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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174545
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ぞうり
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/00 20220101AFI20221116BHJP
   A43B 3/12 20060101ALI20221116BHJP
   A43B 7/00 20060101ALI20221116BHJP
   A43B 7/14 20220101ALI20221116BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20221116BHJP
   A61F 5/14 20220101ALI20221116BHJP
【FI】
A43B3/00 103B
A43B3/12 B
A43B7/00
A43B7/14 Z
A43B13/14 B
A61F5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080415
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】505173267
【氏名又は名称】株式会社 誉
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】植草 豊
【テーマコード(参考)】
4C098
4F050
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB12
4C098BD02
4F050AA15
4F050AA28
4F050BA25
4F050EA05
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA59
4F050JA27
4F050LA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】履くだけで、足形の崩れを解消し得る足指運動を促進するぞうりを提供する。
【解決手段】台座10と、前坪41が台座の前後方向に幅を有する帯状である鼻緒40と、を備えたぞうり1であって、前記台座は、合成樹脂製の成形品であり、前記台座の上面を覆う第1の被覆部材17と、前記第1の被覆部材の上面の一部領域をさらに覆う第2の被覆部材20とが設けられており、前記第2の被覆部材は、足横幅方向にわたる前側縁辺22に前記第1の被覆部材の表面に対して段差24を形成する予め定められた厚みを有し、前記前側縁辺は、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状を有すると共に、前記くの字状の頂部が前記前坪の前記台座への挿げ位置より小指側に位置し、親指側の縁辺ライン23が前記頂部から前記前坪の挿げ位置の後方に延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、台座上の前部に形成された前方取付孔に前坪の先端が挿げられ固定されていると共に台座上の後部左右両縁寄りに形成された2つの後方取付孔に前記前坪から左右両側後方にそれぞれ延びる2本の横緒の各端部が挿げられ固定されており、前記前坪が台座の前後方向に幅を有する帯状である鼻緒と、を備えたぞうりであって、
前記台座は、合成樹脂製の成形品であり、前記台座の上面を覆う第1の被覆部材と、前記第1の被覆部材の上面の一部領域をさらに覆う第2の被覆部材とが設けられており、
前記第2の被覆部材は、足横幅方向にわたる前側縁辺に前記第1の被覆部材の表面に対して段差を形成する予め定められた厚みを有し、
前記前側縁辺は、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状を有すると共に、前記くの字状の頂部が前記前坪の前記台座への挿げ位置より小指側に位置し、親指側の縁辺ラインが前記頂部から前記前坪の挿げ位置の後方に延びていることを特徴とするぞうり。
【請求項2】
前記第2の被覆部材の前記段差を形成する前記縁辺の厚みが、2mm~10mmであることを特徴とする請求項1に記載のぞうり。
【請求項3】
前記台座は、足裏の第2~4指の付け根が当接する領域にわたって山状の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のぞうり。
【請求項4】
前記鼻緒の2本の横緒は、幅を持つ帯形状を有しており、親指側の横緒の幅が、親指付け根位置で最大に拡大しており、その最大幅が、対称位置にある小指側の横緒の幅より大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のぞうり。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履くだけで足指運動を促し、体調不良の原因となる足形の崩れを解消する効果が期待できるぞうりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、心身の健康に影響するものとして、足元の健康が注目されている。足形や足元の姿勢の崩れに起因する重心の偏りから膝や腰、さらには背中から肩、首への筋肉にストレスがかかり、関節痛や肩こり、頭痛など、心身の不調につながることになる。
【0003】
足形の崩れの主な原因として、ハイヒールや先細の革靴など窮屈な靴を履き続けることによるつま先の圧迫が挙げられる。つま先の圧迫により、親指の外反や小指の内反、また浮き指といった足指の変形が生じる。これらの足指の変形によって、全足指でしっかり地面を踏みしめることができず、重心がかかと側へ偏った状態で歩行することになる。
【0004】
身体は、自然にこの重心の偏りを正そうとして前傾姿勢を取るように膝が曲がった歩行になったり、背中が丸くなる猫背など、姿勢が悪化する。この悪化した姿勢が習慣になると、全身的に関節や筋肉へのストレスがたまり、前述のような不調を来す。
【0005】
そこで、全足指で地面を踏みしめ、足裏全体で体を支えることができるように、足形の崩れを解消することを目的として日常的に利用できる履物が各種開発されている。その中で、まず考えられているのは、指と指の間を広げられる形態のものである。特に、ぞうり型の履物は、外反母趾対策用に好ましいとされている。
【0006】
ぞうりは、一般的な構造として、足形輪郭を持つ台座の上面に装飾的なシートで覆って、足裏が当たる「天」と呼ばれる表面が形成され、ハの字状の鼻緒が挿げられている。鼻緒は、前端部で足の親指と第2指とに挟まれる前坪と、前坪から左右両側後方に延びて足の甲にかかるための2本の横緒とから成る。従って、ぞうりは、履くだけで、親指と第2指の間に入る前坪によって、両指を離す機能が発揮される。また、全指が外側から内側へ圧迫されることなく自由に動かすことができる。
【0007】
そして、このような鼻緒を有するぞうりを基本型として、その他の指同士の間も広げるような機構を更に備えたものがある。例えば、特許文献1では、足指踏圧面に、各足指の中間へ挿入する突条を設けて骨格を扇形状に拡開するものが開示されている。また、さらに、ぞうりの台面に多数の突起を設けて足裏のつぼを刺激して、血行促進、指圧効果による健康促進を狙ったつぼ押しぞうりも考えられている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平02-96902号公報
【特許文献2】特開2000-287701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単に足指同士の間を広げたり、つぼ押しの機能を備えたぞうりを履くだけでは、血行促進や指間の解放感が一時的に得られるだけである。不調の解消を持続的なものにするには、根本的に足形の崩れを解消できるような積極的な足指の運動が必要である。例えば、全足指を硬く握ったり緩めて開いたりするグーパー動作を、繰り返しかつ頻繁に行う運動である。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、履くだけで、足形の崩れを解消し得る足指運動を促進するぞうりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るぞうりは、台座と、台座上の前部に形成された前方取付孔に前坪の先端が挿げられ固定されていると共に台座上の後部左右両縁寄りに形成された2つの後方取付孔に前記前坪から左右両側後方にそれぞれ延びる2本の横緒の各端部が挿げられ固定されており、前記前坪が台座の前後方向に幅を有する帯状である鼻緒と、を備えたぞうりであって、
前記台座は、合成樹脂製の成形品であり、前記台座の上面を覆う第1の被覆部材と、前記第1の被覆部材の上面の一部領域をさらに覆う第2の被覆部材とが設けられており、
前記第2の被覆部材は、足横幅方向にわたる前側縁辺に前記第1の被覆部材の表面に対して段差を形成する予め定められた厚みを有し、
前記前側縁辺は、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状を有すると共に、前記くの字状の頂部が前記前坪の前記台座への挿げ位置より小指側に位置し、親指側の縁辺ラインが前記頂部から前記前坪の挿げ位置の後方に延びているものである。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るぞうりは、請求項1に記載のぞうりにおいて、前記第2の被覆部材の前記段差を形成する前記前側縁辺の厚みが、2mm~10mmであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るぞうりは、請求項1又は2に記載のぞうりにおいて、前記台座は、足裏の第2~4指の付け根が当接する領域にわたって山状の凸部が設けられているものである。
【0014】
請求項4に記載の発明に係るぞうりは、請求項1~3のいずれか1項に記載のぞうりにおいて、前記鼻緒の2本の横緒は、幅を持つ帯形状を有しており、親指側の横緒の幅が、親指付け根位置で最大に拡大しており、その最大幅が、対称位置にある小指側の横緒の幅より大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるぞうりにおいては、履くだけで足の親指と第2指との間を広げると共に、踏み出す際に、第2の被覆部材の前側縁辺の厚みによって形成される段差に全指先が引っかかって自然に握って掴むグー状態が得られるため、歩くだけで足指のグーパー運動が容易に促され、その結果、足指の筋肉が強化されて足形の崩れも解消可能となるという効果がある。従って、足形の崩れに起因した心身の各種不調を解消し得るという効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例としての左足用のぞうりの概略全体構成図であり、(a)は親指側側面図、(b)は(a)図を若干傾けた斜視図、(c)はつま先側から見た斜視図、(d)は(c)図のぞうりを履いた際の状態図である。
図2図1のぞうりの小指側部分側面図であり、(a)はつま先部分の拡大側面図、(b)は図1(c)のA-A部分断面で台座のみを示すつま先部分の概略拡大図である。
図3図1のぞうりの小指側から見た概略全体構成図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)図のぞうりを履いて踏み出した際の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるぞうりにおいては、台座と、台座上の前部に形成された前方取付孔に前坪の先端が挿げられ固定されていると共に台座上の後部左右両縁寄りに形成された2つの後方取付孔に前記前坪から左右両側後方にそれぞれ延びる2本の横緒の各端部が挿げられ固定されており、前記前坪が台座の前後方向に幅を有する帯状である鼻緒と、を備えたぞうりであって、前記台座は、合成樹脂製の成形品であり、前記台座の上面を覆う第1の被覆部材と、前記第1の被覆部材の上面の一部領域をさらに覆う第2の被覆部材とが設けられており、前記第2の被覆部材は、足横幅方向にわたる前側縁辺に前記第1の被覆部材の表面に対して段差を形成する予め定められた厚みを有し、前記前側縁辺は、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状を有すると共に、前記くの字状の頂部が前記前坪の前記台座への挿げ位置より小指側に位置し、親指側の縁辺ラインが前記頂部から前記前坪の挿げ位置の後方に延びている。
【0018】
以上の構成により、本発明のぞうりを履くだけで、まず、自然状態において前坪が足親指と第2指との間に挟まり、両指の間を広げる。しかも、前坪は、前後方向に幅を持つ帯状であるため、指の長さ方向にわたって両指を互いに離反する方向へ付勢するため、特に親指の外反に抗する方向へ効果的に作用する。外反母趾は、親指のつけ根のMTP関節(中足骨遠位と基節骨近位からなる)部分が外側へ出っ張り、指先が第2指に重なるよう小指側に曲がってしまった状態である。従って、足親指の指先が第2指から離反する方向への付勢力を受け続けることで、外反母趾の解消が促される。
【0019】
なお、足サイズによって個人の足指の長さが異なるため、足親指と第2指との間で挟まれる前坪の効果的な最小幅も異なってくる。一方、ぞうり製品としては、例えば、S,M,L,LLというように足サイズ別とすることが通常であるため、前坪の幅も各種サイズに応じて段階的に変更すれば良いが、実質的に10mm~20mmの幅範囲で設定することが好適である。また、前坪を台座面に対して後方へ傾斜させることによって、親指と第2指との離反方向への付勢領域が指股の傾斜に沿って増加し親指を外方へ広げる作用がより効果的に発揮される。この前坪の台座面に対する後方傾斜角度は、指股の傾斜に対応する45度~65度の範囲が好適である。この範囲外では指股の傾斜に沿わず、傾斜がきついと指間への前坪の挿入が妨げられ、履き難くなり、上限より立ち上がりすぎると、両指を互いに離反する方向へ付勢する領域が小さくなり、前記付勢力の効果が低減する。
【0020】
また、前坪に、親指と第2指とへの離反方向への付勢力を効果的に発揮させるには、ある程度の厚みを持たせる必要がある。好適には、最大厚み部分で5mm~8mmの範囲である。この下限より厚みが小さいと、両指の間にできる間隔が小さく、前記付勢力が生じにくい。またこの上限より厚すぎると、指股が広がりすぎて、場合によっては痛みを感じることも考えられ、履き続けることが困難となる。なお、比較的前坪の厚みが大きくても、前坪の内部にクッション材を包含させることで、指股への刺激を緩和して本発明のぞうりを履き続けやすくすることができる。
【0021】
さらに、本発明においては、台座上面を覆う第1の被覆部材の上面にさらに設けられた第2の被覆部材の前側縁辺は、その厚みによって、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状で段差を形成しているため、ぞうりを履いた状態で指先を踏ん張ると、親指を含む全足指の腹の後部分がその段差に引っかかって自然に縁を掴むグー動作となり、履いて歩いているうちにグーパー運動が自然に促されて繰り返される。
【0022】
なお本発明においては、段差を形成するくの字状の前側縁辺は、その縁辺ラインの頂部が前坪の挿げ位置より小指側に位置し、親指側の縁辺ラインが頂部から前坪の挿げ位置の後方に延びており、グー動作で親指が確実に段差を掴める位置付けとしているため、全足指の筋肉が強化され、足形全体の崩れが解消されやすくなる。このような親指側の縁辺ラインの位置付けとしては、ほぼすべての人の親指に対応できるものを目指す。
【0023】
特に親指の長さは個人によって様々であり、同じ足サイズであっても全く同じではないことから、多人数の足全長に対する足指の長さの比率の測定結果に基づき、若干足指の付け根寄りに段差が来るように設定するのが良いことがわかった。具体的には、足全長に相当するぞうりの前後方向最大長さに対して、前記くの字状の前側縁辺のうちの親指側の縁辺ラインの中央位置から台座前方端までの距離が18~22%の範囲が好適であり、より平均的に望ましいのは、19~20%である。
【0024】
また、上記段差を形成する前側縁辺の厚みとしては、指先が引っかかりやすい2mm~10mmの範囲が適切である。この下限より厚みが小さいと、引っかかりが不十分で段差の有無にあまり差がない。10mmを越えて厚すぎると、段差が高すぎて歩き難くなる恐れがある。
【0025】
また、本発明のぞうりは、通勤、通学等の外出時以外の日常で頻繁に利用しやすくするために、軽量であることが望まれる。従来の各種ぞうりでも、軽量タイプのものにおいては、コルクの裁断加工品、あるいはポリウレタン(PU)やエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂等の合成樹脂製の成形品が台座として採用されている。本発明のぞうりにおいても、同様に軽量な素材を台座に採用することが好ましい。なかでも、EVA樹脂はより軽量であり、ポリウレタンのように加水分解による経年劣化の心配がない点で好ましい。また、EVAに他の樹脂をブレンドして耐摩耗性、耐久性をより向上させた素材としても良い。
【0026】
またEVAを含め、熱可塑性で金型によって成形できる素材であれば、台座を任意の形状に一体成形できる。例えば、ぞうりの底面となる台座下面に、滑り止めの突起や溝などを一体的に形成することも容易である。また台座のつま先を反らせたり、中央部をくぼませるなど、全長にわたって厚みが連続的に変異する曲線的な断面形状にも金型によって対応できる。
【0027】
さらに、台座に、足裏の第2~4指の付け根が当接する領域にわたって山状の凸部を設けると、第1の被覆部材および第2の被覆部材を重ねた後にもこの山状の凸部が天面に現れる。この凸部によって、足裏の第2~4指の付け根が若干山なりに押し上げられ、足の左右横幅方向に沿ったアーチがキープされやすくなる。この横幅方向のアーチは、土踏まずと言われる前後縦方向のアーチと共に、踏み出し時の動力を発生させるバネ作用と接地時の衝撃を緩衝するクッション作用、および片足立時の安定作用のために必要なものであるが、このアーチが潰れた開張足状態でも、親指のつけ根にねじれた力がかかりやすく外反母趾になりやすいと考えられている。
【0028】
また、鼻緒は、親指側の横緒と小指側の横緒の2本が前坪から後方へハの字状に延びて足の甲にかかるものであるが、本発明のぞうりは、外出時以外で日常的に履いて歩くことを容易にするため、横緒は細い紐状のものではなく、甲への当たりを優しくするようにある程度以上の幅を持ったものとする。
【0029】
そして、その上で、親指側の横緒を、小指側の横緒より幅広として、親指のつけ根の外側に出っ張ったMTP関節部分を覆うことができる設計とすることが好ましい。外反母趾状態では、一般的なぞうりを履くと通常の細い横緒が親指の付け根の出っ張り部分にあたって痛みを生じていたが、その付け根部分を広く覆うように接する幅広の横緒とすることで、痛みが回避される。また、親指を第2指から外側へ離す付勢を痛みなくサポートすることができる。
【0030】
具体的には、例えば、小指側の横緒を1.5~2.5cm程度の幅をもつものとし、親指側の横緒は、親指の付け根部分に当たる部分の幅が最大に拡大する形状として、最大幅を3~5cm程度とするのが適している。あるいは、親指側の横緒の最大幅位置と対称位置にある小指側の横緒の幅の1.2~3倍程度とする。
【0031】
また、横緒は、クッション性を有するものとすることが望ましい。例えば、所定外形の布地にポリウレタン発泡材等のクッション材を中に入れて折りたたんで端同士を縫い合わせればクッション性を有する横緒を簡便に作製できる。なお、前坪となる先端部を横緒と一体に形成し、左右の横緒の先端部同士を縫い合わせて前坪を形成することができる。この場合、前坪用に別部材を用意する必要はなく、また布地を裁断する際に、前坪相当部分の幅や傾斜等の設計を任意に決定できる。
【0032】
なお、本発明のぞうりの構成では、実際に足裏に直接当たるのは第2の被覆部材であるため、その素材は、好感触となるものから選択することが望ましい。例えば、まず足裏の湿り気による不快感を解消できるものが好ましい。そこで、天然、あるいは人工のい草部材から構成された畳表シートが好適なものとして挙げられる。い草は、湿度調節機能や保湿・断熱機能を有している。天然のい草は特有の香りから清潔感や清涼感が得られる。
【0033】
このような畳表シートを第2の被覆部材として第1の被覆部材の上に重ねて設ける方法としては、接着材等による貼着だけでなく、縫い付けでもよい。ただし、畳表シートの端が直接足裏に接することがないように、通常の畳表の畳縁を介した縫い付けと同様に、畳表シートの全周にわたって、別の縁布で縁辺を覆った状態で前記台座に縫い付れば良い。
【0034】
第1の被覆部材に関しては、その表面に触れるのは、実質的に第2の被覆部材から出ている足指の腹のみであるため、適度になめらかな表面のものであれば、特に限定されるものではない。ただし、比較的機械的強度が高く、破れにくいが低コストで成形が容易なものが望まれるため、例えば、ポリプロピレンやポリエステル等の合成樹脂素材が好適である。またその台座上面への取付けは、接着材や融着による貼着や第2の被覆部材と同様の縫い付けでも良い。
【実施例0035】
本発明の一実施例によるぞうりを図1~3に示す。ここでは、説明の簡便のため、左右対称の一足のぞうりのうち、左足用のぞうりを例に説明し、右足用ぞうりの図示及び説明は省いた。図1の(a)は親指側側面図、(b)は(a)図を若干傾けた斜視図、(c)はつま先側から見た斜視図、(d)は(c)図のぞうりを履いた際の状態図である。図2の(a)は小指側のつま先部分の拡大側面図、(b)は図1(c)のA-A部分断面で台座のみを示すつま先部分の概略拡大図である。図3の(a)は小指側から見た全体斜視図、(b)は(a)図のぞうりを履いて踏み出した際の状態図である。
【0036】
本実施例によるぞうり1は、無発泡EVA製の台座10を土台としたものであり、上方に反ったつま先部11と、エッジ部が面取りされたかかと部12を備え、底面13に多数の滑り止め用の突起14と溝15とが形成されている。さらに、上面はつま先からかかとに掛けて緩やかな凹面状を有していると共に、第2~第4指の付け根が当たる領域にわたって山状の凸部16が設けられている。このような形状の台座10は、例えば、熱可塑性素材の金型への射出成形によって、あるいは、ペレット状素材の金型内での加圧加熱成形によって一体成形品として簡便に製造できる。
【0037】
台座10の上面は、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル等の比較的吸水性の低いプラスチックシートからなる第1の被覆部材17で覆われている。第1の被覆部材17の台座面上への装着は、全周にわたって縁取った別の縁布18を介して縫い付けることによって成されている。
【0038】
第1の被覆部材17が装着された台座10の表(天)面には、鼻緒40を装着するために、前部の中央から親指寄りの位置に前方取付孔30が形成され、後部左右両縁寄りに2つの後方取付孔(31,32)が形成されている。
【0039】
第1の被覆部材17の上面には、その一部領域を覆う第2の被覆部材20が更に装着されている。前方取付孔30および後方取付孔(31,32)がこの第2の被覆部材20の領域外に位置するように設定されている。第2の被覆部材20は、天然のい草部材、あるいは和紙製などの人工のい草部材から構成された畳表シートであり、その全周にわたって縁取った別の縁布21を介して台座10上に縫い付けられている。
【0040】
第2の被覆部材20の足横幅方向にわたる前側縁辺22は、2~10mmの厚みを有し、第1の被覆部材17の表面に対して段差24を形成している。この前側縁辺22は、足裏の全足指の腹と付け根との間のくぼみをつなぐラインに沿ったくの字状となっており、このくの字状の前側縁辺22のうち、親指側の縁辺ライン23がくの字の頂部から前坪挿げ用の前方取付孔30の後方へ延びている。具体的には、親指側の縁辺ライン23の中央位置から台座前方端までの距離Yが足サイズに相当するぞうりの最大全長Xの19~20%となる位置である。
【0041】
ここで、最大全長X=23cmであるSサイズのぞうり1の場合を本実施例として例示する。このぞうり1では、距離Yが45mmであり、全長Xの約19.6%となっている。このぞうり1は、ほとんどのSサイズの足において、足指のグー動作を行うと、親指も確実にその指先腹で親指側の縁辺ライン23の段差24を掴むことができる設定となっている。
【0042】
また、第1の被覆部材17の領域に形成された前方取付孔30と左右後方取付孔(31,32)には、鼻緒40の前坪41の先端と、前坪41から左右両側後方にそれぞれ延びる小指側の横緒42および親指側の横緒43の各端部が挿げられ固定されている。
【0043】
本実施例における鼻緒40は、2本の横緒基材によって構成されている。即ち、各横緒(42,43)の前端にそれぞれ延在部分が設けられており、この延在部分同士が縫い合わされて前坪41が形成されている。従って、鼻緒40は、前坪41と各横緒(42,43)とが連続している。2本の横緒基材は、それぞれ一枚の布地を折り合わせ、中にポリウレタン等のクッション材を入れた状態で端を縫い合わせて所定の幅を有する帯状に形成されたものである。布地には、例えばポリエステルや綿、あるいはこれらの混布など、一般に普及している各種布地を広く利用できる。
【0044】
本実施例では、小指側の横緒42は、中央が若干幅広となるように縁が前端から後端にかけて緩やかな曲線を有している。このSサイズぞうり1では、前端と後端の幅を約15mm、中央部の幅を約25mmとした。また、親指側の横緒43も、同様に、一枚の布地を折り合わせた中にクッション材を入れて縫い合わせて帯状に形成されている。このようにある程度の幅とクッション性を持つ横緒(42,43)は、甲への当たりが優しく、日常的に履きやすい。
【0045】
なお、親指側の横緒43は、前端と後端は小指側の横緒42と同じ幅であるが、親指の付け根に当たる部分の幅Dを、その対称位置にある小指側の横緒42の幅dの1.5倍以上の幅広とした。ここでのSサイズぞうり1では、小指側の横緒42の幅dを約20mmとしたのに対し、親指側の横緒43の最大幅Dを約35mmとした。この親指側の横緒43の幅広部分は、親指の付け根部分を覆うように当たるため、親指が外反母趾であっても、その出っ張り部分を包み込むように接し、痛みを感じることなく、履きやすい。また前坪41によって親指が外反に抗して第2指から離反方向へ付勢されるのをサポートできる。
【0046】
鼻緒40の前坪41は、前述のように2本の横緒(42,43)の前端からの延在部分同士を縫い合わせて形成しており、両部分とも中にクッション材が入っているため、前坪41として比較的厚みが大きくても、指股に痛みを感じさせることなく、親指と第2指とを互いに離反する方向に付勢できる。さらに、前坪41は、帯状に台座前後方向に幅を持たせ、且つ後方に傾斜させているため、指の長さ方向にわたって、前記付勢力を効果的に作用させるため、履くだけで親指と第2指とを良好に開かせることができる。本実施例のSサイズぞうり1においては、前坪41の最大厚みを約5mm、幅を10~15mmとし、台座面からの後方傾斜角度αを55度とした。
【0047】
また、台座10には、足裏の第2~4指の付け根が当接する領域にわたって山状の凸部16が設けられているため、第1の被覆部材17および第2の被覆部材20が重なった状態でもその凸部16が現れている。この凸部16によって、足裏の左右横幅方向のアーチがキープされやすい。該アーチが潰れた状態においては親指の付け根にかかるねじれた力がかかって外反母趾を悪化させ得るが、これを回避させることができる。
【0048】
以上の構成を備えた本実施例のぞうり1を履けば、まず親指と第2指との間が広げられる。そして図3(b)に示すように、歩き始めの踏み出そうとした際に、指先を踏ん張って握りながら足の甲を上方に反らせると、全足指の腹が第2の被覆部材20の前側縁辺22の段差24に引っかかって、自然とこの段差24を掴んだグー動作となり、歩きつづけるだけで、グーパー運動が促進され、容易に繰り返すことができる。
【0049】
なお、以上の実施例においては、Sサイズぞうりの一例を示したが、各部分の素材はこれに限定されず、適宜選定される。また数値設定についても、例えば、M,L,LLサイズ等に応じてそれぞれ条件に沿った数値となるように設定して製品を用意しておけば、さまざまな足サイズの人に本発明の効果が発揮される。
【符号の説明】
【0050】
1:ぞうり
10:台座
11:つま先部
12:かかと部
13:底面
14:突起
15:溝
16:凸部
17:第1の被覆部材
18:縁布
20:第2の被覆部材
21:縁布
22:前側縁辺
23:親指側の縁辺ライン
24:段差
30:前方取付孔
31,32:後方取付孔
40:鼻緒
41:前坪
42:小指側の横緒
43:親指側の横緒
図1
図2
図3