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2022-179942コンプライアンス機構およびコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179942
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コンプライアンス機構およびコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B25J17/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086768
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻川 勝裕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BS10
3C707BT18
3C707ES03
3C707EU11
3C707EW03
3C707KS33
3C707KX06
3C707MT03
3C707NS17
(57)【要約】
【課題】構造を単純化できて省スペース化を図れるコンプライアンス機構等を提供する。
【解決手段】コンプライアンス機構は、重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させる自動機のエンドエフェクタに取り付けられるコンプライアンス機構であって、エンドエフェクタに保持される保持機構と、保持機構の下方に配置され、重力方向に貫通してワークを保持するワーク保持孔を有する可動機構と、保持機構および可動機構の外面に取り付けられ、可動機構を保持機構に対して移動可能に連結するシート状の弾性部材である弾性連結機構とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させる自動機のエンドエフェクタに取り付けられるコンプライアンス機構であって、
前記エンドエフェクタに保持される保持機構と、
前記保持機構の下方に配置され、前記重力方向に貫通して前記ワークを保持するワーク保持孔を有する可動機構と、
前記保持機構および前記可動機構の外面に取り付けられ、前記可動機構を前記保持機構に対して移動可能に連結するシート状の弾性部材である弾性連結機構とを有するコンプライアンス機構。
【請求項2】
前記弾性連結機構は、平面視において前記保持機構および前記可動機構を挟むようにして少なくとも一対設けられている請求項1記載のコンプライアンス機構。
【請求項3】
前記保持機構には、前記重力方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記可動機構の前記ワーク保持孔は、前記貫通孔に連通し、前記貫通孔よりも開口面積が大きく形成されており、
前記保持機構は、前記貫通孔の前記可動機構側の開口の周縁部から前記ワーク保持孔内に突出する突出部で形成された第1可動リミッタを有し、前記第1可動リミッタにより前記可動機構の可動範囲が制限されている請求項1または請求項2記載のコンプライアンス機構。
【請求項4】
前記保持機構および前記可動機構を上下に重ねた状態の一体物は、前記重力方向をZ方向とするとき、前記Z方向に直交するX方向に対向する2面と、前記Z方向および前記X方向に直交するY方向に対向する2面とを有し、
前記X方向に対向する2面には、前記保持機構と前記可動機構との境界部分を上下に跨ぐように前記弾性連結機構が取り付けられ、
前記Y方向に対向する2面には、前記保持機構と前記可動機構との境界部分を上下に跨ぐように形成された挿入溝に、前記可動機構の前記Z方向および前記Y方向の可動範囲を制限する第2可動リミッタが挿入されて固定されている請求項2記載のコンプライアンス機構。
【請求項5】
前記第2可動リミッタは、L字型であり、
前記挿入溝は、前記X方向に直交する平面で切断した断面形状がL字型であり、
前記挿入溝において前記第2可動リミッタの前記Z方向の一端部が挿入される部分が、前記一端部の前記X方向の幅よりも長くなるように前記X方向に延びて形成され、
前記挿入溝において前記第2可動リミッタの前記Z方向の他端部が挿入される部分が、前記他端部と同一形状に形成されており、
前記第2可動リミッタの前記一端部は前記Y方向に延びる第1部を有し、前記第1部が前記挿入溝に挿入されて前記第2可動リミッタの前記Z方向の可動範囲が制限され、前記他端部が前記挿入溝に挿入されて前記Y方向の可動範囲が制限されている請求項4記載のコンプライアンス機構。
【請求項6】
前記保持機構と前記可動機構とを連結するシート状の非弾性連結機構を備え、前記非弾性連結機構が、前記保持機構および前記可動機構を上下に重ねた状態の一体物の外面に、前記保持機構と前記可動機構との境界部分を上下に跨ぐように、たるみを持った状態で取り付けられている請求項1または請求項2記載のコンプライアンス機構。
【請求項7】
請求項1または請求項2記載のコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置であって、
前記自動機のロボットアームの先端部と前記エンドエフェクタとの間に設置された力覚センサと、
前記力覚センサの計測結果と前記エンドエフェクタの前記重力方向の位置とに基づいて前記弾性連結機構の弾性力の低下を診断する診断部とを備えたコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置。
【請求項8】
前記自動機は、前記ワークの被差し込み部への挿抜動作を行うものであり、
前記診断部は、前記力覚センサの計測結果に基づき前記ワークが前記被差し込み部から引き抜かれたタイミングを検知し、このタイミングにおける前記エンドエフェクタの前記重力方向の位置に基づいて前記弾性連結機構の弾性力の低下を診断する請求項7記載のコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置。
【請求項9】
警告を報知する報知部を備え、
前記診断部は、前記エンドエフェクタの前記重力方向の位置を示す座標値が予め設定された設定値を超えた場合、前記報知部から前記警告を報知させる請求項8記載のコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ等の挿入物の位置ずれを吸収するためのコンプライアンス機構およびコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いて位置決めピンまたはコネクタ等の挿入物を被挿入部に挿入する際には、ロボットは、ロボットアームの先端部に取り付けられたエンドエフェクタが保持する挿入物を予め設定された位置に移動させ、被挿入部に挿入する。しかし、挿入物と被挿入部との間に位置誤差があると、挿入物を被挿入部に挿入できなかったり、挿入物または被挿入部が破損したりするなどの問題が生じる。このため、従来、このような位置誤差を吸収してエンドエフェクタが保持した挿入物を被挿入部に挿入できるようにした技術がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の加工装置は、矩形状の支持部と、支持部の下面に固定され、挿入物を把持するエンドエフェクタと、支持部の上面とロボットアームの先端部との間に配置されて両者を連結するばね等の弾性部とを備えたコンプライアンス機構を有する。このコンプライアンス機構は、エンドエフェクタで把持した挿入物を被挿入部に挿入する際に、弾性部の弾性力を用いて位置誤差を吸収するようにしている。
【0004】
ここで、特許文献1のコンプライアンス機構は、エンドエフェクタがロボットアームに弾性部で吊り下げられた状態にある。このため、挿入物を横向きにしてエンドエフェクタを左右方向に移動させて行う挿入作業では、エンドエフェクタと挿入物との重量が弾性部に作用して弾性部が撓んで挿入物の位置を制御できなくなる。このため、特許文献1のコンプライアンス機構は、支持部を着脱自在に挟み込む一対の固定部を備え、エンドエフェクタを左右方向に移動させて作業を行う際には、一対の固定部で支持部を支持した状態で行うようにしている。特許文献1では、上記構成により、エンドエフェクタの動作を限定することなく、エンドエフェクタが垂直移動動作または水平移動動作など汎用的な動作を行いつつ位置誤差を吸収できる装置構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-175492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、コンプライアンス機構が機能する場合のエンドエフェクタの動作に汎用性を持たせるため、一対の固定部が必要となり、装置構成が大型化するという問題があった。
【0007】
また、コンプライアンス機構が弾性部を備えているため、弾性部に引っ張り荷重が繰り返し作用することで弾性力が低下し、破断に至る可能性がある。特許文献1では弾性部の破断を未然に防ぐために弾性部の弾性力の低下を診断する点について検討されていない。
【0008】
本開示は、上記のような課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、構造を単純化できて省スペース化を図れるコンプライアンス機構およびコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るコンプライアンス機構は、重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させる自動機のエンドエフェクタに取り付けられるコンプライアンス機構であって、エンドエフェクタに保持される保持機構と、保持機構の下方に配置され、重力方向に貫通してワークを保持するワーク保持孔を有する可動機構と、保持機構および可動機構の外面に取り付けられ、可動機構を保持機構に対して移動可能に連結するシート状の弾性部材である弾性連結機構とを有するものである。
【0010】
本開示に係るコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置は、自動機のロボットアームの先端部とエンドエフェクタとの間に設置された力覚センサと、力覚センサの計測結果とエンドエフェクタの重力方向の位置とに基づいて弾性連結機構の弾性力の低下を診断する診断部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コンプライアンス機構が取り付けられるエンドエフェクタの動作を、重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させる動作に限定している。エンドエフェクタの動作を限定することで、エンドエフェクタに取り付けられたコンプライアンス機構のコンプライアンス動作を実現する弾性連結機構を、シート状の弾性部材にすることができてコンプライアンス機構の構造を単純化できる。また、弾性連結機構がシート状であるため、コンプライアンス機構の省スペース化が図れる。また、本開示によれば、力覚センサの計測結果とエンドエフェクタの重力方向の位置とに基づいて上記コンプライアンス機構の弾性連結機構の弾性力の低下を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るコンプライアンス機構を備えた自動試験機の概略図である。
図2】実施の形態1に係るコンプライアンス機構がエンドエフェクタに取り付けられた状態を示す概略断面図である。
図3】実施の形態1に係るコンプライアンス機構の概略斜視図である。
図4】実施の形態1に係るコンプライアンス機構を備えた自動試験機における自動試験形態の概念図である。
図5】実施の形態1に係るコンプライアンス機構を用いた試験機コネクタの供試体コネクタへの挿入前の位置関係を示す図である。
図6】実施の形態1に係るコンプライアンス機構を用いた試験機コネクタの供試体コネクタへの挿入時の位置関係を示す図である。
図7】実施の形態2に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。
図8】実施の形態2に係るコンプライアンス機構の第1可動リミッタの作用説明図である。
図9】実施の形態3に係るコンプライアンス機構の分解斜視図である。
図10】実施の形態3に係るコンプライアンス機構の概略斜視図である。
図11】実施の形態3に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。
図12】実施の形態4に係るコンプライアンス機構をX方向から見た側面図である。
図13】実施の形態4に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。
図14】実施の形態4に係るコンプライアンス機構のX方向のコンプライアンス動作時の状態をY方向から見た概略断面図である。
図15】実施の形態4に係るコンプライアンス機構の弾性連結機構のZ方向の伸長時の状態をX方向から見た側面図である。
図16】実施の形態5に係るコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置を用いた診断システムの概略図である。
図17】実施の形態5に係るコンプライアンス機構にて保持した試験機コネクタの供試体コネクタからの引抜き時の力覚センサの計測結果を示すグラフである。
図18図17の(1)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。
図19図17の(3)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。
図20図17の(4)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。
図21】実施の形態5に係る弾性力低下診断装置における計測フローチャートである。
図22】実施の形態5に係る弾性力低下診断装置における計測結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさおよび配置等は、この発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0014】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構を備えた自動試験機の概略図である。図1には、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示している。以下の説明では、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれの矢印が延びる方向を+方向、+方向の逆方向を-方向とし、X方向の+方向を+X方向、-方向を-X方向という。Y方向およびZ方向についても同様の記載とする。
【0015】
図1に示すように、自動試験機は、自動機であるロボット100と、ロボット100のロボットアームの先端部に固定されたエンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10に取り付けられ、ワークを保持するコンプライアンス機構1とを備えている。ここでは、エンドエフェクタ10が、ワークとしてオスコネクタである試験機コネクタ50を保持する。試験機コネクタ50は、後述の供試体60の供試体コネクタ61に差し込まれて電気的な試験を行うものである。また、自動試験機は、供試体置き台70を有し、供試体置き台70には、メスコネクタである供試体コネクタ61が実装された供試体60が置かれている。供試体60は例えばモータのコントローラの完成品などである。
【0016】
ここでは、一例として自動試験機が以下の動作を行う場合を想定している。まず、自動試験機は、エンドエフェクタ10を重力方向に下降(以下、-Z方向に移動という)させ、試験機コネクタ50を作業位置である供試体コネクタ61への差し込み位置に移動させる。試験機コネクタ50が供試体コネクタ61に差し込まれた状態で、製品出荷前の電気的な試験が行われる。試験終了後、自動試験機は、エンドエフェクタ10を+Z方向に移動させて試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜き、供試体置き台70の上方の待機位置に移動させる。そして、自動試験機は、エンドエフェクタ10をXY平面方向に移動させて退避位置に退避させる。エンドエフェクタ10が退避している間に、供試体置き台70上の供試体60が次の供試体60に取り換えられる。
【0017】
そして、供試体60の取り換えが完了した後、自動試験機は、エンドエフェクタ10を退避位置から待機位置に向けてXY平面方向に移動させ、待機位置から作業位置に向けて-Z方向に移動させる。自動試験機は、試験中、上記の動作を繰り返す。
【0018】
図2は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構がエンドエフェクタに取り付けられた状態を示す概略断面図である。図3は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構の概略斜視図である。
コンプライアンス機構1は、エンドエフェクタ10に真空圧の空圧等により保持された保持機構20と、試験機コネクタ50を把持する可動機構30と、保持機構20と可動機構30とを連結する弾性連結機構40とを備えている。コンプライアンス機構1は、重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させるロボット100のエンドエフェクタ10用として用いられる。
【0019】
保持機構20は、直方体形状であり、中央部には上下方向に貫通する貫通孔20aが形成されている。保持機構20は金属製または樹脂製の部材で構成されている。保持機構20は、エンドエフェクタ10に保持され、可動機構30をエンドエフェクタ10に連結する部分である。可動機構30は、直方体形状であり、中央部には上下方向にワーク保持孔30aが形成されている。可動機構30は金属製または樹脂製の部材で構成されている。可動機構30は保持機構20の下方に保持機構20と接触して配置されている。貫通孔20aおよびワーク保持孔30aは、上下方向に連通している。貫通孔20aおよびワーク保持孔30aの断面形状は特に限定するものではないが、本明細書では矩形状に構成されているものとする。また、保持機構20および可動機構30の形状は、直方体形状に限られたものではなく、多角形状などとしてもよい。
【0020】
可動機構30は、試験機コネクタ50をワーク保持孔30a内に挿入した状態でネジ止めなどにより試験機コネクタ50を固定的に保持している。可動機構30のワークの保持方法はネジ止めによる固定方法に限られず、着脱自在に保持する保持方法としてもよい。着脱自在に保持する保持方法としては、例えば、磁力を用いて保持状態と非保持状態とに切り替えられる方法などを用いればよい。
【0021】
コンプライアンス機構1は、保持機構20の貫通孔20aと可動機構30のワーク保持孔30aとが連通して形成された配線通し孔を有する。配線通し孔には、試験機コネクタ50の配線51が通され、試験機コネクタ50の配線51の端部が図示しない試験機側の計器類に接続されて電気的な試験が行われるようになっている。
【0022】
弾性連結機構40は、シート状の弾性部材から構成され、保持機構20および可動機構30の外面に取り付けられて保持機構20と可動機構30とを連結している。弾性連結機構40は、保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物の外面に取り付けられて保持機構20と可動機構30とを連結している。弾性連結機構40は、保持機構20と可動機構30との境界部分を上下に跨ぐようにして取り付けられ、保持機構20と可動機構30とを連結している。弾性連結機構40は、上記の様にして前記一体物の外面に取り付けられることで、この外面に直交する方向に、可動機構30を保持機構20に対して移動可能に連結している。
【0023】
弾性連結機構40は、4つあり、保持機構20および可動機構30をそれらの周囲の4面で連結している。なお、弾性連結機構40は4つに限られたものではなく、平面視において保持機構20および可動機構30を挟むようにして少なくとも一対設けられていればよい。弾性連結機構40は、少なくとも保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物を挟んで対向して一対あればよい。弾性連結機構40の弾性部材の素材は、後述する方法で選定したばね定数を持つ素材であればよく、例えばゴムあるいはシリコン樹脂等から選定すればよい。弾性連結機構40の保持機構20および可動機構30への固定は、例えばエポキシ樹脂による接着が挙げられるがこれに限らず、ネジ止めによる他の固定方法でもよい。
【0024】
コンプライアンス機構1は、保持機構20、可動機構30、弾性連結機構40および試験機コネクタ50の一体物となっており、この一体物が上述したように空圧によりエンドエフェクタ10に保持されている。
【0025】
上記構成のコンプライアンス機構1は、可動機構30がXY平面方向の外力を受けると、弾性連結機構40がXY平面方向に伸長することで可動機構30を外力の方向に移動させるコンプライアンス動作を行う。コンプライアンス動作の詳細については改めて説明する。
【0026】
図4は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構を備えた自動試験機における自動試験形態の概念図である。
まず作業者は供試体置き台70に供試体コネクタ61を有する供試体60を置く。このとき、作業者は、供試体置き台70に取り付けられた位置決めピン71に、供試体60に設けられた位置決め穴(図示せず)が挿入されるように供試体60を供試体置き台70に押し当てることで供試体60の位置決めを行う。供試体60は、位置決めされて供試体置き台70上に載置されるものの、供試体60から供試体コネクタ61までの構成物の集積誤差がのるために、供試体コネクタ61のXY平面方向の位置は必ずしも毎回同じなわけではなく、正規の位置からずれることがある。
【0027】
エンドエフェクタ10は、試験開始時、退避位置に退避している。そして、作業者は供試体60を供試体置き台70にセット後、図示しない試験開始指示を行う。これにより、エンドエフェクタ10は、退避位置から供試体置き台70の上方の待機位置に移動した後、作業位置に向けて-Z方向に移動し、コンプライアンス機構1を用いて保持した試験機コネクタ50を供試体コネクタ61に挿入する挿入動作を行う。挿入前後の試験機コネクタ50、コンプライアンス機構1および供試体コネクタ61の位置関係を次の図5および図6に示す。
【0028】
図5は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構を用いた試験機コネクタの供試体コネクタへの挿入前の位置関係を示す図である。図6は、実施の形態1に係るコンプライアンス機構を用いた試験機コネクタの供試体コネクタへの挿入時の位置関係を示す図である。
【0029】
上述したように、供試体コネクタ61の位置は必ずしも毎回同じなわけではなく、図5に示すように試験機コネクタ50と供試体コネクタ61との間に位置誤差が生じることがある。このような位置誤差がある状態で試験機コネクタ50が-Z方向にゆっくりと下降すると、図6に示すように試験機コネクタ50の下端部が、供試体コネクタ61の上端部に形成されたテーパー部61aに接触して斜め上方向の反力Fを受ける。テーパー部61aは、供試体コネクタ61の上方端に向かって外方に広がる壁部であり、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61に挿入する際のガイドとなるガイド壁である。
【0030】
コンプライアンス機構1の弾性連結機構40は、この斜め上方向の反力FのX成分およびY成分によりXY平面方向に伸長する。これにより、試験機コネクタ50はテーパー部61aに倣う形で移動し、試験機コネクタ50と供試体コネクタ61との位置誤差が解消される。そして、位置誤差が解消された状態で試験機コネクタ50がさらに作業位置に向けて-Z方向に移動することで、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61に対して試験可能な状態に挿入される。
【0031】
ここで、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61に挿入する際には、試験機コネクタ50と供試体コネクタ61との間に摺動抵抗が発生する。この摺動抵抗に打ち勝つ挿入力がエンドエフェクタ10から試験機コネクタ50に伝達されることで、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61に挿入される。
【0032】
自動試験が終わった後、ロボット100がエンドエフェクタ10を介して保持機構20を+Z方向に移動させることで、可動機構30に保持された試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれる。このとき、保持機構20は弾性連結機構40を介して一定の弾性力を持ちつつ、可動機構30を+Z方向に引き上げる。
【0033】
試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際にも試験機コネクタ50と供試体コネクタ61との間に摺動抵抗が発生し、その摺動抵抗により弾性連結機構40がZ方向に伸長する。弾性連結機構40のZ方向に伸長する長さは、弾性連結機構40を構成する弾性部材の塑性変形の範囲内に設定されており、これにより、弾性連結機構40が破断することなく試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜くことができる。
【0034】
ここで、前述した弾性連結機構40の選定条件について説明する。弾性連結機構40の選定条件としては、下記の2条件を満たすばね定数を有するものを選ぶことが必要である。
【0035】
(1)可動機構30が供試体コネクタ61に対して倣い動作する際に、弾性連結機構40が発生させる反力により、供試体コネクタ61と供試体コネクタ61の実装基板(図示せず)との接合を破断しないこと。
この点について補足する。弾性連結機構40のばね定数が大きい程、弾性連結機構40が発生させる反力、具体的には供試体コネクタ61が試験機コネクタ50から受ける力が大きくなる。供試体コネクタ61が試験機コネクタ50から受ける力が、供試体コネクタ61と実装基板との接合部分の接合耐力を上回ると、接合部分が破断する。このため、弾性連結機構40には、上記(1)の条件を満足するばね定数の弾性部材が選定される。
【0036】
(2)弾性連結機構40が、試験機コネクタ50の供試体コネクタ61からの引き抜き時に発生する摺動抵抗によって破断しないこと。
この点について補足する。弾性連結機構40のばね定数が小さい程、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際に発生する摺動抵抗による弾性連結機構40のZ方向の伸長量が長くなる。弾性連結機構40の伸長量が弾性連結機構40を構成する弾性部材の塑性変形の範囲を上回ると、弾性連結機構40が破断する。このため、弾性連結機構40には、上記(2)の条件を満足するばね定数の弾性部材が選定される。
【0037】
<コンプライアンス機構1の効果>
コンプライアンス機構1は、保持機構20と可動機構30とがシート状の弾性連結機構40で連結された構成を有するので、非常に簡易かつ省スペース化を図れるコンプライアンス機構を実現できる。
【0038】
ここで、仮に省スペース化されていないコンプライアンス機構を用いて、複数のワークを、並列に配置された複数の被挿入部に挿抜する作業を行う場合について考える。この場合、作業の短時間化のためには、ワークを保持した複数のコンプライアンス機構を同時に複数の被挿入部に挿抜すればよい。しかし、複数の被挿入部同士の間隔によっては、コンプライアンス機構同士が物理的な干渉を起こすために同時には挿抜できない。この場合、複数のコンプライアンス機構を一つずつ用いて、ワークを対応の被挿入部に順次挿入していく作業となるため、作業時間が大幅に伸びてしまうという問題があった。
【0039】
これに対し、コンプライアンス機構1は省スペース化されているため、コンプライアンス機構1同士の物理的な干渉を抑制でき、本構成を複数用いた同時の挿抜作業が可能となり、作業時間の短縮に寄与できる。
【0040】
<実施の形態1の効果>
以上説明したように、実施の形態1のコンプライアンス機構1は、重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させるロボット100のエンドエフェクタ10に用いられるコンプライアンス機構である。コンプライアンス機構1は、エンドエフェクタ10に保持される保持機構20と、可動機構30と、弾性連結機構40とを有する。可動機構30は、保持機構20の下方に配置され、重力方向に貫通してワークを保持するワーク保持孔30aを有する。弾性連結機構40は、保持機構20および可動機構30の外面に取り付けられ、可動機構30を保持機構20に対して移動可能に連結するシート状の弾性部材である。
【0041】
このように、コンプライアンス機構1が取り付けられるエンドエフェクタ10の動作を重力方向に下降することでワークを作業位置に移動させる動作に限定している。エンドエフェクタの動作を限定することで、コンプライアンス動作を実現する弾性連結機構40をシート状の弾性部材にできてコンプライアンス機構1の構造を単純化できる。また、弾性連結機構40がシート状であるため、コンプライアンス機構1の省スペース化が図れる。
【0042】
また、コンプライアンス機構1は、エンドエフェクタ10に空圧で取り付けられており、エンドエフェクタ10から取り外し可能である。よって、ロボット100がコンプライアンス機構1を不要な作業を行う場合は、エンドエフェクタ10からコンプライアンス機構1を取り外してツールチェンジすることもできる。よって、ツールチェンジすることで、ロボット100がネジ締めまたは自動挿入による組立などにも適用できる点においても従来にない効果がある。
【0043】
また、コンプライアンス機構1は、弾性連結機構40が、平面視において保持機構20および可動機構30を挟むようにして少なくとも一対設けられている。
【0044】
このように、コンプライアンス機構1は弾性連結機構40を少なくとも一対備えていることで、コンプライアンス動作を実現できる。
【0045】
実施の形態2
実施の形態2に係るコンプライアンス機構1について説明する。実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と同一の機能および作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、実施の形態2に係るコンプライアンス機構1が実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と異なる点を中心に説明し、実施の形態2に係るコンプライアンス機構1で説明しない構成は実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と同様である。実施の形態2に係るコンプライアンス機構1は、可動機構30のXY平面方向の可動範囲を制限する第1可動リミッタをさらに備えた構成に関する。
【0046】
図7は、実施の形態2に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。
可動機構30のワーク保持孔30aを平面的に見たときの開口面積は、保持機構20の貫通孔20aを平面的に見たときの開口面積よりも大きく形成されている。ワーク保持孔30aは、平面的に見て貫通孔20a全体を内部に包括する大きさに構成されている。そして、実施の形態2に係るコンプライアンス機構1の保持機構20は、保持機構20に対する可動機構30のXY平面方向の可動範囲を制限する第1可動リミッタ41を有する。第1可動リミッタ41は、貫通孔20aの可動機構30側の開口の周縁部から可動機構30側に突出する突出部で構成されており、ワーク保持孔30aの内部に位置している。
【0047】
第1可動リミッタ41は、互いに対向する一対の突出部を2組有する。第1可動リミッタ41は、X方向に対向する1組の一対の突出部と、Y方向に対向する1組(図示せず)の一対の突出部とを有する。なお、第1可動リミッタ41は、貫通孔20aの可動機構30側の開口の周縁部から可動機構30側に突出する突出部で構成されていればよく、上記の様に2組有する構成に限定されない。第1可動リミッタ41は、例えば、貫通孔20aの可動機構30側の開口の周縁部全体から可動機構30側に突出する突出部で構成されてもよい。
【0048】
上記構成による作用について図8を参照して説明する。
【0049】
図8は、実施の形態2に係るコンプライアンス機構の第1可動リミッタの作用説明図である。
可動機構30がX方向に移動した際、第1可動リミッタ41がワーク保持孔30aの内周面に当接することで可動機構30の可動範囲が制限される。可動機構30がY方向に移動した際も同様に、第1可動リミッタ41がワーク保持孔30aの内周面に当接することで可動機構30の可動範囲が制限される。
【0050】
仮に可動機構30の可動範囲が制限されていない場合、可動機構30が動作経路上の何かに接触するなどして可動機構30に大きなXY平面方向の力がかかった際、弾性連結機構40が大きく伸長する。弾性連結機構40が大きく伸長すると、保持機構20と可動機構30とのXY平面方向の位置が大きくずれることになる。また、ロボット100のエンドエフェクタ10が待機位置と退避位置との間を移動する際の移動速度が速いと、仮に可動機構30の可動範囲が制限されていない場合、可動機構30は、移動時の慣性力によって大きくXY平面方向に振られることになる。この場合、保持機構20と可動機構30とのXY平面方向の位置が大きくずれることになる。
【0051】
以上のように弾性連結機構40が大きく伸長した場合、弾性連結機構40に大きな剪断力がかかって破断を招く可能性がある。また、保持機構20と可動機構30とのXY平面方向の位置が大きくずれた場合、試験機コネクタ50から延びる配線51が可動機構30と保持機構20との境界部分で大きく屈曲し、配線51に大きな剪断力がかかる。このような配線51の大きな屈曲が試験中に繰り返されると、配線51の断線を招く可能性がある。
【0052】
これに対し、実施の形態2のコンプライアンス機構1は、可動機構30の可動範囲が制限されることで、弾性連結機構40が伸長する長さを制限できる。このため、弾性連結機構40に過大な剪断力がかかって破断することを抑制できる。また、可動機構30の可動範囲を制限できることで、配線51が屈曲する角度を小さく抑えることができて屈曲負荷を減らすことができ、また、配線51に過大な剪断力がかかることを防止できる。その結果、配線51の断線が防止される。以上より、実施の形態2のコンプライアンス機構1は、弾性連結機構40および配線51の寿命を延ばすことができる。
【0053】
<実施の形態2の効果>
以上説明したように、実施の形態2のコンプライアンス機構1は、実施の形態1と同様の効果が得られると共に、コンプライアンス機構1が第1可動リミッタ41を備えたので、以下の効果を有する。実施の形態2のコンプライアンス機構1は、弾性連結機構40に過大な剪断力がかかって破断したり、試験機コネクタ50の配線51に過大な剪断力がかかって断線したりすることを防止でき、配線51および弾性連結機構40の寿命を延ばすことができる。
【0054】
実施の形態3
実施の形態3に係るコンプライアンス機構1について説明する。実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と同一の機能および作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、実施の形態3に係るコンプライアンス機構1が実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と異なる点を中心に説明し、実施の形態3に係るコンプライアンス機構1で説明しない構成は実施の形態1に係るコンプライアンス機構1と同様である。実施の形態3に係るコンプライアンス機構1は、Z方向およびY方向の可動範囲を制限する第2可動リミッタをさらに備えた構成に関するものである。
【0055】
図9は、実施の形態3に係るコンプライアンス機構の分解斜視図である。図10は、実施の形態3に係るコンプライアンス機構の概略斜視図である。図11は、実施の形態3に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。
【0056】
実施の形態3に係るコンプライアンス機構1は、可動機構30のY方向およびZ方向の可動範囲を制限する第2可動リミッタ80を備えており、X方向のみコンプライアンス動作する。コンプライアンス機構1は、Y方向に対向する一対の第2可動リミッタ80をX方向に2組有する。なお、第2可動リミッタ80の個数はこれに限られたものではなく、少なくともY方向に対向して一対あればよい。
【0057】
第2可動リミッタ80は、X方向に見てL字型であって、例えば金属または樹脂などで構成されている。第2可動リミッタ80は、Y方向に延びる第1部80aと、第1部80aの端部からZ方向に延びる第2部80bとを有する。第2部80bには、Y方向に貫通する貫通穴80baが形成されている。
【0058】
コンプライアンス機構1において一対の弾性連結機構40は、保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物の側面の4面のうち、X方向に対向する2面1aに設けられており、Y方向に対向する2面1bには設けられていない。一対の弾性連結機構40は、保持機構20と可動機構30との境界部分を跨ぐようにして設けられている。Y方向に対向する2面1bには、X方向に直交する平面で切断した断面形状がL字型の挿入溝81が形成されている。挿入溝81は、保持機構20と可動機構30との境界部分を跨ぐようにして設けられている。
【0059】
挿入溝81は、保持機構20側に形成された第1溝81aと、可動機構30側に形成された第2溝81bとを有する。第1溝81aは、第2可動リミッタ80のZ方向の一端部が挿入される部分である。第2可動リミッタ80のZ方向の一端部とは、具体的には第1部80aと第2部80bの一部とである。第1溝81aは、第2可動リミッタ80の第1部80aが挿入される、深さの深い深溝81aaと、第2可動リミッタ80の第2部80bの一部が挿入される、深溝81aaよりも深さの浅い浅溝81abとを有する。第1溝81aは、第2可動リミッタ80のX方向の幅よりも長くなるようにX方向に延びて形成されている。ここでは、第2可動リミッタ80が同一面に2つ設けられることから、第1溝81aは2つの第2可動リミッタ80に共通に1つ形成されている。
【0060】
第2溝81bは、第2可動リミッタ80の第2部80bの残りの部分が挿入される部分である。第2溝81bは、第2可動リミッタ80のZ方向の他端部と同一形状に形成されている。第2溝81bは、同一面における第2可動リミッタ80の数と同数設けられる。よって、第2溝81bは、同一面に2つ設けられ、コンプライアンス機構1において計4つ設けられている。
【0061】
図11に示すように、第2可動リミッタ80は、上記構成の挿入溝81に挿入されている。第2可動リミッタ80は、第2可動リミッタ80の第2部80bに形成された貫通穴80baにネジ82が挿入されて可動機構30に設けられたネジ穴に螺合されることで、可動機構30に固定されている。第2可動リミッタ80が可動機構30に固定された状態において、第2可動リミッタ80の下部側はネジ82で可動機構30に固定されているが、第2可動リミッタ80の上部側は自由端となっている。このため、第2可動リミッタ80の第1部80aは第1溝81a内をX方向に移動可能である。つまり、第2可動リミッタ80は、Z方向の一方の端部である第1部80aがX方向に移動可能な状態で挿入溝81に挿入されて固定されている。このため、可動機構30と保持機構20とはX方向に相対的に移動可能となっている。これにより、コンプライアンス機構1はX方向のコンプライアンス動作が可能である。
【0062】
また、第2可動リミッタ80は、保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物を間に挟んでY方向に対向して1対2組設けられている。このため、コンプライアンス機構1では、保持機構20と可動機構30とをY方向に相対的に移動することが制限されている。また、第2可動リミッタ80の第1部80aが第1溝81aに挿入されている。このため、保持機構20を-Z方向に移動させると、保持機構20と共に可動機構30も-Z方向に移動する。つまり、保持機構20と可動機構30とは一体となって-Z方向に移動する。
【0063】
上記構成により、コンプライアンス機構1は、可動機構30にX方向の力が加わった際には弾性連結機構40が伸長し、第2可動リミッタ80の第1部80aが第1溝81a内をX方向に移動する。一方、コンプライアンス機構1は、可動機構30にY方向に力が加わった際には、第2可動リミッタ80によりY方向のコンプライアンス動作を行わない。また、コンプライアンス機構1は、保持機構20が-Z方向に移動すると、保持機構20と共に可動機構30も保持機構20と一体となって-Z方向に移動する。
【0064】
上記構成による作用について説明する。
試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際には、エンドエフェクタ10からコンプライアンス機構1の保持機構20に作用する引っ張り力が、弾性連結機構40を介して可動機構30に伝達される。この際の弾性連結機構40の伸張量が、弾性連結機構40を構成する弾性部材の塑性変形の範囲を上回ると、弾性連結機構40が破断してしまう可能性がある。
【0065】
これに対し、実施の形態3では、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際、第2可動リミッタ80により保持機構20と可動機構30とが一体的に動作し、弾性連結機構40には引っ張り力が作用しない。このため、コンプライアンス機構1は、弾性連結機構40の破断を防ぐことができる。また、コンプライアンス機構1は、弾性連結機構40の弾性力の強さではなく、第2可動リミッタ80の機械的強度により試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜くことができる。このため、コンプライアンス機構1は、挿抜時の摺動抵抗が大きいコネクタにも適用できる。
【0066】
また、実施の形態1および実施の形態2のように引き抜き時に弾性連結機構40がZ方向に伸長する構成では、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から抜けた瞬間に可動機構30が保持機構20に衝突することで保持機構20に+Z方向の衝撃荷重がかかる。これに対し、上記構成では、引き抜き時に弾性連結機構40がZ方向に伸長しないため、可動機構30が保持機構20に衝突することがない。よって、衝撃荷重を考慮して引き抜き速度を抑えるといった対応が不要なため、コンプライアンス機構1は、引き抜き速度を向上できて試験のサイクルタイムの短縮に寄与できる。
【0067】
<実施の形態3の効果>
以上説明したように、実施の形態3のコンプライアンス機構1は、実施の形態1と同様の効果が得られると共に、保持機構20と可動機構30とがZ方向およびY方向に相対的に移動することを制限する第2可動リミッタ80を備えたので、以下の効果が得られる。すなわち、コンプライアンス機構1は、弾性連結機構40の破断を抑制でき、また、引き抜き速度を向上できて試験のサイクルタイムの短縮に寄与できる。
【0068】
なお、ここでは、第2可動リミッタ80の第1部80aが保持機構20側に挿入され、第2部80bが可動機構30側に挿入される例を示したが、第2可動リミッタ80を挿入溝81と共に上下逆さまにしてもよい。つまり、第2可動リミッタ80の第1部80aが可動機構30側に挿入され、第2部80bが保持機構20側に挿入される構成としてもよい。
【0069】
実施の形態4
実施の形態4に係るコンプライアンス機構1について説明する。実施の形態1に係るコンプライアンス機構と同一の機能および作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、実施の形態4に係るコンプライアンス機構が実施の形態1に係るコンプライアンス機構と異なる点を中心に説明し、実施の形態4に係るコンプライアンス機構で説明しない構成は実施の形態1に係るコンプライアンス機構と同様である。実施の形態4に係るコンプライアンス機構は、Y方向およびZ方向の可動範囲を規制する非弾性連結機構を備えた構成に関するものである。
【0070】
図12は、実施の形態4に係るコンプライアンス機構をX方向から見た側面図である。図13は、実施の形態4に係るコンプライアンス機構の概略断面図である。保持機構20と可動機構30とは、弾性連結機構40に加えて非弾性連結機構42によって連結されている。非弾性連結機構42は、Z方向の弾性を有していないシート状の部材であり、例えば、革シート、金属製フィルムシートまたは樹脂製フィルムシートなどで構成されている。非弾性連結機構42は、例えば3mm程度の一定のたるみを持った状態で保持機構20と可動機構30とを連結している。
【0071】
弾性連結機構40は、実施の形態1と同様にX方向に対向して一対設けられていると共に、Y方向に対向して一対設けられている。非弾性連結機構42は、保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物の外面であってX方向に対向する2面のそれぞれにおいて、弾性連結機構40をY方向両側から挟むように一対配置されている。また、非弾性連結機構42は、保持機構20および可動機構30を上下に重ねた状態の一体物の外面であってY方向に対向する2面のそれぞれにおいて、弾性連結機構40をX方向両側から挟むように一対配置されている。なお、非弾性連結機構42の配置はこの配置に限定されず、少なくともX方向またはY方向に対向して一対設けられていればよい。非弾性連結機構42と保持機構20および可動機構30との固定方法は、例えばエポキシ樹脂による接着が挙げられるがこれに限らず、ネジ止め等による他の固定方法でもよい。
【0072】
上記構成による作用について次の図14および図15を参照して説明する。
【0073】
図14は、実施の形態4に係るコンプライアンス機構のX方向のコンプライアンス動作時の状態をY方向から見た概略断面図である。図15は、実施の形態4に係るコンプライアンス機構の弾性連結機構のZ方向の伸長時の状態をX方向から見た側面図である。
図14に示すように、コンプライアンス機構1は、可動機構30にX方向の力が加わった際には、弾性連結機構40が伸長すると共に非弾性連結機構42が余長分まで伸長することでX方向のコンプライアンス動作を行う。コンプライアンス機構1は、可動機構30にY方向の力が加わった際も同様にして、Y方向のコンプライアンス動作を行う。
【0074】
試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際には、図15に示すように、コンプライアンス機構1の保持機構20が+Z方向に引き上げられる。これにより、保持機構20と可動機構30とが離間して弾性連結機構40がZ方向に伸長するが、弾性連結機構40の伸長量が非弾性連結機構42の余長分に達すると、弾性連結機構40はそれ以上、伸長しない。つまり、非弾性連結機構42によって弾性連結機構40のZ方向の伸長量が制限される。
【0075】
このため、弾性連結機構40のZ方向の伸長量が非弾性連結機構42の余長分に達して以降、引き抜き力は、弾性連結機構40を介さず非弾性連結機構42を介して可動機構30に保持された試験機コネクタ50に伝達される。よって、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際には、弾性連結機構40の弾性力の強さではなく、非弾性連結機構42の機械的強度で引き抜くことができる。これにより、コンプライアンス機構1は、引き抜き時の負荷から弾性連結機構40を保護でき、実施の形態3と同様に弾性連結機構40の破断を防ぐと同時に挿抜時の摺動抵抗が大きなコネクタにも適用できる。
【0076】
また、上記実施の形態3のコンプライアンス機構1は、Y方向にはコンプライアンス動作ができなかった。しかし、本実施の形態4のコンプライアンス機構1は、X方向およびY方向の両方向にコンプライアンス動作ができるという顕著な効果を持つ。
【0077】
また、コンプライアンス機構1は、弾性連結機構40が非弾性連結機構42の余長分を超えてZ方向に伸長しないため、引き抜き直後に可動機構30が保持機構20に強く衝突することがない。このため、コンプライアンス機構1は、引き抜き速度を向上できて試験のサイクルタイムの短縮に寄与できる。
【0078】
<実施の形態4の効果>
以上説明したように、実施の形態4のコンプライアンス機構1は、実施の形態1と同様の効果が得られると共に以下の効果が得られる。コンプライアンス機構1は、XY平面方向の可動域については実施の形態1と同様のまま、非弾性連結機構42によってZ方向の伸長量つまりZ方向の可動範囲のみを機械的に制限できる。また、コンプライアンス機構1は、XY平面方向の可動範囲を制限せずに引き抜き時の負荷から弾性連結機構40を保護できる。
【0079】
実施の形態5
実施の形態5は、コンプライアンス機構の弾性力低下診断装置に関する。
【0080】
図16は、実施の形態5に係るコンプライアンス機構の弾性力低下診断装置を用いた診断システムの概略図である。実施の形態5の弾性力低下診断システムは、ロボット100と、エンドエフェクタ10と、コンプライアンス機構1と、弾性力低下診断装置200とを備えている。弾性力低下診断システムにおける診断対象のコンプライアンス機構1は、可動リミッタを備えていない実施の形態1~実施の形態2のコンプライアンス機構1である。よって、図16のコンプライアンス機構1は、実施の形態1または実施の形態2のコンプライアンス機構1である。
【0081】
弾性力低下診断装置200は、力覚センサ201と、力覚センサ201の計測結果に基づいて弾性連結機構40の弾性力の低下を診断する診断部202と、警告を外部に報知する報知部203とを備えている。力覚センサ201は、ロボット100のロボットアームの先端部とエンドエフェクタ10との間に設置されている。力覚センサ201は、ロボット100が試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く際の荷重を計測する。計測結果は、信号ケーブル204によって診断部202に出力され、診断部202にて常時モニタリングされる。また、診断部202は、ロボット100のエンドエフェクタ10の位置座標を取得することができる。
【0082】
診断部202は、力覚センサ201の計測結果に基づいて、コンプライアンス機構1の弾性連結機構40の弾性力の低下診断を行う。弾性力低下診断の結果は、例えばコンプライアンス機構1の交換時期の予測などに用いられる。報知部203は、ディスプレイなどの表示装置、ブザーまたはスピーカーなどである。
【0083】
診断部202は、マイクロプロセッサユニットにより構成され、CPU、RAMおよびROM等を備えており、ROMには制御プログラム等が記憶されている。診断部202は、マイクロプロセッサユニットに限定するものではない。例えば、診断部202は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよい。また、診断部202は、プログラムモジュールであって、図示しないCPU等からの指令により、実行されるものでもよい。
【0084】
ここで、診断部202における弾性連結機構40の弾性力低下の予測原理について説明する。弾性連結機構40の弾性力が低下すると、同じ弾性力を発揮するために必要な弾性連結機構40の伸長量が増える。このため、弾性連結機構40の弾性力が低下すると、引き抜き時の弾性連結機構40の伸長量が増加していく。つまり、新品の弾性連結機構40であれば伸長量が例えば2mmのときに試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から抜ける。しかし、弾性連結機構40の弾性力が低下すると、弾性連結機構40の伸長量が例えば10mmまで伸びた状態で試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から抜けるといった具合である。よって、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から抜けるタイミングにおける弾性連結機構40の伸長量によって弾性連結機構40の弾性力の低下を予測できる。
【0085】
以下、図17図20を用いて、力覚センサ201の計測結果に基づいて試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から抜けるタイミングを検知する方法について説明する。
【0086】
図17は、実施の形態5に係るコンプライアンス機構にて保持した試験機コネクタの供試体コネクタからの引抜き時の力覚センサの計測結果を示すグラフである。図17の横軸は時間、縦軸は力覚センサの計測値である。図17は、供試体コネクタ61から試験機コネクタ50を引き抜くためにエンドエフェクタ10が一定の速度で+Z方向へ移動するときの力覚センサの計測値を示している。図18は、図17の(1)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。図19は、図17の(3)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。図20は、図17の(4)の期間におけるコンプライアンス機構の状態を示す図である。
【0087】
図17のグラフには、(1)弾性連結機構40の伸長、(2)試験機コネクタ50の供試体コネクタ61からの引き抜き完了、(3)可動機構30の保持機構20への衝突、(4)衝突後の減衰、の各状態における力覚センサ201の計測結果が示されている。
【0088】
(1)弾性連結機構40の伸長
保持機構20から弾性連結機構40にかかる+Z方向の引っ張り力が試験機コネクタ50と供試体コネクタ61との挿抜時の摺動抵抗力に達しない間は、図18に示すように引き抜くことができず、弾性連結機構40が伸長する。この伸長期間では力覚センサ201の計測値が上昇していく。
【0089】
(2)試験機コネクタ50の供試体コネクタ61からの引き抜き完了
保持機構20から弾性連結機構40にかかる+Z方向の引っ張り力が試験機コネクタ50と供試体コネクタ61の挿抜時の摺動抵抗に到達すると、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれる。試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれることで、力覚センサ201の計測値は0となる。
【0090】
(3)可動機構30の保持機構20への衝突
(2)の期間で試験機コネクタ50の供試体コネクタ61からの引き抜きが完了すると、図19に示すように可動機構30が弾性連結機構40の弾性力により+Z方向に移動して保持機構20に衝突する。この衝突により力覚センサ201の計測値は急上昇する。
【0091】
(4)衝突後の減衰
(3)の期間で可動機構30が保持機構20に衝突後、図20の矢印に示すように可動機構30が-Z方向に移動する動作と、+Z方向に移動する動作とを繰り返し、可動機構30および弾性連結機構40の揺れが減衰する。これにより、力覚センサ201の計測値は減衰する。
【0092】
試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれる際、コンプライアンス機構1は、上記のような力学特性を持つ。診断部202は、試験機コネクタ50の引き抜き完了直後の力覚センサ201の計測値が0となることを用いて、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれたタイミングを検知する。具体的な検知処理については、次の図21のフローチャートにて説明する。
【0093】
以下、弾性力低下診断装置200における診断処理について、図21および図22を用いて説明する。
【0094】
図21は、実施の形態5に係る弾性力低下診断装置における計測フローチャートである。図22は、実施の形態5に係る弾性力低下診断装置における計測結果をプロットしたグラフである。計測結果とは、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれたタイミングにおけるエンドエフェクタ10のZ座標値である。図22において横軸は試験回数、縦軸はエンドエフェクタ10のZ座標値である。
【0095】
ロボット100は、供試体コネクタ61の試験終了後、試験機コネクタ50を供試体コネクタ61から引き抜く動作を開始する(ステップS1)。具体的には、ロボット100は、試験機コネクタ50を作業位置から待機位置へ移動させる動作を開始する。診断部202は、引き抜き動作中の力覚センサ201の計測値を例えば0.1秒ごとに計測し、計測時から一定時間前までの複数の計測値の平均値を算出する(ステップS2)。平均値の算出は、例えば0.1秒ごとに行われる。診断部202は、ステップS2で算出した今回の平均値と前回の平均値とに基づいて、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれたか否かの検知を行う(ステップS3)。
【0096】
試験機コネクタ50の引き抜き完了直後の力覚センサ201の計測値は上述したように0となる。このため、引き抜き完了直後の平均値は、前回の平均値に比べて大きく減少する。よって、診断部202は、今回の平均値が前回の平均値に対して予め設定された設定値以上、減少している場合、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれたと検知する。
【0097】
診断部202は、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれたと検知した場合(ステップS4)、エンドエフェクタ10のZ座標値を取得する(ステップS5)。ステップS5で取得したエンドエフェクタ10のZ座標値は、弾性連結機構40の伸長量の指標として用いられる。エンドエフェクタ10の座標値が大きい程、弾性連結機構40の伸長量が長いことを意味する。
【0098】
診断部202は、試験機コネクタ50が供試体コネクタ61から引き抜かれる動作が行われる度に、図示しない表示器のモニタ画面に、図22に示すようにエンドエフェクタ10のZ座標値をプロットしていく。診断部202は、新品の弾性連結機構40を備えたコンプライアンス機構1を用いて試験を開始してから、あらかじめ定められたN回分のZ座標値に基づき、管理範囲の上限値と下限値とを算出する。管理範囲は、N回分のZ座標値の平均値に対して予め設定された設定値を用いて決定される範囲である。設定値には、例えば、±2×標準偏差が用いられる。よって、管理範囲の上限値は、平均値+2×標準偏差であり、管理範囲の下限値は、平均値-2×標準偏差である。Nの値は、正規分布の管理値を算出するために必要な回数を設定するが、例えば20回などとすればよい。
【0099】
試験回数の増加に伴い、弾性連結機構40の弾性力が低下していくと、弾性連結機構40の伸長量が長くなる、つまりZ座標値が大きくなる。よって、診断部202は、Z座標値が管理範囲の上限値を超えたタイミングを、コンプライアンス機構1の交換タイミングと判断する。この判断は診断部202が自動で行っても良いし、モニタ画面を確認した作業者が行ってもよい。診断部202が自動で行う場合には、診断部202は、エンドエフェクタ10のZ座標値が管理範囲の上限値を超えたことを検知すればよい。管理範囲の上限値は、予め診断部202に設定されている。管理範囲の上限値は、予め設定された設定値である。そして、診断部202は、エンドエフェクタ10のZ座標値が管理範囲の上限値を超えたことを検知すると、報知部203から弾性連結機構40の交換を促すメッセージまたはブザー音などの警告を外部に報知する。
【0100】
<実施の形態5の効果>
以上説明したように、実施の形態5の弾性力低下診断装置は、診断部202の診断結果に基づき、弾性連結機構40が破断する前に交換時期を予測することができる。このため、弾性力低下診断装置200は、弾性連結機構40が破断することを未然に防ぐことを可能とし、設備のダウンタイムの短縮に寄与できるという顕著な効果を持つ。
【0101】
なお、上記実施の形態1~実施の形態5では、自動機であるロボット100が、ワークである試験機コネクタ50を、被差し込み部である供試体コネクタ61に対して挿抜動作を行う例を説明した。ワークおよび被差し込み部は、試験機コネクタ50および供試体コネクタ61に限られたものではなく、適宜自由に選択可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 コンプライアンス機構、1a 2面、1b 2面、10 エンドエフェクタ、20 保持機構、20a 貫通孔、30 可動機構、30a ワーク保持孔、40 弾性連結機構、41 第1可動リミッタ、42 非弾性連結機構、50 試験機コネクタ、51 配線、60 供試体、61 供試体コネクタ、61a テーパー部、70 供試体置き台、71 位置決めピン、80 第2可動リミッタ、80a 第1部、80b 第2部、80ba 貫通穴、81 挿入溝、81a 第1溝、81aa 深溝、81ab 浅溝、81b 第2溝、82 ネジ、100 ロボット、200 弾性力低下診断装置、201 力覚センサ、202 診断部、203 報知部、204 信号ケーブル。
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