(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184553
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ケーブル布設システム
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H02G1/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092480
(22)【出願日】2021-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】森田 聖
(72)【発明者】
【氏名】桑名 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CA05
5G352CB04
5G352CH05
5G352CL01
(57)【要約】
【課題】ケーブルを長距離に渡って安定して布設することができるケーブル布設システムを得ること。
【解決手段】ケーブル布設システムが、ガイドロープ18上を走行しながらケーブルを延線する自走式ケーブル延線機100と、自走式ケーブル延線機の走行経路に沿って床に固定された単管19に固定されるとともにガイドロープを保持するガイドロープ保持金物200と、を備え、自走式ケーブル延線機は、ガイドロープ上を移動する走行ローラ2A,2Bと、ガイドロープ保持金物上を移動する乗越えローラ3A,3Bと、を有し、ガイドロープ保持金物には、ガイドロープを保持するガイドロープ受け溝10と、乗越えローラの通路となる乗越えローラ用溝13とが設けられており、自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持金物を乗越える際には、乗越えローラが乗越えローラ用溝を走行する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの被布設箇所に沿って張られたガイドロープ上を走行しながら前記ケーブルを牽引することで前記ケーブルを延線する自走式ケーブル延線機と、
前記自走式ケーブル延線機の走行経路に沿って床に固定された単管と、
前記単管に固定されるとともに前記ガイドロープを保持するガイドロープ保持部と、
を備え、
前記自走式ケーブル延線機は、
前記ガイドロープ上で回転することで前記ガイドロープ上を移動する走行ローラと、
前記走行ローラに取り付けられて前記走行ローラとともに回転することで前記ガイドロープ保持部上を移動する乗越えローラと、
を有し、
前記ガイドロープ保持部には、前記ガイドロープを保持するガイドロープ受け溝と、前記乗越えローラの通路となる乗越えローラ用溝とが設けられており、
前記自走式ケーブル延線機が前記ガイドロープ保持部を乗越える際には、前記乗越えローラが前記乗越えローラ用溝を走行する、
ことを特徴とするケーブル布設システム。
【請求項2】
前記単管は、一定の間隔で配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル布設システム。
【請求項3】
前記乗越えローラは、前記走行ローラと回転軸が同じで前記走行ローラよりも直径が大きい、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル布設システム。
【請求項4】
前記乗越えローラ用溝は、前記ガイドロープ受け溝よりも高い位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載のケーブル布設システム。
【請求項5】
前記ガイドロープは、500N以下の張力で直線且つ水平に張られている、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載のケーブル布設システム。
【請求項6】
前記ガイドロープ保持部よりも下側で前記単管に固定されるとともに前記自走式ケーブル延線機によって延線された前記ケーブルを受けるコロをさらに備え、
前記コロは、軸方向の中央部が両端部よりも凹んだテーパ形状となっており、前記被布設箇所に前記ケーブルが移動される際には、前記テーパ形状に沿って前記ケーブルがスライド可能となっている、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のケーブル布設システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブルを布設するケーブル布設システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所といったプラントのケーブル処理室等では、種々の機器を接続するためのケーブルが布設される。ケーブル処理室等の狭所におけるケーブル延線作業は、人の往来が非常に困難なため、人のみの作業では多大な手間と時間を要する。このため、ケーブル被布設箇所に沿って張られたガイドロープ上を走行しつつケーブルを牽引する自走式ケーブル延線機の開発が進められている。
【0003】
特許文献1に記載の自走式ケーブル延線機は、2つの金具によって両端の2箇所が固定されたガイドロープ上を、ケーブルを把持した状態で走行し、始点から特定の距離を走行した時点でケーブルを開放することでケーブルを布設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、ガイドロープが固定されているのが2箇所だけなので、ガイドロープを強固に固定することはできない。また、ケーブル処理室といった狭所では、十分な作業環境が確保できないことから、アンカーボルト等を用いてガイドロープを強固に固定することが困難である。このため、ガイドロープが長くなるとガイドロープが撓みやすく、ケーブルを長距離に渡って安定して布設することが困難になるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーブルを長距離に渡って安定して布設することができるケーブル布設システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のケーブル布設システムは、ケーブルの被布設箇所に沿って張られたガイドロープ上を走行しながらケーブルを牽引することでケーブルを延線する自走式ケーブル延線機と、自走式ケーブル延線機の走行経路に沿って床に固定された単管と、単管に固定されるとともにガイドロープを保持するガイドロープ保持部と、を備える。自走式ケーブル延線機は、ガイドロープ上で回転することでガイドロープ上を移動する走行ローラと、走行ローラに取り付けられて走行ローラとともに回転することでガイドロープ保持部上を移動する乗越えローラと、を有する。ガイドロープ保持部には、ガイドロープを保持するガイドロープ受け溝と、乗越えローラの通路となる乗越えローラ用溝とが設けられている。自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持部を乗越える際には、乗越えローラが乗越えローラ用溝を走行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかるケーブル布設システムは、ケーブルを長距離に渡って安定して布設することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す斜視図
【
図2】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す側面図
【
図3】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す背面図
【
図4】実施の形態にかかるガイドロープ保持金物の構成を示す斜視図
【
図5】実施の形態にかかるガイドロープ保持金物の構成を示す側面図
【
図6】実施の形態にかかるテーパ付コロの構成を示す斜視図
【
図7】実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、第1工程および第2工程が完了した状態を示す図
【
図8】実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、単管に取り付けられたガイドロープ保持金物およびテーパ付コロを示す斜視図
【
図9】実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、単管に取り付けられたガイドロープ保持金物およびテーパ付コロを示す側面図
【
図10】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持金物を乗越える際の自走式ケーブル延線機およびガイドロープ保持金物の斜視図
【
図11】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持金物を乗越える際の自走式ケーブル延線機およびガイドロープ保持金物の側面図
【
図12】実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がケーブルを牽引している際のケーブル布設システムの正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示にかかるケーブル布設システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
ケーブル布設システムは、後述する自走式ケーブル延線機100と、後述するガイドロープ保持金物200と、後述するテーパ付コロ300と、後述するガイドロープ18と、後述する単管19とを有している。ケーブル布設システムは、ガイドロープ18を支える単管19を有しており、各単管19にガイドロープ保持金物200およびテーパ付コロ300が配置されている。以下、ケーブル布設システムが有する構成要素の構成例について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す斜視図である。
図2は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す側面図である。
図3は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機の構成を示す背面図である。
【0013】
自走式ケーブル延線機100は、後述するガイドロープ18上を走行しつつ後述するケーブル22を牽引することでケーブル22を布設する装置である。なお、以下の説明では、水平面内の2つの軸であって互いに直交する2つの軸をX軸およびY軸とする。また、X軸およびY軸に直交する鉛直方向の軸をZ軸とする。
【0014】
また、自走式ケーブル延線機100が走行するガイドロープ18は、Y軸方向に平行な方向に展張されているものとする。したがって、自走式ケーブル延線機100は、ガイドロープ18に沿ってY軸方向に平行な方向に移動する。また、ケーブル22を布設する際の自走式ケーブル延線機100の移動方向がプラスY軸方向であり、自走式ケーブル延線機100がケーブル22を開放してからの逆走方向がマイナスY軸方向である。すなわち、自走式ケーブル延線機100は、往路はプラスY軸方向に進み、復路はマイナスY軸方向に進む。また、プラスZ軸方向が上方向であり、マイナスZ軸方向が下方向である。
【0015】
自走式ケーブル延線機100は、フレーム1と、走行ローラ2A,2Bと、乗越えローラ3A,3Bと、モータ4A,4Bと、落下防止アーム5A,5Bと、より戻し用治具6と、走行方向選択スイッチ7と、電源スイッチ8とを備えている。自走式ケーブル延線機100では、走行ローラ2A,2B、乗越えローラ3A,3B、モータ4A,4B、落下防止アーム5A,5B、より戻し用治具6、走行方向選択スイッチ7、および電源スイッチ8が、フレーム1に取り付けられている。
【0016】
フレーム1は、例えば、アルミニウム製であり、走行ローラ2A,2Bは、例えば、ゴム製である。走行ローラ2A,2Bは、同じ形状であり同じ大きさである。走行ローラ2A,2Bは、ガイドロープ18上で回転することで自走式ケーブル延線機100をY軸方向に移動させる。自走式ケーブル延線機100は、走行する際にはガイドロープ18上に走行ローラ2A,2Bが載せられる。走行ローラ2A,2Bは、回転軸の軸方向がX軸方向に平行な方向である。走行ローラ2A,2Bは、Z軸方向およびX軸方向の位置が同じで、Y軸方向の位置が異なる位置に配置されている。すなわち、走行ローラ2A,2Bは、Y軸方向に並ぶように配置されている。
【0017】
走行ローラ2Aは、走行ローラ2BよりもプラスY軸方向に配置されている。したがって、自走式ケーブル延線機100がプラスY軸方向に移動する場合には、走行ローラ2Aがガイドロープ18上の特定位置に到着し、その後、走行ローラ2Bが特定位置に到着する。
【0018】
乗越えローラ3A,3Bは、後述するガイドロープ保持金物200を乗越えるためのローラである。乗越えローラ3A,3Bは、同じ形状であり同じ大きさである。乗越えローラ3Aは、走行ローラ2Aに取り付けられており、走行ローラ2Aとともに回転する。乗越えローラ3Bは、走行ローラ2Bに取り付けられており、走行ローラ2Bとともに回転する。乗越えローラ3Aの回転軸は、走行ローラ2Aの回転軸と同じであり、乗越えローラ3Bの回転軸は、走行ローラ2Bの回転軸と同じである。乗越えローラ3Aは、走行ローラ2Aよりも直径が大きく、乗越えローラ3Bは、走行ローラ2Bよりも直径が大きい。モータ4Aは、走行ローラ2Aおよび乗越えローラ3Aを回転させ、モータ4Bは、走行ローラ2Bおよび乗越えローラ3Bを回転させる。
【0019】
落下防止アーム5A,5Bは、ガイドロープ18からの自走式ケーブル延線機100の落下を防止するアームである。落下防止アーム5A,5Bは、走行ローラ2A,2BよりもY軸方向の外側に配置されている。すなわち、落下防止アーム5Aが、走行ローラ2AよりもプラスY軸方向に配置されており、落下防止アーム5Bが、走行ローラ2BよりもマイナスY軸方向に配置されている。
【0020】
落下防止アーム5A,5Bは、プラスX軸方向に延びる棒状の部材と、マイナスZ軸方向に延びる棒状の部材とが接合されて形成されている。落下防止アーム5A,5BのうちプラスX軸方向に延びる棒状の部材は、一方の端部がフレーム1に接合されており、他方の端部がマイナスZ軸方向に延びる棒状の部材の一方の端部に接合されている。プラスX軸方向に延びる棒状の部材は、走行ローラ2A,2Bおよび乗越えローラ3A,3Bよりも、プラスX軸方向に延設されている。また、マイナスZ軸方向に延びる棒状の部材は、走行ローラ2A,2Bおよび乗越えローラ3A,3Bよりも、マイナスZ軸方向に延設されている。
【0021】
より戻し用治具6は、後述するより戻し金具24および後述するアミソ21を介して、ケーブル22を自走式ケーブル延線機100に取り付けるための治具である。走行方向選択スイッチ7は、自走式ケーブル延線機100の走行方向を切り替えるためのスイッチである。電源スイッチ8は、自走式ケーブル延線機100の電源をオンまたはオフに切り替えるためのスイッチである。
【0022】
なお、自走式ケーブル延線機100が備える走行ローラは、1つでもよいし3つ以上であってもよい。この場合も、自走式ケーブル延線機100は、走行ローラと同数の乗越えローラおよびモータを備える。
【0023】
以下の説明では、走行ローラ2A,2Bを区別する必要がない場合には、走行ローラ2A,2Bを走行ローラ2という場合がある。また、乗越えローラ3A,3Bを区別する必要がない場合には、乗越えローラ3A,3Bを乗越えローラ3という場合がある。
【0024】
つぎに、自走式ケーブル延線機100の走行路となるガイドロープ18を保持するガイドロープ保持金物200について説明する。
図4は、実施の形態にかかるガイドロープ保持金物の構成を示す斜視図である。
図5は、実施の形態にかかるガイドロープ保持金物の構成を示す側面図である。
【0025】
ガイドロープ保持部であるガイドロープ保持金物200は、自走式ケーブル延線機100の重さおよびガイドロープ18の自重でガイドロープ18が撓まないように、且つ自走式ケーブル延線機100の走行を妨げないようにガイドロープ18を保持する。ガイドロープ保持金物200は、フレーム9と、単管クランプ14と、ロープ保持スライド11と、固定ねじ12とを備えている。フレーム9には、ガイドロープ受け溝10および乗越えローラ用溝13が設けられている。
【0026】
フレーム9は、例えば、アルミニウム製である。フレーム9は、単管クランプ14に接合されている。フレーム9は、単管クランプ14からマイナスX軸方向に向かって延設されている。
【0027】
ガイドロープ受け溝10は、ガイドロープ18を受ける溝である。ガイドロープ受け溝10は、Y軸方向に延びている。ロープ保持スライド11は、ガイドロープ受け溝10に載せられたガイドロープ18を保持する。ロープ保持スライド11は、水平方向に移動可能となっている。固定ねじ12は、ロープ保持スライド11を固定するねじである。固定ねじ12は、ロープ保持スライド11がガイドロープ18を保持する位置に移動した状態で締められることによってロープ保持スライド11の位置を固定する。これにより、ガイドロープ18が、ガイドロープ受け溝10内でロープ保持スライド11によって固定される。
【0028】
乗越えローラ用溝13は、自走式ケーブル延線機100がガイドロープ保持金物200を乗越える際に、乗越えローラ3が走行する溝である。すなわち、乗越えローラ用溝13は、乗越えローラ3の通路となる溝である。
【0029】
乗越えローラ用溝13は、Y軸方向に延びている。すなわち、乗越えローラ用溝13は、ガイドロープ受け溝10と平行な方向に延びている。乗越えローラ用溝13は、ガイドロープ受け溝10よりも高い位置に配置されている。すなわち、乗越えローラ用溝13の底面がガイドロープ受け溝10の底面よりも高い位置になるように、乗越えローラ用溝13およびガイドロープ受け溝10が形成されている。単管クランプ14は、ガイドロープ保持金物200を、単管19に固定する。
【0030】
なお、乗越えローラ3A,3Bは、自走式ケーブル延線機100がガイドロープ保持金物200を乗越える際に、走行ローラ2A,2Bがガイドロープ保持金物200に接触しない大きさであればよい。
【0031】
例えば、乗越えローラ用溝13が、ガイドロープ受け溝10よりも十分高い位置にある場合には、乗越えローラ3A,3Bの直径は、走行ローラ2A,2Bの直径以下であってもよい。
【0032】
また、乗越えローラ3A,3Bの直径が、走行ローラ2A,2Bの直径よりも十分大きい場合には、乗越えローラ用溝13の高さが、ガイドロープ受け溝10の高さ以下であってもよい。このように、乗越えローラ3A,3Bの直径および乗越えローラ用溝13の高さは、走行ローラ2A,2Bがガイドロープ保持金物200に接触しない大きさとなるように形成されている。これにより、自走式ケーブル延線機100は、ガイドロープ保持金物200を乗越えてガイドロープ保持金物200を通過することができる。なお、ガイドロープ保持金物200は、金物以外の材料で形成されていてもよい。
【0033】
つぎに、ケーブル22が延線されるテーパ付コロ300について説明する。
図6は、実施の形態にかかるテーパ付コロの構成を示す斜視図である。テーパ付コロ300は、フレーム15と、ケーブル22が置かれるコロ16と、単管クランプ17とを備えている。フレーム15は、例えば、アルミニウム製である。フレーム15は、コロ16および単管クランプ17に接合されており、コロ16と単管クランプ17とを接続する。
【0034】
コロ16は、円柱状の部材を用いて形成されている。コロ16は、フレーム15からマイナスX軸方向に向かって延設されている。
図6では、2つのコロ16がXY平面に平行な面内でX軸方向に平行となるように配置されている場合を示している。コロ16の一方の端部は、フレーム15を介して単管クランプ17に接続されている。コロ16の他方の端部は、開放されている。
【0035】
コロ16は、円柱状の部材の中央部が削り取られた形状をなしており、軸方向の中央部が両端部よりも凹んでいる。これにより、コロ16は、軸方向の中央部から両端部にかけて緩やかな曲面となっている。すなわち、コロ16は、軸方向の中央部から両端部に向かってテーパ形状となっている。換言すると、コロ16は、軸方向の中央部から両端部に向かって緩やかに傾斜している。このように、コロ16は、テーパ形状となっており、被布設箇所にケーブル22が移動される際には、テーパ形状に沿ってケーブル22がスライド可能となっている。
【0036】
コロ16は、テーパ形状を有しているので、ケーブル22の延線時には、中央部でケーブル22を受けることができる。すなわち、コロ16に載せられたケーブル22は、コロ16に設けられた傾きによってコロ16の中央部に移動する。
【0037】
コロ16は、テーパ形状を有しているので、ケーブル22の整線時には、ケーブル22を中央部から他方の端部側(マイナスX軸方向)へ容易に移動させることができる。ケーブル22の整線時には、ケーブル22が、両端から引っ張られてコロ16の外側である他方の端部側にスライドさせられることで、コロ16上から外される。単管クランプ17は、テーパ付コロ300を、単管19に固定する。
【0038】
なお、
図6では、テーパ付コロ300が2つのコロ16を備えている場合を示したが、テーパ付コロ300が備えるコロ16は1つであってもよいし3つ以上であってもよい。
【0039】
つぎに、ケーブル布設システムによるケーブル22の布設処理手順について説明する。ケーブル布設システムは、第1工程から第4工程によってケーブル22を布設する。ケーブル22は、制御ケーブルおよび計装ケーブルの少なくとも一方を含んでいる。制御ケーブルは、機器の制御に用いられる制御信号を伝送するケーブルであり、計装ケーブルは、コンピュータと端末機器との間の信号を伝送するケーブルである。
【0040】
第1工程では、ガイドロープ保持金物200が単管19に取り付けられ、ガイドロープ18がガイドロープ保持金物200に固定される。第2工程では、第1工程でガイドロープ保持金物200を固定した単管19へテーパ付コロ300が取り付けられる。
【0041】
図7は、実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、第1工程および第2工程が完了した状態を示す図である。
図7では、ケーブル布設システムにおいて、ガイドロープ保持金物200、テーパ付コロ300、およびガイドロープ18が配置された状態を示している。
図7では、ケーブル布設システムの正面図を示している。
【0042】
自走式ケーブル延線機100の走行路となるガイドロープ18が、ケーブル22の被布設箇所に沿って500N(ニュートン)程度の張力で直線且つ水平に張られる。ガイドロープ18は、例えば、500N以下の張力で直線且つ水平に張られる。本実施の形態では、ガイドロープ18が、プラスY軸方向に向かって配置される。
【0043】
さらに、ガイドロープ18が撓まないようにガイドロープ18を保持するガイドロープ保持金物200を配置するため、単管19が梁または鋼材20に固定される。ケーブル布設システムでは、単管19が、自走式ケーブル延線機100の走行路に沿って、2000~4000mm間隔で、梁または鋼材20に固定される。すなわち、ケーブル布設システムでは、単管19が、自走式ケーブル延線機100の走行経路の途中に配置されている。単管19は、例えば、一定間隔で配置される。
【0044】
この後、ガイドロープ保持金物200の単管クランプ14が、各単管19に固定される。また、テーパ付コロ300の単管クランプ17が、各単管19に固定される。なお、ガイドロープ保持金物200とテーパ付コロ300とは、何れが先に単管19に固定されてもよい。
【0045】
図8は、実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、単管に取り付けられたガイドロープ保持金物およびテーパ付コロを示す斜視図である。
図9は、実施の形態にかかるケーブル布設システムにおいて、単管に取り付けられたガイドロープ保持金物およびテーパ付コロを示す側面図である。
【0046】
ガイドロープ保持金物200の単管クランプ14が、各単管19に固定された後、ガイドロープ18がガイドロープ保持金物200に固定される。このとき、ガイドロープ保持金物200の固定ねじ12が緩められることで、ロープ保持スライド11が水平方向にフリーとなる。この状態で、ガイドロープ18が、ガイドロープ受け溝10に押し込まれ、ロープ保持スライド11がロープを保持する方向へスライドさせられる。この状態で固定ねじ12が締められることで、ロープ保持スライド11の位置が固定され、ガイドロープ18がガイドロープ保持金物200に固定される。単管19は、2000~4000mm間隔で配置されているので、ガイドロープ18は、ガイドロープ保持金物200によって2000~4000mm間隔で保持される。
【0047】
これにより、ガイドロープ18が500N程度の小さい張力で水平に張られている場合であっても、ガイドロープ保持金物200は、ガイドロープ18の撓みを抑制することができる。また、複数のガイドロープ保持金物200でガイドロープ18を保持することによって、ガイドロープ保持金物200は、ガイドロープ18の撓みをさらに抑制することができる。また、作業者は、ガイドロープ保持金物200を用いてガイドロープ18を容易に水平に配置することが可能となる。ガイドロープ保持金物200およびテーパ付コロ300が単管19に固定され、ガイドロープ18がガイドロープ保持金物200に固定された後、第3工程が行われる。
【0048】
第3工程では、自走式ケーブル延線機100が、ケーブル22を牽引する。具体的には、まず自走式ケーブル延線機100のより戻し用治具6に、より戻し金具24と、アミソ21とを用いてケーブル22が取付けられる。そして、自走式ケーブル延線機100の走行ローラ2が、ガイドロープ18に掛けられ、走行方向選択スイッチ7への操作によって走行方向が選択される。さらに、電源スイッチ8が入れられることでモータ4A,4Bが動作し、走行ローラ2が回転し、自走式ケーブル延線機100がガイドロープ18を走行しながらケーブル22を牽引する。
【0049】
自走式ケーブル延線機100は、ガイドロープ保持金物200を乗越えながらガイドロープ18を走行する。
図10は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持金物を乗越える際の自走式ケーブル延線機およびガイドロープ保持金物の斜視図である。
図11は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がガイドロープ保持金物を乗越える際の自走式ケーブル延線機およびガイドロープ保持金物の側面図である。
【0050】
自走式ケーブル延線機100がガイドロープ保持金物200を乗越える際には、乗越えローラ3A,3Bがガイドロープ保持金物200の乗越えローラ用溝13を走行し、ガイドロープ保持金物200を乗越える。この場合において、走行ローラ2は、ガイドロープ18から浮いた状態となっている。自走式ケーブル延線機100がガイドロープ保持金物200を乗越えると、走行ローラ2がガイドロープ18に接触し、走行ローラ2がガイドロープ18上を走行する。
【0051】
このように、自走式ケーブル延線機100が乗越えローラ3A,3Bを備えているので、自走式ケーブル延線機100は、走行を妨げることなくガイドロープ保持金物200を乗越えることができる。
【0052】
なお、自走式ケーブル延線機100がガイドロープ保持金物200を乗越える際に落下防止アーム5A,5Bがガイドロープ保持金物200に衝突する場合には、落下防止アーム5A,5Bを回転させることで、落下防止アーム5A,5Bのガイドロープ保持金物200への衝突を回避してもよい。例えば、落下防止アーム5A,5BのマイナスZ軸方向に延びる棒状の部材の形状が、ガイドロープ保持金物200に衝突する形状および大きさである場合には、落下防止アーム5A,5BのプラスX軸方向に延びる棒状の部材が走行方向に平行となるよう90°回転させられてもよい。
【0053】
自走式ケーブル延線機100が、ガイドロープ18を走行することで、ケーブル22がテーパ付コロ300上に延線される。
図12は、実施の形態にかかる自走式ケーブル延線機がケーブルを牽引している際のケーブル布設システムの正面図である。
【0054】
自走式ケーブル延線機100には、より戻し金具24およびアミソ21を用いてケーブル22が取付けられている。より戻し金具24は、猿環またはスイベルとも呼ばれる。アミソ21は、ケーブルグリップとも呼ばれる。
【0055】
図12に示すように、自走式ケーブル延線機100が、プラスY軸方向に延びるガイドロープ18に沿って移動することでケーブル22が、プラスY軸方向に延線される。このケーブル22は、テーパ付コロ300上に載せられる。これにより、ケーブル布設システムは、人の往来が難しい狭所でも人が往来することなくケーブル22を布設することが可能となる。すなわち、ケーブル布設システムは、発電所といったプラントのケーブル処理室等の床23から梁または天井までの高さが低く、人の往来が困難な狭所においても容易にケーブル22を布設することができる。
【0056】
第4工程では、ケーブル22が整線される。具体的には、テーパ付コロ300上に延線されたケーブル22が、両端から引っ張られ、テーパ付コロ300上から被布設箇所に向けて横にスライドさせられることで、人が往来することなく、ケーブル22の整線が可能となる。
【0057】
このように実施の形態によれば、自走式ケーブル延線機100が、走行ローラ2および乗越えローラ3を備えているので、ガイドロープ保持金物200を乗越えることができる。このため、3つ以上のガイドロープ保持金物200を配置することができ、3つ以上のガイドロープ保持金物200で、ガイドロープ18を保持することができる。したがって、ガイドロープ18が500N程度の小さい張力で水平に張られている場合であっても、ガイドロープ保持金物200は、ガイドロープ18の撓みを抑制することができる。これにより、自走式ケーブル延線機100は、ガイドロープ18上を走行しつつ、ケーブル22を長距離に渡って安定して布設することができる。
【0058】
また、テーパ付コロ300にはテーパが付いているので、ケーブル22の延線中はテーパ付コロ300の中央部にケーブル22が延線され、整線時には、容易にケーブル22を移動させることが可能となる。
【0059】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,9,15 フレーム、2,2A,2B 走行ローラ、3,3A,3B 乗越えローラ、4A,4B モータ、5A,5B 落下防止アーム、6 より戻し用治具、7 走行方向選択スイッチ、8 電源スイッチ、10 ガイドロープ受け溝、11 ロープ保持スライド、12 固定ねじ、13 乗越えローラ用溝、14,17 単管クランプ、16 コロ、18 ガイドロープ、19 単管、20 鋼材、21 アミソ、22 ケーブル、23 床、24 より戻し金具、100 自走式ケーブル延線機、200 ガイドロープ保持金物、300 テーパ付コロ。