(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174940
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
F02D 41/20 20060101AFI20221117BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20221117BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20221117BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221117BHJP
F02M 63/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F02D41/20
F02M51/00 A
F02M51/06 Z
F02D45/00 376
F02M63/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081001
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 直人
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 光二郎
(72)【発明者】
【氏名】于 歌
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G066BA51
3G066CC01
3G066CD26
3G301LB01
3G301LB11
3G301NA06
3G301NA08
3G384BA11
3G384DA04
3G384DA36
3G384EE25
3G384EE35
3G384FA13Z
(57)【要約】
【課題】各燃料噴射弁に取り付けられた無線タグからの受信電波強度に基づき燃料噴射弁が搭載された気筒を判別するシステムにおいて、気筒の判別精度を向上させる燃料噴射システムを提供する。
【解決手段】複数の無線タグ21-24は、各燃料噴射弁11-14に取り付けられ、対応する燃料噴射弁11-14の固有情報が含まれる電波を送信可能である。2個のリーダ30、40は、各無線タグ21-24からの電波を受信して固有情報を読み込み可能である。気筒判別部50は、リーダ30、40が読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する燃料噴射弁が搭載された気筒を判別する。各無線タグ21-24からリーダ30、40までの距離は、無線タグ21-24毎に異なっている。気筒判別部50は、各無線タグ21-24からの電波に対する第1リーダ30の受信電波強度と第2リーダ40の受信電波強度との比である受信電波強度比に基づき、気筒を判別する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(90)の複数の気筒(91-94)にそれぞれ搭載された複数の燃料噴射弁(11-14)と、
各前記燃料噴射弁に取り付けられ、対応する前記燃料噴射弁の固有情報が含まれる電波を送信可能な複数の無線タグ(21-24)と、
各前記無線タグからの電波を受信して前記固有情報を読み込み可能な2個以上のリーダ(30、40)と、
前記リーダが読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する前記燃料噴射弁が搭載された前記気筒を判別する気筒判別部(50)と、
を備え、
各前記無線タグから前記リーダまでの距離は前記無線タグ毎に異なっており、
前記2個以上のリーダは、互いに異なる箇所に配置された第1リーダ及び第2リーダの2個のリーダを含み、
前記気筒判別部は、各無線タグからの電波に対する前記第1リーダの受信電波強度と前記第2リーダの受信電波強度との比である受信電波強度比に基づき、前記気筒を判別する燃料噴射システム。
【請求項2】
前記第1リーダ及び前記第2リーダは、
各無線タグからの電波に対する前記第1リーダの受信電波強度の序列と前記第2リーダの受信電波強度の序列とが互いに逆順となる位置に配置されている請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記気筒判別部は、
各前記無線タグからの電波に対する前記受信電波強度比の序列に基づき、又は、
前記受信電波強度比と、前記気筒ごとに重複なく規定された前記受信電波強度比の範囲との比較により、前記気筒を判別する請求項1または2に記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
内燃機関(90)の複数の気筒(91-94)にそれぞれ搭載された複数の燃料噴射弁(11-14)と、
各前記燃料噴射弁に取り付けられ、対応する前記燃料噴射弁の固有情報が含まれる電波を送信可能な複数の無線タグ(21-24)と、
各前記無線タグからの電波を受信して前記固有情報を読み込み可能な1個以上のリーダ(30)と、
前記リーダが読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する前記燃料噴射弁が搭載された前記気筒を判別する気筒判別部(50)と、
を備え、
各前記無線タグから前記リーダまでの距離は前記無線タグ毎に異なっており、
前記気筒判別部は、各前記無線タグからの電波に対する前記リーダの受信電波強度に基づき、前記気筒を判別し、
複数の前記無線タグは一直線上に配置されており、
複数の前記無線タグが配置された前記一直線をX軸と定義し、1個以上の前記リーダのうち少なくとも1個のリーダである代表リーダを通り前記X軸に直交する直線をZ軸と定義し、前記X軸と前記Z軸との交点を基準点と定義すると、
前記基準点から前記代表リーダまでの距離は、前記気筒の判別における信頼性が保証された判別保証領域内に前記代表リーダが配置されるように設定される燃料噴射システム。
【請求項5】
前記判別保証領域は、互いに隣接する前記無線タグから前記代表リーダが受信する電波強度についての所定の信頼標準に基づく信頼区間が相互干渉しない領域として設定され、
複数の前記無線タグは、前記X軸上で等間隔に配置されており、
隣接する前記無線タグ間の距離を隣接タグ間距離と定義し、前記基準点から前記基準点に最も近い前記無線タグまでの距離を第1タグ距離と定義すると、
前記判別保証領域は、前記第1タグ距離及び前記隣接タグ間距離に応じて決定される請求項4に記載の燃料噴射システム。
【請求項6】
内燃機関(90)の複数の気筒(91-94)にそれぞれ搭載された複数の燃料噴射弁(11-14)と、
各前記燃料噴射弁に取り付けられ、対応する前記燃料噴射弁の固有情報が含まれる電波を送信可能な複数の無線タグ(21-24)と、
各前記無線タグからの電波を最終的に受信して前記固有情報を読み込み可能な1個以上のリーダ(30)と、
複数の前記無線タグと前記リーダとの間に設けられ、対応する前記無線タグからの電波を中継して前記リーダに送信する複数の中継器(25-28)と、
前記リーダが読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する前記燃料噴射弁が搭載された前記気筒を判別する気筒判別部(50)と、
を備え、
各前記無線タグから前記リーダまでの距離は前記無線タグ毎に異なっており、
前記気筒判別部は、各前記無線タグからの電波に対する前記リーダの受信電波強度に基づき、前記気筒を判別する燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の複数の気筒に搭載された各燃料噴射弁の固有情報に基づき、各燃料噴射弁が搭載された気筒を判別する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されたシステムでは、各燃料噴射弁に、その燃料噴射弁の固有情報を記憶した無線タグが取り付けられている。読取装置(無線タグ通信装置)は、各無線タグからの電波信号を受信し、固有情報を読み取る。判別部は、読取装置が受信した電波信号の強度に基づいて、強度が強いものほど読取装置からの距離が近いと判断し、複数の燃料噴射弁が実際に搭載されている気筒を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線タグからの電波に対する受信電波強度は読取装置と無線タグとの距離の二乗に反比例するため、読取装置からの距離が遠くなるほど、隣り合う気筒間での受信電波強度の差が小さくなる。したがって、特許文献1のシステムにおいて無線タグの送信電力にばらつきがあると序列が逆転する可能性があり、判別を誤るおそれがある。
【0006】
また、特許文献1には、「読取装置が設けられる位置は図示例に限定されず、エンジン側のどの位置に設けられてもよく、車両側に設けられてもよい」と記載されている。電波の受信精度を向上する視点から最適な読取装置の配置について、何ら言及されていない。
【0007】
さらに、燃料噴射弁が搭載される箇所の周辺にはエンジンヘッドのような電波障害物が存在しており、無線タグから読取装置まで電波が直線的に伝わるとは限らず、電波障害物が無い経路を迂回する場合がある。その場合、電波経路の状態の変化によって受信電波強度が変化し、判別を誤るおそれがある。特許文献1には、このような問題についても何ら言及されていない。
【0008】
本発明の目的は、各燃料噴射弁に取り付けられた無線タグからの受信電波強度に基づき燃料噴射弁が搭載された気筒を判別するシステムにおいて、気筒の判別精度を向上させる燃料噴射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様の燃料噴射システムは、複数の燃料噴射弁(11-14)と、複数の無線タグ(21-24)と、2個以上のリーダ(30、40)と、気筒判別部(50)とを備える。
【0010】
複数の燃料噴射弁は、内燃機関(90)の複数の気筒(91-94)にそれぞれ搭載されている。複数の無線タグは、各燃料噴射弁に取り付けられ、対応する燃料噴射弁の固有情報が含まれる電波を送信可能である。リーダは、各無線タグからの電波を受信して固有情報を読み込み可能である。気筒判別部は、リーダが読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する燃料噴射弁が搭載された気筒を判別する。各無線タグからリーダまでの距離は、無線タグ毎に異なっている。
【0011】
2個以上のリーダは、互いに異なる箇所に配置された第1リーダ及び第2リーダの2個のリーダを含む。気筒判別部は、各無線タグからの電波に対する第1リーダの受信電波強度と第2リーダの受信電波強度との比である受信電波強度比に基づき、気筒を判別する。
【0012】
互いに異なる箇所に配置された2個のリーダの受信電波強度比を判定値として用いることで、単に受信電波強度を用いる場合に比べ、隣り合う気筒間での判定値の差を大きくすることができる。したがって、無線タグの送信電力に多少のばらつきがあっても判別を誤る可能性が低くなる。よって、気筒の判別精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様、及び、第3の態様の燃料噴射システムは、複数の燃料噴射弁(11-14)と、複数の無線タグ(21-24)と、1個以上のリーダ(30)と、気筒判別部(50)とを備える。複数の燃料噴射弁及び複数の無線タグについては、第1の態様と同様である。リーダについては、1個以上であること以外、基本的に第1の態様と同様である。気筒判別部は、各無線タグからの電波に対するリーダの受信電波強度に基づき、気筒を判別する。
【0014】
第2の態様では、複数の無線タグは一直線上に配置されている。複数の無線タグが配置された一直線をX軸と定義し、1個以上のリーダのうち少なくとも1個のリーダである代表リーダを通りX軸に直交する直線をZ軸と定義し、X軸とZ軸との交点を基準点と定義する。基準点から代表リーダまでの距離は、気筒の判別における信頼性が保証された「判別保証領域」内に代表リーダが配置されるように設定されている。
【0015】
第2の態様では、複数の無線タグが一直線上に配置され、さらに代表リーダが判別保証領域内に配置されることで、気筒の判別精度を向上させることができる。
【0016】
第3の態様では、燃料システムは、さらに、複数の無線タグとリーダとの間に設けられ、対応する無線タグからの電波を中継してリーダに送信する複数の中継器(25-28)を備える。リーダは、各無線タグからの電波を最終的に受信して固有情報を読み込み可能である。
【0017】
これにより、燃料噴射弁の周辺に電波障害物が存在する場合であっても、無線タグからの電波を中継器が中継することで、リーダが電波を安定して受信することができる。よって、気筒の判別精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1実施形態による燃料噴射システムを示す模式側面図。
【
図3】直列配置エンジンでの
図2のIII方向矢視(模式平面)図。
【
図4】V型配置エンジンでの
図2のIV方向矢視(模式平面)図。
【
図5】第1実施形態の比較例での(a)リーダからの距離と受信電波強度との関係を示す図、(b)気筒毎の受信電波強度を示す図。
【
図6】第1実施形態での受信電波強度比の例を示す図。
【
図7】第1実施形態での気筒毎の受信電波強度を示す図。
【
図8】第1実施形態による気筒判別処理を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態による燃料噴射システムを示す模式側面図。
【
図10】直列配置エンジンでの
図9のX方向矢視(模式平面)図。
【
図11】リーダのZ方向位置に応じた受信電波強度の変化を示す図。
【
図12】第1タグ距離及び隣接タグ間距離と判別保証領域との関係を示す図。
【
図13】燃料噴射弁がシリンダヘッドに取り付けられた状態を示す模式図。
【
図14】第3実施形態の比較例での電波伝達経路を示す図。
【
図15】第3実施形態の比較例での気筒毎の受信電波強度を示す図。
【
図16】第3実施形態による燃料噴射システムでの電波伝達経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の複数の実施形態による燃料噴射システムを図面に基づいて説明する。この燃料噴射システムは、内燃機関の複数の気筒にそれぞれ搭載された複数の燃料噴射弁を判別するシステムである。実施形態の説明では内燃機関をエンジンという。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、第1~第3実施形態を包括して「本実施形態」という。
【0020】
[燃料供給システム]
最初に
図1を参照し、4気筒エンジン90に適用される燃料噴射システム200を含む燃料供給システム70の全体構成を説明する。
図1には、第1実施形態の燃料噴射システム200を代表として示す。エンジン90は、4つの気筒91、92、93、94を備える。気筒91、92、93、94には、それぞれ燃料噴射弁11、12、13、14が搭載されている。以下の明細書及び図面中、判別対象となる各気筒91、92、93、94を#1、#2、#3、#4と記す。また、連続する4つの符号を適宜、「燃料噴射弁11-14」、「無線タグ21-24」のように省略して記す。
【0021】
燃料供給システム70は、燃料タンク71、燃料フィルタ73、サプライポンプ74、燃料調量弁75、コモンレール76、複数の燃料噴射弁11-14がそれぞれパイプで接続されて構成されている。燃料タンク71の燃料は、低圧燃料パイプ72及び燃料フィルタ73を経由してサプライポンプ74に流入する。燃料調量弁75とコモンレール76との間はレール前高圧燃料パイプ771で接続されている。コモンレール76と各燃料噴射弁11-14との間は複数のレール後高圧燃料パイプ772で接続されている。
【0022】
コモンレール76に供給された高圧燃料は、複数(
図1の例では4つ)の燃料噴射弁11-14に分配される。サプライポンプ74、コモンレール76又は燃料噴射弁11-14の余剰燃料は、それぞれオーバーフローパイプ781、リリーフパイプ782、リークパイプ783からリターンパイプ784を経由して燃料タンク71に戻される。
【0023】
燃料噴射弁11-14には、それぞれ無線タグ21-24が取り付けられている。例えば無線タグ21-24はRFIDタグである。無線タグ21-24は、対応する燃料噴射弁11-14の固有情報を記憶しており、その固有情報を含む電波を送信可能である。燃料噴射弁11-14の固有情報には、識別番号や、製造ばらつきによる噴射特性を補償する補正情報等が含まれる。
【0024】
リーダ30、40は、無線タグ21-24からの電波を受信して固有情報を読み込み可能である。リーダ30、40は、データを読み書き可能なリーダライタとして構成されてもよいが、本実施形態では書き込みの機能に注目しないため、単に「リーダ」と称する。「気筒判別部」としてのECU50は、リーダ30、40が読み込んだ固有情報から、当該固有情報に対応する燃料噴射弁が搭載された気筒を判別する。
【0025】
このように、複数の燃料噴射弁、複数の無線タグ、リーダ、及び、「ECUのうち気筒判別部として機能する部分」が、本実施形態の燃料噴射システムを構成する。リーダの数は、第1実施形態では2個であり、第2、第3実施形態では1個である。第2、第3実施形態で参照されるとき、
図1における第2リーダ40は無いものとみなされる。また、第3実施形態の燃料噴射システムは、上記の他に4個の中継器を構成要素として含む。
【0026】
なお、各実施形態のECU50は、各燃料噴射弁11-14の固有情報を気筒と関連付けて記憶し、各燃料噴射弁11-14の噴射制御を行う。さらにECU50は、コモンレール76に設けられた燃圧センサや、図示しないクランクセンサ、アクセルセンサ、水温センサ等から情報を取得したり、燃料調量弁75やコモンレール76の減圧弁に駆動信号を出力したりする。本明細書では、
図1におけるこれらの信号線の図示や、関連する制御の説明を省略する。
【0027】
従来技術として特許文献1(特開2020-101099号公報)に、同様のシステムにおいて1個のリーダを用いて気筒を判別する技術が開示されているが、判別精度が十分であるとは言えない。そこで本実施形態では、複数の着眼点から、気筒の判別制度を向上させる燃料噴射システムを提案する。
【0028】
次に、第1~第3実施形態の燃料噴射システムの構成及び作用効果について順に説明する。互いに異なる箇所に配置された2個のリーダを含む第1実施形態の燃料噴射システムの符号を「200」、1個のリーダを含む第2実施形態の燃料噴射システムの符号を「100」、1個のリーダと複数の中継器を含む第2実施形態の燃料噴射システムの符号を「150」とする。
【0029】
(第1実施形態)
図2~
図8を参照し、第1実施形態の燃料噴射システム200について説明する。
図2には、
図1に示された要素のうち燃料噴射システム200を構成する要素のみを抽出して模式的に示す。ここで、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。
図2において、燃料噴射弁11-14の複数の無線タグ21-24が配置される直線をX軸とする。第1リーダ30を通りX軸に直交する直線をZ軸とする。X軸上では「Z=0」である。
【0030】
図2の配置例では、Z軸は燃料噴射弁11-14の軸方向に平行である。この場合、
図2における奥行き方向の軸がY軸となる。
図3及び
図4に、
図2の上方から見たXY平面の配置例を示す。
図3には、直列4気筒エンジンにおける直列配置を示す。
【0031】
図3の配置例では、4つの燃料噴射弁11-14、第1リーダ30及び第2リーダ40は、Y方向の値が「Y=0」であるX軸上に配置されている。
図4には、V型4気筒エンジンにおけるV型配置を示す。
図4の配置例では、4つの燃料噴射弁11-14のY方向の値は互いに異なっている。
【0032】
第1リーダ30と第2リーダ40とは、互いに異なる箇所に配置されている。
図2の配置例では第1リーダ30は「Z=0」の位置に配置され、第2リーダ40は「Z>0」の位置に配置されている。これに限らず、いずれのリーダ30、40とも「Z≠0」の位置に配置されてもよい。
【0033】
第1リーダ30から各無線タグ21-24までの距離をdnpと表し、第2リーダ40から各無線タグ21-24までの距離をdnsと表す。「n」は、各無線タグ21-24に対応するいずれかの数字「1,2,3,4」を表す。dnpの「p」はprimary、dnsの「s」はsecondaryに由来する。
【0034】
前提条件として、少なくとも各無線タグ21-24からリーダ30、40までの距離は無線タグ毎に異なっている。すなわち、式(1.1)、(1.2)が成り立つ。
d1p≠d2p≠d3p≠d4p ・・・(1.1)
d1s≠d2s≠d3s≠d4s ・・・(1.2)
【0035】
さらに第1リーダ30と第2リーダ40とは、燃料噴射弁11-14が並んでいる列の方向(すなわちx方向)に沿って、燃料噴射弁11-14を挟んで互いに反対側に配置されている。つまり、第1リーダ30は、一端の第1無線タグ21から最も近く、他端の第4無線タグ24から最も遠い位置に配置されている。第2リーダ40は、一端の第1無線タグ21から最も遠く、他端の第4無線タグ24から最も近い位置に配置されている。
【0036】
したがって、式(2.1)、(2.2)が成り立つ。
d1p<d2p<d3p<d4p ・・・(2.1)
d1s>d2s>d3s>d4s ・・・(2.2)
【0037】
後述するように、リーダ30、40の受信電波強度は、無線タグまでの距離の二乗に反比例するため、リーダ30、40から無線タグまでの距離dnp、dnsと受信電波強度とは負の相関を有する。無線タグ21-24に対応する気筒#1-#4の記号で表すと、第1リーダ30の受信電波強度の序列は「#1>#2>#3>#4」であり、第2リーダ40の受信電波強度の序列は「#1<#2<#3<#4」である。
【0038】
よって、
図2~
図4の配置例では、各無線タグ21-24からの電波に対する第1リーダ30の受信電波強度の序列と第2リーダ40の受信電波強度の序列とが互いに逆順となる位置に配置されている。
【0039】
次に
図5~
図7を参照し、第1実施形態の効果について説明する。
図5(a)、(b)に第1実施形態に対する比較例として、各無線タグ21-24からの電波を1個のリーダ30で受信するシステムでの受信電波強度を示す。1個のリーダにより各無線タグからの電波を受信して気筒を判別する構成は、例えば特許文献1に開示されたシステムの構成に相当する。
【0040】
図5(a)に、リーダからの距離と受信電波強度との関係を示す。式(3)で表されるように、一般に受信電波強度は、送信機と受信機との間の距離の二乗に反比例する。
【0041】
Pn=P/(4π×dn2) ・・・(3)
記号は以下の通りである。
P[W]:送信機の電力
Pn[W/m2]:受信機が第n送信機から受信する電力密度(n=1,2,3,4)
dn[m]:第n送信機と受信機との間の距離(n=1,2,3,4)
【0042】
リーダ30に近い側から4つの気筒#1-#4が配置されているとすると、気筒#1に対応する受信電波強度が最も大きく、気筒#2、#3、#4の順に受信電波強度が小さくなる。
図5(b)に、気筒毎の受信電波強度を示す。リーダ30から遠いほど、隣り合う気筒間での受信電波強度の差が小さくなる。そのため、無線タグの送信電力にばらつきがあると序列が逆転する可能性があり、判別を誤るおそれがある。
【0043】
それに対し
図6、
図7に、2個のリーダを用いる第1実施形態での受信電波強度の例を示す。
図6に示すように、気筒#1、#2、#3、#4に対応する無線タグ21-24からの電波に対する第1リーダ30の受信電波強度Pnpは、順に、10、6、3、1であり、第2リーダ40の受信電波強度Pnsは、順に、1、3、6、10である。第1リーダ30の受信電波強度Pnpと第2リーダ40の受信電波強度Pnsとの比である受信電波強度比ρn(=Pnp/Pns)は、10、2、0.5、0.1となる。
【0044】
図7に、この例での受信電波強度比ρnを示す。受信電波強度比ρnの序列は、比の式の分子である第1リーダ30の受信電波強度の序列と同じく「#1>#2>#3>#4」である。ECU50は、各無線タグ21-24からの電波に対する受信電波強度比ρnの序列に基づき、気筒#1-#4を判別する。
【0045】
また、実際の受信電波強度比ρnは、各種のばらつき要因により下限値から上限値までの範囲に分布する。例えば中心値に対し±20%の受信電波強度比ρnの範囲を範囲バーにより示す。受信電波強度比ρnの範囲は、気筒ごとに重複なく規定されている。ECU50は、各無線タグ21-24からの電波に対する受信電波強度比ρnと、気筒ごとに重複なく規定された受信電波強度比ρnの範囲との比較により、気筒#1-#4を判別してもよい。
【0046】
第1実施形態では、互いに異なる箇所に配置された2個のリーダ30、40の受信電波強度比ρnを判定値として用いることで、単に受信電波強度を用いる場合に比べ、隣り合う気筒間での判定値の差を大きくすることができる。したがって、無線タグ21-24の送信電力Pに多少のばらつきがあっても判別を誤る可能性が低くなる。よって、気筒#1-#4の判別精度を向上させることができる。
【0047】
特に
図6、
図7に示す例のように、第1リーダ30の受信電波強度Pnpと第2リーダ40の受信電波強度Pnsとが対称の関係にある場合、受信電波強度比ρnでは、各気筒の受信電波強度の比が二乗される。そのため、隣り合う気筒間での判定値の差を特に大きくすることができ、気筒#1-#4の判別精度を一層向上させることができる。
【0048】
続いて
図8のフローチャートを参照し、第1実施形態による気筒判別方法を説明する。フローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。第1リーダ30側の処理を示すS31~S34と、第2リーダ40側の処理を示すS41~S44とは対応している。S31で、第1リーダ30は無線タグ21-24を識別する。識別手法例としてペアリングでは一対一での情報やり取りが可能になる。その他に国際規格になっている混線回避手法として、バイナリツリー方式やアンチコリジョンシステム等がある。
【0049】
次に、各無線タグ21-24について、S32、S33、S34の処理が順に繰り返される。S32では、第1リーダ30から無線タグに固有情報の送信が要求される。S33では、第1リーダ30が受信した固有情報がECU50のメモリに格納される。S34では、第1リーダ30による固有情報の受信電波強度Pnp(n=1,2,3,4)が算出される。
【0050】
S41~S44で、第2リーダ40について同様の処理が行われる。S44では、第2リーダ40による固有情報の受信電波強度Pns(n=1,2,3,4)が算出される。S51でECU50は、各無線タグ21-24について受信電波強度比ρn(n=1,2,3,4)を算出する。S52でECU50は、受信電波強度比ρnに基づき、気筒#1-#4を判別する。
【0051】
(第2実施形態)
図9、
図10を参照し、第2実施形態の燃料噴射システム100について説明する。
図9、
図10は、第1実施形態の
図2、
図3に対応する。第2実施形態の燃料噴射システム100では、1個のリーダ30が各無線タグ21-24からの電波を受信する。燃料噴射システム100が備えるリーダが1個の場合に限らず、燃料噴射システム100が備える複数のリーダのうち1個のリーダ30が「代表リーダ」として各無線タグ21-24からの電波を受信してもよい。ECU50は、各無線タグ21-24からの電波に対するリーダ30の受信電波強度に基づき、気筒#1-#4を判別する。
【0052】
図9及び
図10に示すように、複数の無線タグ21-24は三次元で一直線上に配置されている。この一直線が「Y=0、Z=0」のX軸に相当する。第1実施形態の
図4に示されるようなV型配置構成は、第2実施形態の燃料噴射システム100から排除される。現実に無線タグ21-24には幅があるため、「一直線上に配置されている」とは、各無線タグ21-24の中心がX軸を含む所定幅(例えば数mm~数十mm)の範囲内にあることを意味する。
【0053】
リーダ30を通りX軸に直交する直線をZ軸とし、X軸とZ軸との交点を基準点Oと定義する。基準点Oでは「X=0、Y=0、Z=0」となる。
図9、
図10に示す例では、Z軸は燃料噴射弁11-14の軸方向に平行である。ただし、リーダ30を通るZ軸は、燃料噴射弁11-14の軸方向に対して直交してもよいし、斜め方向であってもよい。以下では、Z軸が燃料噴射弁11-14の軸方向に平行である場合を想定して説明する。基準点Oからリーダ30のまでの距離は、気筒判別における信頼性が保証される視点から、リーダ30が所定領域内に配置されるように設定されている。その所定領域を「判別保証領域|Zg|」と定義する。
【0054】
図9においてリーダ30から各無線タグ21-24までの距離をdnと表す。「n」は、各無線タグ21-24に対応するいずれかの数字「1,2,3,4」を表す。基準点Oから基準点Oに最も近い無線タグである第1無線タグ21までの距離x1を「第1タグ距離」と定義する。
【0055】
また、隣接する無線タグ21-24間の距離Δx12、Δx23、Δx34を「隣接タグ間距離」と定義する。各気筒#1-#4に装着される燃料噴射弁11-14の無線タグ21-24の位置関係が同じであれば、隣接タグ間距離は隣接気筒間距離と同義である。ここで、複数の無線タグ21-24は、X軸上で等間隔に配置されているものとし、共通する隣接タグ間距離の記号をΔx(=Δx12=Δx23=Δx34)と記す。
【0056】
図11、
図12を参照し、判別保証領域|Zg|を決定する手法について説明する。図中、距離の単位は[mm]とする。
図11に、リーダ30のZ方向位置と各無線タグ21-24からの電波に対するリーダ30の受信電波強度との関係を示す。
図11の条件として、第1タグ距離x1は700mmであり、隣接タグ間距離Δxは80mmである。
【0057】
Z=0のとき、リーダ30が基準点Oに位置し、リーダ30及び4個の無線タグ21-24が三次元で一直線上に配置される。このとき、リーダ30から各無線タグ21-24までの距離dnが最短となり、各無線タグ21-24からの受信電波強度Pn(=P1、P2、P3、P4)が最大となる。その中でもリーダ30に最も近い第1無線タグ21からの受信電波強度P1が最大となる。また、リーダ30が受信する各無線タグ21-24からの受信電波強度の差も最大となる。リーダ30のZ方向位置の絶対値|Z|が大きくなるほど、リーダ30から各無線タグ21-24までの距離dnが大きくなり、各無線タグ21-24からの受信電波強度Pnが低下する。
【0058】
図11には、第1無線タグ21からの最大受信電波強度P1maxを1としたときの各無線タグ21-24からの受信電波強度Pnを示す。言い換えれば、各無線タグ21-24からの受信電波強度Pnを第1無線タグ21からの最大受信電波強度P1maxにより正規化して示す。このように、各無線タグ21-24からの受信電波強度Pnは、(1)第1タグ距離x1、(2)隣接タグ間距離Δx、(3)リーダのZ方向位置の絶対値|Z|の3変数により決まる。
【0059】
各無線タグ21-24からの受信電波強度Pnは、受信毎にばらつく。このばらつきが正規分布すると仮定し、設定した信頼標準(例えば99.7%)に基づく各受信電波強度Pnの信頼区間S_Pnを求める。Z=0のとき、各受信電波強度Pnの信頼区間S_P1、S_P2、S_P3、S_P4は相互干渉しない。したがってECU50は、リーダ30が受信した電波強度に基づき、気筒#1-#4を正しく判別することができる。
【0060】
しかし、|Z|が大きくなると各受信電波強度Pnの差が小さくなる。例えば|Z|=700のとき、第1無線タグ21からの受信電波強度P1の信頼区間S_P1と受信電波強度P2の信頼区間S_P2とが相互干渉する。すると、ある確率で、受信電波強度P1と受信電波強度P2とが逆転し、気筒#1と気筒#2との判別を誤る可能性が発生する。よって、各受信電波強度Pnの信頼区間S_Pnが相互干渉しない限界となるリーダ30のZ方向位置が判別保証領域|Zg|として設定される。判別保証領域|Zg|では、ECU50による気筒判別の信頼性が信頼標準に基づいて保証される。
【0061】
図12に、第1タグ距離x1及び隣接タグ間距離Δxと判別保証領域|Zg|との関係を示す。各境界線は判別保証領域|Zg|の上限を示し、境界線より上の領域では、いずれかの無線タグ21-24からの受信電波強度Pnの信頼区間S_Pnで相互干渉が発生するため、信頼標準に基づく気筒判別の信頼性が得られなくなる。境界線が上にあるほど判別保証領域|Zg|は広くなる。
【0062】
特に隣接タグ間距離Δxが50mm、80mmのとき、判別保証領域|Zg|は第1タグ距離x1に対して顕著に山型の特性となる。第1タグ距離x1が小さいと第1、第2無線タグ21、22からの受信電波強度P1、P2が大きく、ばらつきも大きいため、信頼区間S_P1とS_P2とが相互干渉しやすくなる。また、第1タグ距離x1が大きいと第3、第4無線タグ23、24からの受信電波強度P3、P4の差が現れにくくなり、信頼区間S_P3とS_P4とが相互干渉しやすくなる。第1タグ距離x1が中程度であるとき、判別保証領域|Zg|が最も広く確保される。
【0063】
また、隣接タグ間距離Δxがある程度確保されれば(例えばΔx≧100)、隣接タグによる受信電波強度Pnの差が大きくなるため、リーダ30のZ方向位置による影響が小さくなる。したがって、判別保証領域|Zg|の境界線が全体に上がる。このような手法により、判別保証領域|Zg|は、第1タグ距離X1及び隣接タグ間距離Δxに応じて適切に決定される。
【0064】
従来技術である特許文献1の
図1には、上方から見た図が無いため、奥行方向(y方向)において4個のRFIDタグがどのように配置されているか不明である。さらに特許文献1の段落[0029]には、「無線タグ通信装置が設けられる位置は図示例に限定されず、エンジン側のどの位置に設けられてもよく、車両側に設けられてもよい」と記載されている。このように特許文献1には、電波の受信精度を向上する視点から最適な無線タグ通信装置の配置について、何ら言及されていない。
【0065】
それに対し第2実施形態では、4個の無線タグ21-24が一直線上に配置され、さらにリーダ30が判別保証領域|Zg|内に配置されることで、気筒#1-#4の判別精度を向上させることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図13~
図16を参照し、第3実施形態の燃料噴射システム150について説明する。第3実施形態では、複数の燃料噴射弁11-14がエンジン90に取り付けられた状態での電波送受信に関する課題に着目する。
図13は課題の前提を説明するための図であり、
図14、
図15は、第3実施形態と対比される比較例の図である。
図16に第3実施形態の構成を示す。
【0067】
図13に示すように、エンジン90は、エンジンヘッドカバー95、シリンダヘッド96、シリンダブロック97等の部品から構成されている。シリンダブロック97は、シリンダ及びクランクケース(図示しない)を内包する。シリンダヘッド96は、シリンダブロック97の上部に取り付けられ、点火プラグ、吸排気バルブ(図示しない)等を内包する。燃料噴射弁11は、シリンダヘッド96に形成された穴961に挿入される。無線タグ21は、エンジンヘッドカバー95とシリンダヘッド96の上面との間において、燃料噴射弁11の外面に取り付けられる。
【0068】
図14に、4個の燃料噴射弁11-14がエンジン90に取り付けられた状態を模式的に示す。シリンダヘッド96及びシリンダブロック97の一方の側面に沿って4個の燃料噴射弁11-14が配置され、反対側の側面にECU50及びリーダ30が設けられている。ここで、エンジンヘッド内のシリンダヘッド96やシリンダブロック97は電波障害物となる。各無線タグ21-24からリーダ30への電波伝達経路は直線とならず、電波障害物を迂回して空間を通るように電波が送受信される。
【0069】
そのため、
図15に示すように、無線タグ21-24からリーダ30までの直線距離とリーダ30の受信電波強度の序列とが相関しない場合が生じる。例えば気筒#2に対応する無線タグ22は、気筒#3に対応する無線タグ23よりもリーダ30までの直線距離が短い。しかし、気筒#2に対応する無線タグ22からの受信電波強度の方が気筒#3に対応する無線タグ23からの受信電波強度よりも小さい。
【0070】
つまりこの例では、気筒ごとの受信電波強度の序列は、#1、#3、#2、#4の順となる。そこで、4つの受信電波強度の序列に基づき、例えば最も受信電波強度が大きい無線タグに対応する気筒は#1であると判別される。
【0071】
また、
図15に範囲バーで示されるように、各無線タグ21-24からの受信電波強度の上下限範囲が気筒#1-#4ごとに重複なく規定されている。例えば気筒#1に対応する無線タグ21からの受信電波強度は、下限値18から上限値22までの範囲であることが予め規定されている。リーダ30の実際の受信電波強度が「19」のとき、下限値18から上限値22までの範囲に含まれるため、その電波を送信した無線タグに対応する気筒は#1であると判別される。
【0072】
比較例に対し、
図16に示す第3実施形態の燃料噴射システム150では、複数の無線タグ21-24とリーダ30との間に複数の中継器25-28が設けられている。
図16の例では、中継器25-28は、ヘッドカバー95の下面に沿って、無線タグ21-24と平行に配置されている。各中継器25、26、27、28は、対応する無線タグ21、22、23、24からの電波を中継してリーダ30に送信する。リーダ30は、各無線タグ21-24からの電波を最終的に受信して固有情報を読み込み可能である。
【0073】
第3実施形態では、燃料噴射弁11-14の周辺に電波障害物が存在する場合であっても、無線タグ21-24からの電波を中継器25-28が中継することで、リーダ30が電波を安定して受信することができる。よって、気筒#1-#4の判別精度を向上させることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
(a)第1実施形態の燃料噴射システム200は、2個のリーダ30、40に加えて、故障検出用や予備用のリーダをさらに備えてもよい。例えば、第1リーダ30とほぼ同じ位置に、第1リーダ30と同等の電波受信特性を有する第3リーダを備え、第2リーダ40とほぼ同じ位置に、第2リーダ40と同等の電波受信特性を有する第4リーダを備える構成としてもよい。第1リーダ30と第3リーダとの受信電波強度を比較し、所定値以上乖離していた場合、第1リーダ30の故障を検出可能である。また、第1リーダ30の故障時に第3リーダを用いて気筒判別を実施可能である。第2リーダ40と第4リーダとの関係も同様である。
【0075】
このような構成を包括すると、第1実施形態の思想による燃料噴射システムは、2個以上のリーダを備え、その中に、互いに異なる箇所に配置された第1リーダ30及び第2リーダ40が含まれればよい。
【0076】
同様に第2、第3実施形態の思想による燃料噴射システムは、1個に限らず、1個以上のリーダを備えてよい。第2実施形態では、1個以上のリーダのうち少なくとも1個のリーダが「代表リーダ」として機能すればよい。
【0077】
(b)第1実施形態における2個のリーダ30、40の配置は、
図2~
図4に例示するように燃料噴射弁11-14を両側から挟む配置に限らず、燃料噴射弁11-14から離れた箇所に配置されてもよい。各リーダ30、40から各無線タグ21-24までの距離が異なり、気筒ごとの受信電波強度dnp、dnsが互いに異なる限り、第1実施形態の効果が得られる。
【0078】
(c)本実施形態の燃料噴射システムで判別されるエンジンの気筒数は4つに限らず、2気筒以上の何気筒であってもよい。気筒数が多く、受信電波強度の差が相対的に小さくなるほど本実施形態の効果が有効に発揮される。
【0079】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0080】
200、100、150・・・燃料噴射システム、
11-14・・・燃料噴射弁、
21-24・・・無線タグ、 25-28・・・中継器、
30・・・リーダ、第1リーダ、 40・・・第2リーダ、
50・・・ECU(気筒判別部)、
90・・・エンジン(内燃機関)、 91-94・・・気筒。