(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185169
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】持続性親水性膜形成剤および持続性親水性膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C07G 99/00 20090101AFI20221207BHJP
【FI】
C07G99/00 B
C07G99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092651
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】518171650
【氏名又は名称】株式会社松井三郎環境設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】松井 三郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フルボ酸およびフルボ酸の特性に着目し、フルボ酸およびフルボ酸の全く新規な用途である持続性親水性膜形成剤およびそれを用いた持続性親水性膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の持続性親水性膜形成剤は、動植物の、アルカンを構成分子として持つ表面層、および/またはアルカンを構成分子として含有するプラスチックの表面上に、持続性親水性膜を形成するための持続性親水性膜形成剤であって、フミン酸を含有するフミン酸含有溶液、フルボ酸を含有するフルボ酸含有溶液、またはフミン酸とフルボ酸を含有するフミン酸・フルボ酸混合溶液であることを特徴とする。前記フミン酸溶液、フルボ酸溶液、フミン酸・フルボ酸混合溶液は、それぞれ溶液中に、フミン酸、フルボ酸、フミン酸・フルボ酸を50%(TOC値)以上の割合で含有することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物の、アルカンを構成分子として持つ表面層、および/またはアルカンを構成分子として含有するプラスチックの表面上に、持続性親水性膜を形成するための持続性親水性膜形成剤であって、フミン酸を含有するフミン酸含有溶液、フルボ酸を含有するフルボ酸含有溶液、またはフミン酸とフルボ酸を含有するフミン酸・フルボ酸混合含有溶液であることを特徴とする持続性親水性膜形成剤。
【請求項2】
前記フミン酸含有溶液、フルボ酸含有溶液、フミン酸・フルボ酸混合含有溶液は、それぞれ溶液中に、フミン酸、フルボ酸、フミン酸・フルボ酸を50%(TOC値)以上の割合で含有する請求項1の持続性親水性膜形成剤。
【請求項3】
前記動物の表面層は、表皮脂質で覆われている角質層である請求1または2の持続性親水性膜形成剤。
【請求項4】
前記植物の葉および/または茎の表面層がクチクラで覆われている請求項1または2の持続性親水性膜形成剤。
【請求項5】
前記プラスチックの表面が、全体がプラスチック製のプラスチック材の表面、または他の素材の上に形成されたプラスチック表面層の表面である請求項1または2の持続性親水性膜形成剤。
【請求項6】
フミン酸とフルボ酸の双方を含有するフミン酸・フルボ酸混合溶液である場合、フミン酸とフルボ酸の総量(固形分)のうち、フルボ酸の割合が50%以上である請求項1~5のいずれかの持続性親水性膜形成製剤。
【請求項7】
請求項1または2の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、人間を含む動物用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
【請求項8】
請求項1または2の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、植物用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
【請求項9】
請求項1または2の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、プラスチック用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
【請求項10】
請求項7の持続性親水性膜形成剤を、人間を含む動物の、アルカンを構成分子として持つ表面層の表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
【請求項11】
請求項8の持続性親水性膜形成剤を、植物の、アルカンを構成分子として持つ表面層の表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
【請求項12】
請求項9の持続性親水性膜形成剤を、プラスチックの表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続性親水性膜形成剤および持続性親水性膜形成方法に関し、更に詳細には、腐植物質であるフルボ酸・フルボ酸を用いた持続性親水性膜形成剤および持続性親水性膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のフルボ酸は、フミン酸と共に腐植土からの抽出物として得られるフミン物質の1種である。
腐植土は、通常、500万年以上前に海草、藻類などの植物、魚介類、そのほか無機質類などが海底、湖や沼などの底に堆積した堆積物が嫌気性微生物などにより分解、合成、有機化を受けたものであり、たとえば地下約20mに約10mの厚さの層として存在している。
フミン酸は、腐植土からの抽出液に存在する物質のうち、アルカリに可溶な着色物質で腐植酸ともいわれている。フルボ酸は、腐植土からの抽出液からフミン酸を酸析除去したのちに溶液中に残る着色物質である。
フルボ酸は、フミン酸に比べて分子量が小さく、炭素含量が低く酸素含量が高い(カルボキシル基含量が高い)ことが特徴である。その結果、フルボ酸の全酸量は900~1400meq/100g程度で、フミン酸の500~870meq/100g程度と比べてかなり高い値を示している。
【0003】
腐植土からの抽出物を利用したものとして、特公昭62-3806号公報に、腐植土中のフミン酸を水で抽出して得たフミン酸水溶液を加熱殺菌するとともに、0.6μmのフィルタにより濾過し、濃度調整およびpH2.0~5.0に調整したフミン酸水溶液を食品保存用殺菌剤として用いることが記載されている。
【0004】
しかしながら、このフミン酸を含有する食品保存用殺菌剤は抗菌・殺菌作用が必ずしも充分でなく、熱処理しているにもかかわらず、2~3ヵ月間保存しただけで褐変するなど、保存安定性が優れていないという問題がある。このように従来技術では、腐植土由来物質の特徴を充分に生かしきれていない。
【0005】
このようなフミン酸を用いての殺菌剤の問題点に鑑み、腐植土由来物質を利用して、より優れた抗菌・殺菌作用などを有する抗菌剤・殺菌剤を提供するため、特開2008-7451公報では、以下のような殺菌剤が提案されている。
(1)フルボ酸を有効成分として含有する殺菌剤。
(2)フルボ酸の水性液の形態である前記(1)項記載の殺菌剤。
(3)フルボ酸の水性液が噴射剤とともにエアゾール容器に充填されたエアゾール製品の形態である前記(2)項記載の殺菌剤。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、腐植物質であるフルボ酸およびフミン酸は、ともに構成分子として、アルカン(一般式CnH2n+2)、COOH基、OH基を備えていることが知られている。
本発明の発明者は、これらの構成分子のうち、アルカンが親油性であり、COOH基、OH基が親水性であることから、フルボ酸およびフミン酸の両方が親水性と親油性をともに備えた物質であることを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見のフルボ酸およびフルボ酸の特性に着目し、フルボ酸およびフルボ酸の全く新規な用途である持続性親水性膜形成剤およびそれを用いた持続性親水性膜形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記(1)~(12)の構成の本発明の持続性親水性膜形成剤およびそれを用いた持続性親水性膜形成方法により達成される。
(1)
動植物の、アルカンを構成分子として持つ表面層、および/またはアルカンを構成分子として含有するプラスチックの表面上に、持続性親水性膜を形成するための持続性親水性膜形成剤であって、フミン酸を含有するフミン酸含有溶液、フルボ酸を含有するフルボ酸含有溶液、またはフミン酸とフルボ酸を含有するフミン酸・フルボ酸混合溶液であることを特徴とする持続性親水性膜形成剤。
(2)
前記フミン酸溶液、フルボ酸溶液、フミン酸・フルボ酸混合溶液は、それぞれ溶液中に、フミン酸、フルボ酸、フミン酸・フルボ酸を50%(TOC値)以上の割合で含有する前記(1)の持続性親水性膜形成剤。
(3)
前記動物の表面層が、表皮脂質で覆われている角質層である前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤。
(4)
前記植物の葉および/または茎の表面層がクチクラで覆われている前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤。
(5)
前記プラスチックの表面が、全体がプラスチック製のプラスチック材の表面、または他の素材の上に形成されたプラスチック表面層の表面である前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤。
(6)
フミン酸とフルボ酸の双方を含有するフミン酸・フルボ酸混合溶液である場合、フミン酸とフルボ酸の総量(固形分)のうち、フルボ酸の割合が50%以上である前記(1)~(5)のいずれかの持続性親水性膜形成製剤。
(7)
前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、人間を含む動物用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
(8)
前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、植物用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
(9)
前記(1)または(2)の持続性親水性膜形成剤を、溶液中のフミン酸、フルボ酸またはフミン酸・フルボ酸の混合物の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈され、プラスチック用として用いられる持続性親水性膜形成剤。
(10)
前記(7)の持続性親水性膜形成剤を、人間を含む動物の、アルカンを構成分子として持つ表面層の表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
(11)
前記(8)の持続性親水性膜形成剤を、植物の、アルカンを構成分子として持つ表面層の表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
(12)
前記(9)の持続性親水性膜形成剤を、プラスチックの表面上に散布することにより、該表面上に持続性の親水性膜を形成する持続性親水性膜の形成方法。
以下、本発明の持続性親水性膜形成剤が表面に施される前記動植物およびプラスチックを母材と称することがある。
なお、本発明の持続性親水性膜形成剤は、特許第6285605号公報や特開2019-81150号公報に開示されたフルボ酸、フミン酸を使用して製造でき、また特許第4692994号公報に記載された有機廃棄物の処理装置を用いて製造可能なフルボ酸、フミン酸を使用して製造できる。
本発明の持続性親水性膜形成剤は、更に、泥炭土等の腐植土を生成することにより得られたフルボ酸、フミン酸を使用して製造することもできる。
【発明の効果】
【0011】
上記したように、本発明の持続性親水性膜形成剤が含有するフルボ酸、フミン酸は、親水性分子と親油性分子を有するので、これを用いて形成された膜は、親油性分子が母材の親油性表面に作用して確りと定着し、しかも上記の親水性分子により水分が充分に定着するので、本発明の持続性親水性膜形成剤を用いて形成された親水性膜は、持続性がある良好な親水性膜となる。
さらに、フミン酸とフミン酸の両者を含有する持続性親水性膜形成剤は、フルボ酸に比べてフミン酸の方が親油性分子をより多く含有し、フミン酸に比べてフルボ酸の方が親水性分子を多く含有するので、フミン酸とフミン酸の両者を含有する持続性親水性膜形成剤は、両者の良好な特性をもった剤となる。なお、フルボ酸とフミン酸は、それぞれが含有する親油性分子によりそれらの間の結合も強固なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態による持続性親水性膜形成剤を製造するための製造装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の持続性親水性膜形成剤の実施の形態を説明する。
先ず、フルボ酸を含有する持続性親水性膜形成剤を、本発明の第1の実施の形態として説明し、次いで、フミン酸を含有する持続性親水性膜形成剤を第2の実施の形態として、フルボ酸とフミン酸を混合して含有する持続性親水性膜形成剤を第3の実施の形態として、それぞれ説明する。
【0014】
先ず、本持続性親水性膜形成剤が施される母材は、表面層にアルカンを含有する動植物である。本持続性親水性膜形成剤はプラスチック類の表面にも施すことが可能であるが、それ自体がアルカンを持つのでここでは、説明を省略する。
例えば、植物の葉は、水をはじく(撥水性・親油性)表面層を有するものがあるが、この水をはじく表面層にアルカンを持つクチクラを含有している。一方、動物の表皮は、表皮脂質で覆われている。この脂質の95%以上が皮脂で、トリグリセリド、ワックス、スクワレン、脂肪酸、ディグリセリド、コレステロール、コレステロールエステルで構成されている。 これらの皮脂分子とフルボ酸、フミン酸の親油性分子はアルカンによりなじんで集合し新しい表面膜を形成して表皮の表面を覆う。一方この膜は他方親水性分子が存在して水分子を保持することになる。
すなわち、本発明の持続性親水性膜形成剤は、撥水性・親油性表面に、親水性の膜を形成するための親水性膜形成剤である。
なお、ここで、持続性とは、湿度70%以下の乾燥した環境下でも親水性膜を2~3日以上、場合によっては、1週間~10日維持し続けることを言うものとする。
【0015】
第1の実施の形態:フルボ酸を含有する持続性親水性膜形成剤
本実施の形態による持続性親水性膜形成剤は、フルボ酸を含有するフルボ酸含有溶液からなる。このフルボ酸含有溶液におけるフルボ酸の含有量(固形分として)は、50%以上であることが好ましい。
本持続性親水性膜形成剤は、亜炭・褐炭・腐植質土壌を原料とした熱水抽出法によるものと、木本、リグニンを多く含有する草本(イネ科の植物等)を原料とした加水分解抽出法によるものがある。
【0016】
以下代表的な例として、亜臨界水処理で木質を加水分解処理して、持続性親水性膜形成剤を製造する製造方法について説明する。
【0017】
先ず、本発明の第1の実施の形態によるフルボ酸含有溶液の製造方法を実施するための製造装置(処理装置)10の一例について説明する。なお、木本・木質としては、針葉樹としてスギ、ヒノキ、マツ、アスナロ等、広葉樹としてはヤナギ、カシ、ケヤキ、ブナ、ナラ、クリ、シラカバ等を用いた。
図1は、当該製造装置の断面図である。
【0018】
前記製造装置10は、内部に木材チップである原料を収容する閉鎖空間S1を有する密閉容器12と、密閉容器12内に、亜臨界水である高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段14と、密閉容器12の底側に設けられ開閉機構26を有する排出口16と、排出口16からの直接排出操作のみで処理された原料と液体とを分離して回収する分離回収手段18と、を備えている。密閉容器12の形状は、例えば、矩形箱形、立体多角筒形、円筒形、樽型、ドラム型等その他任意形状でよいが、下面側に設けられている排出口16から重力を利用して排出されるような形状が好ましい。密閉容器の下面が排出口へ向けて下り傾斜に設けられていると好適である。
【0019】
分離回収手段18は、密閉容器12の閉鎖空間S1とは異なる他の閉鎖空間S2を有し、排出口16を介して該密閉容器12内部に連通する液体の回収部50と、密閉容器12内の液体のみを排出口16を介して自然流下により回収部50へ回収させる自然流下回収機構52と、を有することとしてもよい。排出口16付近で処理された固形分としての原料は密閉容器12内にそのまま残り、液体のみが重力を利用して回収部50へ自然流下することにより、原料と液体とを分離回収できる。回収部50の構成は、例えば、金属製タンクや立体多角形状の箱体、管状体等、液体を回収する閉鎖空間S2を有するものであれば任意のものでもよい。収容部を複数個形成してもよい。
【0020】
自然流下回収機構52は、液体の回収操作前に、密閉容器12の閉鎖空間S1と回収部50の閉鎖空間S1とを同圧にさせる同圧形成手段62を含むこととしてもよい。密閉容器12と回収部50とを常時同圧にさせる構成とすると、処理後に液体の回収作業を直ちに行え、作業時間の短縮が図れる。
なお、上の例では、分離手段を処理装置に組み込んだ例について説明したが、処理装置自体には、分離手段を設けること無く、別体で設けてもよい。
【0021】
また、前記密閉容器12の閉鎖空間S1と回収部50の閉鎖空間S2を同圧にするための同圧形成手段62を設けてもよい。この同圧形成手段62は、排出口16を介した液体の回収経路と異なる別の経路で密閉容器12の閉鎖空間S1と回収部50の閉鎖空間S2とを連通させる同圧連通管64を有することとしてもよい。この同圧連通管64は、前記閉鎖空間S1と閉鎖空間S2と常時連通させて、密閉容器12内と回収部50内とを常時同圧状態にしておいてもよい。なお、同圧連通管64は、少なくとも液体の回収操作前に密閉容器12と回収部50とを連通させて同圧にすればよく、該同圧連通管を連通・遮断するための開閉機構が設けられていても良い。
【0022】
また、別の経路を形成する同圧連通管64と密閉容器50との連通は、密閉容器12の上端側に設定された連通接続部68を介して行なわれることとしてもよい。
【0023】
また、自然流下回収機構52は、密閉容器12の排出口16と回収部50とを連通接続する液体回収流路54を含み、該液体回収流路54は排出口16との連通側から回収部50側に向けて、水平又は下り傾斜状に設けられたこととしてもよい。
【0024】
また、処理された原料の排出口16からの排出経路R1途中に開閉機構26が設けられ、開閉機構26よりも排出上流側に液体回収流路54の液体導入口58が連通接続されていることとしてもよい。
【0025】
また、液体回収流路54には、密閉容器12内での原料の処理中には流路を遮断するとともに、処理後に液体のみを回収する際には流路を連通させるように連通状態を選択的に切り替える開閉機構60が設けられていてもよい。
【0026】
また、回収部50の閉鎖空間S2の底面が密閉容器12の排出口16の位置より低く設けられたこととしてもよい。
【0027】
また、回収部50は、その閉鎖空間S2内に回収した液体の液面WLが常に排出口16より低くなるように設けられたこととしてもよい。
【0028】
密閉容器12内には、原料を撹拌する撹拌手段30を有することとしてもよい。
【0029】
また、密閉容器12は、左右中央部の底側に排出口16が設けられつつ、径が左右中央部から左右両端側に向けて次第に縮径された横倒し樽型形状に形成され、撹拌手段30は、密閉容器12内に横長に設けられて回転自在に軸支された回転軸49と、回転軸49に取り付けられ同回転軸49の周方向に広がる部位を有する撹拌羽根48と、を有し、撹拌羽根48の回転軸49から羽根先端までの長さは、密閉容器12の横倒し樽型形状に対応して、回転軸49の長手方向の中央位置で長く、両端側に行くにしたがって次第に短くなるように形成されたこととしてもよい。
【0030】
また、蒸気噴出手段14は、回転軸49を中空管とし、該中空管の周面に複数個の蒸気噴出孔44を形成して構成された回転軸兼蒸気噴出管28を含むこととしてもよい。
【0031】
本例では、密閉容器12は、支持脚13で地面からある程度の高さに配置されるように支持されている。密閉容器12は、その径が左右方向中央部から左右両端側の端壁12a側に向けて次第に縮径された横倒し樽型形状に形成されている。密閉容器12は、例えば、耐熱耐圧性を有するように金属板を加工して形成され、原料を約2m3収容できる程度の大きさで設けられている。密閉容器12には、中央部の上方に投入部20が、中央部の底側に排出部22がそれぞれ設けられており、それぞれ開閉機構24,26により開閉されるように設けられている。密閉容器12の閉鎖空間S1内には、蒸気噴出手段14を構成している蒸気噴出管28と、原料を撹拌する撹拌手段30と、が配置されている。なお、密閉容器12には、内部圧力が設定値よりも高くなると内部蒸気を開放させる、例えば設定圧を調整可能な安全弁32が設けられている。また、安全弁32に接続された排気用管の途中には、消音・消臭装置34が設けられており、安全弁32を介して排気される蒸気は消音消臭されて、外気側に排出される。
【0032】
排出口16は、図に示すように、密閉容器12の左右方向中央部の底面側に開口されており、原料の排出方向を下方にして設けられている。排出口16の径は、例えば、300mm程度に設けられている。排出口16には、下方に突設された排出筒36が接続されて処理された原料の排出経路R1を形成しているとともに、該排出経路R1の途中に設けられて排出口16を開閉する開閉機構26が設けられている。すなわち、排出部22は、排出口16と、排出筒36と、開閉機構26と、を含む構成となっている。密閉容器12が横倒し樽型形状に形成されているから、重力により内部の原料は排出口16が設けられている中央部に向けて集まりやすく、開閉機構26を開くだけで簡便に原料を排出口16から排出させることができる。
【0033】
投入部20には、密閉容器12に上側に投入口42が開口されており、投入口42には上方へ突設された投入筒43が取り付けられ、投入筒43内を開閉するように例えばボールバルブ等の開閉機構24が設けられている。開閉機構24を介して、投入口42を開いて原料を密閉容器内に投入でき、処理時には閉鎖して密閉容器12内の閉鎖空間S1の閉鎖状態を維持する。
【0034】
蒸気噴出手段14は、密閉容器12内に高温高圧の蒸気を噴出するとともに、該密閉容器12内を高温高圧状態とし、原料を蒸気を介して処理させる。
図1に示すように、蒸気噴出手段14は、密閉容器12内に配置され周面側に多数の蒸気噴出孔44が形成された中空管からなる蒸気噴出管28と、ボイラー等の蒸気発生装置46と、蒸気発生装置46から蒸気噴出管28内に蒸気を供給する蒸気送管47と、を含む。蒸気噴出手段14から密閉容器12内に噴出される蒸気は、原料を適正に処理するため、亜臨界水であるような高温高圧に設定される。例えば、蒸気噴出管28から噴出される蒸気は、温度が120~250℃、圧力が15~35atm程度に設定されている。そして、密閉容器12内を、温度120~250℃、圧力15~35atm程度にするようになっている。蒸気噴出管28は、密閉容器12の上下方向略中央位置で横方向に長く配置され、密閉容器の両端壁12aに設けられた軸受45を介して回転自在に軸支されている。すなわち、蒸気噴出管28は、横軸周りに回転しながら放射状に蒸気を噴出しつつ蒸気を原料に直接に当てるようになっている。なお、蒸気噴出管28は、モータ等の回転駆動装置51からチェーン等を介して回転駆動力を得て回転するようになっている。さらに、蒸気噴出管28には、撹拌手段を構成する撹拌羽根48が取り付けられており、蒸気噴出管28が撹拌手段の回転軸49を兼用している。すなわち、本実施形態では、蒸気噴出手段14は、撹拌手段の回転軸49を中空管とし、該中空管の周面に複数個の蒸気噴出孔を形成して構成された回転軸兼蒸気噴出管28を含む。なお、蒸気噴出手段は、この形態の構成に限らず、例えば、密閉容器内に差し込んだ管の先端から蒸気を噴出する構成、複数の蒸気噴出管を配置させた構成等、その他任意の構成でもよい。
【0035】
撹拌手段30は、密閉容器内で処理される原料を撹拌する手段であり、原料をむらなく、早期に処理できる。撹拌手段30は、上記の蒸気噴出管28からなる回転軸49と、該回転軸49に取り付けられ同回転軸の周方向に広がる部位を有する撹拌羽根48と、を含む。本実施形態では、撹拌羽根48は、回転軸49の軸方向略中央位置で互いに逆巻きに設けられた、右巻き螺旋羽根48aと、左巻き螺旋羽根48bと、で形成されている。撹拌羽根48は、回転軸から羽根先端までの長さが左右中央部から両端側に向けて次第に縮径されるように設けられている。これにより密閉容器12の横倒し樽型形状に対応して原料を確実に撹拌できる。さらに、羽根先端と密閉容器12の内壁との間にある程度の隙間Hを形成するように設けられている。螺旋羽根48a、48bは、原料を中央部から両端壁側に向けて搬送しつつ、固形状の原料を破砕しながら原料を撹拌する。撹拌羽根48により両端壁12a側に搬送された原料は、該端壁12a側で後から搬送されてくる原料によって押送され、密閉容器12の内壁に沿いつつ隙間Hを介してから中央に戻るように搬送される。なお、撹拌手段30は、上記の構成のものに限らず、その他任意の構成でもよい。
【0036】
分離回収手段18は、排出口からの直接操作のみで、蒸気処理後の密閉容器12内の処理された原料と液体とを分離して回収する分離回収手段である。分離回収手段18は、
図1に示すように、排出口16を介して密閉容器12内部に連通する液体の回収部50と、排出口16を介して液体を自然流下により回収部50に回収させる自然流下回収機構52と、を有する。
【0037】
回収部50は、密閉容器12の閉鎖空間S1とは異なる他の閉鎖空間S2を内部に有した第2の閉鎖容器である。回収部50は、例えば、耐熱耐圧性を有する金属製の円筒形状の密閉タンクからなる。回収部50は、例えば金属製管部材等から形成される液体回収流路54を介して密閉容器12の排出口16と連通接続されている。回収部50は、その閉鎖空間S2の底面が密閉容器12の排出口16の位置より低く設けられているとともに、閉鎖空間S2内に回収した液体の液面WLが常に排出口16より低くなるように設けられており、排出口側の液体が回収部側へスムーズに自然流下しやすいようになっている。なお、回収部50には、回収した液体の取出ドレン56が設けられており、開閉弁により開閉するように設けられている。
【0038】
自然流下回収機構52は、密閉容器12内に溜まる液体の重力による自然流下により、液体のみを排出口から回収部50へ流下させる自然流下回収手段である。自然流下回収機構52は、液体回収流路54を含む構成であり、液体回収流路54はその液体導入口58を排出口16に連通接続させて、処理された原料の排出経路R1から分岐した液体の回収経路R2を形成している。本実施形態では、液体回収流路54は、例えば、その内径が6mm程度の金属製管で設けられている。液体回収流路54には、流路の連通状態を選択的に切り替える開閉機構60が設けられている。開閉機構60は、密閉容器内での原料の処理中には流路を遮断するとともに、処理後に液体のみを分離回収する際には流路を連通させるように切り替えられる。これにより、原料と同時に原料中に含まれる水分や蒸気が液化して原料中の細菌や悪臭成分等を含んで状態の液体は、高温高圧の蒸気で処理させることができる。そして、処理後に分離回収される液体は、殺菌や、悪臭・有害成分の分解等された状態で回収することができ、分離回収した液体を二次処理する必要がなく、労力がかからず、時間短縮を図ることができる。
【0039】
液体回収流路54は、液体導入口58が開閉機構26よりも排出上流側の位置に連通接続されている。よって、排出口16の開閉機構26を閉じた状態で、液体回収流路54の開閉機構60を開いて流路を連通状態にすることにより、排出口から液体を分離して回収させる。液体回収流路54は排出筒36と直交方向に接続されており、液体の回収経路R2が原料の排出経路R1に対して直交方向に設けられている。すなわち、開閉機構26の閉鎖状態では、密閉容器内の原料の堆積圧がかかる方向に対して交差方向に液体が流れるようになっている。これにより、簡単な構造で、液体導入口58に原料が入りにくい構造となり、液体のみを液体回収路54に自然流下させて、液体の分離回収を良好に行なうことができる。なお、密閉容器12内の液体が液体導入口56へ流れる勢いが強すぎると、液体の流れの力によって原料がともに流れされるおそれがあるので、好適には、処理された原料を流し運ばない程度の緩やかな流れになるように、液体回収路や液体導入口等の接続構成が設定される。液体回収流路54は、排出口16との連通側(液体導入口側)から回収部側に向けて全体的に水平に設けられている。これにより、液体回収流路での液体の流れはスムーズに行われ、排出口から回収部へ自然流下される。液体回収流路54を回収部側に向けて下り傾斜状に設けて、液体回収路54内で液体の流れがよりスムーズに行くようにしてもよい。この際、例えば、液体導入口58側をある程度の長さまで水平に設けて、その後下り傾斜に設けることとしてもよい。また、液体導入口58には、必要に応じてフィルタ等を設けることとしてもよい。
【0040】
さらに、
図1に示すように、自然流下機構52は、液体の回収操作前に、密閉容器12の閉鎖空間S1と回収部50の閉鎖空間S2とを同圧に形成させる同圧形成手段62を含む。通常では、処理後の密閉容器12内は高圧であるから、液体回収流路では、密閉容器内に比べて低圧である回収部の閉鎖空間S2に向けて圧力差による圧送力が働く。このような圧送力が働くと液体と原料とがともに液体回収流路54に流れこむこととなり、液体と原料との分離回収が困難となるとともに、原料が液体回収流路内に詰まるおそれが高い。同圧形成手段62により、液体の回収操作前に密閉容器12と回収部50との2つの閉鎖空間S1,S2を同圧にしておくことにより、該2つの閉鎖空間S1、S2の気圧の差により生じる原料が圧送されるのを防止でき、液体の自然流下作用を利用して、原料と分離しながら良好に回収部に回収できる。また、処理後の密閉容器内の高圧状態でも分離回収作業を行えるので、作業時間を短縮できる。
【0041】
同圧形成手段62は、排出口16を介した液体の回収経路R2(液体回収流路54)とは異なる別の経路R3で密閉容器12の閉鎖空間S1と回収部50の閉鎖空間S2とを連通させる同圧連通管64を含む。同圧連通管64は、例えば、金属製管からなり、簡単な構造でしかも効率的に2つの閉鎖空間S1,S2を同圧にできる。
図1では、同圧連通管64は、一端側が密閉容器12の左右中央部の上端側に連通接続され、他端側を回収部50の上端側に連通接続されている。別の経路R3を形成する同圧連通管64と密閉容器12との連通は、密閉容器12の上端側に設定された連通接続部68を介して行なわれるようになっている。連通接続部68の密閉容器との接続口が下方に向けて設定されている。これにより、同圧連通管64内に密閉容器12内で堆積している原料が管内に入りにくくなっており、原料が管内に詰まるのを防止して同圧連通管の連通状態を保持し、密閉容器12と回収部50とを確実に同圧にさせることができる。同圧連通管64は、常時連通状態となっており、液体回収流路54の開閉機構60を閉じた状態では、密閉容器12内、回収部50、液体回収流路54内が同じ圧力状態になる。これにより、液体回収流路54の開閉機構60を開いた直後にも排出口16の液体導入口58側で圧力差による原料の圧送を防止できる。さらに、開閉機構60を開いて液体が回収する際にも、密閉容器12内と回収部50内は常時同圧状態が保持される。したがって、回収前から回収終了後まで同圧状態となり、良好に液体のみを排出口16から自然流下させて分離回収することができる。なお、同圧形成手段62は、この形態の構成に限らず任意の構成でよい。例えば、同圧形成手段62は、回収部内を高圧にする他の高圧形成装置を設け、密閉容器内の圧力をセンサーで監視しながら回収部内の圧力を調整して、密閉容器内の圧力と同圧にするようにしてもよい。また、密閉容器内を減圧することとしてもよい。
【0042】
次に、以上説明した製造装置10を用いての本発明の第1の実施の形態によるフルボ酸含有溶液の製造方法について説明する。
本フルボ酸含有溶液の製造方法は、前記のような処理装置を準備する装置準備工程、前記処理装置の密閉容器の処理空間内に、前記供給部(投入口)から、主材として木材のチップを含有する原料を投入する原料投入工程、温度が120~250℃で、圧力が12~35atmの蒸気を、前記原料が投入されている処理空間内に導入しつつ、前記原料を攪拌して、前記原料を水熱反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材チップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する混合溶液を得る処理工程、および、取得した混合溶液から、フルボ酸を分離して、フルボ酸溶液を取得するフルボ酸溶液取得工程を備えている。
【0043】
以下、上記した各工程について詳細に説明する。
《装置準備工程》
図を参照しつつ、上で説明したような製造装置(処理装置)を準備する。
【0044】
《原料投入工程》
原料は、木材チップを主原料とする。チップのサイズは、長辺が50~150cm程度、短辺2が~5cm程度のものとするのが好ましい。副材もしくは添加物としては、より多くのフルボ酸を効率よく生成するために、アルカリ性溶液を添加することができる。アルカリ性溶液を添加する場合の蒸気の圧力、温度は、添加しない場合と同様であって良い。
【0045】
前記木材としては、一般に、伐採材または廃材を用いることができる。
前記伐採材といては、広葉樹および針葉樹のいずれであってもよい。
広葉樹としては、いずれの広葉樹であってもよいが、広葉樹としてはヤナギ、カシ、ケヤキ、ブナ、ナラ、クリ、シラカバ等を用いた。
前記針葉樹としては、スギ、ヒノキ、マツ、アスナロ等、が好ましく使用できている。
なお、伐採材を用いる場合、皮、葉等を取り除く必要はない。
【0046】
廃材としては、木造建築の家屋の解体の際に生じた木くず(角材、板材:無垢材、貼り合わせ材・合板材(ベニヤ板))等が挙げられる。このような木くずは、通常、チップとされるので、原料としてそのまま用いることができる。
上記の原料は、混合して用いても良い。例えば、通常の家庭において、伐採を行うと、いろいろな種類の樹木の伐採材が排出されるが、これらは、仕分けることなく、そのまま、全体を混合したままチップとし、原料としてもよい。勿論、その中に廃材チップを混合しても良い。
【0047】
以上説明したようなチップである原料を、処理空間に投入するが、原料の量は、密閉容器12の閉鎖空間S1すなわち処理空間の90%以下、特に、50~80%であることが好ましい。原料の投入量がこの範囲より低い場合には、処理効率が悪く、越える場合には、蒸気が原料に上手く作用できず、フルボ酸の生成が十分でなくなるおそれがある。
【0048】
《処理工程》
この工程においては、前記原料が投入されている処理空間内に蒸気を導入する。この蒸気は、温度が120~250℃で、圧力が12~35atmとする。蒸気の導入量は、処理空間の容積、処理する原料の量にもよるが、余剰空間(処理空間から投入された原料の容積を減算した値の空間)に完全に充填される量とするのが好ましい。
【0049】
前記伐採材として広葉樹を用いる場合、処理工程における前記蒸気の圧力は、12~25atmとするのが好ましい。
前記伐採材として針葉樹を用いる場合、処理工程における前記蒸気の圧力は、12~25atmとするのが好ましい。
この処理工程では、上記のように、原料が投入された処理空間に蒸気を導入しつつ、前記原料を攪拌して、前記原料を亜臨界水反により処理を行う。
処理工程の時間は、1~12時間が好ましい。処理時間が上記の範囲より短い場合には、反応時間が十分でなく、すなわち、フルボ酸の生成が十分でなく、相当量のフルボ酸が原料中に残留してしまい、上記範囲を超えると、原料か炭化してしまい、残留固形分の
後利用の範囲が狭まってしまう。
この処理工程における処理空間内の温度は、用いる原料の種類、状態によっても異なるが、120~250℃で、圧力が12~35atmに保たれるようにする。
この処理工程において、原料は、亜臨界水反応処理され、フルボ酸とフミン酸が、溶液中に含有される。この溶液は、また、木材チップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する。すなわち、フルボ酸と、フミン酸と、木材チップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する混合溶液が得られる。
この工程で取得した混合溶液中には、フルボ酸とフミン酸の総量(固形分量中)のうち、フルボ酸が、全体の50~70%含まれる。
【0050】
《冷却工程》
前記処理工程の後に、冷却工程を行っても良い。この冷却工程では、上記処理空間内を冷却し、すなわち、前記蒸気を冷却して、フルボ酸とフミン酸を含有するフルボ酸・フミン酸含有混合溶液を得る。この冷却は、通常、自然冷却で行われる。
【0051】
《フルボ酸含有溶液取得工程》
この工程では、前の処理工程(後に冷却工程が続く場合がある)で取得した混合溶液から、フミン酸を分離除去処理して、フルボ酸含有溶液を取得する。
前記フルボ酸含有溶液取得工程におけるフミン酸とフルボ酸を分離処理は、溶液のpHを酸性にして、フミン酸を沈殿分離、あるいは濾過分離による。
溶液のpHは、2~3とするのが好ましい。
以上により、本発明の第1の実施の形態による、フルボ酸含有溶液である持続性親水性膜形成剤を得る。
このとき、フルボ酸含有溶液のフルボ酸含有量は、90%以上であることが好ましい。
【0052】
次に、前記のようにして製造された持続性親水性膜形成剤の用途について、対象別に説明する。
[植物用]
植物、例えばバラ科の植物の葉や茎は、アルカンを構成分子とする親油性(撥水性)表面層のクチクラ層を有している。
本持続性親水性膜形成剤は、植物の葉や茎の表面上への塗布用(刷毛塗り、スプレー散布)として用いることができる。これらの表面上に塗布されることにより、持続性親水性膜が形成される。この持続性親水性膜は、例えば、うどんこ病対策用として有効である。
この場合、本持続性親水性膜形成剤は、溶液中のフルボ酸の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈されて用いられる。フルボ酸/フミン酸混合溶液中のフルボ酸の量が、上記の範囲未満であると、持続性親水性膜形成が少なく、一方、多すぎると親油性部分が減り持続性が短くなる。
【0053】
[動物用]
動物、例えば人間の顔や手は、アルカンを構成分子とする皮脂(撥水性)表面層を有している。
本持続性親水性膜形成剤は、動物、特に人間の顔や手の表面上への塗布用(手・スポンジ・刷毛塗り、スプレー散布)として用いることができる。これらの表面上に塗布されることにより、持続性親水性膜が形成される。この持続性親水性膜は、例えば、保湿用として有効である。
【0054】
[プラスチック類用]
プラスチック類は、そのほぼすべてのプラスチックが、アルカンを構成分子としており、当然のことながら、親油性(撥水性)表面を有している。
本持続性親水性膜形成剤は、プラスチック類の表面上への塗布用として用いることができる。これらの表面上に塗布されることにより、持続性親水性膜が形成される。この持続性親水性膜は、例えば油性エアロゾル物質の付着汚染を防止するのに有効である。
以上の植物用、動物用およびプラスチック類用ともに、本持続性親水性膜形成剤は、溶液中のフルボ酸の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈されて用いられる。フルボ酸の量が上記範囲未満のときには、親水性膜の持続能力が落ちることは勿論だが、膜の保水能力が当初の目的の量とならず、期待する効果が得られず、半日程度で消失してしまい、上記範囲を超える場合には、費用の割には、効果の向上が認められなかった。
【0055】
次に、本発明の第2の実施の形態による、本持続性親水性膜形成剤がフミン酸含有溶液である場合について説明する。
[フミン酸含有溶液の製造方法]
フミン酸含有溶液は、上記したフルボ酸含有溶液の製造方法の最終工程である、前記フルボ酸含有溶液取得工程において、pH2~3に調整して沈殿分離、あるいは濾過分離して沈殿した部分にフミン酸を回収することによって製造することができる。
以上により、本発明の第2の実施の形態による、フミン酸含有溶液である持続性親水性膜形成剤を得る。
このとき、フミン酸含有溶液のフミン酸含有量は、50%以上であることが好ましい。pH2~3以下調整で沈殿したものはフミン酸であるが、それ以上のpHで若干沈殿するフミン酸も含まれている。すなわちフミン酸量はフルボ酸より多い混合液が製造される。
【0056】
この第2の実施の形態による、フミン酸含有溶液である持続性親水性膜形成剤も、前記第1の実施の形態による、フルボ酸含有溶液である持続性親水性膜形成剤と同様に、動植物用、プラスチック類用として用いることができる。
この全ての用途に対する、第2の実施の形態による持続性親水性膜形成剤は、溶液中のフミン酸の量が、0.01~500ppm(TOC値)となるように希釈されて用いられる。フミン酸の量が上記範囲未満のときには、親水性膜の保水能力が落ちることは勿論だが、膜の持続性が目的時間を達成できず半日程度で消失してしまい、上記範囲を超える場合には、費用の割には、効果の向上が認められなかった。
【0057】
次に、本発明の第3の実施の形態による、本持続性親水性膜形成剤がフルボ酸・フミン酸含有混合溶液である場合について説明する。
[フルボ酸・フミン酸含有混合溶液の製造方法]
フルボ酸・フミン酸含有溶液は、上記したフルボ酸含有溶液の製造方法の最終工程である、前記フルボ酸含有溶液取得工程前の、すなわちフルボ酸・フミン酸含有溶液を用いる。
【0058】
次に、本発明の第3の実施の形態による、フルボ酸・フミン酸含有混合溶液を用いた持続性親水性膜形成剤を、植物、動物(人間)、プラスチック類に使用した場合の効果を、以下説明する。
【0059】
持続性親水性膜形成剤:フルボ酸・フミン酸含有混合溶液(フルボ酸80%フミン酸他20%含有量)
対象1:バラの葉(表面)にフルボ酸・フミン酸含有混合溶液原液を1000倍希釈して葉面散布した。バラ栽培では、うどんこ病による多大な損害を受けている。うどんこ病は取り分け子嚢菌門 アスコマイコータのエリシファシ(日本名ウドンコカビ)科に属するカビ菌全てが寄生で病気を起こしている。この問題を解決する目的で、試験をおこなった。うどんこ病は、湿潤で温暖な環境で発生しやすいが、最近の研究でカビ菌胞子が葉面に付着するには、葉の表面が乾燥している条件が必要と分かっている。乾燥条件で付着した後、胞子は発芽菅を伸ばし付着器を形成して、さらに葉の内部に吸器が形成して栄養分を吸収してうどんこ病状が広がって行く。このことからフルボ酸・フミン酸含有混合溶液原液を葉面散布することで、乾燥状態でも植物表面層に親水性性分子膜を形成することで、胞子が付着できなくなり結果としてバラの葉面・茎でうどんこ病発生を防止できた。
葉面散布は、日本の天候では1週間から10日の間隔で行い、乾燥し始める前に行った。成果がよく順調にバラの出荷ができた。慣行では、人体に有害なカーバメート系農薬等を希釈葉面散布しているが、施設園芸では農家が健康問題を抱えている。この問題解決は施設園芸のイチゴ栽培等に共通する。
なお、本発明の持続性親水性膜形成剤による持続性親水性膜の形成の確認はつぎのようにして行った。続く実施例の場合にも同様である。
単なる水の場合には、塗布すると、塗布表面の撥水作用により、丸まって、つぶれた球体状となってしまったが、本持続性親水性膜形成剤の場合には、周囲に拡散し、球体状とはならず、膜が形成された。
【0060】
対象2:人間の顔や手。
フルボ酸・フミン酸含有混合溶液(フルボ酸80%フミン酸他20%含有量)を100倍希釈液を使って、石鹸等の洗浄後、噴霧して皮膚表面を覆う。乾燥した天候時、保湿効果が表れ、顔ではしっとり感がでた。また手では乾燥肌を改善する効果が見られた。特に肌の敏感な女性を対象に試験を行った結果、10人中7人まで保湿効果を認めた。
【0061】
対象3:プラスチック
プロピレンシートやプロピレンで出来た成形製品は、多方面で使われているが、油性物質の付着が汚れの原因となる。できるだけ汚染を防止する方法としてフルボ酸・フミン酸含有混合溶液(フルボ酸80%フミン酸他20%含有量)の1000倍希釈液を噴霧してコーテイングすると、空気汚染で表面の汚染物質が付着するが、それが防止できた。持続効果は1週間あった。
以上により、本発明の持続性親水性膜形成剤の効果が明らかである。
【符号の説明】
【0062】
10 有機系廃棄物の処理装置
12 密閉容器
14 蒸気噴出手段
16 排出口
18 分離回収手段
26 開閉機構
30 撹拌手段
50 回収部
52 自然流下回収機構
54 液体回収流路
58 液体導入口
60 開閉機構
62 同圧形成手段
64 同圧連通管