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特開2022-166731可変ギャップモータの偏心方向検出装置
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  • 特開-可変ギャップモータの偏心方向検出装置 図1
  • 特開-可変ギャップモータの偏心方向検出装置 図2
  • 特開-可変ギャップモータの偏心方向検出装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166731
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】可変ギャップモータの偏心方向検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/22 20160101AFI20221026BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H02K11/22
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072134
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 正雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 公昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 孝治
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD04
5H607EE33
5H607HH01
5H607HH08
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR04
(57)【要約】
【課題】磁気の影響を受けることがなく、簡素な構造で安価に、可変ギャップモータの偏心方向を検出すること。
【解決手段】可変ギャップモータ10のアウターケース12に、偏心揺動により界磁用固定子14に対して変位する可動子16の端面16Aを撮像する画像センサ44を設け、画像センサ44により撮像された撮像画像の変化から可動子14の偏心方向を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターケースと、
周方向に所定の間隔で配置され、多相電流の各相の電流を通電させる界磁用コイルが巻回された複数の固定子突極を有し、前記アウターケースに固定された円環状の界磁用固定子と、
前記界磁用固定子の径方向内方に前記界磁用固定子に対して相対回転不能にかつ相対揺動可能に配置され、対応する前記固定子突極との間に磁束が通過する磁気ギャップを画定する外周面及び内歯を形成された内周面を有する円環状の可動子と、
前記可動子の径方向内方に前記界磁用固定子と同軸的に回動可能に配置され、前記内歯に噛み合い、且つ前記内歯より少ない歯数の外歯を外周面に有する外歯歯車とを備え、
前記固定子突極に発生させた回転磁界が前記可動子を偏心揺動させることにより、前記外歯歯車から回転出力を発生する可変ギャップモータの偏心方向検出装置であって、
前記アウターケースに設けられ、偏心揺動により前記界磁用固定子に対して変位する前記可動子の端面を撮像する画像センサと、
前記画像センサにより撮像された撮像画像の変化から前記可動子の偏心方向を検出する偏心方向検出処理部とを有する可変ギャップモータの偏心方向検出装置。
【請求項2】
前記可動子の端面のうち前記画像センサにより撮像される領域に照明光を照射する光源を有する請求項1に記載の可変ギャップモータの偏心方向検出装置。
【請求項3】
前記可動子の端面のうち前記画像センサによる撮像される領域が不規則な微細凹凸の粗面である請求項1又は2に記載の可変ギャップモータの偏心方向検出装置。
【請求項4】
前記可動子の端面のうち前記画像センサによる撮像される領域に、前記可動子の偏心揺動の原点位置を検出するためのマークが設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の可変ギャップモータの偏心方向検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変ギャップモータの偏心方向検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内接式遊星歯車機構が組み込まれた可変ギャップモータとして、円環状の界磁用固定子と、界磁用固定子の径方向内方に界磁用固定子に対して相対回転不能にかつ相対揺動可能に配置され、内周面に形成された内歯を有する円環状の可動子と、可動子の径方向内方に配置され、内歯に噛み合う外歯を外周面に有する外歯歯車と、外歯歯車と同軸に回転する出力軸とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
界磁用固定子は、周方向に所定の間隔で配置され、多相電流の各相の電流を通電させる界磁用コイルが巻回された複数の固定子突極(磁極)を有する。可動子は、対応する固定子突極との間に磁束が通過する磁気ギャップ(エアギャップ)を画定するべく外周面に形成された複数の可動子突極を有する。外歯歯車は可動子の偏心揺動によって回転し、出力トルク(回転出力)が発生する。このとき、可動子を偏心揺動させるために、回転磁界による電磁力が可動子の中心から内歯と外歯との噛合領域の中心への向きに対して所定の角度、例えば、90度~180度の角度をなすように、界磁用コイルへの通電を制御するものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このような界磁用コイルに対する通電制御のために、可動子の偏心揺動における偏心方向を検出する必要がある。可動子の偏心方向を検出する偏心方向検出装置として、可動子の偏心によって可動子と界磁用固定子との径方向の空隙寸法が変化にすることを利用すべく、可動子と界磁用固定子との間に空隙寸法に応じて誘導起電力を変化する、界磁用固定子の周方向の3箇所に設けられた励磁コイル及び検出コイルを含むレゾルバの出力によって可動子の偏心方向を検出する装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-317552号公報
【特許文献2】特開2017-28808号公報
【特許文献3】特許6761778号公報
【特許文献4】特開2017-28809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レゾルバを用いた偏心方向検出装置は、磁気の影響を受け易く、しかも界磁用固定子の周方向の3箇所にレゾルバを必要とし、構造が複雑になると共に高コストである欠点を含む。
【0007】
発明が解決しようとする課題は、磁気の影響を受けることがなく、簡素な構造で安価に、可変ギャップモータの偏心方向を検出することができる偏心方向検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態による可変ギャップモータの偏心方向検出装置は、アウターケース(12)と、周方向に所定の間隔で配置され、多相電流の各相の電流を通電させる界磁用コイル(24)が巻回された複数の固定子突極(22)を有し、前記アウターケースに固定された円環状の界磁用固定子(14)と、前記界磁用固定子の径方向内方に前記界磁用固定子に対して相対回転不能にかつ相対揺動可能に配置され、対応する前記固定子突極との間に磁束が通過する磁気ギャップを画定する外周面及び内歯(28)を形成された内周面を有する円環状の可動子(16)と、前記可動子の径方向内方に前記界磁用固定子と同軸的に回動可能に配置され、前記内歯に噛み合い、且つ前記内歯より少ない歯数の外歯(30)を外周面に有する外歯歯車(18)とを備え、前記固定子突極に発生させた回転磁界が前記可動子を偏心揺動させることにより、前記外歯歯車から回転出力を発生する可変ギャップモータ(10)の偏心方向検出装置であって、前記アウターケースに設けられ、偏心揺動により前記界磁用固定子に対して変位する前記可動子の端面を撮像する画像センサ(44)と、前記画像センサにより撮像された撮像画像の変化から前記可動子の偏心方向を検出する偏心方向検出処理部(46)とを有する。
【0009】
この構成によれば、可動子の偏心方向検出が磁気の影響を受けることなく行われ、しかも簡素な構造で安価である。
【0010】
上記偏心方向検出装置において、好ましくは、前記可動子の端面のうち前記画像センサによる撮像される領域に照明光を照射する光源を有する。
【0011】
この構成によれば、画像センサによる撮像画像の変化が明確になり、可動子の偏心方向の検出が精度よく確実なものになる。
【0012】
上記偏心方向検出装置において、好ましくは、前記可動子の端面のうち前記画像センサによる撮像される領域が不規則な微細凹凸の粗面である。
【0013】
この構成によれば、可動子16の偏心方向検出の確実性が向上する。
【0014】
上記偏心方向検出装置において、好ましくは、前記可動子の端面のうち前記画像センサによる撮像される領域に、前記可動子の偏心揺動の原点位置を検出するためのマークが設けられている。
【0015】
この構成によれば、可動子の偏心揺動の原点位置の検出が容易且つ確実に行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による偏心方向検出装置は、可動子の偏心方向検出において磁気の影響を受けることがなく、簡素な構造で安価である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による偏心方向検出装置が適用される可変ギャップモータの一つの実施形態を示す正面図
図2】実施形態による偏心方向検出装置を示す要部の断面図
図3】実施形態による偏心方向検出装置の作動状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による偏心方向検出装置が適用される可変ギャップモータの実施形態を、図を参照して説明する。
【0019】
図1に示されているように、本実施形態の可変ギャップモータ10は、3相交流リラクタンス型のものであり、アウターケース12と、アウターケース12に固定された円環状の界磁用固定子14と、界磁用固定子14の内方に配置されて偏心揺動する円環状の可動子16と、可動子16の内方に配置されて可動子16の偏心揺動によって回転する外歯歯車18と、外歯歯車18に固定されて外歯歯車18と同軸に回転する出力軸20とを備える。
【0020】
界磁用固定子14は、円環状主部21から周方向に所定の間隔(60度間隔)をおいて各々径方向内方に突出した6個の固定子突極(ティース)22を有する。各固定子突極22の外周には界磁用コイル24が巻回されている。各界磁用コイル24には3相交流の各相の電流が通電される。
【0021】
可動子16は、固定子突極22に対向すべく、外周部から周方向に所定の間隔(60度間隔)をおいて各々径方向外方に突出した6個の可動子突極(ティース)26を有する。各可動子突極26は、径方向に対向する固定子突極22の互いの先端面間に、界磁用コイル24による磁束が通過する磁気ギャップが構成される。磁気ギャップは界磁用固定子14に対する可動子16の偏心揺動によって変化する。
【0022】
可動子16の内周面には内歯28が形成されている。これにより、可動子16は内接式遊星歯車装置の内歯部材を兼ねており、内接式遊星歯車装置の入力部材をなす。
【0023】
外歯歯車18は、界磁用固定子14と同軸的に回動可能に配置され、出力軸20を介してアウターケース12に回転可能に支持されている。外歯歯車18の外周には複数の外歯30が形成されている。外歯30は、内歯28と同一ピッチで設けられ、外歯30の歯数は、内歯28の歯数より少なくとも1つ以上少ない。外歯歯車18は、出力軸20に対して同軸であり、且つ一体に回転する。可動子16の中心C2は、外歯歯車18の回転中心C1に対して軸線方向に直交する方向に偏心量eだけ偏倚しており、偏心量eは、内歯28及び外歯30の歯丈より大きい。可動子16は、回転位相が変化しない(周方向に沿って転動しない)ように、且つ、その中心C2が外歯歯車18の軸線回りに偏心量eを半径とする円軌道S(図3参照)を描くように変位すること、すなわち、偏心揺動が可能である。外歯30のうち、外歯歯車18の回転中心C1に対する可動子16の中心C2とは反対側の所定の範囲の外歯30は、所定の範囲の内歯28と噛合している。
【0024】
可動子16の回転位相が変化せず、且つ内歯28と外歯30とが噛み合っていることにより、可動子16の偏心揺動によって外歯歯車18が回転する。内歯28及び外歯30の歯形は、インボリュート歯形であるが、楔形若しくは台形、又はこれに類する先細形状の歯形に変更してもよい。
【0025】
上述の構成により、界磁用固定子14と可動子16とが可変ギャップモータ10をなす。可変ギャップモータ10は制御部60により各界磁用コイル24に対する。通電をされる。制御部60は、後述の偏心方向検出装置40に検出される可動子16の偏心方向に応じて各界磁用コイル24に対する通電を図3(A)~(F)に例示しているように制御する。
【0026】
図3(A)~(F)は、白抜きの矢印により指されている固定子突極22に対応する界磁用コイル24に通電が行われ、各固定子突極22が時計廻り方向周りに順次励磁することにより生じる可動子16の偏心揺動を揺動60度毎に示している。
【0027】
これにより、界磁用固定子14に、図3で見て時計廻り方向の回転磁界が発生する。この回転磁界によって、可動子16の中心C2が円軌道を描いて変位すべく可動子16が偏心揺動することにより、内歯28と外歯30との噛合のもとに外歯歯車18が回転し、出力軸20に回転出力が発生する。
【0028】
可動子16の偏心揺動において、界磁用固定子14は、可動子16の偏心揺動を阻害することなく、可動子16から反力を受け止める反力部材をなす。外歯30の歯数をZa、内歯28の歯数をZbとした場合、減速比G=Za/(Za-Zb)をもって外歯歯車18が可動子16の揺動回転数に対し減速回転する。外歯30の歯数は、内歯28の歯数より少なくとも1つ以上少ないため、回転磁界を時計廻り方向に発生させて可動子16を時計廻り方向に偏心揺動させると、外歯歯車18及び出力軸20は、反時計廻り方向に回転する。
【0029】
アウターケース12には、図2に示されているように、偏心方向検出装置40が取り付けられている。偏心方向検出装置40は、偏心揺動により界磁用固定子14に対して変位する可動子16の端面16Aに照明光を照射するLED等による光源42と、光源42の前方に配置された拡散レンズ44と、集光レンズ46と、集光レンズ46の後方に配置され、端面16Aを撮像する画像センサ48と、画像センサ48に接続された偏心方向検出処理部50とを含む。換言すると、光源42は、可動子16の端面16Aのうち画像センサ48により撮像される領域Eの表面に照明光を照射する。
【0030】
領域Eは、格子模様で図示されているが、実際には不規則な微細凹凸の粗面になっている。領域Eには可動子16の偏心揺動の原点位置(揺動0度)を検出するための黒点等によるマークMが印刷により付けられている。
【0031】
画像センサ48は、イメージアレー等を含み、領域Eを連続的にする。偏心方向検出処理部50は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等を含み、画像センサ48により撮像された領域Eの撮像画像の時間的な変化から可動子16の偏心方向を検出する。偏心方向検出処理部50は可動子16の偏心方向を示す信号を制御部60に出力する。
【0032】
偏心方向検出装置40は、コンピュータのポインティングデバイスであるマウスと類似のものであり、偏心方向検出装置40が移動しないマウスに相当して、領域Eがマウスに対して変位するマウスパットに相当し、領域Eの撮像画像、特にシャードパターンの時間的な変化から可動子16の偏心方向を検出ものである。
【0033】
偏心方向検出装置40は、マウスのようなものでよく、磁気の影響を受けることがなく、レゾルバを用いた偏心方向検出装置に比して、簡素な構造で、安価である。
【0034】
領域Eの表面に光源42からの照明光が照射されることにより、画像センサ48により撮像される領域Eの撮像画像の変化が明確になる。これにより、偏心方向検出装置40による可動子16の偏心方向の検出が精度よく確実なものになる。
【0035】
画像センサ48により撮像される領域Eが不規則な微細凹凸の粗面になっていることにより、偏心方向検出装置40による可動子16の偏心方向検出の確実性が粗面でない場合に比して向上する。また、画像センサ48がマークMを撮像することにより、偏心方向検出装置40は、所定のキャリブレーションのもとに可動子16の偏心揺動の原点位置を簡単に検出することができる。
【0036】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上述の実施形態では、可動子突極26の先端面が固定子突極22との間に磁束が通過する磁気ギャップを画定する可動子16の外周面をなすが、可動子突極26は必須ではなく、可動子16は可動子突極26がない円筒形状であってもよい。光源42は、LEDに限られることなく、レーザ光によるものであってもよい。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 :可変ギャップモータ
12 :アウターケース
14 :界磁用固定子
16 :可動子
16A :端面
18 :外歯歯車
20 :出力軸
21 :円環状主部
22 :固定子突極
24 :界磁用コイル
26 :可動子突極
28 :内歯
30 :外歯
40 :偏心方向検出装置
42 :光源
44 :拡散レンズ
46 :画像センサ
48 :画像センサ
50 :偏心方向検出処理部
60 :制御部
図1
図2
図3