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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183865
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】タイロッド調整装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20221206BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B23P21/00 301A
B25B21/00 M
B25B21/00 530Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091372
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000117467
【氏名又は名称】安全自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸夫
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030CA01
3C030CC01
(57)【要約】
【課題】タイロッドの治具係合部とロックナット間が狭い場合においても、アライメントの調整を行えるタイロッド調整装置を提供する。
【解決手段】タイロッドの101の係合部104を回動する調整部2と、ロックナット105を回動する締付部3を有し、この調整部2と締付部3との間の距離を変えることができる移動部を有し、調整部2は、タイロッドの101の係合部104と係合する調整側係合部11を有する第1回動部材12を有し、第1回動部材12は本体部18を有し、締付部3は、ロックナット105と係合する締付側係合部21を有する第2回動部材22を有し、第2回動部材22は、第1回動部材12の本体部18の少なくとも一部を収納することができる遊嵌部27cを有するようにした。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロッドの係合部を回動することで、タイロッドとタイロッドエンドの螺合部の長さを伸縮させた後に、ロックナットを締め付けることで、前記螺合部の長さを固定するタイロッド調整装置において、
前記タイロッドの係合部を回動する調整部と、前記ロックナットを回動する締付部を有し、この調整部と締付部との間の距離を変えることができる移動部を有し、
前記調整部は、前記タイロッドの係合部と係合する調整側係合部を有する第1回動部材を有し、第1回動部材は本体部を有し、
前記締付部は、前記ロックナットと係合する締付側係合部を有する第2回動部材を有し、該第2回動部材は、前記第1回動部材の本体部の少なくとも一部を収納することができる遊嵌部を有することを特徴とするタイロッド調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイロッド調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の組み立てライン及び最終検査ラインにおいて、自動車のホイールアライメント、特にトー調整が行われている。
【0003】
この調整方法として、図7に示すように、タイロッド101の雄ネジ101aが、タイロッドエンド102の雌ネジ102aに螺合するように連結され、断面が六角形状の係合部104を回動させることにより、タイロッド101を伸縮させてホイールアライメント、特にトー調整を行った後に、ロックナット105を締め付けることにより、タイロッド101とタイロッドエンド102の螺合部103の長さを固定することが行われている。
【0004】
また、この螺合部103の伸縮を行うタイロッド調整装置110は、図9に示すように、係合部104を回動する調整部111と、ロックナット105を回動する締付部112を有する。調整部111は、係合部104と係合する調整側係合部113aを有する第1回動部材113を回動可能に備える。また、締付部112は、図10に示すように、ロックナット105と係合する締付側係合部115aを備えた締付側溝部118を有する第2回動部材115を回動可能に備える。
【0005】
また、第1回動部材113は、タイロッド101の円柱部101bの外径より大きな幅に形成されるとともに、調整側係合部113aを有する第1溝部116と、断面が六角形状の係合部104の外接円の径より若干大きな幅に形成された第2溝部117を有する。
【0006】
図9図10に示すように、調整部111と締付部112を当接させた状態で、係合部104とロックナット105との間に、第1回動部材113の第1溝部116と、第2回動部材115の締付側溝部118を挿入させた後に、相互を離間させて、係合部104と第1回動部材113の調整側係合部113aを係合させるとともに、ロックナット105と第2回動部材115の締付側係合部115aを係合させた後に、ロックナット105を緩め、第1回動部材113を回動させて、螺合部103を伸縮させてホイールアライメントの調整を行い、締付部112によりロックナット105を締め付けて、タイロッド101の長さの固定を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術においては、調整部111と締付部112を当接させた状態、すなわち、図10に示すように、第1回動部材113と第2回動部材115を相互に当接させた状態において、第1回動部材113の第1溝部116の外側端と、第2回動部材115の外側端の距離L11が、係合部104とロックナット105との距離L10より短くなければ、係合部104とロックナット105との間に、第1回動部材113の第1溝部116と、第2回動部材115の締付側溝部118を挿入することができず、タイロッド調整装置110を用いて、ホイールアライメントの調整を行うことができなかった。
【0008】
上記距離L11を縮めるために、第1回動部材113や第2回動部材115の厚みを狭めると、伝達トルクが不十分になったり、強度が低下するという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点を解決したタイロッド調整装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明は、タイロッドの係合部を回動することで、タイロッドとタイロッドエンドの螺合部の長さを伸縮させた後に、ロックナットを締め付けることで、前記螺合部の長さを固定するタイロッド調整装置において、
前記タイロッドの係合部を回動する調整部と、前記ロックナットを回動する締付部を有し、この調整部と締付部との間の距離を変えることができる移動部を有し、
前記調整部は、前記タイロッドの係合部と係合する調整側係合部を有する第1回動部材を有し、第1回動部材は本体部を有し、
前記締付部は、前記ロックナットと係合する締付側係合部を有する第2回動部材を有し、該第2回動部材は、前記第1回動部材の本体部の少なくとも一部を収納することができる遊嵌部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、タイロッドの係合部と係合する調整側係合部を有する第1回動部材を有し、締付部は、ロックナットと係合する締付側係合部を有する第2回動部材を有し、第2回動部材は、前記第1回動部材の本体部の少なくとも一部を収納することができる遊嵌部を有することにより、タイロッド調整装置において、タイロッドの係合部とロックナットとの間に嵌合する部分の距離を、第1回動部材と第2回動部材の厚みを薄くすることなく、従来技術より短くすることができ、タイロッドの係合部とロックナットとの距離が狭い車両に関しても、ホイールアライメントの調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るタイロッド調整装置の側面図。
図2】本発明の実施例に用いる調整部の要部縦断面図。
図3】タイロッド調整装置を、タイロッドへ取け付る方法を説明するための図。
図4】本発明の実施例に用いる第1回動部材で、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は上面図、(d)は横断面図。
図5】本発明の実施例に用いる第2回動部材で、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は上面図、(d)は横断面図。
図6】第1回動部材と第2回動部材を当接させた状態の横断面図。
図7】タイロッド正面図。
図8】(a)は図7の要部拡大図、(b)は係合部の縦断面図、(c)はロックナットの縦断面図。
図9】従来技術のタイロッド調整装置を、タイロッドへ取け付る方法を説明するための図。
図10】従来技術の第1回動部材と第2回動部材を当接させた状態の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明における実施例のタイロッド調整装置1を示し、このタイロッド調整装置1は、タイロッド101の係合部104を回動する調整部2と、ロックナット105を回動する締付部3を有する。調整部2と締付部3は、ロボットアーム等の第1移動部4により、任意の位置に移動することができるようになっている。
【0015】
また、調整部2と締付部3間の距離を、相互に近接又は離間する方向へ移動させて、調整部2と締付部3間の距離を変えることができる図示しないシリンダー等で構成される第2移動部を有する。
【0016】
調整部2の先端部には、タイロッド101における断面が六角形状の係合部104の対向する2面と係合する調整側係合部11を有する第1回動部材12が回動可能に設けられている。
【0017】
調整部2のケース2aの先端部には、図1図2に示すように、タイロッド101を挿入する挿入部2bが、その先端側が開口するようにして形成されている。
【0018】
第1回動部材12は、図2図4に示すように、外周面に複数の歯13が形成され、複数のギアで構成されるギアトレイン14を介して、図示しない調整回動駆動部により、時計方向と反時計方向に回動できるようになっている。この調整回動駆動部により、第1回動部材12を回動し、タイロッド101の係合部104を、時計方向と反時計方向にすることができるようになっている。
【0019】
第1回動部材12は、図4に示すように、軸受部15と、この軸受部15の外径より小さな外径からなる突出部16を有し、軸受部15の外周面に複数の歯13が設けられている。軸受部15と突出部16で本体部18が構成されている。なお、突出部16の外径と軸受部15の外径で形成してもよい。
【0020】
第1回動部材12には、図4に示すように、第2移動部の移動方向に貫通する貫通孔17が形成されている。貫通孔17には、第1回動部材12の径方向の外周面に開口する挿通部17aを有し、第1回動部材12はスパナの口部形状に形成されている。挿通部17aの開口幅は、タイロッド101の円柱部101bの外径より少し大きく設定されている。
【0021】
貫通孔17における後述する第2回動部材22側と反対側(貫通孔17の軸方向の外側)には、対向する第1平面部17b,17bが略平行となるように形成され、第1平面部17b,17bの間隔L1は、断面が6角形状に形成された係合部104の外接円の直径L2より若干大きくなるように設定されている。
【0022】
貫通孔17の第1平面部17b,17bは、図4(c),(d)に示すように、軸受部15全体と突出部16の一部に亘って形成されている。
【0023】
貫通孔17の第1平面部17b,17bにおける後述する第2回動部材22側(貫通孔17の軸方向の内側)には、第1平面部17bと17bとの間隔L1より狭い間隔L3で形成された、第2平面部17c,17cが形成されている。第2平面部17cと17cとの間隔L3は、断面が6角形状に形成された係合部104の2面幅L4より若干大きく設定されている。第2平面部17c,17cの一部が、係合部104の外周面における対向する2面と係合する調整側係合部11を構成する。
【0024】
貫通孔17の第2平面部17c,17cは、図4(c),(d)に示すように、突出部16に形成されている。
【0025】
締付部3の先端部には、断面が六角形状のロックナット105の対向する2面と係合する締付側係合部21を有する第2回動部材22が回動可能に設けられている。
【0026】
締付部3のケース3aの先端部には、タイロッド101を挿入する図示しない挿入部が、その先端側が開口するように形成されている。
【0027】
第2回動部材22は、図5に示すように、外周面に複数の歯23が形成され、第1回動部材12と同様に、複数のギアで構成されるギアトレインを介して、図示しない締付回動駆動部により、時計方向と反時計方向に回動できるようになっている。締付回動駆動部により、第2回動部材22を回動し、ロックナット105を、時計方向と反時計方向に回動することができるようになっている。
【0028】
第2回動部材22は、図5に示すように、第1回動部材12の軸受部15の外径とほぼ同じ外径の本体部25を有し、本体部25の外周面に複数の歯23が設けられている。
【0029】
第2回動部材22は、図5に示すように、第2移動部の移動方向に貫通する貫通孔27が形成されている。貫通孔27には、第2回動部材22の径方向の外周面に開口する挿通部27aを有し、第2回動部材22はスパナの口部形状に形成されている。挿通部27aの開口幅は、タイロッド101の雄ネジ101aの外径より大きく設定されている。
【0030】
貫通孔27の第1回動部材12側と反対側(外側)には、対向する平面部27b,27bが略平行となるように形成され、平面部27bと27bとの間隔L5は、断面が6角形状に形成されたロックナット105の2面幅L6より若干大きくなるように設定され、平面部27b,27bの一部が、ロックナット105の外周面における対向する2面と係合する締付側係合部21を構成する。平面部27bと27bの間隔L5は、図5(a),(b)に示すように、挿通部27aの幅より大きく設定されている。
【0031】
貫通孔27における平面部27b,27bの調整部2側(内側)には、第1回動部材12の突出部16の外径L7より若干大径の内径L8の遊嵌部27cが形成されている。遊嵌部27c内には、図6に示すように、第1回動部材12の突出部16の少なくとも一部、すなわち、本体部18の少なくとも一部、本実施例では突出部16全体が収納することができるようになっている。
【0032】
図6に示すように、第1回動部材12の軸受部15の内側と、第2回動部材22の内側を当接させ、遊嵌部27c内に突出部16を収納した状態において、第2回動部材22の貫通孔27の外側端と、第1回動部材12の突出部16の軸受部15側端との距離L9は、タイロッド101における係合部104とロックナット105との距離L10より短くなるように設定されている。
【0033】
次に、ホイールアライメントの調整方法について説明する。
【0034】
先ず、図3に示すように、第2移動部により調整部2と締付部3を相互に当接もしくは近接させる。また、調整回動駆動部により、第1回動部材12を回動し、調整部2の挿入部2bと、第1回動部材12の挿通部17aとの位置を略同じとするとともに、締付回動駆動部により、締付部3の挿入部と、第2回動部材22の挿通部27aの位置が略同じとなるようにする。なお、ロックナット105は仮締めされている。
【0035】
次に、第1移動部4により、調整部2と締付部3を移動させ、タイロッド101の雄ネジ101aと円柱部101bを、調整部2の挿入部2bと締付部3の挿入部より、第1回動部材12の第2平面部17c,17cと第2回動部材22の平面部27b,27bが、係合部104とロックナット105の間に位置するとともに、第1回動部材12が係合部104側に、第2回動部材22がロックナット105側に位置するように挿入する。
【0036】
次に、第2移動部により、調整部2と締付部3を相互に離間させ、第1回動部材12の調整側係合部11と、係合部104の外周面における対向する2面とを係合させるとともに、第2回動部材22の締付側係合部21と、ロックナット105の外周面における対向する2面とを外面とを係合させる。
【0037】
次に、締付回動駆動部により、第2回動部材22を回動させて、ロックナット105を緩めた後に、調整回動駆動部により第1回動部材12を回動させて、タイロッド101の係合部104を回動し、タイロッド101とタイロッドエンド102の螺合部103の長さをを伸縮させることで、タイロッド101とタイロッドエンド102の全長を伸縮させ、図示しないセンサー等に基づき、ホイールアライメント(トー角等)が所定の数値となるように、変更、調整を行う。
【0038】
次に、締付回動駆動部により、第2回動部材22を回動させて、ロックナット105を所定の締め付け力となるように締め付けて、螺合部103の長さ、すなわち、タイロッド101とタイロッドエンド102の全長を固定する。
【0039】
次に、第1移動部4により調整部2と締付部3をタイロッド101から取り外すとともに車体から退避させて、ホイールアライメントの調整が終了する。
【0040】
遊嵌部27c内に突出部16の少なくとも一部、すなわち、本体部18の少なくとも一部を収納することにより、第1回動部材12と第2回動部材22を当接させた状態において、第1回動部材12と第2回動部材22の夫々の厚みを、従来技術のものと同じとした場合において、伝達トルクや強度等が低下することなく、第1回動部材12の突出部16の軸受部15側端との距離L9を、従来の同様の距離L11より短くすることができ、係合部104とロックナット105との距離L10が狭い車両においても、タイロッド調整装置110を用いて、自動車の車体の組立、最終調整、検査等において、ホイールアライメントの調整を行うことができる。
【0041】
また、調整部2と締付部3の当接時において、遊嵌部27c内に突出部16を遊嵌して挿入するようにしているため、従来技術の装置に大幅な改良を加える必要がない。
【0042】
また、第1回動部材12と第2回動部材22の夫々の厚み、及び、夫々の歯13,23の厚みを、十分確保することができ、歯車の強度を確保することができるとともに、伝達トルクを十分確保することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 タイロッド調整装置
2 調整部
3 締付部
11 調整側係合部
12 第1回動部材
18 本体部
21 締付側係合部
22 第2回動部材
27c 遊嵌部
101 タイロッド
102 タイロッドエンド
104 係合部
105 ロックナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10