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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183232
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】回転機構
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20221201BHJP
   F04B 39/04 20060101ALI20221201BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20221201BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F04C29/02 351B
F04B39/04 K
F04C18/02 311Y
F04C29/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163887
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2020508359の分割
【原出願日】2018-07-19
(31)【優先権主張番号】201710701301.0
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201721025170.0
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517371981
【氏名又は名称】エマソン クライメット テクノロジーズ(スーチョウ)カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ゲンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チミン
(72)【発明者】
【氏名】マオ、アンビン
(57)【要約】
【課題】単純な構造を有し、占有する空間が小さく、オイル循環率を効率的に制御可能な回転機械装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、回転機構が、ハウジング11と、回転部材110と、排出部材130とを有する。オイルと気体の混合物がハウジング11内に収容される。回転部材110は、ハウジング11内に設けられ、またオイルと気体の混合物を駆動してサイクロン流を形成するように回転軸の周りを回転可能であり、それにより、遠心力の下、オイルと気体の混合物におけるオイル含有率が回転部材110に近づくにつれてより小さくなる。排出部材130は、ハウジング11に設けられ、ハウジング11から、オイル含有率が事前設定された量以下である位置まで、径方向内側に向かって延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル-気体混合物を内部に収容するケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、前記オイル-気体混合物を駆動してサイクロン流を形成するように回転軸の周りを回転可能である回転部材(110)であって、それにより、遠心力の下、前記オイル-気体混合物のオイル含有率が、前記回転部材に近づくにつれて減少している、回転部材(110)と、
前記ケーシングの前記オイル-気体混合物を排出するように構成され、且つ前記ケーシングに配置された排出部材(130)であって、前記ケーシングから、前記オイル含有率が所定含有率以下である位置まで、径方向内側に向かって延びる排出部材(130)と
を有する回転機械装置であって、
前記回転部材は、前記回転軸の方向に第1の軸方向端面(115)と第2の軸方向端面(117)とを有し、前記排出部材は、第1の軸方向位置(P1)と第2の軸方向位置(P2)との間に位置付けられ、前記排出部材が前記第1の軸方向位置(P1)にある場合、前記排出部材の前記排出通路の一方の径方向側部が、前記第1の軸方向端面の軸方向外側に位置し、且つ前記排出通路の前記一方の径方向側部の反対側の他方の径方向側部が、前記第1の軸方向端面と整列し、また、前記排出部材が前記第2の軸方向位置(P2)にある場合、前記排出通路の前記他方の径方向側部が、前記第2の軸方向端面の軸方向外側に位置し、前記排出通路の前記一方の径方向側部が、前記第2の軸方向端面と整列している、回転機械装置。
【請求項2】
前記ケーシング内部に位置する前記排出部材の端部部分と前記回転部材の外周面との間に、前記回転軸に垂直な水平方向の所定距離(L)が存在し、前記排出部材(130)の円形排出通路(133)の直径(D)に対する前記所定距離(L)の比率が、1.5未満である、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項3】
前記排出部材(130)の前記円形排出通路(133)の前記直径(D)に対する前記所定距離(L)の前記比率が0.25よりも大きい、請求項2に記載の回転機械装置。
【請求項4】
前記円形排出通路の前記直径(D)に対する前記所定距離(L)の前記比率が0.4から0.5の間である、請求項3に記載の回転機械装置。
【請求項5】
前記回転部材は、径方向外側に突出する突出部、又は前記回転部材の軸方向端面から軸方向に延びる突出部を有し、また
前記排出部材は、前記突出部が配置される前記回転部材の部分の軸方向中央部分と実質的に整列するように位置付けられる、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項6】
前記回転部材に隣接する前記排出部材の端部部分が、前記回転軸に垂直な水平方向に直線的に延び、また前記端部部分の端面が、前記回転部材の外周面に対して斜めに方向付けられている、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項7】
前記回転部材に隣接する前記排出部材の端部部分が、前記回転部材の周方向に、及び/又は前記回転軸に平行な垂直方向に屈曲されている、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項8】
前記排出部材の排出開口が、前記回転部材の回転方向の下流側を向くように方向付けられ、前記ケーシング内の前記オイル-気体混合物は、前記排出開口を介して前記排出部材に進入する、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項9】
前記回転部材は、偏心部、又は釣り合い重りの形態であり、前記排出部材は、排出パイプ又は排出通路の形態である、請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項10】
前記ケーシング内に位置し、作動流体を圧縮するように構成された圧縮機構(12)と、
前記圧縮機構を駆動するように適合された駆動シャフト(14)と、
ステータ、及び前記ステータに対して回転可能なロータを有するモータ(13)であって、前記駆動シャフトを駆動して回転させるように構成されたモータ(13)と
を更に有し、
前記回転部材は、前記駆動シャフト上に配置され、又は前記ロータ上に配置される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の回転機械装置。
【請求項11】
前記回転部材は、前記圧縮機構と前記モータとの間、又は前記モータとオイルサンプとの間に位置する、請求項10に記載の回転機械装置。
【請求項12】
前記回転機械装置は、ハイサイド・スクロール・コンプレッサである、請求項10に記載の回転機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、参照によってその開示が本明細書に組み込まれる、中国国家知識産権局に2017年8月16日に出願された「ROTARY MACHINERY」と題された中国特許出願第201710701301.0号及び第201721025170.0号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は回転機械装置(rotary machinery)に関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションの内容は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、これは必ずしも従来技術を構成するものではないことがある。
【0004】
コンプレッサ(例えば、スクロール・コンプレッサ、ロータ・コンプレッサなど)は、典型的には、圧縮機構と、駆動シャフトと、モータとを含む。駆動シャフトは、軸受けハウジングにおける軸受けによって支持され、モータによって駆動されて回転する。駆動シャフトの回転は更に、圧縮機構の可動コンポーネント(例えば、スクロール・コンプレッサの軌道旋回スクロール、ロータ・コンプレッサのロータなど)を駆動して移動させ、作動流体(例えば、冷媒)を圧縮する。コンプレッサの各可動コンポーネント(例えば、スクロール・コンプレッサの軌道旋回スクロール、ロータ・コンプレッサのロータ、軸受けなど)は、可動コンポーネント及び全体的なコンプレッサの動作の安定性及び信頼性を維持するために、潤滑オイルによって潤滑されることが必要である。したがって、コンプレッサのための潤滑オイル循環システムは、コンプレッサの重要な部分である。
【0005】
コンプレッサが動作するとき、潤滑オイルは、例えば、各可動コンポーネントの通常動作を維持するために各コンポーネントを潤滑するために、オイル・プールからコンプレッサの各可動コンポーネントへと、差圧の下で又はオイル圧送機構によって運ばれ、最終的にオイル・プールへと戻る。加えて、潤滑オイルの循環中に、摩耗を減少させるためにコンポーネントの接触面の間の不純物も取り除き得、並びに摩擦及び電流に起因して各コンポーネントによって生成される熱も取り除き得る。
【0006】
潤滑オイルの循環中に、潤滑オイルのうちのいくらかは、作動流体とともにコンプレッサから外に出る。コンプレッサから外に出る潤滑オイルの量が大きすぎる場合、コンプレッサが一定期間動作した後に、オイル・プールにおける潤滑オイルの量が徐々に減少し、すなわち、オイル・レベルが低下し、可動コンポーネントの通常動作を維持するためのコンプレッサにおける潤滑オイルが不十分になり、故に、コンプレッサの異常動作をもたらす。したがって、コンプレッサにおけるオイル・プールのレベルを維持することは非常に重要である。しかも、その一方で、作動流体とともにコンプレッサから排出される潤滑オイルは、例えば凝縮器及び蒸発器のコイルに付着し、それによって、環境空気との作動流体の熱交換効率に影響を与える。したがって、コンプレッサが潤滑オイル循環率(オイル循環率とも呼ばれる)を適正に制御することが必要である。ここで、オイル循環率とは、コンプレッサから排出される単位作動流体に含まれる潤滑オイルの(質量)比として理解され得る。
【0007】
オイル循環率を制御するために、コンプレッサにオイル-気体分離デバイスが配置され得る。しかしながら、コンプレッサ・ケーシングの内部空間は限られているので、単純な構造を有し、占有する空間が小さく、オイル循環率を効率的に制御可能なコンプレッサを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、単純な構造を有し、占有する空間が小さく、オイル循環率を効率的に制御可能な回転機械装置を提供することである。
【0009】
本開示の別の目的は、コンプレッサであって、製造及び組み立てが単純化され、低コストで、コンプレッサのオイル循環率を合理的に制御可能なコンプレッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によると、ケーシングと、回転部材と、排出部材とを含む回転機械装置が提供される。ケーシングはオイル-気体混合物を内部に収容する。回転部材は、ケーシング内に配置され、オイル-気体混合物を駆動してサイクロン流を形成するように回転軸の周りを回転可能であり、それによって、遠心力の下で、オイル-気体混合物におけるオイル含有率が回転部材に近づくにつれて減少する。排出部材は、ケーシングに配置され、ケーシングからオイル含有率が所定含有率以下である位置へと径方向内側に向かって延在する。本開示による回転機械装置は、潤滑オイル循環率を良好に制御し得る。
【0011】
いくつかの実施例において、ケーシング内部に配置された排出部材の端部部分と回転部材の外周面との間に所定距離が存在し、排出部材の円形排出通路の直径に対する所定距離の比率は、1.5未満である。
【0012】
いくつかの実施例において、排出部材の円形排出通路の直径に対する所定距離の比率は、0.25よりも大きい。
【0013】
いくつかの実施例において、円形排出通路の直径に対する所定距離の比率は、0.4から0.5の間である。
【0014】
いくつかの実施例において、回転部材は、軸方向において第1の軸方向端面と第2の軸方向端面とを有し、排出部材は、第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間に位置付けられる。排出部材が第1の軸方向位置にある場合、排出部材の排出通路の一方の径方向側部は、第1の軸方向端面の軸方向外側に位置し、排出通路の一方の径方向側部の反対側の他方の径方向側部は、第1の軸方向端面と整列する。排出部材が第2の軸方向位置にある場合、排出通路の他方の径方向側部は、第2の軸方向端面の軸方向外側に位置し、排出通路の一方の径方向側部は、第2の軸方向端面と整列する。
【0015】
いくつかの実施例において、排出部材は、回転部材の軸方向中央部分と実質的に整列するように位置付けられる。
【0016】
いくつかの実施例において、回転部材に隣接する排出部材の端部部分は、回転軸に垂直な水平方向に直線的に延在し、端部部分の端面は、回転部材の外周面に対して斜め向きに方向付けられる。
【0017】
いくつかの実施例において、回転部材に隣接する排出部材の端部部分は、回転部材の周方向に、及び/又は、回転軸に平行な垂直方向に屈曲される。
【0018】
いくつかの実施例において、排出部材の排出開口は、回転部材の回転方向の下流側に面するように方向付けられ、ケーシング内のオイル-気体混合物は、排出開口を介して排出部材に進入する。
【0019】
いくつかの実施例において、回転部材は、軸方向において第1の軸方向端面と第2の軸方向端面とを有し、排出部材は、第1の軸方向端面又は第2の軸方向端面の軸方向外側に位置付けられ、ケーシング内に位置する排出部材の端部部分は、回転部材の外周面と面一になるように、又は回転部材の外周面の径方向内部にあるように、内側に向かって延在する。
【0020】
いくつかの実施例において、回転部材は、カム、偏心部、又は釣り合い重りの形態であり、排出部材は、排出パイプ又は排出通路の形態である。
【0021】
いくつかの実施例において、回転性機械装置は、圧縮機構と、駆動シャフトと、モータとを更に含む。圧縮機構は、ケーシング内に位置し、作動流体を圧縮するように構成される。駆動シャフトは、圧縮機構を駆動するように適合される。モータは、ステータとステータに対して回転可能なロータとを含み、駆動シャフトを駆動して回転させるように構成される。回転部材は、駆動シャフトに配置され、又はロータに配置される。
【0022】
いくつかの実施例において、回転部材は、圧縮機構とモータとの間、又はモータとオイルサンプとの間に位置する。
【0023】
いくつかの実施例において、回転機械装置は、ハイサイド・スクロール・コンプレッサである。
【0024】
上記の構造において、回転性機械装置における回転部材は、回転部材が回転するときに、その周囲のオイル-気体混合物を駆動してサイクロン流を形成し得るので、潤滑オイルは、潤滑オイル循環率を良好に制御するように、オイル-気体混合物がコンプレッサから出る前に、遠心力の下で、オイル-気体混合物から分離され得る。一方において、コンプレッサにおけるオイル・プールのオイル・レベルは、所望のレベルに維持され得る。他方において、コンプレッサから出てコンプレッサ・システムに進入する潤滑オイルの量は減少され得、例えば、熱交換器に進入する潤滑オイルの量が減少され得、それによって、コンプレッサ・システムの全体的な作動効率を向上させる。
【0025】
本開示の1つ又は複数の実施例の特徴及び利点は、添付の図面を参照した以下の説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施例によるオイル-気体分離デバイスを含むコンプレッサの長手方向断面図である。
図2図1のコンプレッサのオイル-気体分離デバイスの概略的な断面図である。
図3】釣り合い重りに対する排出パイプの異なる径方向位置を示す、図1のオイル-気体分離デバイスの概略図である。
図4】釣り合い重りに対する排出パイプの異なる軸方向位置を示す、図1のオイル-気体分離デバイスの概略図である。
図5】異なる位置に位置するオイル-気体分離デバイスを有するコンプレッサの概略図である。
図6】異なる位置に位置するオイル-気体分離デバイスを有するコンプレッサの概略図である。
図7】排出パイプと釣り合い重りとの間の距離と、循環率とを示すグラフである。
図8a】本開示によるオイル-気体分離デバイスのオイル-気体分布を示す断面図である。
図8b】比較例におけるオイル-気体分離デバイスのオイル-気体分布を示す断面図である。
図9】排出パイプの1つの修正例を示す、図2に類似の概略図である。
図10】排出パイプの別の修正例を示す、コンプレッサのオイル-気体分離デバイスの概略的な長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好ましい実施例の以下の説明は、単なる例示であり、決して本開示及びその適用又は使用を限定することを意図するものではない。複数の図面を通じて、類似のコンポーネントを指すために類似の参照番号が使用され、類似のコンポーネントの構造の説明は、繰り返し説明されることはない。
【0028】
説明を容易にするために、特定のコンポーネントが回転軸の周りを回転し得る場合に、本明細書においてコンポーネントについて言及される「長手方向」又は「軸方向」とは、回転軸に平行な方向を指し、本明細書においてコンポーネントについて言及される「径方向」とは、回転軸に垂直な方向を指す。本明細書において言及される「第1の」、「第2の」及び他の語は、単に異なるコンポーネントを区別するために使用され、順番又は他の意味を示すために使用されるものではない。
【0029】
以下において、本開示によるオイル-気体分離デバイス及びこのオイル-気体分離デバイスを含むコンプレッサが、添付の図面を参照して説明される。図面においては、ハイサイド垂直スクロール・コンプレッサが示される。しかしながら、本開示は、水平スクロール・コンプレッサ、ロータ・コンプレッサ、及びピストン・コンプレッサなどの他のタイプのコンプレッサにも適用可能であることが理解されるべきである。
【0030】
図1を参照すると、コンプレッサ10は、ケーシング11を含み、及びケーシング11内に配置される圧縮機構12と、モータ13と、駆動シャフト(回転シャフト又はクランクシャフトとも称される)14とを含む。
【0031】
モータ13は、ケーシング11に固定されたステータ13bと、ステータ13bの内側に位置し、駆動シャフト14に固定されたロータ13aとを含む。モータ13が始動されたとき、ロータ13aは回転し、駆動シャフト14を駆動してそれとともに回転させる。
【0032】
駆動シャフト14は、駆動シャフト14が回転するときに、圧縮機構12を駆動して作動流体(通常は、気体)を圧縮するように、圧縮機構12に取り付けられる。図面において図示されるスクロール・コンプレッサ10において、駆動シャフト14の偏心クランク・ピン14bは、軌道旋回スクロール12bを駆動して回転させるように、圧縮機構12の軌道旋回スクロール12bに嵌入される。
【0033】
コンプレッサ10は、ケーシング11に固定された主軸受けハウジング15を更に含む。主軸受けハウジング15は、主軸受け15aを介して駆動シャフト14を回転可能に支持するとともに、圧縮機構12、特には軌道旋回スクロール・コンポーネント12bを支持する。
【0034】
圧縮機構12は、ケーシング11又は主軸受けハウジング15に固定された非-軌道旋回スクロール・コンポーネント12aと、非-軌道旋回スクロール・コンポーネント12aに対して移動可能な軌道旋回スクロール・コンポーネント12bとを含む。駆動シャフト14によって駆動されて、軌道旋回スクロール・コンポーネント12bは、非-軌道旋回スクロール・コンポーネント12aに対して軌道旋回する(すなわち、軌道旋回スクロール・コンポーネントの中央軸が非-軌道旋回スクロール・コンポーネントの中央軸の周りで運動するが、軌道旋回スクロール・コンポーネント自体は、それ自体の中央軸の周りで回転しない)。径方向外側から径方向内側に向かうにつれてその体積が徐々に減少する一連の圧縮チャンバが、非-軌道旋回スクロール・コンポーネント12aの螺旋ベーンと、軌道旋回スクロール・コンポーネント12bの螺旋ベーンとの間に形成される。作動流体は、これらの圧縮チャンバにおいて圧縮され、次いで、圧縮機構12の排出穴17を通って排出される。圧縮機構12の排出穴17は、概して、非-軌道旋回スクロール・コンポーネント12aの端部プレートの略中央に配置される。
【0035】
スクロール・コンプレッサの動作中に、偏心コンポーネントの回転によって生成される遠心力又は遠心トルクがコンプレッサを振動させる。概して、偏心コンポーネントによって生成される不均衡を相殺するための逆方向の遠心力又は遠心トルクを提供するために、釣り合い重りが回転コンポーネントに配置される。図1に図示されるコンプレッサ10において、釣り合い重り110は、駆動シャフト14の外周面に固定され、主軸受けハウジング15に隣接し、釣り合い重り210は、圧縮機構12に面するモータ13のロータ13aの端面に配置され、釣り合い重り310は、圧縮機構12から離れる側に面するモータ13のロータ13aの端面に配置される。図面におけるコンプレッサは3つの釣り合い重りを含むが、釣り合い重りの数は、特定の用途の要件に応じて様々であり得ることが理解されるべきである。
【0036】
図1に図示されるコンプレッサの実例において、潤滑オイルを貯蔵するためのオイルサンプ20が、コンプレッサ・ケーシング11の底部に配置されている。駆動シャフト14には、駆動シャフト14の軸方向に実質的に沿って延在する通路14aが内部に形成され得る。オイルサンプ20内の潤滑オイルは、コンプレッサの各軸受け、主軸受けハウジング15及び軌道旋回スクロール・コンポーネント12bの軸受け面、圧縮機構などに、この通路14aを通って供給される。コンプレッサの様々なコンポーネントが潤滑された後、潤滑オイルはオイルサンプ20に戻る。
【0037】
図1に図示されるように、コンプレッサ10はハイサイド・スクロール・コンプレッサである。排出パイプ(排出部材)130は、ケーシング11に配置される。低圧作動流体は、圧縮機構12の吸引チャンバ又は低圧チャンバ内に圧縮機構の流入パイプ(不図示)及び吸引穴(不図示)を通って直接的に供給され、次いで、圧縮され、圧縮機構12の排出穴17からコンプレッサのケーシング11によって包囲された空間内へと排出される。示された実例において、排出パイプ130は、圧縮された気体をコンプレッサ10の外に排出するために、ケーシング11内に密閉して設置される。コンプレッサの動作中に、排出穴17から排出された作動流体は潤滑オイルと混合され、駆動シャフト14の通路14aから供給された潤滑オイルは、軌道旋回スクロール・コンポーネント12b、モータ13のロータ13aなどの運動によって、コンプレッサ・ケーシング11内の空間にオイル・ミストの形態で分配される。したがって、排出パイプ130を通ってコンプレッサの外に排出されるべき高圧作動流体は、しばしば潤滑オイルを含み、それ故、排出パイプ130を介してコンプレッサの外に排出される作動流体における潤滑オイルの量を制御し、それによって全体的なコンプレッサのオイル循環率(OCR:oil circulation rate)を制御することが必要である。
【0038】
コンプレッサのオイル循環率(OCR)を良好に制御するために、コンプレッサ10にオイル-気体分離デバイスが配置され得る。しかしながら、追加的なオイル-気体分離デバイスは、特定の空間を必要とし、製造及び組み立てプロセスを複雑化する。特に、コンプレッサの内部空間が限られているときには、オイル-気体分離デバイスを追加的に設置することは適切ではない。
【0039】
上記の問題を克服するために、本開示の発明者は、コンプレッサに既に存在する部材を使用し、部材間の相対位置関係を合理的に構成することのみによって、高圧作動流体から潤滑オイルが遠心力によって分離され得、含有率が減少された潤滑オイルを含む作動流体又は更には潤滑オイルを含まない作動流体が排出され、それによって、コンプレッサのオイル循環率(OCR)を合理的に制御する解決策を考案した。このような解決策は、部品の数を著しく減少させ得、設置空間を節約し得、組み立てプロセスを単純化し得、それによって大きくコストを減少させ得る。
【0040】
以下において、本開示の実施例によるオイル-気体分離デバイスが、図1及び図2を参照して説明される。図面において図示されるように、オイル-気体分離デバイスは、釣り合い重り110と、排出パイプ130とを含む。釣り合い重り110は、駆動シャフト14の外周面に固定され、駆動シャフト14とともに回転され得る。この実例において、釣り合い重り110の回転軸は、駆動シャフト14の回転軸、すなわち、駆動シャフト14の長手方向中央軸でもある。排出パイプ130は、径方向において釣り合い重り110の外側に位置し、ケーシング11に密閉して固定される。
【0041】
釣り合い重り110は、排出パイプ130に隣接し、これに面する外周面111と、互いに反対方向にある第1の軸方向端面115及び第2の軸方向端面117とを有する。図1図2及び図3を参照すると、釣り合い重りは、径方向外側に突出する径方向突出部112と、第2の軸方向端面117から軸方向に延在する軸方向突出部114とを有し得る。釣り合い重りの構造(特には、位置、大きさ、突出部の数)は、特定の用途に応じて様々であり得ることが理解されるべきである。例えば、釣り合い重りは、径方向突出部及び軸方向突出部のうちの一方のみを有してよい。追加的に又は代替的に、釣り合い重りは、第1の軸方向端面から軸方向に延在する軸方向突出部を有してよい。
【0042】
釣り合い重り110が駆動シャフト14とともに回転するとき、釣り合い重り110の径方向突出部112及び軸方向突出部114は、それらの周囲の、排出穴17から排出されるオイル-気体混合物を撹拌し得、それらの周囲のオイル-気体混合物にサイクロン流を形成させ得る。遠心力の下で、オイル-気体混合物における潤滑オイルは、径方向外側に向かってケーシング11へと放出され、ケーシング11に沿って流れ落ち、重力によってオイルサンプ20内へと戻る。このようにして、釣り合い重り110の近くのオイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率は低くなり、ケーシング11の近くのオイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率は高くなる。オイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率は、釣り合い重り110からケーシング11へと向かう方向において増加する。サイクロン流の径方向内側におけるオイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率は、サイクロン流の径方向外側におけるオイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率よりも小さい。したがって、発明者は、ケーシング内部に設けられる排出パイプの端部部分を、釣り合い重りの回転によって生成されるサイクロン流のエリア内に位置付けること、特には、サイクロン流の径方向内側内に位置付けることを提案する。排出されるべきオイル-気体混合物における潤滑オイルの所望の含有率は、所望のオイル循環率に応じて予め定められ得る。そのため、排出パイプの位置は、予め定められた所望の含有率(「所定含有率」とも称される)に従って決定され得る。すなわち、排出パイプは、ケーシングからオイル-気体混合物における潤滑オイルの含有率が所定含有率以下である位置へと径方向内側に向かって延在され得る。
【0043】
本開示の発明的概念は、釣り合い重り110の回転によって生成されるサイクロン流が、釣り合い重り110とケーシング11との間で潤滑オイルの含有率に傾斜的な変化をもたらし、排出パイプ130と釣り合い重り110との間の相対位置関係は、所望の減少されたオイル循環率を得るように決定されるという原理に基づくことが理解されるべきである。従来のコンプレッサのいくつかにおいては、設置要件のせいで、排出パイプの長さはコンプレッサ・ケーシング内へと延在し得る。この場合、排出パイプの延長部の長さは、設置要件に合うことのみを必要とし、故に、排出パイプの延長部の端部は、コンプレッサ・ケーシングにより近くなる傾向がある。加えて、従来のコンプレッサのいくつかにおいては、潤滑オイルがコンプレッサ・ケーシングの内側面に沿って流れるので、潤滑オイルが排出パイプ内へと流入することを防止するために、排出パイプの長さもコンプレッサ・ケーシング内へと延長され得る。しかしながら、従来のコンプレッサにおける排出パイプの延長部の長さの設定は、釣り合い重りの回転、釣り合い重りの回転によって生成されるサイクロン流などとは何の関係も有さない。
【0044】
本開示の発明的概念によると、1つの実施例において、ケーシング11と釣り合い重り110との間で、排出パイプ130は釣り合い重り110のより近くに位置付けられ得る。好ましくは、必要に応じて、含有率が減少された潤滑オイルを含む作動流体、又は更には潤滑オイルを含まない作動流体を排出するために、排出パイプ130は釣り合い重り110に隣接して配置され、すなわち、釣り合い重り110の外周面から所定距離に位置付けられる。
【0045】
図2及び図3を参照すると、排出パイプ130は、円形の筒状部材であり、円形排出通路133を有する。排出パイプ130は、釣り合い重り110に隣接する端面131も有する。換言すれば、ケーシング内部に位置する排出パイプ130の端面131は、ケーシングの壁部から釣り合い重り110の近傍へと内側に向かって延在する。排出パイプ130の端面131と釣り合い重り110の外周面111との間には距離Lが存在する。距離Lは、排出パイプ130を介した作動流体の排出を促進すること、及び、排出される作動流体に、より低い含有率の潤滑オイルが含まれること保証することの両方を可能とし得ることが望ましい。距離Lは、作動条件、例えば、釣り合い重り110の回転速度、周囲圧力、釣り合い重り110からケーシング11までの距離、排出穴17を介して排出される作動流体における潤滑オイルの含有率、及び排出パイプ130を介して排出されるべき作動流体における潤滑オイルの所望の含有率などに従って決定され得る。距離Lは、予め定められ得、又は、コンプレッサの動作条件に応じて様々であり得る。好ましくは、より良好なオイル-気体分離効果を提供するために、排出パイプ130の端面131が、釣り合い重り110の外周面111にできる限り近いことが望ましく、排出パイプ130の端面131と釣り合い重り110の外周面111との間の距離が、排出パイプ130の流動エリアを不都合なまでに減少させるほど小さすぎるべきでないことも望ましい。
【0046】
本明細書において言及される「より低い含有率の潤滑オイル」又は「含有率が減少された潤滑オイル」などは、排出パイプ130を介して排出される作動流体における潤滑オイルの含有率が、コンプレッサ・ケーシング11内の作動流体における潤滑オイルの含有率未満であり、潤滑オイル循環率(OCR)の適切な範囲内にあることを指す。説明の便宜のために、本明細書においては、「コンプレッサ・ケーシング内の作動流体」は、「分離前の作動流体」又は「オイル-気体混合物」と称され、「排出パイプ130を介して排出される作動流体」は、「分離された作動流体」と称される。
【0047】
図3の実例において、円形排出通路133の直径がDであると仮定すると、直径Dに対する距離Lの比率L/Dは約1.5未満であり得る。いくつかの実例において、直径Dに対する距離Lの比率L/Dは約0.25よりも大きくなり得る。いくつかの実例において、直径Dに対する距離Lの比率L/Dは約0.25から1.25の間、約0.4から1の間、約0.4から0.75の間、好ましくは、約0.4から0.5の間であり得る。より好ましくは、直径Dに対する距離Lの比率は、約0.5であり得る。図7を参照すると、排出パイプと釣り合い重りとの間の距離対コンプレッサが5400RPM(毎分回転数)で動作したときの循環率を示すグラフが示されている。図7において、横軸は、排出パイプの端面と釣り合い重りの最も外側の外周面との間の径方向距離Lを表し、Dは、排出パイプの内径を表す。縦軸は、コンプレッサのオイル循環率OCRを表す。図7に示されるように、Lが約1/2Dであるとき、コンプレッサのオイル循環率は最も低くなり、約1.08%である。従来技術のコンプレッサでは、コンプレッサが5400RPMで動作するとき、そのオイル循環率は5%を超える。対照的に、本開示においては、排出パイプを釣り合い重りに接近して設けることによって、すなわち、排出パイプと釣り合い重りとの間の距離を特定の範囲内に設定することによって、コンプレッサのオイル循環率は著しく減少され得、このことは、著しく予期されなかった技術的効果を達成する。
【0048】
従来のコンプレッサ及び本開示によるコンプレッサは、発明者によってテストされ、テスト結果が以下の表に記載されている。テストは、一組の従来のコンプレッサ(C1)及び3組の本開示のコンプレッサ(T1、T2及びT3)に対して、異なる作動条件(釣り合い重りの異なる回転速度)の下で実施され、このテストにおいて、本開示のコンプレッサにおける直径Dに対する距離Lの比率は0.4である。表におけるテスト結果は、分離された作動流体における潤滑オイルの含有率である。従来のコンプレッサC1において、排出パイプは、コンプレッサ・ケーシング内に、単に組み立ての利便性のために延在するが、釣り合い重りからは遠く離れており、すなわち、排出パイプと釣り合い重りとの間の距離は、排出パイプの内径よりもはるかに大きい。
【0049】
【表1】
【0050】
上記のテスト及び表におけるテスト結果から、本開示によるコンプレッサから排出される作動流体における潤滑オイルの含有率は、従来のコンプレッサから排出される作動流体における潤滑オイルの含有率よりも著しく低いことが分かる。テスト結果は、本開示の液体-気体分離デバイスは、オイル-気体混合物から潤滑オイルを効率的に分離させ得ることを示している。したがって、本開示のコンプレッサは、潤滑オイル循環率(OCR)を著しく減少させる。このような結果は、本発明がなされる前の、当技術分野の従来のコンプレッサからは期待され得なかった。
【0051】
図8a及び図8bも参照され得る。図8aは、本開示によるオイル-気体分離デバイスのオイル-気体分布を示す断面図であり、図8bは、比較例におけるオイル-気体分離デバイスのオイル-気体分布を示す断面図である。図8bから分かるように、釣り合い重りの外周面の近傍に、より高い潤滑オイル含有率を有する領域があるとともに、コンプレッサ・ケーシングの近傍にも、より高い潤滑オイル含有率を有する領域があり、排出パイプから排出される作動流体に含まれる潤滑オイルの含有率は、より高い。対称的に、図8aにおいて、より高い潤滑オイル含有率を有する領域は、ケーシングの近傍に集中している。したがって、釣り合い重りに隣接する排出パイプから排出される作動流体に含まれる潤滑オイルの含有率はより小さく、それによって、コンプレッサのオイル循環率を減少させる。
【0052】
本開示のコンプレッサにおいて、釣り合い重りは、アクティブな回転部材として使用され、回転するときに、その周囲のオイル-気体混合物はサイクロン流を形成させられ、それによって、遠心力の作用の下でより大きな比重によって潤滑オイルを径方向外側に向かって放出する。したがって、釣り合い重りの近くの作動流体は、その内部に含む潤滑オイルがより少なく、釣り合い重りの近くに配置された排出パイプから容易に排出される。
【0053】
別の実施例において、排出パイプ130の端面131は、釣り合い重り110の回転軸の方向において、釣り合い重り110の外周面111に平行でなく、釣り合い重り110に面し得、釣り合い重り110の外周面111に対して斜め向きである。代替的な実施例において、排出パイプ130の排出開口は、釣り合い重りの回転方向における下流側に面するように方向付けられ得、コンプレッサ・ケーシング内部のオイル-気体混合物は、排出開口を介して排出パイプに進入し、排出パイプを介してコンプレッサから排出される。このようにすることで、排出パイプ130に進入する潤滑オイルの量は減少され得、より良好なオイル-気体分離効果が実現され得る。
【0054】
いくつかの実例において、排出パイプ130は、コンプレッサ・ケーシングから、釣り合い重り110の回転軸の方向に垂直な水平方向に直線的に延在し得る。排出パイプ130の端面131は、釣り合い重り110の外周面111に向かって方向付けられ、釣り合い重り110の外周面111に対して斜め向きである。この場合、排出パイプ130の端面131と排出パイプ130の中央長手方向軸との間の角度は、0度よりも大きいが、90度よりも小さい。
【0055】
他の実例において、釣り合い重り110に隣接する排出パイプ130の端部部分は、釣り合い重り110の周方向に、及び/又は、釣り合い重り110の回転軸に平行な垂直方向に屈曲され得る。すなわち、排出パイプ130はケーシング内に位置する屈曲された端部部分を含み得る。屈曲された端部部分は、湾曲した円弧状であってよく、又は、一定の角度で屈曲されてよい。
【0056】
図9に図示されるように、排出パイプ130の屈曲された端部部分230は、釣り合い重り110の周方向に屈曲される。1つの実例において、屈曲された端部部分230の端面231における排出開口は、釣り合い重り110の回転方向における下流に面し得る。したがって、より良好なオイル-気体分離効果が達成され得る。
【0057】
図10に図示されるように、排出パイプ130の屈曲された端部部分330は、釣り合い重り110の回転軸に平行な垂直方向に屈曲される。示された実例において、屈曲された端部部分330の端面331は下方に向かって方向付けられ得る。代替的な実例において、屈曲された端部部分330の端面331は,下方に向かって方向付けられてよく、又は、排出パイプに進入する潤滑オイルの量を減少させることが可能な任意の他の適切な方向に方向付けられてよい。
【0058】
示されたコンプレッサの軸方向において、排出パイプ130は、釣り合い重り110の回転によってもたらされたサイクロン流の範囲内に位置付けられ得る。図4に示される実例において、排出パイプ130は、第1の軸方向位置P1と第2の軸方向位置P2との間に位置付けられ得る。第1の軸方向位置P1において、排出パイプ130は、釣り合い重り110の第1の軸方向端面115の軸方向外側に位置し、第1の軸方向端面115と実質的に整列する。換言すれば、第1の軸方向位置P1において、排出パイプ130の排出通路133の一方の径方向側部は、第1の軸方向端面115の軸方向外側に位置し、排出通路133の一方の径方向側部の反対側の他方の径方向側部は、第1の軸方向端面115と実質的に整列する。図4における向きによると、第1の軸方向位置P1において、排出パイプ130は、軸方向において釣り合い重り110の第1の軸方向端面115の下方に位置し、排出パイプ130の排出通路の軸方向の最も上の部分は第1の軸方向端面115と実質的に整列する。第2の軸方向位置P2において、排出パイプ130は、釣り合い重り110の第2の軸方向端面117の軸方向外側に位置し、第2の軸方向端面117と実質的に整列する。換言すれば、第2の軸方向位置P2において、排出パイプ130の排出通路の前記他方の径方向側部は、第2の軸方向端面117の軸方向外側に位置し、排出通路の前記一方の径方向側部は、第2の軸方向端面117と実質的に整列する。図4における向きによると、第2の軸方向位置P2において、排出パイプ130は、軸方向において釣り合い重り110の第2の軸方向端面117の上方に位置し、排出パイプ130の排出通路の軸方向の最も下の部分は第2の軸方向端面117と実質的に整列する。
【0059】
本開示の理念によると、排出パイプ130は、第1の軸方向位置P1の軸方向外側に、又は第2の軸方向位置P2の軸方向外側に(すなわち、第1の軸方向位置P1よりも下に、又は第2の軸方向位置P2よりも上に)位置付けられてもよく、径方向内側に向かって、例えば、釣り合い重り110の外周面111と面一になるように、又は、釣り合い重り110の外周面111の径方向内側にまでも、更に延在してもよい。釣り合い重り110の回転によってもたらされるサイクロン流によって、排出パイプ130から排出される作動流体は、より低いオイル循環率(OCR)をなおも維持し得る。
【0060】
図1から図4に示される実施例において、釣り合い重り110は、駆動シャフト14の外周面に配置される。しかしながら、オイル-気体分離デバイスは、任意の他の適切な回転部材に配置された釣り合い重りと排出パイプとを含み得ることが理解されるべきである。例えば、図5に示されるように、オイル-気体分離デバイスは、圧縮機構に面するモータ13のロータ13aの端面1301に配置された釣り合い重り210を含み得る。図6を参照すると、オイル-気体分離デバイスは、圧縮機構から離れる側に面するモータ13のロータ13aの端面1302に配置された釣り合い重り310を含み得る。排出パイプ130と釣り合い重りとの間の相互位置関係及び寸法関係は、上記の説明を参照して適切に設定され得る。
【0061】
図1から図4に示される実施例において、オイル-気体分離デバイスは、主軸受けハウジング15とモータ13との間に配置される。しかしながら、オイル-気体分離デバイスは、コンプレッサ・ケーシング11によって画定される内部空間の任意の適切な位置に配置され得ることが理解されるべきである。例えば、図6に示されるように、オイル-気体分離デバイスは、モータ13とオイルサンプ20との間に位置し得る。
【0062】
釣り合い重りは、釣り合い重りが回転し得、その周囲のオイル-気体混合物にサイクロン流を形成させ得る限りにおいて、任意の適切な構造を有し得ることが理解され得る。例えば、釣り合い重りは、一定の径方向寸法又は可変的な径方向寸法を有し得、及び/又は一定の軸方向寸法又は可変的な軸方向寸法を有し得る。釣り合い重りは、筒状の外周面、先細状の外周面、又は上記の効果を実現可能な適切な形状を有する任意の他の外周面を有し得る。特定の用途に応じて、図面において示される釣り合い重りは、カム、偏心部、又は上記の効果を実現可能な任意の他の適切な部材によって置き換えられ得る。
【0063】
同様に、排出パイプは、作動流体の排出を促進し得る限りにおいて、任意の適切な構造を有し得、及び/又は任意の適切な数だけ設けられ得る。例えば、排出パイプは、開かれた端部部分を含み得る。排出パイプは、釣り合い重りの外周面に対して斜め向きに配置された端部部分を含み得る。例えば、釣り合い重りに隣接する排出パイプの端部部分は、斜め下に向かっており、このことは、排出パイプの内壁部における潤滑オイルの流出を促進し得る。図面におけるコンプレッサは、1つの排出パイプを含んでいるが、排出パイプの数は複数でもよい。特定の用途に応じて、図面において示される排出パイプも、固定的構造に配置された排出通路によって置き換えられ得る。
【0064】
本開示のいくつかの実施例及び変形例が詳細に説明されたが、本開示は、上述され、図面に示された実施例及び変形例に限定されるものではなく、他の様々な可能な変形例及び組み合わせを含み得ることが、当業者によって理解されるべきである。例えば、オイル-気体分離デバイスは底部分を有さなくてよく、故に、潤滑オイルは壁部に沿ってオイルサンプ内に直接的に落下され得る。他の変形例及び修正例は、本開示の本質及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実現され得る。全ての変形例及び修正例は本開示の範囲内にある。更には、本明細書において説明された全ての部材は、他の技術的に等価な部材によって置き換えられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10