(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179150
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】畜肉様食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20221125BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20221125BHJP
A23J 3/26 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A23J3/00 503
A23J3/16 501
A23J3/26 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086429
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】白木 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
(57)【要約】
【課題】天然の畜肉のような外観的にランダムな凹凸を有し、かつ咀嚼時に天然の畜肉が持つ多様(不均一)な食感を再現できる畜肉様食品を提供する。
【解決手段】繊維状大豆蛋白からなる組織状大豆蛋白素材と調味材とを含み、前記繊維状大豆蛋白は炭水化物およびカルシウムを含み、前記組織状大豆蛋白素材の表面には、気孔を含む複数の塊状部を有し、当該複数の塊状部が相互に接触して表面を構成してなることを特徴とする畜肉様食品。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状大豆蛋白からなる組織状大豆蛋白素材と調味材とを含み、前記繊維状大豆蛋白は炭水化物およびカルシウムを含み、前記組織状大豆蛋白素材の表面には、気孔を含む複数の塊状部を有し、当該複数の塊状部が相互に接触して表面を構成してなることを特徴とする畜肉様食品。
【請求項2】
前記繊維状大豆蛋白は配向してなるとともに、前記複数の塊状部が相互に接触し、かつ密着して前記組織状大豆蛋白素材の表面を構成してなり、かつ前記組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率の方が中央部の気孔率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の畜肉様食品。
【請求項3】
前記組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率は、50~80%であり、中央部の気孔率は、60~90%である請求項2に記載の畜肉様食品。
【請求項4】
前記カルシウムは、前記組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれる請求項1~3のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
【請求項5】
前記炭水化物は、前記組織状大豆蛋白素材100質量部に対して10~50質量部含まれる請求項1~4のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
【請求項6】
前記炭水化物はコーンスターチである請求項1~5のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
【請求項7】
さらに着色剤を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
【請求項8】
前記調味材に塩分および/または糖分が含まれてなり、前記畜肉様食品の重量に対して、10倍量の水中に、前記畜肉様食品を80℃で10分間浸漬した場合に、当該水中に調味材が溶出し、水中の塩分の濃度が0.1重量%以上、および/または糖分の濃度が0.2重量%以上となる程度まで、前記調味材が畜肉様食品中に含有されてなる請求項1~7のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは、増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白が使用される傾向が強まっている。
【0003】
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化した組織状大豆蛋白は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織状大豆蛋白が用いられている。
一方、組織状大豆蛋白を用いた畜肉様食品の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれが天然の畜肉に比べて劣るという点が挙げられる。特に肉繊維のほぐれ感を十分に再現できないという問題があり、このような組織状大豆蛋白の食感改良について様々な研究がなされてきた。
例えば、特許文献1には、大豆蛋白原料、および水をエクストルーダーにより加熱、加圧下に反応させる際、カルシウムおよび澱粉類を併用して配合し、ダイより押し出し、これを押し出し方向に水平にスライスして製造した組織状蛋白素材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、このような組織状植物蛋白質を用いた畜肉様食品について、その食感が、天然畜肉が持つ多様性(不均一感)がなく、人工物の食感を感じてしまうことを知見した。
また、組織状植物蛋白質を用いた畜肉様食品は、天然の畜肉のような自然な凹凸感がなく、不自然な人工物の外観しか呈していなかった。
このような畜肉様食品の食感が人工物の食感となってしまう理由として、組織状植物蛋白質を用いて製造した畜肉様食品は、エクストルーダーから押し出しされた組織が押出方向に対して垂直方向に均一であるため、咀嚼時に均一感を持つためであることを突き止めた。
また、畜肉様食品の外観の不自然さは、押出方向に水平にスライスしているために外観の凹凸形状が規則的でその多様性に乏しいためであることを知見した。
本発明の目的は、天然の畜肉のような外観的にランダムな凹凸を有し、かつ咀嚼時に天然の畜肉が持つ多様(不均一)な食感を再現できる畜肉様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天然畜肉が持つ外観と多様な食感を忠実に再現した畜肉様食品である。上記目的を達成するための本発明は、以下の通りである。
【0007】
即ち、本発明の畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白からなる組織状大豆蛋白素材と調味材とを含み、上記繊維状大豆蛋白は炭水化物およびカルシウムを含み、組織状大豆蛋白素材の表面には、気孔を含む複数の塊状部を有し、当該複数の塊状部が相互に接触して表面を構成してなることを特徴とする。
本発明の畜肉様食品は、その表面に、炭水化物が膨化することで形成される気孔を含む複数の塊状部がランダムに形成されており、それらが相互に接触、あるいは相互に密着し、畜肉様食品の表面が構成されるため、天然畜肉の持つ偶然に起因する凹凸感を再現できる。また、本発明の畜肉様食品は、カルシウムを含む繊維状大豆蛋白で構成されているため、咀嚼時に繊維がほぐれやすく、天然の畜肉感を再現できる。
【0008】
上記繊維状大豆蛋白は配向してなるとともに、上記複数の塊状部が相互に接触し、かつ密着して上記組織状大豆蛋白素材の表面を構成してなり、かつ上記組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率の方が中央部の気孔率よりも低いことが好ましい。
本発明の畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白が配向してなり、表面部および裏面部と中央部との気孔率の差およびランダムな大きさを持つ塊状部が相互に密集して表面を構成するため、天然畜肉の持つ食感の多様性(不均一感)を再現できる。
【0009】
本発明の畜肉様食品は、上記組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部(厚さをLとした場合に、組織状大豆蛋白素材の上面からL/3までの領域および下面からL/3までの領域)の気孔率は、50~80%であり、中央部(厚さをLとした場合に、組織状大豆蛋白素材の上面からL/3および下面からL/3までのそれぞれの領域を除いた残余の厚さL/3の領域)の気孔率は、60~90%であることが望ましい。
本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白素材の表面の密度を高くすることでひと噛み目の噛み応えを高め、ふた噛み目以降のほぐれ感を維持できる。
【0010】
本発明の畜肉様食品中には、上記カルシウムが、組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。
組織状大豆蛋白素材中のカルシウムの量が上記の範囲であると、大豆蛋白が繊維化しやすい。
なお、上記カルシウムの含有量は、組織状大豆蛋白素材の乾燥重量100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
【0011】
本発明の畜肉様食品中には、上記炭水化物が、組織状大豆蛋白素材100質量部に対して10~50質量部含まれることが好ましい。
炭水化物の含有量が上記範囲であると、組織状大豆蛋白素材がより膨化しやすく塊状部が生成しやすい。本発明の畜肉様食品中の炭水化物はコーンスターチであることが好ましい。
炭水化物がコーンスターチであると、組織状大豆蛋白素材がより膨化しやすく塊状部が生成しやすい。
【0012】
本発明の畜肉様食品は、上記調味材に塩分および/または糖分が含まれてなり、上記畜肉様食品の重量に対して、10倍量の水中に、上記畜肉様食品を80℃で10分間浸漬した場合に、当該水中に調味材が溶出し、水中の塩分の濃度が0.1重量%以上、および/または糖分の濃度が0.2重量%以上となる程度まで、上記調味材が畜肉様食品中に含有されてなることが望ましい。畜肉様食品が上述した程度まで調味材を含んでいれば、天然畜肉の調理品が持つ食感や味わいを再現することができる。
【0013】
本発明の畜肉様食品はさらに着色剤を含むことが好ましい。
本発明の畜肉様食品が着色剤を含むことにより、外観がより天然畜肉に近くなる。
調味材および着色剤は、繊維状大豆蛋白に含有されていてもよく、気孔内に保持されていてもよい。
【0014】
本発明の畜肉様食品は、例えばローラー等により表面の塊状部を繊維状大豆蛋白の配向方向に対して垂直方向に潰して圧縮して製造することができ、天然畜肉の持つ偶然に起因する凹凸感を再現できる。
【0015】
本発明の畜肉様食品は、流通に際しては、乾燥して乾燥物とすることもでき、冷凍した食品として提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、実施例1に係る畜肉様食品の基となる組織状大豆蛋白素材の乾燥状態の表面の写真である。
【
図1B】
図1Bは、実施例1に係る畜肉様食品の基となる組織状大豆蛋白素材の吸水状態の表面の写真である。
【
図2】
図2は、本発明に係る畜肉様食品の一態様を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る畜肉様食品の別の態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白からなる組織状大豆蛋白素材と調味材とを含み、当該繊維状大豆蛋白は炭水化物およびカルシウム含み、組織状大豆蛋白素材の表面には、気孔を含む複数の塊状部を有し、当該複数の塊状部が相互に接触して表面を構成してなることを特徴とする。
本発明でいう畜肉とは、食用とする鳥獣の肉および魚肉を指す。慣習的に魚肉は鳥獣の肉とは別区分とされるが、本発明においては魚肉も含む。
【0018】
以下、
図2を用いて本発明の畜肉様食品の一態様(第1の態様)を説明する。
図2に示す本発明の畜肉様食品1Aは、カルシウムを含む繊維状大豆蛋白2で構成されているため、咀嚼時に繊維がほぐれやすく、また、畜肉様食品1Aの表面が、炭水化物が膨化することで形成される気孔3を含む複数の大小様々な塊状部4が相互に接触、密集した状態として構成されるため、天然畜肉の持つ偶然に起因するランダムな凹凸からなる外観を実現できる。また、本発明の畜肉様食品1Aは、食感の多様性(不均一感)を再現でき、天然畜肉の外観と食感を実現できるのである。
塊状部4は、炭水化物により繊維状大豆蛋白2がランダムに膨化することで形成される。塊状部4には、気孔3が含まれる。塊状部4は複数存在し、これらが集合して相互に接触することで畜肉様食品1Aの表面を構成する。このため、あたかも天然畜肉の表面のようなランダムな凹凸感が得られるのである。また、大小さまざまな大きさの塊状部4が相互に集合しているため、咀嚼時に天然畜肉のような多様(不均一な)食感が得られるのである。
【0019】
上記調味材に塩分および/または糖分が含まれてなり、前記畜肉様食品の重量に対して、10倍量の水中に、前記畜肉様食品を80℃で10分間浸漬した場合に、当該水中に調味材が溶出し、水中の塩分の濃度が0.1重量%以上、および/または糖分の濃度が0.2重量%以上となる程度まで、前記調味材が畜肉様食品中に含有されてなることが望ましい。畜肉様食品が上述した程度まで調味材を含んでいれば、天然畜肉の調理品が持つ食感や味わいを再現することができる。
【0020】
塊状部の平面視の大きさ(塊状部を平面視で観察し、2本の平行線で塊状部を挟んだ場合の、2本の平行線間の距離のうち、最大のものを塊状部の平面視の大きさとする)は、乾燥状態で1~30mmであることが望ましく、吸水状態では、1~30mmであることが望ましい。
本明細書において、「吸水状態」とは、組織状大豆蛋白素材のサンプル10gに15℃の水100gを加えて2時間保持した後、30meshのザルで水を切った後の状態を指す。
【0021】
本発明の畜肉様食品において、繊維状大豆蛋白は、例えば繊維径が0.01~1000μmであるものが好ましい。
【0022】
本発明の畜肉様食品において使用される炭水化物は、デンプンであることが好ましく、コーンスターチであることがより好ましい。コーンスターチは、小麦デンプンに比べて大豆蛋白を膨化させやすいからである。
本発明の畜肉様食品中には、上記炭水化物が、組織状大豆蛋白素材100質量部に対して10~50質量部含まれることが好ましい。より好ましくは20~35質量部である。
【0023】
本発明の畜肉様食品において、カルシウムは、組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれていることが好ましい。本発明の畜肉様食品中のカルシウムの量が上記の範囲であると、大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
カルシウムは、カルシウム塩が好ましく、わずかでも解離してカルシウムイオンとなる化合物であれば特に制限されるものではない。カルシウム塩としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。カルシウムは、カルシウム塩を原料に添加することが好ましいが、エクストルーダーで加熱加圧しながら押出成形した炭水化物を含む大豆蛋白をこれらのカルシウム塩水溶液中に含侵させることで付与してもよい。カルシウム塩に加えて、マグネシウム塩も同様に使用可能である。
【0024】
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の塊状部の気孔率は、吸水状態および乾燥状態で65%~85%であることが望ましい。
組織状大豆蛋白素材の気孔率が上記の範囲であると、畜肉様食品が天然畜肉により近い食感を実現することができる。
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の塊状部の平均気孔径は、吸水状態および乾燥状態で50μm~200μmであることが望ましい。
組織状大豆蛋白素材の平均気孔径が上記の範囲であると、畜肉様食品が天然畜肉により近い食感を実現することができる。
【0025】
調味材としては、塩、砂糖、水あめ、コショウ、醤油等の一般的な調味材のほか、フェニル酢酸、(E,E)-2,4-ノナジエナール、水溶性樹脂タマネギ(aquaresin onion)、油溶性タマネギ、p-クレゾール、酢酸アセトニル、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、(E,E)-2,4-オクタジエナール、2-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-3-フリルテトラスルフィド、2-メルカプトプロピオン酸エチル、2-メルカプト-3-ブタノール(異性体の混合物)、n-デカン-d22、油溶性ニンニク、スルフロール、酢酸スルフリル、メルカプト-3-ブタノール、スピロミート(spiromeat)、1-ペンテン-3-オン、2-メチル-3-フランチオール、2-メチル-3-テトラヒドロフランチオール、オレイン酸、ジプロピルトリスルフィド、ジフルフリルジスルフィド、メチルシクロペンテノロン、3-メチルチオヘキサナール、酪酸、ブチロラクトン、5-メチル-2(3H)-フラノン、フラネオール、1-(1H-ピロール-2-イル)-エタノン、ヘキサン酸、およびそれらの組合せを含むことができる。
本発明の畜肉様食品における調味材の含有量は特に限定されないが、吸水状態の組織状大豆蛋白素材100質量部に対して0.1~80質量が好ましい。
【0026】
本発明の畜肉様食品はさらに着色剤を含むことが好ましい。
着色剤としては、天然着色料(例えば、カラメル色着色料、アナトー、ベタニン、リコピン、βカロチン、コチニール抽出物、果実抽出物、野菜抽出物等)、人造染料(例えば、FD&C ブルーNo.1、FD&C ブルーNo.2、FD&C グリーンNo.3、FD&C レッドNo.3、FD&C レッドNo.40、FD&C イエローNo.5、FD&C イエローNo.6等)、レーキ(例えば、カーマイン等)などが挙げられる。
本発明の畜肉様食品における着色剤の含有量は特に限定されないが、吸水状態の組織状大豆蛋白素材100質量部に対して0.01~5質量部が好ましい。
【0027】
次に、本発明の畜肉様食品の作製方法について説明する。
本発明の畜肉様食品は、最初に組織状大豆蛋白素材を作製し、その組織状大豆蛋白素材に調味材および必要に応じて着色剤を付与することで製造することができる。もちろん、組織状大豆蛋白素材の原料に調味材および必要に応じて着色剤を混合することもできる。
【0028】
(大豆蛋白混合物準備工程)
まず、分離大豆蛋白などの大豆蛋白原料、炭水化物(コーンスターチ)に加水し、さらに前述したカルシウム塩等を加え、混練することにより組織状大豆蛋白素材の原料混合物を準備する。原料中の炭水化物の含有量は、固形分換算で、組織状大豆蛋白素材100質量部に対して10~50質量部であることが好ましい。炭水化物の含有量が上記の範囲であると、組織状大豆蛋白素材を膨化させて、塊状部を形成させやすいからである。
【0029】
(組織状大豆蛋白作製工程)
準備した組織状大豆蛋白素材の原料混合物をエクストルーダー(押出成形機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出す。
本発明では、組織状大豆蛋白素材が押し出される口金のスリットの大きさとして、厚さ1~2mm、幅45mm以上とする。スリット幅を45mm以上とすることで、塊状部の大きさの分布の度合いも大きくなり、起伏のある表面形状が得られる。ダイのスリットから出てくる組織状大豆蛋白のシートは、大気圧下で炭水化物の作用で膨化して、大小様々な大きさの塊状部が形成される。
形成された組織状大豆蛋白は、所定の長さに切断されて組織状大豆蛋白素材となる。この際、原料組成を分離大豆蛋白5~90重量%のように調整したり、加圧加熱条件をスクリュー回転数150~500rpm、加熱温度25~180℃、加水率10~40%のように調整することで、組織状大豆蛋白素材の作製が可能である。
このように作製された組織状大豆蛋白素材は、カルシウムを含む繊維状大豆蛋白が組織状大豆蛋白素材の押出方向に配向しているため、繊維状大豆蛋白が配向する方向に裂けやすく、咀嚼時に繊維がほぐれやすい。なお、配向とは、繊維状大豆蛋白の繊維が一定方向に揃っていることをいい、含水した組織状大豆蛋白素材を人力で左右、前後、上下の各方向に引っ張りの力をかけた際、組織状大豆蛋白素材が裂けて力をかけた方向に分かれた場合に、繊維状大豆蛋白が力をかけた方向に対して垂直方向に配向していることになる。
【0030】
(水戻し)
エクストルーダー処理して得られた組織状大豆蛋白素材は、水戻しされてもよい。さらに、組織状大豆蛋白素材を水戻しする前に必要に応じて乾燥してもよい。
組織状大豆蛋白素材を水戻しした後、必要に応じて脱水してもよい。脱水する度合いは目的に応じて種々選択されるので特に限定されない。
【0031】
(畜肉様食品の製造)
上記の工程で得られた組織状大豆蛋白素材に、調味材と、必要に応じて着色剤を付与する。
例えば調味材および着色剤を溶解させた水もしくは有機溶媒の溶液に組織状大豆蛋白素材を含侵させ、調味材および着色剤を浸透させることにより、畜肉様食品を製造することができる。有機溶媒としては、エタノール、酢酸エチルが望ましい。
調味材と着色剤は、組織状大豆蛋白素材の原料混合物に混合しておいてもよい。
【0032】
本発明の畜肉様食品は、上記調味材に塩分および/または糖分が含まれてなり、前記畜肉様食品の重量に対して、10倍量の水中に、前記畜肉様食品を80℃で10分間浸漬した場合に、当該水中に調味材が溶出し、水中の塩分の濃度が0.1重量%以上、および/または糖分の濃度が0.2重量%以上となる程度まで、前記調味材が畜肉様食品中に含有されてなることが望ましい。畜肉様食品が上述した程度まで調味材を含んでいれば、天然畜肉の調理品が持つ食感や味わいを再現することができる。
【0033】
さらに、本発明においては、上記の調味材以外の油脂類、糖類、調味料類、人参、ごぼう、ごま、タマネギ等の野菜類や、ワカメ、ひじき等の海藻類、挽肉等の肉類等を組織状大豆蛋白素材の原料中に加えてもよく、組織状大豆蛋白素材に対して付与して畜肉様食品としてもよい。
【0034】
本発明の畜肉様食品は、所定形状に切断、加工して、加熱調理して使用することができる。加熱調理は、焼成加熱、蒸し加熱、ボイル加熱、フライ加熱、電磁波加熱等を適宜組み合わせて加熱してもよい。
【0035】
次に、本発明の畜肉様食品の別の態様(第2の態様)について説明する。
本発明の第2の態様の畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白からなる組織状大豆蛋白素材と調味材とを含み、上記繊維状大豆蛋白は炭水化物およびカルシウムを含み、上記繊維状大豆蛋白は配向してなるとともに、上記複数の塊状部が相互に接触し、かつ密着して前記組織状大豆蛋白素材の表面を構成してなり、かつ組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率の方が中央部の気孔率よりも低いことを特徴とする。
【0036】
以下、
図3を用いて説明する。
図3に示す本発明の畜肉様食品1Bは、カルシウムを含む繊維状大豆蛋白2で構成され、繊維状大豆蛋白2が組織状大豆蛋白素材の押出方向に配向しているため、咀嚼時に繊維がほぐれやすい。また、畜肉様食品1Bの表面が、炭水化物がランダムに膨化することで形成される気孔3を含む大小複数の塊状部4が相互に接触、密着して形成され、また、
図3に示すような態様では当該塊状部4がローラーやプレス機など繊維状大豆蛋白の配向方向に対して垂直方向(押出方向に対して垂直方向)に潰れ、塊状部4が互いに接触、密着して、その潰れた圧縮面が集合して畜肉様食品の表面を構成するため、天然畜肉の持つランダムな凹凸からなる外観を実現できる。また、大小の塊状部4と、組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部(
図3の畜肉様食品の厚さをLとした場合に、畜肉様食品の上面からL/3までの領域および下面からL/3までの領域)と中央部(
図3の畜肉様食品の厚さをLとした場合に、組織状大豆蛋白素材の上面からL/3までの領域および下面からL/3までのそれぞれの領域を除いた厚さL/3の領域)の気孔率が異なり、表面部および裏面部の気孔率が中央部の気孔率よりも小さいため、食感の多様性(不均一感)を実現でき、天然畜肉の食感を再現できるのである。
塊状部4は、炭水化物により繊維状大豆蛋白2がランダムに膨化することで形成される。塊状部4には、気孔3が含まれる。塊状部4は大小複数のものが存在し、これらが集合して相互に密着することで畜肉様食品1Bの表面を構成する。このため、あたかも天然畜肉の表面のようなランダムな凹凸感が得られるのである。また、大小さまざまな大きさの塊状部が相互に密着し、組織状大豆蛋白素材の表面と内部の気孔率に差があるため、咀嚼時に天然畜肉のような多様(不均一な)食感が得られるのである。
【0037】
以下では、第1の態様と異なる点を中心に説明する。
本発明の畜肉様食品は、上記繊維状大豆蛋白が配向する方向に沿って面を有し、上記面に対して垂直方向に厚みを有する扁平形状であることが好ましい。
本発明の畜肉様食品が上記の形状であると、外観がより天然肉に近くなる。
【0038】
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率は、乾燥状態では、50~80%であることが望ましい。
表面部および裏面部の気孔率が上記の範囲であると、畜肉様食品のひと噛み目の噛み応えを高め、天然畜肉に近い食感を実現することができる。
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の中央部の気孔率は、乾燥状態では、60~90%であることが望ましい。
中央部の気孔率が上記の範囲であると、畜肉様食品のふた噛み目以降のほぐれ感を維持し、天然畜肉により近い食感を実現することができる。
また、本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率は、中央部の気孔率よりも低く、組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率は、乾燥状態で、中央部の気孔率よりも5~10%低いことが望ましい。
本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率が低いため、噛み始めに歯ごたえがあり、噛み進むと柔らかさが感じられ、天然の畜肉を調理した場合の食感に近づけることができる。
【0039】
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の平均気孔径は、吸水状態で200~600μmであることが望ましく、乾燥状態では、50~150μmであることが好ましい。
組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の平均気孔径が上記の範囲であると、畜肉様食品のひと噛み目の噛み応えを高め、天然畜肉に近い食感を実現することができる。
本発明の畜肉様食品における組織状大豆蛋白素材の中央部の平均気孔径は、吸水状態で400~800μmであることが望ましく、乾燥状態では、100~200μmであることが好ましい。
組織状大豆蛋白素材の中央部の平均気孔径が上記の範囲であると、畜肉様食品のふた噛み目以降のほぐれ感を維持し、天然畜肉により近い食感を実現することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の態様の畜肉様食品の作製方法について説明する。
第2の態様の畜肉様食品は、大豆蛋白原料を含む原料混合物を押出成形して組織状大豆蛋白を作製する押出工程(組織状大豆蛋白作製工程)、組織状大豆蛋白を押出方向に対して垂直方向に圧迫して押し潰す圧迫工程(プレス工程)を経て作製される。調味材と着色剤は、組織状大豆蛋白素材も付与してもよいし、織状大豆蛋白素材の原料混合物に混合しておいてもよい。
【0041】
第2の態様の畜肉様食品の作製は、大豆蛋白混合物準備工程、組織状大豆蛋白作製工程、圧迫工程、水戻し工程および畜肉様食品の製造工程により行うことができる。
第2の態様の畜肉様食品の作製において、圧迫工程以外の大豆蛋白混合物準備工程、組織状大豆蛋白作製工程、水戻しおよび畜肉様食品の製造工程は、第1の態様の畜肉様食品の作製と同様に行うことができる。
【0042】
(プレス工程)
組織状大豆蛋白作製工程で押し出された組織状大豆蛋白シートは、ローラーやプレス機で押出方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスされる。プレスは、例えばプレス機のクリアランスを1~5mmの範囲で設定し、所定の厚みにプレスすることで行うことができる。
上記塊状部は、ローラーやプレス機で潰されて、潰れた面が集合して組織状大豆蛋白素材の表面を形成し、組織状大豆蛋白素材は全体として偏平な形状となる。
形成された偏平な形状(シート状)の組織状大豆蛋白素材は、押出方向に対して垂直方向に所定の長さに切断されて、調理や食事に適した大きさの偏平な組織状大豆蛋白素材となる。
【0043】
以上により得られた本発明の畜肉様食品は、ハンバーグ、ミートボール、から揚げ、焼肉素材等の畜肉様食品の形態として提供することができる。
【実施例0044】
(実施例1)
(1)組織状大豆蛋白素材の作製
分離大豆蛋白(ニューフジプロE、蛋白含量92%、不二製油株式会社製)70重量部、コーンスターチ25重量部を混合し、さらにこの混合原料に対して硫酸カルシウム4重量部、粉末油脂1重量部を加えて混合した。この混合物100重量部、水28重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行った。二軸エクストルーダーから組織状大豆蛋白のシートを押し出し、エクストルーダーの出口にて押出方向に対して垂直方向に、押出方向の長さ30cmでカットした。押し出され、膨化した組織状大豆蛋白をローラープレス機でプレスし、押出方向に対して垂直方向に圧縮された組織状大豆蛋白素材を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット幅45mm×厚さ1mmで行った。また、プレス処理は、二軸型のローラーを使用し、ローラークリアランスを4mmに調整して行った。
得られた組織状大豆蛋白素材1重量部に対し、6重量%の食塩水20重量部を添加して30分間撹拌し水戻しを行った後、水で流水洗浄を行った。次に、リン酸を使用してpH=3.6に調整した酸性溶液20重量部を添加して30分間撹拌し水戻しを行った後、酸味を除くため、100重量部の水で流水洗浄を行い、実施例1に係る組織大豆蛋白素材を作製した。
得られた組織状大豆蛋白素材を80℃の恒温器で24時間乾燥させた。
図1Aは、実施例1に係る組織状大豆蛋白素材の乾燥状態の表面の写真である。押出されたシート状の成形体は、大気圧下で膨化して、表面に大小の塊状部が形成されていた(
図1A)。塊状部は、繊維状の大豆蛋白で構成されており、その平面視の大きさは、種々で概ね1~30mmであった。また、塊状部は、ローラーにより潰されており、互いに密着し、ローラーにより潰れた平面が相互に集合して組織状大豆蛋白素材の平面を形成していた。
図1Bは、実施例1に係る組織状大豆蛋白素材の吸水状態の表面の写真である。
組織状大豆蛋白素材の気孔率は、乾燥状態で、表面部で69%、中央部で76%、裏面部で71%であった。また、平均気孔径は、乾燥状態で、表面部で77μm、中央部で149μmあった。ローラープレスによって、組織状大豆蛋白素材の表面部および裏面部の気孔率と平均気孔径は、中央部のそれらよりも小さくなっていると考えられる。
【0045】
(2)以下の組成の調味材および着色剤を含む調味水溶液を調製した。
(調味水溶液の組成)
還元水あめ 40重量部
上白糖 20重量部
並塩 5重量部
コショウ 0.5重量部
グルタミン酸ソーダ 5重量部
醤油 10重量部
ガーリックパウダー 2重量部
固形油脂 20重量部
水 120重量部
カラメル色素 2重量部
【0046】
この調味材・着色剤を含む調味水溶液中に、(1)で製造し、水戻しした組織状大豆蛋白素材を24時間浸漬して、4℃で冷蔵しながら、調味材と着色剤を浸透させ、焼肉用の畜肉様食品とした。
【0047】
(気孔率の算出)
気孔率は、カールツァイス製 X線CT(METROTOM800)を用い、X線管電圧:60kV、X線管電流:120μA、ビュー数:1500、露光時間:400ms、金属フィルタ:Al 0.5mm、倍率:10.85、Vxサイズ:0.012mmの条件にて測撮像したX線CT像を、画像解析ソフトImageJを使用して二値化し、観察範囲における気孔と壁の比率により算出した。
【0048】
(平均気孔径の測定)
平均気孔径の測定は株式会社日立ハイテクサイエンス社製低真空走査型電子顕微鏡(日立卓上顕微鏡 Miniscope TM3030、加速電圧15kV)を用いて観察したSEM像の画像解析により行った。画像解析は画像解析ソフトImageJを使用し、任意の10個の気孔について、各気孔の短径を計測した。短径は、気孔の輪郭を2本の平行な直線で挟んで2本の平行な直線間の距離を計測した場合、2本の平行な直線間の距離のうち、最も小さいものをいう。
気孔率の算出及び平均気孔径の測定は、吸水状態の組織状大豆蛋白素材においても上記と同じ方法で行うことができる。
【0049】
(塩分および糖分の含有量の測定)
実施例1で製造した調味材および着色剤を含む畜肉様食品10重量部を80℃の水100重量部に10分間浸漬して、調味材および着色剤が溶出した水をATAGO社製PAL-SALT Pocket Salt Meterにて塩分を、ATAGO社製 EFRACTOMETER PAL-Jにて糖分をそれぞれ測定した。塩分は0.2重量%、糖分は1.0重量%であった。
【0050】
(実施例2)
(1)組織状大豆蛋白素材の作製
分離大豆蛋白(ニューフジプロE、蛋白含量92%、不二製油株式会社製)70重量部、コーンスターチ25重量部を混合し、さらにこの混合原料に対して硫酸カルシウム4重量部、粉末油脂1重量部を加えて混合した。この混合物100重量部、水28重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い、膨化した組織状大豆蛋白を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット幅45mm×厚さ1mmで行った。エクストルーダーの出口にて押出方向に対して垂直方向に、押出方向の長さ30cmで組織状大豆蛋白をカットして、組織状大豆蛋白素材を作製した。
得られた組織状大豆蛋白素材1重量部に対し、6重量%の食塩水20重量部を添加して30分間撹拌し水戻しを行った後、水で流水洗浄を行った。次に、リン酸を使用してpH=3.6に調整した酸性溶液20重量部を添加して30分間撹拌し水戻しを行った後、酸味を除くため、100重量部の水で流水洗浄を行い、実施例2に係る組織状大豆蛋白素材を作製した。
押出されたシート状の成形体は、大気圧下で膨化して、表面に密集した塊状部が形成されていた。塊状部は、繊維状の大豆蛋白で構成されており、その平面視の大きさは、種々で概ね1~30mmであった。組織状大豆蛋白素材の断面を光学顕微鏡にて50倍に拡大して観察したところ、繊維状の大豆蛋白によって囲われたスポンジ状の気孔が観察された。組織状大豆蛋白素材の塊状部の気孔率は、乾燥状態で76%であった。また、塊状部の平均気孔径は、乾燥状態で112μmであった。
(2)実施例1と同じ調味水溶液中に、(1)で製造した組織状大豆蛋白素材を浸漬して、調味材と着色剤を浸透させ、から揚げ用の畜肉様食品とした。
【0051】
(塩分および糖分の含有量の測定)
実施例2で製造した調味材および着色剤を含む畜肉様食品10重量部を80℃の水100重量部に10分間浸漬して、調味材および着色剤が溶出した水をATAGO社製PAL-SALT Pocket Salt Meterにて塩分を、ATAGO社製 EFRACTOMETER PAL-Jにて糖分をそれぞれ測定した。塩分は0.2重量%、糖分は1.0重量%であった。
【0052】
(比較例1)
(1)シート状大豆蛋白の作製
分離大豆蛋白(ニューフジプロE、蛋白含量92%、不二製油株式会社製)75重量部、コーンスターチ25重量部と硫酸カルシウム3重量部を混合した。この混合物100重量部、水20重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い解砕した大豆蛋白を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット幅15mm×厚さ1mmで行った。押し出されたシートは、厚さ20mm程度に膨化しており、これを30cmの長さで切断して、押出方向に対して平行方向にカッターで切断して厚さ3mmとした。
このシート状大豆蛋白1重量部に対し、6重量%の食塩水中に30分間浸漬して水戻しを行った後、水で流水洗浄を行った。次に、リン酸を使用してpH=3.6に調整した酸性溶液中に30分間浸漬して水戻しを行った後、酸味を除くため、水で流水洗浄を行い、比較例1に係る組織状大豆蛋白素材のシートを作製した。
押出されたシート状の成形体は、大気圧下で膨化しているが、表面をスライスしているため、表面に塊状部は見られなかった。
比較例1の組織状大豆蛋白素材の気孔率は、乾燥状態で75%、中央部で75%、裏面部で75%であった。また、平均気孔径は、乾燥状態で、表面部で110μm、中央部で110μm、裏面部で110μmであった。いずれも表面部および裏面部と中央部での差は認められなかった。
(2)実施例1と同じ調味水溶液中に、(1)で製造したシート状大豆蛋白を浸漬して、調味材と着色剤を浸透させ、焼肉用およびから揚げ用の畜肉様食品とした。
【0053】
(畜肉様食品の元素の測定)
実施例1、2に係る畜肉様食品、並びに、比較例1に係る畜肉様食品に含まれるカルシウムの同定と定量を、ICP(高周波誘導結合プラズマ)法により行った。結果を表1に示す。
測定は、畜肉様食品を80℃の恒温器にて乾燥を24時間行い、当該乾燥体100g中の元素量を測定することで行った。
【0054】
【0055】
(畜肉様食品の調理)
実施例1、比較例1に係る畜肉様食品を180℃で加熱して焼肉サンプルとした。また、実施例2、比較例1に係る畜肉様食品に小麦粉をまぶして、200℃の天ぷら油の中に投入し、3分間揚げてから揚げサンプルとした。
実施例1、2および比較例1の焼肉サンプル、から揚げサンプルを、5人で食して評価した。
評価は、外観と食感について行った。結果を表2に示す。
【0056】
(外観)
天然畜肉を用いた焼肉、から揚げの外観と全く異なる:0点~天然畜肉を用いた焼肉、から揚げと同じである:3点として0点を含めて4段階で評価した。
0点:天然畜肉を用いた焼肉、から揚げの外観と全く異なる
1点:天然畜肉を用いた焼肉、から揚げの外観とやや異なる
2点:天然畜肉を用いた焼肉、から揚げの外観と概ね同じである
3点:天然畜肉を用いた焼肉、から揚げの外観と同じである
【0057】
(食感)
天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性(不均一感)が全く感じらない:0点~天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性が充分に感じられる:5点として、0点を含めて、食感の多様性(不均一感)を6段階に分けて点数評価した。
点数は、各自の経験に基づいて付与されるが、基準としては以下の通り。
0点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性が全く感じられない
1点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性が殆ど感じられない
2点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性があまり感じられない
3点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性がわずかに感じられる
4点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性がある程度感じられる
5点:天然の畜肉の焼肉、から揚げの持つ食感の多様性が充分に感じられる
5人の平均値を表2に示す。
【0058】