(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183471
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20221206BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221206BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20221206BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J29/00 A
B41J25/304
B41J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090814
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】下田 恒史郎
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
2C064
2C065
【Fターム(参考)】
2C058AB02
2C058AC06
2C058AE04
2C058AF31
2C058DA10
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS06
2C061BB02
2C061BB28
2C061BB30
2C061CD07
2C061CF02
2C061CF04
2C064CC06
2C064CC13
2C064EE15
2C065AA01
2C065AB03
2C065CC07
2C065CC15
2C065CC16
(57)【要約】
【課題】プラテンローラに対するヘッドユニットの位置関係を調整可能なユニットの小型化を図ることができる印刷装置を提供する。
【解決手段】ヘッドユニットは、印刷ヘッドが形成されたヘッド基板をヒートシンク53に貼り付けて固定したものである。印刷ユニット5は、固定ネジ73A,73Bでヘッドユニットをヘッドホルダ51に締結する。ヘッドユニットは、調整機構70によってヘッドホルダ51に対して調整方向に移動可能である。調整機構70は、ヒートシンク53に固定した調整軸71A,71Bと、断面が円形で偏心し、ヘッドホルダ51のカム穴51E,51Fに係合する偏心カム72A,72Bである。ばね57は、支持軸5Aに揺動支持されるヘッドユニットの付勢位置53Cを付勢し、印刷ヘッドをプラテンローラに対して押圧する。調整機構70は、調整方向において付勢位置53Cと支持軸5Aの間に設け、印刷ユニット5の小型化を図る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に複数の発熱体が並ぶ印刷ヘッドおよび前記印刷ヘッドが固定されるヒートシンクを保持するヘッドユニットと、
前記第一方向に交差する第二方向において前記ヘッドユニットを保持するヘッド保持部材と、
前記第一方向に延びる回転軸を中心に回転するプラテンローラと、
前記第一方向に延び、前記印刷ヘッドが前記プラテンローラに近づく近接位置と、前記印刷ヘッドが前記プラテンローラから離れる離隔位置との間で前記ヘッド保持部材を揺動可能に支持する支持軸と、
前記ヘッドユニットを付勢し、前記印刷ヘッドを前記プラテンローラに押し付ける押圧加重を付与する付勢部材と、
前記第一方向および前記第二方向に交差する第三方向において、前記支持軸と、前記付勢部材によって前記ヘッドユニットが付勢される部位である付勢部位との間の位置で、前記ヒートシンクに設けられ、前記ヘッド保持部材側に突出して前記第二方向に延びる調整軸と、前記調整軸の周りを回転可能であり、前記調整軸に対して偏心した状態で前記ヘッド保持部材と接触する偏心カムとを有し、前記偏心カムの回転によって前記ヘッドユニットが前記ヘッド保持部材に対して相対的に移動することで、前記印刷ヘッドが前記近接位置にあるときの前記プラテンローラに対する前記発熱体の位置を調整可能な調整機構と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ヘッド保持部材は、前記第一方向に離れた位置のそれぞれにおいて、前記ヒートシンクと前記ヘッド保持部材とを一体に固定する固定ネジが挿通される二つの挿通穴を有し、
前記ヒートシンクは、前記二つの挿通穴のそれぞれに対応し、前記固定ネジが締結される二つの締結部を有し、
前記二つの挿通穴のうちの一方の挿通穴は、前記第一方向において、前記固定ネジの外径に対して他方の挿通穴よりも大きな間隙を有すること
を特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクおよび前記ヘッド保持部材の一方に設けられ、前記調整軸を中心とする円弧状に並び、前記偏心カムの回転位置を示す目盛りを有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクの前記付勢部位は、前記印刷ヘッドの前記発熱体の配置位置が前記第二方向において対応する位置に対し、前記第三方向にずれた位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記付勢部材は圧縮コイルばねであり、
前記ヘッド保持部材に対して前記ヘッドユニットとは反対側に配置され、前記支持軸を中心に前記ヘッド保持部材と共に揺動可能であり、前記圧縮コイルばねの内径よりも大径の第一突部を有し、前記第一突部で前記圧縮コイルばねの一端を保持するバネ保持部材を備え、
前記ヒートシンクの前記付勢部位は、前記圧縮コイルばねの内径よりも小径で前記圧縮コイルばねの他端を位置決めする第二突部として形成されたこと
を特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記調整機構は、前記第一方向に離れた位置のそれぞれに設けられ、
前記付勢部位は、前記第一方向において二つの前記調整機構の間の位置に設けられたこと
を特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、感熱式のラインプリンタを開示する。ラインプリンタは、印字ヘッドと、印字ヘッドが取り付けられるヘッドブラケットとの間に位置調整機構を有する。位置調整機構は、偏心カムによって印字ヘッドをヘッドブラケットに対して相対移動させ、印字ヘッドとプラテンとの位置関係を記録紙の搬送方向に調整する。位置調整後、印字ヘッドは、固定ネジによってヘッドブラケットに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のラインプリンタは、工具による偏心カムの調整方向と固定ネジの固定方向とが逆方向であり、印字ヘッドをプラテンに押し付ける押圧加重の調整機構を設けた場合、位置調整機構との干渉を回避するためには、構成の大型化を招く可能性があった。
【0005】
本発明は、プラテンローラに対するヘッドユニットの位置関係を調整可能なユニットの小型化を図ることができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第一方向に複数の発熱体が並ぶ印刷ヘッドおよび前記印刷ヘッドが固定されるヒートシンクを保持するヘッドユニットと、前記第一方向に交差する第二方向において前記ヘッドユニットを保持するヘッド保持部材と、前記第一方向に延びる回転軸を中心に回転するプラテンローラと、前記第一方向に延び、前記印刷ヘッドが前記プラテンローラに近づく近接位置と、前記印刷ヘッドが前記プラテンローラから離れる離隔位置との間で前記ヘッド保持部材を揺動可能に支持する支持軸と、前記ヘッドユニットを付勢し、前記印刷ヘッドを前記プラテンローラに押し付ける押圧加重を付与する付勢部材と、前記第一方向および前記第二方向に交差する第三方向において、前記支持軸と、前記付勢部材によって前記ヘッドユニットが付勢される部位である付勢部位との間の位置で、前記ヒートシンクに設けられ、前記ヘッド保持部材側に突出して前記第二方向に延びる調整軸と、前記調整軸の周りを回転可能であり、前記調整軸に対して偏心した状態で前記ヘッド保持部材と接触する偏心カムとを有し、前記偏心カムの回転によって前記ヘッドユニットが前記ヘッド保持部材に対して相対的に移動することで、前記印刷ヘッドが前記近接位置にあるときの前記プラテンローラに対する前記発熱体の位置を調整可能な調整機構とを備えることを特徴とする印刷装置が提供される。
【0007】
本態様の印刷装置は、支持軸に支持されて揺動するヘッド保持部材が保持するヘッドユニットに対して付勢部材が十分な押圧加重を付与可能な付勢部位と、支持軸との間の位置に調整機構を設けた。これにより、印刷装置は、ユニットの小型化を図ることができ、ひいては製品の小型化を図ることができる。
【0008】
本態様の前記ヘッド保持部材は、前記第一方向に離れた位置のそれぞれにおいて、前記ヒートシンクと前記ヘッド保持部材とを一体に固定する固定ネジが挿通される二つの挿通穴を有し、前記ヒートシンクは、前記二つの挿通穴のそれぞれに対応し、前記固定ネジが締結される二つの締結部を有し、前記二つの挿通穴のうちの一方の挿通穴は、前記第一方向において、前記固定ネジの外径に対して他方の挿通穴よりも大きな間隙を有してもよい。ヘッドユニットは小型化によって発熱体の駆動に伴う熱の影響を受けやすくなる。ヒートシンクが熱によって膨張した場合、ヒートシンクは発熱体が並ぶ第一方向に長く延びやすい。ヘッドユニットは、ヒートシンクが膨張しても、一方の挿通穴における第一方向の間隙によってヘッド保持部材に対する位置ずれを防止することができる。
【0009】
本態様は、前記ヒートシンクおよび前記ヘッド保持部材の一方に設けられ、前記調整軸を中心とする円弧状に並び、前記偏心カムの回転位置を示す目盛りを有してもよい。印刷装置は、目盛りを基準とする偏心カムの回転量によって、プラテンローラに対する発熱体の位置調整を容易に行うことができる。
【0010】
本態様の前記ヒートシンクの前記付勢部位は、前記印刷ヘッドの前記発熱体の配置位置が前記第二方向において対応する位置に対し、前記第三方向にずれた位置にあってもよい。ヒートシンクの付勢部位は、例えばプレス加工により形成される。付勢部位が発熱体の配置位置に対応する位置に対して第三方向にずらして形成されることで、プレス加工によって生じた凹部は、発熱体の第二方向に位置しない。発熱体の第二方向において印刷ヘッドとヒートシンクとの間に空間がないので、ヒートシンクは、十分な放熱効果を発揮することができ、ヘッド保持部材に対するヘッドユニットの位置ずれを防止することができる。
【0011】
本態様の前記付勢部材は圧縮コイルばねであり、前記ヘッド保持部材に対して前記ヘッドユニットとは反対側に配置され、前記支持軸を中心に前記ヘッド保持部材と共に揺動可能であり、前記圧縮コイルばねの内径よりも大径の第一突部を有し、前記第一突部で前記圧縮コイルばねの一端を保持するバネ保持部材を備え、前記ヒートシンクの前記付勢部位は、前記圧縮コイルばねの内径よりも小径で前記圧縮コイルばねの他端を位置決めする第二突部として形成されてもよい。圧縮コイルばねの他端は、第二突部の径方向において第二突部との間に間隙を有する。故に圧縮コイルばねの他端は、ヘッドユニットの位置調整において第二突部の位置の変更、あるいはヒートシンクの熱膨張による位置ずれが可能であり、ヘッドユニットに対する押圧加重の付与状態を維持することができる。
【0012】
本態様の前記調整機構は、前記第一方向に離れた位置のそれぞれに設けられ、前記付勢部位は、前記第一方向において二つの前記調整機構の間の位置に設けられてもよい。圧縮コイルばねは、二つの調整機構の間にあるので、偏心カムの回転を妨げない。故に印刷装置は、ヘッドユニットの位置調整のしやすさを確保しつつ、ユニットの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】フレーム7、プラテンローラ4、印刷ユニット5およびレバー部材6の位置関係を示す右側面図である。
【
図3】プラテンローラ4、印刷ユニット5、レバー部材6の斜視図である。
【
図5】下方から視た印刷ユニット5の斜視図である。
【
図6】
図2のI-I線で矢視方向に視た印刷ユニット5の底面図である。
【
図7】
図2のII-II線で切断し、矢視方向に視た印刷ユニット5の断面図である。
【
図8】
図4のIII-III線で切断し、矢視方向に視た印刷ユニット5の断面図である。
【
図9】
図4のIV-IV線で切断し、矢視方向に視た印刷ユニット5の断面図である。
【
図10】
図4のV-V線で切断し、矢視方向に視た印刷ユニット5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る印刷装置1の一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
図1の上方、下方、左斜め上方、右斜め下方、左斜め下方、および右斜め上方を、各々、印刷装置1の上方、下方、左方、右方、前方、後方とする。
【0015】
<印刷装置1の概要>
図1~
図3を参照し、印刷装置1の概要を説明する。印刷装置1は、熱転写型の印刷装置である。印刷装置1は、印刷ヘッド50(
図3参照)によりインクリボンを加熱し、インクリボンのインクを印刷媒体90に転写する動作(以下、「印刷動作」という。)を実行する。
【0016】
図1に示すように、印刷装置1はケース2を備える。ケース2は、印刷装置1のフレーム7(
図2参照)を内部に収容する。フレーム7は、プラテンローラ4、印刷ユニット5、レバー部材6、制御部(非図示)、駆動部20等を内部に支持する。制御部は、印刷装置1全体を制御するCPUを有する。駆動部20は、印刷媒体90およびインクリボンを搬送するためのモータである。プラテンローラ4、印刷ユニット5、およびレバー部材6の詳細は後述する。ケース2は箱状であり、上壁2U、下壁2S、左壁2L、右壁2R、前壁2F、後壁2B、および蓋部2Cを有する。
【0017】
上壁2Uの上面のうち前端部には、複数のスイッチ21が設けられる。上面には更に、スイッチ21よりも後方に排出部22が設けられる。排出部22は、上壁2Uに形成された貫通孔である。排出部22の形状は、左右方向に長い長方形である。ケース2内で印刷された印刷媒体90は、排出部22を介してケース2外に排出される。排出部22の前端部に設けられる切断部23は、印刷媒体90のうち印刷された部分を切り離すことが可能な刃である。
【0018】
右壁2Rの右面に開口26が設けられる。開口26は、ケース2内に設けられたリボン装着部27に連通する。リボン装着部27には、リボンカートリッジ3が着脱可能に装着される。なお、
図1は、リボン装着部27からリボンカートリッジ3が脱離された状態を示す。
【0019】
リボンカートリッジ3には、図示しないインクリボンが筒状の芯に巻回されたリボンロールと、使用済みのインクリボンを巻き取る為の巻取ロールとが収容される。リボンロールから繰り出されたインクリボンは、ケース2内で前方に向けて搬送される。インクリボンは、搬送過程で後述の印刷ヘッド50により加熱される。加熱されたインクリボンは、巻取ロールに巻き取られる。
【0020】
上壁2Uの後端部、後壁2Bの上端部、および、左壁2Lと右壁2Rとのそれぞれの上端部のうち後端近傍の各々は、ケース2の後端部に開口28を形成する。蓋部2Cは、後壁2Bの上端部に回動可能に支持され、開口28を開閉可能である。
図1は、蓋部2Cにより開口28が開放された状態を示す。なお、
図1の点線は、蓋部2Cにより開口28が閉塞された状態を示す。開口28は、ケース2内に設けられた媒体装着部29に連通する。媒体装着部29には、印刷媒体90が筒状の芯に巻回された媒体ロール9が着脱可能に装着される。ユーザは、開口28が開放された状態とすることによって、媒体ロール9を交換できる。
【0021】
印刷媒体90は、媒体装着部29に装着された状態の媒体ロール9から繰り出され、ケース2内を排出部22に向けて前方に搬送される。印刷媒体90は、搬送過程の一部において、リボンカートリッジ3のリボンロールから繰り出されたインクリボンの上側を並走する。印刷媒体90とインクリボンとのそれぞれのうち互いに並走する部分(以下、「並走部分」という。)において、印刷ヘッド50によりインクリボンが加熱され、インクリボンのインクが印刷媒体90に転写される。インクが転写された印刷媒体90は、排出部22を介してケース2外に排出される。
【0022】
<プラテンローラ4>
プラテンローラ4は、印刷媒体90およびインクリボンのそれぞれの並走部分を、印刷ヘッド50との間に挟持する。
図2、
図3に示すように、プラテンローラ4は円柱状を有する。プラテンローラ4は、印刷媒体90の並走部分に対して上側に配置される。プラテンローラ4には、左右方向に延びる貫通孔40が設けられる。貫通孔40に回転軸4Aが挿通される。回転軸4Aは左右方向に延びる。回転軸4Aの左右両端部は、フレーム7に固定される。なお、
図2は、左側と上側のフレーム7を図示する。プラテンローラ4は、回転軸4Aにより回転可能に支持される。プラテンローラ4の回転中心は、回転軸4Aの中心4Cと一致する。駆動部20は、左側のフレーム7の前部に固定される。左側のフレーム7は、左面側に複数のギア(非図示)を有する。複数のギアは、駆動部20が発生する駆動力をプラテンローラ4に伝達する。
【0023】
<印刷ユニット5>
印刷ユニット5は、インクリボンの並走部分を、印刷ヘッド50により加熱し、インクを印刷媒体90に転写させる。印刷ユニット5は、インクリボンの並走部分に対して下側に配置される。印刷ユニット5は、ヘッドホルダ51、移動部56、および一対のばね57を有する。
【0024】
ヘッドホルダ51は、基部51Aおよび一対の突出部51Bを有する。基部51Aは左右方向に延びる板状であり、上下方向と交差する。一対の突出部51Bは、基部51Aの後端部且つ左右両端部から後方に向けてそれぞれ突出する。一対の突出部51Bの各々は、左右方向に延びる貫通孔を有する。一対の突出部51Bのそれぞれの貫通孔に、支持軸5Aが挿通される。支持軸5Aは左右方向に延びる。支持軸5Aの左右両端部は、左右両側のフレーム7にそれぞれ固定される。ヘッドホルダ51は、支持軸5Aによって回動可能に支持される。ヘッドホルダ51の回動中心は、支持軸5Aの中心5Cと一致する。中心5Cは、プラテンローラ4を支持する回転軸4Aの中心4Cよりも下方且つ後方に配置される。
【0025】
図3は、ヘッドホルダ51が支持軸5Aを中心として、右側から視た状態で反時計回り方向に最大限回動した状態を示す。この状態で、基部51Aはプラテンローラ4から下方に離れる。以下、
図3に示す回動位置に配置されたヘッドホルダ51の位置を、「離隔位置」という。一方、
図2は、ヘッドホルダ51が支持軸5Aを中心として、右側から視た状態で時計回り方向に最大限回動した状態を示す。この状態で、基部51Aはプラテンローラ4に下方から近づく。以下、
図2に示す回動位置に配置されたヘッドホルダ51の位置を、「近接位置」という。
【0026】
図2、
図3に示すように印刷ヘッド50はヘッド基板54の上面に設けられる。印刷ヘッド50は、複数の発熱素子からなるラインサーマルヘッドであり、左右方向に延びる。ヘッド基板54は、ヒートシンク53の上面に、接着剤で貼り付けられて固定される。ヘッド基板54とヒートシンク53は、一体に固定されたヘッドユニット52である。ヘッドユニット52は、ヒートシンク53を下側に配置して、ヘッドホルダ51の基部51Aの上面に取り付けられる。
【0027】
移動部56は、軸受部56A、延設部56B、およびばね受部56Cを有する。軸受部56Aは、ヘッドホルダ51の一対の突出部51Bの間に配置される。軸受部56Aは、左右方向に延びる貫通孔を有する。支持軸5Aは、軸受部56Aの貫通孔に挿通される。移動部56は、支持軸5Aによって前側を自由端として揺動可能に支持される。移動部56の回動中心は、支持軸5Aの中心5Cと一致する。つまり、ヘッドホルダ51および移動部56は何れも、支持軸5Aを中心として回動可能である。延設部56Bは、軸受部56Aから前斜め下方に延びる。ばね受部56Cは、延設部56Bの前端部に設けられる。ばね受部56Cは、ヘッドホルダ51の基部51Aの下方に配置される。ばね受部56Cは、一対のばね57を上面で受ける。
【0028】
一対のばね57は、ばね受部56Cのよりも上方且つ左右両端部近傍に配置される。ばね受部56Cには、一対の突部56D,56Eが形成される。一対のばね57は、それぞれ、圧縮コイルばねである。一対のばね57の下端部は、それぞれ突部56D,56Eに嵌められる。一対のばね57は、ヘッドホルダ51の基部51Aに固定されるヘッドユニット52の付勢部位53Cと、移動部56のばね受部56Cとの間に介在する(
図10参照)。
【0029】
<レバー部材6>
レバー部材6は、ユーザによる操作を受け付け、印刷ユニット5の印刷ヘッド50をプラテンローラ4側に押圧する。レバー部材6は、押圧部65および操作部66を有する。
【0030】
押圧部65は、軸受部61および一対の当接部62を有する。軸受部61は円柱状を有し、左右方向に延びる。軸受部61は、左右方向に延びる貫通孔を有する。ケース2内に固定された非図示の回動軸(以下、「レバー回動軸」という。)は、軸受部61の左端部から貫通孔に進入し、右端部まで延びる。レバー回動軸の右端部には、軸受部61がレバー回動軸から抜けないように螺子60によってねじ止めされている。レバー回動軸の中心を、「中心6C」という。中心6Cは、印刷ユニット5を支持する支持軸5Aの中心5Cよりも下方、且つ、プラテンローラ4を支持する回転軸4Aの中心4Cも前方に配置される。一対の当接部62は、各々、軸受部61から、レバー回動軸の中心6Cを中心とした半径方向に突出する。一対の当接部62は、レバー回転軸と平行な方向である左右方向に離隔する。一対の当接部62のそれぞれの左右方向の間隔は、一対のばね57の左右方向の間隔と略一致する。一対の当接部62は、移動部56のばね受部56Cに下方から接触可能である。操作部66は一端部66Aから他端部66Bに向けて湾曲しながら延びる棒状を有する。一端部66Aは、軸受部61の左端部に連結される。
【0031】
レバー部材6は、レバー回動軸によって回動可能に支持される。レバー部材6の回動中心は、レバー回転軸の中心6Cと一致する。
図3は、レバー部材6がレバー回動軸を中心として、右側から視た状態で時計回り方向に最大限回動した状態を示す。この状態で、押圧部65の一対の当接部62は、移動部56のばね受部56Cに対して下方に僅かに離隔する。この場合、ばね受部56Cとヘッドホルダ51との間に介在する一対のばね57は圧縮せず、ヘッドホルダ51を押圧しない。このため、ヘッドホルダ51は離隔位置に配置される。
【0032】
レバー部材6が右側から視た状態で反時計回り方向に回動される過程で、押圧部65の一対の当接部62は、ヘッドホルダ51のばね受部56Cに下方から接触し、ばね受部56Cに対して上向きの力を付与する。移動部56は、ばね受部56Cが一対の当接部62から力を受けることに応じ、右側から視た状態で時計回り方向に回動する。また、ヘッドホルダ51は、一対のばね57を介して移動部56から上向きの力を受けることに応じ、右側から視た状態で時計回り方向に回動する。結果、ヘッドホルダ51は離隔位置から近接位置まで移動する。
【0033】
図2は、レバー部材6がレバー回動軸を中心として、右側から視た状態で反時計回り方向に最大限回動した状態を示す。この状態で、一対のばね57は圧縮する。一対のばね57は、圧縮により生じた弾性力により、ヘッドホルダ51を押圧する。この場合、ヘッドホルダ51の印刷ヘッド50は、プラテンローラ4側に押圧される。
【0034】
<印刷ユニット5の位置調整機能>
本実施形態の印刷装置1の印刷ユニット5は、プラテンローラ4に対する印刷ヘッド50の位置関係を調整可能な調整機構70を備える。
図4~
図10を参照し、調整機構70を説明する。なお、以下の説明では、ヘッドホルダ51がヘッドユニット52を保持する方向であるヒートシンク53およびヘッド基板54の厚み方向を、印刷ユニット5における「保持方向」と定義する。また、印刷ユニット5において、印刷ヘッド50が近接位置にあるときを基準に、ヒートシンク53側を保持方向の「上側」といい、ヘッドホルダ51側を保持方向の「下側」という。また、印刷ユニット5に対する印刷媒体90の搬送方向は、印刷ヘッド50が近接位置にあるときを基準に、印刷ヘッド50が延びる左右方向と、ヘッド基板54の厚み方向とに直交する方向である。以下の説明では、印刷時における搬送方向と略一致する方向を、印刷ユニット5における「調整方向」と定義する。すなわち調整方向は、印刷ユニット5において、ヘッドホルダ51に対するヒートシンク53の位置の調整を行う方向である。また、調整方向において、印刷ヘッド50をプラテンローラ4に対して印刷媒体90の搬送方向の上流側へ移動させる調整を行う向きを、「正側」いい、下流側へ移動させる調整を行う向きを、「負側」という。
【0035】
調整機構70は、プラテンローラ4に対する印刷ヘッド50の位置関係を調整する為、ヘッドホルダ51に対するヘッドユニット52の位置を調整方向に移動する機構である。
図4に示すように、印刷ヘッド50はヘッド基板54の上面において、調整方向負側の縁部寄りの位置で、左右方向に延びて設けられる。ヘッド基板54は左右方向に長く延び、調整方向の長さがヒートシンク53の略半分の大きさである。ヘッド基板54は、ヒートシンク53上面において調整方向負側寄りの位置に固定される。ヒートシンク53は、ヘッドホルダ51の基部51Aの上面に配置され、二つの固定ネジ73A,73B(
図5参照)で締結されて固定される。すなわち印刷ヘッド50を備えるヘッド基板54とヒートシンク53は一体のヘッドユニット52として、ヘッドホルダ51の保持方向上側に保持される。
【0036】
図5~
図10に示すように、固定ネジ73Aは、十字穴が形成されたボルトである。固定ネジ73Bは、六角穴が形成されたボルトである。固定ネジ73Bの軸の外径は、固定ネジ73Aの軸の外径より大きい。ヒートシンク53は、調整方向負側、且つ左右両側の各々の角部に、それぞれの固定ネジ73A,73Bが締結されるネジ穴53A,53Bを有する。ネジ穴53A,53Bは、それぞれヒートシンク53の上面側からプレス加工により下方へ向けて押し出され、下面において盛り上がった部分に形成される。ヒートシンク53の上面において、ネジ穴53A,53Bに対応する位置には、凹部53F(
図9参照)が形成される。
【0037】
ヒートシンク53の下面において、ネジ穴53A,53Bの間の部位は、ばね57の上端部がヘッドユニット52を上方に押圧する付勢部位53Cである。付勢部位53Cには、ヒートシンク53の下方に突出する一対の突部53D,53Eが設けられる。突部53D,53Eは、互いに左右方向に離れた位置に形成される。突部53D,53Eは、それぞれヒートシンク53の上面側からプレス加工により下方へ向けて押し出され、円柱状に突出する。ヒートシンク53の上面において、突部53D,53Eに対応する位置には、凹部53Gが形成される(
図10参照)。
【0038】
このように、調整方向における凹部53F,53Gのそれぞれの形成位置は、ヒートシンク53に貼設されるヘッド基板54に設けられた印刷ヘッド50の形成位置に対し、保持方向に重ならない位置である。このため、印刷ヘッド50の保持方向において、ヘッド基板54とヒートシンク53との間には、凹部53F,53Gによる空間が配置されない。故にヒートシンク53は、印刷ヘッド50の駆動に伴いヘッド基板54から伝導される熱に対し、十分な放熱効果を発揮することができる。
【0039】
図7に示すように、ヒートシンク53は、調整方向においてネジ穴53A,53Bのそれぞれの調整方向正側に、一対の調整軸71A,71Bを有する。調整軸71A,71Bは丸棒状であり、加締めによってヒートシンク53の下面に固定され、下方へ向けて保持方向に延びる。
【0040】
ヘッドホルダ51の基部51Aは、調整方向負側、且つ左右両側の各々の角部に、保持方向に貫通し、固定ネジ73A,73Bの軸が各々挿通される挿通穴51C,51Dを有する。挿通穴51C,51Dは、それぞれ調整方向に長い長円形状である。挿通穴51C,51Dの形成位置は、ヒートシンク53のネジ穴53A,53Bがそれぞれ保持方向において挿通穴51C,51D内に配置される位置である(
図8参照)。挿通穴51Cの左右方向の長さは、固定ネジ73Aの軸の外径と略同じであり、調整方向の長さは、固定ネジ73Aの軸の外径よりも大きい。左右方向において挿通穴51Cと固定ネジ73Aの軸との間に形成される間隙G1は、軸の調整方向への円滑な移動を妨げない程度の大きさである。固定ネジ73Aの軸を挿通穴51Cが案内することによって、調整機構70は、印刷ヘッド50の位置調整を左右方向において規制し、調整方向に制限することができる。
【0041】
左右方向において挿通穴51Dと固定ネジ73Bの軸との間に形成される間隙G2は、間隙G1と比べて大きい。印刷ヘッド50の駆動に伴う熱の影響を受けた場合に、左右方向に長いヒートシンク53は、熱膨張によって左右方向へ延びる長さが調整方向よりも大きくなる。印刷ユニット5は、熱膨張によって生じ得るヘッドホルダ51に対するヒートシンク53の左右方向の延びを間隙G2によって吸収し、印刷ヘッド50の位置ずれを防止することができる。そして、固定ネジ73Bの軸を挿通穴51Dが案内することによって、調整機構70は、印刷ヘッド50の位置調整を調整方向に行うことができる。
【0042】
ヘッドホルダ51の基部51Aは、調整方向において挿通穴51C,51Dのそれぞれの調整方向正側に、保持方向に貫通し、2つの調整機構70がそれぞれ配置されるカム穴51E,51Fを有する。2つの調整機構70は、調整軸71Aおよび偏心カム72Aと、調整軸71Bおよび偏心カム72Bである。カム穴51E,51Fは、それぞれ左右方向に長い略矩形形状である。調整軸71A,71Bは、それぞれ偏心カム72A,72Bを回転可能に支持する。調整軸71A,71Bは、それぞれカム穴51E,51Fの略中央に配置される。偏心カム72A,72Bは、保持方向の断面が円形で、断面の中心よりも偏心した位置に、調整軸71A,71Bの挿通穴を有する。カム穴51E,51Fの調整方向の長さは、偏心カム72A,72Bの断面の直径と略同じである。偏心カム72A,72Bのそれぞれは、調整軸71A,71Bの周りを回転可能であり、調整軸71A,71Bに対して偏心した状態で、調整方向においてカム穴51E,51Fと接触する。偏心カム72A,72Bの下端部には、つまみ部74A,74Bがそれぞれ固定される(
図5参照)。作業者はつまみ部74A,74Bを操作し、偏心カム72A,72Bのそれぞれを回動することができる。
【0043】
また、ヘッドホルダ51の基部51Aは、左右方向において挿通穴51C,カム穴51Eと、挿通穴51D,カム穴51Fとの間に、ばね57を保持方向に挿通する為の開口部51Gを有する。ヘッドユニット52の付勢部位53Cは、開口部51Gを介して保持方向下側に露出する。
【0044】
図10に示すように、印刷ユニット5は、一対のばね57を、ヘッドユニット52の付勢部位53Cに形成された突部53D,53Eと、移動部56のばね受部56Cに形成された突部56D,56Eとの間に配置する。ばね受部56Cの突部56D,56Eの外径D2は、ばね57の内径D0よりも大きい。ばね57の下端部は突部56D,56Eに嵌め込まれ、抜けが防止される。付勢部位53Cの突部53D,53Eの外径D1は、ばね57の内径D0よりも小さい。突部56D,56Eは、ばね57の上端部の内側に配置され、付勢部位53Cにおけるばね57の上端部の位置ずれを抑制する。また、突部53D,53Eは、調整機構70によってヘッドユニット52の位置が変更された場合、あるいはヒートシンク53が熱膨張した場合に、突部53D,53Eとばね57の上端部との間の相対的な位置が元の位置からずれても、径差によって吸収することができる。
【0045】
図7に示すように、調整機構70は、一対のばね57の配置位置を、左右方向において互いに離れた位置に配置する。これにより、一対のばね57は、左右方向においてより均一に、押圧加重を印刷ヘッド50に付与することができる。また、印刷ユニット5は、左右方向において互いに離れた位置に2つの調整機構70を設け、調整機構70の間に一対のばね57を配置する構成である。すなわち、つまみ部74A,74Bと固定ネジ73A,73Bは、左右方向において、ばね受部56Cおよび付勢部位53Cの外側に配置される。よって印刷ユニット5は、つまみ部74A,74Bの操作および固定ネジ73A,73Bの締結の動作が、ばね受部56Cおよび付勢部位53Cに阻害されにくい。
【0046】
また、2つの調整機構70は、調整方向において、ヘッドユニット52の付勢部位53Cと、ヘッドホルダ51を支持する支持軸5Aとの間に配置される。印刷ユニット5は、付勢部位53Cと支持軸5Aとの距離を確保して、ばね57によるヘッドユニット52への十分な押圧加重の付与ができる構造とする。その上で印刷ユニット5は、ヘッドユニット52の位置調整を行う調整機構70を付勢部位53Cと支持軸5Aとの間に配置することによって、各部品の配置レイアウトを効率化し、印刷ユニット5が大型化するのを抑制する。
【0047】
図6に示すように、ヘッドホルダ51は、下面に目盛り75A,75Bを有する。目盛り75Aは、偏心カム72Aが配置されるカム穴51Eの周囲において調整軸71Aの右側に形成され、調整軸71Aを中心とする円弧状に並ぶ。目盛り75Bは、偏心カム72Bが配置されるカム穴51Fの周囲において調整軸71Bの左側に形成され、調整軸71Bを中心とする円弧状に並ぶ。偏心カム72A,72Bのつまみ部74A,74Bは、それぞれ指示片74C,74Dを有する。指示片74C,74Dは、それぞれ調整軸71A,71Bの径方向の一方向へ向けてつまみ部74A,74Bの外周面から突出する突起部である。つまみ部74Aの指示片74Cは右方へ向けて突出し、保持方向下側から目視した場合に目盛り75Aを指し示す。つまみ部74Bの指示片74Dは左方へ向けて突出し、保持方向下側から目視した場合に目盛り75Bを指し示す。すなわち調整機構70は、指示片74C,74Dが指し示す目盛り75A,75Bの位置によって、ヘッドホルダ51に対するヘッドユニット52の調整方向の位置を提示することができる。
【0048】
<印刷ヘッド50の位置調整動作>
このような調整機構70を用い、プラテンローラ4に対する印刷ヘッド50の位置関係の調整する作業は、例えば印刷装置1の製造過程において行われる。作業者は、印刷ユニット5の固定ネジ73A,73Bを緩め、ヘッドホルダ51に対するヘッドユニット52の位置を移動できるようにする。次に作業者は、指示片74C,74Dが目盛り75A,75Bを指し示す位置を確認しながら、つまみ部74A,74Bを回転する。偏心カム72A,72Bがそれぞれカム穴51E,51Fを押圧し、挿通穴51C,51Dがそれぞれ固定ネジ73A,73Bの軸を調整方向に案内する。ヘッドユニット52は、ヘッドホルダ51に対して調整方向の正側または負側に移動する。これにより、プラテンローラ4に対する印刷ヘッド50の位置調整が調整方向において行われる。位置調整後、作業者は固定ネジ73A,73Bを締め、ヘッドユニット52をヘッドホルダ51に固定して、作業を完了する。
【0049】
<印刷動作>
ユーザは、印刷装置1の操作部66を操作し、レバー部材6を、右側から視た状態で時計回り方向に回動する。これにより、プラテンローラ4と、印刷ユニット5のうちヘッドホルダ51の基部51Aは、上下方向に離隔する。次にユーザは、リボンカートリッジ3を印刷装置1に装着する。次にユーザは、媒体ロール9を印刷装置1に装着し、印刷媒体90を前方に繰り出して排出部22まで誘導する。このとき、リボンカートリッジ3のインクリボンと印刷媒体90とのそれぞれの並走部分は、プラテンローラ4と、ヘッドホルダ51との間を通過する。なお、ヘッドホルダ51に支持された印刷ヘッド50とインクリボンとは離隔した状態であるため、この状態で印刷動作を行うことはできない。
【0050】
次にユーザは、操作部66を操作し、レバー部材6を、右側から視た状態で反時計回り方向に回動する。これにより、インクリボンと印刷媒体90とのそれぞれの並走部分は、プラテンローラ4とヘッドホルダ51により挟持される。このとき、印刷媒体90に対して上方からプラテンローラ4が接触し、インクリボンに対して下側から印刷ヘッド50が接触する。また、一対のばね57の弾性力により、ヘッドホルダ51に支持された印刷ヘッド50はプラテンローラ4側に押圧される。
【0051】
次にユーザは、印刷動作を開始する為の入力操作をスイッチ21に対して行う。印刷装置1は印刷動作を開始する。制御部は駆動部20を制御し、印刷媒体90およびインクリボンを搬送させる。同時に制御部は、印刷ヘッド50の加熱を開始する。これにより、インクリボンが加熱されて印刷媒体90にインクが転写される。インクが転写された印刷媒体90は、排出部22から排出される。
【0052】
<本実施形態の作用、効果>
以上説明したように、印刷ユニット5は、支持軸5Aに支持されて揺動するヘッドホルダ51が保持するヘッドユニット52に対してばね57が十分な押圧加重を付与可能な付勢部位53Cと、支持軸5Aとの間の位置に調整機構70を設けた。これにより、印刷装置1は、ヘッドユニット52の小型化を図ることができ、ひいては製品の小型化を図ることができる。
【0053】
ヘッドユニット52は小型化によって印刷ヘッド50の駆動に伴う熱の影響を受けやすくなる。ヒートシンク53が熱によって膨張した場合、ヒートシンク53は発熱素子が並ぶ左右方向に長く延びやすい。ヘッドユニット52は、ヒートシンク53が膨張しても、挿通穴51Dと固定ネジ73Bの軸との間の左右方向の間隙G2によって、ヘッドホルダ51に対する位置ずれを防止することができる。
【0054】
印刷ユニット5は、目盛り75A,75Bを基準とする偏心カム72A,72Bの回転量によって、プラテンローラ4に対する印刷ヘッド50の位置調整を容易に行うことができる。
【0055】
ヘッドユニット52の付勢部位53Cは、例えばヒートシンク53をプレス加工することにより形成される。付勢部位53Cが印刷ヘッド50の配置位置に対応する位置に対して調整方向にずらして形成されることで、プレス加工によって生じた凹部53F,53Gは、印刷ヘッド50の保持方向に位置しない。印刷ヘッド50の保持方向において印刷ヘッド50とヒートシンク53との間に空間がないので、ヒートシンク53は、十分な放熱効果を発揮することができる。よって、印刷ユニット5は、ヘッドホルダ51に対するヘッドユニット52の位置ずれを防止することができる。
【0056】
ばね57の上端部は、突部53D,53Eの径方向において突部53D,53Eとの間に間隙を有する。故にばね57の上端部は、ヘッドユニット52の位置調整による突部53D,53Eの位置の変更、あるいはヒートシンク53の熱膨張による位置ずれが可能であり、ヘッドユニット52に対する押圧加重の付与状態を維持することができる。
【0057】
ばね57は、左右方向において二つの調整機構70の間にあるので、偏心カム72A,72Bのつまみ部74A,74Bに対する操作を妨げない。故に印刷装置1は、ヘッドユニット52の位置調整のしやすさを確保しつつ、印刷ユニット5の小型化を図ることができる。
【0058】
上記実施形態において、左右方向は、本発明の「第一方向」の一例である。保持方向は、本発明の「第二方向」の一例である。ヘッドホルダ51は、本発明の「ヘッド保持部材」の一例である。ばね57は、本発明の「付勢部材」の一例である。調整方向は、本発明の「第三方向」の一例である。ネジ穴53A,53Bは、本発明の「締結部」の一例である。突部56D,56Eは、本発明の「第一突部」の一例である。突部53D,53Eは、本発明の「第二突部」の一例である。
【0059】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。印刷装置1の印刷方式は、インクリボンのインクを印刷ヘッド50により加熱して転写する熱転写方式に限定されない。例えば印刷装置1の印刷方式は、感熱紙を印刷ヘッド50により加熱して発色させる感熱方式でもよい。一対のばね57の代わりに、左右方向の中央のみに設けられる単一のばねが用いられてもよい。ばねの代わりに、圧縮することで弾性力が生じる弾性体が用いられてもよい。
【0060】
一対の偏心カム72A,72Bの代わりに、左右方向の一方もしくは中央のみに設けられる単一の偏心カムが用いられてもよい。偏心カム72A,72Bの断面は円形状に限らず、楕円形状であってもよい。調整軸71A,71Bは偏心カム72A,72Bに設け、ヒートシンク53に形成する挿入穴に差し込んで用い、偏心カム72A,72Bを回転可能としてもよい。
【0061】
一対の固定ネジ73A,73Bの代わりに、左右方向の一方もしくは中央のみに設けられる単一の固定ネジが用いられてもよい。固定ネジ73Aの代わりに、挿通穴51Cに案内されるピンを用い、ヒートシンク53に固定してよい。目盛り75A,75Bは、ヘッドホルダ51に印刷して形成してもよいし、ヘッドホルダ51の下面を加工して設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 印刷装置
4 プラテンローラ
4A 回転軸
5A 支持軸
50 印刷ヘッド
51 ヘッドホルダ
51C,51D 挿通穴
52 ヘッドユニット
53 ヒートシンク
53A,53B ネジ穴
53C 付勢部位
53D,53E 突部
53F,53G 凹部
56 移動部
56D,56E 突部
57 ばね
70 調整機構
71A,71B 調整軸
72A,72B 偏心カム
73A,73B 固定ネジ
75A,75B 目盛り
G1,G2 間隙