(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184544
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】高温耐摩耗セラミック釉薬、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム及びその製造方法、使用
(51)【国際特許分類】
C04B 41/86 20060101AFI20221206BHJP
C04B 35/18 20060101ALI20221206BHJP
B28B 11/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C04B41/86 A
C04B41/86 L
C04B35/18
B28B11/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092467
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】521238731
【氏名又は名称】シノスチール ルオナイ マテリアルズ テクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン リシン
(72)【発明者】
【氏名】ボ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ピン
(72)【発明者】
【氏名】デン チェンチー
(72)【発明者】
【氏名】ズアン フイファン
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055BA35
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温耐摩耗セラミック釉薬、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム及びその製造方法、使用を開示する。
【解決手段】該高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部及び添加剤0.15~1部を含む。長石、粘土粉末、珪素粉末、タルク粉末、珪酸ジルコ
ニウム及び添加剤を上記割合で調製することにより、珪酸ジルコニウムに含まれる二酸化ケイ素により、塗布層の形成段階で、ジルコニウムがより均一に一酸化ケイ素及び酸化アルミニウムに分散され、アルミニウムジルコニウム共融体及び珪酸ジルコニウム結晶相成分を形成する。これによって、材料強度を向上させ、熱伝導率を下げて、省エネ、環境保護の役割を果たすことができる。該高温耐摩耗セラミック釉薬と、ムライト及びコーディエライトを主成分とするブランクとを配合して焼成することにより、釉薬がブランクの表面により緊密に付着することができ、剥離しにくくなる。また、釉薬が耐高温性を有し、特定の温度での液相量が低いため、釉薬がより安定になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部及び添加剤0.15~1部を含む
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック釉薬。
【請求項2】
重量部で、長石35~45部、粘土粉末3~8部、珪素粉末25~40部、タルク粉末12~18部、珪酸ジルコニウム5~20部及び添加剤0.3~0.8部を含み、
好ましくは、前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、水40~100部をさらに含み、
好ましくは、前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石15~40部、粘土粉末3~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部、添加剤0.15~1部及び水40~100部の成分からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の高温耐摩耗セラミック釉薬。
【請求項3】
前記添加剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンのうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記添加剤が、重量比が1:1~2:2~3であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンを含み、さらに好ましくは、重量比が1:1:2であり、
好ましくは、前記珪酸ジルコニウムにおいて、ジルコニウムの含有量が60~65wt%であり、二酸化ケイ素の含有量が30~35wt%である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高温耐摩耗セラミック釉薬。
【請求項4】
セラミック本体と前記セラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含み、
前記セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、前記微結晶セラミック耐火塗布層は、前記セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される請求項1~3のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項5】
前記セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部及び結合剤12~16部を含み、
好ましくは、前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~16部及び水5~10部を含み、
好ましくは、前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~17部及び水5~10部の成分からなる
ことを特徴とする請求項4に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項6】
前記コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が25~40wt%であり、
好ましくは、前記コーディエライトが合成コーディエライト材料であり、
好ましくは、前記結合剤が、純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末のうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記結合剤が、重量比が1~2:0.8~1.2:0.8~1.2である純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末を含み、さらに好ましくは、重量比が1.5:1:1である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項7】
前記ムライトにおけるAl2O3の含有量が40~90wt%であることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項8】
前記微結晶セラミック耐火塗布層の厚さが0.5~1.5mmであることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項9】
表面に前記高温耐摩耗セラミック釉薬が付着されるブランクを焼成するステップを含むことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項10】
前記焼成が焼結であり、
好ましくは、焼結温度が、1240℃よりも高く、焼成時間が50時間以上であり、
好ましくは、焼結温度が、1240~1300℃であり、焼成時間が50~80時間であり、
好ましくは、焼成が高温炉内で行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項11】
スプレー塗装で、前記高温耐摩耗セラミック釉薬を前記ブランクの表面に付着するステップを含み、
好ましくは、高圧噴射ガンで、前記高温耐摩耗セラミック釉薬を、高圧風の圧力が0.5~0.8MPaである高圧風スプレー塗装し、
好ましくは、スプレー塗装の厚さが0.5~2.5mmである
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項12】
前記高温耐摩耗セラミック釉薬を付着するためのブランクの作製ステップは、前記セラミック本体の原料で調製された鋳込みスラリーを、振動減圧成形によって金型内で成形して、養成を行うステップを含む
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項13】
前記振動減圧成形は、前記鋳込みスラリーを金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行うものであり、
好ましくは、高周波振動の周波数が90~120Hzであり、
好ましくは、養成が、成形したブランクに対して金型内で第1回の湿式養成を行って、脱型して、脱型したブランクに対して第2回の湿式養成を行うステップを含み、ここで、第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5℃以上であり、湿度が93~98%であり、
好ましくは、第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5~20℃であり、湿度が95%であり、
好ましくは、養成したあと、ブランクに対して、乾燥温度が25~500℃であり、乾燥時間が60時間よりも長い乾燥を行う
ことを特徴とする請求項12に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項14】
前記鋳込みスラリーの調製ステップが、前記ムライト、前記コーディエライト及び前記結合剤を強制撹拌機に入れて3~5分間の予混合を行って、混合した材料に水を加えて、3~5分間撹拌するステップを含む
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項15】
請求項4~8のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの、コ
ークス炉用炉ドア、煙道上昇管、石炭装入孔又は炉蓋の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料の技術分野に属し、具体的に、高温耐摩耗セラミック釉薬、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム及びその製造方法、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炉型の大型化に伴い、コークス炉用炉ドア、煙道上昇管、石炭装入孔などの箇所は、使用環境が苛酷となり、室温から1000℃までの激しい温度変化に頻繁に耐え、コークス押し出し、石炭装入を行う際のコークス又は微粉炭による摩耗が発生し、炉ドアの一体性及び密封性が悪く、寿命がわずか4年であり、頻繁にメンテナンスする必要があり、高排出と高汚染を招くので、省エネで且つ環境にやさしく作業でき且つ30年間使用できる大型のコークス炉の発展のボトルネックとなった。従来利用されるムライト-
コーディエライト材料は、気孔率が高く、表面が粗く、飛灰や、タールの付着、浸透を招き、机械的性能及び耐熱衝撃性能などをさらに改善する必要があり、且つその塗布層が剥離しやすい問題もある。この問題に対して、材料の大型化、材料表面の緻密化を実現させることで熱衝撃抵抗性を向上させる解决案が提供された。また、負圧注湯成形を利用することで、炉ドア煉瓦の大型化、煙道上昇管と石炭装入孔との一体化が実現される。
これを鑑みて、本発明を提出する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、高温耐摩耗セラミック釉薬、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム及びその製造方法、使用を提供することを目的とする。そのうち、ブランクの表面と高温耐摩耗セラミック塗布層とを複合して、さらに同期に焼成して材料表面の緻密化を実現させる。高温耐摩耗セラミック塗布層がブランクとほぼ同じの熱膨張係数を有するので、塗布層とブランクとの一体化を実現させる。ジルコニウムを含有する物質を添加することで、溶融温度が上げられ、熱衝撃安定性が実現されるので、背景技術に記載された課題を解決することができる。
本発明は、下記のように実現される。
【0004】
第1局面において、本発明は、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部及び添加剤0.15~1部を含む高温耐摩耗セラミック釉薬を提供する。
【0005】
第2局面において、本発明は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームをさらに提供する。ここで、セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0006】
第3局面において、本発明は、表面に高温耐摩耗セラミック釉薬が付着されるブランクを焼成するステップを含む上記高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法をさらに提供する。
【0007】
第4局面において、本発明は、上記高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの、コークス炉用炉ドア、煙道、石炭装入孔又は炉蓋の製造における使用をさらに提供する。
【0008】
本発明の技術案は、下記の有益な効果を有する。具体的に、長石、粘土粉末、珪素粉末
、タルク粉末、珪酸ジルコニウム及び添加剤を上記割合で調製した高温耐摩耗セラミック釉薬を、セラミックブランクの表面に塗布し、焼結で高温耐摩耗塗布層が得られる。焼結において、釉薬における珪酸ジルコニウムに含まれる二酸化ケイ素により、塗布層の形成段階で、ジルコニウムがより均一に一酸化ケイ素及び酸化アルミニウムに分散され、アルミニウムジルコニウム共融体及び珪酸ジルコニウム結晶相成分を形成する。これによって、塗布層の材料強度を向上させ、熱伝導率を下げて、省エネ、環境保護の役割を果たすことができる。さらに、焼結により、表面が該塗布層を有する高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームが得られ、塗布層の膨張が、ムライト及びコーディエライトを主成分とするブランクの膨張が同期に発生し、且つ高温での膨張係数が小さく、塗布層の膨張係数がブランクの膨張係数よりわずかに小さいため、塗布層が剥離しにくく、ブランクの表面により緊密に付着することができる。また、塗布層が耐高温性を有し、特定の温度での液相量が低いため、塗布層がより安定になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明瞭にするため、以下、本発明の実施例における技術案を明瞭且つ完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件又はメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤又は器械の、製造メーカーが明記されていないものが、市販の従来品を使用することが可能である。
【0010】
以下、本発明に係る高温耐摩耗セラミック釉薬、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム及びその製造方法、使用を詳細に説明する。
【0011】
発明者は、従来の塗布層付きセラミック材料に対して大量の研究及び実践を行う過程において、下記のことを発見した。ブランクの膨張が釉薬の膨張と同期ではなく、且つ高温で膨張係数が大きくなるため、釉薬が剥離しやすくなる。さらに、釉薬は特定の温度で液相量が高くなるので、釉薬の形態及び位置の不安定も招く。塗布層の形成段階では、ジルコニウムの分布が不均一になると、材料の体積効果が不一致になったり、塗布層が剥離しやすくなったりして、セラミック材料の机械的性能、熱伝導性及び耐熱衝撃性能などにさらに影響を与える。発明者は、これを鑑みて、さらに大量の研究及び実践を通して、下記の技術案を提出する。
【0012】
本発明の一部の実施形態は、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部及び添加剤0.
15~1部を含む高温耐摩耗セラミック釉薬を提供する。
【0013】
上記の原料配合比によって、釉薬を焼成して得られた塗布層が、よりよい性能を有する。また、珪酸ジルコニウムの添加及びその他の原料の配合により、珪酸ジルコニウムに含まれる二酸化ケイ素により塗布層を形成する段階で、ジルコニウムがより均一にケイ素酸化物及び酸化アルミニウムに分散され、アルミニウムジルコニウム共融体及び珪酸ジルコニウム結晶相成分を形成する。珪酸ジルコニウムが結晶核の形成を促進するためのものであり、結晶体の迅速な形成を促進することができるので、塗布層の材料強度を向上させ、熱伝導率を下げて、省エネ、環境保護の役割を果たすことができる。
【0014】
さらに、高温耐摩耗セラミック釉薬の焼成後の性能をさらに向上させるために、上記配合比を、重量部で、長石35~45部、粘土粉末3~8部、珪素粉末25~40部、タルク粉末12~18部、珪酸ジルコニウム5~20部及び添加剤0.3~0.8部を含むように最適化した。
【0015】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、通常にスラリー状態でブランクに付着して焼成されるた
め、一部の実施形態において、高温耐摩耗セラミック釉薬が水40~100部をさらに含む。
【0016】
一部の好ましい実施形態において、前記高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部、添加剤0.15~1部及び水40~100部からなる。これ
によって、該高温耐摩耗セラミック釉薬は、他の成分を追加してもその性能を損なわないようになる。
【0017】
具体的に、上記の高温耐摩耗セラミック釉薬の成分である添加剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。例えば、添加剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、又はデキストリンであってもよいし、カルボキシメチルセルロースナトリウムとポリアクリル酸ナトリウムとを任意の割合で混合した混合物、又はポリアクリル酸ナトリウムとデキストリンとを任意の割合で混合した混合物などであってもよい。
【0018】
一部の実施形態において、添加剤は、重量比が1:1~2:2~3であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンを含む。例えば、重量比が1:1:2である。
【0019】
上記添加剤の追加により、長石、粘土粉末、珪素粉末、タルク粉末及び珪酸ジルコニウムなどの原料の間がよりよい結合性能を有するので、焼成して得られた塗布層の付着性能及び机械的性能などがより良くなる。
【0020】
一部の好ましい実施形態において、珪酸ジルコニウムの役割を十分果たせるために、珪酸ジルコニウムにおいて、ジルコニウムの含有量が65wt%であり、二酸化ケイ素の含有量が30~35wt%である。
【0021】
本発明の一部の実施形態は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームをさらに提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0022】
具体的に、セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部及び結合剤12~16部を含む。
【0023】
上記の主成分を含むセラミック本体に対応するブランクの膨張と上記釉薬を焼成してなる塗布層との膨張を同期にすることができ、且つ高温での膨張係数が小さく、塗布層の膨張係数がブランクの膨張係数よりもわずかに小さいため、焼成過程において、塗布層が剥離しにくく、ブランクの表面に緊密に付着することができる。
【0024】
さらに、セラミック本体を成形するために、水を加えて原料を十分混合、成形する必要ある。このため、一部の実施形態において、セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト57~67部、コーディエライト20~27部、結合剤12~16部及び水5~10部を含む。
【0025】
さらに、一部の実施形態において、セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト57~67部、コーディエライト20~27部、結合剤12~17部及び水5~10部からな
る。
【0026】
焼成してなるセラミック材料が良い性能を有することができるように、一部の実施形態において、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が25-40wt%であり、ム
ライトにおけるAl2O3の含有量が40-90%である。
【0027】
そのうち、一部の実施形態において、結合剤は、純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末のうちの少なくとも1種を含むが、これに限定されない。例えば、結合剤が、純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末又はα-Al2O3微粉末であってもよいし、そのうちのいずれか2種又は3種を混合した混合物であってもよい。
【0028】
一部の好ましい実施形態において、結合剤は、重量比が1.5:1:1である純アルミ
ン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末を含む。
【0029】
セラミック材料がよりよい机械的性能及びより低い熱伝導性能を有することができるように、その表面に形成された微結晶セラミック耐火塗布層の厚さを制限し、具体的に0.
5~1.5mmであり、例えば、1mmである。
【0030】
本発明の一部の実施形態は、表面に高温耐摩耗セラミック釉薬が付着されるブランクを焼成するステップを含む上記高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法をさらに提供する。
【0031】
具体的に、上記焼成が焼結であってもよい。一部の実施形態において、焼結温度が1240℃よりも高く、焼成時間が50時間以上である。例えば、焼結温度が1300℃であり、焼成時間が65時間などである。
【0032】
一部の好ましい実施形態において、焼結温度が1240~1350℃であり、焼成時間が50~80時間である。
一部の実施形態において、焼成が高温炉内で行われる。
【0033】
さらに、一部の実施形態において、スプレー塗装で、高温耐摩耗セラミック釉薬をブランクの表面に付着する。具体的に、高圧噴射ガンで、高温耐摩耗セラミック釉薬の高圧風スプレー塗装を行うことができる。スプレー塗装の厚さが0.5~2.5mmであることができ、例えば、スプレー塗装の厚さが、0.5mm、0.6mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2.0mm、2.2mm、又は2.5mmなどである。上記技術的手段により、高温耐摩耗セラミック釉薬をブランクの表面に均一に付着させることができ、焼結後、よりよい性能を得られる。
【0034】
さらに、高温耐摩耗セラミック釉薬を付着するためのブランクの作製ステップは、セラミック本体の原料で鋳込みスラリーを調製して、振動減圧成形で金型内で成形して、養成を行うステップを含む。具体的に、振動減圧成形とは、鋳込みスラリーを金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行う作業である。一部の実施形態において、高周波振動の周波数が90~120Hzであり、例えば、100Hzである。
【0035】
一部の実施形態において、養成が、成形したブランクに対して金型内で第1回の湿式養成を行って、脱型して、脱型したブランクに対して第2回の湿式養成を行うステップを含む。第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5℃以上であり、湿度が93~97%である。
【0036】
具体的に、第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5~20℃であり、湿度が95%である。2回の養成により、ブランクの強度及び成形度をさらに向上させて、焼結性能を向上させることができる。
【0037】
好ましくは、養成したあと、ブランクに対して乾燥を行う。ここで、乾燥温度が25~500℃であり、乾燥時間が60時間よりも長い。乾燥により、ブランクにおける水分を除去することができるため、高温焼結に生じる応力による亀裂などの現象の発生を避けることができるとともに、釉薬をブランクによく付着することもできる。
【0038】
一部の実施形態において、鋳込みスラリーの調製ステップは、ムライト、コーディエライト及び結合剤を強制撹拌機に入れて10-15分間の予混合を行って、混合した材料に
水を加えて、5-10分間撹拌するステップを含む。
【0039】
上記方法で製造されたブランクは、荒素材であり、粒子によって形成され,気孔があるため、浸透性が強いとともに、十分な湿潤度を有する。釉薬が気孔を介してブランクに浸透して進入し、中間体(緊密結合体)として形成されるので、付着性が強くなり、形成された塗布層がブランクと緊密に結合することができ、剥離しにくくなる。
【0040】
本発明の一部の実施形態による上記高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを製造する方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0041】
ステップ1は、57-65%のムライト、20-27%のコーディエライト、12-16
%の結合剤を取って強制撹拌機に入れて、10-15分間の予混合を行い、そして、混合
した材料に5-10%の水を加え、5-10分間攪拌し、鋳込みスラリーを調製する。
【0042】
ステップ2は、振動減圧成形(調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行う)で、成形するとともに気泡を除去する。
【0043】
ステップ3は、温度が5℃以上の湿式法保温による養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
【0044】
ステップ4は、脱型した荒素材に対して温度が5℃以上の的環境で湿式養成を行う。
【0045】
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が常温~500℃であり、時間が60時間よりも長い。
【0046】
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが0.5-2.5mmである。
【0047】
ステップ7は、常温で乾燥を行う。
【0048】
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れ、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉する。ここで、焼結温度が1240℃よりも高く、高温維持時間が5時間以上である。
【0049】
なお、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームが煉瓦であってもよい。
【0050】
さらに、本発明の一部の実施形態は、上記高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの、コークス炉用炉ドア、煙道上昇管、石炭装入孔又は炉蓋の製造における使用をさらに提供する。
【0051】
以下は、実施例を参照しながら、本発明の特徴及び性能に対してより詳細に説明する。
【0052】
実施例1
本実施例は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0053】
セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト62部、コーディエライト24部、純アルミン酸カルシウムセメント6部、α-Al2O3微粉末8部及び水8部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が73wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が35wt%である。
【0054】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石38部、粘土粉末5部、珪素粉末25部、タルク粉末14部、珪酸ジルコニウム18部、添加剤0.35部及び水70部の成分を
含む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が65%、且つ二酸化ケイ素の含有量が35%であるものである。添加剤は、重量比が1:1であるカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを含む。
該高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0055】
ステップ1は、上記技術案に記載のムライト、コーディエライト及び結合剤を取って強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、そして、混合した材料に8%の水を加え、10分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。
【0056】
ステップ2は、振動減圧成形で、即ち、調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行い、気泡を除去する。ここで、高周波振動の周波数が100Hzである。
ステップ3は、温度が15℃であり且つ湿度が95%である湿式法保温による養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
ステップ4は、脱型した荒素材に対して温度が15℃である環境で24時間湿式養成を行う。
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が500℃であり、時間が50時間である。
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが0.5mmである。
ステップ7は、120℃で10時間の乾燥を行う。
【0057】
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1350℃よりも高く、高温維持時間が2時間である。焼成曲線が表1に表される。下記の実施例2~6がいずれも表1の焼成曲線に基づいて行われる。
【0058】
【0059】
実施例2
本実施例は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0060】
セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト65部、コーディエライト23部、純アルミン酸カルシウムセメント7部、シリカ微粉末8部及び水8部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が73wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が35wt%である。
【0061】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石35部、粘土粉末8部、珪素粉末30部、タルク粉末14部、珪酸ジルコニウム13部、添加剤0.5部及び水70部の成分を含
む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が65%、且つ二酸化ケイ素の含有量が35%であるものである。添加剤は、重量比が0.5:1であるポリアクリル
酸ナトリウム及びデキストリンを含む。
【0062】
該高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0063】
ステップ1は、上記技術案に記載のムライト、コーディエライト及び結合剤を取って強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、そして、混合した材料に8%の水を加え、10分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。
ステップ2は、振動減圧成形で、即ち、調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行い、気泡を除去する。ここで、高周波振動の周波数が100Hzである。
ステップ3は、温度が15℃であり且つ湿度が95%である湿式法保温による養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
ステップ4は、脱型した荒素材に対して温度が15℃である環境で24時間湿式養成を
行う。
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が420℃であり、時間が50時間である。
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが0.8mmである。
ステップ7は、120℃で10時間の乾燥を行う。
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1350℃であり、高温維持時間が2時間である。
【0064】
実施例3
本実施例は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0065】
セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト65部、コーディエライト20部、純アルミン酸カルシウムセメント7部、α-Al2O3微粉末5部、シリカ微粉末5部及び水7部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が73wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が35wt%である。
【0066】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石40部、粘土粉末5部、珪素粉末26部、タルク粉末10部、珪酸ジルコニウム18部、添加剤1部及び水40~100部の成分を含む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が65%、且つ二酸化ケイ素の含有量が35%であるものである。添加剤は、重量比が1:1:1.5であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンを含む。
【0067】
該高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0068】
ステップ1は、上記技術案に記載のムライト、コーディエライト及び結合剤を取って強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、そして、混合した材料に6%の水を加え、10分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。
ステップ2は、振動減圧成形で、即ち、調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行い、気泡を除去する。ここで、高周波振動の周波数が100Hzである。
ステップ3は、温度が15℃であり且つ湿度が95%である湿式法保温による養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
ステップ4は、脱型した荒素材に対して温度が15℃である環境で24時間湿式養成を行う。
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が500℃であり、時間が50時間である。
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが1mmである。
ステップ7は、120℃で10時間の乾燥を行う。
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1350℃であり、高温維持時間が2時間である。
【0069】
実施例4
本実施例は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0070】
セラミックブランクの原料は、重量部で、ムライト62部、コーディエライト24部、純アルミン酸カルシウムセメント8部、α-Al2O3微粉末3部、シリカ微粉末3部及び水8部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が73wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が35wt%である。
【0071】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石38部、粘土粉末5部、珪素粉末25部、タルク粉末14部、珪酸ジルコニウム18部、添加剤0.35部及び水70部の成分を含む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が65%、且つ二酸化ケイ素の含有量が35%であるものである。添加剤は、重量比が1:1であるカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを含む。
【0072】
該高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0073】
ステップ1は、上記技術案に記載のムライト、コーディエライト及び結合剤を取って強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、そして、混合した材料に8%の水を加え、10分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。
ステップ2は、振動減圧成形で、即ち、調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動を行う。ここで、高周波振動の周波数が100HZである。
ステップ3は、常温で自然養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
ステップ4は、脱型した荒素材に対して自然環境で24時間湿式養成を行う。
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が420℃であり、時間が50時間である。
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが0.5mmである。
ステップ7は、120℃である常温で10時間の乾燥を行う。
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1350℃であり、高温維持時間が2時間である。
【0074】
実施例5
本実施例は、セラミック本体とセラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含む高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを提供する。セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、微結晶セラミック耐火塗布層は、セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される上記高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものである。
【0075】
セラミックブランクの原料は、重量部で、ムライト62部、コーディエライト24部、純アルミン酸カルシウムセメント8部、α-Al2O3微粉末4部、シリカ微粉末4部及び水8部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が70wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が32wt%である。
【0076】
高温耐摩耗セラミック釉薬は、重量部で、長石38部、粘土粉末5部、珪素粉末25部、タルク粉末14部、珪酸ジルコニウム18部、添加剤0.35部及び水70部の成分を含む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が51%、且つ二酸化ケイ素の含有量が43%であるものである。添加剤は、重量比が1:1であるカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを含む。
【0077】
該高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法は、具体的に下記のステップを含む。
【0078】
ステップ1は、上記技術案に記載のムライト、コーディエライト及び結合剤を取って強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、そして、混合した材料に8%の水を加え、10分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。
ステップ2は、振動減圧成形で、即ち、調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行って、気泡を除去する。ここで、高周波振動の周波数が100Hzである。
ステップ3は、温度が15℃であり且つ湿度が95%である湿式法保温による養成を行って、凝固成形したあと、脱型する。
ステップ4は、脱型した荒素材に対して温度が15℃である環境で24時間湿式養成を行う。
ステップ5は、養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が420℃であり、時間が50時間である。
ステップ6は、高圧噴射ガンで、乾燥された荒素材の表面に、高温耐摩耗セラミック釉薬を高圧風スプレー塗装する。スプレー塗装の厚さが0.5mmである。
ステップ7は、120℃である常温で10時間の乾燥を行う。
ステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1350℃であり、高温維持時間が2時間である。
【0079】
実施例6
本実施例と実施例1の相違点は、下記のことのみにある。セラミック本体の原料は、重量部で、ムライト廃煉瓦32部、特級高純度アルミニウム材料30部、コーディエライト24部、アルミナセメントとα-Al2O3微粉末とを含む結合剤14部及び水8部を含む。そのうち、ムライトにおけるAl2O3の含有量が73wt%であり、コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が34wt%である。
【0080】
比較例1
本比較例と実施例1の相違点は、下記のことのみにある。高温耐摩耗セラミック釉薬の成分配合比は、重量部で、長石57部、粘土粉末16部、珪素粉末18部、タルク粉末5部、珪酸ジルコニウム2部、添加剤2部及び水70部である。そのうち、珪酸ジルコニウムにおいて、ジルコニウムの含有量が65%であり且つ二酸化ケイ素の含有量が34%である。添加剤は、重量比が0.5:1であるカルボキシメチルセルロースナトリウム及び
ポリアクリル酸ナトリウムを含む。
【0081】
比較例2
本比較例と実施例1の相違点は、下記のことのみにある。高温耐摩耗セラミック釉薬の組成における珪酸ジルコニウムの代わりに、酸化ジルコニウムを使用するとともに、炭酸バリウムを添加する。具体的に、長石42部、粘土粉末5部、珪素粉末25部、タルク粉末14部、酸化ジルコニウム8部、炭酸バリウム6部、添加剤0.35部及び水70部を含む。そのうち、珪酸ジルコニウムは、ジルコニウムの含有量が65%であり、且つ二酸化ケイ素の含有量が34%であるものである。添加剤は、重量比が1:1であるカルボキ
シメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを含む。
【0082】
比較例3
本比較例におけるブランクは、組成比率で、ムライト61%、合成コーディエライト26%及び純アルミン酸カルシウムセメント13%を含む。
【0083】
高温耐摩耗セラミック塗布層の組成配合比は、比率で、長石40%、粘土粉末10%、珪素粉末35%、タルク粉末15%、及び0.15-1%の、カルボキシメチルセルロースナトリウムとポリアクリル酸ナトリウムとデキストリンとの混合物を含む。
【0084】
[作製]
ブランクの各成分原料を強制撹拌機に入れて、15分間の予混合を行い、混合した材料に材料重量が5.5%の水(飲用基準を満たす)を加えて、8分間撹拌し、鋳込みスラリーを調製する。調製された鋳込みスラリーを事前に組合せた金型内に注入して、高周波振動及び圧力鋳込み処理を行い(時間が7分間である)、気泡を除去する。温度15℃で、湿式法保温による養成を24時間行って、凝固成形したあと、脱型する。脱型した荒素材に対して温度が15℃である環境で36時間湿式養成を行う。養成したあと、乾燥機に入れて乾燥する。乾燥温度が常温~500℃であり、時間が65時間である。乾燥された荒素材の表面に微結晶セラミック耐火釉薬をスプレー塗装し、スプレー塗装の厚さが1.5mmである。温度15℃で、10時間乾燥する。乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、焼結温度1250℃で7時間加熱焼結を行う。焼結したあと、出炉し、コークス炉用の、高温焼結で表面に高性能の微結晶セラミック耐火釉薬が付着されるムライトコーディエライトの煉瓦を製造する。
【0085】
比較例4
本比較例と実施例1の相違点が、下記のことのみにある。製造方法におけるステップ8が、乾燥した荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、炉を出て、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームが得られる。ここで、焼結温度が1380℃であり、高温維持時間が2時間である。
【0086】
比較例5
本比較例が実施例1との相違点は、下記のことのみにある。製造方法におけるステップ8は、乾燥された荒素材を高温炉内に入れて、炉ドアを閉じ、加熱焼結を行って、焼結したあと、出炉し、高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームを得る。ここで、焼結温度が1220℃であり、高温維持時間が10時間である。
【0087】
下記の国家標準試験方法によって、実施例1-実施例6、及び比較例1~3における高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの性能パラメータを測定する。具体的に、気孔、嵩密度がGB/T2997-2015に基づいて、常温抗折強度がGB/T3001-2017に基づいて、常温耐圧強度がGB/T5072-2008に基づいて、熱線法による熱伝導係数がGB/T5990-2006基づいて、熱衝撃がGB/T30873-2014に基づいて測定される。
【0088】
その結果が表2に示される。
【0089】
【0090】
以上により、本発明の上記実施形態において、ブランク及び釉薬の膨張が同期であり、且つ高温での膨張係数が小さく、釉薬の膨張係数がブランクの膨張係数よりわずかに小さいため、釉薬が剥離しにくく、ブランクの表面により緊密に付着することができる。釉薬が耐高温性を有し、特定の温度での液相量が低く、釉薬がより安定になる。焼結温度が高すぎると、材料内部のコーディエライト相が分解し、材料の耐剥離性が顕著に低下し、釉薬の線膨張とブランク材料の線膨張が同期に発生せず、結合性が悪い。また、塗布層の展着性が悪く、塗布層及びブランク材料の耐剥離性がいずれも良くない。焼結温度が低すぎると、ブランク材料に対する焼結が悪くなり、熱衝撃性が低下する。ブランクが荒素材であり、粒子によって形成され、気孔があるため、浸透性が強いとともに、十分な湿潤度を有する。釉薬が気孔を介してブランクに浸透して進入でき、中間体(緊密結合体)として形成されるので、付着性が強くなり、釉薬をブランクと緊密に結合させることができ、剥離しにくくなる。そして、珪酸ジルコニウムを加えると、珪酸ジルコニウムにおける二酸化ケイ素により、塗布層の形成段階で、ジルコニウムがより均一に一酸化ケイ素及び酸化アルミニウムに分散され、アルミニウムジルコニウム共融体及び珪酸ジルコニウム結晶相成分を形成する。珪酸ジルコニウムが結晶核の形成を促進するためのものであり、結晶体の迅速な形成を促進することができるので、材料強度を向上させ、熱伝導率を下げて、省エネ、環境保護の役割を果たすことができる。
【0091】
上記記載は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。当業者は、本出願に対して各種の変更や変化を加えてもよい。本出願の精神及び原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均一置換、改良等も、本出願の保護範囲内に属する。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック本体と前記セラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含み、
前記セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、前記微結晶セラミック耐火塗布層は、前記セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものであり、
前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部、添加剤0.15~1部及び水40~100部を含み、
前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~16部及び水5~10部を含む
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項2】
セラミック本体と前記セラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含み、
前記セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、前記微結晶セラミック耐火塗布層は、前記セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものであり、
前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石35~45部、粘土粉末3~8部、珪素粉末25~40部、タルク粉末12~18部、珪酸ジルコニウム5~20部、添加剤0.3~0.8部及び水40~100部を含み、
前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~16部及び水5~10部を含む
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項3】
セラミック本体と前記セラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含み、
前記セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、前記微結晶セラミック耐火塗布層は、前記セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものであり、
前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石15~40部、粘土粉末2~8部、珪素粉末20~30部、タルク粉末10~17部、珪酸ジルコニウム3~30部、添加剤0.15~1部及び水40~100部を含み、
前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~17部及び水5~10部の成分からなる
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項4】
セラミック本体と前記セラミック本体の表面に付着される微結晶セラミック耐火塗布層とを含み、
前記セラミック本体の原料は、ムライトとコーディエライトとを含み、前記微結晶セラミック耐火塗布層は、前記セラミック本体に対応するブランクの表面に付着される高温耐摩耗セラミック釉薬を焼成してなるものであり、
前記高温耐摩耗セラミック釉薬が、重量部で、長石35~45部、粘土粉末3~8部、珪素粉末25~40部、タルク粉末12~18部、珪酸ジルコニウム5~20部、添加剤0.3~0.8部及び水40~100部を含み、
前記セラミック本体の原料が、重量部で、ムライト57~65部、コーディエライト20~27部、結合剤12~17部及び水5~10部の成分からなる
ことを特徴とする高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項5】
前記添加剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンのうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記添加剤が、重量比が1:1~2:2~3であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びデキストリンを含み、さらに好ましくは、重量比が1:1:2であり、
好ましくは、前記珪酸ジルコニウムにおいて、ジルコニウムの含有量が60~65wt%であり、二酸化ケイ素の含有量が30~35wt%である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項6】
前記コーディエライトにおけるAl2O3の含有量が25~40wt%であり、
好ましくは、前記コーディエライトが合成コーディエライト材料であり、
好ましくは、前記結合剤が、純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末のうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記結合剤が、重量比が1~2:0.8~1.2:0.8~1.2である純アルミン酸カルシウムセメント、シリカ微粉末及びα-Al2O3微粉末を含み、さらに好ましくは、重量比が1.5:1:1である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項7】
前記ムライトにおけるAl2O3の含有量が40~90wt%であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項8】
前記微結晶セラミック耐火塗布層の厚さが0.5~1.5mmであることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォーム。
【請求項9】
表面に前記高温耐摩耗セラミック釉薬が付着されるブランクを焼成するステップを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項10】
前記焼成が焼結であり、
好ましくは、焼結温度が、1240℃よりも高く、焼成時間が50時間以上であり、
好ましくは、焼結温度が、1240~1300℃であり、焼成時間が50~80時間であり、
好ましくは、焼成が高温炉内で行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項11】
スプレー塗装で、前記高温耐摩耗セラミック釉薬を前記ブランクの表面に付着するステップを含み、
好ましくは、高圧噴射ガンで、前記高温耐摩耗セラミック釉薬を、高圧風の圧力が0.5~0.8MPaである高圧風スプレー塗装し、
好ましくは、スプレー塗装の厚さが0.5~2.5mmである
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項12】
前記高温耐摩耗セラミック釉薬を付着するためのブランクの作製ステップは、前記セラミック本体の原料で調製された鋳込みスラリーを、振動減圧成形によって金型内で成形して、養成を行うステップを含む
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項13】
前記振動減圧成形は、前記鋳込みスラリーを金型内に注入して、高周波振動及び真空処理を行うものであり、
好ましくは、高周波振動の周波数が90~120Hzであり、
好ましくは、養成が、成形したブランクに対して金型内で第1回の湿式養成を行って、脱型して、脱型したブランクに対して第2回の湿式養成を行うステップを含み、ここで、第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5℃以上であり、湿度が93~98%であり、
好ましくは、第1回の湿式養成及び第2回の湿式養成は、いずれも温度が5~20℃であり、湿度が95%であり、
好ましくは、養成したあと、ブランクに対して、乾燥温度が25~500℃であり、乾燥時間が60時間よりも長い乾燥を行う
ことを特徴とする請求項12に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項14】
前記鋳込みスラリーの調製ステップが、前記ムライト、前記コーディエライト及び前記結合剤を強制撹拌機に入れて3~5分間の予混合を行って、混合した材料に水を加えて、3~5分間撹拌するステップを含む
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの製造方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載の高温耐摩耗セラミック塗布層プリフォームの、コークス炉用炉ドア、煙道上昇管、石炭装入孔又は炉蓋の製造における使用。