(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183963
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】散布作業方法、散布作業システム、及び散布作業プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221206BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 N
A01B69/00 303Z
A01B69/00 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091529
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁大
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB20
2B043BA09
2B043BB08
2B043DA17
2B043DC01
2B043EA22
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC15
2B043ED12
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD15
5H301GG06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG10
5H301HH10
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】自動走行する作業車両による散布作業の作業効率を向上させることが可能な散布作業方法、散布作業システム、及び散布作業プログラムを提供すること。
【解決手段】散布作業方法は、圃場Fにおいて複数列に配置された作物Vに対して散布作業を行う作業車両10の目標経路Rを生成することと、目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させることと、作業車両10に設けられる散布部14L,14Rの作物Vに対する散布物の散布方向を、作業車両10が自動走行しながら散布作業を行う作業経路R1の作物V又は作業経路R1に隣接する作物Vのいずれか一方の位置に応じて切り替えることと、を実行する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両の目標経路を生成することと、
前記目標経路に沿って前記作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて切り替えることと、
を実行する散布作業方法。
【請求項2】
前記作業車両が前記作業経路の左右方向の一方の第1方向に隣接する第1散布対象物と他方の第2方向に隣接する第2散布対象物のうち前記第1散布対象物の第1端点よりも手前に位置する前記第2散布対象物の第2端点に到達した場合に、前記第2方向に対する前記散布部による散布を停止させ、前記第1方向に対する前記散布部による散布を継続させる、
請求項1に記載の散布作業方法。
【請求項3】
前記作業車両が前記第2端点を通過して前記第1端点に到達した場合に、前記第1方向に対する前記散布部による散布を停止させる、
請求項2に記載の散布作業方法。
【請求項4】
前記第1方向及び前記第2方向に対する前記散布部による散布を停止させた後に、前記作業車両を次の前記作業経路に移動させる、
請求項3に記載の散布作業方法。
【請求項5】
前記第1方向及び前記第2方向に対する前記散布部による散布を停止させた後に、前記作業車両を前記作業経路上の所定位置まで後進させ、当該所定位置から次の前記作業経路に向けて旋回させる、
請求項4に記載の散布作業方法。
【請求項6】
前記作業車両は、第1散布対象物列を跨いで走行しながら前記第1散布対象物列と、前記第1散布対象物列の左右方向の一方の第1方向に隣接する第2散布対象物列と、前記第1散布対象物列の左右方向の他方の第2方向に隣接する第3散布対象物列とに前記散布作業を行うことが可能であり、
前記作業車両が前記第1散布対象物列の第1端点よりも手前に位置する前記第2散布対象物列の第2端点に対応する位置に到達した場合に、前記第2散布対象物列に対する前記散布部による散布を停止させ、その後に前記作業車両が前記第1端点に到達した場合に、前記第1散布対象物列に対する前記散布部による散布を停止させ、その後に前記作業車両が前記第1端点よりも進行方向に位置する前記第3散布対象物列の第3端点に対応する位置に到達した場合に、前記第3散布対象物列に対する前記散布部による散布を停止させる、
請求項1に記載の散布作業方法。
【請求項7】
前記作業経路の途中に前記散布対象物が存在しない領域がある場合に当該領域に対する前記散布部による散布を停止させ、前記散布対象物が存在する領域で前記散布部による散布を再開させる、
請求項1~6のいずれかに記載の散布作業方法。
【請求項8】
前記目標経路と前記散布部の散布方向を制御する制御情報とを前記作業車両に転送することをさらに実行する、
請求項1~7のいずれかに記載の散布作業方法。
【請求項9】
作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成処理部と、
前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて制御する制御情報を生成する制御情報生成処理部と、
を備える散布作業システム。
【請求項10】
作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両の目標経路を生成することと、
前記目標経路に沿って前記作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて切り替えることと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための散布作業プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行する作業車両により複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う散布作業方法、散布作業システム、及び散布作業プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場、農園などの作業地に植えられた作物に対して薬液を散布しながら目標経路を自動走行する作業車両が知られている(例えば特許文献1参照)。前記作業車両は、作物が植えられた複数の作業経路を順に自動走行しながら、作業経路内で左右方向に薬液を散布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業車両は、作物が並ぶ作物列の作業経路方向の端部に到達すると、一律に散布作業を停止して次の移動経路に移動する。このため、例えば隣り合う作物列の端部が作業経路方向に対して斜め方向になるように作物が植えられている場合には、作業経路の一方側(例えば右側)において、作物が植えられていない領域に薬液を散布したり、作業経路の他方側(例えば左側)において、作物に薬液を散布しなかったりするなど、散布作業の作業効率が低下する問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、自動走行する作業車両による散布作業の作業効率を向上させることが可能な散布作業方法、散布作業システム、及び散布作業プログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る散布作業方法は、作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両の目標経路を生成することと、前記目標経路に沿って前記作業車両を自動走行させることと、前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて切り替えることと、を実行する方法である。
【0007】
本発明に係る散布作業システムは、経路生成処理部と制御情報生成処理部とを備える。前記経路生成処理部は、作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両を自動走行させる目標経路を生成する。前記制御情報生成処理部は、前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて制御する制御情報を生成する。
【0008】
本発明に係る散布作業プログラムは、作業地において複数列に配置された散布対象物に対して散布作業を行う作業車両の目標経路を生成することと、前記目標経路に沿って前記作業車両を自動走行させることと、前記作業車両に設けられる散布部の前記散布対象物に対する散布物の散布方向を、前記作業車両が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて切り替えることと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動走行する作業車両による散布作業の作業効率を向上させることが可能な散布作業方法、散布作業システム、及び散布作業プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両を左前方側から見た外観図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る作業車両を左側から見た左側面の外観図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る作業車両を右側から見た右側面の外観図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施形態に係る作業車両を背面側から見た背面の外観図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る作物列の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る目標経路の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態に係る目標経路の生成方法を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態に係る目標経路の生成方法を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、従来の作業車両の散布作業方法を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、従来の作業車両の散布作業方法を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、従来の作業車両の散布作業方法を示す図である。
【
図8D】
図8Dは、従来の作業車両の散布作業方法を示す図である。
【
図8E】
図8Eは、従来の作業車両の散布作業方法を示す図である。
【
図9】
図9は、従来の作業車両で利用される制御情報を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図10C】
図10Cは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図10D】
図10Dは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図10E】
図10Eは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図10F】
図10Fは、本発明の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る作業車両で利用される制御情報の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される散布制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施形態に係る作業車両の旋回方法の一例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、本発明の他の実施形態に係る作業車両の散布作業方法の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の他の実施形態に係る作業車両の旋回方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
[自動走行システム1]
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と、操作端末20と、サーバー30と、基地局40と、衛星50とを含んでいる。作業車両10、操作端末20、及びサーバー30は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。また、作業車両10及び操作端末20のそれぞれと、サーバー30とは、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
作業車両10は、圃場Fに植えられた作物V(
図5参照)に対して薬液、水などの散布物を散布する散布作業を行う車両である。圃場Fは、本発明の作業地の一例であり、例えば葡萄園、林檎園などの果樹園である。作物Vは、本発明の散布対象物の一例であり、例えば葡萄の果樹である。
【0014】
作物Vは、圃場Fにおいて所定の間隔で複数列に配置されている。具体的には、
図5に示すように、複数の作物Vは、所定の方向(D1方向)に直線状に植えられており、直線状に並ぶ複数の作物Vを含む作物列Vrを構成する。
図5には、3つの作物列Vrを例示している。各作物列Vrは列方向(D2方向)に所定の間隔W1で配置されている。隣り合う作物列Vrの間隔W2の領域(空間)は、作業車両10がD1方向に走行しながら作物Vに対して散布作業を行う作業通路となる。作物列Vrは、本発明の散布対象物列の一例である。
【0015】
また、作業車両10は、予め設定された目標経路Rに沿って自動走行(自律走行)することが可能である。例えば
図6に示すように、作業車両10は、作業開始位置Sから作業終了位置Gまで、作業経路R1(作業経路R1a~R1f)及び移動経路R2を含む目標経路Rに沿って自動走行する。作業経路R1は、作業車両10が作物Vに対して散布作業を行う直線状の経路であり、移動経路R2は、作業車両10が散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する経路である。移動経路R2には、例えば旋回経路及び直進経路が含まれる。
図6に示す例では、圃場Fにおいて、作物列Vr1~Vr11から成る作物Vが配置されている。
図6では、作物Vが植えられている位置(作物位置)を「Vp」で表している。また、
図6の圃場Fを走行する作業車両10は、車体100が門型の形状を有しており(
図4C参照)、1つの作物列Vrを跨いで走行しながら、当該作物列Vrの作物V及び当該作物列Vrに隣接する作物列Vrに対して薬液を散布する。例えば
図6に示すように、作業車両10が作物列Vr5を跨いで走行する場合、作業車両10の左側車体(左側部100L)が作物列Vr4,Vr5の間の作業通路を走行し、作業車両10の右側車体(右側部100R)が作物列Vr5,Vr6の間の作業通路を走行し、かつ作物列Vr4,Vr5,Vr6の作物Vに対して薬液を散布する。
【0016】
また、作業車両10は、所定の列順序で自動走行を行う。例えば、作業車両10は、作物列Vr1を跨いで走行し、次に作物列Vr3を跨いで走行し、次に作物列Vr5を跨いで走行する。このように、作業車両10は、予め設定された作物列Vrの順番に応じて自動走行を行う。なお、作業車両10は、作物列Vrの配列順に1列ごとに走行してもよいし、複数列おきに走行してもよい。
【0017】
衛星50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局40は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局40は、作業車両10の現在位置を算出するための補正情報を作業車両10に送信する。
【0018】
作業車両10に搭載される測位装置16は、衛星50から送信されるGNSS信号を利用して作業車両10の現在位置(緯度、経度、高度)及び現在方位などを算出する測位処理を実行する。具体的には、測位装置16は、2台の受信機(アンテナ164及び基地局40)が受信する測位情報(GNSS信号など)と基地局40で生成される補正情報とに基づいて作業車両10を測位するRTK(Real Time Kinematic)方式などを利用して作業車両10を測位する。前記測位方式は周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
以下、自動走行システム1を構成する各構成要素の詳細について説明する。
【0020】
[作業車両10]
図3は、作業車両10を左前方側から見た外観図である。
図4Aは、作業車両10を左側から見た左側面の外観図であり、
図4Bは、作業車両10を右側から見た右側面の外観図であり、
図4Cは、作業車両10を背面側から見た背面の外観図である。
【0021】
図1~
図4に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、散布装置14、通信部15、測位装置16、障害物検出装置17などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、散布装置14、測位装置16、障害物検出装置17などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0022】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20、サーバー30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0023】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図12及び
図13参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(例えばサーバー30)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rの情報と散布方向を制御する制御情報F1(後述)とを含む経路データが記憶される。例えば、前記経路データは、操作端末20からサーバー30に送信され、サーバー30から作業車両10に転送されて記憶部12に記憶される。
【0024】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0025】
車両制御装置11は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、車両制御装置11は、測位装置16により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて、目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させる。例えば、前記測位状態がRTK測位可能な状態になって、操作端末20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から前記作業開始指示を取得すると、測位装置16により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10の自動走行を開始させる。これにより、作業車両10は、目標経路Rに沿って自動走行を開始し、前記作業通路において散布装置14による散布作業を開始する。
【0026】
また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータがストップボタンを押下すると、操作端末20は前記走行停止指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から前記走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行を停止させる。これにより、作業車両10は、自動走行を停止し、散布装置14による散布作業を停止する。
【0027】
作業車両10は、圃場Fにおいて複数列に並べて植えられた作物V(果樹)を跨いで走行する門型の車体100を備える。
図4Cに示すように、車体100は、左側部100Lと、右側部100Rと、左側部100L及び右側部100Rを接続する接続部100Cとにより門型に形成されており、左側部100L、右側部100R、及び接続部100Cの内側に作物Vの通過を許容する空間100Sが確保される。
【0028】
車体100の左側部100L及び右側部100Rそれぞれの下端部には、クローラ101が設けられている。左側部100Lには、エンジン(不図示)、バッテリー(不図示)などが設けられている。右側部100Rには、散布装置14の貯留タンク14A(
図4B参照)などが設けられている。このように、車体100の左側部100L及び右側部100Rに構成部品を振り分けて配置することにより、作業車両10は、左右のバランスの均衡化及び低重心化が図られている。その結果、作業車両10は、圃場Fの斜面などを安定して走行することができる。
【0029】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。走行装置13は、エンジン、クローラ101などを備える。
【0030】
左右のクローラ101は、静油圧式無段変速装置による独立変速が可能な状態でエンジンからの動力により駆動される。これにより、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に等速駆動されることにより前進方向に直進する前進状態になり、左右のクローラ101が後進方向に等速駆動されることにより後進方向に直進する後進状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が前進方向に不等速駆動されることにより前進しながら旋回する前進旋回状態になり、左右のクローラ101が後進方向に不等速駆動されることで後進しながら旋回する後進旋回状態になる。また、車体100は、左右いずれか一方のクローラ101が駆動停止された状態で他方のクローラ101が駆動されることによりピボット旋回(信地旋回)状態になり、左右のクローラ101が前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回(超信地旋回)状態になる。また、車体100は、左右のクローラ101が駆動停止されることで走行停止状態になる。尚、左右のクローラ101は、電動モータにより駆動される電動式に構成されていてもよい。
【0031】
図4Cに示すように、散布装置14は、薬液などを貯留する貯留タンク14A、薬液などを圧送する散布用ポンプ(不図示)、散布用ポンプを駆動する電動式の散布モータ(不図示)、車体100の背部において縦向き姿勢で左右に2本ずつ並列に備えられた散布管14B、各散布管14Bに3個ずつ備えられた合計12個の散布ノズル14C、薬液などの散布量及び散布パターンを変更する電子制御式のバルブユニット(不図示)、及び、これらを接続する複数の散布用配管(図示せず)などを備えている。
【0032】
各散布ノズル14Cは、対応する散布管14Bに、上下方向に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布ノズル14Cは、隣り合う散布ノズル14Cとの間隔及び散布管14Bに対する高さ位置を散布対象物(作物V)に応じて変更することができる。また、各散布ノズル14Cは、車体100に対する高さ位置及び左右位置を散布対象物に応じて変更可能に取り付けられている。
【0033】
なお、散布装置14において、各散布管14Bに設けられる散布ノズル14Cの数量は、作物Vの種類、各散布管14Bの長さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0034】
図4Cに示すように、複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の左外方に位置する作物Vaに向けて薬液を左向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最左端の散布管14Bに隣接する左内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100における左右中央の空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、車体100の右外方に位置する作物Vcに向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル14Cのうち、最右端の散布管14Bに隣接する右内側の散布管14Bに設けられた3個の散布ノズル14Cは、空間100Sに位置する作物Vbに向けて薬液を左向きに散布する。
【0035】
上記の構成により、散布装置14においては、車体100の左側部100Lに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが左側の散布部14Lとして機能する。また、車体100の右側部100Rに設けられた2本の散布管14Bと6個の散布ノズル14Cとが右側の散布部14Rとして機能する。そして、左右の散布部14L,14Rは、車体100の背部において、左右方向への散布が可能な状態で、左右の散布部14L,14Rの間に作物Vbの通過(空間100S)を許容する左右間隔を置いて配置されている。
【0036】
散布装置14において、散布部14L,14Rによる散布パターンには、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンと、散布部14L,14Rによる散布方向が限定された方向限定散布パターンとが含まれる。前記方向限定散布パターンには、散布部14Lが左右の両方向に薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する左側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左右の両方向に薬液を散布する右側3方向散布パターンと、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する2方向散布パターンと、散布部14Lが左方向のみに散布し、かつ、散布部14Rが薬液を散布しない左側1方向散布パターンと、散布部14Rが右方向のみに散布し、かつ、散布部14Lが薬液を散布しない右側1方向散布パターンとが含まれる。
【0037】
散布装置14は、サーバー30から転送される経路データに含まれる制御情報F1(
図11参照)に基づいて、薬液の散布方向(散布パターン)を切り替える切替処理を実行する。すなわち、散布装置14は、散布パターンの切替処理部としての機能を有する。散布パターンの切替方法については後述する。
【0038】
車体100には、測位装置16から取得する測位情報などに基づいて車体100を圃場Fの目標経路Rに従って自動走行させる自動走行制御部、エンジンに関する制御を行うエンジン制御部、静油圧式無段変速装置に関する制御を行うHST(Hydro-Static Transmission)制御部、及び、散布装置14などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部などが搭載されている。各制御部は、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニット、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報及び制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、事前に生成された目標経路Rなどが含まれてもよい。本実施形態では、各制御部を総称して「車両制御装置11」という(
図2参照)。
【0039】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及びアンテナ164などを備える通信機器である。アンテナ164は、車体100の天井部(接続部100C)の前方及び後方に設けられている(
図3参照)。また車体100の天井部には、作業車両10の走行状態を表示する表示灯102などが設けられている(
図3参照)。なお、測位装置16には前記バッテリーが接続されており、測位装置16は、前記エンジンの停止中も稼働可能である。
【0040】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局40などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0041】
アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。アンテナ164が作業車両10の前方及び後方に設けられているため、作業車両10の現在位置を高精度に測位することができる。
【0042】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための制御プログラム、及び、測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。測位制御部161は、アンテナ164が衛星50から受信するGNSS信号に基づいて所定の測位方式(RTK方式など)により作業車両10の現在位置を測位する。
【0043】
障害物検出装置17は、車体100の前方左側に設けられたライダーセンサー171Lと、車体100の前方右側に設けられたライダーセンサー171Rとを備える(
図3参照)。各ライダーセンサーは、例えばライダーセンサーが照射したレーザー光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、ライダーセンサーから測定範囲の各測距点(測定対象物)までの距離を測定する。
【0044】
ライダーセンサー171Lは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、ライダーセンサー171Rは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各ライダーセンサーは、測定した各測距点までの距離、各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報を車両制御装置11に送信する。
【0045】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の超音波センサー172F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の超音波センサー172R(
図4A及び
図4B参照)とを備える。各超音波センサーは、超音波センサーが発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF方式により、超音波センサーから測定対象物までの距離を測定する。
【0046】
前方左側の超音波センサー172Fは、車体100の前方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、前方右側の超音波センサー172Fは、車体100の前方右側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方左側の超音波センサー172Rは、車体100の後方左側の所定範囲が測定範囲に設定されており、後方右側の超音波センサー172Rは、車体100の後方右側の所定範囲が測定範囲に設定されている。各超音波センサーは、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを含む測定情報を車両制御装置11に送信する。
【0047】
また、障害物検出装置17は、車体100の前方側に設けられた左右の接触センサー173F(
図3参照)と、車体100の後方側に設けられた左右の接触センサー173R(
図4A及び
図4B参照)とを備える。車体100の前方側の接触センサー173Fは、接触センサー173Fに障害物が接触した場合に障害物を検出する。車体100の後方側の接触センサー173Rの前方(作業車両10の後方側)には散布装置14が設けられており、接触センサー173Rは、散布装置14に対して障害物が接触した場合に散布装置14が後方(作業車両10の前方側)に移動することにより障害物を検出する。各接触センサーは、障害物を検出した場合に検出信号を車両制御装置11に送信する。
【0048】
車両制御装置11は、障害物検出装置17から取得する障害物に関する測定情報に基づいて、作業車両10が障害物に衝突する可能性がある場合に障害物を回避する回避処理を実行する。
【0049】
上記の構成により、作業車両10を目標経路Rに沿って高精度に自動走行させることができるとともに、散布装置14による薬液などの散布作業を適正に行うことができる。
【0050】
上述した作業車両10の構成は、本発明の作業車両の一構成例であって、本発明は上述の構成に限定されない。上述の作業車両10は、第1作物列Vrを跨いで走行しながら、前記第1作物列Vrと、前記第1作物列Vrの左右方向それぞれの第2作物列Vrとに散布物を散布する散布作業を行うことが可能な車両である。他の実施形態として、作業車両10は、車体100が門型の形状ではなく、車体100全体が作物列Vrの間(作業通路)を走行する通常の形状であってもよい。この場合、作業車両10は、作物列Vrを跨がずに各作業通路を順に自動走行する。また、散布装置14は、一つの散布部を備え、左右の両方向に薬液を散布する散布パターンと、左方向のみに薬液を散布する散布パターンと、右方向のみに薬液を散布する散布パターンとを切り替えて散布作業を行う。
【0051】
[操作端末20]
図2に示すように、操作端末20は、制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0052】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10、サーバー30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0053】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡、車体100の周囲画像により、圃場F内を目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態、作業状況、及び周囲の状況を把握することが可能である。
【0054】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、制御部21に後述の自動走行処理(
図12及び
図13参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0055】
制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0056】
図2に示すように、制御部21は、設定処理部211、経路生成処理部212、制御情報生成処理部213、出力処理部214などの各種の処理部を含む。なお、制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0057】
設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)と、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)と、作業(ここでは散布作業)に関する情報(以下、作業情報という。)とを設定して登録する。
【0058】
前記作業車両情報の設定処理において、設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10においてアンテナ164が取り付けられている位置、作業機(ここでは散布装置14)の種類、作業機のサイズ及び形状、作業機の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。本実施形態では、作業機の情報として、散布装置14に関する情報が設定される。
【0059】
前記圃場情報の設定処理において、設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G(
図6参照)、作業方向等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。なお、作業方向とは、圃場Fから枕地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、散布装置14で散布作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0060】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10を手動により圃場Fの外周に沿って一回り周回走行させ、そのときのアンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0061】
前記作業情報の設定処理において、設定処理部211は、作業情報として、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅等を設定可能に構成されている。
【0062】
経路生成処理部212は、前記各設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である目標経路Rを生成する。目標経路Rは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの経路である(
図6参照)。
図6に示す目標経路Rは、作物Vが植えられた領域において作物Vに対して薬液を散布する直線状の作業経路R1と、散布作業を行わないで作物列Vr間を移動する移動経路R2とを含む。
【0063】
目標経路Rの生成方法の一例について
図7A及び
図7Bを用いて説明する。
図7Aには、作物列Vrを模式的に示している。先ず、オペレータは作業車両10を手動により作物列Vrの外周に沿って走行させる(
図7A参照)。作業車両10は、走行中に各作物列Vrの一方側(
図7Aの下側)の端点E1と他方側(
図7Aの上側)の端点E2とを検出し、各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得する。なお、端点E1,E2は、既に植えられた作物Vの位置であってもよいし、これから植える予定の作物Vの位置を示す目標物の位置であってもよい。経路生成処理部212は、作業車両10から各端点E1,E2の位置情報(座標)を取得すると、対応する端点E1,E2同士を結ぶ線L1(
図7B参照)を作物列Vrの作業経路に設定し、複数の作業経路と移動経路(旋回経路)とを含む目標経路Rを生成する。目標経路Rの生成方法は、上述の方法に限定されない。経路生成処理部212は、生成した目標経路Rを記憶部22に記憶してもよい。経路生成処理部212は、本発明の経路生成処理部の一例である。
【0064】
制御情報生成処理部213は、作業車両10に設けられる散布部14L,14Rの作物Vに対する薬液の散布方向(散布パターン)を、作業車両10が自動走行しながら散布作業を行う作業経路R1の作物V又は作業経路R1に隣接する作物Vのいずれか一方の位置に応じて制御する制御情報F1を生成する。
【0065】
ここで、従来の制御情報F0(
図9参照)に対応する散布作業方法の一例について、
図8A~
図8Eを用いて説明する。
図8A~
図8Eには、圃場Fに植えられた作物Vの作物列Vra~Vrhと、各作物列の端点P0とを模式的に示している。ここで、圃場Fの作物Vは、作物列Vrc~Vrhの各端点P0を結ぶ線L2が圃場Fの形状に応じて、作物列Vr内で作物Vが並ぶ方向(作業経路方向)に対して斜め方向になるように植えられている。
【0066】
このような圃場Fにおいて従来の作業車両10が散布作業を行う場合、作業車両10は以下の動作を実行する。先ず、
図8Aに示すように、作業車両10は、作物列Vrdを跨いで作業通路を直進しながら、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンにより散布作業を行う。ここで、
図8Bに示すように、作業車両10が作物列Vreの端点P0に対応する位置を通過した場合に、散布部14Rは作物Vが存在しない右側の領域A1に薬液を散布し続ける。その後、
図8Cに示すように、作業車両10が作物列Vrdの端点P0に到達すると散布部14L,14Rによる散布を停止して、旋回開始位置P1において旋回を開始する。この場合、作物列Vrcにおいて、作物列Vrdの端点P0に対応する位置から作物列Vrcの端点P0までの領域A2の作物Vに対して薬液が散布されないことになる。作業車両10は、旋回を開始すると、旋回経路r1と直進経路r2と旋回経路r3とを移動し、旋回終了位置P2から直進経路r4を直進して次の作業通路である作物列Vrgの端点P0に移動する(
図8D参照)。
【0067】
ここで、
図8Dに示すように、作物列Vrfにおいて、作物列Vrfの端点P0から作物列Vrgの端点P0に対応する位置までの領域A3の作物Vに対して薬液が散布されないことになる。その後、
図8Eに示すように、作業車両10は、作物列Vrgの端点P0に到達すると、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンにより散布作業を再開する。この場合、作業車両10が作物列Vrhの端点P0に対応する位置に到達するまでの間、散布部14Lは作物Vが存在しない左側の領域A4に薬液を散布し続ける。
【0068】
図9は、上述の散布作業に対応する制御情報F0を示している。従来の作業車両10では、
図8に示す圃場Fにおいて、散布装置14は制御情報F0に基づいて散布作業を実行する。このため、作物Vが存在しない領域A1,A4に薬液を無駄に散布したり、作物Vが存在する領域A2,A3に対して薬液を散布しなかったりする問題が生じる。よって、従来の技術では、散布の過不足が生じ、散布作業の作業効率が低下する問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る散布作業方法によれば、以下に示すように、散布作業の作業効率を向上させることが可能になる。
【0069】
具体的には、制御情報生成処理部213は、各作物列Vrの端点の位置関係に基づいて散布パターンを切り替える制御情報F1を生成する。前記散布パターンは、上述の4方向散布パターンと、左側3方向散布パターンと、右側3方向散布パターンと、2方向散布パターンと、左側1方向散布パターンと、右側1方向散布パターンとを含む。
【0070】
本実施形態に係る制御情報F1(
図11参照)に対応する散布作業方法の一例について、
図10A~
図10Fを用いて説明する。圃場Fの形状、作物V及び作物列Vra~Vrhの配置は、
図8に示す例と同一である。
【0071】
先ず、作業車両10は、従来の構成と同様に、作物列Vrdを跨いで作業通路を直進しながら、散布部14L,14Rのそれぞれが左右の両方向に薬液を散布する4方向散布パターンにより散布作業を行う(
図8A参照)。ここで、
図10Aに示すように、作業車両10が作物列Vreの端点P0に対応する位置P11に到達すると、散布装置14は、4方向散布パターンを、散布部14Lが左右の両方向に薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左方向のみに薬液を散布する左側3方向散布パターンに切り替える。
【0072】
なお、本実施形態において、「作業車両10が位置Pに到達する」とは、作業車両10の散布部14L,14Rの位置が位置Pに到達することを意味する。測位される作業車両10の現在位置は、作業車両10の中心位置を示すため、当該中心位置から散布部14L,14Rまでの距離に基づいて、散布部14L,14Rの位置を算出することができる。
【0073】
その後、
図10Bに示すように、作業車両10が作物列Vrdの端点P0に到達すると、散布装置14は、左側3方向散布パターンを、散布部14Lが左方向のみに散布し、かつ、散布部14Rが薬液を散布しない左側1方向散布パターンに切り替える。その後、
図10Cに示すように、作業車両10は、作物列Vrcの端点P0に対応する位置P12まで左側1方向散布パターンによる散布作業を行いながら直進し、位置P12に到達すると散布部14L,14Rはともに散布を停止する。その後、作業車両10は、位置P12を通過して旋回開始位置P1に到達すると旋回を開始する。作業車両10は、旋回を開始すると、旋回経路r1と直進経路r2と旋回経路r3とを移動し、旋回終了位置P2から直進経路r4を直進して次の作業通路である作物列Vrgの端点P0に移動する。
【0074】
ここで、本実施形態の作業車両10は作物列Vrdの端点P0から位置P12まで直進するため、旋回開始位置P1、旋回終了位置P2、及び移動経路r1~r3が、従来の旋回開始位置P1、旋回終了位置P2、及び移動経路r1~r3(
図10Cの点線経路)とは異なっている。すなわち、経路生成処理部212は、位置P12に基づいて目標経路Rを生成する。
【0075】
直進経路r4を移動する作業車両10は、
図10Dに示すように、作業車両10が作物列Vrfの端点P0に対応する位置P13に到達すると、散布装置14は、散布部14Rが右方向のみに散布し、かつ、散布部14Lが薬液を散布しない右側1方向散布パターンにより散布作業を再開する。その後、
図10Eに示すように、作業車両10が作物列Vrgの端点P0に到達すると、散布装置14は、右側1方向散布パターンを、散布部14Lが右方向のみに薬液を散布し、かつ、散布部14Rが左右の両方向に薬液を散布する右側3方向散布パターンに切り替える。その後、
図10Fに示すように、作業車両10が作物列Vrhに対応する位置P14に到達すると、散布装置14は、右側3方向散布パターンを4方向散布パターンに切り替えて散布作業を行う。作業車両10は、上述のように、作業経路R1に隣接する作物Vの位置に応じて散布パターンを切り替えながら散布作業を行う。
【0076】
図11は、上述の散布作業に対応する制御情報F1を示している。
図11に示す制御情報F1は、作業車両10が作物列Vrd,Vrgの作業経路R1を散布作業する場合の散布パターンを制御する情報を示している。制御情報生成処理部213は、圃場F内の全ての作物列Vrに対する制御情報F1を生成する。
【0077】
作業車両10は、
図10に示す圃場Fにおいて、目標経路Rに沿って自動走行しながら制御情報F1に基づいて散布作業を実行する。本実施形態によれば、作物Vが存在しない領域A1,A4(
図8B及び
図8E参照)に薬液を無駄に散布することを防ぐことができる。また、作物Vが存在する領域A2,A3(
図8C及び
図8D参照)が未散布状態になることを防ぐことができる。よって、本実施形態に係る散布作業方法によれば、散布作業の作業効率を向上させることが可能になる。
【0078】
ここで、制御情報F1の散布部14L,14RのON、OFFの制御タイミングは、作業車両10の位置及び散布部14L,14Rの位置に応じて設定される。
【0079】
具体的には、制御情報生成処理部213は、測位される作業車両10の中心位置と作業開始位置との間の距離を算出し、設定された走行速度から散布部14L,14Rの制御タイミングを算出する。また、散布部14L,14Rは、散布ブロアモーター(不図示)のON及びOFF、散布ノズル14Cの開閉などが必要になるため、制御情報生成処理部213は、これらの動作時間も考慮して、散布部14L,14Rの制御タイミングを算出する。これにより、制御情報F1において、例えば、散布部14L,14Rが対象位置に到達したタイミングで薬液が作物Vに散布されるように又は薬液の散布が停止されるように、制御タイミングが設定されている。制御情報生成処理部213は、本発明の制御情報生成処理部の一例である。
【0080】
出力処理部214は、経路生成処理部212が生成した目標経路Rの情報と、制御情報生成処理部213が生成した制御情報F1(
図11参照)とを含む経路データをサーバー30に出力する。なお、出力処理部214は、前記経路データを作業車両10に出力してもよい。
【0081】
制御部21は、上述の処理に加えて、各種情報を操作表示部23に表示させる処理を実行する。例えば、制御部21は、作業車両情報、圃場情報、作業情報などを登録する登録画面、目標経路R及び制御情報F1を生成する操作画面、作業車両10に自動走行を開始させる操作画面、作業車両10の走行状態などを表示する表示画面などを操作表示部23に表示させる。
【0082】
また制御部21は、オペレータから各種操作を受け付ける。具体的には、制御部21は、オペレータから作業車両10に作業を開始させる作業開始指示、自動走行中の作業車両10の走行を停止させる走行停止指示などを受け付ける。制御部21は、前記各指示を受け付けると、前記各指示を作業車両10に出力する。
【0083】
作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び散布作業を開始させる。また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行及び散布作業を停止させる。
【0084】
なお、操作端末20は、サーバー30が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、サーバー30の操作用端末として機能することが可能である。
【0085】
[サーバー30]
図2に示すように、サーバー30は、制御部31、記憶部32、操作表示部33、及び通信部34などを備えるサーバー装置である。なお、サーバー30は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、サーバー30で実行される各種の処理を、一又は複数のプロセッサーが分散して実行してもよい。
【0086】
通信部34は、サーバー30を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10、一又は複数の操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0087】
操作表示部33は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。
【0088】
記憶部32は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部32には、制御部31に後述の自動走行処理(
図12及び
図13参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部32に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、他のサーバー(不図示)から通信網N1を介してサーバー30にダウンロードされて記憶部32に記憶されてもよい。
【0089】
また記憶部32には、操作端末20から出力される目標経路R及び制御情報F1を含む経路データが記憶される。
【0090】
なお、記憶部32には、作業車両10ごとに、当該作業車両10に対応する経路データが記憶されてもよい。例えば、記憶部32に、作業車両10Aに対応する経路データと、作業車両10Bに対応する経路データとが記憶されてもよい。
【0091】
制御部31は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部31は、前記ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することによりサーバー30を制御する。
【0092】
図2に示すように、制御部31は、取得処理部311、転送処理部312などの各種の処理部を含む。なお、制御部31は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0093】
取得処理部311は、作業車両10及び操作端末20から各種情報を取得する。例えば、取得処理部311は、操作端末20からユーザー情報、圃場情報、作業予定情報、経路データなどを取得する。また、取得処理部311は、作業車両10から作業実績などの情報を取得する。例えば、取得処理部311は、操作端末20から取得した前記経路データを記憶部32に記憶する。
【0094】
転送処理部312は、目標経路R(
図6参照)及び制御情報F1(
図11参照)を含む経路データを作業車両10に転送する。なお、
図6に示す目標経路Rは、各作物列Vrの端点を結ぶ線が作物Vの並ぶ方向(作業経路方向)に対して直角になるように作物Vが植えられている圃場Fの経路を例示しているが、本実施形態では、
図10に示す圃場Fに対応する目標経路Rが生成される。
【0095】
作業車両10は、サーバー30から転送される目標経路R及び制御情報F1を含む経路データを記憶部12に記憶する。作業車両10は、測位装置16により作業車両10の現在位置を測位しつつ、目標経路Rに沿って自動走行を行う。
【0096】
ここで、作業車両10は、現在位置が圃場F内に位置している場合に自動走行できるように構成されており、現在位置が圃場F外(公道等)に位置している場合には自動走行できないように構成されている。また、作業車両10は、例えば現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に自動走行できるように構成されている。
【0097】
作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に、オペレータにより操作端末20においてスタートボタンが押されて作業開始指示が与えられると、車両制御装置11によって、自動走行を開始し、散布装置14による散布作業を開始する。すなわち、作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致していることを条件に自動走行を許可する。なお、作業車両10の自動走行を許可する条件は、前記条件に限定されない。
【0098】
車両制御装置11は、サーバー30から取得する目標経路Rに基づいて、作業車両10を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自動走行させる。また、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了すると、作業終了位置Gから圃場Fの入口まで自動走行させてもよい。作業車両10が自動走行している場合、操作端末20は、作業車両10の状態(位置、走行速度、作業状況等)を作業車両10から受信して操作表示部23に表示させることができる。
【0099】
また、作業車両10は、自動走行を行いながら、制御情報F1に基づいて散布作業を行う。具体的には、作業車両10は、散布部14L,14Rの作物Vに対する薬液の散布方向を、作業経路R1に隣接する作物Vの位置に応じて切り替える。
【0100】
例えば、作業車両10は、作業経路R1の作物列Vrdの端点P0よりも手前に位置する作物列Vreの端点P0に対応する位置P11に到達した場合に、作物列Vreの方向に対する散布を停止し、その他の方向に対する散布を継続する(
図10A及び
図11参照、「左側3方向散布パターン」)。また、作業車両10は、作物列Vrdの端点P0に到達した場合に、作物列Vrdの方向に対する散布を停止する(
図10B及び
図11参照、「左側1方向散布パターン」)。
【0101】
また、作業車両10は、作物列Vrcの端点P0に対応する位置P12に到達した場合に、全ての方向の散布を停止して、次の作業経路R1に移動する(
図10C及び
図11参照)。また、作業車両10は、作業経路R1の作物列Vrgの端点P0よりも手前に位置する作物列Vrfの端点P0に対応する位置P13に到達した場合に、作物列Vrfの方向に対する散布を開始する(
図10D及び
図11参照、「右側1方向散布パターン」)。また、作業車両10は、作物列Vrgの端点P0に到達した場合に、作物列Vrgの方向に対する散布を開始する(
図10E及び
図11参照、「右側3方向散布パターン」)。また、作業車両10は、作物列Vrhの端点P0に対応する位置P14に到達した場合に、作物列Vrhの方向に対する散布を開始する(
図10F及び
図11参照、「4方向散布パターン」)。
【0102】
作業車両10は、以上のようにして自動走行を行いながら散布作業を行う。すなわち、作業車両10は、第1作物列Vr(本発明の第1散布対象物列)を跨いで走行しながら第1作物列Vrと、第1作物列Vrの右方向(本発明の第1方向)に隣接する第2作物列Vr(本発明の第2散布対象物列)と、第1作物列Vrの左方向(本発明の第2方向)に隣接する第3作物列Vr(本発明の第3散布対象物列)とに散布作業を行うことが可能である。この場合に、作業車両10は、第1作物列Vrの第1端点P0よりも手前に位置する第2作物列Vrの第2端点P0に対応する位置(例えば
図10Aに示す位置P11)に到達した場合に、第2作物列Vrに対する散布を停止させ、その後に第1端点P0に到達した場合に、第1作物列Vrに対する散布を停止させ、その後に作業車両10が第1端点P0よりも進行方向に位置する第3作物列Vrの第3端点P0に対応する位置(例えば
図10Cに示す位置P12)に到達した場合に、第3作物列Vrに対する散布を停止させる。
【0103】
他の実施形態として、サーバー30の制御部31が、目標経路R及び制御情報F1を生成してもよい。すなわち、制御部31は、操作端末20の経路生成処理部212及び制御情報生成処理部213の機能を備えてもよい。また、他の実施形態として、操作端末20の制御部21が目標経路Rを生成し、サーバー30の制御部31が制御情報F1を生成してもよい。
【0104】
他の実施形態として、操作端末20が前記経路データを作業車両10に出力する構成の場合、作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から取得する経路データに基づいて自動走行及び散布作業を行う。
【0105】
[自動走行処理]
以下、
図12及び
図13を参照しつつ、作業車両10の車両制御装置11、操作端末20の制御部21、及びサーバー30の制御部31によって実行される前記自動走行処理の一例について説明する。
【0106】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11、制御部21、及び制御部31が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。また、前記自動走行方法は、本発明の散布作業方法を含む。
【0107】
ステップS1において、操作端末20の制御部21は、各種設定情報を登録する。具体的には、制御部21は、オペレータの設定操作に基づいて、作業車両10に関する情報(作業車両情報)と、圃場Fに関する情報(圃場情報)と、作業に関する情報(作業情報)とを設定して登録する。
【0108】
次にステップS2において、制御部21は、前記各設定情報に基づいて、目標経路Rを生成する。例えば、制御部21は、圃場Fにおいて作物Vが配置される位置に基づいて目標経路Rを生成する(
図7A及び
図7B参照)。また、制御部21は、前記各設定情報及び目標経路Rに基づいて、制御情報F1(
図11参照)を生成する。制御部21は、生成した目標経路R及び制御情報F1を含む経路データをサーバー30に出力する。
【0109】
次にステップS3において、サーバー30の制御部31は、操作端末20から出力された経路データを取得すると、経路データを操作端末20及び作業車両10の識別情報に関連付けて記憶部32に記憶する。
【0110】
ステップS4において、制御部31は、作業車両10に対応する経路データを作業車両10に転送する。
【0111】
次にステップS5において、作業車両10の車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、オペレータが操作端末20においてスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11が操作端末20から作業開始指示を取得すると(S5:Yes)、処理はステップS6に移行する。車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得するまで待機する(S5:No)。
【0112】
次にステップS6において、車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得し、かつサーバー30から転送された経路データを取得すると、当該経路データに応じた目標経路Rに沿って自動走行を開始する。なお、車両制御装置11は、サーバー30から取得した前記経路データを記憶部12に記憶する。
【0113】
次にステップS7において、車両制御装置11は、散布装置14に散布制御処理を実行させる。
図13には、散布制御処理の一例を示している。なお、
図13に示す散布制御処理は、
図10A~
図10Fに示した散布処理の制御情報F1に対応する処理を示しており、全作物Vに対する散布処理の一部を示している。
【0114】
具体的には、作業車両10が作物列Vrdの端点P0に到達すると(S21:Yes)、ステップS22において、散布装置14は、散布部14L,14Rの各散布ノズル14Cを左右方向ともにON状態にして、4方向散布パターンの散布を行う(
図8A参照)。
【0115】
次に作業車両10が作物列Vreの端点P0に対応する位置P11に到達すると(S23:Yes)、ステップS24において、散布装置14は、散布部14Rの右方向の散布ノズル14CをOFF状態にして、4方向散布パターンを左側3方向散布パターンに切り替える(
図10A参照)。
【0116】
次に作業車両10が作物列Vrdの端点P0に到達すると(S25:Yes)、ステップS26において、散布装置14は、散布部14Rの左方向の散布ノズル14C及び散布部14Lの右方向の散布ノズル14CをそれぞれOFF状態(中央方向の散布ノズルをOFF状態)にして、左側3方向散布パターンを左側1方向散布パターンに切り替える(
図10B参照)。
【0117】
次に作業車両10が作物列Vrcの端点P0に対応する位置P12に到達すると(S27:Yes)、ステップS28において、散布装置14は、散布部14Lの左方向の散布ノズル14CをOFF状態にして、全方向の散布を停止する(
図10C参照)。その後、作業車両10は、旋回開始位置P1から旋回終了位置P2まで旋回走行し、次の作物列Vrgに移動する(
図10C参照)。
【0118】
次に作業車両10が作物列Vrgの端点P0に向かう直進経路r4において作物列Vrfの端点P0に対応する位置P13に到達すると(S29:Yes)、ステップS30において、散布装置14は、散布部14Rの右方向の散布ノズル14CをON状態にして、右側1方向散布パターンにより散布作業を再開する(
図10D参照)。
【0119】
次に作業車両10が作物列Vrgの端点P0に到達すると(S31:Yes)、ステップS32において、散布装置14は、散布部14Rの左方向の散布ノズル14C及び散布部14Lの右方向の散布ノズル14CをそれぞれON状態(中央方向の散布ノズルをON状態)にして、右側1方向散布パターンを右側3方向散布パターンに切り替える(
図10E参照)。
【0120】
次に作業車両10が作物列Vrhの端点P0に対応する位置P14に到達すると(S33:Yes)、ステップS34において、散布装置14は、散布部14Lの左方向の散布ノズル14CをON状態にして、右側3方向散布パターンを4方向散布パターンに切り替える(
図10F参照)。
【0121】
以上のように、散布装置14は、車両制御装置11の指示に従って、制御情報F1に基づく散布制御処理を実行する。
【0122】
図12に戻り、ステップS8において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10の位置が作業終了位置Gに一致する場合に作業を終了したと判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S8:Yes)、前記自動走行処理は終了する。車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了するまでステップS7の散布制御処理を繰り返して自動走行を継続する。
【0123】
なお、ステップS1~S3の処理と、ステップS4~S8の処理とは、独立して実行されてもよい。例えば、自動走行システム1は、作業車両10を導入した初期設定の段階でステップS1~S3の処理を実行する。また、自動走行システム1は、オペレータが作業車両10で作業を行うときにステップS4~S8の処理を実行する。
【0124】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、作業地(例えば圃場F)において複数列に配置された散布対象物(例えば作物V)に対して散布作業を行う作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成し、作業車両10に設けられる散布部14L,14Rの前記散布対象物に対する散布物(例えば薬液)の散布方向を、作業車両10が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路の前記散布対象物又は当該作業経路に隣接する前記散布対象物のいずれか一方の位置に応じて制御する制御情報F1を生成する。また、本実施形態に係る自動走行方法(散布作業方法)は、一又は複数のプロセッサーが、作業地(例えば圃場F)において複数列に配置された散布対象物(例えば作物V)に対して散布作業を行う作業車両10の目標経路Rを生成すること(経路生成処理)と、目標経路Rに沿って作業車両10を自動走行させること(走行処理)と、作業車両10に設けられる散布部14L,14Rの前記散布対象物に対する散布物(例えば薬液)の散布方向を、作業車両10が自動走行しながら前記散布作業を行う作業経路に隣接する前記散布対象物の位置に応じて切り替えること(切替処理)と、を実行する。
【0125】
上記の構成によれば、例えば隣り合う作物列の端部が作業経路方向に対して斜め方向になるように作物が植えられている場合に(
図10A等参照)、作物Vが存在しない領域A1,A4(
図8B及び
図8E参照)に薬液を無駄に散布することを防ぐことができる。また、作物Vが存在する領域A2,A3(
図8C及び
図8D参照)が未散布状態になることを防ぐことができる。よって、本実施形態に係る散布作業方法によれば、散布作業の作業効率を向上させることが可能になる。また、作業車両10は、経路データに含まれる制御情報F1に従って散布作業を行うことができ、例えば障害物検出装置17の検出結果に基づいて散布作業を行う必要がないため、散布処理の処理負荷を低減することができる。また、矩形ではない圃場Fにおいても、作業車両10は、圃場F外に逸脱することなく最適な散布作業を行うことができる。
【0126】
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について以下に説明する。
【0127】
例えば
図14に示す圃場Fでは、作業車両10が作物列Vrcの端点P0に対応する位置P12まで左側1方向散布パターンにより散布作業を行いながら走行した場合に、作業車両10は位置P12から旋回を開始することができない。そこで、作業車両10は、位置P12に到達すると、散布作業を停止して、作業経路R1上の所定位置(旋回開始位置P1)まで後進させ、当該旋回開始位置P1から次の作業経路に向けて旋回する。
【0128】
また例えば
図15に示す圃場Fのように、作物列Vrの途中に作物Vが存在しない領域B1,B2があることが考えられる。この場合、作業車両10は、作物Vが存在しない領域B1,B2に対する散布部14L,14Rによる散布を停止させ、作物Vが存在する領域で散布部14L,14Rによる散布を再開させる。
【0129】
例えば作物列Vr5において、作業車両10は、領域B1に到達すると右側1方向散布パターンにより散布作業を行い、領域B1を通過すると4方向散布パターンにより散布作業を行う。また、例えば作物列Vr9において、作業車両10は、領域B2に到達すると散布作業を停止し、領域B2を通過すると4方向散布パターンにより散布作業を行う。
【0130】
なお、領域B1,B2の位置情報は、予め設定されて制御情報F1に登録される。また、作業車両10は、自動走行中に障害物検出装置17が領域B1,B2を検出した場合に、検出結果に基づいて散布パターンを切り替えてもよい。例えば、障害物検出装置17は、ライダーセンサー171L,171Rの検出結果に基づいて作物列Vrの途中に作物Vが存在しないことを検出することができる。
【0131】
ところで、作業車両10は、ある作物列Vrから次の作物列Vrに移動する場合に、枕地領域において位置偏差及び方位偏差を小さくするように位置修正制御を行う。ここで、隣り合う作物列の端部が作業経路方向に対して斜め方向になるように作物Vが植えられている圃場Fでは、
図8A~
図8Eに示すように、作物列Vrgに進入する側の旋回経路r3を作業車両10が走行する旋回走行距離が、作物列Vrdから退出する側の旋回経路r1を作業車両10が走行する旋回走行距離よりも短くなる場合がある。この場合、作業車両10が、旋回経路r3の直前の直進経路r2における位置偏差及び方位偏差が残ったまま旋回経路r3に移行し、旋回経路r3を走行中に位置修正制御を十分に行うことが困難になる。このため、作業車両10が旋回経路r3の走行を終了した時点の作物列Vrgに対する位置偏差及び方位偏差が大きくなる問題が生じる。
【0132】
そこで、他の実施形態として、例えば
図16に示すように、作物列Vrc~Vrhの各端点P0を結ぶ線L2が圃場Fの形状に応じて、作物列Vr内で作物Vが並ぶ方向(作業経路方向)に対して斜め方向になるように植えられている圃場Fでは、経路生成処理部212は、旋回経路r3の旋回開始位置を、旋回経路r3の周長(旋回走行距離)が所定長さ以上となる位置に設定してもよい。例えば、経路生成処理部212は、旋回経路r3の直前の直進経路r2を線L2に平行になるように生成し、旋回経路r3の旋回開始位置を、直進経路r2における、旋回経路r3の周長が所定長さ以上となる位置に設定する。これにより、旋回経路r3の周長(旋回走行距離)を従来の構成(
図8A~
図8E参照)よりも長くすることができる。また、直進経路r2を線L2に平行になるように生成することにより、旋回開始側の旋回半径d1と旋回終了側の旋回半径d2とを同一にするとともに、次に進入する作業経路R1に向かう直進経路r4の長さを長くとることができる。このため、作業車両10が作業経路R1間を移動する際の位置偏差及び方位偏差を小さくすることができる。
【0133】
上述の各実施形態では、操作端末20単体が本発明に係る散布作業システムに相当するが、本発明に係る散布作業システムは、操作端末20及び作業車両10により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
14 :散布装置
14L :(左側の)散布部
14R :(右側の)散布部
20 :操作端末
30 :サーバー
40 :基地局
50 :衛星
211 :設定処理部
212 :経路生成処理部
213 :制御情報生成処理部
214 :出力処理部
311 :取得処理部
312 :転送処理部
F :圃場(作業地)
F1 :制御情報
P0 :端点
R :目標経路
R1 :作業経路
V :作物(散布対象物)
Vr :作物列(散布対象物列)