(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173907
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】濃度監視システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20221115BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
G01N27/06 Z
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079956
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康樹
(72)【発明者】
【氏名】但馬 竜介
【テーマコード(参考)】
2F056
2G060
【Fターム(参考)】
2F056CL06
2G060AA06
2G060AC08
2G060AE17
2G060AF08
2G060AG04
2G060FA01
2G060HC02
2G060HC15
2G060HD01
2G060HD02
2G060HD03
2G060KA06
(57)【要約】
【課題】鍋に入った液体のBRIX濃度を常時確認できる濃度監視システムを提供すること。
【解決手段】液体Sに沈めて液体Sの電気導電率を測る鍋Pに取付自在な電気導電率センサー111と、液体Sに沈めて液体Sの温度を測る鍋Pに取付自在な温度センサー112と、電気導電率センサー111および温度センサー112の出力値を液体Sの塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段145と、この塩分濃度推定手段145から出力された液体Sの塩分濃度を液体SのBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段146と、このBRIX濃度換算手段146から出力された液体SのBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段150と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋に入った液体のBRIX濃度を監視する濃度監視システムにおいて、
前記液体に沈めて前記液体の電気導電率を測る前記鍋に取付自在な電気導電率センサーと、
前記液体に沈めて前記液体の温度を測る前記鍋に取付自在な温度センサーと、
前記電気導電率センサーおよび前記温度センサーの出力値を前記液体の塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段と、
該塩分濃度推定手段から出力された前記液体の塩分濃度を前記液体のBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段と、
該BRIX濃度換算手段から出力された前記液体のBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段と、
を備えていることを特徴とする濃度監視システム。
【請求項2】
前記電気導電率センサーと前記温度センサーとを取り囲んで保護する筒状のセンサー保護部材を備え、
前記鍋の底面と対向する前記センサー保護部材の先端側が閉塞され、
前記センサー保護部材の内部に液体を導入する開口が、前記鍋の側面と対向する前記センサー保護部材の側部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の濃度監視システム。
【請求項3】
前記鍋の動きを検知する動き検知センサーと、
前記BRIX濃度換算手段から出力された前記液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲を外れた場合に異常を報知する異常報知手段とを備え、
前記動き検知センサーが前記鍋の動きを検知しない場合には、前記異常報知手段が異常を報知し、
前記動き検知センサーが前記鍋の動きを検知した場合には、前記異常報知手段が異常を報知しないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の濃度監視システム。
【請求項4】
前記BRIX濃度報知手段が、前記液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲から外れたことを報知することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の濃度監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度監視システムに関するものであって、特に、鍋に入った液体のBRIX濃度を監視する濃度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HACCP(ハサップ)と呼ばれる食品の衛生管理の考え方に沿った衛生管理が食品等事業者に求められている。
HACCPでは調理対象の温度等の管理や定期的な記録が求められていることから、外食店舗の厨房内では、例えば、鍋に入れたスープ等の液体の濃度が一定となるように監視する必要がある。
【0003】
鍋に入れた液体の濃度を測定する場合、一般に液体の濃度はBRIX濃度(液体の屈折率から算出される値)で測定されることが多い。
外食店舗では、従来、BRIX濃度を計測するために手持ちの屈折計(例えば、特許文献1)を用いて液体のBRIX濃度を目視で測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような手持ちの屈折計によりBRIX濃度を計測する手法では、店舗スタッフが定期的にBRIX濃度を計測する必要があることから、店舗スタッフの作業負担が煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、鍋に入った液体のBRIX濃度を常時確認できる濃度監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、鍋に入った液体のBRIX濃度を監視する濃度監視システムにおいて、前記液体に沈めて前記液体の電気導電率を測る前記鍋に取付自在な電気導電率センサーと、前記液体に沈めて前記液体の温度を測る前記鍋に取付自在な温度センサーと、前記電気導電率センサーおよび前記温度センサーの出力値を前記液体の塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段と、該塩分濃度推定手段から出力された前記液体の塩分濃度を前記液体のBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段と、該BRIX濃度換算手段から出力された前記液体のBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段と、を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された濃度監視システムの構成に加えて、前記電気導電率センサーと前記温度センサーとを取り囲んで保護する筒状のセンサー保護部材を備え、前記鍋の底面と対向する前記センサー保護部材の先端側が閉塞され、前記センサー保護部材の内部に液体を導入する開口が、前記鍋の側面と対向する前記センサー保護部材の側部に形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された濃度監視システムの構成に加えて、前記鍋の動きを検知する動き検知センサーと、前記BRIX濃度換算手段から出力された前記液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲を外れた場合に異常を報知する異常報知手段とを備え、前記動き検知センサーが前記鍋の動きを検知しない場合には、前記異常報知手段が異常を報知し、前記動き検知センサーが前記鍋の動きを検知した場合には、前記異常報知手段が異常を報知しないことにより、前述した課題を解決するものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された濃度監視システムの構成に加えて、前記BRIX濃度報知手段が、前記液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲から外れたことを報知することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の濃度監視システムは、鍋に入った液体に沈めて液体の電気導電率を測る鍋に取付自在な電気導電率センサーと、鍋に入った液体に沈めて液体の温度を測る鍋に取付自在な温度センサーと、電気導電率センサーおよび温度センサーの出力値を液体の塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段と、この塩分濃度推定手段から出力された液体の塩分濃度を液体のBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段と、このBRIX濃度換算手段から出力された液体のBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段と、を備えていることにより、電気導電率センサーと温度センサーとを鍋に入った液体に沈めるだけで鍋に入った液体のBRIX濃度が報知されるため、鍋に入った液体のBRIX濃度を容易に常時確認できることができるだけでなく、液体の屈折率ではなく電気導電率に基づいてBRIX濃度を算出するため、油分を含むスープのような液体であっても精度良くBRIX濃度を算出することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の濃度監視システムによれば、請求項1に係る発明の濃度監視システムが奏する効果に加えて、電気導電率センサーと温度センサーとを取り囲んで保護する筒状のセンサー保護部材を備えていることにより、電気導電率センサーと温度センサーとが鍋に直接触れなくなるため、電気導電率センサーが誤って鍋の電気伝導率を測定したり、温度センサーが誤って鍋の温度を測定したりすることを防ぐことができる。
また、鍋の底面と対向するセンサー保護部材の先端側が閉塞されていることにより、鍋の底に沈んだ具材に対して電気導電率センサーや温度センサーではなくセンサー保護部材の先端部が接触するため、電気導電率センサーや温度センサーが鍋の底に沈んだ具材と接触して損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
請求項3に係る発明の濃度監視システムによれば、請求項1または請求項2に係る発明の濃度監視システムが奏する効果に加えて、動き検知センサーが鍋の動きを検知しない場合には、異常報知手段が異常を報知し、動き検知センサーが鍋の動きを検知した場合には、異常報知手段が異常を報知しないことにより、鍋自体に振動が加わって液面が揺れた際などに、BRIX濃度換算手段から出力されたBRIX濃度が異常値となったとしても、BRIX濃度報知手段が異常値となるBRIX濃度を報知しないため、液体のBRIX濃度測定環境に異常事態が生じたとしても、異常事態を適切に排除して液体のBRIX濃度を測定することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の濃度監視システムによれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の濃度監視システムが奏する効果に加えて、BRIX濃度報知手段が、液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲から外れたことを報知することにより、鍋に入った液体が煮詰まって液体の濃度が所定の濃度よりも高くなった場合や鍋に入った液体が薄まりすぎた場合に外部にその旨が報知されるため、液体の濃度を能動的に確認する手間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例である濃度監視システムの構成図。
【
図6】BRIX濃度濃度報知手段による表示の一例を示す図。
【
図7】本発明の一実施例である濃度監視システムによる濃度監視フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、鍋に入った液体のBRIX濃度を監視する濃度監視システムにおいて、液体に沈めて液体の電気導電率を測る鍋に取付自在な電気導電率センサーと、液体に沈めて液体の温度を測る鍋に取付自在な温度センサーと、電気導電率センサーおよび温度センサーの出力値を液体の塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段と、この塩分濃度推定手段から出力された液体の塩分濃度を液体のBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段と、このBRIX濃度換算手段から出力された液体のBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段と、を備え、鍋に入った液体のBRIX濃度を常時確認できるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0017】
例えば、電気伝導率センサーおよび温度センサーを取り付ける対象である鍋は、調理用の鍋であれば、寸胴鍋に限らず如何なる鍋であってもよい。
【0018】
例えば、鍋に入っている液体は、液体であればいかなる液体であってもよく、例えば、油分を含む牛丼のタレ、うどんのだし汁、かきたまスープなどのスープ状の食材であってもよい。
【0019】
例えば、BRIX濃度濃度報知手段はBRIX濃度換算手段から出力されたBRIX濃度を報知できれば、いかなるものであってもよく、例えば、スピーカー(聴覚情報で報知)であってもよいし、ディスプレイやライト(視覚情報で報知)であってもよい。
また、BRIX濃度濃度報知手段の報知対象とする鍋は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【実施例0020】
以下、
図1乃至
図7に基づいて、本発明の一実施例である濃度監視システムを説明する。
【0021】
<1.濃度監視システムの概要>
まず、
図1乃至
図6に基づいて、本発明の一実施例である濃度監視システムの概要について説明する。
図1は本発明の一実施例である濃度監視システムの構成図であり、
図2は
図1に示すセンサーの斜視図であり、
図3Aは
図2のIIIA-IIIA断面図であり、
図3Bは
図3AのIIIB-IIIB断面図であり、
図4は計測回路の構成を示す構成図であり、
図5は演算装置の機能的構成を示す構成図であり、
図6はBRIX濃度濃度報知手段による表示の一例を示す図である。
【0022】
濃度監視システム100は、鍋Pに入った液体SのBRIX濃度を監視するシステムであり、
図1に示すように、台Bに載置された鍋Pに取り付け自在なセンサー110と、台Bに載置されて鍋Pの動作(振動、揺動、揺れ等)を検知する動き検知センサー120と、センサー110による検出信号と動き検知センサー120による検出信号とに基づいて演算処理を行う演算装置130と、この演算装置130による演算結果に基づいて液体SのBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段140とを備えている。
【0023】
<2.センサー>
センサー110は、
図2に示すように、鍋Pに入った液体Sに沈めて液体Sの電気導電率を測る電気導電率センサー111と、鍋Pに入った液体Sに沈めて液体Sの温度を測る温度センサー112と、電気導電率センサー111と温度センサー112とを収容する円筒状のハウジング113と、このハウジング113の上端を閉塞する上蓋114と、電気導電率センサー111の先端と温度センサー112の先端とを取り囲んで保護する筒状のセンサー保護部材115と、電気導電率センサー111および温度センサー112から出力される電気信号を計測する計測回路116とを有している。
【0024】
電気導電率センサー111は、先端に4本のセンサー電極111a(1番ピン111a1、2番ピン111a2、3番ピン111a3、4番ピン111a4)を有した4線式のセンサーである。
この4本のセンサー電極111aは、
図3Bに示すように、矩形状であり一列に配置されている。
電気導電率センサー111を4線式のセンサーにすることで、電極の分極に起因する誤差や、測定に干渉を及ぼす恐れのある電界効果の影響を排除することができる。
【0025】
温度センサー112は、先端に
図3Aに示すような半球状のセンサー素子112aを有している。
【0026】
上蓋114は、
図3Aに示すように、ハウジング113に挿入される筒状のハウジング挿入部114aと、このハウジング挿入部114aの上方を塞ぐ蓋部114bとから形成されている。
【0027】
蓋部114bは、平面視で円形状のセンサー挿入部分114b1と、このセンサー挿入部分114b1から半径方向に突出し鍋Pに係止自在な平面視で矩形状の係止部分114b2とから形成されている。
センサー挿入部分114b1には、電気導電率センサー111を挿通して保持する電気導電率センサー保持開口と、温度センサー112を挿通して保持する温度センサー保持開口とが形成されている。
【0028】
センサー保護部材115は、
図3Aに示すように、ハウジング113に挿入される筒状のハウジング挿入部115aと、このハウジング挿入部115aの下方を塞ぐ円盤状の蓋部115bと、この蓋部115bから下方に向かって伸びる断面視矩形状の柱状部115cと、この柱状部115cの下端に連結する円盤状の底部115dとから形成されている。
すなわち、センサー挿入部分115の先端側は、底部115dにより閉塞されていることになる。
【0029】
蓋部115bは、電気導電率センサー111を挿通して保持する電気導電率センサー保持開口と、温度センサー112を挿通して保持する温度センサー保持開口とが形成されている。
なお、蓋部115bの電気導電率センサー保持開口と電気導電率センサー111との間、蓋部115bの温度センサー保持開口と温度センサー112との間はそれぞれ塞がれており、蓋部115bの電気導電率センサー保持開口または温度センサー保持開口を介してハウジング113内に液体が流入しなくなっている。
【0030】
柱状部115cは、
図3Bに示すように、蓋部115bの外側に4つ設けられており、円周方向に等間隔に配置されている。
したがって、隣接する柱状部115cの相互間に形成される空間は、液体Sが入った鍋Pにセンサー110を取り付けた際にセンサー保護部材115の内部に液体Sを導入する開口部(開口)115eとなる。
すなわち、この開口部115eは、センサー保護部材115の側部に形成され、センサー110を鍋Pに取り付けた際に、鍋Pの側面Psと対向する。
【0031】
底部115dは、センサー110を鍋Pに取り付けた際に、鍋Pの底面Pbと対向する。
【0032】
計測回路116は、印加電圧制御回路116aと、電位差取得回路116bと、電流電圧変換回路116cと、液温取得回路116dとを有している。
印加電圧制御回路116aは、電気導電率センサー111aの1番ピン111a1と電気的に接続され、電気導電率センサー111aの1番ピン111a1と電気導電率センサー111aの4番ピン111a4との間に方形波交流電圧を印加する。
電位差取得回路116bは、電気導電率センサー111aの2番ピン111a2および電気導電率センサー111aの3番ピン111a3と電気的に接続され、電気導電率センサー111aの2番ピン111a2と電気導電率センサー111aの3番ピン111a3との間の電位差を取得し、演算装置130に出力する。
電流電圧変換回路116cは、電気導電率センサー111aの4番ピン111a4と電気的に接続され、電気導電率センサー111aの1番ピン111a1と電気導電率センサー111aの4番ピン111a4との間に流れる電流値を算出し、演算装置130に出力する。
液温取得回路116dは、温度センサー112と電気的に接続され、温度センサー112から出力される電圧値から液温情報を算出し、演算装置130に出力する。
【0033】
<3.動き検知センサー>
鍋Pの動作を検知する動き検知センサー120は、例えば3軸加速度センサーであり、
図1に示すように、演算装置130と別体にしてもよいし、演算装置130内に設けてもよい。
【0034】
<4.演算装置>
まず、
図1に基づいて、演算装置130のハードウェア構成について説明する。
演算装置130は、制御装置131と、通信装置132と、記憶装置133とを有している。
制御装置131は、CPU(Central Processing Unit)131aおよびメモリー131bを主に備えて構成されている。
【0035】
制御装置131では、CPU131aがメモリー131bまたは記憶装置133等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能手段として機能する。
この機能手段の詳細については後述する。
【0036】
通信装置132は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成されている。
【0037】
記憶装置133は、ハードディスク等で構成されており、制御装置131における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、および処理結果の情報を記憶する。
【0038】
なお、演算装置130は、専用または汎用のサーバー・コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。
また、演算装置130は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。
また、
図1は、演算装置130が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、演算装置130は、サーバーが一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0039】
次に、
図5に基づいて、演算装置130の機能的構成について説明する。
演算装置130は、
図4に示すように、機能的構成として、記憶手段134と、塩分濃度推定手段135と、BRIX濃度換算手段136とを備えている。
なお、記憶手段134は、一または複数の記憶装置133で実現される。
その他の機能的構成は、記憶装置133に格納されたプログラムを制御装置131が実行することにより実現される。
【0040】
記憶手段134は、例えば、電気導電率データ134a、水温データ134b、振動データ134c、塩分濃度換算テーブル134d、BRIX濃度換算テーブル134e等を記憶する機能手段である。
塩分濃度換算テーブル134dは、液体毎かつ温度毎に作成された電気導電率と塩分濃度とを対応づけるデータ群である。
BRIX濃度換算テーブル134eは、液体毎かつ温度毎に作成された塩分濃度とBRIX濃度とを対応づけるデータ群である。
【0041】
塩分濃度推定手段135は、塩分濃度換算テーブル134dに基づいて、電気導電率センサー111および温度センサー112の出力値を液体の塩分濃度として換算する機能手段である。
【0042】
BRIX濃度換算手段136は、BRIX濃度換算テーブル134eに基づいて、塩分濃度推定手段135から出力された液体の塩分濃度を液体のBRIX濃度として換算する機能手段である。
【0043】
<5.BRIX濃度報知手段>
BRIX濃度報知手段140は、例えば表示装置(ディスプレイ)であり、
図6に示すように、鍋Pに入った液体Sの温度、BRIX濃度、動き検知センサー120の検出値をグラフにして表示する。
また、BRIX濃度報知手段140は、
図1に示すように、BRIX濃度換算手段136から出力された液体のBRIX濃度が所定の濃度範囲を外れた場合に異常を報知する異常報知手段141を有している。
【0044】
<6.濃度監視システム100による濃度監視>
次に、本発明の一実施例である濃度監視システムによる濃度監視フローを示すフローチャートである
図7に基づき、上述した濃度監視システム100による濃度監視について説明する。
【0045】
(ステップS10)
まず、鍋Pに入った液体Sの電気伝導率を電気導電率センサー111により、鍋Pに入った液体Sの温度を温度センサー112によりそれぞれ測定する。
【0046】
具体的には、演算装置130は、計測回路116の電位差取得回路116bから取得した電圧Eと、電流電圧変換回路116cから取得した電流値Iに基づき、液体Sの抵抗値Rを算出する。
すなわち、液体Sの抵抗値Rは、
R=E/I
で算出できる。
【0047】
次に、この液体Sの抵抗値Rから、液体Sの電気導電率ECは、αを変換定数として、
EC=α/R
で算出する。
なお、変換定数αは、既知の塩分濃度の食塩水によって校正されている。
【0048】
(ステップS20)
次に、記憶手段134に保存された塩分濃度換算テーブル134dにより、ステップS10で測定された液体Sの電気導電率ECに基づいて液体Sの塩分濃度を推定する。
【0049】
(ステップS30)
次に、記憶手段134に保存されたBRIX濃度換算テーブル134eにより、ステップS20で推定された液体Sの塩分濃度に基づいて温度補正された液体SのBRIX濃度を推定する。
【0050】
(ステップS40)
次に、推定された液体SのBRIX濃度をBRIX濃度報知手段140により報知する。
【0051】
(ステップS50)
次に、動き検知センサー120が鍋の動きを検知したか否かを判定する。
動き検知センサー120が鍋の動きを検知しなかった場合はステップS60に進み、動き検知センサー120が鍋の動きを検知した場合は液体SのBRIX濃度が高すぎる又は低すぎることの判定を行わずに、本フローを終了する。
【0052】
(ステップS60)
次に、推定された液体SのBRIX濃度が、所定の上限値よりも小さいか否かを判定する。
推定された液体SのBRIX濃度が所定の上限値よりも小さい場合はステップS70に進み、推定された液体SのBRIX濃度が所定の上限値よりも小さくない場合はステップS61に進む。
【0053】
(ステップS61)
ステップS61では、BRIX濃度が高すぎる(すなわち、液体Sが煮詰まって濃くなっている)ため、液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲を外れているとして、異常報知手段141により異常を報知する。
【0054】
(ステップS70)
ステップS70では、推定された液体SのBRIX濃度が、所定の下限値よりも大きいか否かを判定する。
推定された液体SのBRIX濃度が所定の下限値よりも大きくない場合はステップS71に進み、推定された液体SのBRIX濃度が所定の下限値よりも大きい場合は推定された液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲内であるとして、特別の報知を行わずに、本フローを終了する。
【0055】
(ステップS71)
ステップS71では、BRIX濃度が低すぎる(すなわち、液体Sが薄まりすぎている)ため、液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲を外れているとして、異常報知手段141により異常を報知する。
【0056】
したがって、本発明の一実施例である濃度監視システム100によれば、動き検知センサー120が鍋Pの動きを検知しない場合において、推定された液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲から外れた場合に異常報知手段141が異常を報知する。
また、動き検知センサー120が鍋Pの動きを検知した場合においては、推定された液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲から外れた場合であっても、異常報知手段141は異常を報知しない。
【0057】
<7.濃度監視システム100が奏する効果>
以上説明した本実施例の濃度監視システム100によれば、鍋Pに入った液体Sに沈めて液体Sの電気導電率を測る鍋Pに取付自在な電気導電率センサー111と、鍋Pに入った液体Sに沈めて液体Sの温度を測る鍋に取付自在な温度センサー112と、電気導電率センサー111および温度センサー112の出力値を液体Sの塩分濃度として換算する塩分濃度推定手段135と、この塩分濃度推定手段135から出力された液体Sの塩分濃度を液体SのBRIX濃度として換算するBRIX濃度換算手段136と、このBRIX濃度換算手段136から出力された液体のBRIX濃度を報知するBRIX濃度報知手段140と、を備えていることにより、電気導電率センサー111と温度センサー112とを鍋Pに入った液体Sに沈めるだけで鍋Pに入った液体SのBRIX濃度が報知されるため、店舗スタッフが鍋Pに入った液体SのBRIX濃度を容易に常時確認できることができるだけでなく、液体Sの屈折率ではなく電気導電率に基づいてBRIX濃度を算出するため、油分を含むスープのような液体Sであっても精度良くBRIX濃度を算出することができる。
【0058】
また、電気導電率センサー111と温度センサー112とを取り囲んで保護する筒状のセンサー保護部材115を備えていることにより、電気導電率センサー111と温度センサー112とが鍋Pに直接触れなくなるため、電気導電率センサー111が誤って鍋Pの電気伝導率を測定したり、温度センサー112が誤って鍋Pの温度を測定したりすることを防ぐことができる。
また、鍋Pの底面Pbと対向するセンサー保護部材115の先端側が底部115dで閉塞されていることにより、鍋Pの底に沈んだ具材に対して電気導電率センサー112や温度センサー112ではなくセンサー保護部材115の先端部が接触するため、電気導電率センサー112や温度センサー112が鍋Pの底に沈んだ具材と接触して損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
また、動き検知センサー120が鍋Pの動きを検知しない場合には、異常報知手段141が異常を報知し、動き検知センサー120が鍋Pの動きを検知した場合には、異常報知手段141が異常を報知しないことにより、鍋P自体に振動が加わって液面が揺れた際などに、BRIX濃度換算手段136から出力されたBRIX濃度が異常値となったとしても、BRIX濃度報知手段140が異常値となるBRIX濃度を報知しないため、液体のBRIX濃度測定環境に異常事態が生じたとしても、異常事態を適切に排除して液体のBRIX濃度を測定することができる。
【0060】
また、BRIX濃度報知手段140が、液体SのBRIX濃度が所定の濃度範囲(所定の下限値~所定の上限値の範囲)から外れたことを報知することにより、鍋Pに入った液体Sが煮詰まって液体Sの濃度が所定の濃度よりも高くなった場合や鍋Pに入った液体Sが薄まりすぎた場合に外部にその旨が報知されるため、店舗スタッフが液体Sの濃度を能動的に確認する手間を減らすことができる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明の一実施例である濃度監視システム100について説明したが、本発明の濃度監視システムは、上述した実施例の濃度監視システム100に限定されるものではない。
【0062】
例えば、本実施例において、鍋Pは台Bに載置されていたが、鍋Pの設置場所は台Bへの載置に限定されるものではなく、例えば、焜炉やIH調理器具等、いかなるものの上に載置されていてもよい。
【0063】
例えば、本実施例において、BRIX濃度報知手段140は、センサー110の近傍、すなわち、鍋Pと同じ店舗内に設けられていたが、BRIX濃度報知手段140を鍋Pと離れた場所(例えば、同じ店舗の別室や、店舗外)に設けて、遠隔で鍋Pに入った液体Sの濃度を確認してもよい。
【0064】
例えば、本実施例において、店舗スタッフが液体Sの濃度を能動的に確認していたが、液体の濃度を確認するのは店舗スタッフに限定されるものではなく、BRIX濃度報知手段140が設置されている場所に居る者であれば、いかなる者であってもよい。
【0065】
例えば、本実施例において、液体Sの塩分濃度は、塩分濃度変換テーブル134dにより推定されていたが、液体の塩分濃度の推定方法は塩分濃度変換テーブルによる推定に限定されるものではなく、例えば、温度補償付き導電率塩分濃度関数F(EC,T)により都度算出してもよい。
【0066】
例えば、本実施例において、液体SのBRIX濃度は、BRIX濃度変換テーブル134eにより推定されていたが、液体のBRIX濃度の推定方法はBRIX濃度変換テーブルによる推定に限定されるものではなく、例えば、予め用意した関数により都度算出してもよい。