(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173799
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】太陽電池及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0747 20120101AFI20221115BHJP
【FI】
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079726
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 晋教
(72)【発明者】
【氏名】石丸 浩
(72)【発明者】
【氏名】村田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】國井 稔枝
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA05
5F151AA16
5F151CA02
5F151CA03
5F151CA04
5F151CA07
5F151CA15
5F151CA18
5F151CA34
5F151CA37
5F151DA03
5F151DA07
5F151DA11
5F151GA04
(57)【要約】
【課題】出力特性に優れた太陽電池を提供する。
【解決手段】実施形態の一例である太陽電池は、シリコンウエハと、シリコンウエハの第1主面上に形成された第1パッシベーション層と、第1導電型のドーパントを含む第1非晶質シリコン層と、シリコンウエハの第2主面上に形成された第2パッシベーション層と、第2導電型のドーパントを含む第2非晶質シリコン層とを備える。さらに、第1非晶質シリコン層よりも第1導電型のドーパント濃度が低い第3非晶質シリコン層、及び第2非晶質シリコン層よりも第2導電型のドーパント濃度が低い第4非晶質シリコン層の少なくとも一方を備える。第3非晶質シリコン層は、第1パッシベーション層と第1非晶質シリコン層との間に形成され、第4非晶質シリコン層は、第2パッシベーション層と第2非晶質シリコン層との間に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のシリコンウエハと、
前記シリコンウエハの第1主面上に形成された第1パッシベーション層と、
前記第1パッシベーション層上に形成され、前記第1導電型のドーパントを含む第1非晶質シリコン層と、
前記シリコンウエハの第2主面上に形成された第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層上に形成され、第2導電型のドーパントを含む第2非晶質シリコン層と、
を備える太陽電池であって、
前記第1パッシベーション層と前記第1非晶質シリコン層との間に形成され、前記第1パッシベーション層よりも前記第1導電型のドーパント濃度が高く、前記第1非晶質シリコン層よりも前記第1導電型のドーパント濃度が低い第3非晶質シリコン層、及び、
前記第2パッシベーション層と前記第2非晶質シリコン層との間に形成され、前記第2パッシベーション層よりも前記第2導電型のドーパント濃度が高く、前記第2非晶質シリコン層よりも前記第2導電型のドーパント濃度が低い第4非晶質シリコン層の少なくとも一方をさらに備える、太陽電池。
【請求項2】
前記第1非晶質シリコン層における前記第1導電型のドーパント濃度と、前記第3非晶質シリコン層における前記第1導電型のドーパント濃度の差は、1×1020~1×1022atoms/cm3である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第2非晶質シリコン層における前記第2導電型のドーパント濃度と、前記第4非晶質シリコン層における前記第2導電型のドーパント濃度の差は、1×1020~1×1022atoms/cm3である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1パッシベーション層は、前記第1導電型のドーパントを含み、
前記第1パッシベーション層における前記第1導電型のドーパントの濃度は、前記第3非晶質シリコン層における前記第1導電型のドーパントの濃度より低く、前記シリコンウエハとの界面に近づくほど高くなる濃度匂配を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第2パッシベーション層は、前記第2導電型のドーパントを含み、
前記第2パッシベーション層における前記第2導電型のドーパントの濃度は、前記第4非晶質シリコン層における前記第2導電型のドーパントの濃度より低く、前記シリコンウエハとの界面に近づくほど高くなる濃度匂配を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第3非晶質シリコン層及び前記第4非晶質シリコン層を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1非晶質シリコン層における前記第1導電型のドーパント濃度と、前記第3非晶質シリコン層における前記第1導電型のドーパント濃度との差ΔC1は、前記第2非晶質シリコン層における前記第2導電型のドーパント濃度と、前記第4非晶質シリコン層における前記第2導電型のドーパント濃度との差ΔC2よりも大きい、請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記シリコンウエハは、結晶性シリコンウエハであって、
前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも一方の面側において、前記シリコンウエハの厚み方向中央側から前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも一方の面に向かって、単位面積当たりの前記第1導電型のドーパント濃度が高くなる濃度匂配を有する高ドープ領域を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記高ドープ領域におけるドーパント濃度は、1×1017atoms/cm3以上であり、ドーパント濃度の平均値は1×1018~2×1019atoms/cm3である、請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の太陽電池を備える、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池及び当該太陽電池を備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハの一方の面にパッシベーション層を介してn型非晶質シリコン層が形成され、シリコンウエハの他方の面にパッシベーション層を介してp型非晶質シリコン層が形成されたシリコンヘテロ接合型の太陽電池が知られている。一般的に、各非晶質シリコン層上には、透明導電層を介して集電極がそれぞれ形成されている。また、シリコンウエハ上に、i型非晶質シリコン層等のパッシベーション層を介在させることなく非晶質シリコン層が直接形成された太陽電池も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された太陽電池は、シリコンウエハの一方の面に直接形成されたn型非晶質シリコン層と、シリコンウエハの他方の面にi型非晶質シリコン層を介して形成されたp型非晶質シリコン層とを有する。そして、このn型非晶質シリコン層は、シリコンウエハ側に形成されたライトドープn型非晶質シリコン層と、その上に形成されたハイドープn型非晶質シリコン層とによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シリコンヘテロ接合型の太陽電池において、シリコンウエハの表面には、パッシベーション性を担保するためにi型非晶質シリコン層を成膜することが一般的であるが、i型非晶質シリコン層は導電性が低く抵抗増加の一因となっていた。この抵抗増加を抑制するための手段として、i型非晶質シリコン層を薄く形成することや、部分的にエピタキシャル成長させることが考えられるが、これらの方法では、パッシベーション性とのトレードオフがあり、出力特性が低下するという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、良好なパッシベーション性を確保しつつ抵抗増加を抑制して、出力特性に優れた太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る太陽電池は、第1導電型のシリコンウエハと、シリコンウエハの第1主面上に形成された第1パッシベーション層と、第1パッシベーション層上に形成され、第1導電型のドーパントを含む第1非晶質シリコン層と、シリコンウエハの第2主面上に形成された第2パッシベーション層と、第2パッシベーション層上に形成され、第2導電型のドーパントを含む第2非晶質シリコン層とを備える太陽電池であって、第1パッシベーション層と第1非晶質シリコン層との間に形成され、第1パッシベーション層よりも第1導電型のドーパント濃度が高く、第1非晶質シリコン層よりも第1導電型のドーパント濃度が低い第3非晶質シリコン層、及び、第2パッシベーション層と第2非晶質シリコン層との間に形成され、第2パッシベーション層よりも第2導電型のドーパント濃度が高く、第2非晶質シリコン層よりも第2導電型のドーパント濃度が低い第4非晶質シリコン層の少なくとも一方をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
本開示に係る太陽電池モジュールは、上記太陽電池を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る太陽電池は、出力特性に優れる。本開示に係る太陽電池によれば、シリコンウエハの表面における良好なパッシベーション性を確保しつつ抵抗増加を抑制することができるので、出力特性が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例である太陽電池の層構造を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である太陽電池の断面図である。
【
図3】実施形態の一例である太陽電池の厚み方向におけるn型ドーパントの濃度プロファイルを示す図である。
【
図4】実施形態の一例である太陽電池の厚み方向におけるp型ドーパントの濃度プロファイルを示す図である。
【
図5】第3非晶質シリコン層におけるn型ドーパントのドープ量と太陽電池の出力との関係を示す図である。
【
図6】第4非晶質シリコン層におけるp型ドーパントのドープ量と太陽電池の出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示に係る太陽電池は以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態の説明で参照する図面は模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例を適宜組み合わせてなる構成は、本開示に含まれている。
【0012】
本明細書において「略~」との記載は、略全域を例に挙げて説明すると、全域及び実質的に全域と認められる場合を含む意図である。また、n型ドーパント(第1導電型のドーパント)とは、ドナーとして機能するリン(P)等の不純物を意味し、p型ドーパント(第2導電型のドーパント)とは、アクセプターとして機能するボロン(B)等の不純物を意味する。
【0013】
図1は、実施形態の一例である太陽電池10の層構造を示す斜視図である。
図2は、太陽電池10の断面図である。
図1に示すように、太陽電池10は、n型結晶性シリコンウエハ11と、第1パッシベーション層20と、n型非晶質シリコン層21とを備える。第1パッシベーション層20は、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面上に形成されている。n型非晶質シリコン層21は、n型ドーパントを含む非晶質シリコン層であって、第1パッシベーション層20上に形成されている。
【0014】
太陽電池10は、第2パッシベーション層30と、p型非晶質シリコン層31とを備える。第2パッシベーション層30は、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面上に形成されている。p型非晶質シリコン層31は、p型ドーパントを含む非晶質シリコン層であって、第2パッシベーション層30上に形成されている。n型結晶性シリコンウエハ11の平面視形状は、特に限定されないが、一例としては、4つの角が斜めにカットされた平面視略正方形状が挙げられる。
【0015】
太陽電池10は、一般的に、太陽電池モジュール(図示せず)の形態で使用される。太陽電池モジュールは、複数の太陽電池10を含み、隣り合う太陽電池10が配線部材により接続されたストリングを備える。なお、太陽電池モジュールを構成する太陽電池10の数は特に限定されない。太陽電池モジュールは、太陽電池10のストリングを保護する2枚の保護基材を備え、ストリングが2枚の保護基材によって挟持された構造を有する。2枚の保護基材の間には、太陽電池10を封止する封止材が充填されている。
【0016】
太陽電池10では、第1パッシベーション層20及びn型非晶質シリコン層21が形成されるn型結晶性シリコンウエハ11の第1主面を受光面とし、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面を裏面とすることが好ましい。n型結晶性シリコンウエハ11の「受光面」とは光が主に入射する面を意味し、n型結晶性シリコンウエハ11に入射する光のうち、50%を超える光、例えば、80%以上又は90%以上の光が受光面側から入射する。換言すると、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池10の受光面がモジュールの光が主に入射する面側を向くように各太陽電池10が配置される。
【0017】
太陽電池10は、n型非晶質シリコン層21上に形成された透明導電層25と、透明導電層25上に形成された集電極26とを備える。また、太陽電池10は、p型非晶質シリコン層15上に形成された透明導電層35と、透明導電層35上に形成された集電極36とを備える。詳しくは後述するが、太陽電池10は、さらに、第1パッシベーション層20とn型非晶質シリコン層21との間に形成されたn型ライトドープ層22、及び第2パッシベーション層30とp型非晶質シリコン層31との間に形成されたp型ライトドープ層32を備える。
【0018】
透明導電層25,35は、各非晶質シリコン層上の略全域に形成されることが好ましい。例えば、一辺が120~160mmの略正方形のn型結晶性シリコンウエハ11を用いた場合、透明導電層25,35は各非晶質シリコン層上からはみ出さない範囲で、当該ウエハの端縁から2mm以下の外周領域を除く範囲に形成される。透明導電層25,35は、例えば酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、タングステン(W)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)等がドーピングされた透明導電性酸化物(IWO、ITO等)で構成される。透明導電層25,35の厚みは、例えば30~500nmが好ましく、50~200nmがより好ましい。
【0019】
集電極26,36は、複数のフィンガー電極を含む。複数のフィンガー電極は、互いに略平行に形成された細線状の電極であって、n型結晶性シリコンウエハ11の広範囲に形成され、生成したキャリアを収集する。集電極26,36は、フィンガー電極よりも幅が太く、各フィンガー電極と略直交するバスバー電極を含んでいてもよい。裏面側電極である集電極36は、受光面側電極である集電極26よりも大面積に形成されることが好ましく、透明導電層35上の略全域に形成される金属層であってもよい。
【0020】
以下、
図3及び
図4を適宜参照しながら、n型結晶性シリコンウエハ11、各パッシベーション層、及び各非晶質シリコン層について詳説する。
【0021】
[n型結晶性シリコンウエハ]
n型結晶性シリコンウエハ11は、多結晶シリコンウエハであってもよいが、好ましくは単結晶シリコンウエハである。n型結晶性シリコンウエハ11に含有されるn型ドーパントは特に限定されないが、一般的にはリン(P)が用いられる。n型ドーパントはn型結晶性シリコンウエハ11の全体に均一に分布していてもよいが、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面及び第2主面の少なくとも一方の面の近傍には、ドーパント濃度が高くなった高ドープ領域が存在することが好ましい。
【0022】
n型結晶性シリコンウエハ11の厚みは、例えば50~300μmである。n型結晶性シリコンウエハ11には、一般的にチョクラルスキー法(Cz法)により製造されるウエハが用いられるが、エピタキシャル成長法により製造されるウエハを用いることも可能である。n型結晶性シリコンウエハ11におけるn型ドーパントの濃度は、高ドープ領域以外の領域において、例えば1×1014atoms/cm3未満である。n型結晶性シリコンウエハ11におけるドーパント濃度は、2次イオン質量分析(SIMS)により測定される(他の層についても同様)。
【0023】
本実施形態では、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面側及び第2主面側に、高ドープ領域12,13がそれぞれ形成されている。高ドープ領域12は、n型結晶性シリコンウエハ11の厚み方向中央側から第1主面に向かって、単位面積当たりのn型ドーパント濃度が高くなった濃度匂配を有する領域である。同様に、高ドープ領域13は、n型結晶性シリコンウエハ11の厚み方向中央側から第2主面に向かって、単位面積当たりのn型ドーパント濃度が高くなった濃度匂配を有する。高ドープ領域は、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面、第2主面、及び厚み方向に沿った側面を含むウエハの表面全体に形成されてもよい。
【0024】
高ドープ領域12,13におけるドーパント濃度は、1×1017atoms/cm3以上であり、ドーパント濃度の平均値は1×1018~2×1019atoms/cm3であることが好ましい。換言すると、n型ドーパントの濃度が1×1017atoms/cm3以上の領域が高ドープ領域12,13である。高ドープ領域12,13におけるn型ドーパント濃度の上限は、例えば、1×1020atoms/cm3である。高ドープ領域12,13におけるn型ドーパントの濃度が当該範囲内(特に平均値が1×1018~2×1019atoms/cm3)であれば、出力特性の改善効果がより顕著になる。
【0025】
n型結晶性シリコンウエハ11の表面には、表面反射を抑制して光の吸収量を増大させるテクスチャ構造(図示せず)が形成されていてもよい。テクスチャ構造は、受光面及び裏面のうちの一方、又は受光面及び裏面の両方に形成される。テクスチャ構造は、アルカリ性溶液を用いて単結晶シリコンウエハの(100)面を異方性エッチングすることで形成できる。この場合、単結晶シリコンウエハの表面には、(111)面を斜面としたピラミッド形状の表面凹凸構造が形成される。
【0026】
[第1パッシベーション層]
第1パッシベーション層20は、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面上に形成され、ウエハの第1主面側におけるキャリアの再結合を抑制する。n型結晶性シリコンウエハ11には、例えば、第1主面のうち、第1主面の端縁から2mm以下の外周領域を除く領域に第1パッシベーション層20が形成されている。第1パッシベーション層20の厚みは、パッシベーション性と抵抗低減の両立等の観点から、0.5~15nmが好ましく、1~10nmがより好ましく、2~5nmが特に好ましい。第1パッシベーション層20の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた太陽電池10の断面観察により測定される(他の層についても同様)。
【0027】
第1パッシベーション層20は、i型非晶質シリコン層であることが好ましい。i型非晶質シリコン層は、不純物が意図的にドープされていない非晶質シリコン層である。しかし、第1パッシベーション層20には、太陽電池10の製造過程において不純物が混入する場合があり、一般的には所定濃度のn型ドーパントが含まれている。第1パッシベーション層20におけるn型ドーパントの濃度の平均値は、n型非晶質シリコン層21及びn型ライトドープ層22におけるn型ドーパントの濃度の平均値より低く、2×1019atoms/cm3以下であることが好ましい。第1パッシベーション層20には、さらに、水素、酸素、及び炭素が含まれていてもよい。
【0028】
なお、第1パッシベーション層20におけるn型ドーパントの濃度は、n型結晶性シリコンウエハ11との界面である第1主面に近づくほど高くなる濃度匂配を有していてもよい。この濃度勾配については、さらに後述する。
【0029】
[n型非晶質シリコン層(第1非晶質シリコン層)]
n型非晶質シリコン層21は、第1パッシベーション層20よりも高濃度のn型ドーパントを含み、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面側に形成されている。太陽電池10において、n型非晶質シリコン層21は、n型ライトドープ層22を介して第1パッシベーション層20上に形成されている。即ち、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面側には、第1パッシベーション層20、n型ライトドープ層22、及びn型ライトドープ層22が第1主面側から順に成膜されている。n型非晶質シリコン層21は、n型ライトドープ層22上の略全域に形成されることが好ましい。
【0030】
n型非晶質シリコン層21におけるn型ドーパントの濃度の平均値は、1×1020~1×1022atoms/cm3が好ましく、1×1021~1×1022atoms/cm3がより好ましい。n型非晶質シリコン層21の厚みは、光の透過性、キャリアの分離性、抵抗低減等の観点から、3~30nmが好ましく、4~20nmがより好ましく、5~15nmが特に好ましい。n型非晶質シリコン層21は、第1パッシベーション層20及びn型ライトドープ層22よりも厚く形成されることが好ましく、例えば、第1パッシベーション層20の厚みの3~5倍の厚みを有する。n型非晶質シリコン層21には、さらに、水素、酸素、及び炭素が含まれていてもよい。
【0031】
[n型ライトドープ層(第3非晶質シリコン層)]
太陽電池10は、上述の通り、第1パッシベーション層20とn型非晶質シリコン層21との間に形成され、第1パッシベーション層20よりもn型ドーパントの濃度が高く、n型非晶質シリコン層21よりもn型ドーパントの濃度が低いn型ライトドープ層22を備える。第1パッシベーション層20との積層構造を設けることにより、良好なパッシベーション性と低抵抗化を高度に両立できると考えられ、太陽電池10の出力特性が大きく向上する。n型ライトドープ層22は、第1パッシベーション層20上の略全域に形成されることが好ましい。
【0032】
n型ライトドープ層22におけるn型ドーパントの濃度の平均値は、1×1018~1×1020atoms/cm3が好ましく、1×1019~5×1019atoms/cm3がより好ましい。n型ライトドープ層22の厚みは、パッシベーション性と抵抗低減の両立等の観点から、3~20nmが好ましく、4~15nmがより好ましく、5~10nmが特に好ましい。n型ライトドープ層22の厚みは、例えば、第1パッシベーション層20より厚く、n型非晶質シリコン層21より薄い。
【0033】
図3は、第1パッシベーション層20、n型ライトドープ層22、及びn型非晶質シリコン層21の厚み方向におけるn型ドーパントのデプスプロファイルを示す図である。なお、各層に含まれるn型ドーパントはリン(P)である。
図3には、比較として、従来の太陽電池におけるPのデプスプロファイルを一点鎖線で示している。
【0034】
図3に示すように、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面上には、太陽電池10の厚み方向にPの濃度レベルがフラットになった領域であるn型ライトドープ層22が存在している。また、Pのデプスプロファイルから、n型ライトドープ層22とn型結晶性シリコンウエハ11との間に、P濃度が低い第1パッシベーション層20が存在し、n型ライトドープ層22上に、P濃度が高いn型非晶質シリコン層21が存在することが分かる。一方、n型ライトドープ層22が存在しない従来の太陽電池では、第1パッシベーション層20からn型非晶質シリコン層21にかけてP濃度が連続的に増加している。
【0035】
図3に示すPのデプスプロファイルには、n型結晶性シリコンウエハ11の近傍にP濃度が最低となる第1領域X1が存在し、P濃度が略一定となる第2領域X2を経て、P濃度が最大となる第3領域X3が存在している。また、第1領域X1と第2領域X2との間には、上に凸の第1変曲点A1が存在し、第2領域X2と第3領域X3との間には、下に凸の第2変曲点A2が存在している。このようなn型ドーパントのプロファイルを導入することにより、太陽電池10の出力特性が特異的に改善される。なお、第1領域X1は第1パッシベーション層20に、第2領域X2はn型ライトドープ層22に、第3領域X3はn型非晶質シリコン層21にそれぞれ対応する。
【0036】
n型非晶質シリコン層21におけるP濃度と、n型ライトドープ層22におけるP濃度の差ΔCPは、1×1020~1×1022atoms/cm3が好ましく、1×1021~1×1022atoms/cm3がより好ましく、1×1021~5×1021atoms/cm3が特に好ましい。ΔCPが当該範囲内であれば、出力特性の改善効果がより顕著になる。ΔCPは、各層のP濃度の平均値の差、及び各層のP濃度の最大値の差の両方を意味する。
【0037】
第1パッシベーション層20におけるP濃度は、上述のように、n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面に近づくほど高くなっていてもよい。
図3に示すPのデプスプロファイルには、n型結晶性シリコンウエハ11と第1パッシベーション層20との海面に上に凸のピークが存在している。この場合、第1パッシベーション層20を構成するi型非晶質シリコンのエピタキシャル成長が抑制され、より良質なパッシベーション性が得られる。当該ピークにおけるP濃度は、特に限定されないが、n型ライトドープ層22におけるP濃度の平均値より低いことが好ましい。
【0038】
[第2パッシベーション層]
第2パッシベーション層30は、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面上に形成され、ウエハの第2主面側におけるキャリアの再結合を抑制する。n型結晶性シリコンウエハ11には、第1パッシベーション層20と同様に、第2主面のうち、第2主面の端縁から2mm以下の外周領域を除く領域に第2パッシベーション層30が形成されている。第2パッシベーション層30の厚みは、0.5~15nmが好ましく、1~10nmがより好ましく、2~5nmが特に好ましい。
【0039】
第2パッシベーション層30は、i型非晶質シリコン層であることが好ましい。しかし、第2パッシベーション層30には、太陽電池10の製造過程において不純物が混入する場合があり、一般的には所定濃度のp型ドーパントが含まれている。第2パッシベーション層30におけるp型ドーパントの濃度の平均値は、p型非晶質シリコン層31及びp型ライトドープ層32におけるp型ドーパントの濃度の平均値より低く、3×1018atoms/cm3以下であることが好ましい。p型ドーパントは特に限定されないが、一般的にはボロン(B)が用いられる。第2パッシベーション層30には、さらに、水素、酸素、及び炭素が含まれていてもよい。
【0040】
なお、第2パッシベーション層30におけるp型ドーパントの濃度は、n型結晶性シリコンウエハ11との界面である第2主面に近づくほど高くなる濃度匂配を有していてもよい。この濃度勾配については、さらに後述する。
【0041】
[p型非晶質シリコン層(第2非晶質シリコン層)]
p型非晶質シリコン層31は、第2パッシベーション層30よりも高濃度のp型ドーパントを含み、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面側に形成されている。太陽電池10において、p型非晶質シリコン層31は、p型ライトドープ層32を介して第2パッシベーション層30上に形成されている。即ち、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面側には、第2パッシベーション層30、p型ライトドープ層32、及びp型非晶質シリコン層31が第2主面側から順に成膜されている。p型非晶質シリコン層31は、p型ライトドープ層32上の略全域に形成されることが好ましい。
【0042】
p型非晶質シリコン層31におけるp型ドーパントの濃度の平均値は、1×1020~1×1022atoms/cm3が好ましく、1×1020~1×1021atoms/cm3がより好ましい。p型非晶質シリコン層31の厚みは、n型非晶質シリコン層21と同様に、3~30nmが好ましく、4~20nmがより好ましく、5~15nmが特に好ましい。p型非晶質シリコン層31は、第2パッシベーション層30及びp型ライトドープ層32よりも厚く形成されることが好ましく、例えば、第2パッシベーション層30の厚みの3~5倍の厚みを有する。p型非晶質シリコン層31には、さらに、水素、酸素、及び炭素が含まれていてもよい。
【0043】
[p型ライトドープ層(第4非晶質シリコン層)]
太陽電池10は、上述の通り、第2パッシベーション層30とp型非晶質シリコン層31との間に形成され、第2パッシベーション層30よりもp型ドーパントの濃度が高く、p型非晶質シリコン層31よりもp型ドーパントの濃度が低いp型ライトドープ層32を備える。p型ライトドープ層32は、第2パッシベーション層30上の略全域に形成されることが好ましい。第2パッシベーション層30とp型ライトドープ層32の積層構造を設けることにより、良好なパッシベーション性と低抵抗化を高度に両立できると考えられ、太陽電池10の出力特性が大きく向上する。特に、n型ライトドープ層22及びp型ライトドープ層32の両方を設けることにより、出力特性の改善効果がより顕著になる。
【0044】
p型ライトドープ層32におけるp型ドーパントの濃度の平均値は、1×1018~1×1020atoms/cm3が好ましく、1×1019~5×1019atoms/cm3がより好ましい。p型ライトドープ層32の厚みは、n型ライトドープ層22と同様に、3~20nmが好ましく、4~15nmがより好ましく、5~10nmが特に好ましい。p型ライトドープ層32の厚みは、例えば、第2パッシベーション層30より厚く、p型非晶質シリコン層31より薄い。
【0045】
図4は、第2パッシベーション層30、p型ライトドープ層32、及びp型非晶質シリコン層31の厚み方向におけるp型ドーパントのデプスプロファイルを示す図である。なお、各層に含まれるp型ドーパントはボロン(B)である。
図4には、比較として、従来の太陽電池におけるBのデプスプロファイルを一点鎖線で示している。
【0046】
図4に示すように、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面上には、太陽電池10の厚み方向にBの濃度レベルがフラットになった領域であるp型ライトドープ層32が存在している。また、Bのデプスプロファイルから、第2パッシベーション層30とn型結晶性シリコンウエハ11との間に、B濃度が低い第2パッシベーション層30が存在し、p型ライトドープ層32上に、B濃度が高いp型非晶質シリコン層31が存在することが分かる。一方、p型ライトドープ層32が存在しない従来の太陽電池では、第2パッシベーション層30からp型非晶質シリコン層31にかけてB濃度が連続的に増加している。
【0047】
図4に示すBのデプスプロファイルには、n型結晶性シリコンウエハ11の近傍にB濃度が最低となる第1領域Y1が存在し、B濃度が略一定となる第2領域Y2を経て、B濃度が最大となる第3領域Y3が存在している。また、第1領域Y1と第2領域Y2との間には、上に凸の第1変曲点B1が存在し、第2領域Y2と第3領域Y3との間には、下に凸の第2変曲点B2が存在している。このようなp型ドーパントのプロファイルを導入することにより、太陽電池10の出力特性が特異的に改善される。なお、第1領域Y1は第2パッシベーション層30に、第2領域Y2はp型ライトドープ層32に、第3領域Y3はp型非晶質シリコン層31にそれぞれ対応する。
【0048】
p型非晶質シリコン層31におけるB濃度と、p型ライトドープ層32におけるB濃度の差ΔCBは、1×1020~1×1022atoms/cm3が好ましく、5×1020~5×1021atoms/cm3がより好ましく、5×1020~1×1021atoms/cm3が特に好ましい。ΔCBが当該範囲内であれば、出力特性の改善効果がより顕著になる。ΔCBは、各層のP濃度の平均値の差、及び各層のP濃度の最大値の差の両方を意味する。
【0049】
第2パッシベーション層30におけるB濃度は、上述のように、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面に近づくほど高くなっていることが好ましい。
図4に示すBのデプスプロファイルには、n型結晶性シリコンウエハ11と第2パッシベーション層30との界面に、上に凸のピークが存在している。この場合、第2パッシベーション層30を構成するi型非晶質シリコンのエピタキシャル成長が抑制され、より良質なパッシベーション性が得られる。当該ピークにおけるB濃度は、特に限定されないが、一例としては5×10
18~1×10
19atoms/cm
3であり、p型ライトドープ層32におけるP濃度の平均値より低いことが好ましい。
【0050】
n型ライトドープ層22及びp型ライトドープ層32の両方が設けられる場合において、p型非晶質シリコン層31におけるn型ドーパント濃度と、n型ライトドープ層22におけるn型ドーパント濃度との差ΔC1(ΔCP)は、p型非晶質シリコン層31におけるp型ドーパント濃度と、p型ライトドープ層32におけるp型ドーパント濃度との差ΔC2(ΔCB)よりも大きいことが好ましい。この場合、出力特性の改善効果がより顕著になる。ΔC1は、例えば、ΔC2の1.5~5倍である。
【0051】
以下、上述の構成を備えた太陽電池10の製造方法について説明する。
【0052】
太陽電池10の製造工程では、テクスチャ構造が形成されたn型結晶性シリコンウエハ11を準備し、当該ウエハの第1主面に第1パッシベーション層20を、第2面に第2パッシベーション層30をそれぞれ形成する。n型結晶性シリコンウエハ11には、両面又は片面にテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンウエハが用いられる。なお、テクスチャ構造を有さないウエハを用いてもよい。n型結晶性シリコンウエハ11に水素ラジカル処理を行いウエハ表面のクリーニングを行ってもよい。
【0053】
n型結晶性シリコンウエハ11の第1主面には、第1パッシベーション層20として、ドーパントを添加しない真正なi型非晶質シリコン層を成膜するが、第1パッシベーション層20には、一般的に、低濃度のn型ドーパントが混入する。非晶質シリコン層は、触媒化学気相成長法(Cat-CVD:Catalytic Chemical Vapor Deposition)、又はプラズマ化学気相成長法(PE-CVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)により形成されることが好ましい。
【0054】
Cat-CVDは、タングステンにより構成されるワイヤ(触媒体)を内部に配した真空チャンバに原料ガスを流入させ、電源により通電加熱されたワイヤで原料ガスを接触分解反応させ、生成された反応種(分解種)を対象物に堆積させる方法である。PE-CVDは、プラズマ源を搭載した真空チャンバに原料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給することで、真空チャンバ内に放電プラズマを発生させ、プラズマで原料ガスを分解反応させ、生成された反応種を対象物上に堆積させる方法である。以下では、各非晶質シリコン層の成膜方法として、Cat-CVDを例に挙げて説明する。
【0055】
第1パッシベーション層20は、第1の真空チャンバで成膜される。具体的には、n型結晶性シリコンウエハ11が導入された真空チャンバに、原料ガスとしてシラン(SiH4)等のケイ素含有ガスを水素で希釈したものを供給し、通電加熱されたワイヤ表面で当該ガスを分解させる。この分解されたガスを、加熱されたn型結晶性シリコンウエハ11の第1主面に供給することにより、第1パッシベーション層20が形成される。
【0056】
続いて、第1の真空チャンバで、第1パッシベーション層20上にn型ライトドープ層22を成膜する。n型ライトドープ層22の成膜には、シランにホスフィン(PH3)を混合し、水素で希釈した原料ガスを使用する。ホスフィンの濃度を変化させることによって、n型ライトドープ層22に含有されるP濃度を調整できる。具体的には、n型ライトドープ層22におけるP濃度が1×1018~1×1020atoms/cm3の範囲内となるように、ホスフィンの流量を制御する。
【0057】
次に、n型結晶性シリコンウエハ11の第2主面上に、第2パッシベーション層30及びp型ライトドープ層32をこの順で成膜する。第2パッシベーション層30及びp型ライトドープ層32は、第2の真空チャンバにおいてCat-CVDにより成膜される。なお、第2パッシベーション層30として、ドーパントを添加しない真正なi型非晶質シリコン層を成膜するが、第2パッシベーション層30には、一般的に、低濃度のp型ドーパントが混入する。
【0058】
p型ライトドープ層32の成膜には、シランにジボラン(B2H6)を混合し、水素で希釈した原料ガスを使用する。ホスフィンの濃度を変化させることによって、p型ライトドープ層32に含有されるB濃度を調整できる。具体的には、p型ライトドープ層32におけるB濃度が1×1018~1×1020atoms/cm3の範囲内となるように、ジボランの流量を制御する。
【0059】
次に、第3の真空チャンバにおいて、n型ライトドープ層22と同様の方法で、n型ライトドープ層22上にn型非晶質シリコン層21を成膜する。このとき、n型非晶質シリコン層21におけるP濃度が1×1020~1×1022atoms/cm3の範囲内となるように、原料ガス中のホスフィンの流量を制御する。続いて、第4の真空チャンバにおいて、p型ライトドープ層32と同様の方法で、p型ライトドープ層32上にp型非晶質シリコン層31を成膜する。このとき、p型非晶質シリコン層31におけるB濃度が1×1020~1×1022atoms/cm3の範囲内となるように、原料ガス中のジボランの流量を制御する。
【0060】
次に、n型非晶質シリコン層21上に透明導電層25を、p型非晶質シリコン層15上に透明導電層35をそれぞれ形成する。透明導電層25,35は、例えば、スパッタリングにより形成される。最後に、透明導電層25上に集電極26を、透明導電層35上に集電極36をそれぞれ形成することにより、上述の構成を備えた太陽電池10が得られる。集電極26,36は、例えば、透明導電層25,35上に銀(Ag)粒子を含有する導電性ペーストをスクリーン印刷により塗工して形成される。
【0061】
上述の製造工程によれば、n型結晶性シリコンウエハ11の両接合面をi型非晶質シリコン層でキャップしてからn型非晶質シリコン層21及びp型非晶質シリコン層31を成膜するので、両接合の不純物濃度が低減され、パッシベーション性が向上する。また、良好なパッシベーション性を確保しつつ、n型非晶質シリコン層21のドーパント濃度を高くすることができ、透明導電層25との界面におけるコンタクト抵抗を低減できる。
【0062】
なお、第1の真空チャンバにおいて、第2パッシベーション層30及びp型ライトドープ層32を成膜した後、第2の真空チャンバにおいて、第1パッシベーション層20、n型ライトドープ層22、及びn型非晶質シリコン層21を成膜してもよい。その後、第3の真空チャンバにおいて、p型ライトドープ層32上にp型非晶質シリコン層31を成膜する。この場合、成膜装置の台数を減らすことができる。
【0063】
以下、上述の構成を備えた太陽電池10の効果について説明する。
【0064】
図5は、n型ライトドープ層22におけるn型ドーパント(P)のドープ量と太陽電池の出力との関係を示す図である。
図5では、横軸として、n型ライトドープ層22の成膜時のシランに対するホスフィン(ドーピングガス)の流量比を示しており、この値が大きいほど、Pのドープ量が多いことを意味する。
図5の縦軸に示す出力は、ホスフィンの流量がゼロである場合の太陽電池の出力を100としたときの相対値である。なお、
図5に示す各太陽電池は、p型ライトドープ層32を有さない。また、各太陽電池は、n型ライトドープ層22の成膜時におけるホスフィンの流量比以外を同じ条件として、上述の製造方法に従って製造したものである。
【0065】
図5から明らかであるように、n型ライトドープ層22の成膜時にホスフィンを混合して所定量のPをドープすることにより、太陽電池10の出力が大きく向上する。また、ホスフィンの流量比、即ちPのドープ量には、出力特性を改善する上で好適な範囲が存在することが理解される。Pのドープ量の好適な範囲は、上述の通り、1×10
18~1×10
20atoms/cm
3であり、当該濃度範囲は、ホスフィンの流量比を0.2又はその近傍に設定することで実現できる。
【0066】
図6は、p型ライトドープ層32におけるp型ドーパント(B)のドープ量と太陽電池の出力との関係を示す図である。
図6では、横軸として、p型ライトドープ層32の成膜時のシランに対するジボラン(ドーピングガス)の流量比を示しており、この値が大きいほど、Bのドープ量が多いことを意味する。
図6の縦軸に示す出力は、ジボランの流量がゼロである場合の太陽電池の出力を100としたときの相対値である。なお、
図6に示す各太陽電池は、n型ライトドープ層22を有さない。また、各太陽電池は、p型ライトドープ層32の成膜時におけるジボランの流量比以外を同じ条件として、上述の製造方法に従って製造したものである。
【0067】
図6から明らかであるように、p型ライトドープ層32の成膜時にジボランを混合して所定量のBをドープすることにより、太陽電池10の出力が大きく向上する。また、ジボランの流量比、即ちBのドープ量には、出力特性を改善する上で好適な範囲が存在することが理解される。Bのドープ量の好適な範囲は、上述の通り、1×10
18~1×10
20atoms/cm
3であり、当該濃度範囲は、ジボランの流量比を0.1又はその近傍に設定することで実現できる。
【0068】
以上のように、上述の構成を備えた太陽電池10は、従来の太陽電池と比べて出力特性に優れる。太陽電池10によれば、第2パッシベーション層30上にn型ライトドープ層22を設けることで、n型結晶性シリコンウエハ11の接合面における良好なパッシベーション性と低抵抗を両立することができ、その結果、出力特性が向上したものと考えられる。特に、n型ライトドープ層22と共にp型ライトドープ層32を設けた場合は、出力特性の改善効果がより顕著になる。
【0069】
なお、上述の実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更が可能である。上述の実施形態では、n型結晶性シリコンウエハの第1主面及び第2主面の近傍にドーパント濃度が他の領域よりも高い高ドープ領域を設けたが、高ドープ領域が存在しないシリコンウエハを用いることも可能である。また、各非晶質シリコン層は、実質的に非晶質と認められるものであればよく、例えば、一部に微結晶領域が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 太陽電池、11 n型結晶性シリコンウエハ、12,13 高ドープ領域、20 第1パッシベーション層、21 n型非晶質シリコン層、22 n型ライトドープ層、25,35 透明導電層、35,36 集電極、30 第2パッシベーション層、31 p型非晶質シリコン層、32 p型ライトドープ層