(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179857
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
B60D 1/04 20060101AFI20221129BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20221129BHJP
B62D 43/10 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60D1/04 A
B62D25/20 L
B62D43/10
B62D25/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086634
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】新田 貴志
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB07
3D203BB25
3D203BB29
3D203CB03
3D203CB40
3D203DB03
(57)【要約】
【課題】本発明は、荷室を広くした車両後方構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る車両後部構造1は、リアフロアパン2と、前記リアフロアパン2の上部に配置される収納部材4と、前記リアフロアパン2の後端かつ下部に、下方に突出するように設けられるフック部材6と、を備え、前記フック部材6は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ前記収納部材4と上下方向に重ならない位置に設けられることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアフロアパンと、
前記リアフロアパンの上部に配置される収納部材と、
前記リアフロアパンの後端かつ下部に、下方に突出するように設けられるフック部材と、
を備えた車両後部構造において、
前記フック部材は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ前記収納部材と上下方向に重ならない位置に設けられることを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記フック部材は、取付座部を介して前記リアフロアパンに設けられ、
前記取付座部は、前記リアフロアパンの前記下部に設けられたリアフロア底部と車幅方向に面するリアフロア側壁部とにより形成されるリアフロア稜線部を跨ぐように取り付けられる、請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記取付座部は、
前記リアフロア側壁部に沿うように設けられる側壁部と、
前記側壁部と同一方向に連続して設けられる取付フランジ部と、を有し、
前記取付フランジ部は、前記リアフロア側壁部に取り付けられる、請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記リアフロアパンは、車幅方向外側の端部に設けられ、上方に凹形状であるフック凹部を有し、
前記フック部材は、前記フック凹部に設けられる、請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記取付座部の前端部は、前記リアフロアパンの前記下部に設けられたクロスメンバに連結している、請求項2に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の下部において、牽引やジャッキアップに利用するフック部材が車両幅方向中央寄りに設けられている車両後部構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両後部構造のように、車両幅方向中央寄りにフック部材を設ける場合、フック部材が下方に突出することになる。このため、リアフロアの位置は、フック部材の突出した寸法分だけ、上方に高くなる。リアフロアの位置が高くなると、それに伴い荷室が狭くなる。
【0005】
そこで本発明は、下方に突出するフック部材を設けつつ、従来技術と比較して荷室を広く確保できる車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る車両後部構造は、以下の構成を有する。
[1]本発明の一態様に係る車両後部構造(例えば、実施形態の車両後部構造1の一例)は、リアフロアパン(例えば、実施形態のリアフロアパン2の一例)と、前記リアフロアパンの上部に配置される収納部材(例えば、実施形態の収納部材4の一例)と、前記リアフロアパンの後端かつ下部に、下方に突出するように設けられるフック部材(例えば、実施形態のフック部材6の一例)と、を備えた車両後部構造において、前記フック部材は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ前記収納部材と上下方向に重ならない位置に設けられることを特徴とする。
【0007】
[2]上記車両後部構造において、前記フック部材は、取付座部を介して前記リアフロアパンに設けられ、前記取付座部は、前記リアフロアパンの前記下部に設けられたリアフロア底部(例えば、実施形態のリアフロア底部24の一例)と車幅方向に面するリアフロア側壁部(例えば、実施形態のリアフロア側壁部21の一例)とにより形成されるリアフロア稜線部(例えば、実施形態のリアフロア稜線部22の一例)を跨ぐように取り付けられてもよい。
【0008】
[3]上記車両後部構造において、前記取付座部は、前記リアフロア側壁部に沿うように設けられる側壁部(例えば、実施形態の側壁部51の一例)と、前記側壁部と同一方向に連続して設けられる取付フランジ部(例えば、実施形態の取付フランジ部52の一例)と、を有し、前記取付フランジ部は、前記リアフロアパンの前記リアフロア側壁部に取り付けられてもよい。
【0009】
[4]上記車両後部構造において、前記リアフロアパンは、車幅方向外側の端部に設けられ、上方に凹形状であるフック凹部(例えば、実施形態のフック凹部26の一例)を有し、前記フック部材は、前記フック凹部に設けられてもよい。
【0010】
[5]上記車両後部構造において、前記取付座部の前端部は、前記リアフロアパンの前記下部に設けられたクロスメンバ(例えば、実施形態のクロスメンバ3の一例)に連結してもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記[1]の構成において、フック部材は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ収納部材と上下方向に重ならない位置に設けられるため、リアフロアパンの位置を低くして収納部材(スペアタイヤや工具等)を収納可能な荷室のスペースを確保しつつ、フック部材を設けることができる。そのため、車両幅方向中央寄りにフック部材を設ける場合に比べて、リアフロアパンの位置を低くすることができ、その結果、荷室を広くすることができる。
【0012】
上記[2]の構成において、取付座部は、リアフロア稜線部を跨ぐように取り付けられている。リアフロア稜線部は、リアフロア稜線部以外の部分よりも剛性が高いため、パッチ部材等を多く設けることなく、フック部材を介したジャッキアップや牽引を行うための、取付座部の強度を容易に確保することができる。
【0013】
上記[3]の構成において、取付フランジ部が、車幅方向に面する側面に取り付けられているので、取付座部の折れ部を削減することができ、取付座部の強度低下を防止できる。
【0014】
上記[4]の構成において、フック部材は、リアフロアパンのフック凹部に設けられるため、フック凹部を除いたリアフロアパンの位置を低くすることができる。したがって、従来技術と比較して荷室を広く確保できる。また、フック部材は、側面視でリアフロアパンからの車両下方への飛び出し量が少ないため、外観上目立たず、意匠性を損なわない。
【0015】
上記[5]の構成において、取付座部の前端部は、リアフロアパンの下部に設けられたクロスメンバに連結しているため、フック部材に入力されるジャッキアップ時の荷重や衝突荷重をクロスメンバに伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両後部構造の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両後部構造の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両後部構造の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両後部構造の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両後部構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の形状、寸法比率等は図示するものに限らないものとする。
【0018】
<車両後部構造1>
図1は、車両後部構造1の平面図である。
図2は、車両後部構造1の斜視図である。
図3は、車両後部構造1の平面図である。
図4は、車両後部構造1の斜視図である。
図5は、車両後部構造1の側面図である。
図1~5は、車両後部構造1を部分的に示している。
図1~5において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方(乗車者の左手側方向)を指すものとする。また、前後や上下、左右については、車両に対して向きを意味する。
【0019】
車両後部構造1は、例えば乗員が乗り込む車室と、車室より後方に位置する荷室(いずれも不図示)と、が別々に設けられた車両に適用される。車両後部構造1は、荷室側に設けられている。車両後部構造1は、リアフロアパン2と、クロスメンバ3と、収納部材4(
図3参照)と、取付座部5と、フック部材6と、を備える。
【0020】
リアフロアパン2は、車両の下部に設けられ、荷室の床面を構成している。リアフロアパン2は、一対のリアフロア側壁部21と、一対のリアフロア稜線部22と、リアフロア後壁部23と、リアフロア底部24と、を有する。リアフロア側壁部21と、リアフロア稜線部22と、リアフロア後壁部23と、リアフロア底部24とは、板状部材をプレス加工することにより形成されている。
【0021】
リアフロア側壁部21は、リアフロアパン2の左右両側に設けられている。リアフロア側壁部21は、車幅方向に面する側面を有する。リアフロア側壁部21は、前後方向に沿って設けられている。リアフロア側壁部21は、下方に向かうに従い、車幅方向の内側に傾斜している。
【0022】
リアフロア側壁部21の下端には、リアフロア稜線部22が設けられている。リアフロア稜線部22は、前後方向に沿って設けられている。リアフロア稜線部22は、車幅方向の外側かつ車両の下方に向かって凸状になっており、滑らかに湾曲している。リアフロア稜線部22の左右方向の他端(リアフロア側壁部21の下端とは反対側)は、車両の内側に位置する。
【0023】
リアフロア後壁部23は、リアフロア側壁部21およびリアフロア稜線部22の後端に設けられている。リアフロア後壁部23は、下方に向かうに従い、前方に傾斜している。リアフロア後壁部23と、リアフロア側壁部21およびリアフロア稜線部22とは、滑らかに連続して設けられている。
【0024】
リアフロア底部24は、左右一対のリアフロア稜線部22の間に設けられている。(リアフロア稜線部22は、リアフロア底部24と、リアフロア側壁部21との間に設けられている。)リアフロア底部24は、リアフロア後壁部23の前端に設けられている。リアフロア底部24は、上下方向に面している。
リアフロア底部24は、収納凹部25と、フック凹部26と、を有する。
【0025】
図1に示すように、収納凹部25は、車両後部において、車幅方向の中央に設けられている。収納凹部25は、リアフロア底部24が下方に凹むように湾曲形成される。収納凹部25のうち、前後方向における中間部よりも前方の部分は、前方に向かって次第に幅が狭くなっている。
【0026】
収納部材4(
図3参照)は、収納凹部25の上部に配置される。具体的に、収納部材4は、荷室内に配置される。収納部材4は、例えば、スペアタイヤ4aや工具4bなどである。
【0027】
図2に示すように、フック凹部26は、リアフロアパン2における車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置に設けられている。フック凹部26は、収納凹部25または収納部材4と上下方向で重ならない位置に設けられている。本実施形態において、フック凹部26は、リアフロアパン2における車両後方の右側端部に設けられている。フック凹部26は、平面視において、長方形状であり、上方に凹形状である。フック凹部26の長手方向は、車両の前後方向に沿っている。
【0028】
クロスメンバ3は、リアフロアパン2の下部に設けられている。クロスメンバ3は、車幅方向に沿って延びる金属プレートからなる。具体的に、クロスメンバ3は、リアフロアパン2の下面に溶接により固定されている。
クロスメンバ3は、車幅方向に延びる底壁3aと、底壁3aの前端部から上方に起立する前縦壁3bと、底壁3aの後端部から上方に起立する後縦壁3cと、を有している。また、クロスメンバ3の左右両端は、クロスメンバ稜線部3dが設けられている。クロスメンバ稜線部3dは、リアフロア稜線部22の湾曲に沿って湾曲している。
【0029】
取付座部5は、ジャッキを接続するジャッキポイントとして機能する。取付座部5は、平面視において長方形状の部材であり、長手方向が前後方向に沿っている。取付座部5は、フック凹部26の下面に設けられている。具体的に、取付座部5は、リアフロア底部24の下面とリアフロア側壁部21とに、溶接により固定される。さらに具体的に、取付座部5は、リアフロア底部24とリアフロア側壁部21との間に設けられているリアフロア稜線部22を跨ぐように取り付けられている。
取付座部5の前端部は、クロスメンバ3に連結している。具体的に、取付座部5の前端部は、クロスメンバ3の底壁3aおよびクロスメンバ稜線部3dに連結している。
【0030】
取付座部5は、側壁部51と、取付フランジ部52と、を有している。
側壁部51は、一対のリアフロア側壁部21のうち、右側のリアフロア側壁部21の外側面に沿うように設けられている。
取付フランジ部52は、側壁部51と同一方向に連続して設けられている。取付フランジ部52は、右側のリアフロア側壁部21の外側面に取り付けられている。本実施形態において、取付フランジ部52は、リアフロア側壁部21に対して溶接により固定されている。
【0031】
フック部材6は、車両に牽引ロープを取り付けるための牽引フックやジャッキポイントとして機能する。フック部材6は、金属製の棒状部材によって形成されている。フック部材6の長手方向は、前後方向に沿っている。
フック部材6は、リアフロアパン2の後端かつ下部に、下方に突出するように設けられている。具体的に、フック部材6は、取付座部5を介してリアフロアパン2のフック凹部26に設けられている。すなわち、フック部材6は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ収納凹部25と上下方向で重ならない位置に設けられている。
【0032】
図5に示すように、フック部材6は、湾曲部61と、固定部62と、を有している。
湾曲部61は、側面視において、上方に開口するU字状に形成されている。湾曲部61は、リアフロアパン2のリアフロア底部24に直接設ける場合に比べて、側面視で車両下方への飛び出し量が少ない。湾曲部61の一端は、リアフロア後壁部23よりも後方に位置し、取付座部5よりも上方に延びている。湾曲部61の他端は、湾曲部61の一端よりも下方に位置している。湾曲部61の他端は、固定部62に接続している。
固定部62は、取付座部5の下面に沿って前方に延びている。固定部62は、取付座部5の下面に溶接により固定されている。
【0033】
<効果>
以下、本実施形態の効果について説明する。
上記実施形態において、フック部材6は、車幅方向中央よりも車幅方向外側の位置かつ収納部材4と上下方向に重ならない位置に設けられるため、リアフロアパン2の位置を低くして収納部材4(スペアタイヤや工具等)を収納可能な荷室のスペースを確保しつつ、フック部材6を設けることができる。そのため、車両幅方向中央寄りにフック部材を設ける場合に比べて、リアフロアパン2の位置を低くすることができ、その結果、荷室を広くすることができる。
【0034】
上記実施形態において、取付座部5は、リアフロア稜線部22を跨ぐように取り付けられている。リアフロアパン2の稜線部分(リアフロア稜線部22)は、稜線部分以外の部分よりも剛性が高いため、パッチ部材等を多く設けることなく、フック部材を介したジャッキアップや牽引を行うための、取付座部5の強度を容易に確保することができる。
【0035】
上記実施形態において、取付フランジ部52が、リアフロア側壁部21に取り付けられているので、取付座部5の折れ部を削減することができ、取付座部5の強度低下を防止できる。
【0036】
上記実施形態において、フック部材6は、リアフロアパン2のフック凹部26に設けられるため、フック凹部26を除いたリアフロアパン2の位置を低くすることができる。したがって、従来技術と比較して荷室を広く確保できる。また、フック部材6は、リアフロアパン2からの側面視で車両下方への飛び出し量が少ないため、外観上目立たず、意匠性を損なわない。
【0037】
取付座部5の前端部は、リアフロアパン2の下部に設けられたクロスメンバ3に連結しているため、フック部材6に入力されるジャッキアップ時の荷重や衝突荷重をクロスメンバ3に伝達することができる。
【0038】
<その他の変形例>
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0039】
上記実施形態において、フック凹部26は、車両後方の右側端部に設けられている構成について説明したが、これに限られない。フック凹部26は、車両後方の左側端部に設けられていてもよい。この場合、取付座部5およびフック部材6は、車両後方の左側端部に設けられたフック凹部26の下部に設けられ、上記実施形態と左右対称になる。
【符号の説明】
【0040】
1…車両後部構造、2…リアフロアパン、3…クロスメンバ、3d…クロスメンバ稜線部、4…収納部材、5…取付座部、6…フック部材、21…リアフロア側壁部、22…リアフロア稜線部、24…リアフロア底部、26…フック凹部、51…側壁部、52…取付フランジ部