(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170961
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】液晶装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20221104BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
G02F1/1333 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077272
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊樹
【テーマコード(参考)】
2H189
2H190
【Fターム(参考)】
2H189DA72
2H189EA02Y
2H189FA51
2H190HA03
2H190HB03
2H190HC01
2H190HD08
2H190LA21
(57)【要約】
【課題】イオン性不純物の吸着能を向上させる液晶装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】液晶装置100は、酸化インジウムスズを含む共通電極21と、酸化シリコンを含み、画素領域Fに沿って共通電極21に積層された絶縁層109と、共通電極21および絶縁層109に積層された配向層22Qと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウムスズを含む電極と、
酸化シリコンを含み、画素領域に沿って前記電極に積層された絶縁層と、
前記電極および前記絶縁層に積層された無機配向層と、を備える液晶装置。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記画素領域を囲んで設けられる、請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記画素領域の外側にシール材を備え、
前記絶縁層は、前記画素領域と前記シール材との間において、前記シール材と離隔して壁状に設けられる、請求項1または請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記画素領域の外側にシール材を備え、
前記絶縁層および前記無機配向層は、前記シール材と重ねて設けられる、請求項1または請求項2に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記画素領域に沿って設けられた遮光層を備え、
前記絶縁層は、前記遮光層と重ねて設けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項6】
液晶層と、
前記無機配向層と前記液晶層を挟むように設けられた他の無機配向層と、
前記液晶層に対して、前記他の無機配向層を介して設けられた他の絶縁層と、を備え、
前記他の絶縁層は、前記絶縁層と同一材料を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記絶縁層および前記他の絶縁層は、各々CVD法によって設けられる、請求項6に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記無機配向層および前記他の無機配向層は、各々複数の柱状構造体を有する、請求項6または請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液晶装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光変調装置として液晶装置を用いたプロジェクターが知られていた。このようなプロジェクターでは、液晶装置に入射する光束密度が直視型の液晶装置に比べて大きくなる。そのため、液晶装置の液晶層にシール材などに由来するイオン性不純物が溶出し易くなる。イオン性不純物は、液晶層中に滞留して液晶の配向の乱れや駆動速度および電圧保持率の低下を誘発し、液晶装置の表示品質を低下させる要因となることがあった。
【0003】
例えば、特許文献1には、表示領域の外側にポーラス配向膜が形成された液晶表示装置が開示されている。これによれば、該ポーラス配向膜の細孔はシール材の残存不純物などを吸着するとしている。また、特許文献2には、シール材と表示領域の端部との間に壁が形成された液晶表示装置が開示されている。これによれば、該壁は、表示領域に対して、硬化前のシール材に汚染された液晶の移動を抑えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-281991号公報
【特許文献2】特開2017-111290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の液晶表示装置では、液晶層中のイオン性不純物を吸着する特性、所謂吸着能を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、特許文献1のポーラス配向膜は、有機配向膜から成り、製造工程において多孔質化されている。そのため、多孔質化に特段な工程を要し、所望の吸着能を確保することが困難となる可能性があった。また、特許文献2の壁は、スペーサーなどと同様な材料で形成される。そのため、壁のイオン性不純物に対する吸着能が十分であるとはいえなかった。したがって、従来よりも液晶層中のイオン性不純物の吸着能を向上させる液晶装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液晶装置は、酸化インジウムスズを含む電極と、酸化シリコンを含み、画素領域に沿って前記電極に積層された絶縁層と、前記電極および前記絶縁層に積層された無機配向層と、を備える。
【0007】
電子機器は、上記の液晶装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略平面図。
【
図7】第2実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略平面図。
【
図9】第3実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図10】第4実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図11】第5実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図12】液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図13】第6実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図14】第7実施形態に係る液晶装置の絶縁層などの構成を示す概略断面図。
【
図15】第8実施形態に係る電子機器としての投射型表示装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。また、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0010】
なお、基板上に設けられる層などの構造物の厚さとは、基板の法線方向であるZ軸に沿う方向における距離を指す。
【0011】
1.第1実施形態
本実施形態では、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。本実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置100の構成について、
図1から
図3を参照して説明する。
図2は、
図1の線分H-H’を含み、YZ平面に沿う断面を示す。
図2では、図示の便宜上、液晶層に含まれる液晶の大きさや数を実際とは異ならせると共に、後述する検査回路および配線の図示を省略している。
【0012】
図1に示すように、液晶装置100は、素子基板10、対向基板20、および図示しない液晶層を備える。素子基板10および対向基板20は平面的に略矩形である。素子基板10と対向基板20とは、対向基板20の外縁に沿って設けられるシール材60を介して重ねられて接合される。
【0013】
シール材60の内側には、見切り部24が設けられる。見切り部24の内縁は略矩形である。見切り部24は、遮光性を有する金属膜などで形成される。見切り部24は、本発明の遮光層の一例である。
【0014】
見切り部24の内側には、複数の画素Pを含む表示領域Eが設けられる。図示を省略するが、表示領域Eの複数の画素Pを囲んで複数のダミー画素が設けられる。複数のダミー画素は、平面的に見切り部24と重なり、液晶装置100の表示には寄与しない。本明細書では、複数の画素Pおよび複数のダミー画素が設けられる領域を、画素領域Fという。画素領域Fは表示領域Eを含む。シール材60は画素領域Fの外側に設けられる。なお、本発明において、複数のダミー画素は必須の構成ではない。
【0015】
画素領域Fは外縁が略長方形であり、1対の長辺がX軸に沿い、1対の短辺がY軸に沿う。複数の画素Pは、X軸およびY軸に沿う方向にマトリクス状に設けられる。平面視において、見切り部24は、画素領域Fに沿って設けられている。例えば、見切り部24の内縁は、表示領域Eの外縁と重なり、画素領域Fの外縁よりも内側にある。見切り部24の外縁は、画素領域Fの外縁よりも外側にある。
【0016】
シール材60は、硬化性を有する樹脂などから成る。シール材60には、樹脂や樹脂の硬化剤などの原材料に由来するイオン性不純物が含まれる場合がある。このようなイオン性不純物は液晶層へ溶出することがある。液晶装置100では、後述する絶縁層および該絶縁層に積層される無機配向層などによって、液晶層へのイオン性不純物の拡散が抑えられる。
【0017】
素子基板10は、データ線駆動回路101、複数の外部接続用端子104、および図示を省略する走査線駆動回路や検査回路を有する。素子基板10は平面的に対向基板20よりも大きい。素子基板10には、対向基板20と重ならない領域に複数の外部接続用端子104が設けられ、複数の外部接続用端子104とシール材60との間にデータ線駆動回路101が設けられる。
【0018】
2つの走査線駆動回路および検査回路は、平面的に見切り部24と重ねられて設けられる。2つの走査線駆動回路は、例えば、画素領域Fの外縁の1対の短辺に沿って各々個別に設けられる。2つの走査線駆動回路は、図示しない配線を介して電気的に接続される。
【0019】
検査回路は、後述するデータ線と電気的に接続される。データ線駆動回路101および2つの走査線駆動回路は、外部接続用端子104と電気的に接続される。対向基板20の四隅には上下導通部106が設けられる。
【0020】
図2に示すように、素子基板10と対向基板20とは、シール材60を介してZ軸に沿う方向に対向して離隔されて設けられる。液晶層50は、素子基板10と対向基板20との間に設けられ、素子基板10、対向基板20、およびシール材60に囲まれる。液晶層50は液晶50aを含む。液晶50aは正または負の誘電異方性を有する。本実施形態では負の誘電異方性を有する液晶50aを採用する。ここで、液晶50aとは、液晶50aを構成する個々の液晶分子、または個々の液晶分子の集合体を指す。
【0021】
素子基板10は、基板本体としての基板10s、トランジスターとしてのTFT30などを含む配線層、複数の画素電極15,19、および配向層18を有する。素子基板10では、液晶層50に向かって、基板10s、上記配線層、画素電極15,19、および配向層18が、この順番で積層される。画素電極15は上述した画素Pに対応して設けられ、画素電極19は上述したダミー画素に対応して設けられる。
【0022】
配向層18は、シール材60と接して設けられ、シール材60の下方の面と接する領域と、液晶層50に面する領域とを有する。配向層18は、複数の画素電極15,19と液晶層50との間に設けられる。配向層18は、第1蒸着層18aおよび第2蒸着層18bを含む。
【0023】
対向基板20は、基板本体としての基板20s、見切り部24、不導体層25、共通電極21、および配向層22を有する。対向基板20では、液晶層50に向かって、基板20s、見切り部24、不導体層25、共通電極21、および配向層22が、この順番で積層される。
【0024】
配向層22は、シール材60と接して設けられ、シール材60の上方の面と接する領域と、液晶層50に面する領域とを有する。配向層22は、共通電極21と液晶層50との間に設けられる。配向層22は、第3蒸着層22aおよび第4蒸着層22bを含む。
【0025】
ここで、本発明の無機配向層とは、配向層18,22のうちのいずれか一方であり、本発明の他の無機配向層とは、配向層18,22のうちのいずれかの他方である。本実施形態では、無機配向層が配向層22であり、他の無機配向層が配向層18である構成を例示するが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の電極とは、例えば、複数の画素電極19および共通電極21のうちのいずれか一方、あるいは、画素領域Fの外側において複数の画素電極19と同一層に設けられた、不純物を捕捉するための電極である。本実施形態では、本発明の電極が共通電極21である構成を例示するが、これに限定されるものではない。
【0027】
配向層18,22は液晶装置100の光学設計に基づいて設けられる。配向層18,22は、液晶層50の液晶50aを配向させる。液晶50aの配向状態は、後述する画像信号に応じて印加される電圧によって変化する。
【0028】
配向層18,22は、負の誘電異方性を有する液晶50aを略垂直配向させる。配向層18,22には、例えば、酸化シリコンなどの無機材料が採用される。配向層18は、第1蒸着層18aおよび第2蒸着層18bの2層から成ることに限定されない。配向層22は、第3蒸着層22aおよび第4蒸着層22bの2層から成ることに限定されない。配向層18,22は、それぞれ3層以上の層を有していてもよい。
【0029】
配向層18,22は、プレチルトを与えて液晶50aを垂直配向させる。プレチルトの傾斜方向は、X軸およびY軸と交差する方向に沿う。液晶層50が駆動されると、配向層18,22に対してプレチルトが与えられて垂直配向された液晶50aは、配向状態が上記傾斜方向において変化する。液晶層50のオンとオフとの駆動を繰り返すと、液晶50aはプレチルトの傾斜方向に倒れたり、初期の配向状態に戻ったりする挙動を繰り返す。ここで、配向層18,22の表面が沿うXY平面に対して、負の誘電異方性を有する液晶50aが、90°未満のプレチルト角を与えられて倒立する配向状態を略垂直配向という。配向層18,22などの詳細については後述する。
【0030】
基板10s,20sには、例えば、ガラス基板や石英基板などの透光性および絶縁性を有する平板が採用される。本明細書において透光性とは、可視光の透過率が50%以上であることをいう。
【0031】
画素電極15,19、および共通電極21は、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)を含む。画素電極15,19、および共通電極21は、ITOを含む透明導電膜を成膜した後、パターニングすることによって設けられる。
【0032】
液晶装置100は、透過型であって、対向基板20側である+Z方向から光Lが入射し、液晶層50を介して素子基板10から出射する。光Lは液晶層50を透過する際に、液晶50aの配向状態に応じて変調される。液晶装置100に対する光Lの入射方向は、上記に限定されず、素子基板10から光Lが入射する構成であってもよい。また、液晶装置100は、透過型であることに限定されず、反射型であってもよい。液晶装置100には、ノーマリーホワイトモードやノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。液晶装置100は、光Lの入射側と出射側とに偏光素子を備えてもよい。
【0033】
図3に示すように、液晶装置100は、互いに絶縁された信号配線として、データ線6、走査線3および容量線8を各々複数有する。走査線3はX軸に沿って延在し、データ線6および容量線8はY軸に沿って延在する。なお、容量線8は、Y軸に沿う構成に限定されず、X軸に沿う構成であってもよい。
【0034】
画素電極15、TFT30および容量素子16は、走査線3とデータ線6および容量線8とによって区分された領域に画素Pごと設けられ、画素Pの画素回路を構成する。走査線3、データ線6および容量線8などの信号配線類は、上述の配線層に設けられる。
【0035】
走査線3は、スイッチング素子であるTFT30のゲートに対応して設けられる。データ線6は、TFT30のデータ線側ソースドレイン領域に対応する。走査線3は、同一行に設けられたTFT30のオン、オフを一斉に制御する。画素電極15は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域に対応して設けられる。
【0036】
データ線6は、上述のデータ線駆動回路101に電気的に接続され、データ線駆動回路101から供給される画像信号を画素Pに供給する。画像信号は、各データ線6へ線順次に供給されてもよく、隣り合う複数のデータ線6へグループごとに供給されてもよい。
【0037】
走査線3は、上述の走査線駆動回路102に電気的に接続され、走査線駆動回路102から供給される走査信号を画素Pに供給する。走査信号は、走査線3へ所定のタイミングにてパルス的に線順次で供給される。
【0038】
走査信号の入力によりTFT30が一定期間オン状態とされ、画像信号が所定のタイミングで画素電極15に印加される。画像信号は、画素電極15を介して液晶層50に所定レベルで書き込まれ、画素電極15と液晶層50を挟んだ共通電極21との間で一定期間保持される。このとき、画像信号に応じて印加される電圧によって、液晶50aの配向状態が変化する。保持された画像信号がリークするのを防ぐため、画素電極15と共通電極21との間に設けられた液晶容量に対して、容量素子16が電気的に並列接続される。容量素子16は、TFT30と容量線8との間の層に設けられる。
【0039】
図示を省略するが、上述した画素電極19は、画素電極15と同様に、駆動用トランジスターであるTFT30、容量素子16、走査線3、データ線6、および容量線8と共に画素回路を構成する。なお、画素電極19は該画素回路を構成せずともよい。
【0040】
液晶装置100における配向層18,22などの構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、
図1に示した液晶装置100の画素領域Fにおける断面である。該断面は、平面的に第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bの斜方蒸着の方向を含み、XY平面と直交する面に沿う。斜方蒸着の方向とは、例えば、平面的に画素領域Fの右上隅と左下隅とを含む方向である。なお、
図4では、画素電極15,19などの一部の構成の図示を省略している。
【0041】
図4に示すように、素子基板10の配向層18は、第1蒸着層18a、および第1蒸着層18aと液晶層50との間に設けられる第2蒸着層18bを含む。第1蒸着層18aは、図示しない画素電極15,19を覆って、これらの上方に設けられる。
【0042】
対向基板20の配向層22は、第3蒸着層22a、および第3蒸着層22aと液晶層50との間に設けられる第4蒸着層22bを含む。第3蒸着層22aは、共通電極21を覆って、共通電極21の-Z方向に設けられる。
【0043】
第1蒸着層18aは、素子基板10の主面に対して、+Z方向からの真空蒸着にて設けられる。第1蒸着層18aは、長軸方向がZ軸に沿う複数の柱状構造体を含む。第3蒸着層22aは、対向基板20の主面に対して、-Z方向からの真空蒸着にて設けられる。第3蒸着層22aは、長軸方向がZ軸に沿う複数の柱状構造体を含む。第1蒸着層18aおよび第3蒸着層22aの形成材料には、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが採用される。
【0044】
第2蒸着層18bは、第1蒸着層18aの上方を覆って設けられる。第2蒸着層18bの厚さ、つまりZ軸に沿う方向の距離は、第1蒸着層18aの厚さより薄い。第2蒸着層18bは、素子基板10の主面に対して、長軸方向が角度θαで交差する複数の柱状構造体を含む。第2蒸着層18bの柱状構造体の長軸方向は、液晶層50の厚さ方向であるZ軸に沿う方向と角度(90-θα)°で交差する。
【0045】
第2蒸着層18bの柱状構造体は、酸化シリコンを含む。該柱状構造体は真空蒸着法にて設けられる。具体的には、角度θαの方向と鋭角を成す方向から、酸化シリコンを斜方蒸着することにより第2蒸着層18bの柱状構造体が設けられる。
【0046】
第4蒸着層22bは、第3蒸着層22aの-Z方向を覆って設けられる。第4蒸着層22bの厚さ、つまりZ軸に沿う方向の距離は、第3蒸着層22aの厚さより薄い。第4蒸着層22bは、対向基板20の主面に対して、長軸方向が角度θβで交差する複数の柱状構造体を含む。第4蒸着層22bの柱状構造体の長軸方向は、液晶層50の厚さ方向であるZ軸に沿う方向と角度(90-θβ)°で交差する。
【0047】
第4蒸着層22bの柱状構造体は、酸化シリコンを含む。該柱状構造体は真空蒸着法にて設けられる。具体的には、角度θβの方向と鋭角を成す方向から、酸化シリコンを斜方蒸着することにより第4蒸着層22bの柱状構造体が設けられる。なお、角度θβは角度θαと等しい角度であってもよい。
【0048】
配向層18,22の構成によれば、第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bの複数の柱状構造体によって、液晶50aを配向させることが可能となる。また、柱状構造体自身および隣り合う柱状構造体の間隙にイオン性不純物が吸着されるため、吸着能が向上する。さらに、配向層18,22を乾式プロセスにて設けることが可能となる。
【0049】
液晶50aのプレチルトの傾斜方向は、例えば、Y軸と成す方位角が45°となるように設定される。プレチルトの傾斜方向は、第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bを斜方蒸着によって設ける際の蒸着方向によって規定される。
【0050】
液晶装置100では、上述した光Lの入射側および出射側に、図示しない偏光素子を各々配置して用いる。2つの偏光素子は、一方の偏光素子の透過軸または吸収軸がX軸またはY軸と平行となり、2つの偏光素子の透過軸または吸収軸が互いに直交するように、液晶装置100に配置される。
【0051】
液晶装置100では、2つの偏光素子の透過軸または吸収軸に対して、液晶50aのプレチルトの方位角が45°で交差するように、第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bが設けられる。これにより、画素電極15と共通電極21との間に駆動電圧を印加して液晶層50を駆動すると、液晶50aがプレチルトの傾斜方向に倒れて、高い透過率が得られる。
【0052】
素子基板10および対向基板20の表面には、シランカップリング剤による表面処理を施してもよい。具体的には、素子基板10の第2蒸着層18bおよび対向基板20の第4蒸着層22bの表面に、シランカップリング剤を用いてオルガノポリシロキサン膜を設けてもよい。
【0053】
シランカップリング剤は、第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bの酸化シリコンにシラノール基が結合して脱水縮合する。これにより、表面側である液晶層50との界面に疎水基が配向したオルガノポリシロキサン膜が形成される。この表面処理によって、第2蒸着層18bおよび第4蒸着層22bの表面は水に対する接触角が大きくなる。そのため、液晶50aと配向層18,22との間の光化学反応が抑制されて、液晶装置100の耐光性が向上する。シランカップリング剤による表面処理の方法としては、公知の方法が採用可能である。
【0054】
素子基板10および対向基板20に設けられる絶縁層などの構成について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5では対向基板20を破線で示す。
図6は、
図5の線分J-J’を含み、XZ平面に沿う断面である。
図5および
図6では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。なお、
図5の説明では、特に断りがない限り、平面視した状態を述べることとする。
【0055】
図5に示すように、液晶装置100は絶縁層108,109を備える。絶縁層109は対向基板20に設けられ、絶縁層108は素子基板10に設けられる。絶縁層108,109は互いに重なる形状を有する。
【0056】
絶縁層108,109は、画素領域Fの外側において画素領域Fに沿って設けられる。詳しくは、絶縁層108,109は、枠状であって、画素領域Fを囲んで設けられる。絶縁層108,109の内縁は画素領域Fの外側にある。絶縁層108,109の外縁はシール材60の外縁と重ねられて設けられる。なお、絶縁層108,109は、枠状であること、互いに重なる形状であること、に限定されない。
【0057】
図6に示すように、液晶装置100は、液晶層50、無機配向層としての配向層22、他の無機配向層としての配向層18、および絶縁層108,109を備える。配向層18は、配向層22と液晶層50を挟むように設けられる。絶縁層108は、液晶層50に対して、配向層18を介して設けられる。絶縁層108は、素子基板10の図示しない層間絶縁層の上方に設けられる。絶縁層109は、共通電極21の-Z方向に積層される。絶縁層109が本発明の絶縁層の一例であり、絶縁層108が本発明の他の絶縁層の一例である。
【0058】
配向層18は、配向層18P,18Qを含む。配向層18Pは、画素電極19および図示しない画素電極15の上方を含む領域に設けられる。配向層18Qは、絶縁層108の上方に設けられる。配向層18P,18Qは、それぞれ上述した第1蒸着層18aおよび第2蒸着層18bを含む。配向層18P,18Qは同一の工程で設けられる。絶縁層108に積層される配向層18が配向層18Qとなり、絶縁層108以外の下地に積層される配向層18が配向層18Pとなる。
【0059】
配向層22は、配向層22P,22Qを含む。配向層22P,22Qは、それぞれ上述した第3蒸着層22aおよび第4蒸着層22bを含む。配向層22のうち、配向層22Pが共通電極21に接して積層され、配向層22Qが絶縁層109に積層される。配向層22Qは、絶縁層109の-Z方向に設けられる。配向層22Pは、絶縁層109が積層されない共通電極21の-Z方向に設けられる。配向層22P,22Qは同一の工程で設けられる。絶縁層109に積層される配向層22が配向層22Qとなり、絶縁層109が設けられない領域の共通電極21に積層される配向層22が配向層22Pとなる。
【0060】
絶縁層108,109は、酸化シリコンを含む同一材料から成る。絶縁層108,109は、各々CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって設けられる。CVD法を採用することにより、絶縁層108,109の構造が疎となり易い。すなわち、絶縁層108,109の層の密度が低くなる。CVD法としては、PE-CVD(Plasma Enhanced-CVD)、HDP-CVD(High Density Plasma-CVD)などが挙げられる。
【0061】
なお、絶縁層108,109の形成には、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの、CVD法以外の気相薄膜形成法も採用可能である。絶縁層108,109の密度を小さくする観点から、CVD法が好ましい。絶縁層108,109の厚さは、上記と同様な観点から、0.01μm以上1.00μm以下とすることが好ましい。なお、CVD法などの気相薄膜形成法で形成された層の構造または特性は、測定や分析に基づく解析によって特定することは困難である。
【0062】
配向層18Q,22Qと、配向層18P,22Pとは、上述した配向層18,22と同様な構成を有する。ところが、配向層18Q,22Qは、各々下地である絶縁層108,109に積層されるために、該下地の影響により表面の凹凸が顕著なものとなる。そのため、配向層18Q,22Qは、画素領域Fに設けられる配向層18P,22Pと比べて表面積が増大する。これによって、配向層18Q,22Qではイオン性不純物に対する吸着能が向上する。
【0063】
絶縁層109および配向層22Qと、絶縁層108および配向層18Qとは、平面的にシール材60と重ねられて設けられる。換言すれば、シール材60は、絶縁層109および配向層22の一部が設けられた領域において対向基板20と接し、絶縁層108および配向層18の一部が設けられた領域において素子基板10と接する。これにより、シール材60に由来するイオン性不純物を効率よく吸着させることができる。なお、絶縁層108,109は、平面的にシール材60と重ねられて設けられることに限定されない。
【0064】
素子基板10は遮光層110を備える。遮光層110は、見切り部24と同様に遮光性を有する金属膜などで形成される。遮光層110は、対向基板20の見切り部24と平面的に略重ねられて設けられる。遮光層110は、見切り部24と同様に、本発明の遮光層の一例である。なお、遮光層110は本発明の必須の構成ではない。
【0065】
絶縁層108,109の+X方向の端部は、見切り部24および遮光層110の-X方向の端部よりも+X方向に位置する。すなわち、絶縁層108,109は、見切り部24および遮光層110と重ねて設けられる。これにより、液晶装置100の耐光性を向上させることができる。また、絶縁層108,109に積層される配向層18Q,22Qが遮蔽される。そのため、液晶装置100の表示品質に対して、絶縁層108,109に起因する配向層18Q,22Q表面の凹凸の影響を排除することができる。
【0066】
なお、絶縁層108と配向層18Qとの積層構造および絶縁層109と配向層22Qとの積層構造は、所望のイオン性不純物の吸着能が確保される場合には、これらのうちの一方の積層構造が省略されてもよい。
【0067】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0068】
液晶層50中のイオン性不純物の吸着能を向上させることができる。詳しくは、酸化シリコンを含む絶縁層109に配向層22Qが積層され、酸化シリコンを含む絶縁層108に配向層18Qが積層される。これにより、絶縁層108,109上の配向層18Q,22Qの表面に凹凸が生じ易くなる。配向層18,22は、元来、イオン性不純物に対する吸着能を有する。そのため、上記凹凸によって絶縁層108,109上の配向層18Q,22Qの表面積が増大する。すなわち、配向層18Q,22Qと液晶50aとの接触面積が増大して、イオン性不純物に対する吸着能が向上する。したがって、液晶層50中のイオン性不純物の吸着能を向上させる液晶装置を提供することができる。
【0069】
対向基板20の絶縁層109に加えて、素子基板10に絶縁層108が設けられる。また、絶縁層108,109が画素領域Fを囲んで設けられる。これらによって、液晶層50中のイオン性不純物に対する吸着能がさらに向上する。
【0070】
2.第2実施形態
本実施形態に係る液晶装置200では、第1実施形態の液晶装置100に対して、絶縁層の形態を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0071】
本実施形態の液晶装置200の構成について、
図7および
図8を参照して説明する。
図8は、
図7の線分K-K’を含み、XZ平面に沿う断面である。
図7および
図8では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0072】
図7に示すように、液晶装置200では、対向基板20に絶縁層209が備わる。絶縁層209は、平面的に画素領域Fを枠状に囲んで設けられる。詳しくは、絶縁層209は、画素領域Fとシール材60との間において、シール材60と離隔して設けられる。なお、
図7では素子基板10の絶縁層の図示を省略している。
【0073】
図8に示すように、液晶装置200は絶縁層208,209を備える。絶縁層208,209は、第1実施形態の絶縁層108,109に対して、後述する形態が異なる他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層209が本発明の絶縁層の一例であり、絶縁層208が本発明の他の絶縁層の一例である。
【0074】
絶縁層209は、対向基板20から液晶層50の厚さ方向の中ほどまで突出して壁状に設けられる。絶縁層209が壁状であるため、配向層22の第4蒸着層22bの斜方蒸着の方向に応じて、絶縁層209の側面にも配向層22Qが設けられる。
図8では、絶縁層209の-X方向の側面に配向層22Qが設けられた形態を示したが、これに限定されるものではない。絶縁層209は、酸化シリコンを比較的に厚く堆積させて得られる。
【0075】
絶縁層209は、平面的に、見切り部24およびシール材60と重ならない。絶縁層209の-X方向には、シール材60と重なるように配向層22Pが設けられる。
【0076】
絶縁層208は、平面的に、絶縁層209、見切り部24、および遮光層110と重なり、シール材60と重ならない。絶縁層208の-X方向には、配向層18Pが設けられる。絶縁層208は、第1実施形態の絶縁層108,109と同様に、厚さが比較的に薄く設けられる。
【0077】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。絶縁層209が壁状であることから、絶縁層209の側面にも配向層22Qが設けられて配向層22Qの表面積が増大する。また、液晶層50において、絶縁層209がシール材60側と図示しない画素領域F側との間にあるため、シール材60から画素領域Fへのイオン性不純物の拡散が抑えられる。これらにより、液晶装置200の表示品質をいっそう向上させることができる。
【0078】
3.第3実施形態
本実施形態に係る液晶装置300では、第2実施形態の液晶装置200に対して、素子基板10の絶縁層を省略し、対向基板20の壁状の絶縁層の位置を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0079】
本実施形態の液晶装置300の構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、第1実施形態の
図6に相当する部位の断面である。
図9では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0080】
図9に示すように、液晶装置300は対向基板20に絶縁層309を備える。素子基板10には絶縁層が設けられない。絶縁層309は、平面的に枠状であり、第2実施形態の絶縁層209に対して、配置が異なる他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層309は本発明の絶縁層の一例である。
【0081】
絶縁層309は、対向基板20から素子基板10の近傍まで突出して壁状に設けられる。絶縁層309が壁状であるため、配向層22の第4蒸着層22bの斜方蒸着の方向に応じて、絶縁層309の側面にも配向層22Qが設けられる。絶縁層309は、第2実施形態の絶縁層209と比べて、より-Z方向へ突出している。
【0082】
絶縁層309は、平面的に、見切り部24およびシール材60と重ならない。絶縁層309の-X方向には、シール材60と重なるように配向層22Pが設けられる。
【0083】
素子基板10には絶縁層が設けられないため、配向層18Qは設けられず、図示しない画素領域Fからシール材60と重なる領域まで、配向層18Pが連続的に設けられる。
【0084】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。絶縁層309が壁状であり、第2実施形態の絶縁層209よりも素子基板10に近づいているため、配向層22Q表面積が増大すると共に、シール材60から画素領域Fへのイオン性不純物の拡散がさらに抑えられる。
【0085】
4.第4実施形態
本実施形態に係る液晶装置400では、第3実施形態の液晶装置300に対して、絶縁層309の位置を変更している。以下の説明では、第3実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0086】
本実施形態の液晶装置400の構成について、
図10を参照して説明する。
図10は、第1実施形態の
図6に相当する部位の断面である。
図10では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0087】
図10に示すように、液晶装置400は対向基板20に絶縁層409を備える。素子基板10には絶縁層が設けられない。絶縁層409は、平面的に枠状であり、第3実施形態の絶縁層309に対して、配置が異なる他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層409は本発明の絶縁層の一例である。
【0088】
絶縁層409は、見切り部24および遮光層110と平面的に重なる位置に設けられる。絶縁層409は、この点が第3実施形態の絶縁層309と異なる他は、絶縁層309と同様な形態である。
【0089】
絶縁層409は、平面的にシール材60と重ならない。絶縁層409の-X方向には、シール材60と重なるように配向層22Pが設けられる。
【0090】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0091】
5.第5実施形態
本実施形態に係る液晶装置500では、第3実施形態の液晶装置300に対して、対向基板20の壁状の絶縁層の形態を変えている。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0092】
本実施形態の液晶装置500の構成について、
図11および
図12を参照して説明する。
図11および
図12は、第1実施形態の
図6に相当する部位の断面である。
図11および
図12では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0093】
図11に示すように、液晶装置500は対向基板20に絶縁層509を備える。素子基板10には絶縁層が設けられない。絶縁層509は、平面的に枠状であり、第3実施形態の絶縁層309に対して、X軸に沿う方向の幅を大きくしている。この点が、絶縁層309と異なっている。絶縁層509は、絶縁層309に対して、上記の点が異なる他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層509は本発明の絶縁層の一例である。
液晶装置500では、
図12に示すように、絶縁層509の-Z方向への突出を抑えてもよい。これにより、壁状の絶縁層509が作り易くなる。
【0094】
本実施形態によれば、第3実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。絶縁層509は、第3実施形態の絶縁層309と比べて上記幅が大きくなるため、積層される配向層22Qの表面積が増大する。そのため、イオン性不純物の吸着能がさらに向上する。
【0095】
6.第6実施形態
本実施形態に係る液晶装置600では、第4実施形態の液晶装置400に対して、対向基板20の絶縁層の形態を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0096】
本実施形態の液晶装置600の構成について、
図13を参照して説明する。
図13は、第1実施形態の
図6に相当する部位の断面である。
図13では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0097】
図13に示すように、液晶装置600は対向基板20に絶縁層609を備える。素子基板10には絶縁層が設けられない。絶縁層609は、平面的に枠状であり、第4実施形態の絶縁層409に対して、形態が異なる他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層609は本発明の絶縁層の一例である。
【0098】
絶縁層609は、対向基板20から-Z方向に突出すると共に、シール材60、見切り部24、および遮光層110と平面的に重なる。すなわち、絶縁層609は、X軸に沿う方向の幅が大きく、対向基板20の-X方向の端部から見切り部24と平面的に重なる位置まで連続的に設けられる。絶縁層609に積層される配向層22Qは、シール材60の+Z方向の端部と接する。
【0099】
本実施形態によれば、第4実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。配向層22Qがシール材と接するため、シール材60に由来するイオン性不純物の吸着能がさらに向上する。
【0100】
7.第7実施形態
本実施形態に係る液晶装置700では、第1実施形態の液晶装置100に対して、絶縁層の形態を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0101】
本実施形態の液晶装置700の構成について、
図14を参照して説明する。
図14は、第1実施形態の
図6に相当する部位の断面である。
図14では、図示の便宜上、一部の構成の図示を省略している。
【0102】
図14に示すように、液晶装置700は絶縁層708,709を備える。絶縁層708,709は、第1実施形態の絶縁層108,109に対して、X軸に沿う方向の幅が大きい他は同様な材料から成り、同様な製法によって設けられる。絶縁層709が本発明の絶縁層の一例であり、絶縁層708が本発明の他の絶縁層の一例である。
【0103】
絶縁層709は、対向基板20に設けられる。配向層22Qは、絶縁層709の-Z方向に積層される。図示を省略するが、絶縁層709および配向層22Qは画素領域Fを枠状に囲む。
【0104】
絶縁層709は、シール材60、見切り部24、および遮光層110と平面的に重なる。詳しくは、平面視にて、絶縁層709は、対向基板20の-X方向の端部から、見切り部24の+X方向の端部まで連続的に設けられる。配向層22Qは、シール材60の+Z方向の端部と接する。
【0105】
絶縁層708は、素子基板10に設けられる。配向層18Qは、絶縁層708の+Z方向に積層される。図示を省略するが、絶縁層708および配向層18Qは画素領域Fを枠状に囲む。
【0106】
絶縁層708は、シール材60、見切り部24、および遮光層110と平面的に重なる。詳しくは、平面視にて、絶縁層708は、シール材60の-X方向の端部から、見切り部24と重なる位置まで連続的に設けられる。なお、絶縁層708の+X方向は、表示性に影響が生じないようにダミー画素に対応する画素電極19とは重ならないように設けられている。シール材60の-Z方向の端部は配向層18Qと接する。
【0107】
絶縁層708,709は、第1実施形態の絶縁層108,109と同様に、厚さが比較的に薄く設けられる。
【0108】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。絶縁層708,709が設けられる領域が第1実施形態と比べて拡大する。そのため、イオン性不純物の吸着能がさらに向上する。
【0109】
8.第8実施形態
本実施形態に係る電子機器として投射型表示装置1000を例示する。
【0110】
図15に示すように、投射型表示装置1000は、ランプユニット1001、色分離光学系のダイクロイックミラー1011,1012、3個の液晶装置1B,1G,1R、反射ミラー1111,1112,1113、リレーレンズ1121,1122,1123、色合成光学系のダイクロイックプリズム1130、投射光学系の投射レンズ1140を備える。
【0111】
ランプユニット1001は、例えば、放電型の光源である。光源の方式はこれに限定されず、発光ダイオード、レーザーなどの固体光源を採用してもよい。
【0112】
ランプユニット1001から出射された光は、ダイクロイックミラー1011,1012によって、各々異なる波長域の3色の色光に分離される。3色の色光とは、略赤色の赤色光R、略緑色の緑色光G、略青色の青色光Bである。
【0113】
ダイクロイックミラー1011は、赤色光Rを透過し、赤色光Rよりも波長が短い、緑色光Gおよび青色光Bを反射する。ダイクロイックミラー1011を透過した赤色光Rは、反射ミラー1111で反射し、液晶装置1Rに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射した緑色光Gは、ダイクロイックミラー1012で反射した後、液晶装置1Gに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射した青色光Bは、ダイクロイックミラー1012を透過して、リレーレンズ系1120へ入射する。
【0114】
リレーレンズ系1120は、リレーレンズ1121,1122,1123、反射ミラー1112,1113を有する。青色光Bは、緑色光Gや赤色光Rと比べて光路が長いため、光束が大きくなりやすい。そのため、リレーレンズ1122を用いて光束の拡大を抑える。リレーレンズ系1120に入射した青色光Bは、リレーレンズ1121によって収束しつつ反射ミラー1112で反射して、リレーレンズ1122の近傍で収束する。そして、青色光Bは、反射ミラー1113およびリレーレンズ1123を経て、液晶装置1Bに入射する。
【0115】
投射型表示装置1000における、光変調装置である液晶装置1R,1G,1Bには、上記実施形態の電気光学装置としての液晶装置が適用される。上記実施形態の液晶装置は、液晶装置1R,1G,1Bに対して1つ以上に適用されればよく、全てに適用されることがより好ましい。
【0116】
液晶装置1R,1G,1Bのそれぞれは、投射型表示装置1000の上位回路と電気的に接続される。したがって、赤色光R、緑色光G、青色光Bの階調レベルを指定する各画像信号が外部回路から上位回路に供給されて処理されると、液晶装置1R,1G,1Bが駆動されて各色光が変調される。
【0117】
液晶装置1R,1G,1Bで変調された赤色光R、緑色光G、青色光Bは、ダイクロイックプリズム1130に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム1130は、入射した赤色光R、緑色光G、青色光Bを合成する。ダイクロイックプリズム1130では、赤色光Rおよび青色光Bが90度に反射し、緑色光Gが透過する。これにより、赤色光R、緑色光G、青色光Bは、カラー画像を表示する表示光として合成されて投射レンズ1140に入射する。
【0118】
投射レンズ1140は、投射型表示装置1000の外側を向いて配置される。表示光は、投射レンズ1140を介して拡大されて出射され、投射対象であるスクリーン1200に投射画像が投射される。
【0119】
本実施形態では、電子機器として投射型表示装置1000を例示したが、これに限定されない。本発明の電気光学装置は、例えば、投射型のHUD(Head-Up Display)、直視型のHMD(Head Mounted Display)、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、液晶テレビなどの電子機器に適用されてもよい。
【0120】
本実施形態によれば、液晶層50中のイオン性不純物の拡散が抑制されて液晶装置1R,1G,1Bの表示品質が向上する。そのため、投射画像の品質に優れる投射型表示装置1000を提供することができる。
【符号の説明】
【0121】
1B,1G,1R,100,200,300,400,500,600,700…液晶装置、18,18P,18Q…他の無機配向層としての配向層、21…電極としての共通電極、22,22P,22Q…無機配向層としての配向層、24…遮光層としての見切り部、50…液晶層、60…シール材、109,209,309,409,509,609,709…絶縁層、108,208,708…他の絶縁層としての絶縁層、110…遮光層、1000…電子機器としての投射型表示装置、F…画素領域。