(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175119
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電力変換装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20221117BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221117BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081281
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
(72)【発明者】
【氏名】谷 敬弥
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB03
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ23
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505KK06
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL43
5H505MM12
5H770BA05
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA04
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770JA17W
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、小型化を図ることができる電力変換装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、インバータ30と、インバータ30に電気的に接続された巻線41U~41Wを有する回転電機40と、第1,第2蓄電池21,22の中間端子B及び中性点Oを電気的に接続する接続経路60と、制御装置70とを備えている。制御装置70は、接続経路60を介して第1,第2蓄電池21,22の間に流す電流の直流成分を算出し、接続経路60を介して第1,第2蓄電池21,22の間に流す電流の交流成分を算出する。制御装置70は、直流成分及び交流成分の合計電流が接続経路60に流れるように、インバータ30の上,下アームスイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上,下アームスイッチ(QUH~QYL)の直列接続体を有し、該直列接続体が第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)の直列接続体に並列接続されるインバータ(30)と、
前記インバータに電気的に接続された巻線(41U~41Y)を有する回転電機(40)と、
前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線とを電気的に接続する接続経路(60,90)と、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に流す電流の直流成分を算出する直流成分算出部(80)と、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す電流の交流成分を算出する交流成分算出部(81)と、
前記直流成分及び前記交流成分の合計電流が前記接続経路に流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部(70)と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
Nを正の整数とする場合、前記制御部は、
前記第1蓄電部から前記接続経路を介して前記第2蓄電部へと電流を流す場合、前記交流成分のN周期において、前記上アームスイッチのオン時間の合計値が前記下アームスイッチのオン時間の合計値よりも長くなるように前記スイッチング制御を行い、
前記第2蓄電部から前記接続経路を介して前記第1蓄電部へと電流を流す場合、前記交流成分のN周期において、前記下アームスイッチのオン時間の合計値が前記上アームスイッチのオン時間の合計値よりも長くなるように前記スイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記直流成分算出部は、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の蓄電量の差が大きかったり、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち一方から他方への給電目標時間が短かったりするほど、前記直流成分の絶対値を大きくする、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記交流成分算出部は、前記スイッチング制御により前記接続経路に電流を流し始めてから前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の昇温を完了させるまでの目標時間が短いほど、前記交流成分の振幅を大きくする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記交流成分算出部は、前記スイッチング制御により前記接続経路に電流が流れる場合における前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの端子電圧が、許容上下限電圧で規定される範囲から外れないような前記交流成分の振幅を設定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記回転電機の駆動要求(車両の走行要求)がある場合、前記接続経路に前記合計電流を流して、かつ、前記回転電機のロータを回転駆動させるための前記スイッチング制御を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記接続経路は、前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上,下アームスイッチ(QUH~QYL)の直列接続体を有し、該直列接続体が第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)の直列接続体に並列接続されるインバータ(30)と、
前記インバータに電気的に接続された巻線(41U~41Y)を有する回転電機(40)と、
前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線とを電気的に接続する接続経路(60,90)と、
コンピュータ(70a)と、を備える電力変換装置(10)に適用されるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に流す電流の直流成分を算出する直流成分算出部(80)と、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す電流の交流成分を算出する交流成分算出部(81)と、
前記直流成分及び前記交流成分の合計電流が前記接続経路に流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部(70)と、して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、蓄電装置に接続されたインバータと、インバータに接続された回転電機とを備える電力変換装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータに接続される蓄電装置として、第1蓄電部及び第2蓄電部の直列接続体を備えるものがある。ここで、例えば第1,第2蓄電部それぞれの蓄電量のずれを解消するために、第1,第2蓄電部間でエネルギの授受を行うことが要求され得る。この場合、エネルギの授受を行うための装置が追加されると、電力変換装置が大型化する懸念がある。
【0005】
また、低温環境に置かれた第1,第2蓄電部を昇温させることも要求され得る。この場合、第1,第2蓄電部を昇温させる装置(例えばヒータ)が追加されると、この追加によっても電力変換装置が大型化する懸念がある。
【0006】
本発明は、小型化を図ることができる電力変換装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上,下アームスイッチの直列接続体を有し、該直列接続体が第1蓄電部及び第2蓄電部の直列接続体に並列接続されるインバータと、
前記インバータに電気的に接続された巻線を有する回転電機と、
前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線とを電気的に接続する接続経路と、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に流す電流の直流成分を算出する直流成分算出部と、
前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す電流の交流成分を算出する交流成分算出部と、
前記直流成分及び前記交流成分の合計電流が前記接続経路に流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
本発明では、第1蓄電部の負極側及び第2蓄電部の正極側と、回転電機の巻線とが接続経路によって電気的に接続される。このため、インバータを流用して、第1蓄電部と第2蓄電部との間でエネルギの授受を行うための経路を確保できる。
【0009】
また、本発明では、接続経路に、電流の直流成分及び交流成分の合計電流が流れるように上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。直流成分は、第1蓄電部及び第2蓄電部のうち一方から他方への給電に寄与する。交流成分は、第1,第2蓄電部の発熱に寄与する。以上説明した本発明によれば、インバータを流用して、第1蓄電部及び第2蓄電部の間のエネルギの授受と、第1,第2蓄電部の昇温とを同時に行うことができる。これにより、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】判定電圧Vj、目標充電時間Lvtgt及び直流指令値Idcの関係を示す図。
【
図6】ΔT温度偏差、目標昇温時間Lttgt及び交流指令値Iacの振幅IAの関係を示す図。
【
図7】放電側蓄電池の端子電圧の変動態様を示す図。
【
図8】充電側蓄電池の端子電圧の変動態様を示す図。
【
図9】第1蓄電池から第2蓄電池に給電する場合の変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図10】第2蓄電池から第1蓄電池に給電する場合の変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図11】電圧均等化制御が実行される場合における中性点電流等の計算結果を示すタイムチャート。
【
図12】各スイッチのゲート信号の推移を示すタイムチャート。
【
図13】外部充電中における電圧均等化制御及び昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図14】電気負荷の駆動中における電圧均等化制御及び昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図15】その他の実施形態に係る変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図16】その他の実施形態に係る変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図17】その他の実施形態に係る変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図18】その他の実施形態に係る変調率及びキャリア信号の推移を示すタイムチャート。
【
図19】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【
図20】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されている。
【0012】
図1示すように、電力変換装置10は、インバータ30と、回転電機40とを備えている。回転電機40は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU,V,W相巻線41U,41V,41Wを備えている。各相巻線41U,41V,41Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機40は、例えば永久磁石同期機である。本実施形態において、回転電機40は車載主機であり、車両の走行動力源となる。
【0013】
インバータ30は、上アームスイッチQUH,QVH,QWHと下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。このため、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、フリーホイールダイオードとしての各ダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0014】
U相上アームスイッチQUHのエミッタと、U相下アームスイッチQULのコレクタとには、バスバー等のU相導電部材32Uを介して、U相巻線41Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチQVHのエミッタと、V相下アームスイッチQVLのコレクタとには、バスバー等のV相導電部材32Vを介して、V相巻線41Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチQWHのエミッタと、W相下アームスイッチQWLのコレクタとには、バスバー等のW相導電部材32Wを介して、W相巻線41Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線41U,41V,41Wの第2端同士は、中性点Oで接続されている。なお、本実施形態において、各相巻線41U,41V,41Wは、ターン数が同じに設定されている。これにより、各相巻線41U,41V,41Wは、例えばインダクタンスが同じに設定されている。
【0015】
各上アームスイッチQUH,QVH,QWHのコレクタと、組電池20の正極端子とは、バスバー等の正極側母線Lpにより接続されている。各下アームスイッチQUL,QVL,QWLのエミッタと、組電池20の負極端子とは、バスバー等の負極側母線Lnにより接続されている。
【0016】
電力変換装置10は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続するコンデンサ31を備えている。なお、コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
【0017】
組電池20は、単電池である電池セルの直列接続体として構成されている。本実施形態では、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧(例えば定格電圧)が互いに同じに設定されている。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池を用いることができる。なお、組電池20は、例えば電力変換装置10の外部に設けられている。
【0018】
本実施形態では、組電池20を構成する電池セルのうち、高電位側の複数の電池セルの直列接続体が第1蓄電池21(「第1蓄電部」に相当)を構成し、低電位側の複数の電池セルの直列接続体が第2蓄電池22(「第2蓄電部」に相当)を構成している。つまり、組電池20が2つのブロックに分けられている。本実施形態では、第1蓄電池21を構成する電池セル数と、第2蓄電池22を構成する電池セル数とが同じである。このため、第1蓄電池21の端子電圧(例えば定格電圧)と、第2蓄電池22の端子電圧(例えば定格電圧)とが同じである。本実施形態において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの定格電圧は400Vとされている。このため、組電池20の定格電圧は800Vとされている。
【0019】
組電池20において、第1蓄電池21の負極端子と第2蓄電池22の正極端子とには中間端子Bが接続されている。
【0020】
電力変換装置10は、監視ユニット50を備えている。監視ユニット50は、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧、SOC、SOH及び温度等を監視する。監視ユニット50の監視情報は、電力変換装置10が備える制御装置70(「制御部」に相当)に入力される。
【0021】
電力変換装置10は、接続経路60と、接続スイッチ61とを備えている。接続経路60は、組電池20の中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続する。接続スイッチ61は、接続経路60上に設けられている。本実施形態では、接続スイッチ61としてリレーが用いられている。接続スイッチ61がオンされることにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。一方、接続スイッチ61がオフされることにより、中間端子Bと中性点Oとの間が電気的に遮断される。
【0022】
電力変換装置10は、電気負荷100を備えている。電気負荷100は、DCDCコンバータ、空調用インバータ、空調用ヒータ及び車載充電器を含む。DCDCコンバータは、第2蓄電池22の出力電圧を降圧して図示しない低圧蓄電池に供給するために駆動される。低圧蓄電池は、例えば、定格電圧が12Vの鉛蓄電池である。
【0023】
空調用インバータは、冷凍サイクル内の冷媒を循環させる電動コンプレッサを駆動する。空調用ヒータは、車室内の暖房のために駆動される。車載充電器は、住宅等に設けられた交流電源から出力される交流電圧を直流電圧に変換して第2蓄電池22に供給するものであり、オンボードチャージャ(OBC)とも呼ばれる。
【0024】
第2蓄電池22は、車両外部に設けられる充電器200に接続可能とされている。充電器200は、急速充電(例えば400V急速充電)に対応している。充電器200は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び整流器201を備えている。中間端子Bには、第1スイッチSW1を介して充電器200の正極側が接続可能とされている。第2蓄電池22の負極側には、第2スイッチSW2を介して充電器200の負極側が接続可能とされている。充電器200から第2蓄電池22に充電される場合、各スイッチSW1,SW2がオンに切り替えられる。整流器201は、3相の系統電源210から供給される3相交流電圧を直流電圧に変換して第2蓄電池22に供給する。これにより、第2蓄電池22が充電される。
【0025】
なお、第1,第2スイッチSW1,SW2は、実際には、制御装置70とは別の外部制御装置により駆動される。ただし、外部制御装置により駆動されることは要部ではないため、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2が制御装置70により駆動されることとする。
【0026】
電力変換装置10は、電流センサ62と、相電流センサ63とを備えている。電流センサ62は、接続経路60に流れる電流を検出する。相電流センサ63は、少なくとも2相分の相電流を検出する。相電流センサ63は、例えば、各導電部材32U~32Wのうち少なくとも2相分の導電部材に流れる電流を検出する。各電流センサ62,63の検出値は、制御装置70に入力される。
【0027】
制御装置70は、マイコン70aを主体として構成され、マイコン70aは、CPUを備えている。マイコン70aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン70aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン70aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する電圧均等化制御及び昇温制御のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0028】
制御装置70は、回転電機40の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量はトルクである。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは交互にオンされる。
【0029】
制御装置70は、接続スイッチ61をオン又はオフし、また、監視ユニット50と通信可能とされている。
【0030】
図2に、制御装置70が実行する処理のブロック図を示す。
【0031】
d軸偏差算出部71dは、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部71qは、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。ここで、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*は、回転電機40の制御量の指令値(以下、指令トルク)に基づいて設定される。また、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrは、相電流センサ63の検出値及び回転電機40の電気角に基づいて算出される。なお、電気角は、レゾルバ等の回転角センサの検出値であってもよいし、位置センサレス制御で推定された推定値であってもよい。
【0032】
d軸制御部72dは、算出されたd軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量として、d軸電圧Vdを算出する。q軸制御部72qは、算出されたq軸電流偏差ΔIqを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸電圧Vqを算出する。本実施形態では、各制御部72d,72qのフィードバック制御として比例積分制御が用いられる。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
【0033】
3相変換部73は、d軸電圧Vd、q軸電圧Vq及び上記電気角に基づいて、3相固定座標系におけるU~W相指令電圧Vu~Vwを算出する。各相指令電圧Vu~Vwは、電気角で120度ずつ位相がずれた信号(具体的には例えば、正弦波状の信号)である。
【0034】
U相重畳部74Uは、U相指令電圧Vuにオフセット補正量CFを加算することにより、U相最終指令電圧「Vu+CF」を算出する。V相重畳部74Vは、V相指令電圧Vvにオフセット補正量CFを加算することにより、V相最終指令電圧「Vv+CF」を算出する。W相重畳部74Wは、W相指令電圧Vwにオフセット補正量CFを加算することにより、W相最終指令電圧「Vw+CF」を算出する。なお、オフセット補正量CFの算出方法については、後に詳述する。
【0035】
なお、制御装置70は、車両の走行要求信号を取得した場合、回転電機40の駆動要求があると判定し、回転電機40のロータを回転駆動させるためのスイッチング制御を行う。この場合、上述したように、各相指令電圧Vu~Vwは、電気角で120度ずつ位相がずれた信号となる。一方、車両が停車中の場合、指令トルクが0にされ、各相指令電圧Vu,Vv,Vwが0となる。このため、各相の最終指令電圧はオフセット補正量CFとなる。
【0036】
U相変調部75Uは、U相最終指令電圧「Vu+CF」を電源電圧Vdcで除算することにより、U相変調率Muを算出する。ここで、電源電圧Vdcは、監視ユニット50から取得した第1蓄電池21の端子電圧VBH及び第2蓄電池22の端子電圧VBLの合計値である。V相変調部75Vは、V相最終指令電圧「Vv+CF」を電源電圧Vdcで除算することにより、V相変調率Mvを算出する。W相変調部75Wは、W相最終指令電圧「Vw+CF」を電源電圧Vdcで除算することにより、W相変調率Mwを算出する。
【0037】
U,V,W相比較部76U,76V,76Wの非反転入力端子には、U,V,W相変調率Mu,Mv,Mwが入力される。U,V,W相比較部76U,76V,76Wの反転入力端子には、U,V,W相キャリア生成部77U、77V,77Wにより生成されたU,V,W相キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwが入力される。本実施形態において、各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwは、漸増速度と漸減速度とが等しい三角波信号である。また、各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwの振幅を1とする。各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwは、0を中心として、-1から1までの範囲の値を取る。本実施形態では、各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwが共通のキャリア信号であるとする。
【0038】
制御装置70は、U相比較部76Uから出力されるPWM信号に基づいて、U相上,下アームスイッチQUH,QULのゲート信号を生成し、生成したゲート信号をU相上,下アームスイッチQUH,QULのゲートに供給する。これにより、U相上,下アームスイッチQUH,QULのスイッチング制御が行われる。同様に、制御装置70は、V相比較部76Vから出力されるPWM信号に基づいて、V相上,下アームスイッチQVH,QVLのスイッチング制御を行い、W相比較部76Wから出力されるPWM信号に基づいて、W相上,下アームスイッチQWH,QWLのスイッチング制御を行う。
【0039】
上記オフセット補正量CFは、各蓄電池21,22の電圧均等化制御、及び各蓄電池21,22の昇温制御のために必要なパラメータである。
図3(a)に、電圧均等化制御及び昇温制御で用いられる電力変換装置10の等価回路を示す。
図3(a)では、各相巻線41U~41Wを巻線41として示し、各上アームスイッチQUH,QVH,QWHを上アームスイッチQHとして示し、各上アームダイオードDUH,DVH,DWHを上アームダイオードDHとして示している。また、各下アームスイッチQUL,QVL,QWLを下アームスイッチQLとして示し、各下アームダイオードDUL,DVL,DWLを下アームダイオードDLとして示している。
【0040】
図3(a)の等価回路は、
図3(b)の等価回路として示すことができる。
図3(b)の回路は、第1蓄電池21と第2蓄電池22との間で双方向の電力伝達が可能な昇降圧チョッパ回路である。
図3(b)を参照して、上アームスイッチQHがオンされると、巻線41の端子電圧が「VBH」となる。一方、下アームスイッチQLがオンされると、巻線41の端子電圧VRが「-VBL」となる。つまり、上アームスイッチQHがオンされることにより、巻線41に特定方向に励磁電流が流れ、下アームスイッチQLがオンされることにより、巻線41に特定方向とは逆方向に励磁電流が流れる。
【0041】
制御装置70は、電圧均等化制御のための構成として、直流成分算出部80を備えている。直流成分算出部80は、第1蓄電池21の端子電圧VBHから第2蓄電池22の端子電圧VBLを減算することにより、判定電圧Vj(=VBH-VBL)を算出する。直流成分算出部80は、算出した判定電圧Vjが正の値の場合、直流指令値Idcを正の値に設定し、詳しくは、
図4に示すように、判定電圧Vjが高いほど、直流指令値Idcを連続的又は段階的に大きくする。直流成分算出部80は、算出した判定電圧Vjが負の値の場合、直流指令値Idcを負の値に設定し、詳しくは、判定電圧Vjの絶対値が大きいほど、直流指令値Idcの絶対値を連続的又は段階的に大きくする。
【0042】
第2蓄電池22が充電器200により充電されている場合、直流成分算出部80は、目標充電時間Lvtgtが短いほど、直流指令値Idcの絶対値を大きくする。目標充電時間Lvtgtは、充電器200による第2蓄電池22の充電が開始されてから、第2蓄電池22の充電を完了させるまでの目標時間である。目標充電時間Lvtgtは、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの端子電圧の均等化が開始されてから完了させるまでの目標時間でもある。
図4に示す直流指令値Idcの算出方法によれば、目標充電時間Lvtgt内に充電及び電圧均等化の双方を完了させることができる。
なお、直流成分算出部80において、各蓄電池21,22の蓄電量を示すパラメータとして、端子電圧に代えて、電池容量[Ah]又はSOCが用いられてもよい。
【0043】
制御装置70は、昇温制御のための構成として、交流成分算出部81を備えている。交流成分算出部81は、監視ユニット50から取得した組電池20の温度(以下、電池温度Td)、組電池20の目標温度Ttgt、及び目標昇温時間Lttgtに基づいて、交流指令値Iacを設定する。本実施形態において、交流指令値Iacの波形は、
図5に示すように、正弦波として設定される。詳しくは、交流指令値Iacの振幅はIAであり、周期はTcである。交流指令値Iacの値が0以外の値から0になるタイミング(以下、ゼロクロスタイミング)に対して、正の交流指令値Iacと負の交流指令値Iacとが点対称になるように交流指令値Iacを設定する。これにより、交流指令値Iacの第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの期間が、第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの期間に等しくなる。
【0044】
また、交流指令値Iacの1周期Tcにおいて、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなる。第1領域の面積S1は、交流指令値Iacの1周期Tcにおいて、交流指令値Iacの第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの時間軸と、正の交流指令値Iacとで囲まれる領域である。第2領域の面積S2は、1周期Tcにおいて、交流指令値Iacの第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの時間軸と、負の中性点指令電流IM*とで囲まれる領域である。なお、本実施形態では、交流指令値Iacの周波数fc(=1/Tc)は、各変調率Mu,Mv,Mwの周波数よりも低い。
【0045】
直流成分算出部80は、目標温度Ttgtから電池温度Tdを減算することにより、温度偏差ΔTを算出する。直流成分算出部80は、温度偏差ΔTが大きいほど、
図6に示すように、交流指令値Iacの振幅IAを連続的又は段階的に大きくする。また、直流成分算出部80は、目標昇温時間Lttgtが短いほど、交流指令値Iacの振幅IAを連続的又は段階的に大きくする。目標昇温時間Lttgtは、昇温制御が開始されてから昇温制御を完了させるまでの目標時間である。昇温制御が完了したとは、例えば、電池温度Tdが目標温度Ttgtに到達したことである。
【0046】
加算部82は、直流指令値Idcに交流指令値Iacを加算することにより、中性点指令電流IM*を算出する。中性点偏差算出部83は、中性点指令電流IM*から、電流センサ62により検出された電流である中性点電流IMrを減算することにより、中性点電流偏差ΔIMを算出する。
【0047】
中性点制御部84は、算出された中性点電流偏差ΔIMを0にフィードバック制御するための操作量として、オフセット補正量CFを算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として比例積分制御が用いられる。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
【0048】
本実施形態では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち、電圧均等化制御において放電側蓄電池の端子電圧が、
図7に示すように、許容上限電圧VlimH以下となってかつ許容下限電圧VlimL以上になるように、直流成分算出部80により交流指令値Iacの振幅IAが設定される。蓄電池の許容上限電圧VlimH及び許容下限電圧VlimLは、蓄電池の信頼性を低下させない値として定められる。
図7において、OCVdは放電側蓄電池の開放電圧を示し、CCVMdは放電側蓄電池の端子電圧の時間平均値を示す。CCVHdは放電側蓄電池の端子電圧最大値を示し、CCVLdは放電側蓄電池の端子電圧最小値を示す。ここでは、「CCVMd=OCVd-I1d×R1d」、「CCVHd=CCVMd+IA×R2d」、「CCVLd=CCVMd-IA×R2d」の関係がある。I1dは、放電側蓄電池に流れる直流電流を示し、R1dは、放電側蓄電池の直流抵抗を示す。IAは、上述した交流指令値Iacの振幅を示し、R2dは、放電側蓄電池の交流抵抗を示す。
【0049】
また、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち、電圧均等化制御において充電側蓄電池の端子電圧が、
図8に示すように、許容上限電圧VlimH以下となってかつ許容下限電圧VlimL以上になるように、直流成分算出部80により交流指令値Iacの振幅IAが設定される。
図8において、OCVcは充電側蓄電池の開放電圧を示し、CCVMcは充電側蓄電池の端子電圧の時間平均値を示す。CCVHcは充電側蓄電池の端子電圧最大値を示し、CCVLcは充電側蓄電池の端子電圧最小値を示す。ここでは、「CCVMc=OCVc+I1c×R1c」、「CCVHc=CCVMc+IA×R2c」、「CCVLc=CCVMc-IA×R2c」の関係がある。I1cは、充電側蓄電池に流れる直流電流を示し、R1cは、充電側蓄電池の直流抵抗を示し、R2cは、充電側蓄電池の交流抵抗を示す。
【0050】
ちなみに、例えば、直流成分算出部80は、各蓄電池21,22の端子電圧が許容上限電圧VlimH以下となってかつ蓄電池の許容下限電圧VlimL以上になるような交流指令値Iacの振幅IAを規定するマップ情報に基づいて、振幅IAを設定してもよい。また、例えば、直流成分算出部80は、監視ユニット50から取得した情報に基づいてCCVHd,CCVLd,CCVHc,CCVLcを都度算出し、「CCVHd,CCVHc>VlimH」になったり、「CCVLd,CCVLc<VlimL」になったりしないように振幅IAを都度調整してもよい。これにより、第1蓄電池21や第2蓄電池22の信頼性が低下することを防止できる。
【0051】
図9に、車両の停車中において電圧均等化制御により第1蓄電池21から第2蓄電池22へと給電して、かつ、交流指令値Iacが0に設定される場合における各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgw及び各変調率Mu,Mv,Mwの推移を示す。また、
図10に、車両の停車中において電圧均等化制御により第2蓄電池22から第1蓄電池21へと給電して、かつ、交流指令値Iacが0に設定される場合における各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgw及び各変調率Mu,Mv,Mwの推移を示す。
【0052】
図9及び
図10に示す例によれば、各相の上アームスイッチQUH,QVH,QWHが同期してオン又はオフされ、各相の下アームスイッチQUL,QVL,QWLが同期してオン又はオフされる。なお、
図11に、電圧均等化制御が行われる場合における各相電流Iur,Ivr,Iwr、中性点電流IMr、第1蓄電池21に流れる電流IBH及び第2蓄電池22に流れる電流IBLの計算結果を示す。
図11に示すLKは縦軸のスケールを示す。
【0053】
図12に、車両の停車中において、「Idc=0」となってかつ昇温制御が行われる場合における各スイッチQUH~QWLのゲート信号の推移を示す。
図12において、Tswは、各スイッチQUH~QWLの1スイッチング周期を示し、1スイッチング周期Tswは各キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwの周期と同じである。また、
図12に示す例では、交流指令値Iacの1周期Tcが1スイッチング周期Tswで割り切れる周期になっている。
【0054】
「Idc=0」となってかつ昇温制御が行われる場合、交流指令値IacのN周期「N×Tc」(Nは正の整数)において、各相の上アームスイッチのオン時間TonHの合計値と、各相の下アームスイッチのオン時間TonLの合計値とが等しい又は略等しい。
【0055】
一方、昇温制御に加え、第1蓄電池21から第2蓄電池22に給電する電圧均等化制御が行われる場合、交流指令値IacのN周期「N×Tc」において、各相の上アームスイッチのオン時間TonHの合計値が、各相の下アームスイッチのオン時間TonLの合計値よりも長くなる。
【0056】
他方、昇温制御に加え、第2蓄電池22から第1蓄電池21に給電する電圧均等化制御が行われる場合、交流指令値IacのN周期「N×Tc」において、各相の下アームスイッチのオン時間TonLの合計値が、各相の上アームスイッチのオン時間TonHの合計値よりも長くなる。
【0057】
続いて、
図13を用いて、充電器200から第2蓄電池22への充電中において、制御装置70により実行される電圧均等化制御及び昇温制御の手順について説明する。
図13に示す処理は、車両の停車中に実行される。
【0058】
ステップS10では、充電器200から第2蓄電池22への充電指令がなされたか否かを判定する。
【0059】
ステップS10において充電指令がなされたと判定した場合には、ステップS11に進み、組電池20の昇温要求があるか否かを判定する。例えば、電池温度Tdが目標温度Ttgtを下回る場合、昇温要求があると判定すればよい。
【0060】
ステップS11において昇温要求がないと判定した場合には、ステップS12に進み、交流成分算出部81において振幅IAを0にする。つまり、交流指令値Iacを0に設定する。
【0061】
ステップS13では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの端子電圧の均等化要求があるか否かを判定する。例えば、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差の絶対値が所定値ΔVを超えていると判定した場合、均等化要求があると判定すればよい。
【0062】
ステップS13において均等化要求がないと判定した場合には、ステップS14に進み、直流成分算出部80において直流指令値Idcを0にする。続くステップS15では、加算部82において、ステップS12,S14で算出した交流指令値Iac及び直流指令値Idcを加算することにより中性点指令電流IM*を算出する。昇温要求及び均等化要求がないと判定しているため、中性点指令電流IM*が0になる。このため、接続スイッチ61をオフにし、昇温制御及び電圧均等化制御を行わない。
【0063】
一方、ステップS13において均等化要求があると判定した場合には、ステップS16に進み、直流成分算出部80において直流指令値Idcを算出する。この場合、続くステップS15において、「IM*=Idc」となる。そして、接続スイッチ61をオンに切り替え、昇温制御及び電圧均等化制御のうち電圧均等化制御を行う。
【0064】
ステップS11において昇温要求があると判定した場合には、ステップS17に進み、交流成分算出部81において、電池温度Td、目標温度Ttgt及び目標昇温時間Lttgtに基づいて交流指令値Iacの振幅IA(≠0)を算出する。
【0065】
ステップS18では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの端子電圧の均等化要求があるか否かを判定する。均等化要求があるか否かは、ステップS13と同じ手法で判定すればよい。
【0066】
ステップS18において均等化要求がないと判定した場合には、ステップS14に進み、直流成分算出部80において直流指令値Idcを0にする。この場合、続くステップS15において、「IM*=Iac」となる。そして、接続スイッチ61をオンに切り替え、昇温制御及び電圧均等化制御のうち昇温制御を行う。
【0067】
一方、ステップS18において均等化要求があると判定した場合には、ステップS16に進み、直流成分算出部80において直流指令値Idcを算出する。この場合、続くステップS15において、「IM*=Idc+Iac」となる。そして、接続スイッチ61をオンに切り替え、昇温制御及び電圧均等化制御の双方を行う。
【0068】
続いて、
図14を用いて、電気負荷100の駆動中において、制御装置70により実行される電圧均等化制御及び昇温制御の手順について説明する。
図14に示す処理は、車両の停車中又は走行中に実行される。
【0069】
ステップS20では、電気負荷100が駆動されているか否かを判定する。
【0070】
ステップS20において駆動されていると判定した場合には、ステップS21に進む。なお、ステップS21~S26の処理は、先の
図13のステップS11~S16と同様の処理となる。ただし、ステップS26において、例えば、目標充電時間Lvtgtに代えて、電気負荷100の消費電力に基づいて直流指令値Idcを算出すればよい。詳しくは、消費電力が大きいほど、直流指令値Idcの絶対値を大きくすればよい。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、回転電機40及びインバータ30を流用して、電圧均等化制御及び昇温制御の双方を同時に行うことができる。これにより、電力変換装置10の小型化を図ることができる。
【0072】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0073】
・
図1において、充電器200に対する電力供給源としては、3相の系統電源210に限らず、単相の系統電源であってもよい。また、充電器としては、交流のAC充電器に限らず、直流のDC充電器(例えば、DC急速充電器)であってもよい。
【0074】
・
図15に示すように、U,V,W相キャリア信号Sgu,Sgv,Sgwの位相が120°ずつずれていてもよい。
【0075】
・
図16に示すように、3相のうち1相のみの上,下アームスイッチのスイッチング制御により、電圧均等化制御及び昇温制御が行われてもよい。
図16には、U相のみ用いる例を示す。
【0076】
また、
図17及び
図18に示すように、3相のうち2相のみの上,下アームスイッチのスイッチング制御により、電圧均等化制御及び昇温制御が行われてもよい。
図17及び
図18には、U,V相のみ用いる例を示す。なお、
図17に示すU,V相キャリア信号Sgu,Sgvは位相が180°ずれており、
図18に示すU,V相キャリア信号Sgu,Sgvは位相差が0である。
【0077】
・
図1において、電気負荷100及び充電器200が、第2蓄電池22に代えて第1蓄電池21に接続されていてもよい。
【0078】
・交流指令値Iacの設定方法は、
図5に示したものに限らない。1周期Tcにおいて交流指令値Iacのゼロクロスタイミングに対して、正の交流指令値Iacと負の交流指令値Iacとが点対称になる関係を満たしつつ、例えば、正の交流指令値Iac及び負の交流指令値Iacそれぞれを台形波又は矩形波に設定してもよい。
【0079】
また、交流指令値Iacの設定方法としては、上記点対称の関係を満たすものに限らない。例えば、1周期Tcにおいて、交流指令値Iacの第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの期間と、交流指令値Iacの第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの期間とが異なるようにし、かつ、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなるように交流指令値Iacを設定してもよい。
【0080】
・電力変換装置10としては、
図19に示すものであってもよい。この電力変換装置10は、接続経路60、接続スイッチ61及び電流センサ62に代えて、接続経路90、接続スイッチ91及び電流センサ92を備えている。接続経路90の第1端は、3相のうち一部の相の上アームスイッチのエミッタ及び下アームスイッチのコレクタに接続されている。
図19に示す例では、接続経路90の第1端がU相に接続されている。接続経路90の第2端は、組電池20の中間端子Bに接続されている。接続スイッチ91及び電流センサ92は、接続経路90上に設けられている。
【0081】
制御装置70は、上述した電圧均等化制御及び昇温制御を行う。ここでは、接続スイッチ61を接続スイッチ91に読み替える。また、電圧均等化制御及び昇温制御においては、U相上,下アームスイッチQUH,QULがオフに維持され、V,W相上,下アームスイッチQVH,QVL,QWH,QWLのスイッチング制御が行われる。
【0082】
・回転電機及びインバータとしては、5相又は7相等、3相以外のものであってもよい。
図20に、5相の場合における電力変換装置を示す。
図20では、インバータ30において、X相上,下アームスイッチQXH,QXL及び各ダイオードDXH,DXLが追加され、Y相上,下アームスイッチQYH,QYL及び各ダイオードDYH,DYLが追加されている。また、回転電機40において、X相巻線41XとY相巻線41Yとが追加されている。また、電力変換装置10において、X相導電部材32XとY相導電部材32Yとが追加されている。
【0083】
・接続スイッチ61としては、リレーに限らない。接続スイッチ61として、例えば、ソース同士が接続された一対のNチャネルMOSFETや、IGBTが用いられてもよい。
【0084】
・接続スイッチ61は必須ではない。この場合、中間端子Bと中性点Oが常時電気的に接続されることとなる。
【0085】
・インバータを構成する上,下アームスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばNチャネルMOSFETであってもよい。
【0086】
・
図1において、蓄電池に代えて、例えば電気二重層キャパシタが用いられてもよい。
【0087】
・電力変換装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。例えば、移動体が航空機の場合、航空機が備える回転電機は航空機の飛行動力源となり、移動体が船舶の場合、船舶が備える回転電機は船舶の航行動力源となる。また、電力変換装置の搭載先は、移動体に限らない。
【符号の説明】
【0088】
10…電力変換装置、21,22…第1,第2蓄電池、30…インバータ、40…回転電機、60…接続経路、70…制御装置。