(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178234
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】フッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/524 20060101AFI20221125BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20221125BHJP
C25B 11/043 20210101ALI20221125BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20221125BHJP
【FI】
C04B35/524
C25B11/031
C25B11/043
C25B11/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084868
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】辛 明柱
【テーマコード(参考)】
4K011
【Fターム(参考)】
4K011AA02
4K011AA11
4K011AA16
4K011BA01
4K011CA01
4K011DA05
(57)【要約】
【課題】低密度であっても粒子が脱落しにくいフッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極は、多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、2次粒子は、独立することなく互いに結合している。また、該フッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、
前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、
前記2次粒子は、独立することなく互いに結合している、フッ素電解装置用炭素電極。
【請求項2】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、取付部と浸漬部とを有し、
前記取付部は加工面を有し、前記浸漬部は未加工面を有している、請求項1に記載のフッ素電解装置用炭素電極。
【請求項3】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、最大気孔径が50~1000μmである、請求項1または2に記載のフッ素電解装置用炭素電極。
【請求項4】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフッ素電解装置用炭素電極。
【請求項5】
炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、
前記原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、
を含むフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項6】
前記焼成体の一部を面加工し、取付部を形成するとともに残部を浸漬部とする加工工程をさらに含む、請求項5に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項7】
前記加工工程では、前記取付部に取付穴を加工する、請求項6に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項8】
前記成形型は、前記取付穴に相当する位置にコアピンを備える、請求項7に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程では、10分以上加熱する、請求項5から8のいずれか1項に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項10】
前記焼成工程では、前記成形体を前記原料粉の平均粒子径よりも平均粒子径の大きいパッキング材に埋め焼成する、請求項5から9のいずれか1項に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【請求項11】
前記原料粉の平均粒子径は50~1500μmである、請求項5から10のいずれか1項に記載のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ガスは、半導体製造、ウラン濃縮、フッ素関連製品など様々な分野で使用されている。フッ素ガスは、フッ酸を含む溶融塩を電解することによって得られ、この反応では陽極に炭素電極が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、陽極材に炭素を用いてフッ素の電解製造を行う場合、陽極表面に電気絶縁性の被膜が生成して電流が急に流れなくなる現象、いわゆる陽極効果が起こりにくくかつ安定的に長期間継続できる製造方法として、電気抵抗異方比が1.3以下でかつ多孔質である炭素を陽極材とするフッ素の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載されているように、陽極材は多孔質のものが用いられ、例えば、密度が1.0~1.3g/cm3であるものが望ましいとされている。このような低密度の炭素材料においては、炭素粒子の結合が弱く消耗が進むにつれて内部の粒子が脱落しやすくなる。
【0006】
本発明では上述した課題を鑑み、低密度であっても粒子が脱落しにくいフッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極は、
多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、
前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、
前記2次粒子は、独立することなく互いに結合している。
【0008】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極では、多孔質炭素系材料が構成する2次粒子が独立することなく互いに結合しあっているので、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができる。このため、汚染の少ないフッ素電解装置用炭素電極を提供することができる。
【0009】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極は、以下の態様であることが好ましい。
【0010】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、取付部と浸漬部とを有し、前記取付部は加工面を有し、前記浸漬部は未加工面を有している。
【0011】
電解液に浸漬する浸漬部は、未加工面であるので、機械加工により表面の損傷を受けておらず、特に使用の初期段階において粒子脱落を防止することができる。また、硬い炭素質の材料の大部分を未加工面のまま使用するので、困難な形状加工を最小限に抑えることができる。
【0012】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、最大気孔径が50~1000μmである。
【0013】
最大気孔径が50μm以上であると、気孔内部に溶融塩が浸透しやすく、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径が、1000μm以下であると、表面積の低下が抑えられ、電解に関与する表面積を大きくすることができる。
【0014】
前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である。
【0015】
かさ密度が1.0g/cm3以上であると、フッ素電解装置用炭素電極として十分な強度が得られる。かさ密度が1.5g/cm3以下であると、内部に十分な量の気孔を確保することができ、電極表面だけでなく気孔内部でも電解を生じさせ、効率よくフッ素を製造することができる。
【0016】
続いて、本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、
炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、
前記原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、
を含む。
【0017】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができる。また、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチに溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、軟化点の上昇を防止することができる。また、後の成形工程で、熱で融着しやすく容易に所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ることができる。
【0018】
また、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔が多数存在し、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。
さらに、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、加圧による寸法変化がなく、型の形状がそのまま成形体の形状となる。このため、焼成後に寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極を得ることができる。
【0019】
また、本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、以下の態様であることが好ましい。
【0020】
前記焼成体の一部を面加工し、取付部を形成するとともに残部を浸漬部とする加工工程をさらに含む。
【0021】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法によれば、元来、フッ素電解装置用炭素電極に近い形状の材料が得られており、電流を給電する金属クランプと接する取付部を加工することによって精度の高い取付部が得られ、接触抵抗を少なくすることができる。
【0022】
前記加工工程では、さらに前記取付部に取付穴を加工する。
【0023】
取付部に取付穴を設けることにより、電流を給電する金属クランプとの接続信頼性を高めることができる。取付穴は、貫通孔、非貫通孔のいずれでもよく、ストレート孔、ネジ穴でもよい。
【0024】
前記成形型は、前記取付穴に相当する位置にコアピンを備える。
【0025】
コアピンとは、成形型に設置されたピンであって、成形体に穴を形成する部材である。フッ素電解装置用炭素電極は、炭素質の材料であり、穴開け加工は困難である。本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、成形工程で圧力を加えることなく熱で成形しているので、流動性の低い粒子状の原材料を成形するプロセスでコアピンを入れてもコアピンには強い力が加わらず強固に型に固定しておく必要がない。このため、高い精度で所定の位置に穴をあけることができる。
【0026】
なお、コアピンの材質は特に限定されず、成形後に抜くのであれば金属、セラミックなど使用することができ、成形後に抜かずに、焼いてしまうのであれば木材、紙、樹脂などの有機物を用いることが好ましい。
【0027】
前記成形工程では、10分以上加熱する。
【0028】
成形工程で10分以上加熱することにより、ピッチの融着を促進し、確実に2次粒子を互いに結合することができる。また成形工程では、型を伝搬して熱源から直接原料粉に加熱することができるので、ピッチの縮合による高分子量化よりも早く融着でき、強固に結合することができる。
【0029】
前記焼成工程では、前記成形体を前記原料粉の平均粒子径よりも平均粒子径の大きいパッキング材に埋め焼成する。
【0030】
焼成工程では、ピッチが溶け変形しやすくなり、ピッチからの揮発分が発生する原因となるが、成形体をパッキング材に埋めることにより変形が抑制され、さらにパッキング材の平均粒子径が原料粉より粗い(大きい)ことによって、発生した揮発分が速やかに排出でき、過剰な揮発分によるクラックや発泡を防止することができる。
【0031】
前記原料粉の平均粒子径は50~1500μmである。
【0032】
原料粉の平均粒子径を50~1500μmとすることにより、比表面積が大きく、強度の高いフッ素電解装置用炭素電極を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極によれば、多孔質炭素系材料が構成する2次粒子が独立することなく互いに結合しているので、電極の内部から脱落した粒子や微粉末が、電極の外部に出てくることが抑制される。このため、汚染の少ないフッ素電解装置用炭素電極を提供することができる。
【0034】
また、本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことがなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができる。さらに、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチを溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、後の成形工程で、熱で融着しやすく容易に所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ることができる。
【0035】
また、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔が多数存在し、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。
【0036】
さらに、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、加圧による寸法変化がなく、型の形状がそのまま成形体の形状となる。このため、焼成後に寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の多孔質炭素系材料の製造工程のフロー図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態の多孔質炭素系材料の製造工程の模式図を示し、(a)は原料である炭素系粒子とピッチ、(b)は原料工程により得られる原料粉、(c)は成形工程における成形前の充填された原料粉、(d)は成形工程における成形後の原料粉が結合して得られる一体化された成形体の一部、(e)は焼成工程により得られる多孔質炭素系材料(焼成体)の一部をそれぞれ示す。
【
図3】
図3は、従来の多孔質炭素系材料の製造工程のフロー図を示し、(a)は原料である炭素系粒子とピッチ、(b)は原料工程により得られる原料粉、(c)は成形工程における成形前の充填された原料粉、(d)は成形工程における成形後の原料粉が結合して得られる成形体の一部、(e)は焼成工程により得られる多孔質炭素系材料(焼成体)の一部をそれぞれ示す。
【
図4】
図4は、従来の等方性黒鉛材料の製造工程のフロー図を示し、(a)は原料である炭素系粒子とピッチ、(b)は原料の混錬物、(c)は混錬物を粉砕して得られる原料粉、(d)は成形工程における成形前の充填された原料粉、(e)は、成形工程における成形後の原料粉が結合して得られる成形体の一部、(f)は焼成および黒鉛化工程により得られる等方性黒鉛材料の一部をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は、フッ素電解装置用炭素電極の製造方法の一例を示し、(a)は成形型、(b)は原料粉を入れた成形型、(c)は焼成体、(d)は加工工程により取付部を形成したフッ素電解装置用炭素電極をそれぞれ示す。
【
図6】
図6は、ドリルによる取付穴の形成過程を示す模式図を示し、(a)は下穴が形成されていない場合の模式図、(b)は下穴が形成されている場合の模式図をそれぞれ示す。
【
図7】
図7は、フッ素電解装置用炭素電極の製造方法の他の例を示し、(a)は成形型、(b)はコアピンを設置した成形型、(c)は原料粉を入れた成形型、(d)は焼成体、(e)は加工工程により取付部を形成したフッ素電解装置用炭素電極、(f)は加工工程により取付穴を形成したフッ素電解装置用炭素電極をそれぞれ示す。
【
図8】
図8は、実施例および比較例1、2の気孔分布のグラフを示す。
【
図9】
図9は、実施例の多孔質炭素系材料を樹脂埋めした偏光顕微鏡写真(図面代用写真)を示す。
【
図10】
図10は、比較例1の多孔質炭素系材料を樹脂埋めした偏光顕微鏡写真(図面代用写真)を示す。
【
図11】
図11は、比較例2の等方性黒鉛材料を樹脂埋めした偏光顕微鏡写真(図面代用写真)を示す。
【
図12】
図12は、実施の形態において成形工程と焼成工程とを同時に実施する変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のフッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法を説明するため、本発明の実施の形態に係る多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極と、従来の多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極、および従来の等方性黒鉛材料を含むフッ素電解装置用炭素電極とを、製造方法、材料の組織などを比較しながら説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態であるフッ素電解装置用炭素電極用の炭素質の多孔質炭素系材料の製造工程を示す。
【0040】
図1に示すように、本発明の実施の形態の炭素質の多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、原料粉を成形型に入れ、軟化点よりも高い温度に加熱し所定の形状の成形体を得る成形工程と、成形体を焼成する焼成工程と、を経て製造される。
【0041】
(原料工程)
本実施の形態の混錬工程では、
図2(a)に示すように、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、
図2(b)に示す原料粉を得る。なお、原料粉は炭素系粒子がバインダにより互いに結合した粒子の集合体であり、焼成工程あるいは黒鉛化工程を経て得られる2次粒子に対応する。炭素系粒子は特に限定されないが、例えばピッチコークス、黒鉛、ガラス状カーボンなど粉砕した炭素系粒子を利用することができる。中でもピッチコークスは、ピッチとの馴染みがよく強固な結合が得られ、本発明の炭素系粒子として好適に利用することができる。
【0042】
原料工程で得られた原料粉は、そのまま成形に用いてもよいが、フッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料として適切な粒度範囲があれば、原料工程の中で粒度調整を行ってもよい。粒度調整の方法は、分級、粉砕などの手法を利用できる。なお、粉砕により粒度調整を行う場合には、炭素系粒子を原料粉の粒子径よりも十分小さくすることにより、粉砕後にバインダの付着のない露出面の発生を防止することができる。
【0043】
望ましい炭素系粒子の平均粒子径は50~500μmである。炭素系粒子の平均粒子径が50μm以上であると、原料工程で必要となるピッチの量が少なくでき、後の焼成工程で2次粒子の変形による気孔の消滅や、発生するガスによる発泡を防止することができる。炭素系粒子の平均粒子径は、70μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
また、炭素系粒子の平均粒子径が500μm以下であると、バインダで覆われない露出面の発生を防止することができる。炭素系粒子の平均粒子径は、400μm以下が好ましい。
なお、炭素系粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で測定することができる。
【0044】
本実施の形態で用いるピッチは、軟化点が70~200℃である。炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、原料粉が室温では付着しあうことを抑制し、室温で所定の粒子径となるように、原料粉の粒度調整をすることができる。軟化点は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
また、炭素系粒子と、軟化点が200℃以下のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、混錬するために原料粉を高温に曝す必要がなく、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止することができる。軟化点は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。
【0045】
本実施の形態では、混錬の温度は、150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うことが好ましい。混錬の温度を150℃以上でかつピッチの軟化点より高い温度とすることによりピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させることができる。混錬の温度は、180℃以上がより好ましい。
混錬の温度を300℃以下とすることにより、ピッチの重縮合を防止し、原料粉の成形性を確保することができる。混錬の温度は、280℃以下がより好ましい。
【0046】
また、フッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心となっており、ほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。
【0047】
本実施の形態では、ピッチを溶融させながら一様に混合した段階で混錬を終了することが好ましく、具体的には混錬の時間は30分以下であることが好ましい。混錬の時間が30分以下であると、ピッチの重縮合を抑制し、原料粉の付着性の低下を防止することができる。混錬の時間は、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましい。
【0048】
(粒度調整)
原料工程で得られた原料粉(
図2(b))は、必要に応じて粒度調整を行うことが好ましい。粒度調整を行うことにより所定の気孔率、粒度分布のフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。粒度調整の方法は、分級、粉砕などの手法を利用できる。粉砕で粒度調整する場合、炭素系粒子をピッチで固めた原料粉を粉砕するので、炭素系粒子がピッチで絡められた付着力のある2次粒子が多く得られる一方、中には炭素系粒子を破壊したり、バインダであるピッチが剥がれた原料粉など、付着力のない原料粒子も同時に得られる。本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法では、主に熱による融着作用で成形しているので、このような付着力のない原料粉であっても独立することなく互いに結合することができる。
【0049】
本実施の形態で用いる原料粉の平均粒子径は、50~1500μmであることが好ましい。原料粉の平均粒子径が50μm以上であると、十分な大きさの気孔が得られ、様々な用途で利用しやすいフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。
原料粉の平均粒子径が1500μm以下であると、成形型に入れ成形したとき、表面にできる凹凸の大きさを小さくすることができ、表面の平滑なフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は1200μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。
【0050】
(成形工程)
本実施の形態の成形工程では、得られた原料粉(
図2(b))を成形型に入れ(
図2(c))、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、
図2(d)に示す所定の形状の成形体を得る。
図2(d)に示すように、本実施の形態では、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱した状態で保持しているので、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化している。
【0051】
本実施の形態では、原料粉に熱を加えているので、付着力のない原料粉であっても2次粒子に取り込まれ一体化することができ、独立し遊離した炭素系粒子の発生を抑制することができる。
【0052】
本実施の形態の成形工程において、望ましい加熱時間は10分以上である。成形工程では熱の作用で成形しているので、加熱時間を長くすることにより原料粉をより軟化させ、強固に融着させることができる。加熱時間は、20分以上がより好ましく、40分以上がさらに好ましい。
【0053】
本実施の形態の成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができる。
図12に示すように例えば、強固な容器に原料粉を入れ、蓋をしたのちパッキング材に埋めて焼成してもよい。
図12(a)では、可燃性の容器に原料粉を充填され、
図12(b)では、パッキング材の充填された焼成容器に上記の容器が埋められ、
図12(c)では、温度を上昇させ、原料粉が溶融し成形されるとともに焼成され焼成体が得られている。容器は、発生する生成ガスが蓄積しないよう通気性を有していることが好ましいが、加熱されることにより通気性になる素材であってもよい。焼成の初期段階で原料粉が互いに融着し、所定の形状に成形される。さらに温度を上げると、発生する生成ガスが通気性の容器を通り抜け、外部に排出されるとともに温度の上昇とともに成形体は熱収縮していく。また、容器は可燃性であることが好ましい。容器が可燃性であると焼成の過程で容器が炭化し原型をとどめなくなる。パッキング材に埋まっているので成形体の収縮に伴ってパッキング材が追随し、変形を防止することができる。通気性を有し、可燃性の容器としては、通気性を確保するために多数の穴を穿孔した厚紙などが利用できる。
【0054】
また、本実施の形態の成形工程では、融着が起こる温度域であるならば、熱だけでなく、圧力を併用して成形してもよい。圧力を加えることによって、成形型の形状を転写し、寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。
【0055】
以下、本発明の特徴を明確にするため、従来の多孔質炭素系材料、従来の緻密な等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)について、特に成形工程を中心に説明する。
【0056】
従来の多孔質炭素系材料においては、
図3(a)に示す炭素系粒子とピッチとを混錬し、
図3(b)に示す原料粉を得る。そして、
図3(c)及び(d)に示す成形工程、
図3(e)に示す焼成工程を行う。
図3(c)は成形前の段階、
図3(d)は成形後の段階を示す。従来の方法においては、
図3(c)及び(d)に示す成形工程は、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われている。このため圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができない。多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくい。このため他の粒子と一体化することができず遊離した2次粒子となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となる。
【0057】
また、従来の等方性黒鉛材料においては、
図4(a)に示す炭素系粒子とピッチとを混錬し、
図4(b)に示すように塊状の混錬物が得られる。混錬物を微粉砕して
図4(c)に示す原料粉を得る。その後、
図4(d)及び(e)に示すように、原料粉を高い圧力で成形して成形体を得た後、
図4(f)に示す焼成工程、必要に応じて黒鉛化することによって、等方性黒鉛材料が得られる。なお、
図4(d)は成形前の段階、
図4(e)は成形後の段階を示す。
【0058】
従来の黒鉛質の等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)では、粉砕後の原料粉が細かいので成形時に大きな空隙ができにくく、圧力が均等に伝播しやすいので遊離した粒子を生じさせにくい。また、空隙自体が細かいので、遊離した状態の2次粒子があっても内部に封じ込められ、パーティクルの原因となりにくい。
【0059】
(焼成工程)
本発明に係る本実施の形態の焼成工程は、得られた成形体(
図2(d))を不活性雰囲気下で加熱し、
図2(e)に示す焼成体を得る。本実施の形態では、焼成体がフッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料となる。
【0060】
焼成の温度は例えば700~2000℃であることが好ましい。焼成を700℃以上で行うことにより成形体から揮発分を十分に除去し、フッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料として使用可能となる。焼成の温度は、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましい。
【0061】
また、焼成を2000℃以下で行うことにより、多孔質炭素系材料に十分な硬度を与え、例えば電解電極で使用可能な多孔質炭素系材料を得ることができる。焼成の温度は、1800℃以下がより好ましく、1500℃以下がさらに好ましい。
【0062】
本発明に係る本実施の形態の製造方法では原料粉を成形工程で軟化させるため、原料工程の段階でピッチを十分に重縮合させていない。このため多くの揮発分を含んでいるが、そもそも成形後の段階で多孔質であるので、速やかに分解ガスを外部に拡散させ、成形体内部で揮発分が炭素化することによる高密度化、気孔の封止を防止でき、クラックを防止することができる。
【0063】
本発明に係る本実施の形態の焼成工程では、パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗い(大きい)ことが好ましい。パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗いと、成形体から発生したタール状の生成物が成形体内にとどまらず速やかに拡散し、多孔体の気孔の形成を促進することができる。
【0064】
以上の工程を経て得られるフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料は、少なくとも材料の内部において、2次粒子が独立することなく互いに結合しており、遊離した粒子の存在が抑えられている。よって、材料の表面から粒子、微粒末が漏れ出てくることを抑制することができる。
【0065】
本実施の形態では、最大気孔径が50~1000μmであることが好ましい。最大気孔径が50μm以上であると、気孔内部に溶融塩が浸透しやすく、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。
最大気孔径が、1000μm以下であると、表面積の低下が抑えられ、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径は、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
なお、最大気孔径は水銀圧入法によって測定することができる。
【0066】
(加工工程)
本実施の形態の加工工程は、得られた焼成体(
図2(e))について、少なくともその一部を面加工し、取付部を形成するとともに、取付部以外の残部を、電解液に浸漬する浸漬部とする。焼成工程で得られる焼成体が、フッ素電解装置用炭素電極に近い形状の材料として得られており、電流を給電する金属クランプと接する取付部を加工することによって精度の高い取付部が得られ、接触抵抗を少なくすることができる。
【0067】
加工工程では、取付部に取付穴を加工することが望ましい。取付部に取付穴を設けることにより、電流を給電する金属クランプとの接続信頼性を高めることができる。取付穴は、貫通孔、非貫通孔のいずれでもよく、ストレート孔、ネジ穴でもよい。
【0068】
図5は、フッ素電解装置用炭素電極の製造方法の一例を示している。
図5(a)に示すように、炭素電極の形状に合致した成形型1を準備し、
図5(b)に示すように、原料工程で得られた原料粉2を成形型1に入れ、成形工程を実施する。
図5(c)に示すように、
図5(b)で得られた成形体を焼成し、焼成体3を得る。
図5(d)に示すように、加工工程により、焼成体3に面加工(本例では平面加工)を施し、取付部11を形成する。更に、取付部11に取付穴15を形成することにより、フッ素電解装置用炭素電極10が完成する。取付部11以外の残部が、電解液に浸漬する浸漬部12である。
【0069】
取付部11と金属クランプの接触抵抗を小さくするため、取付部11は、例えば円筒状、平面状に加工されることが好ましい。円筒状であれば、砥石を用いたセンタレス加工機、旋盤などで加工することができ、平面であれば、平面研削盤、フライス盤などを用いて研削することができる。さらに、金属クランプと強固に接続するため、取付部11に貫通孔、ネジ穴などの取付穴15を形成することができる。取付穴15がネジ穴の場合、非貫通孔であっても金属クランプを固定することができる。
【0070】
ところで、本発明のフッ素電解装置用炭素電極は炭素質の材料であるので硬く、ドリルを用いて取付穴15を加工する場合、
図6(a)に示すように、周速の遅いドリル20の中心部の加工能力が劣り、ドリル20の先端部が消耗したり折れたりしやすくなる。
【0071】
これを防止するため、
図6(b)に示すように、成形工程の段階で、あらかじめ成形体の段階で取付穴15の基礎となる下穴15aをあけておく方法が考えられる。この場合、周速の遅いドリル20の中心部は加工に関与せず、ドリル20の先端部が消耗したり折れたりすることを防止することができる。
図7は、成形工程でこのような下穴15aを形成するフッ素電解装置用炭素電極の製造方法の一例を示している。本例では、
図7(a)に示すように、
図5(a)と同様な成形型1を準備するが、
図7(b)に示すように、成形型1にコアピン7を設置する。成形型1の製造段階において、コアピン7を同時に形成してもよい。
【0072】
コアピン7は、成形型1に設置されたピンであって、成形体、焼成体に穴を形成する部材である。フッ素電解装置用炭素電極は、炭素質の材料であり、穴開け加工は困難である。本実施の形態のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、成形工程で圧力を加えることなく熱で成形しているため、流動性の低い粒子状の原材料を成形するプロセスにおいてコアピンが存在しても、コアピンには強い力が加わらず強固に型に固定しておく必要がない。このため、高い精度で所定の位置に穴をあけることができる。
【0073】
コアピン7の材質は特に限定されないが、成形後に抜くのであれば、成形時の温度に耐えられる耐熱性さえあればよく、金属、セラミック、樹脂、木材、など特に限定されない。成形後に抜かず、焼成時に炭化させるのであれば、パルプ、木材、樹脂などが利用できる。
【0074】
コアピン7を用いて下穴15aを形成する場合には、成形体の焼成収縮を考慮し、実際の位置より外側、実際の間隔より離して配置する。コアピン7の延設方向は、成形体の厚み方向、長さ方向などであり、特に限定されない。本実施の形態の製造方法では、ほとんど圧力を加えることなく成形できるのでどの方向であっても位置ずれや変形が生じにくい。
【0075】
図7(c)に示すように、原料工程で得られた原料粉2を成形型1に入れ、成形工程を実施する。
図7(d)に示すように、
図7(c)で得られた成形体を焼成し、焼成体3を得る。成形型1においてコアピン7が設置されているため、下穴15aが焼成体3に形成されている。
【0076】
図7(e)に示すように、加工工程により、焼成体3の下穴15aを含む領域に面加工(本例では平面加工)を施し、取付部11を形成する。
図7(f)に示すように、
図6(b)に示す要領で、下穴15aに沿って、ドリル20を進行させ、取付穴15を形成することにより、フッ素電解装置用炭素電極10が完成する。取付部11以外の残部が、電解液に浸漬する浸漬部12である。
【0077】
図6(b)に示すように、下穴15aがあらかじめ形成されていると、もっとも加工しにくいドリル20の中心部への負荷を抑えることができ、加工工程における取付穴15の穴あけを容易に行うことができる。また、取付穴15が貫通孔である場合、切削粉が下方向に排出でき、摩擦による刃先の温度上昇を軽減することができる。
【0078】
なお、取付穴15の方向は、特に限定されず、
図5、
図7の例の様な成形体(フッ素電解装置用炭素電極)の厚さ方向のみならず、長さ方向に形成してもよく、コアピン7は、取付穴15の形成方向に基づいて設計、設置される。
【0079】
(実施例)
炭素系粒子として平均粒子径300μmのアモルファス系のピッチコークス100重量部、バインダとして軟化点150℃のピッチ25重量部を原材料に用い、連続式ニーダーで混錬した。なお、連続式ニーダーの温度は250℃となるように設定した。連続式ニーダーに投入されたピッチは速やかに溶融し炭素系粒子と混合され、混錬物が得られた。なお、連続式ニーダーの混錬時間は1分であり、ピッチはほとんど重縮合を進行させなかった。
【0080】
次に得られた混錬物を粗粉砕し、2mmの篩を通し、粒度調整を行った。得られた原料粉の平均粒子径は900μmであった。
【0081】
得られた原料粉を開口が600×300mm、深さ80mmの金属製の型に充填し、金属製の蓋を被せ、周囲を200℃に加熱し、120分間保持したのち、ゆっくりと蓋を押し全体の形状を整えた。このときの加圧圧力は蓋の自重のみであり、2kPaであった。
【0082】
冷却後、型から取り出し、焼成缶に詰め、平均粒子径5mmのパッキングコークスに埋め900℃で焼成し焼成体を得た。
次に焼成体の一部を面加工し、取付部を形成するとともに残部を浸漬部とする加工工程をさらに含む、フッ素電解装置用炭素電極を製造した。
【0083】
(比較例1)
成形工程を100℃、面圧15MPaで型押し成形した以外は実施例と同様に多孔質炭素系材料を製造したのち、実施例1と同様に加工しフッ素電解装置用炭素電極を得た。
【0084】
(比較例2)
炭素系粒子として平均粒子径15μmのアモルファス系ピッチコークス100重量部に対し、バインダとしてピッチ60重量部を加え、200分混錬した。なお、混錬の過程でピッチは重縮合し軟化点は200℃以上に上昇していた。なお、本比較例では、原料工程では、粉状の原料粉が得られず、塊状の固い混錬物が得られ、そのままでは成形工程の原料粉として使用できなかった。
【0085】
得られた混錬物を粉砕し、平均粒子径25μmの原料粉を得た。原料粉をゴムバッグに充填し、100MPaの成形圧でCIP成形した。得られた成形体を900℃で焼成し緻密な炭素質材料を得たのち、実施例1と同様に加工しフッ素電解装置用炭素電極を得た。
【0086】
表1は、得られた実施例及び比較例の炭素質材料の物性値を示す。
図8は実施例及び比較例の気孔分布を示す。実施例は、比較例1および比較例2に対し、気孔率には大差はないが、大きな平均気孔径を示している。また、実施例は、比較例1に比べて高い曲げ強度を示している。
【0087】
【0088】
図9は、実施例で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。実施例の組織は、成形時に熱で互いに融着し角が丸まり、遊離した2次粒子の存在は見られなかった。また、水を用いて超音波洗浄しても、気孔からパーティクルが発生することはなかった。すなわち、2次粒子が独立することなく互いに結合していることが理解される。
【0089】
図10は、比較例1で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例1で得られた多孔質炭素系材料では、パーティクルの原因となる細かな2次粒子が気孔の内部に残留していた(遊離した2次粒子)。さらに実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。
【0090】
図11は、比較例2で得られた炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例2で得られた緻密な炭素系材料では、そもそも大きな気孔の存在がなく、パーティクルの原因となる遊離した2次粒子の存在は確認できなかった。遊離した2次粒子が存在したとしても細かな気孔の内部に封じ込められ、外部に流出しにくくなっていると考えられる。
なお、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。強い洗浄力で気孔内部のパーティクルが外にたたき出されたと推定される。
【符号の説明】
【0091】
1 成形型
2 原料粉
3 焼成体
7 コアピン
11 取付部
12 浸漬部
15 取付穴
15a 下穴
20 ドリル