(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172899
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】施設空間内の環境保全方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20221110BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20221110BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
A61L9/015
A61L2/20 100
A61L101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079235
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】520470615
【氏名又は名称】有限会社サンスバル
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝之
(72)【発明者】
【氏名】金森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 輝之
(72)【発明者】
【氏名】水野 久美
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD07
4C058JJ14
4C058JJ28
4C058JJ29
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA10
4C180CA01
4C180EA17X
4C180GG06
4C180HH05
4C180KK02
4C180LL04
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】 オゾンによって具体性・客観性を持って、確実に室内空間等を除・減菌することができる新規な施設空間内の環境保全方法の開発を技術的課題とした。
【解決手段】 本発明は、外部と遮断された適宜の空間を処理対象空間Rとし、この空間内でオゾンガスGを充満させることにより、空間内の菌、ウィルスを除・減菌する方法であり、オゾンガスGを放出するオゾン発生器1や、これを拡散させる拡散装置2などの作業機材の配置を決定する機材配置割出作業工程と、機材配置作業工程と、処理作業工程と、オゾン回収作業工程とを含むことを特徴とする。またオゾン発生器1は、処理対象空間Rの隅部に設置され、ここから空間中央部に向けてオゾンガスGを噴霧するように設けられ、且つ拡散装置2たる送風機21は、このオゾン発生器1と対峙するように設置され、オゾン発生器1から噴霧されるオゾンガスGに対向して上向きに送風が行われることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と遮断された適宜の空間を処理対象空間とし、この空間内でオゾンガスを充満させることによって、空間内の菌、ウィルスを除・減菌する方法であって、
この方法は、機材配置割出作業工程と、機材配置作業工程と、処理作業工程と、オゾン回収作業工程とを含み、
まず前記機材配置割出作業工程において、処理対象空間の容積、空間内の設備状況を考慮して、空間内に設置するオゾン発生器、拡散装置、脱臭器を含む各作業機材の必要出力と、それに基づく必要台数、及びそれらの空間内における配置位置、処理出力を決定し、
次いで機材配置作業工程において、前記機材配置割出作業工程における決定に従い、各作業機材を処理対象空間内に設置し、
次いで処理作業工程において、無人環境とした処理対象空間に、前記機材配置割出作業工程における決定に従った処理出力をオゾン発生器、及び拡散装置において必要な時間出力させ、処理対象空間内の少なくともウィルスを除・減菌し、
その後、オゾン回収作業工程において、処理対象空間の無人環境を維持したまま、脱臭器を作動させてオゾンガスを回収するようにしたことを特徴とする、施設空間内の環境保全方法。
【請求項2】
前記処理対象空間内においてオゾン発生器から出力させるオゾンガスのオゾン濃度(ppm)と、当該オゾンガスの出力時間(分)との掛け算値であるCT値を307以上、より好ましくは620以上に設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の、施設空間内の環境保全方法。
【請求項3】
前記処理対象空間には、オゾン濃度検出装置を設け、前記処理作業工程とオゾン回収作業工程とにおいては、オゾン濃度のデータを採るとともに、これを記録媒体から可視表示できるようにすることを特徴とする請求項1または2記載の、施設空間内の環境保全方法。
【請求項4】
前記各作業工程における作業は、公的または私的な技術認定機関による研修を受けた作業者が、防護服を着用した状態で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の、施設空間内の環境保全方法。
【請求項5】
前記拡散装置には、送風機が適用されるものであり、
且つ、前記オゾン発生器は、処理対象空間の隅部に設置され、ここから空間中央部に向けてオゾンガスを噴霧するように設けられ、
且つまた、前記拡散装置たる送風機は、このオゾン発生器と対峙するように設置され、オゾン発生器から噴霧されるオゾンガスに対向して上向きに送風が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の、施設空間内の環境保全方法。
【請求項6】
前記脱臭器は、他の作業機材とは別に独立して設けられ、処理対象空間の中央部に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の、施設空間内の環境保全方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設、オフィス、公共施設、更には一般家庭等の施設空間内の環境保全方法に関するものであって、例えばCOVID-19、いわゆる新型コロナウィルス等の不活化を図る新規な環境保全方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウィルスの感染を防ぐために、人の出入があるオフィス、飲食店等では、遂時入念な除・減菌作業が行われている。この種の除・減菌作業は、多くは室内備品、例えば机、椅子等の人が直接触れる場所をアルコール溶液や、次亜塩素酸溶液等で清拭する手法やスプレー散布する手法が多く採られている。加えて更に室内空間全体を除菌環境とするためにオゾンにより除・減菌することも行われている(例えば特許文献1~6参照)。
しかしながら、一般的には、オゾン発生装置を密閉した室内に設置し、オゾン発生装置を一定時間稼働させるという方法にとどまっているのが実情である。このためオゾン発生による効果検証も充分にされておらず、室内空間の環境保全がどの程度成されたのか、等の確認も果たせていない現状にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-237565号公報
【特許文献2】実開平2-8441号公報
【特許文献3】特開2020-146471号公報
【特許文献4】特開2017-136191号公報
【特許文献5】特開平9-234239号公報
【特許文献6】特開2001-218825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、オゾンによって具体性・客観性を持って、確実に室内空間等を除・減菌できるようにした新規な施設空間内の環境保全方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の、施設空間内の環境保全方法は、
外部と遮断された適宜の空間を処理対象空間とし、この空間内でオゾンガスを充満させることによって、空間内の菌、ウィルスを除・減菌する方法であって、
この方法は、機材配置割出作業工程と、機材配置作業工程と、処理作業工程と、オゾン回収作業工程とを含み、
まず前記機材配置割出作業工程において、処理対象空間の容積、空間内の設備状況を考慮して、空間内に設置するオゾン発生器、拡散装置、脱臭器を含む各作業機材の必要出力と、それに基づく必要台数、及びそれらの空間内における配置位置、処理出力を決定し、
次いで機材配置作業工程において、前記機材配置割出作業工程における決定に従い、各作業機材を処理対象空間内に設置し、
次いで処理作業工程において、無人環境とした処理対象空間に、前記機材配置割出作業工程における決定に従った処理出力をオゾン発生器、及び拡散装置において必要な時間出力させ、処理対象空間内の少なくともウィルスを除・減菌し、
その後、オゾン回収作業工程において、処理対象空間の無人環境を維持したまま、脱臭器を作動させてオゾンガスを回収するようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の、施設空間内の環境保全方法は、前記請求項1記載の要件に加え、 前記処理対象空間内においてオゾン発生器から出力させるオゾンガスのオゾン濃度(ppm)と、当該オゾンガスの出力時間(分)との掛け算値であるCT値を307以上、より好ましくは620以上に設定するようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載の、施設空間内の環境保全方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記処理対象空間には、オゾン濃度検出装置を設け、前記処理作業工程とオゾン回収作業工程とにおいては、オゾン濃度のデータを採るとともに、これを記録媒体から可視表示できるようにすることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の、施設空間内の環境保全方法は、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記各作業工程における作業は、公的または私的な技術認定機関による研修を受けた作業者が、防護服を着用した状態で行うことを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の、施設空間内の環境保全方法は、前記請求項1から4のいずれか1項記載の要件に加え、
前記拡散装置には、送風機が適用されるものであり、
且つ、前記オゾン発生器は、処理対象空間の隅部に設置され、ここから空間中央部に向けてオゾンガスを噴霧するように設けられ、
且つまた、前記拡散装置たる送風機は、このオゾン発生器と対峙するように設置され、オゾン発生器から噴霧されるオゾンガスに対向して上向きに送風が行われることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載の、施設空間内の環境保全方法は、前記請求項1から5のいずれか1項記載の要件に加え、
前記脱臭器は、他の作業機材とは別に独立して設けられ、処理対象空間の中央部に配置されることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、処理対象空間内でオゾンガスを噴霧・充満させて、処理対象空間内のウィルスを除・減菌させるため、効果的に除・減菌作業が行えるとともに、処理対象空間内の臭いも元から分解することができる。すなわち、オゾンガスは、物質を酸化させる力が極めて強いため、この強い酸化力を利用して、ウィルスの除・減菌を行うとともに、臭いも充分に分解することができる。なお、本出願人によるオゾンガスを利用した除・減菌方法(本願発明)は、第三者機関、具体的には公立大学法人奈良県立医科大学医学部(微生物感染症学講座)及び一般社団法人MBTコンソーシアムによって、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に対する不活化効果が検証されたものであり、客観的な有効性を有するため、依頼者にも除・滅菌効果を充分に信頼してもらうことができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、CT値が307以上、より好ましくは620以上になるようにオゾン濃度(ppm)と、オゾンガスの出力時間であるオゾン発生器の運転時間(分)とを設定するため、新型コロナウィルスを99%~99.9%除菌することができ、比較的短時間で処理対象空間内のウィルスを不活化することができる。具体的には、オフィス等であれば、就業後等の無人環境で、オゾン噴霧とその濃度維持で約2時間、その後の脱臭(濃度低減)で約4時間の計6時間で、実質的な作業を完結させることができる。つまり翌日の就業開始時刻までに除・滅菌作業を終了させることができ、依頼者の本業(業務)に支障をきたさないようにすることができる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、実質的な作業工程、すなわち処理対象空間内にオゾンガスを充満させる処理作業工程と、この工程後にオゾン濃度を低下させるオゾン回収作業工程とにおいて、オゾン濃度検出装置によってオゾン濃度のデータを測定し、またこのデータを可視表示できるようにするため、実測データに裏付けられた確実な除・滅菌作業が行え、作業の信頼性をより確実なものとする。また、依頼者及び作業者ともに除・滅菌効果を、より一層客観的に検証・確認することができ、例えばウィルスの不活化効果を、より確かなものとして捉えることができる。
すなわち、オゾンガスは、目に見えないため、例えば所定濃度・所定時間、噴霧処理しても、依頼者にとって除・滅菌効果が、実感としてまた安心感として今一つ感じられない部分がある。この点、本発明では、処理作業中のオゾン濃度を計測し、可視表示できるようにするため、例えば実作業後でも、計測した濃度データを理論値と比較検証することで、より詳細には計測した濃度データが理論上の数値とほぼ同じであり、基準値を満たしてことを確認することで、除・滅菌作業が確実に且つ正確に行われたことを客観的に検証することができる。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、除・滅菌を行う際の各作業工程は、研修を受けた作業者が、防護服を着用した状態で行うため、作業者によるウィルスの持ち込みや、持ち出しを厳格に防止することができ、作業者の感染リスクを最小限に抑えることができる。また、このように安全管理が徹底されているため、より一層、高品質な除・滅菌作業であることが依頼者においても明確に認識することができる。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、オゾン発生器と拡散装置(送風機)とが、対峙して対向状態に設置されるため、処理対象空間内にオゾンガスを、より均一に充満させることができ、処理対象空間内をムラなく除菌することができる。すなわち、従来は、オゾン発生器の前方(オゾンガス噴霧口の前方側)に送風機を配置することが多かったが、この場合には、例えばオゾン発生器の後方、より詳細には、オゾン発生器の後方上部のコーナ部にオゾンガスが行き渡りづらく、処理対象空間の隅々までオゾンガスを充満させるのに多大な時間を費やしていたが、本発明では、オゾン発生器と拡散装置(送風機)とを対峙して配置するため、オゾン発生器の後方上部のコーナ部にもオゾンガスを確実に、且つ短時間で行き渡らせることができ、処理対象空間の隅々に渡って、ムラのない均一な除・滅菌処理が行える。
【0016】
また請求項6記載の発明によれば、オゾン回収作業工程において処理対象空間内に残存するオゾンガスを短い時間で回収することができ、処理対象空間内のオゾンガス濃度を短時間で低濃度に下げることができる。このため除・滅菌処理中、閉鎖状態に維持され、処理対象空間の使用できない状態を、より一層、短時間に抑えることができる。具体的には、例えばオフィスや店舗など、日常的な業務を行う空間を処理対象空間とした場合、就業後から翌日の就業開始までの非稼働時間帯を利用して、除・滅菌作業を完結させることができ、業務や営業にほとんど支障をきたすことなく、除・滅菌作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の、施設空間内の環境保全方法に適用する各作業機材の好ましい配置例を示す平面図である。
【
図2】同上、実際に処理対象空間内に載置または具備されている設備等を考慮した場合における、各作業機材の配置例を示す平面図である。
【
図3】同上、オゾン発生器と拡散装置たる送風機との配置形態を示す側面図である。
【
図4】処理対象空間内にオゾンガスを充満させて除・滅菌作業を行う場合において、オゾン発生器及び送風機の従来の配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の、施設空間内の環境保全方法(以下、この方法を実現するシステムを「環境保全システムS」と称する)は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0019】
本発明に係る環境保全システムSは、一例として
図1~
図3に示すように、オフィス等、外部と遮断された空間つまり閉鎖空間を処理対象空間Rとし、この処理対象空間R内でオゾンガスGを噴霧・充満させて、空間内のエアの他、壁面・床面・空間内に設置された種々の設備E、例えばロッカーや机などを含む環境を除・滅菌するシステムであって、処理対象空間R内の隅々までオゾンガスGを、短時間で効率的に行き渡らせることが特徴の一つである。
なお、本発明によるオゾンガスを利用した除・減菌方法は、第三者機関、具体的には公立大学法人奈良県立医科大学医学部(微生物感染症学講座)及び一般社団法人MBTコンソーシアムによって、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に対する不活化効果が検証されている。従って、本環境保全システムSは、除・滅菌効果において客観的な有効性を充分に有するものであり、除・滅菌作業を依頼した依頼者にとっても、除・滅菌作業及びその効果が充分に信頼できるものである。
【0020】
逆に言えば、オゾンガス自体は、人間の目に見えないため、例えば作業実施者がオゾンガスを規定濃度で所定時間、噴霧処理したといっても、依頼者にはその作業や効果が実感として伝わりにくく、依頼者の安心感・充実感につながりにくいのが実情である。その点、本発明では、上述したように、第三者機関で除・滅菌効果が実証・検証できているため、依頼者の大きな安心感につながるものである。また、依頼者が、除・滅菌作業を行う店舗の経営者である場合には、このような検証済みの除・滅菌作業は、ウィルス感染防止対策を積極的に実施する店舗として、また清潔な店内として社会的にも大いにアピールすることができ、これが集客効果にも貢献するものである。換言すれば、このような検証済みの除・滅菌作業は、来店するお客様にとっても、安心して店舗を利用することができるという効果を奏する。
【0021】
そして、本環境保全システムSは、機材配置割出作業工程と、機材配置作業工程と、処理作業工程と、オゾン回収作業工程とを含むものであり、以下、各作業工程について説明する。
まず機材配置割出作業工程について説明する。
機材配置割出作業工程は、処理対象空間Rの容積や、空間内に設けられている設備状況などを考慮して、作業中、空間内に設置するオゾン発生器1、拡散装置2、脱臭器3を含む各作業機材の必要出力と、それに基づく必要台数、及びそれらの空間内における配置位置、処理出力を決定する工程である。なお、この機材配置割出作業工程では、処理対象空間Rの広さや設備Eの大きさを実際に計測する場合もあり得る。
以下、各作業機材の好ましい配置態様について
図1・
図3に基づき説明する。
【0022】
まずオゾン発生器1から説明する。
オゾン発生器1は、密閉状態の処理対象空間R内においてオゾンガスGを噴霧することにより、処理対象空間R内でオゾンガスGを充満させるものであり、本実施例では、一例として
図1に示すように、処理対象空間Rの隅部に一基ずつ、計四基配設される。
これらオゾン発生器1は、例えば
図1・
図3に示すように、四基ともオゾンガス噴霧口11を空間中央部に向けて載置され、処理対象空間Rの中央部に向かってオゾンガスGを噴霧するように設置される。ここで上記
図1に示す処理対象空間Rは、平面視矩形状であるため、オゾン発生器1も四隅に設けたが、平面視矩形状でない処理対象空間Rでは、必ずしも全ての隅部にオゾン発生器1を設けるとは限らない。もちろん、オゾン発生器1の配置場所や数は、処理対象空間Rの大きさや容積などによっても適宜変更し得るものである。
【0023】
また、本実施例では、例えば上記
図3に示すように、処理対象空間R内に設けられているカウンター等の設備Eの上にオゾン発生器1を載置しているが、これはオゾン発生器1~天井面までの距離と、オゾン発生器1~床面までの距離との差を極力小さくすることで、処理対象空間R内にオゾンガスGを、より均一に且つ短時間で充満させるためである。従って、カウンターなどの設備Eが、もともと処理対象空間Rになければ、適宜の高さを有する載置台などを用意し、この載置台の上にオゾン発生器1を設置することが好ましい。
なお、各図面においてオゾンガスGを墨付き矢印で示しており、後述する拡散装置2(送風機21)による送風エアAを通常の矢印(白抜きの矢印)で示している。また、オゾン発生器1を周回するように半長円状で示された破線矢印(ハッチング付き)は、オゾン発生器1から噴霧されたオゾンガスGが時間の経過に伴い、オゾン発生器1の後方側に回り込み、上部隅部まで行き渡る様子を示したものである(
図3参照)。
【0024】
次に、拡散装置2と、このものの好ましい配置について説明する。
拡散装置2は、オゾン発生器1から噴霧されたオゾンガスGを、処理対象空間R内の隅々にまで均一に且つ短時間で拡散させるものであり、サーキュレータや扇風機などの送風機21が適用される。ここで本実施例では、送風機21として、一例として上記
図1に示すように、前記オゾン発生器1に対峙して設けられるオゾン対向送風機21A(ここでは四基)と、処理対象空間Rの中央部に設けられる空間中央部送風機21B(ここでは一基)と、処理対象空間Rの長手方向両端縁付近に設けられる空間縁部送風機21C(ここでは二基一対)とを具えて成る。なお、空間縁部送風機21Cとしては、送風出力の大きい業務用の送風機の適用が可能である。
【0025】
そして、上記三種の送風機21のうちオゾン対向送風機21Aは、オゾン発生器1から噴霧されたオゾンガスGを、オゾン発生器1の後方側(処理対象空間Rの隅部)に追いやるように設けられる。具体的には、一例として上記
図3に示すように、オゾン発生器1のオゾンガス噴霧口11に向かって(対して)、やや上向きに送風するように設けられる。もちろん、オゾン対向送風機21Aの送風方向は、いわゆる首振り機能によって、適宜変更できるように設定されることが好ましく、これによりオゾン発生器1から噴霧されたオゾンガスGを効率的に処理対象空間R内における全ての部位に行き渡らせることができる。なお、この首振り機能によって風向が変えられた送風エアAを、オゾン対向送風機21Aからオゾン発生器1に向かわないように描かれた破線矢印で示している。また、空間中央部送風機21B及び空間縁部送風機21Cから放出されるように描かれた破線矢印も、同様に風向が変えられた送風エアAを示している。もちろん、処理対象空間Rの中央部に設置される空間中央部送風機21Bについては、360度に渡って風向切り替えが行える首振り機能を有することが好ましく、これが図面上、空間中央部送風機21Bから四方に放射状に放出されるように描かれた送風エアAの意味である。
【0026】
このように本実施例では送風機21として三種の送風機を設けており、これは処理対象空間Rの隅々まで短時間で且つ均一にオゾンガスGを行き渡らせるためである。ただし、処理対象空間Rの大きさや容積等の処理環境によっては、例えば低出力の空間縁部送風機21Cを適用することも可能であるし、あるいは二基の空間縁部送風機21Cのうち、いずれか一方または双方を省略することも可能である。
【0027】
因みに、従来のオゾン拡散形態、すなわち送風機21の配置形態は、一例として
図4に示すように、例えば処理対象空間Rの四隅にオゾン発生器1′を設置したとしても、このオゾン発生器1′の前方側(オゾンガス噴霧口11′の前方側)に送風機21′を配置することが多かったが、この場合、例えばオゾン発生器1′の後方、より詳細には、オゾン発生器1′の後方側の天井や壁面等の隅部上側にオゾンガスGが行き渡りづらく、処理対象空間Rの隅々までオゾンガスGを充満させるのに多大な時間を費やしていた。この点、本発明では、上述したように拡散装置2としてのオゾン対向送風機21Aを、オゾン発生器1に対峙するように配置するため、オゾン発生器1の後方隅部上側にもオゾンガスGを短時間で且つ確実に行き渡らせることができ、処理対象空間R内の隅々に渡って、ムラのない均一な除・滅菌処理を行うことができる(
図3参照)。
【0028】
次に、脱臭器3と、このものの好ましい配置について説明する。
実質的な除・滅菌処理は、処理対象空間Rの無人環境を維持したまま、この空間内で所定のオゾン濃度を適宜の時間、維持することで行われるものであり、脱臭器3は、この処理対象空間R内に充満させたオゾンガスGを回収し、少なくとも作業者が立ち入ることができるレベルにまで、オゾン濃度を低下させる作用を担うものである。
ここで本実施例における脱臭器3は、一例として上記
図1に示すように、空間中央部送風機21Bと同様に、処理対象空間Rの中央部に一基設けられる。
なお、脱臭器3は、他の作業機材、例えばオゾン発生器1等とは別個に設けられるものであり、これにより処理対象空間R内に残存する高濃度のオゾンガスGを短時間で回収することができる。従って、除・滅菌処理中であるために実使用が行えない処理対象空間Rの状態を、より一層、短い時間に抑えることができるものである。具体的には、例えばオフィスや店舗など、日常的な業務を行う空間を処理対象空間Rとした場合には、就業後から翌日の就業開始までの非稼働時間帯を利用して、機材配置から回収作業までを含めた一連の除・滅菌作業を完結させることができ、本来の業務や営業にほとんど支障をきたすことがないものである。
【0029】
また、処理対象空間Rには、図示を省略するオゾン濃度検出装置を設けることが好ましく、これはオゾンガスGの噴霧作業~回収作業完了までにおいて、処理対象空間R内のオゾン濃度を計測するものである。なお、計測したオゾン濃度のデータは、例えばパソコン等の適宜の記録媒体に記憶させておき、オゾン回収作業後に確認するものである(一種の可視表示)。これにより、実測されたオゾン濃度データに裏付けられた確実な除・滅菌作業を行ったことが確かめられ、除・滅菌作業の信頼性をより向上させるものである。すなわち、計測した実際の濃度データが、理論上の数値とほぼ同じであることを確認し、オゾン濃度のデータが実測上も基準値を満たすことを確かめることにより、除・滅菌作業が確実に且つ正確に行われたことを客観的に検証することができる。またこれにより依頼者も、本発明に係る除・滅菌作業に、より一層の信頼感や安心感を抱くことができる。
なお、計測した濃度データは、除・滅菌処理を繰り返す都度、蓄積して行くことができ、これにより様々な処理環境に応じた処理条件を構築して行くことができるし、除・滅菌処理作業自体の精度(理論上の精度)を高めて行くこともできる。
【0030】
またオゾン濃度計によって計測した実測データは、オゾンガスGの噴霧中~回収中において、例えば作業者が別室でモニター監視することもできるが、実際には噴霧~回収まで6時間程度掛かるため、作業者が継続して監視し続けることは難しい。そのため上述したように、実際には、計測したオゾン濃度を、継続してパソコン等の記録媒体に記憶しておき、これを実質的な処理作業後に作業者が確認し、理論値と比較することが現実的と考えられる。なお、特許請求の範囲に記載した「可視表示」とは、計測したオゾン濃度をオンタイムで監視することはもちろん、上記のように実質的な処理作業後にあとから目視によって確認する場合も包含するものである。
因みに、処理対象空間Rに設けるオゾン濃度計は、空間内の複数箇所に設け、種々の部位のオゾン濃度を計測することが好ましい。
【0031】
以上述べた配置が、各種の作業機材の好ましい配置形態であるが、実際には、上記
図1のような配置はほとんど採れない。それは、一例として
図2に示すように、オフィス等の場合には、例えば壁に沿ってロッカーや本棚(整理棚)あるいはカウンター等の設備Eが据えられていることが多く、そのため部屋の隅部(四隅)にオゾン発生器1を設置できることがほとんどないためである。また、例えば上記
図2に併せ示すように、壁面に開き戸タイプの開閉扉が設けられていることも多く、その場合には、その開閉スペースに各種の作業機材を設置することはできない。
従って、実際には一例として
図2に示すように、ロッカーや本棚、開き戸式の開閉扉等の設備Eを避けた位置にオゾン発生器1を、ずらして配置することとなる。また、このズラシ量に伴い、空間中央部送風機21Bや脱臭器3の配置も幾らかずらして配置するのが現実的である。
ただし、オゾン発生器1は、処理対象空間Rの隅部、より詳細にはロッカーと壁面で囲われるように形成された入り隅部に設置され、ここから空間中央部に向けてオゾンガスGを噴霧するように設けられる。また、拡散装置2たるオゾン対向送風機21Aは、このオゾン発生器1と対峙するように設置され、オゾン発生器1のオゾンガス噴霧口11に向かって、やや上向きに送風が行われるものである。
【0032】
次に、機材配置作業工程について説明する。
機材配置作業工程は、前記機材配置割出作業工程での決定に従い、各作業機材を処理対象空間R内に設置する工程である。
ここで、本機材配置作業工程をはじめ、少なくとも作業者が実際に処理対象空間Rに立ち入って作業する際には、公的または私的な技術認定機関において研修を受けた作業者が、防護服を着用した状態で作業することが好ましい。これにより作業者によるウィルスの持ち込みや、持ち出しを厳格に防止することができ、作業者の感染リスクを最小限に抑えることができる。また、このように安全管理が徹底されているため、依頼者も、より一層、高品質な除・滅菌作業であることが明確に認識できるものである。
【0033】
次に、処理作業工程について説明する。
処理作業工程は、無人環境とした処理対象空間Rにおいて、前記機材配置割出作業工程における決定に従った処理出力をオゾン発生器1、及び拡散装置2(送風機21)において必要な時間出力させ、処理対象空間R内の少なくともウィルスを除・減菌する工程である。
ここで処理対象空間R内において新型コロナウィルスを不活化するための好ましい処理条件、具体的にはオゾン発生器1から出力させるオゾンガスGのオゾン濃度(ppm)と、当該オゾンガスGの出力時間つまりオゾン発生器1の運転時間(分)とについて説明すると、前記オゾン濃度(ppm)と前記運転時間(分)との掛け算値(積)であるCT値を307以上、より好ましくは620以上に設定するものである(式(A)参照)。
・オゾン濃度(ppm)×運転時間(分)=CT値 …(A)
【0034】
まずオゾン濃度の計算式は、式(B)のように示される。
・オゾン発生量÷処理対象空間の容積(m3 )÷2.14÷3=オゾン濃度(ppm)
…(B)
ここで式(B)中の「オゾン発生量」は、単位時間当たりの発生量(mg/h)である。
次に実験結果に基づいた好ましいCT値、厳密には好ましい運転時間(オゾン発生器1の運転時間)を式(C)によって算出する。
・CT値÷オゾン濃度(ppm)=運転時間(分) …(C)
【0035】
〔例1〕
オゾン発生量800mg/hのオゾン発生器1で、新型コロナウィルスを99%除菌する場合のCT値は307であり、この数値から運転時間を算出する。
ここで処理対象空間Rの広さ50m2 ・高さ2.5mと仮定すると、処理対象空間Rの容積は125m3 となる。
このためオゾン濃度(ppm)は、式(D)のように算出される。
・800mg/h÷125÷2.14÷3=0.996ppm …(D)
従って、運転時間は式(E)のように算出される。
・CT307÷0.996ppm=308分 (約5h) …(E)
ここで、上記説明では新型コロナウィルスを99%除菌する場合のCT値を307と記載したが、これは例えば処理対象空間Rの容積等の処理環境に応じて幾らか変化し得るものである。
【0036】
〔例2〕
オゾン発生量800mg/hのオゾン発生器1で、新型コロナウィルスを99.9%除菌する場合のCT値は620であり、この数値から運転時間を算出する。
ここで処理対象空間Rの容積は、上記と同様に125m3 と仮定する。このためオゾン濃度(ppm)も、上記と同様に0.996ppmとなる。
従って、運転時間は式(F)のように算出される。
・CT620÷0.996ppm=622分 (約10.5h) …(F)
ここで、上記説明では新型コロナウィルスを99.9%除菌する場合のCT値を620と記載したが、これは例えば処理対象空間Rの容積等の処理環境に応じて幾らか変化し得るものである。
【0037】
この結果から、オゾン発生量800mg/hのオゾン発生器1を約5時間稼働させれば新型コロナウィルスを99%不活化でき、当該オゾン発生器1を約10.5時間稼働させれば新型コロナウィルスを99.9%不活化できると算出された。
また、この結果から上記容積の処理対象空間R(オフィス)であれば、就業後の無人環境のタイミングで実質的な除・滅菌処理を開始し、翌朝就業前にオゾンガスGを回収すれば、例えば21時開始で翌朝8時に回収すれば、新型コロナウィルスを不活化でき、オフィス業務に支障をきたすことなく、除・滅菌作業が行えることが分かる。
なお、処理作業工程中は、上述したようにオゾン濃度計によって処理対象空間R内のオゾン濃度を計測するものであり、これは処理対象空間R内の複数箇所で計測することが好ましい。
【0038】
次に、オゾン回収作業工程について説明する。
オゾン回収作業工程は、処理対象空間Rの無人環境を維持したまま、脱臭器3を作動させて空間内に充満・残存するオゾンガスGを回収し、空間内オゾン濃度を低下させる工程である。ここで、本オゾン回収作業工程は、少なくとも作業員が処理対象空間R内に立ち入ることができる程度にまで、オゾン濃度を低下させるものである。
また、本実施例では脱臭器3のみを設け、オゾン回収作業工程を実施するように説明したが、このような脱臭器3に加え、空気清浄器を併設することも可能である。
なお、オゾンガスGによる除・滅菌作業は、アルコールで吹き上げた後に行うと、より一層、効果的である。
【0039】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、除・滅菌作業の処理対象となる空間としてオフィス等、出入口たる扉を閉鎖することにより外部空間と遮断できる閉鎖可能空間を処理対象空間Rとしたが、本発明は必ずしもこのような扉を有した閉鎖可能空間に限定されるものでではない。すなわち、例えば階段やピロティなど、扉がないために、通常は閉鎖し得ない空間を処理対象空間Rとすることもできる。ただし、その場合には、処理対象空間Rをシートやカーテンあるいはボード等で覆うようにして、つまり外部と遮断された(区画された)閉鎖空間を形成するようにして、処理対象空間R内にオゾンガスGを所定時間・所定濃度で維持し得る閉鎖性を確保する必要がある。