(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179723
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20221125BHJP
E04G 21/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/06 ESW
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164466
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2018146835の分割
【原出願日】2018-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018004321
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】宇野 洋志城
(72)【発明者】
【氏名】的場 栄次
(72)【発明者】
【氏名】黒田 千歳
(57)【要約】
【目的】適正な締固めを行うことができ、高品質のコンクリートを得ることができるコンクリート締固めバイブレータの提供を目的とする。
【構成】打設されたコンクリート内に挿入され、振動することによりコンクリートを締め固めるバイブレータにおいて、バイブレータが、コンクリートに挿入された状態であるか否かを検知する第1センサーと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かを検知する第2センサーと、を有し、コンクリートに挿入された状態であるか否かと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かと、を検知すると共に、第1センサーと第2センサーの信号の時間変化により、バイブレータのコンクリートからの引抜き速度を検知する構成。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設区域の上方位置に、打設箇所に向けて作動する回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方が配設されており、
該スキャンレーザ又は3Dレーザが、打設されるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移を測定する構成であって、
回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方が二つ以上配設されており、隣接する回転スキャンレーザ又は3Dレーザの測定範囲が、部分的に重複する構成であることを特徴とするコンクリート打設管理システム。
【請求項2】
回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方によるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移の測定の際に支障となる、打設区域内の測定支障物について、測定から除去する測定支障物アルゴリズムを予め設定した構成であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項3】
打設開始時間、打設時間、打設量、打設速度、打設面高さ又は打設面傾斜の1つ乃至は2つ以上を記録し、管理する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項4】
打継時間・打重ね時間を記録し、管理する構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項5】
締固めバイブレータが挿入された位置を、回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方により検知する構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項6】
コンクリートの打設範囲が、カメラによって撮影され、
この撮影された映像を解析することによって、締固めバイブレータを操作する作業員の位置を特定する構成であり、
前記締固めバイブレータが、コンクリートに挿入された時刻における前記作業員の位置を特定することによって、コンクリートの締固めが行われた位置情報を管理することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項7】
コンクリートの締固めが行われた位置毎に、バイブレータの挿入時刻、締固め時間、挿入深さ及び引抜き速度が管理されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項8】
コンクリートの打設範囲を表すマップ上に、コンクリートの締固め位置をプロットし、このプロットを、バイブレータの挿入時刻順に線でつなぐことで、締固めが行われた位置の軌跡が表されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項9】
バイブレータによるコンクリートの締固め時間、バイブレータの挿入深さ及び引抜き速度について、所定の値が設定され、この各値を満たしたか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項10】
コンクリートの打設範囲内における所定の領域で、締固め作業の実施回数が規定され、この規定された回数を実施したか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート締固めバイブレータ、及びコンクリート打設管理システムに関し、詳しくは打設されたコンクリートの締固め・打設条件を適正範囲に管理することにより高品質のコンクリートが得られるコンクリート締固めバイブレータ、及びコンクリート打設管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高品質のコンクリートを得るためには、生コンクリートの配合はもちろんであるが、打設の際の種々の作業、即ち、打設速度、締固め時間、打継時間、打重ね時間等の種々条件が適正範囲内に管理されることが重要である。
【0003】
特に、打設速度が適正条件よりも速過ぎると側圧が高くなって型枠のはらみ(変形)や型枠・支保工の崩壊の危険性が増すことになる。
また、締固めバイブレータの動作時間が短い場合は締固めが不充分となり、長い場合は配合成分の分離が生じることになる。
更に、打継時間・打重ね時間が所定以上になった場合はコールドジョイントが生じることになる。
いずれにしても、適正範囲から外れた場合にはコンクリート不良が生じる等の不都合が発生し易いことが明らかとなっている。
【0004】
そこで従来から、打設されたコンクリートの充填高さをセンサーによって検知して打設速度を算出し、適正範囲から外れた場合は警告を発する等の技術(特許文献1)や、打設コンクリートに対する締固めバイブレータの抜き差しを型枠外に配設した磁束検出センサーによって検知して締固め時間を算出して管理する等の技術(特許文献2)や、打設箇所に埋設されるセンサーによってコンクリートの充填量を検出して打設時間を算出し、打継時間・打重ね時間を算出して管理する等の技術(特許文献3、特許文献4)等が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-083353号
【特許文献2】特開2012-193601号
【特許文献3】特開2013-209801号
【特許文献4】特開2012-172375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、打設されたコンクリートの充填高さを検知するセンサーとして1点照準のレーザ距離計を用いているため、打設時や締固め時の振動等によって1点照準の光軸のズレやブレが生じた場合、打設箇所に配筋されている鉄筋類(幅止め筋等)や表面水を誤検知してしまうことがあり、測定値の正確性が欠ける場合があるという問題点を有している。
【0007】
特許文献2の技術では、締固めバイブレータによる締固めを打設コンクリート内に挿入されていた時間でのみ把握する構成なので、高品質のコンクリートを得るには締固め条件が不充分であるという問題点を有している。
【0008】
特許文献3、4の技術では、コンクリート充填量を検知するセンサーが打設されるコンクリート内に埋設する構成なので、コンクリート内に異物として残存してしまうという不都合があるという問題点を有している。
【0009】
そこで本発明の課題は、適正な締固めを行うことができ、高品質のコンクリートを得ることができるコンクリート締固めバイブレータを提供することにある。
また、本発明の別なる課題は、コンクリート打設状況を正確に把握することができる信頼性の高いコンクリート打設管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
・請求項1
コンクリートの打設区域の上方位置に、打設箇所に向けて作動する回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方が配設されており、
該スキャンレーザ又は3Dレーザが、打設されるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移を測定する構成であって、
回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方が二つ以上配設されており、隣接する回転スキャンレーザ又は3Dレーザの測定範囲が、部分的に重複する構成であることを特徴とするコンクリート打設管理システム。
・請求項2
回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方によるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移の測定の際に支障となる、打設区域内の測定支障物について、測定から除去する測定支障物アルゴリズムを予め設定した構成であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項3
打設開始時間、打設時間、打設量、打設速度、打設面高さ又は打設面傾斜の1つ乃至は2つ以上を記録し、管理する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項4
打継時間・打重ね時間を記録し、管理する構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項5
締固めバイブレータが挿入された位置を、回転スキャンレーザ又は3Dレーザのいずれか一方又は両方により検知する構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項6
コンクリートの打設範囲が、カメラによって撮影され、
この撮影された映像を解析することによって、締固めバイブレータを操作する作業員の位置を特定する構成であり、
前記締固めバイブレータが、コンクリートに挿入された時刻における前記作業員の位置を特定することによって、コンクリートの締固めが行われた位置情報を管理することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項7
コンクリートの締固めが行われた位置毎に、バイブレータの挿入時刻、締固め時間、挿入深さ及び引抜き速度が管理されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項8
コンクリートの打設範囲を表すマップ上に、コンクリートの締固め位置をプロットし、このプロットを、バイブレータの挿入時刻順に線でつなぐことで、締固めが行われた位置の軌跡が表されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項9
バイブレータによるコンクリートの締固め時間、バイブレータの挿入深さ及び引抜き速度について、所定の値が設定され、この各値を満たしたか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
・請求項10
コンクリートの打設範囲内における所定の領域で、締固め作業の実施回数が規定され、この規定された回数を実施したか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0011】
本発明の関連発明として、下記構成を挙げることができる。
1.打設されたコンクリート内に挿入され、振動することにより前記コンクリートを締め固めるバイブレータにおいて、
前記バイブレータが、コンクリートに挿入された状態であるか否かを検知する第1センサーと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かを検知する第2センサーと、を有し、
コンクリートに挿入された状態であるか否かと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かと、を検知すると共に、
前記第1センサーと第2センサーの信号の時間変化により、バイブレータのコンクリートからの引抜き速度を検知する構成であること、
を特徴とするコンクリート締固めバイブレータ。
【0012】
2.第2センサーがコンクリートから引抜かれたことを検知した時刻と、第1センサーがコンクリートから引抜かれたことを検知した時刻の差から、バイブレータをコンクリートから引抜くのに要した時間である引抜き時間を算出し、
この引抜き時間と、第1センサーと第2センサーの距離から算出されるバイブレータの挿入深さから、引抜き速度が導出されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0013】
3.第2センサーが、長手方向に所定の間隔で複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0014】
4.第1センサーと第2センサーが、バイブレータから着脱可能な構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0015】
5.第1センサーと第2センサーが、鞘状(サック状)又は筒状の部材に取り付けられることによってセンサー部材を構成し、
前記センサー部材の鞘状又は筒状の部材に、バイブレータの振動部が挿入されることで、前記センサー部材が前記バイブレータに装着される構成であることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0016】
6.センサー部材は、第1センサー及び第2センサーの信号を伝搬する電線を有し、
この電線が、バイブレータ本体とコネクタで接続される構成であることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0017】
7.バイブレータが、コンクリートに挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さまで挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さを逸脱したこと、又はコンクリートから引抜かれたこと、のうち少なくとも1つの状態を第1センサー又は第2センサーが検知し、この検知した情報を作業者に直接及び/又は間接的に報知する構成であることを特徴とする請求項1~6に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0018】
8.バイブレータが、コンクリートに挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さまで挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さを逸脱したこと、又はコンクリートから引抜かれたこと、のうち少なくとも1つの状態を第1センサー又は第2センサーが検知し、この検知した情報に基づき、バイブレータの振動動作の作動・停止を制御する構成であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0019】
9.コンクリート内の規定された深さに挿入されたバイブレータの振動動作時間が、規定された時間を経過したか否かを、作業者に直接及び/又は間接的に知らせる構成であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0020】
10.検知したバイブレータのコンクリートからの引抜き速度の情報に基づき、引抜き速度が規定された範囲内であるか否かを、作業者に直接及び/又は間接的に知らせる構成であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0021】
11.バイブレータがコンクリート内の規定深さまで挿入されたか否かの情報、コンクリート内の規定された深さに挿入されてから引き抜かれるまでに振動動作した時間の情報、コンクリートからの引き抜き速度の情報、のうち少なくとも1つの情報を記録する記録部を有する構成であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0022】
12.バイブレータが挿入された位置を検知又は入力する手段を有し、検知又は入力された位置情報を記録する記録部を有する構成であることを特徴とする請求項11に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0023】
13.バイブレータがコンクリート内の規定された深さまで挿入されたか否かの情報、挿入されてから引き抜かれるまでに振動動作した時間の情報、コンクリートからの引き抜き速度の情報、のうち少なくとも1つの情報を表示する表示部を有する構成であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0024】
14.バイブレータが挿入された位置を検知又は入力する手段を有し、検知又は入力された位置情報を表示する表示部を有する構成であることを特徴とする請求項13に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0025】
15.請求項1~14のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータを用いて行うコンクリートの打設に際して、
コンクリートの打設範囲が、カメラによって撮影され、
この撮影された映像を解析することによって、前記締固めバイブレータを操作する作業員の位置を特定する構成であり、
前記締固めバイブレータが、コンクリートに挿入された時刻における前記作業員の位置を特定することによって、コンクリートの締固めが行われた位置情報を管理することを特徴とするコンクリート打設管理システム。
【0026】
16.コンクリートの締固めが行われた位置毎に、バイブレータの挿入時刻、締固め時間、挿入深さ及び引抜き速度が管理されることを特徴とする請求項15に記載のコンクリート打設管理システム。
【0027】
17.コンクリートの打設範囲を表すマップ上に、コンクリートの締固め位置をプロットし、このプロットを、バイブレータの挿入時刻順に線でつなぐことで、締固めが行われた位置の軌跡が表されることを特徴とする請求項15又は16に記載のコンクリート打設管理システム。
【0028】
18.コンクリート締固めの良否が、プロットに所定のマークを付与することで表されることを特徴とする請求項17に記載のコンクリート打設管理システム。
【0029】
19.バイブレータによるコンクリートの締固め時間、バイブレータの挿入深さ及び引抜き速度について、所定の値が設定され、この各値を満たしたか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項15~18のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0030】
20.コンクリートの打設範囲内における所定の領域で、締固め作業の実施回数が規定され、この規定された回数を実施したか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることを特徴とする請求項15~18のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0031】
21.1箇所のコンクリート打設範囲にて、締固めバイブレータが複数台同時に稼働している状況において、
締固めバイブレータを操作する作業員のヘルメットの色を識別することによって、複数ある前記締固めバイブレータのうち、任意の締固めバイブレータを特定することを特徴とする請求項15~20のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0032】
本発明の関連発明として、下記構成を挙げることができる。
【0033】
(1)打設されたコンクリート内に挿入され、振動することにより前記コンクリートを締め固めるバイブレータにおいて、
前記バイブレータが、コンクリートに挿入された状態であるか否かを検知するセンサーと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かを検知するセンサーと、を有し、
コンクリートに挿入された状態であるか否かと、コンクリートに規定された深さまで挿入されたか否かと、を検知すると共に、
前記2つのセンサーの信号の時間変化によりバイブレータのコンクリートからの引抜き速度を検知する構成であること、
を特徴とするコンクリート締固めバイブレータ。
【0034】
(2)バイブレータが、コンクリートに挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さまで挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さを逸脱したこと、コンクリートから引抜かれたこと、の少なくとも一つの状態をセンサーが検知し、この検知した情報を作業者に直接及び/又は間接的に報知する構成であることを特徴とする上記(1)に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0035】
(3)バイブレータが、コンクリートに挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さまで挿入されたこと、コンクリート内の規定された深さを逸脱したこと、コンクリートから引抜かれたこと、の少なくとも一つの状態をセンサーが検知し、この検知した情報に基づき、バイブレータの振動動作の作動・停止を制御する構成であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0036】
(4)コンクリート内の規定された深さに挿入されたバイブレータの振動動作時間が規定された時間であるか否かを作業者に直接及び/又は間接的に知らせる構成であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0037】
(5)検知したバイブレータのコンクリートからの引抜き速度の情報に基づき、引抜き速度が規定された範囲内であるか否かを作業者に直接及び/又は間接的に知らせる構成であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0038】
(6)バイブレータのコンクリートからの引抜き速度を、加速度計測、又はパルス波計測により算出する構成であることを特徴とする上記(5)に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0039】
(7)バイブレータがコンクリート内の規定深さまで挿入されたか否かの情報、コンクリート内の規定された深さに挿入されてから引き抜かれるまでに振動動作した時間の情報、コンクリートからの引き抜き速度の情報、を記録する記録部を有する構成であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0040】
(8)バイブレータが挿入された位置を検知又は入力する手段を有し、検知又は入力された位置情報を記録する記録部を有する構成であることを特徴とする上記(7)に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0041】
(9)バイブレータがコンクリート内の規定された深さまで挿入されたか否かの情報、挿入されてから引き抜かれるまでに振動動作した時間の情報、コンクリートからの引き抜き速度の情報、を表示する表示部を有する構成であることを特徴とする上記(1)~(8)のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0042】
(10)バイブレータが挿入された位置を検知又は入力する手段を有し、検知又は入力された位置情報を表示する表示部を有する構成であることを特徴とする上記(9)に記載のコンクリート締固めバイブレータ。
【0043】
(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載のコンクリート締固めバイブレータを用いて行うコンクリートの打設に際して、
コンクリートの打設区域の上方位置に、打設箇所に向けて作動する回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザが配設されており、該スキャンレーザ及び/又は3Dレーザが打設されるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移を測定する構成であることを特徴とするコンクリート打設管理システム。
【0044】
(12)回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザが二つ以上配設されており、隣接する回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザの測定範囲が部分的に重複する構成であることを特徴とする上記(11)に記載のコンクリート打設管理システム。
【0045】
(13)回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザが可視光レーザであるか、又は別体の可視光レーザを付加した構成であることを特徴とする上記(11)又は(12)に記載のコンクリート打設管理システム。
【0046】
(14)回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザによるコンクリートの打設面の高さと該高さの推移の測定の際に支障となる、打設区域内に配設されている鉄筋、コンクリート締固めバイブレータ、打設ホース、打設作業者の如き測定支障物について測定から除去する測定支障物アルゴリズムを予め設定した構成であることを特徴とする上記(11)~(13)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0047】
(15)打設開始時間、打設時間、打設量、打設速度、打設面高さ、打設面傾斜の如き各打設情報の一つ乃至は全部を記録部に記録し、管理する構成であることを特徴とする上記(11)~(14)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0048】
(16)打継時間・打重ね時間を記録部に記録し、管理する構成であることを特徴とする上記(11)~(15)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0049】
(17)打設中のコンクリートの打設量から次の生コン車の手配時間を算出し、コンクリートの打設必要量を管理する構成であることを特徴とする上記(11)~(16)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0050】
(18)打設状況を撮影し、記録部に記録する構成であることを特徴とする上記(11)~(17)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0051】
(19)締固めバイブレータが挿入された位置を回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザにより検知する構成であることを特徴とする上記(11)~(18)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0052】
(20)締固めバイブレータが挿入された位置を、コンクリート内に挿入されて締固めが行われた回数から推測し算出して入力する構成であることを特徴とする上記(11)~(18)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0053】
(21)締固めバイブレータの振動動作時間、コンクリート内にバイブレータが挿入された位置情報、コンクリートからのバイブレータの引抜き速度、締固めを行った回数情報、の如き各締固め情報の一つ乃至は全部を表示部に表示する構成であることを特徴とする上記(11)~(20)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【0054】
(22)締固めバイブレータの振動動作時間、コンクリート内にバイブレータが挿入された位置情報、コンクリートからのバイブレータの引抜き速度、締固めを行った回数情報、の如き各締固め情報の一つ乃至は全部を記録部に記録し、管理する構成であることを特徴とする上記(11)~(21)のいずれかに記載のコンクリート打設管理システム。
【発明の効果】
【0055】
上記1に示す発明によれば、第1センサーと第2センサーとが設けられることにより、コンクリートの締固め作業が適正に行われているか否かを確認することができ、高品質なコンクリートを施工することができる。
【0056】
特に、打設されたコンクリート内への締固めバイブレータの挿入と、挿入深さを検知するだけでなく、コンクリートからの引抜き速度を検知する構成により、引抜きが適正速度よりも早い場合に生じる空隙の発生を防止することができる。従って、充分且つ適正な締固め作業を行うことができるので、高品質のコンクリートを得ることができる。
【0057】
上記2に示す発明によれば、第1センサーと第2センサーの2つのセンサーを使用することにより、バイブレータのコンクリートからの引抜き速度を正確に測定することができる。
【0058】
上記3に示す発明によれば、長手方向に所定の間隔で複数の第2センサーを設けることにより、使用する第2センサーを選択することによって、第1センサーからの距離を選択することができる。例えば、第2センサーを100mm間隔で複数配設した構成であれば、第1センサーからの距離を100mm単位で選択・変更することができる。
即ち、第1センサーから第2センサーまでの距離は、バイブレータの挿入深さと捉えることができるので、任意の挿入深さを設定し検知することができる。
【0059】
上記4に示す発明によれば、第1センサーと第2センサーが、バイブレータ本体に対して着脱可能な構成であるため、いずれかのセンサーが破損や故障したとしても、このセンサーのみを交換することができる。
また、一般的な締固めバイブレータを使用でき、これに第1センサーと第2センサーと取り付けるという簡単な方法で、本発明に係る締固めバイブレータを得ることができる。
【0060】
上記5に示す発明によれば、センサー部材を鞘状又は筒状の形態とし、一般的に棒状又はホース状の形状であるバイブレータの振動部に対し、これを被せることで取り付けることができる。換言すれば、バイブレータの振動部を、鞘状又は筒状のセンサー部材に挿入することで、バイブレータにセンサー部材を取り付けることができる。
これらの構成により、簡単な方法で、バイブレータにセンサー部材を取り付けることができる。
【0061】
上記6に示す発明によれば、バイブレータの振動部にセンサー部材を取り付けた態様において、第1センサー及び第2センサーで検知した信号をバイブレータ(特に制御部等)に伝えるため、センサーに接続された電線をバイブレータ側にも接続する必要があるが、この接続方法として、コネクタ接続を採用した構成である。コネクタ接続を採用することにより、バイブレータとセンサー部材の電気的な接続を、簡単な方法で行うことができる。また、第1センサー又は第2センサーに破損や故障が発生したとしても、コネクタを脱着するだけでセンサー部材と取替えることができる。
【0062】
上記7に示す発明によれば、バイブレータが打設されたコンクリート内に挿入されているか否か、規定された深さに挿入されているか否かを作業者が知ることができるので、適正且つ効果的な締固め作業を行うことができる。尚、規定された深さに達していない場合だけでなく、規定された深さよりも深い位置まで挿入されてしまった場合についても、規定された深さに挿入されていない場合に含まれる。
【0063】
上記8に示す発明によれば、バイブレータが、打設されたコンクリート内に挿入された状態の時、適切な深さである規定された深さに挿入された状態の時、に作動する構成により、安全且つ効率的な締固め作業を行うことができる。
【0064】
上記9に示す発明によれば、打設されたコンクリート内に挿入した締固めバイブレータの振動動作時間が適正であるかを作業者が知ることができるので、必要且つ充分な締固め作業を行うことができる。
【0065】
上記10に示す発明によれば、締固め作業が終わり、打設されたコンクリートから締固めバイブレータを引抜く際に、引き抜いた部分に空隙が発生することがないように適正な引抜き速度で引抜くことができる。従って、引抜き速度が適正でない場合には作業者に警告をするので、たとえ経験が浅い作業者であっても対応することができ、技術向上に寄与できる。
【0066】
上記11に示す発明によれば、締固め作業の種々条件を記録する構成により、品質管理状況を記録データとして保存することができる。従って、施工主への品質管理説明が可能であるだけでなく、打設工事資料としての記録データベース化に寄与したり、他の打設工事の際の参考資料としても活用することができる。
【0067】
上記12に示す発明によれば、打設区域内に打設されたコンクリートへの締固め作業に漏れがないかを把握することができる。
【0068】
上記13に示す発明によれば、締固め作業の種々状況を可視化することができる。従って、締固め作業の確認が容易となる。
【0069】
上記14に示す発明によれば、打設区域内に打設されたコンクリートへの締固め作業がどの範囲で行われたかを可視化することができる。従って、締固め作業の進捗状況等の確認が容易となる。
【0070】
上記15に示す発明によれば、コンクリート打設状況を正確に把握することができ、信頼性の高いコンクリート打設管理システムを提供することができる。
【0071】
特に、従来は正確に把握することが困難であったバイブレータによる締固め位置を、バイブレータからの挿入時刻に関する情報と、映像解析によるバイブレータの位置に関する情報とを結びつけることで、締固め位置を正確に把握することができる。これらの構成より、コンクリート打設範囲における締固め位置、回数、順番等を正確に把握することができ、バイブレータによるコンクリートの締固め作業が適正に行われたか否かの確認を行うことができ、コンクリート打設作業の品質評価を行うこともできる。
また、施工後においても、上記作業が適正に行われたことを証明することができ、施工されたコンクリートの品質証明記録としても利用することができる。
【0072】
上記16に示す発明によれば、コンクリートの締固め作業が行われた位置毎に、換言すれば、締固めバイブレータによるコンクリートへの1回の浸入毎に、バイブレータの挿入時刻、締固め時間、挿入深さ、そして引抜き速度が記録・管理される構成であり、バイブレータによるコンクリートの締固め作業が適正に行われたか否かの確認を、より確実に行うことができる。また、施工後においても、上記作業が適正に行われたことを証明することができ、施工されたコンクリートの品質証明記録としても利用することができる。
【0073】
上記17に示す発明によれば、コンクリートの打設範囲を表すマップ(例えば、平面図。)上に、締固め作業を行った位置をプロットすることで、作業を行った位置を視覚的に認識し、記録・管理することができる。また、これらのプロットを、締固めが行われた順に線でつなぐことで、作業が行われた軌跡を視覚的に認識し、記録・管理することができ、バイブレータによるコンクリートの締固め作業が適正に行われたか否かの確認を、より確実に行うことができる。
【0074】
上記18に示す発明によれば、上記17においてマップ上に記されたプロットに、コンクリートの締固め作業が適正に行われたか否かの良否判定を表すマーク(例えば、記号や色で判別。)を付与することで、作業状況の評価を視覚的に認識し、記録・管理することができる。
【0075】
上記19に示す発明によれば、バイブレータによるコンクリートの締固め時間、バイブレータの挿入深さ及び引抜き速度をパラメータとすることで、コンクリート締固め作業の良否判定を高精度で行うことができる。
【0076】
上記20に示す発明によれば、コンクリートの打設範囲内における所定の領域で、締固め作業の実施回数が規定され、この規定された回数を実施したか否かを判断基準とすることで、コンクリート締固め作業の良否判定を高精度で行うことができる。
【0077】
上記21に示す発明によれば、1箇所のコンクリート打設範囲にて、締固めバイブレータが複数台同時に稼働している状況において、任意の締固めバイブレータを映像解析にて特定する手段として、締固めバイブレータを操作する作業員のヘルメットの色を識別する手段を採用することで、簡単かつ正確に個々のバイブレータを判別することができる。
【0078】
次に、本発明の関連発明の効果を説明する。
【0079】
上記(1)に示す発明によれば、適正な締固めを行うことができ、高品質のコンクリートを得ることができるコンクリート締固めバイブレータを提供することができる。
【0080】
特に、打設されたコンクリート内への締固めバイブレータの挿入と挿入深さを検知するだけでなく、コンクリートからの引抜き速度を検知する構成により、引抜きが適正速度よりも早い場合に生じる空隙の発生を防止することができる。従って、充分且つ適正な締固め作業を行うことができるので、高品質のコンクリートを得ることができる。
【0081】
上記(2)に示す発明によれば、バイブレータが打設されたコンクリート内に挿入されているか否か、規定された深さに挿入されているか否かを作業者が知ることができるので、適正且つ効果的な締固め作業を行うことができる。尚、規定された深さに達していない場合だけでなく、規定された深さよりも深い位置まで挿入されてしまった場合についても、規定された深さに挿入されていない場合に含まれる。
【0082】
上記(3)に示す発明によれば、バイブレータが、打設されたコンクリート内に挿入された状態の時、適切な深さである規定された深さに挿入された状態の時、に作動する構成により、安全且つ効率的な締固め作業を行うことができる。
【0083】
上記(4)に示す発明によれば、打設されたコンクリート内に挿入した締固めバイブレータの振動動作時間が適正であるかを作業者が知ることができるので、必要且つ充分な締固め作業を行うことができる。
【0084】
上記(5)に示す発明によれば、締固め作業が終わり、打設されたコンクリートから締固めバイブレータを引抜く際に、引き抜いた部分に空隙が発生することがないように適正な引抜き速度で引抜くことができる。従って、引抜き速度が適正でない場合には作業者に警告をするので、たとえ経験が浅い作業者であっても対応することができ、技術向上に寄与できる。
【0085】
上記(6)に示す発明によれば、バイブレータの引抜き速度が適正であるかを容易に判別することができる。
【0086】
上記(7)に示す発明によれば、締固め作業の種々条件を記録する構成により、品質管理状況を記録データとして保存することができる。従って、施工主への品質管理説明が可能であるだけでなく、打設工事資料としての記録データベース化に寄与したり、他の打設工事の際の参考資料としても活用することができる。
【0087】
上記(8)に示す発明によれば、打設区域内に打設されたコンクリートへの締固め作業に漏れがないかを把握することができる。
【0088】
上記(9)に示す発明によれば、締固め作業の種々状況を可視化することができる。従って、締固め作業の確認が容易となる。
【0089】
上記(10)に示す発明によれば、打設区域内に打設されたコンクリートへの締固め作業がどの範囲で行われたかを可視化することができる。従って、締固め作業の進捗状況等の確認が容易となる。
【0090】
上記(11)に示す発明によれば、コンクリート打設状況を正確に把握することができる信頼性の高いコンクリート打設管理システムを提供することができる。
【0091】
特に、回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザを用いて打設面の高さを検知する構成により、レーザスキャン等による1点照準の検知とは異なり、線状の検知が可能となるため鉄筋等の測定支障物があっても、打設面について平面位置だけでなく傾斜や凹凸等をも検知することが可能なので正確に測定することができる。
【0092】
上記(12)に示す発明によれば、二つ以上の回転スキャンレーザ及び/又は3Dレーザを用いる構成により、面状の検知が可能となるため、より正確に測定することができる。
【0093】
上記(13)に示す発明によれば、どの位置をスキャンしているかを目視確認することができるので、測定位置が正しいかどうかの判断、計器のズレの有無の確認等を容易にチェックすることができる。
【0094】
上記(14)に示す発明によれば、検知に支障が生じる条件を取り除いた状態での測定が可能となるので、より正確な測定結果を得ることができる。
【0095】
上記(15)に示す発明によれば、コンクリート打設状況を記録データとして保存することができる。従って、施工主への打設品質管理説明が可能であるだけでなく、打設工事資料としての記録データベース化に寄与したり、他の打設工事の際の参考資料としても活用することができる。
【0096】
上記(16)に示す発明によれば、コンクリートの打継管理・打重ね管理が可能となるので、コールドジョイント等の品質不良が生じるのを防止することができる。
【0097】
上記(17)に示す発明によれば、打設区域全域に亘る打設コンクリート量を把握して管理することができ、コンクリート圧送ポンプ内の配管中の材料ロス等を防止することができ、効率的な無駄の無いコンクリート打設工事を行うことができる。従って、作業管理者の負荷を軽減することができる。
【0098】
上記(18)に示す発明によれば、打設状況を映像として記録管理することができる。
【0099】
上記(19)に示す発明によれば、バイブレータによる締固め位置を高精度に検知することができる。
【0100】
上記(20)に示す発明によれば、バイブレータによる締固め位置を推測・算出した情報を用いることにより、GPS等の検知機器に頼る必要がない。
【0101】
上記(21)に示す発明によれば、バイブレータによる締固め情報を可視化することができる。
【0102】
上記(22)に示す発明によれば、バイブレータによる締固め情報を記録管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】本発明に係るコンクリート締固めバイブレータの一実施例を示す概略構成図
【
図2】
図1に示すコンクリート締固めバイブレータがコンクリートに挿入された状態を示す概略説明図
【
図3】
図1に示すコンクリート締固めバイブレータがコンクリートに規定さえた付加まで挿入された状態を示す概略説明図
【
図4】本発明に係るコンクリート打設管理システムの一実施例を示す概略構成図
【
図5】
図4に示すコンクリート打設管理システムに用いられる回転スキャンレーザS1によって測定された打設情報の表示例の一例を示す図
【
図6】
図4に示すコンクリート打設管理システムに用いられる回転スキャンレーザS2によって測定された打設情報の表示例の一例を示す図
【
図7】測定支障物と3Dレーザとの関係を説明する打設区域の一例を示す概略構成平面図
【
図10】3Dレーザによる打設区域の初期状態の測定状況を示す説明図
【
図11】本発明に係るコンクリート締固めバイブレータの他の実施例を示す概略部分断面図(センサー部材が別体の構成)
【
図12】センサー部材における第1センサーの配設箇所を示すA-A概略部分断面図
【
図14】バイブレータの動きと、センサーが発振する信号と、挿入深さ-時間を表すグラフとを、同じ時系列で表わした説明図
【
図15】打設範囲に設置されたカメラ等の配置の一実施例を表す概略説明図
【
図16】打設範囲を平面で表わしたマップを示す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0104】
次に、添付の
図1~
図3に従って本発明の第1発明であるコンクリート締固めバイブレータについて、
図4~
図10に従って本発明の第2発明であるコンクリート打設管理システムについて、各々詳細に説明する。
【0105】
先ず、本発明の第1発明であるコンクリート締固めバイブレータ(本明細書においては、単に「締固めバイブレータ」、「バイブレータ」と言うこともある。)1は、型枠4等に囲繞された打設区域3内に打設されたコンクリート2内に振動部11を挿入し、該振動部11を振動動作させることによって打設されたコンクリートの締固めを行うものである。打設されるコンクリートは、生コン工場から生コン車(コンクリートミキサー車)に積載されて打設現場に搬送され、打設現場にてコンクリートポンプ車による圧送等の供給手段によって打設区域3内に打設ホース等を介して打設される。
【0106】
本発明のバイブレータ1の具体的構成としては、
図1~
図3に示すように、
打設されたコンクリート2内に振動部11が挿入され、該振動部11が振動することにより前記コンクリート2を締め固めるバイブレータ1において、
前記バイブレータ1が、コンクリート2に振動部11が挿入された状態であるか否かを検知するセンサー13Aと、コンクリート2に振動部11が規定された深さまで挿入されたか否かを検知するセンサー13Bと、を有し、
コンクリート2に挿入された状態であるか否かと、コンクリート2に規定された深さまで挿入されたか否かと、を検知すると共に、
前記2つのセンサー13A・13Bの信号の時間変化によりバイブレータ1のコンクリート2からの引抜き速度を検知する構成である。
【0107】
バイブレータ1としては、打設されたコンクリート2内に挿入されて振動動作する振動部11と、作業者が握持すると共に動作作動用のスイッチ部12A等が配設されたグリップ部12と、該グリップ部12等に接続された配線部12B等を有し、配線部12Bを介して電源部5に接続されるものであり、その基本的構成は、この種の打設されたコンクリートの締固めに使用される公知公用のバイブレータの構成を特別の制限なく採用することができる。
【0108】
更にバイブレータ1は、少なくとも振動部11の先端部分11Aにセンサー13Aが、途中部分11Bにセンサー13Bが配設されており、先端部分11Aに配設されたセンサー13Aによって振動部11がコンクリート2に挿入された状態であるか否かを検知し、途中部分11Bに配設されたセンサー13Bによって振動部11がコンクリート2内に規定深さまで挿入された状態であるか否かを検知する。更に、これら2つのセンサー13A・13Bの検知した信号の時間変化によってコンクリート2からの振動部11の引抜き速度を検知する。尚、配設するセンサー13A・13Bの数は上記の二つに限らず、中間部分にも配設した三つ以上とすることにより三段階以上の挿入深さを検知できる構成とすることもできる。
【0109】
コンクリート2に振動部11が挿入された状態であるか否かを検知するセンサー13Aと、コンクリート2に振動部11が規定された深さまで挿入されたか否かを検知するセンサー13Bとしては、コンクリート2内の水分等に通電することによって検知する構成のセンサー等を用いることが好ましく、この種のコンクリート等の流動体を検知する公知公用の構成のものを採用することができる。センサー13A・13Bによる検知は加速度やパルス波計等であってもよく、この検知した信号(電流パルス波等)を用いて振動部11の引抜き速度を算出する構成であることが好ましい。
【0110】
バイブレータ1を用いて打設されたコンクリート2の締固め作業を行うには、作業者がバイブレータ1のグリップ部12を握持し、打設されたコンクリート2内に振動部11を挿入する。この挿入により、コンクリート2に振動部11が挿入された状態であるか否かを振動部11の先端部分11Aに配設されたセンサー13Aによって先ずコンクリート2内に挿入され始めた状態(
図2に示す状態)を検知する。更に振動部11を挿入し続けると、途中部分11Bに配設されたセンサー13Bが振動部11がコンクリート2内の規定深さまで挿入された状態(
図3に示す状態)を検知する。尚、この規定深さは、打設されるコンクリート2の成分・配合、要求される性状・強度等の種々条件によって適宜決定され、この決定された深さに応じて振動部11の途中部11Bの位置も適宜調整される。
【0111】
打設されたコンクリート2内に、バイブレータ1の振動部11の先端部分11Aが挿入、乃至は途中部分11Bが挿入されたことが確認された後、振動部11の振動動作を作動させることにより打設されたコンクリート2の締固めが開始される。この振動部11の振動動作の開始時期は、振動部11の先端部分11Aが挿入された時点とするか、規定深さである途中部分11Bまで挿入された時点とするかは、打設されるコンクリート2の流動程度等の設計条件や施工条件等によって適宜決定される。
【0112】
バイブレータ1の振動部11の振動動作の作動開始は、振動部11が、コンクリート2に挿入された状態、コンクリート2内の規定された深さまで挿入された状態、のいずれかの状態をセンサー13A・13Bが検知し、この検知した情報が作業者に報知されることによって、作業者はグリップ部12に設けられたスイッチ部12Aを操作することにより行う。作業者への報知手段としては、グリップ部12に設けられるライトの点灯や液晶の表示、或いは打設現場に設置される表示画面の表示・ライトの点灯、グリップ部12Aが振動する構成等を挙げることができる。振動部11の振動動作の作動停止についても同様に、作業者に報知されることによってスイッチ部12Aを操作することにより行うことができる。
【0113】
また、バイブレータ1の振動部11の振動動作の作動開始・停止は、上記の作業者がスイッチ部12Aの操作によって行う構成に限らず、振動部11の挿入状態をセンサー13A・13Bが検知した情報に基いて装置側で制御する構成とすることもできる。この振動動作の作動開始・停止は、有線である配線部12Bを介して、或いは無線(Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を介して検知情報が制御部6に送られることにより制御する構成とすることもできる。尚、
図1に示す本実施例において制御部6はバイブレータ1とは別体構成としているが、該制御部6はバイブレータ1に内蔵された構成とすることもできる。
【0114】
更に、バイブレータ1の振動部11の振動動作は、その作動動作時間が管理される構成であることが好ましい。打設されたコンクリート2の設計条件や施工条件等に応じて適宜調整される締固め時間に応じて適正な時間が規定され、この規定された時間に到達したか否かの情報に基き、作業者が報知された情報に従ってスイッチ部12Aを操作して停止させる構成としてもよいし、或いは規定時間に到達した情報に基いて制御部6が振動部11の振動動作を制御して停止させる構成とすることもできる。
【0115】
振動部11の先端部分11Aに配設されたセンサー13Aは、コンクリート2に振動部11が挿入されたことを検知するだけでなく、充分な締固めが行われた後に振動部11をコンクリート2から引抜く際に、振動部11がコンクリート2から完全に引抜かれたことも検知する。同様に、振動部11の途中部分11Bに配設されたセンサー13Bは、振動部11がコンクリート2内の規定深さまで挿入されたことを検知するだけでなく、締固め中に振動部11の挿入深さが規定深さを逸脱した場合(規定より浅い場合、規定より深い場合)や、振動部11をコンクリート2から引抜く際に規定深さから脱する状態まで引抜かれた場合も検知する。
【0116】
バイブレータ1の振動部11のコンクリート2からの引抜き速度として好ましい速度は、コンクリート2の流動程度等の設計条件や施工条件等によって適宜決定されるものであり、規定の速度よりも早い場合は引き抜いた部分に空隙が生じて空気が溜まりコンクリート不良を起こすことになる。また、規定の速度よりも遅い場合は、振動部11の周辺のコンクリートに対する振動が過剰となってコンクリート配合成分の分離が生じる場合があり、コンクリート不良を起こすことになる。
【0117】
また、このコンクリート2からの引抜き速度についても、規定された範囲内であるか否かを作業者に報知することによって、適正な範囲内に保持するように作業者に促すことができる。作業者への報知手段としては、グリップ部12に設けられるライトの点灯や液晶の表示、或いは打設現場に設置される表示画面・表示ライト、グリップ部12Aが振動する構成等を挙げることができる。
【0118】
上記説明した締固めに関する検知情報の一つ乃至全ては、記録部7に記録され、データとして参照可能となる構成であることが好ましい。記録部7としては、コンピュータ端末等を挙げることができる。尚、
図1に示す本実施例において記録部7はバイブレータ1とは別体構成としているが、該記録部7はバイブレータ1に内蔵された構成とすることもできる。
【0119】
上記説明した締固めに関する検知情報の一つ乃至全ては、表示部8に表示され、確認可能となる構成であることも好ましい。表示部8としては、コンピュータ端末等のディスプレイ8Aや、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末8Bを挙げることができる。尚、
図1に示す本実施例において表示部8はバイブレータ1とは別体構成としているが、該表示部8はバイブレータ1に内蔵された構成とすることもできる。
【0120】
以上の構成を有する本発明のバイブレータ1による打設されたコンクリート2による締固め作業は、打設区域3内においてバイブレータ1の振動部11が挿入された位置を位置情報として記録部7に記録する、表示部8に表示する、等の構成とすることが好ましい。かかる位置情報としては、例えば、振動部11をコンクリート2内に適宜間隔毎に挿入させた挿入回数から算出した推測値、バイブレータ1に配設したGPSの位置情報値、無線
通信を用いた構成の場合のWi-Fi(登録商標)・Bluetooth(登録商標)による位置情報値、作業者や工事管理者による目視確認した位置情報値、或いは打設現場に一つ乃至は複数個配設した位置検出センサー(回転スキャンレーザ、3Dレーザ等)により検知した位置情報値、等を挙げることができる。
【0121】
また、上記の締固め作業は、打設区域3内において複数回繰り返し行われるため、回数毎に各検知情報や位置情報は記録・管理・表示される構成であることが好ましい。更に、締固め作業は打設区域3が広域である場合等では複数人の作業者によって行われることもあるため、各検知情報や位置情報は作業者毎やバイブレータ1・1・・・毎に記録・管理・表示される構成であることが好ましい。
【0122】
上記説明した第1発明のコンクリート締固めバイブレータを用いて締固めを行う構成のコンクリートは、以下に詳説する本発明の第2発明であるコンクリート打設管理システムを用いてコンクリートの打設が管理される。
【0123】
本発明の第2発明であるコンクリート打設管理システムの具体的構成としては、
図4~
図6に示すように、コンクリート3の打設に際して、打設区域3の上方位置に、打設箇所に向けて作動する回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2が配設されており、該スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2が打設されるコンクリート2の打設面の高さを測定する構成である。
【0124】
図4において、コンクリート2Aは打設区域3内において初めに打設された第1層のコンクリート2であり、コンクリート2Bは第1層のコンクリート2Aの上に打継打設される第2層のコンクリート2であり、この第2層のコンクリート2は打設途中の状態を示し、第2層の規定量まで打設され、
図1~
図3に示す締固めバイブレータ1によって締固め作業が行われ、設計条件によっては更に、第3層・第4層・・・と打継打設・打重ね打設が続けられる場合もあるし、最下層の第1層のみの場合もある。本実施例において打設されるコンクリート2は、生コン工場9Aからコンクリートミキサー車9Bによって現場まで搬送された後にコンクリートポンプ車9Cの圧送によって打設区域3内に打設ホース等を介して打設される。尚、連続して打設される1回の各打設高さ(リフト)は設計条件等に応じて適宜決められるが、本実施例においては通常のコンクリートの場合の50cm程度である。
【0125】
また、
図4において、符号h1は回転スキャンレーザ又は3DレーザS1から当該S1直下の第2層のコンクリート2Bの上面(打設面)までの計測される距離を示し、符号h2は回転スキャンレーザ又は3DレーザS2から当該S2直下の第2層のコンクリート2Bの上面(打設面)までの計測される距離を示し、符号0は回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2が取り付けられている取付部31から打設区域3の底面部までの距離を示す。尚、コンクリート2の打設が進み、打設面が上昇すると回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2からの照射角が小さくなってレーザ反応が無くなり正常な測定が困難になるため、取付部31の位置を適宜高く移動させる必要がある。
【0126】
図5及び
図6は、各々回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2によって測定された打設情報の表示例の一例を示す図(グラフ)であり、打設面の高さ(H0-h1はS1によって測定、H0-h2はS2によって測定)、打設コンクリートの量、打継時間・打重ね時間等が表示部(例えば、
図1に示すコンピュータ端末等のディスプレイ8Aや、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末8B等)に表示して適宜確認しながらの作業を行うようにすることが好ましい。
【0127】
回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2は、打設区域3の上方に設けられた型枠や梁材等の取付部31に固定状態で配設されているが、この回転スキャンレーザ又は3Dレーザは二つ以上を配設することが好ましい。
【0128】
回転スキャンレーザ又は3Dレーザを二つ以上配設する場合、隣接する回転スキャンレーザ又は3Dレーザ(
図4ではS1とS2)の検知範囲が部分的に重複するように配設することにより漏れの無い検知測定が可能となる。
【0129】
回転スキャンレーザ又は3Dレーザを二つ以上配設することによって、流動状態の生コンクリートの打設時に生じる打設面の傾斜状態を各々の回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2・・・が検知測定することができるので、打設区域3内において生コンクリートの圧送口(例えば、打設ホース口等)に近い区域から遠い区域に向かって下がる打設面傾斜の状態を漏れなく検知測定することが可能となる。
【0130】
尚、回転スキャンレーザ又は3Dレーザの配設数は、本実施例の二つ(S1・S2)に限らず、用いる回転スキャンレーザや3Dレーザの検知性能や適用する打設区域の広さに応じて一つのみでもよいし、三つ以上であってもよい。
【0131】
本発明に用いられる回転スキャンレーザ・3Dレーザとしては、検知範囲が点状のスポット検知ではなく線状や面状の広域検知が可能な公知公用のものを用いることができ、好ましくは可視光レーザのものを用いることである。尚、可視光レーザは別体構成のものを付加してもよい。可視光レーザを用いることによって、どの位置をスキャンしているかを目視確認することができるので、測定位置が正しいかどうかの判断、計器のズレの有無の確認等を容易にチェックすることができる。
【0132】
本発明に好ましく用いられる回転スキャンレーザとしては、例えば、回転機能を有する2Dレーザである北陽電機社製 レーザ式測域センサーUST-10LX等を挙げることができる。
また、本発明に好ましく用いられる3Dレーザとしては、例えば、北陽電機社製 レーザ式測域センサーYVT-35LX等を挙げることができる。
更に、別体構成の可視光レーザとしては、エフエムレーザテック社製 ラインレーザLML-D12-515-5等を挙げることができる。
【0133】
回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2によって第2層のコンクリート2Bの打設面の高さを検知することによって、打設区域3の全域に亘って設計条件の高さまで打設されたか否かを測定することができ、この測定値から、第2層の打設が未だ途中であると判断された場合は残りのコンクリート打設に必要なコンクリート量や打設時間を算出することができる。また、第2層の打設が終了と判断された場合には、次層である第3層の打設開始までの打継時間・打重ね時間が算出されたり、この第3層のコンクリート打設に必要なコンクリート量の算出や手配が行うことができる。
【0134】
回転スキャンレーザ又は3DレーザS1・S2による測定の際、コンクリート2の打設面の高さと該高さの推移の測定結果が正確な数値になるように、打設区域3である型枠4の内面を認識する構成であることが好ましく、更に、測定の支障となる、打設区域3内に配設されている鉄筋(巾止め筋等)、セパレータ、打設作業者・締固め作業者、打設ホースや締固め用バイブレータの如き測定支障物について測定から除去する測定支障物アルゴリズムを予め設定した構成とすることが好ましい。かかる構成によれば、検知に支障が生じる条件を取り除いた状態での測定が可能となるので、より正確な測定結果を得ることができる。また、この測定支障物アルゴリズムには、上記した測定支障物の他に、打設時に発生する振動による回転スキャンレーザ・3Dレーザや鉄筋類・セパレータの揺動、施工段階毎に生じる回転スキャンレーザ・3Dレーザの取付位置移動、打設ホースの取り回し等による作業上の制約等、検知に関わる影響等も条件内に取り入れることが好ましい。
【0135】
次に、
図7~
図10に基いて、本発明のコンクリート打設管理システムにおいて好ましく適用される測定支障物アルゴリズムの構成例を説明する。
【0136】
図7~
図9は、コンクリート打設が行われる打設区域3の一例を示す概略構成図であり、型枠4に囲まれた打設区域3内には鉄筋32が配されており、この打設区域3内にコンクリート2を打設し、打設されたコンクリート2をコンクリート締固めバイブレータ1によって締固め作業を行う。
【0137】
上記のコンクリート打設において、打設されたコンクリート2の打設面の高さと該高さの推移を打設区域3の上方に配設した3DレーザS3・S4によって測定する。本構成例では、3Dレーザとして、前掲した北陽電機社製 レーザ式測域センサーYVT-35LXを採用する。
【0138】
3DレーザS3・S4の各々の測定範囲は、本構成例では、下向きの扇状であって打設区域3の長手方向(
図7及び
図8の図面上において左右方向)に210度の範囲で、且つ打設区域3の奥行き方向(
図7の図面上において上下方向。
図9の図面上において左右方向)に40度の範囲である。3DレーザS3と3DレーザS4は、互いの測定範囲が前記長手方向において重複するように配設されている。
図7~
図9において、1点鎖線で囲まれた範囲が3DレーザS3の測定範囲を示し、2点鎖線で囲まれた範囲が3DレーザS4の測定範囲を示す。
【0139】
以上の構成によって打設区域3内に打設されるコンクリート2の打設高さと該高さの推移を測定する場合、鉄筋32と締固めバイブレータ1が測定の支障になる。尚、本構成例では、説明を簡略化するために鉄筋32と締固めバイブレータ1を測定支障物とし、打設ホースや、打設作業員、締固め作業員等の他の測定支障物は省略する。尚また、打設されたコンクリート2の上面についても図示を省略する。
【0140】
(1)初期状態設定、打設高さ0面設定
コンクリート打設と測定の開始前に、先ず、初期状態を測定し、打設高さ0を設定する。この初期状態とは、打設区域3の底面の位置、前記鉄筋32の位置、打設区域3を囲む型枠4の内面位置等の初期状態から動かないもの等である。尚、初期状態から動いてしまう測定支障物としては、締固めバイブレータ1の他、本構成例では省略した打設ホース、打設作業員、締固め作業員等である。
打設高さ以外の測定値を測定支障物と判定し、支障物座標及びデータNo(スキャンNo=角度)を記録する。
更に、初期打設面の高さの誤差(凹凸、3Dレーザ自体の誤差等)を考慮し、閾値範囲(好ましくは概ね1~2cm程度)を設定し、この閾値範囲内のコンクリート面以外の鉛直成分距離を測定支障物と判定する。
図10は、3Dレーザによるコンクリート打設前の初期状態の測定状況を示す説明図であり、図において「正規の底面データ」が打設区域3内の底面の位置を示し、「正規の側面データ」が打設区域3内の側面である型枠4の内面の位置を示し、「●」「●測定支障物」が鉄筋32等の測定仕様物を示す。尚、「×」「×虚像データ」は測定支障物の影となる近傍部分(3DレーザS3・S4からみて背後側)に現出する虚像データを示す。
【0141】
(2)コンクリート打設開始以降
打設開始以降は、上記初期状態に、締固めバイブレータ1(や省略した打設ホース)を鉛直状の測定支障物と判定する。
特に締固めバイブレータ1は、前記したコンクリート2内に挿入された状態を検知する情報から、その位置や高さが記録されること、測定支障物として判定すること、が好ましい。
コンクリート2が打設されることにより、打設面の高さが測定される。打設面の測定値は、平面的に連続した値であり、時間的に連続した値となる。測定支障物の部分は特異な値となる。
打設面の高さと時間との関係の記録(打設速度、打重ね時間管理等)は測定データ隣接平均値等を用いることが好ましく、モニター等の表示手段に打設面の形状・傾斜・凹凸等を表示させることにより、これらの状況の把握が可能となる。
【0142】
(3)コンクリート打設開始 コンクリート打設面上昇時
コンクリートの打設が進み、打設面の高さの上昇に伴ってコンクリート内に埋没する部分の鉄筋32は測定支障物判定座標から除外される。
【0143】
(4)3DレーザS3・S4の位置ズレ等の対応(誤差、虚像データ処理)
3DレーザS3・S4による測定の際、締固めバイブレータ1の振動等によりレーザ光のズレ等の僅かな誤差が生じることが考えられる。初期状態の測定支障物判定時の情報を基づいて、誤差判定は除外される。
また、作業時接触等によって大きなズレが生じた場合には、再初期値設定(盛替え)判断を行い、測定支障物の再判定を行う。この際、コンクリート打設面の高さは急変しないので、再設定時の初期値に再設定前の打設高さ時間変化より盛替え時点の打設高さを推定・設定する。
この再初期設定(盛替え)は、打設が進み、3DレーザS3・S4の照射角が小さくなった場合に該3DレーザS3・S4の配設位置を高い位置に変える際にも行われる。尚、3DレーザS3・S4の配設位置を予め変更不要な位置に配設した場合は再初期設定(盛替え)は不要となる。
上記の測定によって得られた測定値の内、測定支障物の測定値を除外すると共に、測定支障物の判定位置の近傍に発生する虚像値についても干渉と考えられるため除外される。
【0144】
上記したように、測定の際に測定支障物アルゴリズムを予め設定した構成とすることによって、検知に支障が生じる条件を取り除いた状態での測定が可能となるので、より正確な測定結果を得ることができる
【0145】
上記した測定支障物アルゴリズムの説明においては3Dレーザを用いた構成例を説明したが、回転機能を有する2Dレーザである回転レーザを用いた構成例においても測定支障物アルゴリズムは適用することができる。
【0146】
2Dレーザの場合、例えば、前掲した北陽電機社製 レーザ式測域センサーUST-10LXを採用した場合、下向きの扇状の測定範囲が270度程度となり、この範囲内に位置する打設区域3内の測定が可能となる。そして、同一地点の測定を、例えば、2台の2Dレーザを、長手方向において同じ位置であるが高さと奥行き方向を異なる位置にズラして配設することにより、3Dレーザと同様の立体的な測定が可能となる。
【0147】
コンクリート打設に際しての種々の打設情報、即ち、打設開始時間、打設時間、打設量、打設速度、打設面高さ、打設面傾斜、更には複数層のコンクリート打設の場合には、各層の打設情報、打継時間・打重ね時間、コンクリート必要量、生コン車の手配時間等の打継情報・打重ね情報の一つ乃至は全部をコンピュータ端末等の記録部(例えば、
図1に示す記録部7等)に記録し、管理する構成とすることが好ましい。かかる構成によれば、施工主への打設品質管理説明が可能であるだけでなく、打設工事資料としての記録データベース化に寄与したり、他の打設工事の際の参考資料としても活用することができる。
【0148】
また、本発明のコンクリート打設管理システムでは、コンクリート打設状況を撮影し、前記した打設情報の記録部と同様に記録部に記録する構成であることが好ましい。
【0149】
更に、本発明のコンクリート打設管理システムでは、打設情報のみならず、締固めバイブレータの振動動作時間、コンクリート内にバイブレータが挿入された位置情報、コンクリートからのバイブレータの引抜き速度、締固めを行った回数情報、の如き各締固め情報の一つ乃至は全部を、表示部に表示する構成としたり、記録部に記録し、管理する構成とすることもできる。かかる構成によれば、コンクリートの打設と締固めというコンクリート打設工事に関する情報を記録して管理したり、表示して確認することが可能となる。このコンクリートの打設と締固めの両方の情報を記録・管理・表示する構成の場合、回転スキャンレーザ・3Dレーザによる検知測定は打設面の高さに加えて締固めバイブレータの位置も検知測定する構成とすることが好ましい。
【0150】
締固めバイブレータ1を検知測定する好ましい3Dレーザとしては、前掲した北陽電機社製 レーザ式測域センサーYVT-35LXを挙げることができ、かかる製品によれば、打設区域3における締固めバイブレータ1の振動部11のコンクリート2への挿入位置の特定が容易である。
【0151】
また、この締固めバイブレータ1の挿入位置の検知測定は、前記した2台の2Dレーザを配設した構成、即ち、長手方向において同じ位置であるが高さと奥行き方向を異なる位置にズラして2台の2Dレーザを配設することにより3Dレーザと同様の立体的な測定を行う構成によっても可能である。締固めバイブレータ1を検知測定する好ましい2Dレーザとしては、前掲した北陽電機社製 レーザ式測域センサーUST-10LXを挙げることができる。
【0152】
以上説明した本発明に係るコンクリート締固めバイブレータ、コンクリート打設管理システムは、ビル等の建築物のコンクリート打設に限らず、橋梁や覆工コンクリート(セントル)等の構築物を含め、全てのコンクリート打設に適用することができ、特に打重ねを行う場合に有効である。
【0153】
続いて、本発明に係るバイブレータ1の他の実施例について説明する。なお、ここで説明する他の実施例の基本的構成は、上述したバイブレータ1の基本的構成と共通するため説明を省略し、異なる構成部分についてのみ説明する。
【0154】
図11は、本発明に係るバイブレータ1の他の実施例を表す部分断面図である。バイブレータ1のうち、振動部11の付近のみが表わされ、
図1等とは異なり、振動部11にホース部14が接続された構成である。
【0155】
図11に示される実施例では、バイブレータ1の振動部11に、バイブレータ1本体とは別部材のセンサー部材15が取り付けられた構成である。ただし、バイブレータ1に直接取り付けられたセンサーと、別部材として構成されるセンサー部材15におけるセンサーの役割に変更はなく、後述するセンサー部材15におけるセンサー(第1センサー15Aと第2センサー15B。)は、上述したセンサー13A・13Bと少なくとも同様の機能を有する。
【0156】
センサー部材15は、第1センサー15Aと第2センサー15Bが設けられ、各センサーには電線15Cが接続され、コネクタ15D等を介して、各センサーからの信号をバイブレータ1の制御部6等に伝達する構成である。
【0157】
第1センサー15Aは、
図1等におけるセンサー13Aに相当し、振動部11の先端部分11Aにおいて、バイブレータ1の振動部11がコンクリート2に挿入された状態であるか否かを検知するセンサーである。
【0158】
第2センサー15Bは、
図1等におけるセンサー13Bに相当し、振動部11の途中部分11B又はホース部14において、バイブレータ1の振動部11がコンクリート2に挿入された深さを検知する、換言すれば、振動部11がコンクリート2内の規定深さまで挿入された状態であるか否かを検知するセンサーである。
【0159】
第2センサー15Bは、
図11に示されるように、長手方向に所定の間隔で複数設けられることが好ましい。例えば、第2センサー15Bを100mm間隔で配設すれば、振動部11の挿入深さを100mm間隔で検知することができるし、規定の挿入深さを100mm間隔で選択することができる。
【0160】
例えば、床スラブのコンクリート打設においては、1回の打設では高さ500~600mmを標準とすることが多いため、第1センサー15Aから最も離れた第2センサー15Bまでの距離を500mm又は600mmとし、その間に配置された第2センサー15Bは、100mm間隔で配置することが好ましい。この構成を採用すれば、床のスラブ厚が500mm以下の場合でも、100mm間隔で所定の深度を設定することができる。
【0161】
また、壁のコンクリート打設においては、1リフト500mm程度を単位とすることが多いが、実際には、500mm以上、例えば、700mmや800mmで施工する場合もある。このような施工に対応するためには、第1センサー15Aから最も離れた第2センサー15Bまでの距離を700mmや800m又はそれ以上とし、その間に配置された第2センサー15Bを100mm間隔で配置すれば、1リフトの高さが低い場合でも100mm間隔での深度設定が可能となる。
【0162】
更にまた、打ち継ぎの場合は、先に打設されたコンクリート層までバイブレータ1を挿入する場合があり、この場合を想定して、第1センサー15Aから最も離れた第2センサー15Bまでの距離を更に100mm又はそれ以上追加しておくことが好ましい。
かかる構成を採用すれば、1回の打設高さ(1リフト)が標準的ではなく例外的である施工に対しても、対応することができる。
【0163】
第1センサー15Aと第2センサー15Bは、それぞれのセンサー素子を近接して2つ以上設けることができる。これは、1箇所のセンサー設置位置、即ち、挿入深さが同じ又は極めて近い位置について、2つ以上のセンサー素子を設けることができるという意味である。これにより、1つのセンサー素子について、故障・破損や汚れの付着等により検知の不具合が生じたとしても、他のセンサー素子により検知することができ、センサー素子の故障等による悪影響を防止することができる。
【0164】
図12は、
図11におけるA-A端面であって、センサー部材15のみを表わした部分端面図である。この
図12では、第1センサー15Aが、同じ挿入深さの円周方向に4つ配置された構成である。この構成であれば、4つのうち1つのセンサー素子に故障等が生じたとしても、他の3つのセンサー素子によって信号が送信される。なお、
図12では、同じ挿入深さに4つのセンサー素子が配設されているが、2つ以上が設置されていれば足りる。
図12では、第1センサー15Aについて示したが、第2センサー15Bにおいても同様に、同じ挿入深さの円周方向に、2つ以上のセンサー素子を配設することができる。
【0165】
電線15Cは、第1センサー15Aと第2センサー15Bに接続され、バイブレータ1の制御部6等に信号を伝達するケーブルである。この電線15Cの末端には、コネクタ15Dが設けられ、バイブレータ1本体側にも同様に設けられたコネクタと容易に脱着可能な構成とすることが好ましい。コネクタ15Dにより接続する構成を採用することにより、例えば、第1センサー15A又は第2センサー15Bに破損や故障が発生したとしても、コネクタ15Dを脱着するだけでセンサー部材15と取替えることができ、バイブレータ1本体には修理等の必要が生じない。
電線15Cやコネクタ15Dについては、この種の分野において用いられる公知公用の電線やコネクタを特別の制限無く採用することができる。
【0166】
また、コネクタ15Dに替えて、無線通信素子を使用することもできる。即ち、センサー部材15から得られる信号を、バイブレータ1本体側に対して、無線で情報を送信することもできる。このため、コネクタ15Dに相当する部材に、無線送信機を設置することができる。使用する無線通信素子について限定はなく、公知公用の無線通信素子を特別の制限なく採用することができる。
【0167】
センサー部材15は、鞘状又は筒状に形成されたカバー部15Eを基材とする。
カバー部15Eは、バイブレータ1の振動部11又はこれに接続されたホース部14に至るまでの部分を被覆する部材である。換言すれば、振動部11等は、このカバー部15Eの内部に挿入される態様で固定され、振動部11にセンサー部材15は装着される。
【0168】
カバー部15Eは、
図11に示されるように、鞘の如き有底の円筒形であることが好ましく、振動部11の外径に適合する形状と大きさであることが好ましい。本願では、この形状を鞘状と言い表すが、サック状等の用語で言い表すこともできる。
また、図示しないが、カバー部15Eは、振動部11を被覆することができる筒状の形状であってもよい。
【0169】
カバー部15の大きさに限定はないが、上述したセンサー間の距離や、一般的なバイブレータの振動部の長さや径を考慮すると、長さは300~500mm、径は40~50mmのものを例示することができる。また、カバー部15の厚さは、1~2mmと薄いことが好ましい。
【0170】
カバー部15Eは、伸縮性を有する材質で形成されることが好ましい。例えば、ゴム系の合成樹脂を挙げることができる。これは、バイブレータ1の振動部11に被せて使用するため、これにフィットすることで、振動部11からカバー部15が脱落することを防ぐためである。
この他、カバー部15Eには、コンクリート2の中に挿入されることを考慮し、耐アルカリ性、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐付着性(生コンクリートと付着し難い性質)等を有することが好ましく、更には、絶縁性、耐熱性等を有することがより好ましい。
【0171】
カバー部15Eの材質に限定はなく、耐アルカリ性、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐付着性、絶縁性、耐熱性等をある程度備えた公知公用の材質を特別の制限無く採用することができる。例えば、テフロン(登録商標)樹脂等を挙げることができる。
【0172】
図11や
図13に示されるように、カバー部15Eには、第1センサー15A、第2センサー15B及び電線15Cが取り付けられるが、これらの部材は、カバー部15Eに埋設されることが好ましい。カバー部15Eに埋設されることによって、第1センサー15A等はカバー部15Eにコーティングされる構成となり、耐アルカリ性、耐水性、耐摩耗性等といったカバー部15Eが有する特性を享受することができる。
【0173】
カバー部15Eは、2以上の材質で形成することができる。
図13に示されるように、カバー部15Eに埋設された第1センサー15A、第2センサー15B及び電線15Cの周辺を、硬質な材質で形成することが好ましい(硬質な材質で形成された部分を、「硬質部分15F」という。)。第1センサー15A、第2センサー15B及び電線15Cは、衝撃等が加えられることによって故障・破損するおそれがあるため、当該部分を硬質の合成樹脂等で形成し、耐衝撃性を向上させることが好ましい。
また、例えば、伸縮性を有する材質で形成されたカバー部15Eの表面に、第1センサー15A、第2センサー15B及び電線15Cを設置し、この上から硬質の合成樹脂等を被覆する手段を採用することができる。
【0174】
図11に示されるように、振動部11の長さよりも、センサー部材15の長さが長い場合には、センサー部材15が振動部11に接続されたホース部14に及ぶ場合がある。一般的なコンクリート締固めバイブレータは、振動部よりもホース部の径が小さいため、振動部11の径に適合するセンサー部材15(特にカバー部15E)との間に空隙が生ずることになり、脱落の原因となる。この場合、センサー部材15とホース部材14の間に、アダプター15Gを設け、空隙を埋めることが好ましい。アダプター15Gの形態や材質に限定はないが、筒状の形状であることが好ましい。
【0175】
続いて、引抜き速度の算出方法について説明する。
引抜き速度とは、コンクリート2に挿入された状態のバイブレータ1を、コンクリート2から引抜く時の速度である。引抜き速度は、第1センサー15Aと第2センサー15Bの信号の時間変化により、算出することができる。
【0176】
詳しくは、第1センサー15Aと第2センサー15Bが共にコンクリート2内に挿入された状態において、第2センサー15Bがコンクリート2から引き抜かれたと検知した時刻から、第1センサー15Aがコンクリート2から引き抜かれたと検知した時刻までの時間T(秒)における、バイブレータ1をコンクリート2から外部へ引き上げた速度(引抜き速度V)である。第1センサー15Aと第2センサー15Bとの距離をL(mm)として表わせば、引抜き速度Vは、次の数式で表すことができる。なお、上記距離Lは、バイブレータ1のコンクリート2へ挿入深さということになる。
引抜き速度 V=L/T(mm/秒)
【0177】
バイブレータ1は、引抜き速度Vを検知することができる構成により、引抜きが適正速度よりも早い場合に生じる空隙の発生を防止することができる。
【0178】
なお、上述した引抜き速度Vの算出方法や、第2センサー15Bが長手方向に所定の間隔で複数設けられる構成等については、
図11等に示される実施例(センサー部材15が振動部11に着脱可能な構成)に関わらず、
図1等に示されるような振動部11にセンサー13A・13Bが直接配設される実施例においても採用することができる。
【0179】
図14は、コンクリート打設時のバイブレータ1の位置と、第1センサー15A及び第2センサー15Bが出力する信号と、バイブレータ1の挿入深さについてのグラフとを、時系列で表わしたものである。
ここで、バイブレータ1における第1センサー15Aから第2センサー15Bまでの距離は、規定された挿入深さLとする。
【0180】
図14において、左から1番目のバイブレータ1は、第1センサー15Aがコンクリート2に挿入された直後の状態である。この状態において、第1センサー15Aからは、信号が出力され、挿入された状態が続く限り、この信号は出力され続ける。なお、この実施例において、第1センサー15Aの出力は5Vであり、コンクリートに挿入され礼ない状態では出力は0(0V)である(第2センサー15Bにおいても同じ。)。
この状態は、バイブレータ1によるコンクリート2への挿入が開始された状態であり、この時刻をt1とする。即ち、挿入開始時刻はt1である。
【0181】
次に、左から2番目のバイブレータ1は、第2センサー15Bがコンクリート2に挿入された直後の状態である。この状態において、第2センサー15Bからは、信号が出力され、挿入された状態が続く限り、この信号は出力され続ける。
この状態は、バイブレータ1によるコンクリート2への挿入が、規定の深さに達した状態であり、この時刻をt2とする。
【0182】
次に、左から3番目のバイブレータ1は、第2センサー15Bがコンクリート2から引抜かれた直後の状態である。この状態において、第2センサー15Bからは、信号の出力が停止される(出力が0になる。)。
この状態は、バイブレータ1によるコンクリート2への挿入深さが、規定の深さから逸脱した状態であり、この時刻をt3とする。時刻t3は、バイブレータ1の引き抜きが開始された時刻ということもできる。
【0183】
ここで、バイブレータ1によるコンクリート2への挿入が規定の深さに達した時刻t2から、挿入深さが規定の深さから逸脱した時刻をt3までの時間は、バイブレータ1が規定の挿入深さで締固め作業を行った時間、換言すれば、バイブレータ1が規定の挿入深さで保持されていた時間である。
【0184】
最後に、左から4番目のバイブレータ1は、第1センサー15Aがコンクリート2から引抜かれた直後の状態である。この状態において、第1センサー15Aからは、信号の出力が停止される(出力が0になる。)。
この状態は、バイブレータ1がコンクリート2から引抜かれた状態であり、この時刻をt4とする。時刻t4は、バイブレータ1による1回の締固め作業が完了した時刻ということもできる。
【0185】
ここで、バイブレータ1の引き抜きが開始された時刻t3から、バイブレータ1がコンクリート2から引抜かれた時刻t4までの時間Tは、コンクリート2からバイブレータ1が引抜かれるのに要した時間である。
即ち、
図14の下部に示されるグラフにおいて、t3からt4までの傾きは、引抜き速度Vである。
【0186】
次に、本発明に係るコンクリート打設管理システムの他の実施例について説明する。
なお、ここで説明する他の実施例は、上述した打設管理システムの構成と共通する構成が多いため、異なる構成についてのみ説明する。
【0187】
ここで説明する打設管理システムの他の実施例は、バイブレータ1による締固め作業を行った位置の把握手段として、映像解析を採用したことが特徴である。
【0188】
即ち、コンクリート2の打設範囲をカメラCによって撮影し、この撮影した映像を解析することによって、締固めバイブレータ1を操作する作業員Eの位置を特定する構成である。締固めバイブレータ1が、コンクリート2に挿入された時刻における作業員Eの位置を映像解析によって特定すれば、コンクリート2の締固めが行われた位置情報を正確に把握することができる。
【0189】
図15は、コンクリートの打設範囲を表わした概略模式図である。
図15に示される実施例では、コンクリートの打設区域3の付近に、カメラC及び基準点マーカーMが設置されており、バイブレータ1を持ち、ヘルメットHを被った作業員Eが作業を行っている。
【0190】
カメラCは、打設区域3を撮影する撮影機材である。撮影された映像は、コンピュータ等に送信され、映像解析が行われる。なお、ここでいう映像には、静止画及び動画が含まれるものとする。
カメラCは、1箇所の打設区域に対して、2台以上設置されることが好ましい。ポンプ車の打設ホースや作業員Eの重なり等が原因で、必要な映像に支障が生じえる。このため、異なる箇所に2台以上のカメラCを設置して、撮影できない箇所を無くすことが有効である。
【0191】
打設区域3には、映像解析において位置の把握(座標の把握)を正確に行うために、基準マーカーMを設置することが好ましい。例えば、位置(座標)を表すマーカーMを、打設範囲の四隅に設置しておくことにより、映像解析の際に打設区域3の映像に記録された作業員Eの位置を、正確に把握することができる。
【0192】
1箇所のコンクリート打設区域3にて、締固めバイブレータ1が複数台同時に稼働している状況、即ち、バイブレータ1による締固めを行う作業員Eが複数いる場合、これらの作業員EのヘルメットHの色を識別することによって、複数ある締固めバイブレータ1のうち、任意の締固めバイブレータ1を特定することが可能である。よって、作業員Eは、異なる色のヘルメットHを被り作業することが好ましい。
ヘルメットMの色で識別する手段の他、ヘルメットMに、映像で判別可能な数字(番号)や記号を表示し、これを映像解析にて識別する手段を挙げることができる。
【0193】
例えば、黄色のヘルメットHを被った作業員E1の作業軌跡を得る場合には、この作業員E1が所持するバイブレータ1aから、コンクリート2への締固め作業を行った時刻(挿入時刻や引抜き時刻等)の情報が、映像解析を行うコンピュータや、このコンピュータがアクセス可能な媒体に送信される。映像解析を行うコンピュータでは、この作業員E1のバイブレータ1aによって締固め作業が行われた時刻において、この作業員E1がいた位置を映像解析にて特定する。換言すれば、バイブレータ1から送信された締固め作業と、映像解析による情報とを、時刻でもって同期する手段である。この映像解析作業を、締固めが行われた時刻毎に繰り返し行うことにより、作業員E1による作業の軌跡を把握することができる。
これらの作業を、すべての作業員に対して行えば、打設区域全体の締固め作業の軌跡を把握することができる。
【0194】
映像を撮影するカメラCに限定はなく、公知公用の映像撮影用のカメラを特別の制限無く採用することができる。
また、コンピュータによる映像解析の具体的手段についても限定はなく、公知公用の映像解析手段を特別の制限無く採用することができる。なお、この映像解析は、動体追跡を行うことができる映像解析手段を含むものである。
【0195】
図16に示されるように、映像解析により得られたコンクリート締固め作業を行った位置情報は、コンクリートの打設範囲(打設区域)を表すマップ(例えば、平面図。)上に、コンクリートの締固め位置を個々にプロットし、このプロットPを、バイブレータの挿入時刻順に線L1でつなぐことで、締固めが行われた位置の軌跡が表示することが好ましい。この表示方法により、作業を行った位置を視覚的に認識し、記録・管理することができる。また、これらのプロットPを、締固めが行われた順に線L1でつなぐことで、作業が行われた軌跡を視覚的に認識し、記録・管理することができ、バイブレータ1によるコンクリートの締固め作業が適正に行われたか否かの確認を、より確実に行うことができる。
【0196】
更に、コンクリート締固めの良否について、各プロットPに所定のマークを付与することで表示することが好ましい。
コンクリート締固めの良否とは、締固め作業が適正に行われたか否かの判断であり、この判断を記号や色で表示することが出来る。例えば、「良」判定の場合は、記号で「○」、色で「赤」等で表わし、「否」や「不良」判定の場合は、記号で「×」、色で「青」等で表示することが出来る。なお、
図16に示される実施例は、「良」判定を「○」で、「不良」判定を「×」で表した例である。これにより、作業状況の評価を視覚的に認識し、記録・管理することができる。
【0197】
コンクリート締固めの良否は、バイブレータ1によるコンクリートの締固め時間、バイブレータ1の挿入深さ及び引抜き速度を判断基準とすることが好ましい。更に、バイブレータ1によるコンクリートの締固め時間、バイブレータ1の挿入深さ及び引抜き速度について所定の値が設定され、この各値を満たしたか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断されることが好ましい。
【0198】
また、別のコンクリート締固めの良否判断として、コンクリートの打設範囲内における所定の領域で、締固め作業の実施回数が規定され、この規定された回数を実施したか否かによって、コンクリート締固めの良否が判断される手段を採用することもできる。
これらの判断手段を採用することで、コンクリートの締固め作業の良否判断を、簡単かつ高精度で行うことができる。
【0199】
上述した映像解析において、バイブレータ1の位置を把握する他、コンクリート打設の状況、即ち、打設途中のコンクリートが、打設範囲3内のどの範囲まで打設されているかを時刻毎に把握することが好ましい。
図15において、L2で符号で示される線は、コンクリート打設された範囲の境界を表す線であり、打設面の底面における境界線である。
図15においては、境界線L2の左側はコンクリート打設がされた箇所、右側はコンクリート打設がされていない箇所ということになる。
上記した境界線L2は、
図16に示されるコンクリート打設範囲を表すマップにおいても、プロットPや軌跡を表す線L1と共に表示されることが好ましい。
【0200】
更に、上述した映像解析において、打設面の高さや範囲、凹凸の有無など、打設面の形状も解析し、把握できることが好ましい。また、この打設面の形状が、打設区域におけるどの位置の形状であるかも、映像解析によって把握できることが好ましい。
打設面の形状とその位置を把握できることによって、例えば、型枠に振動を与えて打設されたコンクリート内の気泡を抜く作業(あばたを低減するための作業)において、型枠の外側にいる作業員が、型枠内のコンクリートの形状や打設面を把握できることにより、型枠の叩くべき位置を正確に把握することができ、作業効率を著しく向上させることができる。
【0201】
特に、型枠内の様子を窺うことができない環境においては、打設面の位置や型枠内のコンクリートの形状を把握することが困難であり、映像解析によって打設面の形状や位置を把握できれば極めて有意である。なお、型枠内の様子を窺うことができない環境とは、下階の壁面と上階の床スラブを同時に打設するような環境である。壁面又は床スラブのいずれかのみを打設する場合には、型枠の上方から他の作業員が内部を観察し、その様子を型枠を叩く作業員に伝えることができる。しかし、下階の壁面と上階の床スラブを同時に打設するような環境は、特に壁面の打設状況を上方から目視することが困難であるか、上方から観察する作業員と型枠を叩く作業員との位置が、型枠の内外に分かれて直接情報を伝達できない環境になるため、映像解析によって打設面の形状や位置が解析され、その解析結果が作業員に伝達される方法が有意である。
【0202】
上述した映像解析による打設面の形状や位置を解析結果は、視覚的に把握し易い方法でモニタ装置等に表示させ、このモニタ装置を、型枠を叩く作業員が目視する方法が好ましい。ここで使用されるモニタ装置として、モバイル型のモニタ(例えば、タブレット端末)を例示することができる。また、上記解析結果をモニタ装置に伝達(送信)する手段に限定はないが、例えば、無線等の技術により情報を送信する手段を挙げることができる。
【符号の説明】
【0203】
1 コンクリート締固めバイブレータ
11 振動部
11A 先端部分
11B 途中部分
12 グリップ部
12A スイッチ部
12B 配線部
13A センサー
13B センサー
14 ホース部
15 センサー部材
15A 第1センサー
15B 第2センサー
15C 電線
15D コネクタ
15E カバー部
15F 硬質部分
15G アダプター
2 コンクリート
3 打設区域
31 取付部
32 鉄筋
4 型枠
5 電源部
6 制御部
7 記録部
8 表示部
8A コンピュータ端末等のディスプレイ
8B 携帯端末
9A 生コン工場
9B コンクリートミキサー車
9C コンクリートポンプ車
S1 回転スキャンレーザ又は3Dレーザ
S2 回転スキャンレーザ又は3Dレーザ
S3 3Dレーザ
S4 3Dレーザ
C カメラ
M 基準マーカー
E 作業員
H ヘルメット
P プロット
L1 軌跡を表す線
L2 境界線