(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167988
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221027BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221027BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08J5/04 CES
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135469
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2018047385の分割
【原出願日】2018-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、環境省、平成29年度セルロースナノファイバー製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務 (セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 理史
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
(72)【発明者】
【氏名】今西 正義
(72)【発明者】
【氏名】西野 彰馬
(72)【発明者】
【氏名】黒宮 孝雄
(57)【要約】
【課題】高剛性すなわち高弾性率を保ちつつ、高い塗装性を備える複合樹脂成形体を製造する方法を実現する
【解決手段】樹脂組成物の製造方法である。主剤樹脂と繊維状フィラーと分散剤とを含有する樹脂組成物を製造するに際し、あらかじめ疎水化処理していない繊維状フィラーを用いることで、樹脂組成物にて成形された成形体の表面に存在する水酸基量を、主剤樹脂の水酸基量よりも多くする。これにより、成形体を塗装することが可能な塗料に含まれる溶媒に対する、成形体の接触角を、樹脂組成物を構成する主剤樹脂の溶媒に対する接触角よりも小さくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤樹脂と繊維状フィラーと分散剤とを含有する樹脂組成物を製造するに際し、あらかじめ疎水化処理していない繊維状フィラーを用いることで、前記樹脂組成物にて成形された成形体の表面に存在する水酸基量を、前記主剤樹脂の水酸基量よりも多くすることにより、前記成形体を塗装することが可能な塗料に含まれる溶媒に対する、前記成形体の接触角を、前記樹脂組成物を構成する前記主剤樹脂の前記溶媒に対する接触角よりも小さくすることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
繊維の端部のみが解繊されている繊維状フィラーを用いることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
繊維状フィラーとしてセルロース類の天然繊維を用いることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
主剤樹脂としてオレフィン樹脂を用いることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法により得られた樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項6】
端部のみが解繊されている繊維状フィラーの解繊部位を成形体の表面から突出させることを特徴とする請求項5記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
成形体の表面から突出している繊維状フィラーの解繊部位の長さを、前記繊維状フィラーの全長の0.1%以上50%未満とすることを特徴とする請求項6記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか1項に記載の成形体の製造方法により得られた成形体に対し、溶媒を含んだ塗料であって、前記溶媒に対する前記成形体の接触角が、前記成形体を形成する樹脂組成物における主剤樹脂の前記溶媒に対する接触角よりも小さい前記塗料による塗装を施すことを特徴とする成形体の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物の製造方法に関し、特に塗装性を備える成形体を成形するための樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のいわゆる「汎用プラスチック」は、非常に安価であるだけでなく、成形が容易であり、また金属やセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量である。そのため、汎用プラスチックは、袋、各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品の材料として、また、自動車部品、電気部品等の工業部品として、さらに日用品、雑貨用品等の材料として、よく利用されている。
【0003】
しかしながら、汎用プラスチックは、機械的強度が不十分である等の欠点を有している。そのため、汎用プラスチックは、自動車等のための機械製品や、電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品などに用いられる材料に対して要求される十分な特性を有しておらず、その適用範囲が制限されているのが現状である。
【0004】
一方、ポリカーボネート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド等のいわゆる「エンジニアリングプラスチック」は、機械的特性に優れており、自動車等の機械製品や、電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品などに広く用いられている。しかし、エンジニアリングプラスチックは、高価であり、モノマーリサイクルが難しく、環境負荷が高いといった課題を有している。
【0005】
そこで、汎用プラスチックの材料特性(機械的強度等)を大幅に改善することが要望されている。汎用プラスチックを強化する目的で、繊維状フィラーである天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維などを汎用プラスチックの樹脂中に分散させることにより、その汎用プラスチックの機械的強度を向上させる技術が知られている。中でもセルロースなどの有機繊維状フィラーは、安価であり、かつ廃棄時の環境性にも優れていることから、強化用繊維として注目視されている。
【0006】
繊維強化樹脂を自動車等の機械製品や、電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品などの外装部材として活用しようとする場合には、繊維によるムラ感といった表面性を均一にするために、塗装をしたり、フィルムを貼ったりする。繊維強化樹脂を外装部材として活用するためには、繊維強化樹脂の表面の特性として、塗膜やフィルムに対する強固な接着性が求められる。
【0007】
繊維強化樹脂を用いた成形体への塗装性を改善するために、各社検討を進めている。たとえば特許文献1では、塗装性向上のため、塩素化ポリオレフィン樹脂と水酸基含有ビニル共重合体とをベースコートに添加することで、ベースコート層の材料および組成を調整して、成形体に対するベースコート層の接着性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、ポリオレフィン成形体と塗料との接着性の向上のため、上述のようにベースコートを用いている。しかしながら、ベースコートは剛性が低いため、ベースコートを含めた成形体全体としての剛性が低下するという課題がある。また特許文献1の技術では、材料数、工程数が多く、そのためコストが増加するという課題もある。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、高剛性すなわち高弾性率を保ちつつ、高い塗装性を備える複合樹脂成形体を製造する方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂組成物の製造方法は、主剤樹脂と繊維状フィラーと分散剤とを含有する樹脂組成物を製造するに際し、あらかじめ疎水化処理していない繊維状フィラーを用いることで、前記樹脂組成物にて成形された成形体の表面に存在する水酸基量を、前記主剤樹脂の水酸基量よりも多くすることにより、前記成形体を塗装することが可能な塗料に含まれる溶媒に対する、前記成形体の接触角を、前記樹脂組成物を構成する前記主剤樹脂の前記溶媒に対する接触角よりも小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、繊維状フィラーを含有することで高弾性率を保ちつつ、高い塗装性を備える成形体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における塗装が施された複合樹脂成形体の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態における繊維状フィラーの模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態における塗装が施された複合樹脂成形体の製造プロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の製造方法により得られる複合樹脂組成物および同組成物を用いた成形体について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、同じ構成部分には同じ符号を付して、詳しい説明を適宜省略する。
【0015】
本発明の実施の形態の製造方法により得られる複合樹脂組成物は、主剤樹脂と繊維状フィラーと分散剤とを含有した溶融混練物にて形成されるものである。複合樹脂組成物は、
図1の、断面を含む模式図に示すように、主剤樹脂1中に繊維状フィラー2が分散されている。そして、この樹脂組成物にて成形された成形体5の表面に塗装が施されて塗膜3が形成されている。
【0016】
主剤樹脂1は、良好な成形性を確保するために、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独で使用されてもよいし、あるいは二種以上組み合わせて使用されてもよい。なお、主剤樹脂1は、熱可塑性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0017】
主剤樹脂1は、これらの熱可塑性樹脂のうち、比較的低融点であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体や、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-C2-20オレフィンなど)や、環状オレフィン類などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独で使用されてもよいし、あるいは二種以上組み合わせて使用されてもよい。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン、プロピレンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの、不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;ブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独で使用されてもよいし、あるいは二種以上組み合わせて使用されてもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1等の三元共重合体などの、鎖状オレフィン類(特にα-C2-4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。
【0018】
繊維状フィラー2について説明する。本実施の形態の製造方法により得られる複合樹脂組成物に含まれる繊維状フィラー2(以下、単に「繊維」と称することがある。)は、複合樹脂組成物を用いて成形した樹脂成形体における、機械的特性の向上や、線膨張係数の低下による寸法安定性の向上などを主要な目的として用いられる。この目的のため、繊維状フィラー2は、主剤樹脂1よりも弾性率が高いことが好ましい。そのような繊維状フィラー2として、具体的には、カーボンファイバー(炭素繊維);カーボンナノチューブ;パルプ;セルロース;セルロースナノファイバー;リグノセルロース;リグノセルロースナノファイバー;塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維);チタン酸カリウム繊維;ホウ酸アルミニウム繊維;ケイ酸カルシウム繊維;炭酸カルシウム繊維;炭化ケイ素繊維;ワラストナイト;ゾノトライト;各種金属繊維;綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維;ジュート繊維、レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維;アセテート、プロミックスなどの半合成繊維;ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィンなどの合成繊維;さらにはそれらの表面及び末端に化学修飾した変性繊維などが挙げられる。またさらにこれらの中で、入手性、弾性率の高さ、線膨張係数の低さの観点から、カーボン類、セルロース類が特に好ましい。さらに環境性の観点からはセルロース類の天然繊維が好ましい。
【0019】
図2を参照して、繊維状フィラー2の形状について説明する。
図2に記載された符号Lは、繊維状フィラー2の長さ(以下、「繊維長」と称することがある。)であって、符号dは、繊維状フィラー2の幅(以下、「繊維径」と称することがある。)である。繊維状フィラー2のアスペクト比(L/d)が高いと、射出成形時に繊維状フィラーが流れ方向に配向しやすく、繊維状フィラーの配向方向の強度は強いが、それと直行する方向の強度は弱くなり、結果として落下試験等による衝撃強度が低下する。そのため、繊維状フィラー全体としてはアスペクト比(L/d)が小さいこと、すなわち、繊維径dが大きいことが好ましい。
【0020】
これに対し、機械的特性の観点からは、繊維と樹脂との接合界面の面積が大きい方が弾性率向上につながるため、繊維の比表面積が高い、すなわち繊維径dが小さいことが好ましい。アスペクト比が小さいことと、比表面積が大きいこととの2つの目的を果たすには、
図2に示すように、繊維1本内で、繊維長方向の端部が部分的に解繊されている構造が最も好ましい。符号4は、解繊部位を示している。最適な繊維の形状については、実験やシミュレーション結果から下記のように算出される。すなわち、解繊部位4の長さとしては、繊維状フィラー2全体の繊維長Lの5%以上、50%以下であることが好ましい。開繊部位4が繊維2の一端および他端の両方に形成されている場合は、両者の合計を「解繊部位4の長さ」とする。解繊部位4の長さが全体の繊維長Lの5%未満であると、比表面積が小さいため弾性率向上がみられにくく、また、これが50%を超えると、アスペクト比が大きい解繊部位4が支配的となるため、射出成形時に配向しやすくなり、衝撃強度が低下しやすくなる。
【0021】
樹脂組成物にて構成された成形体の塗装性の観点からも、
図2に示すように繊維1本内で、繊維長方向の端部が部分的に解繊されている構造が最も好ましい。なぜなら、この構造により、成形体の表面近傍に存在する繊維の表面積が大きくなって、塗料の濡れ性が向上し、塗装性が向上するためである。
【0022】
繊維長方向の端部が部分的に解繊されている繊維の解繊部位4が成形体の表面に露出していることで、さらに塗装性が良化する。成形時の成形条件を制御することで、上記構造をつくることができる。表面に露出する長さは、解繊部位4すなわち解繊している繊維部分の0.1%以上50%未満が好ましい。0.1%を下回ると十分に繊維が露出しておらず塗装性が悪くなりやすい。一方、50%以上繊維が露出していると、触感が悪くなるため製品として使用しにくくなる。
【0023】
上記の、繊維の解繊部位4が成形体の表面に露出している構造は、成形体の中央部よりも端部に多く露出していることで、塗装密着性が向上する。なぜなら、製品として使用した場合に、端部から塗装が剥がれやすいためである。端部に繊維を多く存在させることで、端部の塗装密着性を向上させることができ、塗装剥がれを抑制することができる。繊維を中央部から端部に多く凝集させることは、成形条件を制御することにより可能である。
【0024】
繊維状フィラー2に求められる特性について説明する。主剤樹脂1および繊維状フィラー2の種類については上記の通りであるが、主剤樹脂1に対して繊維状フィラー2が柔らか過ぎると、すなわち弾性率が小さ過ぎると、複合樹脂組成物は、全体として弾性率が小さくなり、結果として強度が低下する。一方で、主剤樹脂1に対して繊維状フィラー2が硬すぎると、すなわち弾性率が大き過ぎると、衝撃時に発生する衝撃波が伝播されずに、主剤樹脂1と繊維状フィラー2との界面で吸収されるため、その界面付近にヒビやクレーズが発生しやすくなり、結果として耐衝撃強度が落ちる。そのため、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率の関係は、繊維状フィラー2の弾性率の方が高く、その差は極力小さい方が好ましい。最適な関係についてはシミュレーション結果から算出され、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率差は20GPa以内であることが好ましい。
【0025】
これらの繊維状フィラー2は、石油由来の人工繊維を除いては、ほぼ全て親水性である。特に上述したセルロース類の繊維は、分子内に水酸基を多く持ち、親水性である。これらの親水性フィラーは、樹脂と複合する際には、樹脂が疎水性のため、一般的には疎水化される。しかし、本発明においては、塗装性を向上させる目的で、あらかじめの疎水化を行わない。あらかじめの疎水化を行っていないことで、繊維の親水基が残りやすくなり、その繊維が成形体の表面近傍に存在することで、塗装性が向上する。
【0026】
繊維状フィラー2は、主剤樹脂1との接着性あるいは複合樹脂組成物中での分散性を向上させるなどの目的で、チタネート系カップリング剤;シランカップリング剤;不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、または同無水物をグラフトした変性ポリオレフィン;脂肪酸;脂肪酸金属塩;脂肪酸エステルなどによって部分的に表面処理したものを用いてもよい。あるいは熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で部分的に表面処理されたものでも問題ない。本発明において、繊維は複合樹脂中で解繊されるが、解繊された繊維の内側が親水性となっているため、最終の成形体において、成形体中の繊維の解繊された端部は親水性が高くなり、解繊された端部が成形体表面に露出することで、塗装性がさらに良くなる。また同時に繊維中央の疎水基が樹脂との分散性が良く、高剛性を実現できる。以上のように疎水化していない部分も残すことで、樹脂との親和性と、塗料との親和性との両立が可能となる。
【0027】
上記のようにあらかじめ疎水化していない繊維を用いることで、成形体表面に存在する水酸基量が、主剤樹脂1の水酸基量よりも多くなる。これにより、塗装に用いる塗料に含まれる溶媒に対する成形体の接触角が、溶媒に対する、繊維を含まない主剤樹脂1の接触角よりも低くなって、塗料が染み込みやすくなる。繊維は成形体内部に根を張るように存在するため、塗装密着性が良く、塗膜が剥れにくくなる。また部分的に疎水化した繊維の場合でも、上述の通り、先端の解繊部位4は、親水性が高く、表面に露出しやすいため、親水性の塗料が染み込みやすく、優れた塗装性を発揮する。したがって、本発明の製造方法にて得られる成形体では、主剤樹脂1になじみにくい親水性の塗料であっても、塗料に対する接触角を低下させて、濡れ性を増加させ、塗装性を向上させることができる。
【0028】
複合樹脂成形体の表面は、塗装性向上のため粗面化するのが一般的である。粗面化している表面は微細な複数の凹凸部の集合体であるが、本発明では、その凹凸部の凹部の水酸基量が凸部よりも多くなる。これは、成形体の表面近傍に存在している繊維が、凹部の表面に、より多く露出しているためである。この構造により、凹部において、塗料保護や加飾のための表面層との親和性が増し、しかも塗料と複合樹脂との接着面積が増えるため、さらに塗装性が向上する。
【0029】
分散剤について説明する。本発明における複合構造の樹脂組成物は、繊維状フィラー2と主剤樹脂1との接着性、あるいは主剤樹脂1中の繊維状フィラー2の分散性を向上させるなどの目的で、分散剤を含有する。分散剤としては、各種のチタネート系カップリング剤;シランカップリング剤;不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、または同無水物をグラフトした変性ポリオレフィン;脂肪酸;脂肪酸金属塩;脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、不飽和炭化水素系やエポキシ系のものが好ましい。分散剤の表面は、熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で変性処理されていても問題ない。本実施の形態の製造方法で得られる樹脂組成物に含有させる分散剤の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。分散剤の含有量が、0.01質量%未満であると、分散不良が発生しやすく、一方、分散剤の含有量が20質量%を超えると、樹脂組成物にて成形された複合樹脂成形体の強度が低下しやすい。分散剤は、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の組み合わせにより適切に選択される。
【0030】
上述の複合樹脂組成物の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態における複合樹脂組成物の製造プロセスを例示するフロー図である。まず、溶融混練処理装置内に、主剤樹脂、繊維状フィラー、分散剤が投入され、装置内で溶融混練される。これにより、主剤樹脂が溶融し、溶融された主剤樹脂に、繊維状フィラーと分散剤とが分散される。また同時に装置の剪断作用により、繊維状フィラーの凝集塊の解繊が促進され、繊維状フィラーを主剤樹脂中に細かく分散させることができる。
【0031】
従来、繊維状フィラーとしては、湿式分散などの前処理により、事前に繊維を解繊したものが使用されている。しかし、湿式分散で用いられる溶媒中で事前に繊維状フィラーを解繊すると、溶融した主剤樹脂中で解繊する場合よりも解繊されやすいため、端部のみ解繊することが難しく、繊維状フィラー全体が解繊された状態となってしまう。また前処理を合わせることで工程が増え、生産性が悪くなるといった課題がある。
【0032】
これに対して、本実施の形態における複合樹脂組成物の製造プロセスでは、繊維状フィラーの解繊処理と、変性処理を目的とした湿式分散による前処理とを行わずに、繊維状フィラーについて主剤樹脂や分散剤などと一緒に溶融混練処理(全乾式工法)を行う。この工法では、繊維状フィラーの湿式分散処理を行わないことにより、繊維状フィラーを上記のように端部のみ部分的に解繊することができ、また工程数が少なく、生産性を向上させることができる。
【0033】
全乾式工法で本発明の形態の複合樹脂組成物を作製するには、混練時に高せん断応力をかけることが好ましい。そのための具体的な混練装置としては、単軸混練機、二軸混練機、ロール混練機、バンバリーミキサーなどが挙げられる。高せん断応力をかけやすく、また量産性も高いという観点から、連続式二軸混練機、連続式ロール混練機が特に好ましい。高せん断応力をかけることができる装置であれば、上記以外の混練装置を用いても構わない。
【0034】
溶融混練装置から押し出された複合樹脂組成物は、ペレタイザー等による切断工程を経て、ペレット形状に作製される。ペレット化の方式として、樹脂溶融後すぐに行う方式としては、空中ホットカット方式、水中ホットカット方式、ストランドカット方式などがある。あるいは、一度成形体やシートを成形したあとで、粉砕、切断することによる、粉砕方式などもある。
【0035】
このペレットを射出成形することにより、複合樹脂成形体としての射出成形品を作製することができる。ペレット中の繊維状フィラーは、上記のように、あらかじめ疎水化していない繊維がその端部のみ部分的に解繊され、その繊維が成形体の表面に露出することで、塗装性を向上させた射出成形品を得ることができる。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0037】
(実施例1)
以下の製造方法によって、パルプ分散ポリプロピレン複合樹脂成形体を製造した。
【0038】
主剤樹脂としてのポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製 商品名:J108M)と、繊維状フィラーとしての綿状針葉樹パルプ(三菱製紙社製 商品名:NBKP Celgar)と、分散剤として無水マレイン酸(三洋化成工業社製 商品名:ユーメックス)とを、質量比で85:15:5となるよう秤量し、ドライブレンドした。繊維状フィラーとしての綿状針葉樹パルプの疎水化処理は、事前には特に行わず、樹脂中で相溶化剤とともに樹脂を混練するというものであった。その後、二軸混練機(クリモト鉄工所社製 KRCニーダ)にて、溶融混練し、各成分を分散させた。二軸混練機のスクリュー構成を変えることでせん断力を変えることができ、実施例1では中せん断タイプの仕様とした。樹脂溶融物をホットカットして、パルプ分散ポリプロピレンペレットを作製した。
【0039】
作製したパルプ分散ポリプロピレンペレットを用いて、射出成形機(日本製鋼所社製 180AD)により、複合樹脂成形体としての試験片を作製した。試験片の作製条件は、樹脂温度190℃、金型温度60℃、射出速度60mm/s、保圧80Paとした。ペレットは、ホッパーを介して成形機のスクリューへ噛み込んでいくが、その際の侵入性を時間当たりのペレット減少量で測定しており、一定であることを確認した。試験片の形状は、下記で述べる評価項目によって変更した。詳細には、弾性率測定用に1号サイズのダンベルを作製し、塗膜密着性の試験用に、60mm角、厚さ1.2mmの平板を作製した。得られたパルプ分散ポリプロピレン複合樹脂成形体の試験片を用いて、以下の方法により評価を行った。以下の評価手法は、他の実施例や比較例にも適用した。
【0040】
[繊維の露出の有無、露出の割合、露出部の面内均一性]
得られたパルプ分散ポリプロピレン複合樹脂成形体を、SEM観察することにより、表面に露出している繊維の形態を観察した。上記SEMでは平面の観察のため、奥行き方向に関する露出割合については、数μmずつ研磨して観察することを繰り返すことで、3次元的に繊維状態を観察した。
【0041】
実施例1では、代表的な繊維を約10本測定した結果、表面に繊維露出があり、その露出割合すなわち露出部の長さは、繊維長に対して約0.5~10%、露出部の面内均一性は、「中央部の均一性<端部の均一性」であった。
【0042】
[繊維解繊部位の長さ割合]
得られた複合樹脂成形体をキシレン溶媒に浸漬してポリプロピレンを溶解させ、残ったパルプ繊維についてSEMにより繊維の形態を観察した。
【0043】
実施例1では、繊維長方向の端部には解繊部位がみられ、解繊部位の長さは全体の繊維長の約20~30%であった。
【0044】
[主剤樹脂に対する接触角]
塗料のための溶媒を用いて、得られた複合樹脂成形体の接触角を測定した。接触角の測定は、液滴を成形体の表面に接触させて着適したときに、成形体の表面とのなす角度を測定する液適法によって行った。
【0045】
実施例1では、合成樹脂塗料による塗装を想定し、その塗料に含まれる溶媒であるトルエンを用いて接触角を測定した。そのときに、複合樹脂成形体の主剤樹脂であるポリプロピレン単体の接触角も同様に測定し、比較したところ、主剤樹脂の接触角よりも複合樹脂成形体の接触角の方が小さかった。
【0046】
[主剤樹脂に対する複合樹脂成形体の水酸基量の大小]
得られた複合樹脂成形体について顕微FT-IRを測定することで、主剤樹脂の水酸基量、ならびに凹凸部の水酸基量を測定した。
【0047】
実施例1では、得られた複合樹脂成形体の水酸基量の方が主剤樹脂に対する水酸基量より多かった。
【0048】
[複合樹脂成形体の弾性率]
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、引張試験を実施した。ここで、弾性率の評価方法として、その数値が1.8GPa未満のものを不良品とし、2.0GPa以上のものを良品と判定した。
実施例1では、同試験片の弾性率は2.2GPaで、その評価は「良品」であった。
【0049】
[手触り感]
得られた平板形状の試験片を用いて、手触りの官能評価を実施した。問題ないものを○、ややざらつきがあるものを△、ざらつきが大きく、大きな違和感があるものを×とした。
【0050】
実施例1の複合樹脂成形体の手触り感の評価は「○」であった。
【0051】
[塗膜密着性]
得られた複合樹脂成形体に塗装を実施し、碁盤目剥離試験(JIS K 5600)により評価を実施した。その結果、塗膜が剥れがなかったものについては○、面積比率で3割以下までの剥れを△、面積比率で5割以上剥がれたものを×と評価した。
【0052】
実施例1では、溶媒としてのトルエンを含む合成樹脂塗料を用いて、刷毛塗りで塗装を行った。そうしたところ、得られた塗装複合樹脂成形体は、塗膜の剥れがなく、その評価は「○」であった。
【0053】
(実施例2)
実施例1と比べて二軸混練機のスクリューの構成を低せん断タイプに変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0054】
(実施例3)
実施例1と比べて二軸混練機のスクリューの構成を高せん断タイプに変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに塗装成形体を作製し評価した。
【0055】
(実施例4)
実施例1と同様の材料条件およびプロセス条件で、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに成形体を作製した。さらに、その後に溶媒としてのキシレンによるエッチングで表面の樹脂のみを少し除去したうえで、塗装を実施した。そして、得られた塗装成形体を評価した。
【0056】
(実施例5)
実施例1と比べて、二軸混練機のスクリューの構成を、ほぼせん断のかからない搬送用スクリューに変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0057】
(実施例6)
実施例1と比べて、パルプ繊維をあらかじめリファイナーにより解繊処理し、さらに二軸混練機のスクリューの構成を高せん断タイプとしたことを変更点とした。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0058】
(実施例7)
実施例1と比べて、成形時の金型温度を水冷により20℃以下として、成形体の表面に樹脂スキン層ができるようにした点を変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0059】
(実施例8)
実施例4と比べ、エッチング時間をかなり長くし、繊維の露出割合を増加させた点を変更した。それ以外は実施例4と同様として、評価を実施した。
【0060】
(実施例9)
実施例1と比べて、成形用の金型の側面のみ水冷してその金型温度を20℃度以下として、成形体の端部の表面に樹脂スキン層ができるようにした点を変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0061】
(比較例1)
実施例1と比べて、パルプ繊維にあらかじめシランカップリング剤により疎水処理を実施した点を変更した。それ以外の材料条件およびプロセス条件は実施例1と同様として、パルプ分散ポリプロピレンペレットならびに塗装成形体を作製し、評価した。
【0062】
実施例1~9および比較例1の成形条件および評価結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
表1から明らかなように、実施例1は優れた評価結果を得た。スクリューの構成を低せん断タイプに変更した実施例2では、溶融樹脂中で繊維があまり解繊されず、解繊部位の長さ割合が5~10%となった。反対にスクリュー構成を高せん断タイプに変更した実施例3では、溶融樹脂中で繊維がよく解繊され、解繊部位の長さ割合が40~50%となった。成形体表面をエッチング処理した実施例4では、表面の樹脂のみが溶出され、成形体表面における繊維の、繊維長に対する露出割合が、20~45%となった。実施例2、実施例3、および実施例4は、ともに弾性率、塗装性は実施例1と同様に問題なかった。さらに、解繊箇所の長さ割合が5~50%であり、成形体表面に繊維の露出があり、その露出割合が0.1~50%の範囲に入っていれば、弾性率を低下させずに塗装性を向上させることができることが確認された。
【0065】
せん断のかからない搬送用スクリューに変更し、溶融樹脂中で繊維があまり解繊しないようにした実施例5では、解繊部位の長さ割合が0~4%となった。これにより成形体中において繊維の比表面積が低く、弾性率が1.9GPaとやや低下する結果となったが、塗装性は問題なかった。
【0066】
あらかじめパルプ繊維をリファイナーにより解繊処理を実施し、さらに混練時のスクリューの構成を高せん断タイプに変更した実施例6では、解繊部位の長さ割合が80~100%となった。これにより細く短い繊維が増加して、塗料が成形体に染み込みにくく、碁盤目試験による密着性評価で約2割が剥れ、やや塗装性が低下する結果となった。
【0067】
成形時の金型温度を水冷により20℃以下とし、成形体の表面に樹脂スキン層ができるようにした実施例7では、成形体表面への繊維露出がない状態となった。これにより、塗料が成形体に濡れにくく、碁盤目試験による密着性評価で約2割が剥れ、やや塗装性が低下する結果となった。
【0068】
成形体表面を長時間エッチング処理した実施例8では、表面の樹脂のみが溶出され、成形体表面における繊維の繊維長に対する露出割合が55~70%となった。その上に塗装を実施したところ、塗膜の密着性は良好であったが、塗装成形体の表面に一部繊維が露出し、手触り感がやや悪い結果となった。
【0069】
成形時の金型の側面のみを水冷により20℃以下とし、成形体端部の表面に樹脂スキン層ができるようにした実施例9では、塗装成形体の側面に近い側である端部表面の繊維露出度合いが、中央の繊維露出度合いと比較して小さくなった。これにより、端部の塗装密着性が悪化した。塗装は端部から剥れやすくことから、端部が弱いと塗装膜全体で剥れやすくなり、碁盤目試験による密着性評価で約2割が剥れ、やや塗装性が低下する結果となった。
【0070】
パルプ繊維に、シランカップリング剤により、あらかじめ疎水処理を実施した比較例1では、成形体の塗装に用いられる塗料に含まれる溶媒に対する成形体の接触角が、同溶媒に対する主剤樹脂の接触角とほぼ同等であった。さらに、複合樹脂成形体の水酸基量と主剤樹脂の水酸基量もほぼ同等であった。これにより、碁盤目試験による密着性評価で約5割が剥れ、塗装性が悪い結果となった。
【0071】
以上の評価から、繊維の端部のみ解繊されている樹脂材料を用いて成形体を作製することにより、高弾性率化を実現でき、また成形体の塗装に用いられる塗料に含まれる溶媒に対する成形体の接触角が、同溶媒に対する主剤樹脂の接触角よりも小さいことで、プライマー層を用いなくても、塗装性が良く、しかも高弾性率を実現できる複合樹脂塗装成形体を提供できた。また複合樹脂成形体の水酸基量がベース樹脂の水酸基量よりも多いこと、成形体表面に繊維が露出していることによっても、同様に、プライマー層を用いなくても、塗装性が良く、しかも高弾性率を実現できる複合樹脂塗装成形体を提供できた。
本発明に係る複合樹脂組成物は、従来の汎用樹脂よりも塗膜の密着性が良好で、しかも機械的強度に優れた成形体を提供することができる。本発明における樹脂組成物は、主剤樹脂の特性を向上させることができるので、エンジニアリングプラスチックの代替物、または金属材料の代替物として利用され得る。従って、エンジニアリングプラスチック製または金属製の各種工業製品、または生活用品でかかっていた製造コストを大幅に削減し得る。このため家電筐体、建材、自動車部材への利用が可能である。