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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170966
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】回路装置及び発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
H03B5/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077277
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】別府 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮洋
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA37
5J079CB01
5J079DA13
5J079FA02
5J079FA05
5J079FA13
5J079FA14
5J079FA21
5J079FB06
5J079FB24
5J079FB31
5J079FB35
5J079FB39
5J079FB46
5J079FB47
5J079FB48
5J079GA02
5J079GA04
5J079JA06
(57)【要約】
【課題】外部装置が外部接続端子から出力されるクロック信号のデューティー比を高精度に算出可能な回路装置を提供すること。
【解決手段】発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号に基づく第1のクロック信号を出力する第1のバッファー回路と、前記第1のクロック信号に基づく第2のクロック信号を出力する第2のバッファー回路と、前記第1のバッファー回路が前記第1のクロック信号を出力する第1のノードと電気的に接続可能な第1の端子と、前記第2のバッファー回路が前記第2のクロック信号を出力する第2のノードと電気的に接続される第2の端子と、を備え、前記第1のクロック信号の立ち上がり時間は、前記第2のクロック信号の立ち上がり時間よりも短い、回路装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号に基づく第1のクロック信号を出力する第1のバッファー回路と、
前記第1のクロック信号に基づく第2のクロック信号を出力する第2のバッファー回路と、
前記第1のバッファー回路が前記第1のクロック信号を出力する第1のノードと電気的に接続可能な第1の端子と、
前記第2のバッファー回路が前記第2のクロック信号を出力する第2のノードと電気的に接続される第2の端子と、を備え、
前記第1のクロック信号の立ち上がり時間は、前記第2のクロック信号の立ち上がり時間よりも短い、回路装置。
【請求項2】
前記第1のノードと前記第1の端子とを電気的に接続又切断するスイッチ回路を備える、請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記第1のノードと前記スイッチ回路との間に電気的に接続される抵抗素子を備える、請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記第1のノードと前記スイッチ回路との間に電気的に接続されるRCフィルターを備える、請求項2に記載の回路装置。
【請求項5】
前記第1のノードと前記第1の端子との間に電気的に接続されるRCフィルターを備える、請求項1に記載の回路装置。
【請求項6】
前記発振回路の出力ノードと前記第1のバッファー回路との間に電気的に接続される第3のバッファー回路を備え、
前記第1のバッファー回路は、前記第3のバッファー回路よりも駆動能力が高い、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項7】
前記第1のノードは、前記第2のバッファー回路の入力ノードである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回路装置と、
振動子と、を含む、発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反転回路によって水晶振動子を振動させ、反転回路の出力信号が複数の反転バッファーに入力されて最終段の反転バッファーからクロック信号を出力するとともに、ローパスフィルターを用いて当該クロック信号のデューティー比を平均化し、そのアナログ値によってクロック信号のデューティー比が50%に保持されるようにフィードバック制御する発振回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-073246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、特許文献1に記載の発振回路のように、最終段のバッファーから出力されるクロック信号は外部接続端子から外部に出力されるため、外部接続端子に接続される負荷が大きい場合にはクロック信号の立ち上がり時間や立ち下がり時間が長い場合がある。また、外部接続端子から出力されるクロック信号は、EMIノイズを低減させるために、意図的に立ち上がり時間や立ち下がり時間が長い波形の場合もある。このように、立ち上がり時間や立ち下がり時間が長いクロック信号は、矩形波形に対して歪んだ波形となるため、ローパスフィルターで平滑化された直流電圧とデューティー比との相関が複雑になる。そのため、外部接続端子から出力されるクロック信号を平滑化した直流電圧に基づいて、当該クロック信号のデューティー比を高精度に算出することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る回路装置の一態様は、
発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号に基づく第1のクロック信号を出力する第1のバッファー回路と、
前記第1のクロック信号に基づく第2のクロック信号を出力する第2のバッファー回路と、
前記第1のバッファー回路が前記第1のクロック信号を出力する第1のノードと電気的に接続可能な第1の端子と、
前記第2のバッファー回路が前記第2のクロック信号を出力する第2のノードと電気的に接続される第2の端子と、を備え、
前記第1のクロック信号の立ち上がり時間は、前記第2のクロック信号の立ち上がり時間よりも短い。
【0006】
本発明に係る発振器の一態様は、
前記回路装置の一態様と、
振動子と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の発振器の斜視図。
図2】本実施形態の発振器の断面図。
図3】第1実施形態の発振器の機能ブロック図。
図4】発振回路の構成例を示す図。
図5】クロック信号CKO,CK4の各電圧波形の一例を示す図。
図6】クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとの関係の一例を示す図。
図7】クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとの関係の一例を示す図。
図8】第1実施形態においてXI端子からT3端子又はT4端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図。
図9】第1実施形態の発振器から出力されるクロック信号CKOのデューティー比の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図10】デューティー比の検査を行うときの各端子及び各スイッチの制御信号の電圧波形の一例を示す図。
図11】第2実施形態の発振器の機能ブロック図。
図12】第2実施形態においてXI端子からT3端子又はT5端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図。
図13】第2実施形態の発振器から出力されるクロック信号CKOのデューティー比の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図14】第3実施形態の発振器の機能ブロック図。
図15】第3実施形態においてXI端子からT3端子又はT4端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.第1実施形態
1-1.発振器の構成
図1及び図2は、本実施形態の発振器1の構造の一例を示す図である。図1は、発振器1の斜視図であり、図2は、図1のA-A断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、発振器1は、回路装置2、振動子3、パッケージ4、リッド5及び複数の外部端子6を含む。本実施形態では、振動子3は、基板材料として水晶を用いた水晶振動子であり、例えば、ATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子等である。振動子3は、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子であってもよい。また、振動子3の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。振動子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。また、本実施形態では、回路装置2は1チップの集積回路(IC:Integrated Circuit)で実現されている。ただし、回路装置2は、少なくとも一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0011】
パッケージ4は、回路装置2と振動子3とを同一空間内に収容する。具体的には、パッケージ4には、凹部が設けられており、リッド5で凹部を覆うことによって収容室7となる。パッケージ4の内部又は凹部の表面には、回路装置2の2つの端子、具体的には、後述する図3のXI端子及びXO端子と、振動子3の2つの励振電極3a,3bとをそれぞれ電気的に接続するための不図示の配線が設けられている。また、パッケージ4の内部又は凹部の表面には、回路装置2の各端子とパッケージ4の底面に設けられた各外部端子6とを電気的に接続するための不図示の配線が設けられている。なお、パッケージ4は、回路装置2と振動子3とを同一空間内に収容する構成には限られない。例えば、回路装置2がパッケージの基板の一方の面に搭載され、振動子3が他方の面に搭載される、いわゆるH型のパッケージであってもよい。
【0012】
振動子3は、その表面及び裏面にそれぞれ金属の励振電極3a,3bを有しており、励振電極3a,3bを含む振動子3の形状や質量に応じた所望の周波数で発振する。
【0013】
図3は、第1実施形態の発振器1の機能ブロック図である。図3に示すように、本実施形態の発振器1は、回路装置2と振動子3とを含む。回路装置2は、外部接続端子として、VDD端子、VSS端子、OUT端子、VC端子、XI端子及びXO端子を有している。VDD端子、VSS端子、OUT端子及びVC端子は、図2に示した発振器1の複数の外部端子6であるT1端子、T2端子、T3端子及びT4端子とそれぞれ電気的に接続されている。XI端子は振動子3の一端と電気的に接続され、XO端子は振動子3の他端と電気的に接続される。
【0014】
本実施形態では、回路装置2は、発振回路10、出力回路20、温度センサー30、温度補償回路32、周波数制御回路34、ロジック回路36、電源回路40、記憶回路50、RCフィルター60及びスイッチ回路70,80,90を含む。なお、回路装置2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
【0015】
電源回路40は、T1端子及びVDD端子を介して外部から供給される電源電圧に基づいて各種の一定電圧を生成し、各回路に供給する。例えば、電源回路40は、バンドギャップリファレンス回路の出力電圧に基づいて一定電圧をそれぞれ生成する複数のレギュレーターを含んでもよい。
【0016】
発振回路10は、XI端子及びXO端子と電気的に接続され、振動子3を発振させて発振信号OSCOを生成する。具体的には、発振回路10は、振動子3から出力される信号がXI端子を介して入力され、当該信号を増幅してXO端子を介して振動子3に供給する。
【0017】
温度センサー30は、回路装置2の温度を検出し、温度に応じた電圧の温度信号を出力するものであり、例えば、バンドギャップリファレンス回路の温度特性を利用した回路等で実現される。
【0018】
温度補償回路32は、温度センサー30から出力される温度信号と、振動子3の周波数温度特性に応じた温度補償データとに基づいて、発振回路10から出力される発振信号OSCOの周波数温度特性を補正するための温度補償電圧Vcompを生成し、発振回路10に供給する。温度補償データは、ロジック回路36から温度補償回路32に供給される。
【0019】
周波数制御回路34は、スイッチ回路90がオンのときに、T4端子から入力される周波数制御信号がVC端子を介して供給される。そして、周波数制御回路34は、周波数制御信号の電圧レベルに応じて、発振回路10の発振周波数を制御するための周波数制御電圧Vafcを生成し、発振回路10に供給する。
【0020】
温度補償電圧Vcompにより、発振回路10が出力する発振信号OSCOは、所定の温度範囲に含まれる任意の温度において周波数制御電圧Vafcに応じたほぼ一定の周波数となる。発振信号OSCOは、出力回路20に入力される。
【0021】
本実施形態では、出力回路20は、波形整形回路21、分周回路22、プリバッファー23、出力バッファー24、プリバッファー25及び出力バッファー26を含む。
【0022】
波形整形回路21は、発振回路10から出力される発振信号OSCOをバッファリングして矩形波のクロック信号CK1を出力する。
【0023】
分周回路22は、波形整形回路21から出力されるクロック信号CK1を、分周比データに応じた分周比で分周したクロック信号CK2を出力する。分周比データは、ロジック回路36から分周回路22に供給される。なお、分周回路22は、分周比が1の場合は、波形整形回路21から出力されるクロック信号CK1をバッファリングしたクロック信号CK2を出力する。分周回路22から出力されるクロック信号CK2は、プリバッファー23及びプリバッファー25に共通に入力される。
【0024】
プリバッファー23は、分周回路22から出力されるクロック信号CK2をバッファリングしたクロック信号CK3を出力する。プリバッファー23は、出力バッファー24の入力電圧レベルに整合させた電圧レベルのクロック信号CK3を出力するレベルシフターとしても機能する。
【0025】
出力バッファー24は、プリバッファー23から出力されるクロック信号CK3をバッファリングしてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)出力波形のクロック信号を出力する。
【0026】
プリバッファー25は、分周回路22から出力されるクロック信号CK2をバッファリングしたクロック信号CK4を出力する。
【0027】
出力バッファー26は、プリバッファー25から出力されるクロック信号CK4をクリップドサイン波形のクロック信号に変換して出力する。
【0028】
本実施形態では、出力バッファー24の出力ノード、出力バッファー26の出力ノード及びOUT端子は電気的に接続されている。そして、クロック選択データに応じて、出力バッファー24の出力ノード及び出力バッファー26の出力ノードの少なくとも一方はハイインピーダンスとなる。クロック選択データは、ロジック回路36から出力バッファー24及び出力バッファー26に供給される。
【0029】
出力バッファー26の出力ノードのみがハイインピーダンスである場合は、出力バッファー24から出力されるCMOS出力波形のクロック信号が、OUT端子及びT3端子を介して、クロック信号CKOとして発振器1の外部に出力される。また、出力バッファー24の出力ノードのみがハイインピーダンスである場合は、出力バッファー26から出力されるクリップドサイン波形のクロック信号が、OUT端子及びT3端子を介して、クロック信号CKOとして発振器1の外部に出力される。
【0030】
RCフィルター60は、プリバッファー25から出力されるクロック信号CK4が入力され、クロック信号CK4の電圧を平滑化した直流電圧を出力する。
【0031】
スイッチ回路70,80,90は、スイッチ制御データに応じてそれぞれオン又はオフする。スイッチ制御データは、ロジック回路36からスイッチ回路70,80,90に供給される。
【0032】
スイッチ回路70がオンのときはRCフィルター60とスイッチ回路80の一端とが導通し、スイッチ回路70がオフのときはRCフィルター60とスイッチ回路80の一端とが非導通となる。
【0033】
スイッチ回路80がオンのときはスイッチ回路70の一端とVC端子とが導通し、スイッチ回路80がオフのときはスイッチ回路70の一端とVC端子とが非導通となる。
【0034】
スイッチ回路90がオンのときはVC端子と周波数制御回路34の入力ノードとが導通し、スイッチ回路90がオフのときはVC端子と周波数制御回路34の入力ノードとが非導通となる。
【0035】
ロジック回路36は、各回路の動作を制御する。具体的には、ロジック回路36は、回路装置2の端子に入力される制御信号に基づいて、発振器1あるいは回路装置2の動作モードを、外部通信モード、通常動作モード及び各種の検査モードを含む複数のモードのうちの1つに設定し、設定した動作モードに応じた制御を行う。本実施形態では、ロジック回路36は、VDD端子への電源電圧の供給が開始してから所定期間内に、VC端子から所定のパターンの制御信号が入力された場合には、当該所定期間の経過後に動作モードを外部通信モードに設定する。例えば、ロジック回路36は、電源電圧の供給により振動子3が発振を開始して発振が安定したことを検出するまでの期間を当該所定期間としてもよいし、発振信号OSCOのパルス数をカウントし、カウント値が所定の値に到達したら当該所定期間が経過したと判断してもよい。また、例えば、ロジック回路36は、電源電圧の供給により動作を開始するRC時定数回路の出力信号に基づいて当該所定期間を計測してもよい。
【0036】
ロジック回路36は、外部通信モードでは、出力バッファー24,26の出力をともにハイインピーダンスに設定するクロック選択データを出力するとともに、スイッチ回路70,80,90をともにオフに設定するスイッチ制御データを出力する。外部通信モードでは、VC端子及びOUT端子からシリアルクロック信号及びシリアルデータ信号が互いに同期して入力される。ロジック回路36は、外部通信モードにおいて、例えばIC(Inter-Integrated Circuit)バスの規格に準じて、シリアルクロック信号のエッジ毎にシリアルデータ信号をサンプリングする。そして、ロジック回路36は、サンプリングしたコマンド及びデータに基づいて、動作モードの設定や各動作モードでのクロック選択データやスイッチ制御データの設定、レジスター51又は不揮発性メモリー52に対するデータの読み出しや書き込み等の処理を行う。なお、本実施形態では、ロジック回路36は、例えば、IC(Inter-Integrated Circuit)バス等の2線式バスのインターフェース回路として機能するが、SPI(Serial Peripheral Interface)バス等の3線式バスあるいは4線式バスのインターフェース回路として機能してもよい。
【0037】
例えば、ロジック回路36は、外部通信モードにおいて、通常動作モード設定コマンドをサンプリングした場合、動作モードを外部通信モードから通常動作モードに移行させる。ロジック回路36は、通常動作モードでは、出力バッファー24,26の出力のいずれか一方のみをハイインピーダンスに設定するクロック選択データを出力するとともに、スイッチ回路70,80をオフ、スイッチ回路90をオンに設定するスイッチ制御データを出力する。これにより、VC端子とRCフィルター60とが電気的に切断され、VC端子と周波数制御回路34とが電気的に接続される。その結果、VC端子の電圧に応じた周波数のクロック信号CKOがOUT端子からT3端子を介して外部に出力される。
【0038】
なお、ロジック回路36は、電源電圧の供給が開始してから所定期間内に、VC端子から所定のパターンの制御信号が入力されない場合には、当該所定期間の経過後に動作モードを外部通信モードに設定せずに、直接、通常動作モードに設定する。
【0039】
また、例えば、ロジック回路36は、外部通信モードにおいて、デューティー比検査コマンドをサンプリングした場合、動作モードを外部通信モードから検査モードの1つであるデューティー比検査モードに移行させる。ロジック回路36は、デューティー比検査モードでは、スイッチ回路70,80をオン、スイッチ回路90をオフに設定するスイッチ制御データを出力する。これにより、VC端子とRCフィルター60の出力ノードとが電気的に接続され、VC端子と周波数制御回路34の入力ノードとは電気的に切断される。その結果、RCフィルター60から出力される直流電圧がVC端子を介してT4端子から外部に出力され、外部装置は、T4端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出することができる。
【0040】
記憶回路50は、各種の情報を記憶する回路であり、レジスター51と、不揮発性メモリー52とを有する。不揮発性メモリー52は、例えば、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等である。発振器1の製造工程において、不揮発性メモリー52に、温度補償データ、分周比データ、クロック選択データ等の各種の情報が記憶される。そして、発振器1に電源が投入されると、不揮発性メモリー52に記憶されている各種の情報はレジスター51に転送され、レジスター51に保存された各種の情報がロジック回路36を介して適宜各回路に供給される。
【0041】
1-2.発振回路の構成
図4は、発振回路10の構成例を示す図である。図4に示すように、発振回路10は、基準電圧回路11、バイアス電流生成回路12、容量回路13,14、可変容量回路15,16,17,18、バイポーラトランジスター101、抵抗素子102及び容量素子103,104を含む。なお、本実施形態の発振回路10は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
【0042】
基準電圧回路11は、複数の抵抗素子111及びデューティー比調整回路112を含む。複数の抵抗素子111は、電源電圧VDDLの供給線とグラウンドとの間に直列に接続されている。電源電圧VDDLは電源回路40から供給される。基準電圧回路11は、電源電圧VDDLとグラウンド電圧との間の電圧が複数の抵抗素子111で分圧された複数の電圧の少なくとも一部を、n個の基準電圧VcgC[n:1]及びm個の基準電圧VcgA[m:1]として出力する。n,mは、それぞれ2以上の整数である。整数nと整数mは、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、n個の基準電圧VcgC[n:1]の少なくとも1つと、m個の基準電圧VcgA[m:1]の少なくとも1つとが同じであってもよい。基準電圧VcgC[n:1]は、可変容量回路15,16に供給される。また、基準電圧VcgA[m:1]は、可変容量回路17,18に供給される。
【0043】
デューティー比調整回路112は、デューティー比調整データに基づいて、複数の抵抗素子111で分圧された複数の電圧の一部又は全部のうちのいずれか1つを選択してバイアス電圧Vrefbとして出力する。デューティー比調整データは、不揮発性メモリー52に記憶されており、ロジック回路36は、不揮発性メモリー52からレジスター51に転送されたデューティー比調整データをデューティー比調整回路112に供給する。
【0044】
バイアス電流生成回路12は、2つのPチャンネル型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスター121,122及び定電流源123を含む。
【0045】
MOSトランジスター121は、ゲートとドレインが電気的に接続され、ソースに電源電圧VDDLが供給される。MOSトランジスター122は、ゲートがMOSトランジスター121のゲートと電気的に接続され、ソースに電源電圧VDDLが供給され、ドレインが増幅素子であるバイポーラトランジスター101のコレクターと電気的に接続されている。MOSトランジスター121のゲート及びドレインは定電流源123の一端と電気的に接続されている。定電流源123の他端はグラウンドに接続されている。
【0046】
このように構成されているバイアス電流生成回路12では、定電流源123を流れる基準電流Irefが、MOSトランジスター121,122によって構成されるカレントミラー回路によって所定倍された電流がMOSトランジスター122のソース-ドレイン間に流れる。この電流がバイアス電流Ibiasとしてバイポーラトランジスター101に供給される。
【0047】
容量素子103は、一端がバイポーラトランジスター101のベースと電気的に接続され、他端がXI端子を介して振動子3の一端と電気的に接続されている。
【0048】
容量素子104は、一端がMOSトランジスター121のゲート及びMOSトランジスター122のゲートと電気的に接続され、他端がバイポーラトランジスター101のベースと電気的に接続されている。
【0049】
バイポーラトランジスター101は、ベースが容量素子103の一端と電気的に接続され、コレクターがXO端子と電気的に接続され、エミッターが接地されている。また、バイポーラトランジスター101のベースとコレクターとの間には、抵抗素子102が接続されている。そして、バイポーラトランジスター101のコレクターにはバイアス電流Ibiasが供給される。
【0050】
XI端子から入力される発振信号は、容量素子103を介してバイポーラトランジスター101のゲートに供給され、増幅素子であるバイポーラトランジスター101によって増幅される。増幅された発振信号は、バイポーラトランジスター101のコレクターからXO端子を介して振動子3に供給される。なお、増幅素子として、バイポーラトランジスター101に代えて、MOSトランジスターやCMOSインバーターが用いられてもよい。
【0051】
発振回路10は、XI端子と容量素子103の他端との間のノードに生じる信号を発振信号OSCOとして出力する。当該ノードには、基準電圧回路11のデューティー比調整回路112からバイアス電圧Vrefbが供給される。そのため、発振信号OSCOは、バイアス電圧Vrefbを中心に振動する波形となり、出力回路20の波形整形回路21に入力される。したがって、バイアス電圧Vrefbに応じて、波形整形回路21から出力されるクロック信号CK1のデューティー比が変化し、その結果、出力回路20から出力されるクロック信号CKOのデューティー比も変化する。バイアス電圧Vrefbは、ロジック回路36から供給されるデューティー比調整データに応じた電圧となるので、不揮発性メモリー52に適切なデューティー比調整データを設定することにより、クロック信号CKOのデューティー比を目標値に近づけることができる。目標値は、例えば50%である。
【0052】
容量回路13は、k個の容量素子131-1~131-k及びk個のスイッチ素子132-1~132-kを含む。kは2以上の整数である。1以上k以下の各整数iに対して、容量素子131-iは、一端がXI端子と電気的に接続され、他端がスイッチ素子132-iの一端と電気的に接続されている。スイッチ素子132-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。
【0053】
容量回路14は、k個の容量素子141-1~141-k及びk個のスイッチ素子142-1~142-kを含む。1以上k以下の各整数iに対して、容量素子141-iは、一端がXО端子と電気的に接続され、他端がスイッチ素子142-iの一端と電気的に接続されている。スイッチ素子142-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。
【0054】
スイッチ素子132-1~132-kは、周波数調整データの各ビットの値に応じてそれぞれオン又はオフする。容量素子131-iは、スイッチ素子132-iがオンのときにXI端子とグラウンドとの間に接続される。同様に、スイッチ素子142-1~142-kは、周波数調整データの各ビットの値に応じてそれぞれオン又はオフする。容量素子141-iは、スイッチ素子142-iがオンのときにXO端子とグラウンドとの間に接続される。周波数調整データは、不揮発性メモリー52に記憶されており、ロジック回路36は、不揮発性メモリー52からレジスター51に転送された周波数調整データを容量回路13,14に供給する。
【0055】
容量回路13の容量値は、容量素子131-1~131-kのうち、XI端子とグラウンドとの間に接続される容量素子の容量値の総和である。また、容量回路14の容量値は、容量素子141-1~141-kのうち、XO端子とグラウンドとの間に接続される容量素子の容量値の総和である。したがって、周波数調整データに応じて容量回路13,14の容量値が変化する。容量回路13,14は振動子3の負荷容量として機能し、容量回路13,14の容量値に応じて発振信号OSCOの周波数が変化する。その結果、クロック信号CKOの周波数が変化する。したがって、不揮発性メモリー52に適切な周波数調整データを設定することにより、基準温度におけるクロック信号CKOの周波数と目標周波数との差を最小にすることができる。基準温度は、例えば25℃であってもよい。
【0056】
可変容量回路15は、容量素子151、n個の可変容量素子152-1~152-n、n個の容量素子153-1~153-n及び抵抗素子154を含む。容量素子151は、一端がXI端子と電気的に接続され、他端が可変容量素子152-1~152-nの各一端及び抵抗素子154の一端と電気的に接続されている。1以上n以下の各整数iに対して、可変容量素子152-iの他端は、容量素子153-iの一端と電気的に接続され、容量素子153-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。そして、可変容量素子152-iの他端及び容量素子153-iの一端には、基準電圧VcgC[i]が供給される。また、可変容量素子152-1~152-nの各一端には、抵抗素子154を介して温度補償電圧Vcompが供給される。
【0057】
可変容量回路16は、容量素子161、n個の可変容量素子162-1~162-n、n個の容量素子163-1~163-n及び抵抗素子164を含む。容量素子161は、一端がXO端子と電気的に接続され、他端が可変容量素子162-1~162-nの各一端及び抵抗素子164の一端と電気的に接続されている。1以上n以下の各整数iに対して、可変容量素子162-iの他端は、容量素子163-iの一端と電気的に接続され、容量素子163-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。そして、可変容量素子162-iの他端及び容量素子163-iの一端には、基準電圧VcgC[i]が供給される。また、可変容量素子162-1~162-nの各一端には、抵抗素子164を介して温度補償電圧Vcompが供給される。
【0058】
可変容量素子152-1~152-nの各容量値は、温度補償電圧Vcompに応じて変化する。同様に、可変容量素子162-1~162-nの各容量値は、温度補償電圧Vcompに応じて変化する。したがって、温度補償電圧Vcompに応じて可変容量回路15,16の容量値が変化する。可変容量回路15,16は振動子3の負荷容量として機能し、可変容量回路15,16の容量値に応じて発振信号OSCOの周波数が変化する。その結果、クロック信号CKOの周波数が変化する。したがって、不揮発性メモリー52に適切な温度補償データを設定することにより、所定の温度範囲の任意の温度におけるクロック信号CKOの周波数と目標周波数との差を最小にすることができる。
【0059】
可変容量回路17は、容量素子171、m個の可変容量素子172-1~172-m、m個の容量素子173-1~173-n及び抵抗素子174を含む。容量素子171は、一端がXI端子と電気的に接続され、他端が可変容量素子172-1~172-mの各一端及び抵抗素子174の一端と電気的に接続されている。1以上m以下の各整数iに対して、可変容量素子172-iの他端は、容量素子173-iの一端と電気的に接続され、容量素子173-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。そして、可変容量素子172-iの他端及び容量素子173-iの一端には、基準電圧VcgA[i]が供給される。また、可変容量素子172-1~172-mの各一端には、抵抗素子174を介して周波数制御電圧Vafcが供給される。
【0060】
可変容量回路18は、容量素子181、m個の可変容量素子182-1~182-m、m個の容量素子183-1~183-n及び抵抗素子184を含む。容量素子181は、一端がXO端子と電気的に接続され、他端が可変容量素子182-1~182-mの各一端及び抵抗素子184の一端と電気的に接続されている。1以上m以下の各整数iに対して、可変容量素子182-iの他端は、容量素子183-iの一端と電気的に接続され、容量素子183-iの他端は、グラウンドと電気的に接続されている。そして、可変容量素子182-iの他端及び容量素子183-iの一端には、基準電圧VcgA[i]が供給される。また、可変容量素子182-1~182-mの各一端には、抵抗素子184を介して周波数制御電圧Vafcが供給される。
【0061】
可変容量素子172-1~172-mの各容量値は、周波数制御電圧Vafcに応じて変化する。同様に、可変容量素子182-1~182-mの各容量値は、周波数制御電圧Vafcに応じて変化する。したがって、周波数制御電圧Vafcに応じて可変容量回路17,18の容量値が変化する。可変容量回路17,18は振動子3の負荷容量として機能し、可変容量回路17,18の容量値に応じて発振信号OSCOの周波数が変化する。その結果、クロック信号CKOの周波数が変化する。したがって、T4端子に印加される電圧に応じて、クロック信号CKOの周波数を変化させることができる。
【0062】
例えば、容量素子103,104,131-1~131-k,141-1~141-k,151,153-1~153-n,161,163-1~163-n,171,173-1~173-m,181,183-1~183-mは、それぞれ、2つの電極に金属を用いたMIM(Metal Insulator Metal)型のキャパシターであってもよいし、2つの電極にポリシリコンを用いたPIP(Poly Insulator Poly)型のキャパシターであってもよい。また、例えば、可変容量素子152-1~152-n,162-1~162-n,172-1~172-m,182-1~182-mは、それぞれ、MOSトランジスターのソースとドレインが接続されたバラクターであってもよい。
【0063】
1-3.デューティー比の検査方法
前述の通り、本実施形態では、不揮発性メモリー52に適切なデューティー比調整データを設定することにより、クロック信号CKOのデューティー比を目標値に近づけることができる。適切なデューティー比調整データを算出するためには、例えば、デューティー比調整データが初期値に設定されている状態でクロック信号CKOのデューティー比を求める必要がある。
【0064】
図5は、T3端子から出力されるクロック信号CKO及びプリバッファー25から出力されるクロック信号CK4の各電圧波形の一例を示す図である。図5の例では、クロック信号CKO,CK4は、ともにデューティー比が50%の波形である。また、図6は、クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとの関係の一例を示す図であり、図7は、クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとの関係の一例を示す図である。直流バイアスは電圧の平均値であり、クロック信号CK4の直流バイアスは、RCフィルター60から出力される直流電圧に相当する。また、クロック信号CKOの直流バイアスは、仮にT3端子にRCフィルターを接続した場合に当該RCフィルターから出力される直流電圧に相当する。
【0065】
前述の通り、出力バッファー26から出力されるクロック信号CKOはクリップドサイン波形の信号である。そのため、図5に示すように、クリップドサイン波形のクロック信号CKOは、波形の立ち上がり及び立ち下がりが緩やかである。また、前述の通り、出力バッファー24から出力されるクロック信号CKOはCMOS出力波形の信号である。しかしながら、T3端子に接続される外部回路の負荷が大きいと、CMOS出力波形のクロック信号CKOは、波形の立ち上がり及び立ち下がりが緩やかになる。したがって、T3端子から出力されるクロック信号CKOは、発振振幅が大きく変動する。その結果、図6に示すように、クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとは線形の関係にならず、直流バイアスからデューティー比を正確に算出することが難しい。
【0066】
一方、本実施形態では、プリバッファー25は、負荷の小さい出力バッファー26及びRCフィルター60を駆動し、かつ、波形整形回路21よりも駆動能力が高い。したがって、図5に示すように、プリバッファー25から出力されるクロック信号CK4は矩形波の信号となり、クロック信号CK4の立ち上がり時間は、クロック信号CKOの立ち上がり時間よりも短く、クロック信号CK4の立ち下がり時間は、クロック信号CKOの立ち下がり時間よりも短い。立ち上がり時間は、電圧が規定された下限値に到達してから規定された上限値に到達するまでの時間であり、立ち下がり時間は、電圧が当該上限値に到達してから当該下限値に到達するまでの時間である。上限値及び下限値の規定方法は、信号波形の種類や製品仕様等によって異なる。代表的な例を挙げると、下限値は電源電圧の20%であり、上限値は電源電圧の80%である。
【0067】
このように、クロック信号CK4は、波形の立ち上がり及び立ち下がりが急峻であり、発振振幅がほぼ一定である。その結果、図7に示すように、クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとは線形の関係となり、直流バイアスからデューティー比を正確に算出可能である。さらに、発振器1の動作のシミュレーション結果や発振器1の評価結果等から、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との相関関係を求めることができるので、当該相関関係に基づき、クロック信号CK4のデューティー比からクロック信号CKOのデューティー比を正確に算出可能である。
【0068】
そのため、本実施形態では、RCフィルター60の入力ノードは、出力バッファー24,26の出力ノードではなく、プリバッファー25の出力ノードと接続されており、RCフィルター60から出力される直流電圧は、クロック信号CK4の直流バイアスに相当する。そして、デューティー比検査モードにおいて、RCフィルター60の出力ノードとT3端子とが電気的に接続されるので、外部装置は、図7の関係より、T3端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出可能である。さらに、外部装置は、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との相関関係に基づき、クロック信号CKOのデューティー比を正確に算出することができる。このクロック信号CKOは、出力バッファー26から出力されるクリップドサイン波形のクロック信号であってもよいし、出力バッファー24から出力されるCMOS出力波形のクロック信号であってもよい。
【0069】
なお、RCフィルター60の入力ノードは、プリバッファー23の出力ノードと接続されていてもよい。本実施形態では、プリバッファー23は、出力バッファー24のみを駆動し、かつ、波形整形回路21よりも駆動能力が高いので、プリバッファー23から出力されるクロック信号CK3は矩形波の信号となる。したがって、クロック信号CK3のデューティー比と直流バイアスとは線形の関係となる。
【0070】
図8は、デューティー比検査モードにおいて、XI端子からT3端子又はT4端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図である。
【0071】
図8に示すように、波形整形回路21は、バッファー回路211を有し、バッファー回路211は、発振信号OSCOに基づくクロック信号CK1を出力する。具体的には、バッファー回路211は、XI端子から容量素子103を介して発振信号OSCOが入力され、クロック信号CK1を出力する。
【0072】
分周回路22は、発振信号OSCOに基づくクロック信号CK2を出力する。具体的には、分周回路22は、発振信号OSCOに基づくクロック信号CK1が入力され、クロック信号CK1を分周したクロック信号CK2を出力する。
【0073】
プリバッファー25は、バッファー回路251,252を有し、バッファー回路252は、発振信号OSCOに基づくクロック信号CK4を出力する。具体的には、発振信号OSCOに基づくクロック信号CK2がバッファー回路251に入力され、バッファー回路252は、バッファー回路251の出力信号が入力され、クロック信号CK4を出力する。
【0074】
出力バッファー26は、バッファー回路261を有し、バッファー回路261は、クロック信号CK4に基づくクロック信号CKOを出力する。具体的には、バッファー回路261は、バッファー回路252から出力されるクロック信号CK4が入力され、クロック信号CKOを出力する。OUT端子は、バッファー回路261がクロック信号CKOを出力するノードN2と電気的に接続されており、クロック信号CKOは、OUT端子及びT3端子を介して発振器1の外部に出力される。
【0075】
RCフィルター60は、バッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1とスイッチ回路70との間に電気的に接続され、抵抗素子61と容量素子62とによって構成されるローパスフィルターである。抵抗素子61の一端はノードN1と電気的に接続されており、容量素子62は抵抗素子61の他端とグラウンドとの間に接続されている。そして、抵抗素子61の他端と容量素子62の一端とが接続されるノードN3から、クロック信号CK4の電圧を平滑化した直流電圧が出力される。
【0076】
スイッチ回路70は、ノードN1とVC端子とを電気的に接続又切断するスイッチ回路であり、トランスミッションゲート71とNチャンネル型のMOSトランジスター72とを有する。同様に、スイッチ回路80は、ノードN1とVC端子とを電気的に接続又切断するスイッチ回路であり、トランスミッションゲート81を有する。
【0077】
トランスミッションゲート71の一端はノードN3と接続され、MOSトランジスター72はトランスミッションゲート71の他端とグラウンドとの間に接続されている。トランスミッションゲート81は、一端がトランスミッションゲート71の他端とMOSトランジスター72のドレインとが接続されるノードN4と接続され、他端がVC端子と接続されている。したがって、VC端子は、抵抗素子61及びトランスミッションゲート71,81を介してノードN1と電気的に接続可能である。
【0078】
通常動作モードや外部通信モードでは、トランスミッションゲート71,81がともにオフしてノードN1とVC端子とが電気的に切断される。トランスミッションゲート71がオフするときは、MOSトランジスター72がオンし、ノードN4はグラウンドと電気的に接続される。
【0079】
一方、デューティー比検査モードでは、トランスミッションゲート71,81がともにオンし、抵抗素子61及びトランスミッションゲート71,81を介して、ノードN1とVC端子とが電気的に接続される。そして、VC端子と接続されているT4端子の電圧は、クロック信号CK4の電圧が平滑化された直流電圧となる。
【0080】
T4端子には、発振器1の外部装置である検査装置300が接続される。検査装置300は、発振器1をデューティー比検査モードに設定し、T4端子の電圧を測定する。そして、検査装置300は、T4端子の電圧の測定値に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出し、クロック信号CK4のデューティー比に基づいてクロック信号CKOのデューティー比を算出することができる。
【0081】
ここで、バッファー回路252は、発振信号OSCOが出力される発振回路10の出力ノードとバッファー回路252との間に電気的に接続されるバッファー回路211よりも駆動能力が高い。そのため、バッファー回路252からノードN1に出力されるクロック信号CK4は、バッファー回路211から出力されるクロック信号CK1よりも立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短い。したがって、クロック信号CK4は、クロック信号CK1よりもデューティー比と直流バイアスとの関係の線形性が高く、検査装置300は、T4端子の電圧の測定値に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を精度良く算出することができる。さらに、ノードN1は、バッファー回路261の入力ノードであるため、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との差が小さいので、検査装置300は、クロック信号CK4のデューティー比に基づいてクロック信号CKOのデューティー比を精度良く算出することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、クロック信号CK4は第1のクロック信号の一例であり、クロック信号CKOは第2のクロック信号の一例である。また、バッファー回路252は第1のバッファー回路の一例であり、バッファー回路261は第2のバッファー回路の一例であり、バッファー回路211は第3のバッファー回路の一例である。また、ノードN1は第1のノードの一例であり、ノードN2は第2のノードの一例である。また、VC端子は第1の端子の一例であり、OUT端子は第2の端子の一例である。
【0083】
図9は、第1実施形態の発振器1から出力されるクロック信号CKOのデューティー比の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図である。また、図10は、図9のフローチャートによってデューティー比の検査を行うときの各端子及び各スイッチの制御信号の電圧波形の一例を示す図である。
【0084】
図9の例では、まず、検査装置300は、発振器1のT1端子に電源電圧を供給する(工程S1)。図10に示すように、工程S1により、T1端子がグラウンド電圧から所望の電圧まで上昇する。また、不揮発性メモリー52に記憶されているデューティー比調整データを含む各種の情報がレジスター51に転送され、ロジック回路36から各回路に供給される。
【0085】
次に、検査装置300は、発振器1のT4端子に制御信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する(工程S2)。すなわち、図10に示すように、検査装置300は、T1端子に電源電圧を供給してから所定期間内に、発振器1のT4端子に予め決められた所定のパターンの信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する。
【0086】
次に、検査装置300は、発振器1のT3端子及びT4端子に制御信号を供給し、発振器1をデューティー比検査モードに設定する(工程S3)。すなわち、図10に示すように、検査装置300は、外部通信モードにおいて、T3端子にシリアルクロック信号を供給し、T4端子にシリアルデータ信号としてデューティー比検査コマンドを供給し、発振器1をデューティー比検査モードに設定する。図10に示すように、工程S3により、発振器1が外部通信モードからデューティー比検査モードに移行し、スイッチ回路70,80の各制御信号がローレベルからハイレベルに変化するとともに、スイッチ回路90の制御信号がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ回路70,80がともにオンし、T4端子とRCフィルター60の出力ノードとが電気的に接続され、T4端子の電圧がRCフィルター60から出力される直流電圧となる。
【0087】
次に、検査装置300は、発振器1のT4端子の電圧を測定する(工程S4)。すなわち、検査装置300は、RCフィルター60から出力される直流電圧を測定する。
【0088】
次に、検査装置300は、工程S4で測定したT4端子の電圧からクロック信号CK4のデューティー比を算出する(工程S5)。
【0089】
次に、検査装置300は、工程S5で算出したクロック信号CK4のデューティー比からクロック信号CKOのデューティー比を算出する(工程S6)。
【0090】
そして、検査装置300は、工程S6で算出したクロック信号CKOのデューティー比と目標値との差が閾値以下であれば(工程S7のY)、処理を終了する。目標値は、例えば50%である。閾値は、例えば、デューティー比調整データによるクロック信号CKOのデューティー比の調整分解能に設定される。
【0091】
また、検査装置300は、工程S6で算出したクロック信号CKOのデューティー比と目標値との差が閾値よりも大きい場合は(工程S7のN)、当該差から、クロック信号CKOのデューティー比を目標値に最も近づけるデューティー比調整データを算出し(工程S8)、処理を終了する。
【0092】
なお、検査装置300は、例えば、一連の検査が終了した後、工程S8で算出したデューティー比調整データ等の必要な情報を不揮発性メモリー52に書き込む。
【0093】
1-4.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の発振器1では、回路装置2において、プリバッファー25が有するバッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1とVC端子とが電気的に接続されることにより、VC端子の電圧はRCフィルター60によってクロック信号CK4が平滑化された直流電圧となる。このクロック信号CK4の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、出力バッファー26であるバッファー回路261からOUT端子及びT3端子を介して外部に出力されるクロック信号CKOの立ち上がり時間及び立ち下がり時間よりも短い。そのため、クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとの相関は、クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとの相関よりも線形に近い。したがって、検査装置300は、VC端子と接続されるT4端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を高精度に算出し、さらに、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との関係に基づいて、クロック信号CKOのデューティー比を高精度に算出することができる。
【0094】
また、第1実施形態の発振器1によれば、回路装置2において、RCフィルター60を構成する抵抗素子61によって、スイッチ回路70を構成するトランスミッションゲート71の容量が出力バッファー26であるバッファー回路261に及ぼす悪影響が低減されるので、クロック信号CKOのノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。
【0095】
また、第1実施形態の発振器1によれば、通常動作モードにおいて、ノードN1とVC端子及びT4端子とが電気的に切断されるので、T4端子から信号が入力されても、T4端子からVC端子を介してノードN1へと信号が伝搬することによるクロック信号CKOのノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。逆に、クロック信号CK4が平滑化された直流電圧が、VC端子と電気的に接続される周波数制御回路34に伝搬して周波数制御回路34に悪影響を及ぼすことにより回路装置2が誤動作するおそれも低減される。また、第1実施形態の発振器1によれば、通常動作モードとデューティー比検査モードでT4端子及びVC端子が兼用されるので、クロック信号CK4が平滑化された直流電圧を外部に出力するための専用端子が不要である。
【0096】
また、第1実施形態の発振器1では、回路装置2がRCフィルター60を有するので、クロック信号CK4のデューティー比を算出するために、回路装置2の外部においてRCフィルターを構成する抵抗素子や容量素子を設ける必要がない。したがって、第1実施形態の発振器1によれば、検査システムの構築に要するコストが低減される。
【0097】
また、第1実施形態の発振器1では、回路装置2において、プリバッファー25が有するバッファー回路252は波形整形回路21であるバッファー回路211よりも駆動能力が高い。すなわち、バッファー回路252から出力されるクロック信号CK4は、バッファー回路211から出力されるクロック信号CK1よりも立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短い。そのため、クロック信号CK4は、クロック信号CK1よりもデューティー比と直流バイアスとの関係の線形性が高い。したがって、検査装置300は、T4端子の電圧に基づいてクロック信号CKOのデューティー比を高精度に算出し、さらに、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との関係に基づいて、クロック信号CKOのデューティー比を高精度に算出することができる。
【0098】
また、第1実施形態の発振器1によれば、回路装置2において、バッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1は、バッファー回路261の入力ノードである。すなわち、ノードN1はバッファー回路261の出力ノードに近いので、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との差が小さい。したがって、検査装置300は、クロック信号CK4のデューティー比に基づいて、クロック信号CKOのデューティー比を精度良く算出することができる。
【0099】
2.第2実施形態
第1実施形態の発振器1では、通常動作モードにおいてクロック信号CKOの周波数を制御するための電圧が入力されるT4端子及びVC端子を、デューティー比検査モードにおいて、RCフィルター60の出力電圧を出力する端子として兼用している。これに対して、第2実施形態の発振器1では、RCフィルター60の出力電圧を出力するための専用の外部端子を備える。以下、第2実施形態の発振器1について、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、第1実施形態と同様の説明は省略又は簡略し、主として第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0100】
図11は、第2実施形態の発振器1の機能ブロック図である。図11に示すように、第2実施形態の発振器1は、外部端子6として、T1端子、T2端子、T3端子及びT4端子に加えて、さらにT5端子を有している。また、回路装置2は、外部接続端子として、VDD端子、VSS端子、OUT端子、VC端子、XI端子及びXO端子に加えて、さらにTST端子を有している。そして、T5端子とTST端子とが電気的に接続されており、TST端子とRCフィルター60の出力ノードとが電気的に接続されている。そのため、RCフィルター60から出力される直流電圧がTST端子を介してT5端子から外部に出力され、外部装置は、T5端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出することができる。
【0101】
T5端子及びTST端子は、RCフィルター60から出力される直流電圧を出力するための専用の端子である。そのため、第1実施形態と異なり、回路装置2は、スイッチ回路70,80を備える必要がない。また、スイッチ回路70,80が無ければ通常動作モードでもT5端子から直流電圧が出力されるので、発振器1及び回路装置2は、デューティー比検査モードを有していなくてもよい。
【0102】
第2実施形態の発振器1のその他の構成は、第1実施形態の発振器1と同様であるため、その説明を省略する。
【0103】
図12は、XI端子からT3端子又はT5端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図である。図12において、XI端子からT3端子までの信号伝搬経路上にある各回路の構成は、図8と同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
図12に示すように、RCフィルター60は、抵抗素子61と容量素子62とによって構成されるローパスフィルターであり、ノードN1とT4端子との間に電気的に接続されている。抵抗素子61の一端はバッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1と電気的に接続されており、容量素子62は抵抗素子61の他端とグラウンドとの間に接続されている。そして、抵抗素子61の他端と容量素子62の一端とが接続されるノードはTST端子と接続されている。ノードN1とTST端子とは抵抗素子61を介して電気的に接続されており、TST端子と接続されているT5端子の電圧は、クロック信号CK1の電圧がRCフィルター60によって平滑化された直流電圧となる。
【0105】
T5端子には、発振器1の外部装置である検査装置300が接続される。検査装置300は、T5端子の電圧を測定し、T5端子の電圧の測定値に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出し、クロック信号CK4のデューティー比に基づいてクロック信号CKOのデューティー比を算出することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、クロック信号CK4は第1のクロック信号の一例であり、クロック信号CKOは第2のクロック信号の一例である。また、バッファー回路252は第1のバッファー回路の一例であり、バッファー回路261は第2のバッファー回路の一例であり、バッファー回路211は第3のバッファー回路の一例である。また、ノードN1は第1のノードの一例であり、ノードN2は第2のノードの一例である。また、TST端子は第1の端子の一例であり、OUT端子は第2の端子の一例である。
【0107】
図13は、第2実施形態の発振器1から出力されるクロック信号CKOのデューティー比の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0108】
図13の例では、まず、検査装置300は、発振器1のT1端子に電源電圧を供給する(工程S11)。工程S11により、T1端子がグラウンド電圧から所望の電圧まで上昇する。また、不揮発性メモリー52に記憶されているデューティー比調整データを含む各種の情報がレジスター51に転送され、ロジック回路36から各回路に供給される。
【0109】
次に、検査装置300は、所定時間が経過するまで待機する(工程S12)。例えば、所定時間は、振動子3の発振が安定するのに要する時間以上に設定される。
【0110】
次に、検査装置300は、発振器1のT5端子の電圧を測定する(工程S13)。すなわち、検査装置300は、RCフィルター60から出力される直流電圧を測定する。
【0111】
次に、検査装置300は、工程S13で測定したT5端子の電圧からクロック信号CK4のデューティー比を算出する(工程S14)。
【0112】
次に、検査装置300は、工程S14で算出したクロック信号CK4のデューティー比からクロック信号CKOのデューティー比を算出する(工程S15)。
【0113】
そして、検査装置300は、工程S15で算出したクロック信号CKOのデューティー比と目標値との差が閾値以下であれば(工程S16のY)、処理を終了する。目標値は、例えば50%である。閾値は、例えば、デューティー比調整データによるクロック信号CKOのデューティー比の調整分解能に設定される。
【0114】
また、検査装置300は、工程S15で算出したクロック信号CKOのデューティー比と目標値との差が閾値よりも大きい場合は(工程S16のN)、当該差から、クロック信号CKOのデューティー比を目標値に最も近づけるデューティー比調整データを算出し(工程S17)、処理を終了する。
【0115】
なお、検査装置300は、例えば、一連の検査が終了した後、工程S17で算出したデューティー比調整データ等の必要な情報を不揮発性メモリー52に書き込む。
【0116】
以上に説明した第2実施形態の発振器1では、回路装置2において、プリバッファー25が有するバッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1とTST端子とが電気的に接続されることにより、TST端子の電圧はRCフィルター60によってクロック信号CK4が平滑化された直流電圧となる。このクロック信号CK4の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、出力バッファー26であるバッファー回路261からOUT端子及びT3端子を介して外部に出力されるクロック信号CKOの立ち上がり時間及び立ち下がり時間よりも短い。そのため、クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとの相関は、クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとの相関よりも線形に近い。したがって、検査装置300は、TST端子と接続されるT5端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を高精度に算出し、さらに、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との関係に基づいて、クロック信号CKOのデューティー比を高精度に算出することができる。
【0117】
また、第2実施形態の発振器1によれば、T5端子及びTST端子が、クロック信号CK4が平滑化された直流電圧を外部に出力するための専用端子として用いられるので、クロック信号CK4平滑化された直流電圧が、T5端子及びTST端子とは異なる端子と電気的に接続される回路に伝搬して当該回路に悪影響を及ぼすことにより回路装置2が誤動作するおそれが低減される。
【0118】
また、第2実施形態の発振器1では、回路装置2がRCフィルター60を有するので、クロック信号CK4のデューティー比を算出するために、回路装置2の外部においてRCフィルターを構成する抵抗素子や容量素子を設ける必要がない。したがって、第2実施形態の発振器1によれば、検査システムの構築に要するコストが低減される。
【0119】
第2実施形態の発振器1は、上記の効果以外にも前述した第1実施形態の発振器1と同様の効果も奏する。
【0120】
3.第3実施形態
第1実施形態の発振器1は、クロック信号CK4の電圧を平滑化するRCフィルター60を備えている。これに対して、第3実施形態の発振器1は、クロック信号CK4の電圧を平滑化するRCフィルター60を備えていない。以下、第3実施形態の発振器1について、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、第1実施形態と同様の説明は省略又は簡略し、主として第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0121】
図14は、第3実施形態の発振器1の機能ブロック図である。図14に示すように、第3実施形態の発振器1では、回路装置2は、抵抗素子63を備える。抵抗素子63の一端はプリバッファー25の出力ノードと接続され、抵抗素子63の他端は、スイッチ回路70,80がともにオンするときにVC端子と電気的に接続される。本実施形態では、デューティー比検査モードにおいて、スイッチ回路70,80がオンし、スイッチ回路90がオフすることにより、VC端子とプリバッファー25の出力ノードとが抵抗素子63を介して電気的に接続され、VC端子と周波数制御回路34の入力ノードとは電気的に切断される。その結果、プリバッファー25から出力されるクロック信号CK4がVC端子を介してT4端子から外部に出力される。そして、外部装置は、T4端子から出力されるクロック信号CK4のデューティー比を算出する。
【0122】
第3実施形態の発振器1のその他の構成は、第1実施形態の発振器1と同様であるため、その説明を省略する。
【0123】
図15は、XI端子からT3端子又はT4端子までの信号伝搬経路上にある各回路の詳細を示す図である。図15において、XI端子からT3端子までの信号伝搬経路上にある各回路の構成は、図8と同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
抵抗素子63は、バッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1とスイッチ回路70との間に電気的に接続されている。
【0125】
VC端子は、抵抗素子61及びトランスミッションゲート71,81を介してノードN1と電気的に接続可能である。
【0126】
通常動作モードや外部通信モードでは、トランスミッションゲート71,81がともにオフしてノードN1とVC端子とが電気的に切断される。トランスミッションゲート71がオフするときは、MOSトランジスター72がオンし、ノードN4はグラウンドと電気的に接続される。
【0127】
一方、デューティー比検査モードでは、トランスミッションゲート71,81がともにオンし、抵抗素子63及びトランスミッションゲート71,81を介して、ノードN1とVC端子とが電気的に接続される。
【0128】
発振器1の外部において、T4端子とグラウンドとの間には容量素子301が接続されており、トランスミッションゲート71,81がともにオンするとき、抵抗素子63と容量素子301とによってRCフィルターが構成される。したがって、デューティー比検査モードにおいて、T4端子の電圧は、クロック信号CK4の電圧が平滑化された直流電圧となる。
【0129】
また、T4端子には、発振器1の外部装置である検査装置300が接続される。検査装置300は、発振器1をデューティー比検査モードに設定し、T4端子の電圧を測定する。そして、検査装置300は、T4端子の電圧の測定値に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を算出し、クロック信号CK4のデューティー比に基づいてクロック信号CKOのデューティー比を算出することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、クロック信号CK4は第1のクロック信号の一例であり、クロック信号CKOは第2のクロック信号の一例である。また、バッファー回路252は第1のバッファー回路の一例であり、バッファー回路261は第2のバッファー回路の一例であり、バッファー回路211は第3のバッファー回路の一例である。また、ノードN1は第1のノードの一例であり、ノードN2は第2のノードの一例である。また、VC端子は第1の端子の一例であり、OUT端子は第2の端子の一例である。
【0131】
第3実施形態の発振器1から出力されるクロック信号CKOのデューティー比の検査方法の手順の一例を示すフローチャートは、図9と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0132】
以上に説明した第3実施形態の発振器1では、回路装置2において、プリバッファー25が有するバッファー回路252がクロック信号CK4を出力するノードN1とVC端子とが電気的に接続された場合、抵抗素子63とT4端子に接続される容量素子301とによってRCフィルターが構成される。その結果、T4端子の電圧は当該RCフィルターによってクロック信号CK4が平滑化された直流電圧となる。このクロック信号CK4の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、出力バッファー26であるバッファー回路261からOUT端子及びT3端子を介して外部に出力されるクロック信号CKOの立ち上がり時間及び立ち下がり時間よりも短い。そのため、クロック信号CK4のデューティー比と直流バイアスとの相関は、クロック信号CKOのデューティー比と直流バイアスとの相関よりも線形に近い。したがって、検査装置300は、T4端子の電圧に基づいてクロック信号CK4のデューティー比を高精度に算出し、さらに、クロック信号CK4のデューティー比とクロック信号CKOのデューティー比との関係に基づいて、クロック信号CKOのデューティー比を高精度に算出することができる。
【0133】
また、第3実施形態の発振器1によれば、回路装置2において、スイッチ回路70を構成するトランスミッションゲート71の容量がバッファー回路261に及ぼす悪影響が抵抗素子63によって低減されるので、クロック信号CKOのノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。
【0134】
また、第3実施形態の発振器1によれば、通常動作モードにおいて、ノードN1とVC端子及びT4端子とが電気的に切断されるので、T4端子から信号が入力されても、T4端子からVC端子を介してノードN1へと信号が伝搬することによるクロック信号CKOのノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。逆に、クロック信号CK4が、VC端子と電気的に接続される周波数制御回路34に伝搬して周波数制御回路34に悪影響を及ぼすことにより回路装置2が誤動作するおそれも低減される。また、第3実施形態の発振器1によれば、通常動作モードとデューティー比検査モードでT4端子及びVC端子が兼用されるので、クロック信号CK4を外部に出力するための専用端子が不要である。
【0135】
第3実施形態の発振器1は、上記の効果以外にも前述した第1実施形態の発振器1と同様の効果も奏する。
【0136】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0137】
上記の第3実施形態の発振器1では、通常動作モードにおいてクロック信号CKOの周波数を制御するための電圧が入力されるT4端子及びVC端子を、デューティー比検査モードにおいて、RCフィルター60の出力電圧を出力する端子として兼用している。これに対して、第3実施形態の発振器1を、第2実施形態の発振器1と同様、RCフィルター60の出力電圧を出力するための専用の外部端子を備えるように変形してもよい。
【0138】
また、上記の各実施形態では、回路装置2に対して、OUT端子からシリアルクロック信号が入力され、VC端子からシリアルデータ信号が入力されるが、シリアルクロック信号やシリアルデータ信号が入力される端子は、これら以外の端子であってもよい。
【0139】
また、上記の各実施形態では、出力バッファー24から出力されるクロック信号又は出力バッファー26から出力されるクロック信号が1つの外部端子であるT3端子から外部に出力されるが、これらのクロック信号が異なる外部端子から出力されてもよい。
【0140】
また、上記の各実施形態の発振器1は、VC-TCXO(Voltage Controlled Temperature Compensated Crystal Oscillator)等の温度補償機能及び周波数制御機能を有する発振器であるが、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)等の温度補償機能及び周波数制御機能を有しないシンプルな発振器、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)等の温度補償機能を有する発振器、VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator)等の周波数制御機能を有する発振器、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)等の温度制御機能を有する発振器などであってもよい。
【0141】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0142】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0143】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0144】
回路装置の一態様は、
発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号に基づく第1のクロック信号を出力する第1のバッファー回路と、
前記第1のクロック信号に基づく第2のクロック信号を出力する第2のバッファー回路と、
前記第1のバッファー回路が前記第1のクロック信号を出力する第1のノードと電気的に接続可能な第1の端子と、
前記第2のバッファー回路が前記第2のクロック信号を出力する第2のノードと電気的に接続される第2の端子と、を備え、
前記第1のクロック信号の立ち上がり時間は、前記第2のクロック信号の立ち上がり時間よりも短い。
【0145】
この回路装置では、第1のバッファー回路が第1のクロック信号を出力する第1のノードと第1の端子とが電気的に接続されることにより、第1のクロック信号に基づく信号が第1の端子から外部に出力される。この第1のクロック信号の立ち上がり時間は、第2のバッファー回路から第2の端子を介して外部に出力される第2のクロック信号の立ち上がり時間よりも短い。そのため、第1のクロック信号のデューティー比と直流バイアスとの相関は、第2のクロック信号のデューティー比と直流バイアスとの相関よりも線形に近い。したがって、外部装置は、例えば、第1の端子から外部に出力される第1のクロック信号に基づく信号から第1のクロック信号のデューティー比を高精度に算出し、さらに、第1のクロック信号のデューティー比と第2のクロック信号のデューティー比との関係に基づいて、第2のクロック信号のデューティー比を高精度に算出することができる。
【0146】
前記回路装置の一態様は、
前記第1のノードと前記第1の端子とを電気的に接続又切断するスイッチ回路を備えてもよい。
【0147】
この回路装置では、スイッチ回路によって第1のノードと第1の端子とが電気的に接続又は切断され、第1のノードと第1の端子とが電気的に接続された場合は第1のクロック信号に基づく信号を外部に出力する動作モードとなり、第1のノードと第1の端子とが電気的に切断された場合は通常動作モード等の動作モードとなる。したがって、この回路装置によれば、例えば、通常動作モードにおいて、第1のノードと第1の端子とが電気的に切断されるので、第1の端子から信号が入力されても、第1の端子から第1のノードへと信号が伝搬することによる第2のクロック信号のノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。逆に、第1のクロック信号に基づく信号が、第1の端子と電気的に接続される回路に伝搬して当該回路に悪影響を及ぼすことにより回路装置が誤動作するおそれも低減される。また、この回路装置によれば、第1のクロック信号に基づく信号を外部に出力する動作モードと通常動作モード等で第1の端子が兼用されるので、第1のクロック信号に基づく信号を外部に出力するための専用端子が不要である。
【0148】
前記回路装置の一態様は、
前記第1のノードと前記スイッチ回路との間に電気的に接続される抵抗素子を備えてもよい。
【0149】
この回路装置によれば、スイッチ回路の容量が第2のバッファー回路に及ぼす悪影響が抵抗素子によって低減されるので、第2のクロック信号のノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。
【0150】
前記回路装置の一態様は、
前記第1のノードと前記スイッチ回路との間に電気的に接続されるRCフィルターを備えてもよい。
【0151】
この回路装置では、スイッチ回路によって第1のノードと第1の端子とが電気的に接続された場合、第1端子の電圧は、RCフィルターによって第1のクロック信号が平滑化された直流電圧となる。したがって、外部装置は、例えば、第1の端子の電圧に基づいて第1のクロック信号のデューティー比を高精度に算出し、さらに、第1のクロック信号のデューティー比と第2のクロック信号のデューティー比との関係に基づいて、第2のクロック信号のデューティー比を高精度に算出することができる。
【0152】
また、この回路装置によれば、RCフィルターを構成する抵抗素子によって、スイッチ回路の容量が第2のバッファー回路に及ぼす悪影響が低減されるので、第2のクロック信号のノイズ成分の増加やデューティー比の劣化のおそれが低減される。
【0153】
また、この回路装置によれば、第1のクロック信号のデューティー比を算出するために、回路装置の外部においてRCフィルターを構成する抵抗素子や容量素子を設ける必要がないので、検査システムの構築に要するコストが低減される。
【0154】
前記回路装置の一態様は、
前記第1のノードと前記第1の端子との間に電気的に接続されるRCフィルターを備えてもよい。
【0155】
この回路装置では、第1のノードと第1の端子とがRCフィルターを介して電気的に接続されているので、第1端子の電圧は、RCフィルターによって第1のクロック信号が平滑化された直流電圧となる。したがって、外部装置は、例えば、第1の端子の電圧に基づいて第1のクロック信号のデューティー比を高精度に算出し、さらに、第1のクロック信号のデューティー比と第2のクロック信号のデューティー比との関係に基づいて、第2のクロック信号のデューティー比を高精度に算出することができる。
【0156】
また、この回路装置によれば、第1の端子が、第1のクロック信号に基づく信号を外部に出力するための専用端子として用いられるので、第1のクロック信号に基づく信号が、第1の端子とは異なる端子と電気的に接続される回路に伝搬して当該回路に悪影響を及ぼすことにより回路装置が誤動作するおそれが低減される。
【0157】
また、この回路装置によれば、第1のクロック信号のデューティー比を算出するために、回路装置の外部においてRCフィルターを構成する抵抗素子や容量素子を設ける必要がないので、検査システムの構築に要するコストが低減される。
【0158】
前記回路装置の一態様は、
前記発振回路の出力ノードと前記第1のバッファー回路との間に電気的に接続される第3のバッファー回路を備え、
前記第1のバッファー回路は、前記第3のバッファー回路よりも駆動能力が高くてもよい。
【0159】
この回路装置によれば、第1のバッファー回路は前記第3のバッファー回路よりも駆動能力が高いので、第1のクロック信号は、第3のバッファー回路から出力される信号よりも立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短い。そのため、第1のクロック信号は、第3のバッファー回路から出力される信号よりもデューティー比と直流バイアスとの関係の線形性が高い。したがって、外部装置は、第1の端子から外部に出力される第1のクロック信号に基づく信号から第1のクロック信号のデューティー比を高精度に算出し、さらに、第1のクロック信号のデューティー比と第2のクロック信号のデューティー比との関係に基づいて、第2のクロック信号のデューティー比を高精度に算出することができる。
【0160】
前記回路装置の一態様において、
前記第1のノードは、前記第2のバッファー回路の入力ノードであってもよい。
【0161】
この回路装置によれば、第1のノードが第2のバッファー回路の出力ノードに近いので、第1のクロック信号のデューティー比と第2のクロック信号のデューティー比との差が小さい。したがって、外部装置は、第1のクロック信号のデューティー比に基づいて、第2のクロック信号のデューティー比を精度良く算出することができる。
【0162】
発振器の一態様は、
前記回路装置の一態様と、
振動子と、を含む。
【符号の説明】
【0163】
1…発振器、2…回路装置、3…振動子、3a…励振電極、3b…励振電極、4…パッケージ、5…リッド、6…外部端子、7…収容室、10…発振回路、11…基準電圧回路、12…バイアス電流生成回路、13…容量回路、14…容量回路、15…可変容量回路、16…可変容量回路、17…可変容量回路、18…可変容量回路、20…出力回路、21…波形整形回路、22…分周回路、23…プリバッファー、24…出力バッファー、25…プリバッファー、26…出力バッファー、30…温度センサー、32…温度補償回路、34…周波数制御回路、36…ロジック回路、40…電源回路、50…記憶回路、51…レジスター、52…不揮発性メモリー、60…RCフィルター、61…抵抗素子、62…容量素子、63…抵抗素子、70…スイッチ回路、71…トランスミッションゲート、72…MOSトランジスター、80…スイッチ回路、81…トランスミッションゲート、90…スイッチ回路、101…バイポーラトランジスター、102…抵抗素子、103…容量素子、104…容量素子、111…抵抗素子、112…デューティー比調整回路、121…MOSトランジスター、122…MOSトランジスター、123…定電流源、131-1~131-k…容量素子、132-1~132-k…スイッチ素子、141-1~141-k…容量素子、142-1~142-k…スイッチ素子、151…容量素子、152-1~152-n…可変容量素子、153-1~153-n…容量素子、154…抵抗素子、161…容量素子、162-1~162-n…可変容量素子、163-1~163-n…容量素子、164…抵抗素子、171…容量素子、172-1~172-m…可変容量素子、173-1~173-m…容量素子、174…抵抗素子、181…容量素子、182-1~182-m…可変容量素子、183-1~183-m…容量素子、184…抵抗素子、211…バッファー回路、251…バッファー回路、252…バッファー回路、261…バッファー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15