用途である。
【0028】
使用では、本発明の改良された流体はまた、当該分野で公知の任意の添加剤を含み得る
。
【0029】
本発明の改良された流体と他の流体との混合物は、出発熱伝達媒体として、または既存
の設備を再充填するときに、使用することも可能である。本発明はまた、既存の熱伝達媒
体の一部または全部を置き換えるための本発明の流体の使用にも適用される。
【発明の詳細な説明】
【0030】
・本発明で使用される改良された流体を製造するためのプロセス。
本発明は、200~400℃の範囲の沸点を有し、95%を超えるイソパラフィンを含
み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む、改良された流体を利用する。それは、
80~180℃の温度、50~160barの圧力、液空間速度0.2~5時-1および
200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で、95重量%を超える水素化脱酸素
化異性化炭化水素バイオマス供給原料または95重量%を超える合成ガス由来原料を含む
供給原料を、接触水素化するステップを含むプロセスによって得られる。
【0031】
第1の変形によれば、供給原料は、98%超え、好ましくは99%超えの水素化脱酸素
化異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは水素化脱酸素化異性化炭化水素
バイオマス原料からなる。一実施形態によれば、バイオマスは植物油、それらのエステル
またはそれらのトリグリセリドである。一実施形態によれば、供給原料は、NEXBTL
供給原料である。
【0032】
第二の変形によれば、供給原料は、98%超え、好ましくは99%超えの合成ガス由来
原料を含む。一実施形態によれば、原料は再生可能な合成ガスに由来する。
【0033】
一実施形態によれば、プロセスの水素化条件は以下の通りである:
-圧力:80~150bar、好ましくは90~120bar;
-温度:120~160℃、好ましくは150~160℃;
-液空間速度(LHSV):0.4~3、好ましくは0.5~0.8時-1;
-水素処理量は、供給原料200Nm3/トン以下。
【0034】
一実施形態によれば、分留ステップは、水素化ステップの前、または水素化ステップの
後、またはその両方で行われる;一実施形態によれば、プロセスは、3つの水素化段階を
含み、好ましくは3つの別々の反応器中である。
【0035】
したがって、本発明は、200~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を
有する流体を開示し、前記流体は、95重量%超えのイソパラフィンおよび3重量%未満
のナフテンを含み、OECD 306規格に従って測定しとき、28日で少なくとも60
%の生分解性であり、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量であり、100重量
ppm未満の芳香族化合物を含み、好ましくはCH3 satとして表される炭素を30
%未満含む。
【0036】
一実施形態によれば、流体は、220~340℃、有利には240℃を超えて340℃
以下の範囲の沸点を有する。
【0037】
沸点は、当業者に周知の方法に従って測定することができる。一例として、沸点は、A
STM D86規格に従って測定することができる。
【0038】
一実施形態によれば、流体は、80℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは3
5~50℃、有利には40~50℃の沸点範囲を有する。
【0039】
一実施形態によれば、流体は、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の
芳香族化合物を含む。
【0040】
一実施形態によれば、流体は、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には
50ppm未満のナフテンを含む。
【0041】
一実施形態によれば、流体は、5ppm未満、さらに3ppm未満、好ましくは0.5
ppm未満の硫黄を含む。
【0042】
一実施形態によれば、流体は、98重量%を超えるイソパラフィンを含む。
【0043】
一実施形態によれば、流体は、5重量%未満のn-パラフィン、好ましくは3重量%未
満のn-パラフィンを含む。
【0044】
一実施形態によれば、流体は、少なくとも20:1のイソパラフィン対n-パラフィン
の比を有する。
【0045】
一実施形態によれば、流体は、95重量%超えのイソパラフィンとしての炭素原子数1
4~18の分子を含み、好ましくは60~95重量%、より好ましくは80~98重量%
の、C15イソパラフィン、C16イソパラフィン、C17イソパラフィン、C18イソ
パラフィン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群より選択されるイソパラフィン
を含む。
【0046】
一実施形態によれば、流体は以下を含む:
-合計量80~98%のC15イソパラフィンおよびC16イソパラフィン;または
-合計量80~98%のC16イソパラフィン、C17イソパラフィンおよびC18イ
ソパラフィン;または
-合計量80~98%のC17イソパラフィンおよびC18イソパラフィン。
【0047】
一実施形態によれば、流体は、以下の特徴のうちの1つ以上、好ましくはすべてを示す
:
-流体は、3%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは約0%の、Cquatとし
て表される炭素を含む;
-流体は、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは15%未満のCH s
atとして表される炭素を含む;
-流体は、40%超え、好ましくは50%超え、さらに好ましくは60%超えのCH2
satとして表される炭素を含む;
-流体は、30%未満、好ましくは28%未満、より好ましくは25%未満のCH3
satとして表される炭素を含む;
-流体は、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは15%未満のCH3長
鎖として表される炭素を含む;
-流体は、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満のCH3短鎖
として表される炭素を含む。
【0048】
イソパラフィン、ナフテンおよび/または芳香族化合物の量は、当業者にとって既知の
方法に従って決定することができる。これらの方法のうち、ガスクロマトグラフィーを挙
げることができる。
【0049】
一実施形態によれば、流体は、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で
少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有
利には少なくとも80%の生分解性を有する。
【0050】
一実施形態によれば、流体は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97%、
より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは約100%のバイオカーボン含
有量を有する。
【0051】
原料が最初に開示され、次いで水素化ステップおよび関連する分留ステップ、そして最
後に、改良された流体が開示される。
【0052】
・原料
第一の変形によれば、供給原料または単に原料は、バイオマスで実施されるように、水
素化脱酸素化およびそれに続く異性化(以後「HDO/ISO」)のプロセスの結果であ
る供給原料であり得る。
【0053】
このHDO/ISOプロセスは、植物油、動物性脂肪、魚油、およびそれらの混合物か
らなる群から選択される生物学的材料、バイオマス、好ましくは植物油に適用される。適
切な植物原料としては、菜種油、キャノーラ油、菜種油、トール油、ヒマワリ油、大豆油
、大麻油、オリーブ油、亜麻仁油、カラシ油、パーム油、ラッカセイ油、ヒマシ油、ココ
ナッツ油、スエット、獣脂、脂身、リサイクルされた消化脂肪などの動物性油脂、遺伝子
工学によって作られた出発原料、そして藻類およびバクテリアなどの微生物によって作ら
れた生物学的な出発原料が挙げられる。縮合生成物、エステル、または生物学的原料から
得られる他の誘導体、ならびに使用済み燃焼メチルエステル油(UFOME)などのリサ
イクル油も出発材料として使用することができる。特に好ましい植物原料はエステルまた
はトリグリセリド誘導体である。この材料は、生物学的エステルまたはトリグリセリド成
分の構造を分解し、そして酸素、リンおよび硫黄(の一部)化合物を除去し、同時にオレ
フィン結合を水素化するための水素化脱酸素(HDO)ステップにかけられ、次いで得ら
れた生成物の異性化によって、炭化水素鎖を分岐させ、こうして得られた原料の低温特性
を改善する。
【0054】
HDOステップでは、水素ガスおよび生物学的成分は、向流式または並流式のいずれか
でHDO触媒床に送られる。HDOステップでは、圧力および温度範囲は、典型的にはそ
れぞれ20~150bar、および200~500℃である。HDOステップでは、公知
の水素化脱酸素触媒を使用することができる。HDOステップの前に、二重結合の副反応
を回避するために、任意に生物学的原料をより穏やかな条件下で予備水素化することがで
きる。HDOステップの後、生成物は、異性化ステップに送られ、そこで水素ガスおよび
水素化される生物学的成分、および任意にn-パラフィン混合物が異性化触媒床に並流式
または向流式で送られる。異性化ステップでは、圧力および温度範囲は、典型的にはそれ
ぞれ20~150bar、および200~500℃である。異性化ステップでは、公知の
異性化触媒を通常使用することができる。
【0055】
二次プロセスステップ(中間プーリング、捕捉トラップなど)も存在し得る。
【0056】
HDO/ISOステップから出た生成物は、例えば、所望の留分を得るために分留する
ことができる。
【0057】
様々なHDO/ISOプロセスが文献に開示されている。国際公開第2014/033
762号は、予備水素化ステップ、水素化脱酸素ステップ(HDO)、および向流原理を
用いて機能する異性化ステップを含むプロセスを開示している。欧州特許第172884
4号は、植物または動物由来の混合物からの炭化水素成分の製造プロセスを記載している
。このプロセスは、例えば、アルカリ金属塩などの汚染物質を除去するための植物由来の
混合物の前処理ステップと、それに続く水素化脱酸素(HDO)ステップおよび異性化ス
テップとを含む。欧州特許第2084245号には、脂肪酸エステルを含有する生物由来
と、場合によっては、例えば、ひまわり油、菜種油、キャノーラ油、パーム油などの植物
油、または松の木のパルプに含まれる脂肪油(トール油)などの遊離脂肪酸のアリコート
との混合物の水素化脱酸素、続いて特定の触媒上での水素異性化による、ディーゼル燃料
またはディーゼル成分として使用可能な炭化水素混合物の製造プロセスが記載されている
。欧州特許第2368967号は、そのようなプロセスおよびそのようにして得られた生
成物を開示している。
【0058】
Neste Oy社は特定のHDO/ISOプロセスを開発し、現在NexBTL(登
録商標)(ディーゼル、航空燃料、ナフサ、イソアルカン)の商品名でこのようにして得
られた製品を販売している。このNexBTL(登録商標)は、本発明における使用のた
めの適切な供給原料である。NEXBTL供給原料については、http://en.w
ikipedia.org/wiki/NEXBTLおよび/またはNeste Oy社
のWebサイトでさらに説明されている。
【0059】
第2の変形によれば、供給原料または単に原料は、原料としてのさらなる処理に適した
、合成ガスの炭化水素への変換プロセスの結果である供給原料であってもよい。合成ガス
は、典型的には、水素と一酸化炭素と、場合により少量の、二酸化炭素のような他の成分
とを含む。本発明で使用される好ましい合成ガスは、再生可能な合成ガス、すなわち再生
可能資源(再生可能エネルギー源を含む)からの合成ガスである。
【0060】
可能な合成ガス系の原料の代表例は、ガス液化(GTL)原料、バイオマス液化(BT
L)原料、再生可能メタノール液化(MTL)原料、再生可能水蒸気改質、および廃棄物
からエネルギーガス化、ならびに再生可能エネルギー(太陽エネルギー、風力エネルギー
)を使用して二酸化炭素と水素を合成ガスに変換する最近の方法である。この後者のプロ
セスの例は、アウディ(登録商標)e-ディーゼル原料プロセスである。用語合成ガスは
、メタンリッチガスなど(リッチガスを中間体として使用することができる)、フィッシ
ャー トロプシュ法で使用することができるあらゆる材料源にも及ぶ。
【0061】
合成ガスの液化(STL)プロセスは、ガス状炭化水素を、ガソリンまたはディーゼル
燃料などのより長鎖の炭化水素に変換する精製プロセスである。再生可能なメタンリッチ
ガスは、例えば、フィッシャー トロプシュ法、メタノール-ガソリン法(MTG)また
は合成ガス-ガソリンプラス法(STG+)を使用して、直接変換を経てまたは中間体と
しての合成ガスを経て、液体合成燃料に変換される。フィッシャー トロプシュ法の場合
、生成する流出物はフィッシャートロプシュ誘導体である。
【0062】
「フィッシャートロプシュ誘導体」とは、炭化水素組成物が、フィッシャートロプシュ
縮合プロセスの合成生成物であるか、またはそれから誘導されることを意味する。フィッ
シャートロプシュ反応は、一酸化炭素と水素(合成ガス)をより長い鎖、通常はパラフィ
ン系炭化水素に変換する。全体的な反応方程式は、適切な触媒の存在下でそして典型的に
は高温(例えば、125~300℃、好ましくは175~250℃)および/または圧力
(例えば、5~100bar、好ましくは12~50bar)で、単純である(しかし機
械的複雑さは省略):
n(CO+2H2)=(-CH2-)n+nH2O+熱
必要ならば、2:1以外の水素:一酸化炭素比を用いてもよい。一酸化炭素および水素は
、それ自体有機または無機、天然または合成の供給源から、典型的には天然ガスまたは有
機的に誘導されたメタンのいずれかから誘導することができる。例えば、それはバイオマ
スまたは石炭からも誘導することができる。
【0063】
上記のような連続的なイソパラフィンシリーズを含有する回収された炭化水素組成物は
、好ましくはパラフィンワックスの水素化異性化、続いて好ましくは溶媒または触媒脱ロ
ウなどの脱ロウによって得られる。パラフィンワックスは、好ましくはフィッシャートロ
プシュ誘導体ワックスである。
【0064】
炭化水素留分は、フィッシャー トロプシュ反応から直接的に、または例えば、フィッ
シャー トロプシュ合成生成物または好ましくは水素化処理されたフィッシャー トロプ
シュ合成生成物の分留によって間接的に得ることができる。
【0065】
水素化処理は、好ましくは、沸点範囲を調整するための水素化分解(例えば、英国特許
第2077289号および欧州特許出願公開第0147873号参照)および/または、
分岐パラフィンの割合を増やすことによって低温流動性を改善することができる水素化異
性化を含む。欧州特許出願公開第0583836号明細書には、二段階水素化処理法が記
載されており、そこではフィッシャートロプシュ合成生成物は、それが異性化または水素
化分解を実質的に受けないような条件下でまず水素化転化に付され(これはオレフィンと
酸素含有成分を水素化する)、次いで、得られた生成物の少なくとも一部は、水素化分解
および異性化が起こり実質的にパラフィン系炭化水素燃料を生じるような条件下で水素化
転化される。異性化プロセスを調整して、必要な炭素分布を有する主にイソパラフィンを
得ることが可能である。合成ガス系の原料は、それが90%を超えるイソパラフィンを含
有するので、本質的にイソパラフィン系である。
【0066】
例えば、米国特許第4125566号および米国特許第4478955号に記載されて
いるように、重合、アルキル化、蒸留、分解-脱カルボキシル化、異性化および水素化改
質などの他の合成後処理を用いてフィッシャートロプシュ縮合生成物の性質を変性するこ
とができる。例えば、上記のフィッシャートロプシュ誘導体回収炭化水素組成物を調製す
るために使用することができるフィッシャー トロプシュ法の例は、Sasolのいわゆ
る市販のスラリー相蒸留技術、シェル中間留分合成プロセス(Shell Middle
Distillate Synthesis Process)および「AGC-21
」エクソンモービルプロセスである。これらおよび他の方法は、例えば、欧州特許出願公
開第776959号、欧州特許出願公開第668342号、米国特許第4943672号
、米国特許第5059299号、国際公開第9934917号および国際公開第9920
720号にさらに詳細に記載されている。
【0067】
所望の留分は、続いて、例えば、蒸留によって単離することができる。
【0068】
原料は、典型的には、EN ISO 20846に従って測定したとき、15ppm未
満、好ましくは8ppm未満、より好ましくは5ppm未満、特に1ppm未満の硫黄を
含む。典型的には、原料は、バイオ由来産物として硫黄を含まない。
【0069】
水素化装置に入る前に、予備分留ステップを行うことができる。装置に入る際により狭
い沸点範囲を有することによって、出口においてより狭い沸点範囲を有することが可能に
なる。実際、予備分留留分の典型的な沸点範囲は、220~330℃であり、一方、予備
分留ステップを伴わない留分は、典型的には150℃~360℃の沸点範囲を有する。
【0070】
・水素化ステップ
HDO/ISOまたは合成ガスから出た原料は、次いで水素化される。その原料は任意
に予備分留することができる。
【0071】
水素化装置で使用される水素は、典型的には高純度の水素、例えば、99%超えの純度
を有する水素であるが、他のグレードも使用できる。
【0072】
水素化は1つ以上の反応器中で起こる。その反応器は1つ以上の触媒床を含み得る。触
媒床は、通常、固定床である。
【0073】
水素化は触媒を用いて行われる。典型的な水素化触媒としては、これらに限定されない
が、ニッケル、白金、パラジウム、レニウム、ロジウム、タングステン酸ニッケル、モリ
ブデンニッケル、モリブデン、モリブデン酸コバルト、シリカ上のモリブデン酸ニッケル
、および/またはアルミナ担体またはゼオライトが挙げられる。好ましい触媒は、Ni系
であり、アルミナ担体上に担持されており、100~200m2/gの触媒の比表面積を
有する。
【0074】
水素化条件は典型的には以下である:
-圧力:50~160bar、好ましくは80~150bar、そして最も好ましくは
90~120barまたは100~150bar;
-温度:80~180℃、好ましくは120~160℃、そして最も好ましくは150
~160℃;
-液空間速度(LHSV):0.2~5時-1、好ましくは0.4~3時-1、最も好
ましくは0.5~0.8時-1;
-水素処理量:上記の条件に適合し、最大200Nm3/トンの原料。
【0075】
反応器内の温度は、典型的には約150~160℃とすることができ、そして圧力は、
典型的には約100barとすることができるが、一方、液体時空間速度は、典型的には
約0.6時-1とすることができ、そして処理速度は、原料品質と最初のプロセスパラメ
ーターに応じて適合される。
【0076】
本発明の水素化プロセスはいくつかの段階で実施することができる。2段階または3段
階、好ましくは3段階、好ましくは3つの別々の反応器中であってもよい。第1段階は、
硫黄捕捉、実質的に全ての不飽和化合物の水素化、および芳香族化合物の約90%以下の
水素化を行う。第1の反応器から出る流れは実質的に硫黄を含まない。第2段階では、芳
香族化合物の水素化が続き、芳香族化合物の99%以下が水素化される。第3段階は仕上
げ段階であり、100重量ppm以下の低さの芳香族含有量を可能にし、または高沸点生
成物であっても、50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の芳香族含有量を可能
にする。
【0077】
触媒は反応器毎に様々な量または実質的に等しい量で存在することができ、例えば、3
つの反応器について重量で、0.05~0.5/0.10~0.70/0.25~0.8
5、好ましくは0.07~0.25/0.15~0.35/0.4~0.78、最も好ま
しくは0.10~0.20/0.20~0.32/0.48~0.70である。
【0078】
3個の代わりに、1個または2個の水素化反応器を用いてもよい。
【0079】
第1の反応器が、交互に揺動モードで運転されるツイン反応器で作られることも可能で
ある。これは触媒の装填と排出に有用であり得る:なぜなら、第1の反応器が最初に作用
が阻害される触媒を含むので(実質的に全ての硫黄がその触媒内および/または触媒上に
捕捉される)、それをたびたび交換したほうがよいからである。
【0080】
2つ、3つまたはそれ以上の触媒床が設置されている1つの反応器を使用することがで
きる。
【0081】
反応温度およびその結果としての水素化反応の水熱平衡を制御するために、反応器また
は触媒床の間の流出物を冷却するための再循環にクエンチを挿入することが必要なことも
ある。好ましい実施形態では、そのような中間冷却またはクエンチはない。
【0082】
プロセスが2つまたは3つの反応器を利用する場合、第1の反応器は硫黄トラップとし
て作用するであろう。したがって、この第1の反応器は実質的に全ての硫黄を捕捉するで
あろう。したがって、触媒は非常に急速に飽和し、時折更新され得る。そのような飽和触
媒について再生または復活が可能でない場合、第1の反応器は、サイズおよび触媒含有量
の両方が触媒更新頻度に依存する犠牲的反応器と考えられる。
【0083】
一実施形態では、得られた生成物および/または分離されたガスは、少なくとも部分的
に水素化段階の入口に再循環される。この希釈は、もしこれが必要とされる場合、特に第
1段階で、反応の発熱性を管理限界内に維持するのを助ける。リサイクルはまた、反応前
の熱交換および温度のより良好な制御も可能にする。
【0084】
水素化装置を出る流れは、水素化生成物および水素を含む。フラッシュ分離器は、流出
物をガス(主に残留水素)と液体(主に水素化炭化水素)とに分離するのに使用される。
このプロセスは、3つのフラッシュ分離器、1つは高圧のもの、1つは中圧のもの、そし
て1つは大気圧に非常に近い、低圧のものを使用して実施することができる。
【0085】
フラッシュ分離器の頂部に集められた水素ガスは、水素化装置の入口に、または異なる
レベルで反応器間の水素化装置内に再循環することができる。
【0086】
最終分離生成物はほぼ大気圧であるので、分留段階に直接供給することが可能であり、
それは好ましくは約10~50mbar、好ましくは約30mbarの真空圧力下で行わ
れる。
【0087】
分留段階は、種々の炭化水素流体を分留塔から同時に抜き出すことができるように操作
することができ、そしてその沸点範囲は予め定めることができる。
【0088】
したがって、分留は、水素化前、水素化後、またはその両方で行うことができる。
【0089】
したがって、水素化反応器、分離器および分留装置は、中間タンクを使用する必要なし
に直接接続することができる。供給物、特に供給物の初留点および終点を適合させること
によって、中間貯蔵タンクなしで、所望の初留点および終点を有する最終生成物を直接製
造することが可能である。さらに、水素化と分留のこの統合は、少ない装置数と省エネル
ギーで最適化された熱統合を可能にする。
【0090】
・本発明で用いる流体
本発明で用いる流体、以下、単に「改良された流体」は、アニリン点または溶解力、分
子量、蒸気圧、粘度、乾燥が重要である系での規定の蒸発条件、および規定の表面張力に
関して、卓越した特性を有する。
【0091】
改良された流体は、主としてイソパラフィンであり、95重量%超え、好ましくは98
重量%超えのイソパラフィンを含む。
【0092】
改良された流体は、典型的には1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には
50ppm未満のナフテンを含む。
【0093】
典型的には、改良された流体は、6~30、好ましくは8~24、最も好ましくは9~
20の炭素原子数を含む。流体は、イソパラフィンとして、14~18個の炭素原子を有
する分子を大部分、すなわち90重量%超えを特に含む。好ましい改良された流体は、C
15イソパラフィン、C16イソパラフィン、C17イソパラフィン、C18イソパラフ
ィンおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択されるイソパラフィンを60~
95重量%、好ましくは80~98重量%含む。
【0094】
好ましい改良された流体は以下を含む:
-合計量80~98%のC15イソパラフィンおよびC16イソパラフィン;または
-合計量80~98%のC16イソパラフィン、C17イソパラフィンおよびC18イ
ソパラフィン;または
-合計量80~98%のC17イソパラフィンおよびC18イソパラフィン。
【0095】
好ましい改良された流体の例は、以下を含むものである:
- 30~70%のC15イソパラフィンおよび30~70%のC16イソパラフィン
、好ましくは40~60%のC15イソパラフィンおよび35~55%のC16イソパラ
フィン;
- 5~25%のC15イソパラフィン、30~70%のC16イソパラフィンおよび
10~40%のC17イソパラフィン、好ましくは8~15%のC15イソパラフィン、
40~60%のC16イソパラフィンおよび15~25%のC17イソパラフィン;
- 5~30%のC17イソパラフィンおよび70~95%のC18イソパラフィン、
好ましくは10~25%のC17イソパラフィンおよび70~90%のC18イソパラフ
ィン。
【0096】
改良された流体は特定の分岐分布を示す。
【0097】
イソパラフィンの分岐割合および炭素分布は、NMR法(ならびにGC-MS)および
各タイプの炭素の決定(水素なし、1、2または3個の水素を有する)を用いて決定され
る。Cquat satは、飽和四級炭素を表し、CH satは、1個の水素を有する
飽和炭素を表し、CH2 satは、2個の水素を有する飽和炭素を表し、CH3 sa
tは、3個の水素を有する飽和炭素を表し、CH3長鎖とCH3短鎖は、それぞれ、長鎖
と短鎖上のCH3基を表し、ここで、短鎖は、1個のメチル基のみであり、長鎖は、少な
くとも2個の炭素を有する鎖である。CH3長鎖とCH3短鎖の合計はCH3 satで
ある。
【0098】
改良された流体は、典型的には、3%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは約0
%のCquatとして表される炭素を含む。
【0099】
改良された流体は、典型的には、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは
15%未満のCH satとして表される炭素を含む。
【0100】
改良された流体は、典型的には、40%超え、好ましくは50%超え、より好ましくは
60%超えのCH2 satとして表される炭素を含む。
【0101】
改良された流体は、典型的には、30%未満、好ましくは28%未満、より好ましくは
25%未満のCH3 satとして表される炭素を含む。
【0102】
改良された流体は、典型的には、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは
15%未満のCH3長鎖として表される炭素を含む。
【0103】
改良された流体は、典型的には、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは
9%未満のCH3短鎖として表される炭素を含む。
【0104】
改良された流体は、200~400℃の範囲の沸点を有し、また非常に低い芳香族化合
物含有量のため、高い安全性を示す。
【0105】
改良された流体は、典型的には、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、
有利には20ppm未満の芳香族化合物(UV法を使用して測定される)を含む。これは
、高温沸騰生成物、典型的には300~400℃、好ましくは320~380℃の範囲の
沸点を有する生成物に特に有用である。
【0106】
改良された流体の沸点範囲は、好ましくは80℃以下、好ましくは70℃以下、より好
ましくは60℃以下、さらにより好ましくは35~50℃、有利には40~50℃である
。
【0107】
改良された流体はまた、低すぎて通常の低硫黄分析計によって検出できないレベルで、
典型的には5ppm未満、さらには3ppm未満、そして好ましくは0.5ppm未満の
、極端に低い硫黄含有量を有する。
【0108】
初留点(IBP)から終点(FBP)までの範囲は、具体的な用途および組成に従って
選択される。初留点が250℃を超えると、指令2004/42/CEに従って、VOC
(揮発性有機化合物)フリーと分類できる。
【0109】
有機化学物質の生分解とは、微生物の代謝活性による化学物質の複雑さの減少を意味す
る。好気的条件下で、微生物は、有機物を二酸化炭素、水、バイオマスに変換する。OE
CD 306法は、海水中の個々の物質の生分解性の評価に利用可能である。OECD法
306は、シェイク フラスコ法またはクローズド ボトル法のいずれかとして実施する
ことができ、添加される唯一の微生物は、試験物質が添加される試験海水中の微生物であ
る。海水中の生物分解を評価するために、生分解性を海水中で測定することを可能にする
生分解性試験を実施した。生分解性は、OECD 306試験ガイドラインに従って行っ
たクローズド ボトル試験で決定した。改良された流体の生分解性は、OECD法306
に従って測定される。
【0110】
OECD方法306は以下のとおりである:
【0111】
クローズド ボトル法は、予め決定した量の試験物質を試験媒体中に通常2~10mg
/lの濃度で溶解することからなり、1つ以上の濃度を任意に使用する。その溶液を、恒
温槽または15~20℃の範囲内に制御された囲いの中で、暗闇の中で、充填された密閉
ボトルの中に保持する。28日間にわたる酸素分析によって、分解を追跡する。24本の
ボトルを使用する(試験物質用に8本、基準物質用に8本、海水と栄養分用に8本)。全
ての分析を対のボトルで行う。化学的または電気化学的方法を使用して、少なくとも4つ
(0、5、15および28日目)の溶存酸素の測定を行う。
【0112】
したがって、結果は28日での%分解性で表される。改良された流体は、28日で、O
ECD 306規格に従って測定したとき、少なくとも60%、好ましくは少なくとも7
0重量%、より好ましくは少なくとも75%、そして有利には少なくとも80%の生分解
性を有する。
【0113】
本発明は天然起源の生成物のような出発物質を使用する。生体材料の炭素は、植物の光
合成、したがって大気中のCO2に由来する。したがって、大気中に放出される炭素が増
えないので、これらのCO2材料の分解(分解による、寿命の終わりでの燃焼/焼却もま
た理解されるであろう)は温暖化に寄与しない。したがって、生体材料のCO2評価は明
らかに優れており、得られる生成物のプリント炭素を減らすのに役立つ(製造のためのエ
ネルギーのみを考慮に入れる)。一方、分解されてCO2を出す起源の化石物質は、CO
2率の上昇、ひいては気候温暖化の一因となるだろう。したがって、本発明による改良さ
れた流体は、化石源から出発して得られる化合物のプリント炭素よりも優れたプリント炭
素を有するであろう。
【0114】
したがって、本発明は改良された流体の製造中の生態学的評価も改良する。用語「バイ
オカーボン」は、炭素が天然由来であり、以下に示されるように生体材料に由来すること
を示す。バイオカーボンの含有量と生体材料の含有量は同じ値を示す表現である。
【0115】
源の再生可能な材料または生体材料は、大気から始まる光合成によって(人間の規模で
)最近固定されたCO2から炭素が生じる有機材料である。地上では、このCO2は植物
によって収集または固定される。海では、CO2は、光合成を行う微視的な細菌、植物、
または藻類によって収集または固定される。生体材料(天然起源炭素100%)は10-
12より高い同位体比14C/12C、典型的には約1.2×10-12を示すが、化石
材料はゼロの比を有する。実際、同位体14Cは、大気中で形成され、次いで最大で数十
年の時間スケールで光合成によって統合される。14Cの半減期は、5730年である。
したがって、光合成から生じる物質、すなわち一般的な植物は、必然的に最大含有量の同
位体14Cを有する。
【0116】
生体材料の含有量またはバイオカーボンの含有量の決定は、規格ASTM D 686
6-12、方法B(ASTM D 6866-06)およびASTM D 7026(A
STM D 7026-04)に従って行われる。規格ASTM D 6866は、「放
射性炭素および同位体比質量分析を用いた天然範囲物質のバイオベース含有量の決定」に
関し、一方、規格ASTM D 7026は、「炭素同位体分析による物質のバイオベー
ス含有量決定のためのサンプリングおよび結果の報告」に関する。2番目の規格では、最
初の段落で最初の規格について言及している。
【0117】
一つ目の規格は、試料の比14C/12Cの測定試験を記載し、それを再生可能起源1
00%の基準試料の比14C/12Cと比較して、試料中の再生可能由来Cの相対百分率
を得る。この規格は14Cでの年代測定と同じ概念に基づいているが、年代測定の方程式
を適用しない。このようにして計算された比率は、「pMC」(percent Mod
ern Carbon)として示される。分析される材料が生体材料と化石材料(放射性
同位体を含まない)の混合物である場合、得られるpMCの値は試料中に存在する生体材
料の量と直接相関する。14C年代測定に使用される基準値は1950年からの年代測定
値である。この年の後の大気中に大量の同位体を導入した大気中の核実験の存在のため、
この年が選択された。参照番号1950は100のpMC値に対応する。熱核試験を考慮
に入れると、保持される現在の値は約107.5である(これは0.93の補正係数に対
応する)。現在の植物の放射性炭素への識別特性は、従って107.5である。したがっ
て、54pMCおよび99pMCの識別特性は、それぞれ50%および93%の試料中の
生体材料の量に対応する。
【0118】
本発明による化合物は、少なくとも部分的に生体材料に由来し、したがって少なくとも
95%の生体材料の含有量を示す。この含有量は有利にはさらに高く、特に98%超え、
より好ましくは99%超え、そして有利には約100%である。したがって、本発明によ
る化合物は、100%生体起源のバイオカーボンであり得るか、またはそれとは反対に、
化石起源との混合物から生じる。一実施形態によれば、同位体比14C/12Cは、1.
15~1.2×10-12である。
【0119】
一実施形態によれば、流体は、100℃より高い、好ましくは105℃より高い、優先
的に110℃より高い、より優先的に115℃より高い引火点を有する。
【0120】
特に断らない限り、百分率およびppmはすべて重量基準である。単数形および複数形
は、流体を示すために互換的に使用される。
【0121】
以下の実施例は本発明を限定することなく説明するものである。
【実施例0122】
本発明のプロセスでは、NEXBTL原料(イソアルカン)である原料が使用される。
以下の水素化条件が使用される:
反応器内の温度は、約150~160℃であり;圧力は、約100barであり、液空
間速度は、0.6時-1であり;処理速度は適応される。使用される触媒は、アルミナ上
のニッケルである。
【0123】
本発明で使用される3つの流体を準備するために分留が行われる。
【0124】
得られた生成物は以下の特性を有して得られた。
【0125】
以下の規格を、以下の特性を決定するために使用した:
引火点 EN ISO 2719
流動点 EN ISO 3016
15℃での密度 EN ISO 1185
40℃での粘度 EN ISO 3104
アニリン点 EN ISO 2977
熱伝導率1 内部フラッシュ法
比熱2 熱量測定による方法
【0126】
1.アルミニウム製の2つの管、1つの内側管と1つの外側管とを含む特定の装置が使
用される。測定される流体は2つの管の間の環状空間内に配置される。内側管にエネルギ
ーパルス(ディラック型)を適用し、外側管で温度を測定することにより、サーモグラム
が得られる。
【0127】
アルミニウムの2つの管の2つの層の熱拡散率、密度および比熱を温度の関数として知
ること、および分析される流体の密度および比熱を知ることによって、流体の熱伝導率を
温度の関数として導き出すことができる。
【0128】
装置の較正
装置は、まず、異なる温度で基準試料、SERIOLA 1510(熱伝達媒体)を用
いて較正される。異なる熱特性は、以前に別に測定した。
【0129】
試料調製
試料を混合し、(シリンジを用いて)2つの管の間の環状空間に入れる。次に、装填さ
れた装置を温度が調節されたチャンバー内に置く。
【0130】
測定手順
各温度測定について、以下の手順に従う。試料を所定の温度で安定化する。次に、内側
管の内面に閃光を当て、外側管の外面の温度上昇を経時的に記録する。
各所定温度での少なくとも3つの測定で得られた平均値に基づいて、熱伝導率を計算す
る。
【0131】
2.比熱は、DSC熱量計(DSC NETZSCH 204フェニックス)を使用し
て測定し、それは、規格ISO 113587、ASTM E1269、ASTM E9
68、ASTM E793、ASTM D3895、ASTM D3417、ASTM
D3418、DIN51004およびDIN51007およびDIN53765に準拠す
る。
【0132】
【0133】
3つの流体は無色、無臭であり、食品等級用途に適した欧州薬局方による純度を有し、
CEN/TS 16766による溶媒クラスAである。
【0134】
これらの結果は、本発明に記載の改良された流体が熱伝達媒体としての使用に特に有用
であることを示している。
【0135】
熱伝導率の値は、同じ粘度で標準の鉱油のものより優れる熱伝導性を示している(最大
7%)。比熱は、標準の鉱油のものよりも優れている(最大11%)。
【0136】
結果はまた、3より高い、特に3~6mm2/sの動粘度、良好な熱容量および広い操
作温度範囲を有する熱伝達媒体を得ることが可能であることを示している。
【0137】
したがって、本発明の流体は、多くの用途、特に閉ループ系、好ましくは非加圧を含む
ものの用途に用途を見出すであろう。流体はまた、加圧(低~中)閉ループ系においても
用途を見出すことができる。
【0138】
熱安定性は、本発明において、GB/T 23800-2009規格に従って、流体の
分解の百分率を測定することによって評価した。本実施例で実施される試験は、試験の温
度および期間によってその規格とは異なる。実施例では、流体の分解率は320℃で50
0時間後に測定した。
【0139】
本発明による、上記で定義された本発明の実施例3の流体は、他の市販の流体、すなわ
ちアルキルベンゼン流体、ジベンジルトルエン異性体、鉱物基油および水素化処理された
鉱物基油と比較された。
【0140】
熱安定性の結果を以下の表2に示す。
【0141】
【0142】
本発明において定義される流体は、先行技術の比較流体よりもはるかに良好な熱安定性
を有し、320℃で500時間後に2%未満の分解を伴う。
200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の、液相熱伝達媒体としての使用であって、前記流体は、95重量%を超えるイソパラフィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量と、100重量ppm未満の芳香族化合物を含み、
前記流体が、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で少なくとも60%の生分解性を有する、使用。