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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017774
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】靴底および靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/12 20060101AFI20220119BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A43B13/12 A
A43B13/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120520
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩基
(72)【発明者】
【氏名】北本 桂士
(72)【発明者】
【氏名】玉越 祐司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晴嗣
(72)【発明者】
【氏名】益本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】竹村 周平
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕彰
(72)【発明者】
【氏名】阪上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 政剛
(72)【発明者】
【氏名】中山 和長
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA43
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA60
(57)【要約】
【課題】着地時において、オーバープロネーションを抑制して足の安定性を向上させつつ、安定性向上のための部材を介して靴の着用者の踵部へ伝わる局所的な衝撃を緩衝させる。
【解決手段】靴底10は、本体部100と、踵保持部200とを備えている。踵保持部200は、本体部100の接地面101とは反対側に位置して、足の踵部を少なくとも内足側S1から保持する。本体部100は、低硬度部110と、高硬度部120とを含んでいる。高硬度部120は、低硬度部110を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成されている。踵保持部200は、低硬度部110を形成するフォーム材および高硬度部120を形成するフォーム材のいずれよりも硬い樹脂で形成されている。後足部10Rの内足側S1において、低硬度部110は、上下方向Zにおいて踵保持部200と高硬度部120との間に位置している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の足趾部と踏付け部とを支持する前足部、足の踏まず部を支持する中足部、および、足の踵部を支持する後足部が、足長方向に連なって設けられた靴底であって、
接地面を有する本体部と、
前記本体部の前記接地面とは反対側に位置して、足の踵部を少なくとも内足側から保持する踵保持部とを備え、
前記本体部は、
フォーム材で形成された低硬度部と、
前記低硬度部から見て前記踵保持部とは反対側に位置し、前記低硬度部を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成された高硬度部とを含み、
前記踵保持部は、前記低硬度部を形成するフォーム材および前記高硬度部を形成するフォーム材のいずれよりも硬い樹脂で形成され、
前記後足部の内足側において、前記低硬度部は、上下方向において前記踵保持部と前記高硬度部との間に位置している、靴底。
【請求項2】
前記高硬度部は、前記低硬度部と直接接しており、
前記中足部と前記後足部との境界位置を足長方向から見たときに、前記低硬度部、前記高硬度部および前記踵保持部が互いに上下方向に並んでいる領域の足幅方向中央において、前記低硬度部の上下方向の寸法は、前記高硬度部の上下方向の寸法の20%以上50%以下である、請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記踵保持部は、足の踵部の周側面のうち内足側の部分に対向する内足側保持部を含み、
前記内足側保持部は、前記本体部の上面のうち内足側に接合された内足側下側壁部と、該内足側下側壁部の足幅方向における外側端部から、前記本体部に対して離れるように延出する内足側上側壁部とを有する、請求項1または請求項2に記載の靴底。
【請求項4】
前記踵保持部は、足の踵部の周側面のうち外足側の部分に対向する外足側保持部をさらに含み、
前記外足側保持部は、前記本体部の上面のうち外足側に接合された外足側下側壁部と、該外足側下側壁部の足幅方向における外側端部から、前記本体部に対して離れるように延出する外足側上側壁部とを有する、請求項3に記載の靴底。
【請求項5】
前記中足部と前記後足部との境界位置において、前記内足側保持部の足幅方向の寸法は、前記外足側保持部の足幅方向の寸法より大きい、請求項4に記載の靴底。
【請求項6】
前記内足側保持部の、内側面から外側面にかけての平均厚さは、前記外足側保持部の、内側面から外側面にかけての平均厚さより厚い、請求項4または請求項5に記載の靴底。
【請求項7】
前記中足部において、前記内足側保持部の上下方向の最大寸法は、前記外足側保持部の上下方向の最大寸法より大きい、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項8】
前記内足側保持部の前端部は、前後方向において前記外足側保持部の前端部より前方に位置している、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項9】
足長方向から見て、前記内足側下側壁部と前記本体部との接合長さは、前記外足側下側壁部と前記本体部との接合長さより長い、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項10】
前記内足側下側壁部の外側面は、前記内足側下側壁部の足幅方向における外側端部から、足幅方向における前記靴底の中央に向かうに従って下方に傾いており、
前記後足部の内足側のうち、前記内足側保持部と前記高硬度部とが上下方向に並んでいる領域において、前記高硬度部の上面は、足幅方向中央に向かうに従って下方に傾いている、請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項11】
前記中足部と前記後足部との境界位置を足長方向から見たときに、前記踵保持部は、前記靴底の足幅方向の中央と前記低硬度部の上面とが互いに交差する点から、該点を中心として前記靴底に外接する仮想円の半径の50%以上離れて位置している、請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項12】
前記中足部と前記後足部との境界位置を足長方向から見たときに、前記高硬度部は、前記靴底の足幅方向の中央と前記低硬度部の上面とが互いに交差する点から、該点を中心として前記靴底に外接する仮想円の半径の60%以上離れて位置している、請求項3から請求項11のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項13】
前記後足部の内足側のうち前記内足側保持部と前記高硬度部とが上下方向に並んでいる領域において、前記高硬度部の上面は、前記内足側下側壁部の外側面に沿って位置している、請求項3から請求項12のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の靴底と、
前記靴底の上方に位置するアッパーとを備えた、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底および靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴底および靴を開示した文献として、特開2016-59555号公報(特許文献1)、国際公開第2006/120749号(特許文献2)、国際公開第2007/122722号(特許文献3)、国際公開第2010/038266号(特許文献4)、特許第5875168号公報(特許文献5)および国際公開第2010/049983号(特許文献6)がある。
【0003】
特許文献1に開示された靴底のミッドソールは、後端領域と、内側領域と、外側領域とを備えている。後端領域は、踵骨の下端を含む足の内側の後端および足の外側の後端を支持する。後端領域は一部または全部の領域において、下層と、上層とが互いに積層されている。上層は、下層よりも圧縮剛性が小さい。
【0004】
特許文献2に開示された靴底は、ミッドソール、アウターソール、変形要素および連結部材を備えている。変形要素は、アウターソールとミッドソールとの間に配置されている。変形要素は、後足部の中心から周縁に向って開口した曲げ変形部材を有している。曲げ変形部材が有する下板部と上板部との間には、圧縮されたときに変形しながら反発する力を蓄えるゴム様または鞘様の圧縮変形部材が装着されている。連結部材は、ミッドソールと曲げ変形部材との間に介挿されている。連結部材は、ミッドソールと曲げ変形部材とを互いに連結する。連結部材を構成する素材のヤング率は、ミッドソールのそれよりも大きく、かつ、曲げ変形部材のそれよりも小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-59555号公報
【特許文献2】国際公開第2006/120749号
【特許文献3】国際公開第2007/122722号
【特許文献4】国際公開第2010/038266号
【特許文献5】特許第5875168号公報
【特許文献6】国際公開第2010/049983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の靴底として、着地時において靴の着用者の踵部への衝撃を緩衝させる靴底がある。たとえば、特許文献1には、柔軟な上層により、接地時に足へ伝わる衝撃が緩衝されることが記載されている。特許文献2には、着地の衝撃が曲げ変形部材により分散され、更に連結部材により分散されることが記載されている。特許文献3には、各羽根の膨出によりアーチが形成されて、アーチの撓みにより後足部の緩衝機能が向上することが記載されている。なお、特許文献4には、補強部材が足のアーチの低下を抑制することが記載されている。
【0007】
一方で、従来の靴の靴底としては、さらに、着用者の足の安定性を向上させた靴底がある。特許文献5には、スカートが設けられた内側および/または外側において、後足の横振れ抑制機能が著しく向上することが記載されている。特許文献6においては、埋設部によってプロネーションが抑制され、ミッドソール本体の第1領域の上部により足裏が支えられるので、足裏に突き上げを感じにくくなることが記載されている。
【0008】
しかしながら、従来の靴底においては、着地時に、靴底に設けられた安定性を向上させるための部材を介して、局所的に突き上げるような衝撃が踵部に伝わる。特に、オーバープロネーションを抑制するための靴底においては、安定性の向上効果を高めるために上記の部材が比較的硬質であり、そのような衝撃の発生が顕著である。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、着地時において、オーバープロネーションを抑制して足の安定性を向上させつつ、安定性向上のための部材を介して靴の着用者の踵部へ伝わる局所的な衝撃を緩衝させることができる、靴底および靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づく靴底は、足の足趾部と踏付け部とを支持する前足部、足の踏まず部を支持する中足部、および、足の踵部を支持する後足部が、前後方向に連なって設けられている。靴底は、本体部と、踵保持部とを備えている。本体部は、接地面を有する。踵保持部は、本体部の接地面とは反対側に位置して、足の踵部を少なくとも内足側から保持する。本体部は、低硬度部と、高硬度部とを含んでいる。低硬度部は、フォーム材で形成されている。高硬度部は、低硬度部から見て踵保持部とは反対側に位置している。高硬度部は、低硬度部を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成されている。踵保持部は、低硬度部を形成するフォーム材および高硬度部を形成するフォーム材のいずれよりも硬い樹脂で形成されている。後足部の内足側において、低硬度部は、上下方向において踵保持部と高硬度部との間に位置している。
【0011】
本発明に基づく靴は、上述の本発明に基づく靴底と、靴底の上方に位置するアッパーとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着地時において、オーバープロネーションを抑制して足の安定性を向上させつつ、安定性向上のための部材を介して靴の着用者の踵部へ伝わる局所的な衝撃を緩衝させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る靴の模式的な斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る靴底を上方から見た平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る靴底を、内足側から見た側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る靴底を、外足側から見た側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る靴底を、後端側から見た背面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る靴底を、下方から見た底面図である。
図7図6の靴底をVII-VII線矢印方向から見た断面図である。
図8図6の靴底をVIII-VIII線矢印方向から見た断面図である。
図9図6の靴底をIX-IX線矢印方向から見た断面図である。
図10】本発明の一実施形態の第1変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図11】本発明の一実施形態の第2変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図12】本発明の一実施形態の第3変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図13】本発明の一実施形態の第4変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図14】本発明の一実施形態の第5変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図15】本発明の一実施形態の第6変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図16】本発明の一実施形態の第7変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図17】本発明の一実施形態の第8変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図18】本発明の一実施形態の第9変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図19】本発明の一実施形態の第10変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。
図20】本発明の一実施形態の第11変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。
図21】本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。
図22】本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。
図23】本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底において、靴底が着地した最初の段階を後端側から示した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る靴底および靴について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。また、以下の実施形態の説明においては、前方、後方、上方、下方などの用語が用いられる。前方および後方は、地面などの平らな面に置かれた靴を着用した着用者の視点から見た方向を指す。たとえば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。下方は、地面などの平らな面に置かれた靴について、地面側の方向を指し、上方は、地面側とは反対側の方向を指す。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る靴の模式的な斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る靴1は、靴底10と、靴底10の上方に位置するアッパー20とを備えている。アッパー20は、靴底10に接続されており、靴底10と共に足を収容する空間を形成する。アッパー20は、アッパー20の下部を構成する中底を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係る靴底を上方から見た平面図である。図2においては、靴底10を備える靴1を着用する標準的な着用者の足の骨を2点鎖線で示している。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る靴底10は、足の足趾部と踏付け部とを支持する前足部10F、足の踏まず部を支持する中足部10M、および、足の踵部を支持する後足部10Rが、足長方向Yに連なって設けられている。
【0017】
前足部10Fは、靴底10の前端を含む。後足部10Rは、靴底10の後端を含む。本実施形態において、前足部10Fと、中足部10Mとの境界位置である第1境界位置P1は、足長方向Yにおいて、靴底10の前端から靴底10の寸法の40%の寸法に相当する位置である。中足部10Mと、後足部10Rとの境界位置である第2境界位置P2は、足長方向Yにおいて、靴底10の前端から靴底10の寸法の80%の寸法に相当する位置である。第1境界位置P1および第2境界位置P2は、足幅方向Xに沿って位置している。
【0018】
本実施形態において、足幅方向Xは、靴底10を上下方向Zから見たときの足長方向Yに直交する方向である。足長方向Yは、靴底10を上下方向Zから見たときの、ヒールセンターHCに沿う方向である。上下方向Zは、後述する接地面101に直交する方向である。ヒールセンターHCは、上下方向Zから見て、靴底10を備える靴1の標準的な着用者の、踵骨の中心と、第3趾および第4趾の間とを結ぶ直線である。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係る靴底を、内足側から見た側面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る靴底を、外足側から見た側面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る靴底を、後端側から見た背面図である。本明細書において、内足側は、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)を意味し、外足側は、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)を意味する。
【0020】
図3から図5に示すように、靴底10は、本体部100と、踵保持部200とを備えている。本体部100は、接地面101を有する。踵保持部200は、本体部100の接地面101とは反対側に位置して、足の踵部を少なくとも内足側S1から保持する。本実施形態においては、踵保持部200は、足の踵部を外足側S2からも保持する。
【0021】
図6は、本発明の一実施形態に係る靴底を、下方から見た底面図である。図7は、図6の靴底をVII-VII線矢印方向から見た断面図である。図8は、図6の靴底をVIII-VIII線矢印方向から見た断面図である。
【0022】
図3から図8に示すように、本実施形態において、本体部100は、低硬度部110と、高硬度部120と、アウトソール130と、緩衝部材140と、補強部材150とを含んでいる。なお、本体部100は、緩衝部材140を含んでいなくてもよいし、補強部材150を含んでいなくてもよい。
【0023】
図6および図7に示すように、低硬度部110は、足長方向Yにおいて、前足部10F、中足部10Mおよび後足部10Rに連なって設けられている。本実施形態において、低硬度部110の下面111は、本体部100の接地面101を構成しないが、下面111の一部が接地面101を構成してもよい。低硬度部110の上面は、本体部100の上面102を構成する。
【0024】
低硬度部110の上面は、緩衝領域112を有する。緩衝領域112は、後足部10Rから中足部10Mにかけて位置している。緩衝領域112は、上下方向Zから見て、踵保持部200と重ならないように位置している。
【0025】
緩衝領域112には、網状の凹部113が形成されている。緩衝領域112には、網状の凹部113に囲まれた複数の凸部114が形成されている。複数の凸部114により、着地時において着用者の踵部に伝わる衝撃を緩衝できる。なお、低硬度部110の上面は、緩衝領域112を有していなくてもよい。
【0026】
本実施形態において、低硬度部110は、上部110Aと、上部110Aの下側に位置する下部110Bとを有している。本実施形態において、上部110Aおよび下部110Bは、それぞれ異なる部材で形成されているが、上部110Aおよび下部110Bは、一体の部材で形成されていてもよい。
【0027】
図6および図7に示すように、上部110Aは、足長方向Yにおいて、前足部10F、中足部10Mおよび後足部10Rに連なって設けられている。下部110Bは、上下方向Zから見て、中足部10Mおよび後足部10Rにおいて、靴底10の周側縁に沿うように略U字状の外形を有している。図6および図8に示すように、下部110Bは、第2境界位置P2において、内足側S1および外足側S2のそれぞれにおいて、互いに離間して位置している。また、図3および図6に示すように、靴底10を内足側S1から見たときに、下部110Bは、中足部10Mにおいて外部に露出していない。
【0028】
低硬度部110、すなわち上部110Aおよび下部110Bは、それぞれフォーム材で形成されている。下部110Bを形成するフォーム材は、安定性の観点から、上部110Aを形成するフォーム材より硬いことが好ましいが、上部110Aを形成するフォーム材と同等の硬さと同じであってもよいし、上部110Aを形成するフォーム材より柔らかくてもよい。
【0029】
低硬度部110を形成するフォーム材は、たとえば樹脂製またはゴム製である。樹脂製のフォーム材は、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤および架橋剤などを含んでいてもよい。この樹脂材料としては、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)または熱可塑性ポリアミド系エラストマー(TPA)等の熱可塑性樹脂が好適に利用できる。ゴム製のフォーム材は、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤、発泡剤、補強材および架橋剤を含んでもよい。ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0030】
低硬度部110の硬度は、たとえば、アスカーC硬度で20度以上であることが好ましく、40度以上であることがより好ましい。また、低硬度部110の硬度は、たとえば、アスカーC硬度で70度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。低硬度部110の硬度が、アスカーC硬度で70度以下であれば、靴底10を備えた靴1の着用者への足当たりがより向上する。
【0031】
図6および図8に示すように、高硬度部120は、低硬度部110から見て踵保持部200とは反対側に位置している。本実施形態において、高硬度部120は、低硬度部110と直接接している。
【0032】
図3および図6に示すように、本実施形態においては、高硬度部120は、上下方向Zから見て、靴底10の後足部10Rから中足部10Mにかけて、足長方向Yに沿って延びるように位置している。高硬度部120は、内足側S1において靴底10の外部に露出して位置している。内足側S1から見て、高硬度部120の後端面122は、低硬度部110と接している。後端面122は、後方に向かうに従って下方に傾いている。
【0033】
図8に示すように、高硬度部120は、内足側S1側に位置する低硬度部110の下方に位置している。また、本実施形態においては、高硬度部120は、内足側S1側に位置する低硬度部110の下部110Bから見て、足幅方向Xにおいて靴底10の中央とは反対側に位置している。
【0034】
また、第2境界位置P2を足長方向Yから見たときに、低硬度部110、高硬度部120および踵保持部200が互いに上下方向Zに並んでいる領域Aの足幅方向中央Acにおいて、低硬度部110の上下方向Zの寸法Z1は、高硬度部120の上下方向Zの寸法Z2の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、足幅方向中央Acにおいて、上記寸法Z1は、高硬度部120の上下方向Zの寸法Z2の50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。また、第2境界位置P2を足長方向Yから見たときに、高硬度部120は、靴底10の足幅方向Xの中央(すなわち、ヒールセンターHC)と低硬度部110の上面102とが互いに交差する点Oから、当該点Oを中心として靴底10に外接する仮想円の半径の60%以上離れて位置している。
【0035】
高硬度部120は、低硬度部110を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成されている。高硬度部120を形成するフォーム材としては、低硬度部110を形成するフォーム材と同様のものを用いることができる。
【0036】
高硬度部120の硬度は、たとえば、アスカーC硬度で55度以上80度以下であることが好ましい。高硬度部120の硬度が、アスカーC硬度で55度以上であることにより、靴底10を備えた靴1の着用者の足の安定性がより向上する。また、高硬度部120の硬度は、低硬度部110よりアスカーC硬度で8度以上高いことが好ましく、10度以上高いことがより好ましい。高硬度部120よりも、アスカーC硬度で8度以上低い低硬度部110を設けることで、靴底10を備えた靴1の着用者が、着地時において高硬度部120からの突き上げをより感じ難くなる。
【0037】
図6から図8に示すように、本実施形態においては、アウトソール130の下面が、本体部100の接地面101を構成する。なお、図6においては、アウトソール130の露出面に形成されたトレッドパターンを省略して図示している。
【0038】
アウトソール130は、低硬度部110の下面111に設けられている。より具体的には、第2境界位置P2を含む後足部10Rにおいては、低硬度部110の下部110Bにおける下面111にアウトソール130が設けられている。前足部10Fにおいては、低硬度部110の上部110Aにおける下面111にアウトソール130が設けられている。
【0039】
アウトソール130は、低硬度部110および高硬度部120を形成するフォーム材よりヤング率が高いとともに硬質であり、踵保持部200を形成する樹脂より軟らかい部材で形成されている。アウトソール130は、たとえばゴム製であり、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤、補強剤および架橋剤などを含んでもよい。
【0040】
図2および図4に示すように、緩衝部材140は、少なくとも後足部10Rの外足側S2に配置されている。また、緩衝部材140は、低硬度部110および高硬度部120より軟らかい。これにより、着地時に、靴底10を備えた靴1の着用者の足の踵部が内足側S1に倒れ込みにくくなり、オーバープロネーションをより抑制できるとともに、着地時における衝撃を緩衝できる。
【0041】
図2に示すように、緩衝部材140は、上下方向Zから見て、靴底10の外周縁に沿うように位置している。緩衝部材140は、上下方向Zから見て、外足側S2における中足部10Mおよび後足部10Rにわたって位置し、靴底10の後端まで延びている。
【0042】
図4図5図7および図8に示すように、緩衝部材140は、靴底10の外部に露出して位置している。また、緩衝部材140は、上下方向Zにおいて低硬度部110の内部に位置している。より具体的には、緩衝部材140は、上下方向Zにおいて、低硬度部110の上部110Aおよび下部110Bに挟み込まれて位置している。
【0043】
緩衝部材140は、主成分として軟質エラストマーを含んでいる。軟質エラストマーは、固体状で、かつ、ゼリー状の粘弾性体である。軟質エラストマーは、たとえば、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系樹脂、または、その他の熱可塑性樹脂からなる。
【0044】
図9は、図6の靴底をIX-IX線矢印方向から見た断面図である。図6および図9に示すように、補強部材150は、中足部10Mに位置している。補強部材150は、低硬度部110を形成するフォーム材、高硬度部120を形成するフォーム材、および、アウトソール130を形成する部材のいずれよりも硬い非発泡の樹脂で形成されている。補強部材150により、靴底10を備える靴1の着用者の足が靴底10を介して地面に着地した際に、着用者の足のアーチが沈み込むことを抑制できる。
【0045】
補強部材150の一部は、低硬度部110の内部に組み込まれている。具体的には、補強部材150は、低硬度部110の上部110Aと下部110Bとに挟み込まれるように位置している。足幅方向Xにおける補強部材150の内足側S1の端部は、上下方向Zにおいて低硬度部110(の上部110A)と高硬度部120との間に位置している。
【0046】
補強部材150を形成する樹脂としては、踵保持部200を形成する樹脂と同様のものを用いることができる。
【0047】
図2から図5に示すように、踵保持部200は、中足部10Mおよび後足部10Rに位置している。踵保持部200は、上下方向Zから見て、靴底10の周側縁に沿って延びている。本実施形態において、踵保持部200は、内足側保持部210と、外足側保持部220とを含んでいる。内足側保持部210は、足の踵部の周側面のうち内足側S1の部分に対向する。外足側保持部220は、足の踵部の周側面のうち外足側S2の部分に対向する。内足側保持部210および外足側保持部220は、靴底10の後端で互いに接続されている。本実施形態においては、少なくとも第2境界位置P2において、内足側保持部210と外足側保持部220とは互いに離間している。さらに、中足部10Mにおいて、内足側保持部210と外足側保持部220とは互いに離間している。
【0048】
図2に示すように、第2境界位置P2において、内足側保持部210の足幅方向Xの寸法は、外足側保持部220の足幅方向Xの寸法より大きい。内足側保持部210の前端部210Cは、前後方向Lにおいて外足側保持部220の前端部220Cより前方に位置している。前後方向Lは、靴底10を上下方向Zから見たときの、靴底10の中心線SCに沿う方向である。中心線SCは、靴底10上下方向Zから見たときの、靴底10の前端と後端とを結ぶ直線である。中心線SCは、靴底10を備える靴1の標準的な着用者の踵骨の中心と第1趾および第2趾の間とを結ぶ直線に対応する線としてもよい。また、本実施形態においては、内足側保持部210の前端部210Cは、足長方向Yにおいて外足側保持部220の前端部220Cと略同じ位置に位置している。内足側保持部210の前端部210Cおよび外足側保持部220の前端部220Cは、足長方向Yにおいて中足部10Mの略中央に位置している。
【0049】
図3および図4に示すように、中足部10Mにおいて、内足側保持部210の上下方向Zの最大寸法M1は、外足側保持部220の上下方向Zの最大寸法M2より大きい。また、中足部10Mにおいて、内足側保持部210の上下方向Zの平均寸法は、外足側保持部220の上下方向Zの平均寸法より大きい方が好ましい。足幅方向Xから見たときに、中足部10Mにおいては、内足側保持部210および外足側保持部220の各々の上端縁は上方に向かって凸状に湾曲している。足幅方向Xから見たときに、後足部10Rにおいては、内足側保持部210および外足側保持部220の各々の上端面は下方に向かって凸状に湾曲している。
【0050】
図8に示すように、内足側保持部210の内側面210Aおよび外足側保持部220の内側面220Aは、アッパー20と接合されている。内足側保持部210の、内側面210Aから外側面210Bにかけての平均厚さは、外足側保持部220の、内側面220Aから外側面220Bにかけての平均厚さより厚い。足長方向Yから見て、内足側下側壁部211と本体部100との接合長さは、外足側下側壁部221と本体部100との接合長さより長い。
【0051】
内足側保持部210は、内足側下側壁部211と、内足側上側壁部215とを有している。
【0052】
内足側下側壁部211は、本実施形態において足幅方向Xに延びており、本体部100の上面102のうち内足側S1に接合されている。内足側下側壁部211の外側面211Bは、内足側下側壁部211の足幅方向Xにおける外側端部212から、足幅方向Xにおける靴底10の中央に向かうに従って下方に傾いている。
【0053】
内足側上側壁部215は、内足側下側壁部211の足幅方向Xにおける外側端部212から、本体部100に対して離れるように延出している。
【0054】
外足側保持部220は、外足側下側壁部221と、外足側上側壁部225とを有している。
【0055】
外足側下側壁部221は、本体部100の上面102のうち外足側S2に接合されている。外足側下側壁部221の外側面221Bは、外足側下側壁部221の足幅方向Xにおける外側端部222から、足幅方向Xにおける靴底10の中央に向かうに従って下方に傾いている。
【0056】
外足側上側壁部225は、外足側下側壁部221の足幅方向Xにおける外側端部222から、本体部100に対して離れるように延出している。
【0057】
次に、踵保持部200と、本体部100を構成する各部材との位置関係の詳細について説明する。
【0058】
図8に示すように、後足部10Rの内足側S1において、低硬度部110は、上下方向Zにおいて踵保持部200(内足側保持部210)と高硬度部120との間に位置している。本実施形態においては、低硬度部110は、上下方向Zにおいて内足側保持部210と高硬度部120との間に位置している。さらに、低硬度部110の上部110Aは、上下方向Zにおいて踵保持部200(外足側保持部220)と緩衝部材140との間に位置している。
【0059】
本実施形態においては、後足部10Rの内足側S1のうち、内足側保持部210と高硬度部120とが上下方向Zに並んでいる領域において、高硬度部120の上面121は、足幅方向X中央に向かうに従って下方に傾いている。当該領域においては、高硬度部120の上面121は、内足側下側壁部211の外側面210Bに沿って位置している。なお、当該領域のうち、靴底10の足幅方向Xの中央側とは反対側の端においては、高硬度部120の上面121が足幅方向Xと平行であってもよい。
【0060】
後足部10Rの外足側S2のうち、外足側保持部220と緩衝部材140とが上下方向Zに並んでいる領域において、緩衝部材140の上面141は、足幅方向X中央に向かうに従って下方に傾いている。当該領域においては、緩衝部材140の上面141は、外足側下側壁部221の外側面221Bに沿って位置している。
【0061】
また、本実施形態においては、第2境界位置P2を足長方向Yから見たときに、踵保持部200は、靴底10の足幅方向Xの中央と低硬度部110の上面102とが互いに交差する点Oから、当該点Oを中心として靴底10に外接する仮想円の半径の50%以上離れて位置している。
【0062】
そして、踵保持部200は、低硬度部110を形成するフォーム材および高硬度部120を形成するフォーム材のいずれよりも硬い非発泡の樹脂で形成されている。踵保持部200を形成する樹脂は、主成分としての樹脂材料と、副成分としての架橋材などを含んでいてもよい。この樹脂材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、たとえば熱可塑性ポリウレタン(TPU)が好適に利用できる。
【0063】
踵保持部200の硬度は、たとえば、アスカーD硬度で55度以上70度以下であることが好ましい。また、踵保持部200の硬度は、アスカーD硬度で60度以上であることがより好ましい。踵保持部200の硬度がアスカーD硬度で60度以上であれば、靴底10を備えた靴1の着用者の足の安定性がより向上する。
【0064】
以下、本実施形態に係る靴底10の機能作用について説明する。歩行時や走行時においては、足の踵部が内側に倒れ込むプロネーションと呼ばれる現象が発生する。プロネーションは、着地時において踵部が適度に内足側S1に倒れ込むことで着地の際に足に加わる衝撃を緩和する。しかしながら、踵部が必要以上に内足側S1に倒れ込むオーバープロネーションが発生する場合がある。オーバープロネーションが、走行障害または歩行障害を誘発する原因となる。
【0065】
そこで、上述したように、本発明の一実施形態に係る靴底10においては、低硬度部110が、フォーム材で形成されている。高硬度部120は、低硬度部110から見て踵保持部200とは反対側に位置している。高硬度部120は、低硬度部110を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成されている。踵保持部200は、低硬度部110を形成するフォーム材および高硬度部120を形成するフォーム材のいずれよりも硬い樹脂で形成されている。後足部10Rの内足側S1において、低硬度部110は、上下方向Zにおいて踵保持部200と高硬度部120との間に位置している。
【0066】
これにより、靴底10が着地した時に、靴底10を備える靴1を着用する着用者の足の内足側S1において、高硬度部120および踵保持部200により着用者のオーバープロネーションを抑制して安定性を向上させることができる。さらには、靴底10が着地したときに、低硬度部110が、上下方向Zにおいて高硬度部120と踵保持部200とによって適度に圧縮変形されるため、高硬度部120を介して着用者の踵部を突き上げるような局所的な衝撃を、低硬度部110で緩衝させることができる。
【0067】
また、本実施形態において、高硬度部120は、低硬度部110と直接接している。中足部10Mと後足部10Rとの境界位置(第2境界位置P2)を足長方向Yから見たときに、低硬度部110、高硬度部120および踵保持部200が互いに上下方向Zに並んでいる領域Aの足幅方向中央Acにおいて、低硬度部110の上下方向Zの寸法Z1は、高硬度部120の上下方向Zの寸法Z2の20%以上50%以下である。このように、上記寸法Z1が、高硬度部120の上下方向Zの寸法Z2の20%以上であることにより、靴底10が着地したときの衝撃を適度に緩和することができ、かつ、50%以下であることにより、オーバープロネーションの抑制効果が低硬度部110によって低下することを抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態において、踵保持部200は、足の踵部の周側面のうち内足側S1の部分に対向する内足側保持部210を含んでいる。内足側保持部210は、本体部100の上面102のうち内足側S1に接合された内足側下側壁部211と、内足側下側壁部211の足幅方向Xにおける外側端部212から、本体部100に対して離れるように延出する内足側上側壁部215とを有している。これにより、靴底10が着地したときの足の踵部の足幅方向Xにおける踵部の倒れ込みを抑制することができ、安定性がより向上する。
【0069】
また、本実施形態において、踵保持部200は、足の踵部の周側面のうち外足側S2の部分に対向する外足側保持部220をさらに含んでいる。外足側保持部220は、本体部100の上面102のうち外足側S2に接合された外足側下側壁部221と、外足側下側壁部221の足幅方向Xにおける外側端部222から、本体部100に対して離れるように延出する外足側上側壁部225とを有している。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用者の足の静的フィット性を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態において、中足部10Mと後足部10Rとの境界位置(第2境界位置P2)において、内足側保持部210の足幅方向Xの寸法は、外足側保持部220の足幅方向Xの寸法より大きい。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用者の足の静的フィット性を適度に向上させつつ、靴底10が着地したときの足の踵部の足幅方向Xにおける内足側S1への踵部の倒れ込みを抑制して安定性を向上できる。
【0071】
また、本実施形態において、内足側保持部210の、内側面210Aから外側面210Bにかけての平均厚さは、外足側保持部220の、内側面220Aから外側面220Bにかけての平均厚さより厚い。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用者の足の静的フィット性を適度に向上させるとともに、靴底10が着地したときの足の踵部の内足側S1への倒れ込みを抑制して安定性を向上できる。
【0072】
また、本実施形態においては、中足部10Mにおいて、内足側保持部210の上下方向Zの最大寸法M1は、外足側保持部220の上下方向Zの最大寸法M2より大きい。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用したときの着用者の足の静的フィット性を適度に向上させるとともに、靴底10が着地したときの足の踵部の倒れ込みを抑制して安定性を向上できる。
【0073】
また、本実施形態において、内足側保持部210の前端部210Cは、前後方向Lにおいて外足側保持部220の前端部220Cより前方に位置している。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用者の足の静的フィット性を適度に向上させるとともに、靴底10が着地したときの足の踵部の内足側S1への倒れ込みを抑制して安定性を向上できる。
【0074】
また、本実施形態において、足長方向Yから見て、内足側下側壁部211と本体部100との接合長さは、外足側下側壁部221と本体部100との接合長さより長い。これにより、靴底10を備える靴1を着用したときの着用したときの着用者の足の静的フィット性を適度に向上させるとともに、靴底10が着地したときの足の踵部の内足側S1への倒れ込みを抑制して安定性を向上できる。
【0075】
また、本実施形態において、内足側下側壁部211の外側面211Bは、内足側下側壁部211の足幅方向Xにおける外側端部212から、足幅方向Xにおける靴底10の中央に向かうに従って下方に傾いている。後足部10Rの内足側S1のうち、内足側保持部210と高硬度部120とが上下方向Zに並んでいる領域において、高硬度部120の上面121は、足幅方向X中央に向かうに従って下方に傾いている。これにより、靴底10が着地したときに、高硬度部120および踵保持部200を介して、靴底10の内足側S1の接地面101から靴底10の足幅方向Xにおける中央上方に向かって伝わる衝撃を、低硬度部110で緩衝させやすくなる。
【0076】
また、本実施形態において、中足部10Mと後足部10Rとの境界位置(第2境界位置P2)を足長方向Yから見たときに、踵保持部200は、靴底10の足幅方向Xの中央と低硬度部110の上面102とが互いに交差する点Oから、当該点Oを中心として靴底10に外接する仮想円の半径の50%以上離れて位置している。これにより、上下方向Zから見て踵保持部200と着用者の足とが互いに重なる領域を小さくできるため、着用者へ踵部の底部への足当たりを良くすることができる。
【0077】
また、本実施形態において、中足部10Mと後足部10Rとの境界位置(第2境界位置P2)を足長方向Yから見たときに、高硬度部120は、靴底10の足幅方向Xの中央と低硬度部110の上面102とが互いに交差する点Oから、当該点Oを中心として靴底10に外接する仮想円の半径の60%以上離れて位置している。これにより、上下方向Zから見て高硬度部120と着用者の足とが互いに重なる領域を小さくできるため、靴底10が着地したときに高硬度部120を介して上下方向Zに衝撃が伝わる領域が小さくなり、着用者への足当たりを良くすることができる。
【0078】
また、本実施形態において、後足部10Rの内足側S1のうち内足側保持部210と高硬度部120とが上下方向Zに並んでいる領域において、高硬度部120の上面121は、内足側下側壁部211の外側面210Bに沿って位置している。これにより、靴底10が着地したときに、高硬度部120および踵保持部200を介して、靴底10の内足側S1の接地面101から靴底10の足幅方向Xにおける中央上方に向かって伝わる衝撃を、低硬度部110において略均等に緩衝させることができる。
【0079】
(変形例)
以下、本発明の一実施形態の各変形例に係る靴底について説明する。各変形例に係る靴底の説明においては、本発明の一実施形態に係る靴底10と同様の構成については説明を省略している。
【0080】
図10は、本発明の一実施形態の第1変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図10および後述の図11から図18においては、図8に示した本発明の一実施形態に係る靴底10と同様の断面視にて図示している。図10に示すように、本発明の一実施形態の第1変形例に係る靴底10aにおいては、高硬度部120が、内足側S1における足幅方向Xの全体にわたって、低硬度部110の上部110Aの下方に位置しており、下部110Bの下方には位置していない。また、高硬度部120は、内足側保持部210より、足幅方向Xにおける靴底10aの中心の近くに位置している。
【0081】
図11は、本発明の一実施形態の第2変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図11に示すように、本発明の一実施形態の第2変形例に係る靴底10bは、アウトソールを備えていない。すなわち、靴底10bにおいては、低硬度部110の下面111および高硬度部120の下面123が、本体部100の接地面101を構成する。
【0082】
図12は、本発明の一実施形態の第3変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図12に示すように、本発明の一実施形態の第3変形例に係る靴底10cにおいては、内足側保持部210の内足側下側壁部211は、内足側上側壁部215の下方にのみ位置しており、足幅方向Xに延びていない。
【0083】
図13は、本発明の一実施形態の第4変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図13に示すように、本発明の一実施形態の第4変形例に係る靴底10dにおいては、第2境界位置P2において、内足側保持部210と外足側保持部220とが互いに連続している。すなわち、本変形例に係る靴底10dにおいては、第2境界位置P2において、踵保持部200が本体部100の上面102の全体を覆っている。
【0084】
図14は、本発明の一実施形態の第5変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図14に示すように、本発明の一実施形態の第5変形例に係る靴底10eにおいては、外足側保持部220が、外足側下側壁部221のみを有しており、外足側上側壁部を有していない。
【0085】
図15は、本発明の一実施形態の第6変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図15に示すように、本発明の一実施形態の第6変形例に係る靴底10fにおいては、踵保持部200が、内足側保持部210のみを有しており、外足側保持部を有していない。
【0086】
図16は、本発明の一実施形態の第7変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図16に示すように、本発明の一実施形態の第7変形例に係る靴底10gにおいては、本発明の一実施形態に係る靴底10における低硬度部110の下部110Bに代えて、高硬度部120が配置されている。すなわち、本変形例においては、外足側S2においても、高硬度部120が、低硬度部110から見て踵保持部200とは反対側に位置している。
【0087】
図17は、本発明の一実施形態の第8変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図17に示すように、本発明の一実施形態の第8変形例に係る靴底10hにおいては、足長方向Yから見て、高硬度部120の上面121が角部124で屈曲している。足長方向Yから見て、角部124は、第2境界位置P2において、足幅方向Xにおいて内足側保持部210の内足側上側壁部215より靴底10の中央側に位置している。上面121のうち、角部124から見て靴底10の中央側とは反対側の部分は、足幅方向Xに沿って延びている。
【0088】
図18は、本発明の一実施形態の第9変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図18に示すように、本発明の一実施形態の第9変形例に係る靴底10iにおいては、第2境界位置P2において、外足側保持部220の上下方向Zの寸法が、内足側保持部210の上下方向Zの寸法と略同じである。
【0089】
図19は、本発明の一実施形態の第10変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。図19に示すように、本発明の一実施形態の第10変形例に係る靴底10jにおいては、足長方向Yにおいても、内足側保持部210の前端部210Cは、外足側保持部220の前端部220Cより前方に位置している。また、足長方向Yにおいて、外足側保持部220の前端部220Cは、中足部10Mの中央より前方に位置している。
【0090】
図20は、本発明の一実施形態の第11変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。図20に示すように、本発明の一実施形態の第11変形例に係る靴底10kにおいても、足長方向Yにおいて、内足側保持部210の前端部210Cは、外足側保持部220の前端部220Cより前方に位置している。また、足長方向Yにおいて、内足側保持部210の前端部210Cは、中足部10Mの中央より後方に位置している。
【0091】
図21は、本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底を、第2境界位置にて前方から見たときの断面図である。図22は、本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底を、上方から見た平面図である。図21および図22に示すように、本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底10mにおいては、第2境界位置P2において、外足側下側壁部221は、外足側上側壁部225の下方にのみ位置しており、外側端部222から足幅方向Xに延びていない。より具体的には、中足部10M全体において、外足側下側壁部221は、外足側上側壁部225の下方にのみ位置しており、外側端部222から足幅方向Xに延びていない。本変形例においては、外足側上側壁部225によりアッパー20に張力が働きやすく、着用者の足へのフィット性が向上する。さらには、中足部10Mにおいて外足側下側壁部221が上記のように位置していることにより、着用者のオーバープロネーションをより抑制できる。
【0092】
本変形例においてオーバープロネーションをより抑制できるメカニズムについてさらに説明する。図23は、本発明の一実施形態の第12変形例に係る靴底において、靴底が着地した最初の段階を後端側から示した背面図である。図23に示すように、靴底10mを備える靴1を着用した着用者によって靴底10mが着地する最初の段階においては、靴底10mが、着用者の足とともに外足側S2に倒れ込んだ状態で接地する。この接地の直後に、着用者の足(不図示)が、図23において白抜き矢印で示したように内足側S1に倒れ込む。このとき、仮に、中足部10Mにおいて外足側下側壁部221が外側端部222から足幅方向Xに延びている場合、内足側S1に倒れ込もうとする着用者の足によって、外足側下側壁部221が下方に押圧される。外足側下側壁部221が押圧されることで、外足側保持部220全体において内足側S1に倒れ込もうとするモーメントが働く。このモーメントにより、外足側上側壁部225が内足側S1に向かって着用者の足を押圧する。外足側上側壁部225が着用者の足を押圧することで、着用者の足が内足側S1に倒れ込む速度が速くなる。着用者の足の内足側S1に倒れ込む速度が速くなった状態で靴底が内足側S1で着地すると、足の倒れ込みの大きな慣性力によりオーバープロネーションが発生する場合がある。しかしながら、本変形例においては、中足部10M全体において、外足側下側壁部221が、外足側上側壁部225の下方にのみ位置しているため、内足側S1に倒れ込もうとする着用者の足によって、外足側下側壁部221が下方に押圧されることが抑制される。したがって、外足側保持部220において上記のモーメントが生じにくくなり、着用者の足が内足側S1に倒れ込む速度が速くなることも抑制される。ひいては、着用者の足が内足側S1への倒れ込むときの慣性力も小さくなり、オーバープロネーションをより抑制できる。
【0093】
なお、図22および図23に示すように、靴底10mの後端において内足側保持部210と接続されている外足側保持部220の一部においては、外足側下側壁部221が外側端部222から足幅方向Xに延びていてもよい。この場合、外足側下側壁部221は、靴底10mの後端において内足側下側壁部211と連続して位置している。また、外足側下側壁部221は、上下方向Zから見て、踵保持部200と中心線SCまたはヒールセンターHCとが交差する位置よりも外足側S2の領域に少しでも位置していればよい。より具体的には、上下方向Zから見て、靴底10mの後端において内足側下側壁部211と連続している外足側下側壁部221の一部は、ヒールセンターHCと仮想線XCとにより区画される2つの領域のうち後方側の領域に位置しており、前方側の領域には位置していない。なお、仮想線XCとは、上下方向Zから見て、第2境界位置P2とヒールセンターHCとの交差点から、外足側S2後方に向かって延びる仮想直線である。ヒールセンターHCと仮想線XCとのなす角度は、ヒールセンターHCと第2境界位置P2とのなす角度の1/2未満である。
【0094】
上記の各変形例においても、低硬度部110が、フォーム材で形成されている。高硬度部120は、低硬度部110から見て踵保持部200とは反対側に位置している。高硬度部120は、低硬度部110を形成するフォーム材より硬いフォーム材で形成されている。踵保持部200は、低硬度部110を形成するフォーム材および高硬度部120を形成するフォーム材のいずれよりも硬い樹脂で形成されている。後足部10Rの内足側S1において、低硬度部110は、上下方向Zにおいて踵保持部200と高硬度部120との間に位置している。これにより、着地時において、高硬度部120と踵保持部200とによりオーバープロネーションを抑制して足の安定性を向上させつつ、高硬度部120を介して靴の着用者の踵部へ伝わる局所的な衝撃を、低硬度部110により緩衝させることができる。
【0095】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 靴、10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,10j,10k 靴底、10F 前足部、10M 中足部、10R 後足部、20 アッパー、100 本体部、101 接地面、110 低硬度部、110A 上部、110B 下部、112 緩衝領域、113 凹部、114 凸部、120 高硬度部、122 後端面、124 角部、130 アウトソール、140 緩衝部材、150 補強部材、200 踵保持部、210 内足側保持部、211 内足側下側壁部、215 内足側上側壁部、220 外足側保持部、221 外足側下側壁部、225 外足側上側壁部。
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