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  • 特開-ハイブリッド駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172662
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ハイブリッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/445 20071001AFI20221110BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20221110BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20221110BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221110BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221110BHJP
【FI】
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/10
B60L15/20 S
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078713
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 広太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 典行
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB11
3D202BB52
3D202CC01
3D202EE10
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125EE08
(57)【要約】
【課題】装置構成に要する費用が嵩むことを抑制することができるハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド駆動装置10は、遊星歯車機構15を備える。遊星歯車機構15は、共線図上で順次に配列されるサン軸(S)22、キャリア軸(C)27及びリング軸(R)25を備える。ハイブリッド駆動装置10は、サン軸22に接続される内燃機関11及び第1回転電機13と、リング軸25に接続される第2回転電機14と、キャリア軸27に接続される駆動軸18とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共線図上で順次に配列される第1回転要素、第2回転要素及び第3回転要素を有する遊星歯車機構と、
前記第1回転要素に接続される内燃機関及び第1回転電機と、
前記第2回転要素に接続される駆動軸と、
前記第3回転要素に接続される第2回転電機と、
を備える
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記第1回転電機の回転数を制御することによって前記遊星歯車機構の動作状態を設定する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、遊星歯車機構の2つの入力要素に接続される2つの回転電機を備える駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-117409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来技術の駆動装置では、遊星歯車機構の機械損失を低減するために、遊星歯車機構の差動を抑制している。しかしながら、例えば、勾配路等での車両の静止状態で回転電機の適宜の相にのみに電流が集中して流れる同相通電が許容される場合、回転電機の通電を制御する素子等に対して所定以上の耐熱性を確保する必要が生じる。
【0005】
本発明は、装置構成に要する費用が嵩むことを抑制することが可能なハイブリッド駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るハイブリッド駆動装置(例えば、実施形態でのハイブリッド駆動装置10)は、共線図上で順次に配列される第1回転要素(例えば、実施形態でのサンギヤ21及びサン軸(S)22)、第2回転要素(例えば、実施形態でのキャリア26及びキャリア軸(C)27)及び第3回転要素(例えば、実施形態でのリングギヤ24及びリング軸(R)25)を有する遊星歯車機構(例えば、実施形態での遊星歯車機構15)と、前記第1回転要素に接続される内燃機関(例えば、実施形態での内燃機関(E)11)及び第1回転電機(例えば、実施形態での第1回転電機(MG1)13)と、前記第2回転要素に接続される駆動軸(例えば、実施形態での駆動軸(DS)18)と、前記第3回転要素に接続される第2回転電機(例えば、実施形態での第2回転電機(MG2)14)と、を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載のハイブリッド駆動装置は、前記第1回転電機の回転数を制御することによって前記遊星歯車機構の動作状態を設定する制御装置(例えば、実施形態での制御装置30)を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)によれば、第1回転電機とともに第1回転要素に接続される内燃機関を備えることによって、内燃機関の大きさの増大を抑制しながら、第1回転電機及び第2回転電機の回転数の組み合わせを適宜に設定することができる。例えば、各回転電機での同相通電を回避することによって、通電を制御する素子等に対して高い耐熱性の確保が必要になることを抑制し、装置構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0009】
上記(2)によれば、制御装置による制御が複雑になることを抑制しながら、遊星歯車機構の各回転要素の回転数を設定して、駆動軸の駆動力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態でのハイブリッド駆動装置を搭載する車両の構成図。
図2】本発明の実施形態でのハイブリッド駆動装置の制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
図3】本発明の実施形態でのハイブリッド駆動装置の遊星歯車機構の各回転要素の共線図(速度線図)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態でのハイブリッド駆動装置10を搭載する車両1の構成図である。
図1に示すように、ハイブリッド駆動装置10は、例えば、車両1に搭載される動力源である。
ハイブリッド駆動装置10は、例えば、内燃機関11と、ハウジング12の内部に収容される第1回転電機13、第2回転電機14、遊星歯車機構15、動力伝達機構16及びディファレンシャル機構17と、駆動軸18とを備える。
【0012】
内燃機関(E)11は、ハウジング12の外部に配置されている。内燃機関11のクランク軸11aは、後述するようにハウジング12の内部でダンパー19を介してサン軸22に接続されている。
ハウジング12は、後述するサン軸22を支持する複数の軸受20を備える。
【0013】
第1回転電機(MG1)13は、ハウジング12の内部に固定される第1ステータ13aと、後述するサン軸22に直結される第1ロータ13bとを備える。第1回転電機13の中心軸線は、サン軸22の中心軸線と同一である。
第2回転電機(MG2)14は、ハウジング12の内部に固定される第2ステータ14aと、後述するリング軸25に直結される第2ロータ14bとを備える。第2回転電機14の中心軸線は、リング軸25の中心軸線と同一である。
【0014】
遊星歯車機構15は、例えば、いわゆる2つの太陽歯車KとキャリアHとによって基本軸(入力軸、出力軸及び補助軸)が構成される2K-H型の遊星歯車機構である。
遊星歯車機構15は、サンギヤ21及びサン軸(S)22と、複数のプラネタリギヤ23と、リングギヤ24及びリング軸(R)25と、キャリア26及びキャリア軸(C)27とを備える。
【0015】
サンギヤ21は外歯車である。サンギヤ21は複数のプラネタリギヤ23に噛み合う。サンギヤ21の中心軸であるサン軸22は、第1回転電機13の第1ロータ13bに直結されている。サン軸22は、ハウジング12の内部に固定される複数の軸受20によって支持されるとともに、ダンパー19を介してクランク軸11aに連結されている。
複数のプラネタリギヤ23の各々は外歯車である。複数のプラネタリギヤ23はサンギヤ21及びリングギヤ24に噛み合う。
リングギヤ24は内歯車である。リングギヤ24は複数のプラネタリギヤ23に噛み合う。リングギヤ24の中心軸であるリング軸25は、第2回転電機14の第2ロータ14bに直結されている。
キャリア26は、複数のプラネタリギヤ23の各々の中心軸を支持する。キャリア26の中心軸であるキャリア軸27は、動力伝達機構16に直結されている。
【0016】
動力伝達機構16は、例えば、複数のギヤ、ベルト及びチェーン等の機械要素の少なくともいずれかを備える。動力伝達機構16は、例えば、キャリア軸27に直結されるギヤ16aと、ディファレンシャル機構17に直結されるギヤ16bとの間で動力を伝達する。
ディファレンシャル機構17は駆動軸(DS)18に連結されている。
【0017】
図2は、実施形態でのハイブリッド駆動装置10の制御装置30の機能構成の一例を示すブロック図である。
制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御装置30の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
図2に示すように、制御装置30は、例えば、回転数フィードバック部31と、回転数制御部32と、第1演算部33と、第2演算部34と、第3演算部35とを備える。
【0018】
回転数フィードバック部31は、第1回転電機13の回転数の目標値である目標回転数TNE(MG1)と、第1回転電機13の実際の回転数である実回転数NE(MG1)との差分を算出する。
回転数制御部32は、回転数フィードバック部31から出力される目標回転数TNE(MG1)と実回転数NE(MG1)との差分に基づく制御増幅によって、実回転数NE(MG1)を目標回転数TNE(MG1)に一致させるために必要となる第1回転電機13のトルクに対する指令値である第1指令トルクTC1(MG1)を算出する。
【0019】
第1演算部33は、図3及び下記数式(1)に基づいて、回転数制御部32から出力される第1指令トルクTC1(MG1)に、リングギヤ24とサンギヤ21とのギヤ比(つまり、リングギヤ24の歯数Zとサンギヤ21の歯数Zとの比(=Z/Z))αによる所定の第1係数((1+α)/2)を乗算する。
図3は、実施形態でのハイブリッド駆動装置10の遊星歯車機構15の各回転要素(第1回転電機13に直結されたサン軸22、第2回転電機14に直結されたリング軸25及び駆動軸18に連結されたキャリア軸27)の共線図(速度線図)の一例である。図3に示すように、共線図の縦軸は回転数であり、共線図の横軸はギヤ比αに応じたパラメータである。リング軸(R)25、駆動軸(DS)18及びサン軸(S)22の各回転数ω,ω,ωは、共線図の同一直線上で順次に配列されている。サン軸22のトルクτと、リング軸25のトルクτと、キャリア軸27のトルクτとは、ギヤ比αに応じた下記数式(1)を満たす。
【0020】
【数1】
【0021】
第2演算部34は、上記数式(1)に基づいて、駆動軸18のトルクの指令値に関連するキャリア軸27のトルクの指令値である駆動指令トルクTCAに対して第1演算部33から出力されるトルク値を減算する。
第3演算部35は、上記数式(1)に基づいて、第2演算部34から出力されるトルク値に、ギヤ比αによる所定の第2係数(2α/(1+α))を乗算することによって、第2回転電機14のトルクに対する指令値である第2指令トルクTC2(MG2)を算出する。
【0022】
制御装置30は、例えば車両1の運転者の要求に応じた駆動指令トルクTCAを設定した場合、各回転電機13,14の回転数、トルク及び損失(又は効率)の対応関係を示す特性データを参照して、第1回転電機13及び第2回転電機14の全体での損失を最小とするように目標回転数TNE(MG1)を設定する。
【0023】
制御装置30は、例えば車両1が勾配路で静止状態となる場合等のように、第1回転電機13及び第2回転電機14の駆動時にキャリア軸27の回転数ωがゼロになる場合、各回転電機13,14での同相通電を回避するように、第1回転電機13又は第2回転電機14の回転数を増大させることによって、遊星歯車機構15を差動動作させる。
【0024】
上述したように、実施形態のハイブリッド駆動装置10は、各回転電機13,14での同相通電を回避しながら、回転数の組み合わせを適宜に設定することができ、通電を制御する素子等に対して高い耐熱性の確保が必要になることを抑制し、装置構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
第1回転電機(MG1)13及び第2回転電機(MG2)14による動力合成で駆動軸(DS)18を駆動することができることに加えて、サンギヤ21及びサン軸(S)22に第1回転電機(MG1)13とともに接続される内燃機関(E)11を備えることによって、内燃機関11の大きさを車両1の平均走行エネルギー相当まで小さくすることができる。
また、内燃機関11の一部又は全ての気筒を休止させる気筒休止との組み合わせによってエネルギー効率を向上させることができる。
また、出力密度が大きなバッテリと組み合わせることができ、例えば、内燃機関11の動力等による第1回転電機13の発電で得られる電力を、バッテリを介した電圧変換によって第2回転電機14等に供給することができる。
【0025】
キャリア軸27に接続される駆動軸(DS)18の要求出力に対して、異なる特性を有する第1回転電機13及び第2回転電機14の各々を効率の良い動作点で動作させて得られる動力を合成して出力することができる。これにより、各回転電機13,14を広範囲の回転領域で高い効率で動作させることができる。
【0026】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0027】
上述した実施形態では、内燃機関11のクランク軸11aは、サン軸22に接続されるとしたが、これに限定されず、リング軸25に接続されてもよい。
【0028】
上述した実施形態では、内燃機関11と同一の回転要素に接続される回転電機、例えばサンギヤ21に接続される第1回転電機13は、例えばウォーターポンプ、オイルポンプ及び空調装置のコンプレッサ等の車両1に搭載される補機の一部を構成してもよい。
【0029】
上述した実施形態では、ハイブリッド駆動装置10は、内燃機関11のクランク軸11aの逆回転を回避するために、ワンウェイクラッチを備えてもよいし、内燃機関11と同一の回転要素に接続される回転電機、例えばサンギヤ21に接続される第1回転電機13からのトルクによって内燃機関11を規制してもよい。
【0030】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
1…車両、10…ハイブリッド駆動装置、11…内燃機関、12…ハウジング、13…第1回転電機、14…、第2回転電機、15…遊星歯車機構、16…動力伝達機構、17…ディファレンシャル機構、18…駆動軸(DS)、21…サンギヤ(第1回転要素)、22…サン軸(第1回転要素)、24…リングギヤ(第3回転要素)、25…リング軸(第3回転要素)、26…キャリア(第2回転要素)、27…キャリア軸(第2回転要素)、30…制御装置、31…回転数フィードバック部、32…回転数制御部、33…第1演算部、34…第2演算部、35…第3演算部。
図1
図2
図3