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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186373
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】眉毛の施術方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/96 20060101AFI20221208BHJP
   A45D 97/00 20110101ALI20221208BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K8/96
A45D97/00
A61Q1/10
A61K8/19
A61K8/891
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094553
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】521226059
【氏名又は名称】一般社団法人ジャパンブロウアーティスト協会
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100224007
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 潮
(72)【発明者】
【氏名】松本 智子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA011
4C083AA012
4C083AA072
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC022
4C083AC582
4C083AC642
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD432
4C083CC14
(57)【要約】
【課題】パーマ剤を用いず、市販されている化粧品を用いて眉の毛流れを整える眉毛の施術方法を提供する。
【解決手段】オイルを含まない、水タイプのクレンジングを含ませたコットンパフを用いて被施術者の眉毛およびその周辺の皮膚の化粧を落とし、化粧を落とした眉毛全体に第1の保湿クリームを塗り、次いで余分な第1の保湿クリームを拭き取ることによって、油分の膜を形成し、ホットビューラーを、第1の保湿クリームを塗った眉毛に押し当てながら被施術者の額の方向に引き上げることによって、眉毛の毛流れを上向きに癖付けし、癖付けした眉毛にグルーを塗布し、グルーを塗布した箇所を押さえ、グルーを塗布した眉毛全体をラップフィルムで覆い所定時間放置して癖付けを定着させ、ラップフィルムを外し、第2の保湿クリームを塗り、当該第2の保湿クリームとともにグルーを眉毛から除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを含まない、水タイプのクレンジングを含ませたコットンパフを用いて被施術者の眉毛およびその周辺の皮膚の化粧を落とすクレンジングステップと、
化粧を落とした前記被施術者の眉毛全体に第1の保湿クリームを塗り、次いで余分な前記第1の保湿クリームを拭き取ることによって、油分の膜を形成するクリーム塗布ステップと、
ホットビューラーを、前記第1の保湿クリームを塗った前記眉毛に押し当てながら前記被施術者の額の方向に引き上げることによって、前記眉毛の毛流れを上向きに癖付けする癖付けステップと、
癖付けした前記眉毛を、癖付けした状態で固めるために、前記眉毛にグルーを塗布し、前記グルーを塗布した箇所を押さえるグルー塗布ステップと、
グルーを塗布した眉毛全体をラップフィルムで覆い、所定時間放置することによって、前記癖付けを定着させる定着用処理ステップと、
前記ラップフィルムを外し、第2の保湿クリームを塗り、当該第2の保湿クリームとともに前記グルーを前記眉毛から除去するグルー除去ステップと、を含む
ことを特徴とする眉毛の施術方法。
【請求項2】
前記グルー塗布ステップは、左右一対の眉毛のうち一方の眉毛の一部である第1の領域と、当該一方の眉毛における第1の領域とは別の第2の領域のそれぞれに対して順次行う
ことを特徴とする請求項1に記載の、眉毛の施術方法。
【請求項3】
前記定着用処理ステップにおいて、シート状の冷却ジェルまたは冷却ジェル層を表面に有するシートを前記ラップフィルム上に置く
ことを特徴とする請求項1または2に記載の、眉毛の施術方法。
【請求項4】
前記グルー除去ステップにおいて、前記グルーおよび前記保湿クリームは、綿棒によって、前記眉毛の下方から上方に向けて、または癖付けされた前記眉毛の毛流れに沿って撫でることによって除去する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の、眉毛の施術方法。
【請求項5】
前記グルー除去ステップの後に、精製水または化粧水を含ませたコットンパフを用いて、前記被施術者の眉毛全体およびその周辺を拭う拭き取りステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の、眉毛の施術方法。
【請求項6】
前記クレンジングステップおよび前記クリーム塗布ステップは、左右一対の眉毛に対して一斉に行い、
前記癖付けステップ、前記グルー塗布ステップ、前記定着用処理ステップ、および前記グルー除去ステップは、左右一対の眉毛に対して片方ずつに行い、
左右一対の眉毛に対して片方ずつ行う前記複数のステップのうち一方の眉毛に対して未了のステップは、他方の眉毛を前記ラップフィルムで覆った状態で前記所定時間放置する間に行う
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の、眉毛の施術方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眉毛の施術方法に関し、より詳細には、眉毛の毛流れを整えることによる眉毛の施術方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眉毛は、まぶたの上に沿って目の幅とほぼ同じくらいにわたって生えている体毛であり、顔の印象に大きな影響を与えるパーツである。眉毛は、それぞれの毛が立ち上がらず、肌に沿って生え、毛の多くが左右の外側下向き方向に生えている。この眉毛は、医学機能的には、ほこりや小さなゴミなどの異物や額から落ちる雨や汗などの水分が目に入らないようにする役割をしている。
【0003】
従来から、骨格、表情、生える向きや硬さ等を考慮して、眉毛の形、量、長さ等を整えることによって、バランスのよい美しい表情を得ることができると考えられている。一般に、眉毛の外観を整える場合、眉墨やアイブロウペンシル等のメイクアップ用の筆記具で眉を描き、或いはアイブロウシェーバー等の剃刃を用いて眉毛を剃毛する等のことが行われている。特に最近では、眉毛はメイクアップの決め手となる重要な顔の部位であると認識され、眉メイクに関心が集まり、眉のメイクアップ用の用具を用いて眉メイクをする人が増えている。このような状況を反映して、上記のような剃刃やメイクアップ用の筆記具のような眉の整形用具の他に、いわゆる眉テンプレートと称される整形用具が開発されている(特許文献1参照)。また、顔の輪郭等に合わせて好適な眉毛の整形を行うべく、眉毛の剃毛作業を容易に行うことができる剃毛用テープが開示されている(特許文献2参照)。また、実際の眉毛自体にボリュームを与えるために、人工的に眉毛を増毛する技術、いわゆる眉毛のエクステンションも行われている(特許文献3参照。)。しかしながら、これらの従来技術は、髪の毛に対するパーマのような、毛流れを整え、整えた状態を一定期間維持するものではない。
【0004】
また、近年、眉毛の毛流れを上向きに整える眉毛の施術が広まってきている。欧米などでは、このような眉毛の施術は、眉毛パーマ・眉ティント・眉カット・眉ワックス脱毛などと組み合わせて行なわれている。欧米などで行われているこの種の従来の眉毛の施術は、図4に図示するように、以下のステップ:余分な油分や化粧を除去液で落とすステップ(ST21)、接着剤を塗布し、マスカラブラシを使って所望の形状に眉毛を整えることによって、眉毛を所望の形状に固めるステップ(ST22)、マイクロブラシを使って眉毛を軽くたたきながらローション1(パーマ液)を塗り、所定時間放置するステップ(ST23)、ラップフィルムで眉毛を覆い、当該ラップフィルムの上に布を載せて、保温するステップ(ST24)、ローション1を綿棒を使って毛流れに沿って除くステップ(ST25)、ローション2(固定液)を用いて、ローション1を用いたST23~ST25と同様の処置を行うステップ(ST26~28)、ならびに湿らせたコットンパッドや綿棒を使って接着剤を除くステップ(ST29)を含む。欧米などで行われているこの種の従来の施術を行った眉毛3は、図5に示すように、上向きに整った仕上がりとなる。
【0005】
しかしながら、眉毛に対するパーマ剤の使用は、眉毛周辺のまぶた等の肌荒れや、縮れなどの眉毛の傷みを発生させるおそれがある。眉毛が損傷すると、眉毛本来の目を守る役割を損なうことになる。また、目に近いデリケートな皮膚に化学的作用の強い薬剤を適用することは、目への悪影響も懸念される。したがって、眉の施術においては、使用する薬剤の安全性が問題となる。日本では眉毛用パーマ剤は認可されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-218091号公報
【特許文献2】特開平08-089340号公報
【特許文献3】特開2011-236514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パーマ剤を用いず市販されている化粧品を用いて眉の毛流れを整えることができる眉毛の施術方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の眉毛の施術方法は、オイルを含まない、水タイプのクレンジング(31)を含ませたコットンパフ(41)を用いて被施術者の眉毛(3a,3b)およびその周辺の皮膚の化粧を落とすクレンジングステップ(ST11)と、化粧を落とした被施術者の眉毛全体(3a,3b)に第1の保湿クリーム(32)を塗り、次いで余分な第1の保湿クリーム(32)を拭き取ることによって、油分の膜を形成するクリーム塗布ステップ(ST12)と、ホットビューラーを、第1の保湿クリーム(32)を塗った眉毛(3a,3b)に押し当てながら被施術者の額の方向に引き上げることによって、眉毛の毛流れを上向きに癖付けする癖付けステップ(ST13)と、癖付けした眉毛を、癖付けした状態で固めるために、グルーを塗布し、グルーを塗布した箇所を押さえるグルー塗布ステップ(ST14)と、グルーを塗布した眉毛全体をラップフィルム(45,47)で覆い、所定時間放置することによって、癖付けを定着させる定着用処理ステップ(ST16)と、ラップフィルムを外し、第2の保湿クリーム(37)を塗り、当該第2の保湿クリームとともにグルーを眉毛から除去するグルー除去ステップ(ST18)と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる眉毛の施術方法によれば、癖付けステップの前に、クリーム塗布ステップにおいて化粧品として市販されている第1の保湿クリームを眉全体に塗って眉毛を柔らかくしたうえで、癖付けステップにおいて、ホットビューラー(加熱式睫毛カーラ)を、保湿クリームを塗った眉毛に押し当てながら被施術者の額の方向に引き上げることによって、眉毛を根もとから引っ張り上げ、眉毛の毛流れを上向けに癖付けするので、癖付けステップに続き、化粧品として市販されているグルーを塗布し、所定時間放置するだけで、眉毛の癖付けを定着させ、眉の毛流れを所望の形態に所定期間維持できるようにすることができる。すなわち、肌荒れや眉毛の縮れなどが発生する虞のあるパーマ剤を用いることなく、市販されている化粧品を用いて、眉の毛流れを所望の形態に所定期間維持できるように整えることができる。
【0010】
また、癖付けステップにおいて、ホットビューラーを眉毛に押し当てながら被施術者の額の方向に引き上げることで、眉毛が皮膚ごと持ち上げられる。これにより、目元のマッサージ効果を奏することができる。したがって、目元の血行促進及びむくみの解消の効果や、瞼が引き上げられて目元の見た目が改善するという効果がある。
【0011】
グルー塗布ステップは、左右一対の眉毛のうち一方の眉毛の一部である第1の領域と、当該一方の眉毛における第1の領域とは別の第2の領域のそれぞれに対して順次行うことが望ましい。グルーを塗った眉毛の領域は、塗布したグルーが乾かないうちに押さえることが必要である。施術者が、施術者の指または押さえ具により一時に押さえることができる範囲の第1領域または第2の領域のみにグルーを塗り、直ちに所定時間押さえることによって、施術者の指等による押さえの効果が高まる。
【0012】
定着用処理ステップにおいて、シート状の冷却ジェルまたは冷却ジェル層を表面に有するシートをラップフィルム上に置き冷却することがさらに望ましい。この構成によって、眉毛の癖付けをより確実に定着させることができる。
【0013】
グルー除去ステップにおいて、グルーおよび保湿クリームは、綿棒によって、眉毛の下方から上方に向けて、または癖付けされた眉毛の毛流れに沿って撫でることによって除去することがさらに望ましい。眉毛の下方から上方に向けて、または癖付けされた眉毛の毛流れに沿って綿棒で撫でるようにグルーおよび保湿クリーム除去することによって、癖付けされた眉毛の毛流れが、グルー除去ステップにおいて乱されることを防止できる。
【0014】
グルー除去ステップの後に、精製水または化粧水を含ませたコットンパフを用いて、被施術者の眉毛全体およびその周辺を拭う拭き取りステップをさらに含むことができる。この構成によって、グルー除去ステップまでに使用したクリームおよびグルーの残留を低減できる。
【0015】
クレンジングステップおよびクリーム塗布ステップは、左右一対の眉毛に対して一斉に行い、癖付けステップ、グルー塗布ステップ、定着用処理ステップ、およびグルー除去ステップは、左右一対の眉毛の片方ずつに行う。また、左右一対の眉毛の片方ずつに行う複数のステップのうち一方の眉毛に対して未了のステップは、他方の眉毛に対する定着時間の間に行うことができる。癖付けステップから、定着用処理ステップ後の定着時間の前までは、左右一対の眉毛の片方ずつ連続して処理を行うことが望ましいが、定着時間の間はその眉毛に対する処理は不要である。すなわち、先に癖付けステップに着手した一方の眉毛を定着時間に放置している間に、他方の眉毛の癖付けステップから定着用処理ステップまでの処理を行うことができる。また、一方の眉毛の定着時間の後に行うグルー除去ステップは、他方の眉毛の定着時間の間に行うこともできる。このような処理によって、一方の眉毛および他方の眉毛に対する定着時間を有効に使い、左右一対の眉毛に対する処理を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる眉毛の施術方法によれば、肌荒れや眉毛の縮れなどが発生するおそれのあるパーマ剤を用いることなく、市販の化粧品を用いて、眉の毛流れを所望の形態に所定期間維持できるように整えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法の手順を示すフローチャートである。
図2(a)】本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法における被施術者の化粧を落とすクレンジングステップの概要図である。
図2(b)】眉毛全体に保湿クリームを塗るクリーム塗布ステップの概要図である。
図2(c)】眉毛の毛流れを上向けに癖付けする癖付けステップの概要図である。
図2(d)】眉毛を癖付けした状態で固めるためにグルーを塗布するグルー塗布ステップの概要図である。
図2(e)】癖付けを定着させる定着用処理ステップの概要図である。
図2(f)】保湿クリームを塗り、保湿クリームとともにグルーを眉毛から除去するグルー除去ステップの概要図である。
図2(g)】水を含ませたコットンパフを用いて眉毛全体を拭う拭き取りステップの概要図である。
図3(a)】本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法による被施術者の眉毛の状態を示す図で、施術前の状態を示す図である。
図3(b)】本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法による被施術者の眉毛の状態を示す図で、施術後の状態を示す図である。
図4】従来の眉毛の施術の手順を示すフローチャートである。
図5】従来の眉毛の施術を行った眉毛の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法の手順を示すフローチャートで、図2は、発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法における各ステップの作業の概要図である。
【0019】
本発明の眉毛の施術方法は、眉毛や皮膚への影響が懸念されるパーマ剤等の薬剤を使用せず、化粧品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第2条第3項を参照。)を用いて眉毛の毛流れを整える施術方法である。
【0020】
まず、本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法において用いる化粧品および用具について説明する。
【0021】
使用する化粧品は、クレンジング水31(オイルを含まない、水タイプのクレンジング剤)、保湿クリーム32,37、およびグルー34である。また、保湿クリーム32,37は、ヒト型セラミドはじめ、コラーゲン/ヒアルロン酸/スクワラン/プラセンタ/シアオイル/アミノ酸/シロキクラゲ多糖体など、保湿と肌バリアを守る天然成分に特化したものである。また、グルー34は、水とシリコーンがベースの眉毛用接着剤である。このグルー34は、眉毛のエクステンションにも使用されており、肌に直接塗って使用できるものである。
【0022】
使用する用具は、化粧用のコットンパフ41,50、化粧用または衛生用の綿棒42,49、スティックタイプのホットビューラー(加熱式睫毛カーラ)43、グルー34用の刷毛44、ラップフィルム45,47、冷却ジェル46,48、およびティッシュペーパー(不図示)である。また、グルー用34用の刷毛44は、グルー34を収容する容器(不図示)のキャップとしても機能する取手部と、この取手部の内側から立設された刷毛部を備える。
【0023】
本発明の施術方法の対象である眉毛3は、図3(a)に示すように、眉頭6と、眉中7と、眉尻8とよばれる領域を有している。眉頭6は眉間5(図2(a)に図示)に近い側(顔の内側)の部位であり、眉尻8はこめかみに近い側(顔の外側)の部位である。眉中7は眉頭6と眉尻8との間に位置する部位である。
【0024】
次に、図1のフローチャートと図2の各ステップの作業の概要図を用いて、本発明の一実施形態にかかる眉毛の施術方法の手順を説明する。
【0025】
なお、図1において、ST11~ST12は、左右両眉毛3a,3bに対して、同時進行的にまたは連続的に(一斉に)行われる処理ステップである。また、ST13a~ST19aは、図2における一方の眉毛(右眉毛)3aに対して行われる処理ステップであり、ST13b~ST19bは、図2における他方の眉毛(左眉毛)3bに対して行われる処理ステップである。ST13a~ST19aとST13b~ST19bとは、施術対象の眉毛が異なるものの、同一の内容の処理を行うステップである。また、図2において、施術者1は、その指又は指に把持された用具の一部のみを図示し、被施術者は、その顔の一部のみを図示している。この点は、図3においても同様である。
【0026】
本実施形態の眉毛の施術方法においては、まず、施術者1は、クレンジング水31をコットンパフ41に含ませる。そして、施術者1は、被施術者2の眉毛3a,3bの処理(図1におけるST12~ST18)の前処理として、図2(a)に示すように、被施術者2の左右両眉毛3a,3bおよびその周辺の皮膚に施されたファンデーション等の化粧、ならびに余分な油分を、クレンジング水31を含ませたコットンパフ41で拭うことによって除去する(クレンジングステップST11)。
【0027】
施術者1は、前処理後の被施術者2の眉毛3a,3bの処理として、まず、被施術者2の左右両眉毛3a,3bの全体に、綿棒42を用いて保湿クリーム32を塗る(クリーム塗布ステップST12)。眉毛3a,3bは、クリーム塗布ステップST12を行うことによって、柔らかく癖付し易くなる。また、保湿クリーム32の塗布は、後述のグルー除去ステップST18(ST18a,ST18b)において、グルー34を容易に除去できるようになるという効果も奏する。保湿クリーム32が眉毛3a,3bおよび周辺の皮膚になじんだら、施術者1は、保湿クリーム32の白色が残らないように、ティッシュペーパー(不図示)により拭き取る。ただし、ティッシュペーパーによる拭き取りは、すべての油分が拭き取られないように、すなわち、油分の膜が残るように行われる。すべての油分が拭き取ってしまうと、保湿クレーム32を塗布する効果が失われるからである。
【0028】
次に、施術者1は、スティックタイプのホットビューラー43の加熱された先端部を、保湿クリーム32を塗った左眉毛3aに押し当てながら被施術者2の額9の方向に引き上げる。これにより、左眉毛3aは、根もとから引っ張り上げられ、左眉毛3aの毛流れが上向けに癖付けされる(ST13a)。この引き上げは、左眉毛3aを根もとからかなり強い力で引っ張り上げるように行われる。このように強い力で引っ張り上げることで、左眉毛3aの癖付けを十分に行うことができる。
【0029】
また、ホットビューラーを眉毛3a,3bに押し当てながら被施術者の額の方向に引き上げることで、眉毛3a,3bが皮膚ごと持ち上げられる。これにより、目元のマッサージ効果を奏することができる。したがって、目元の血行促進及びむくみの解消の効果や、瞼が引き上げられて目元の見た目が改善するという効果がある。
【0030】
そして、本実施形態では、左眉毛3aの癖付けが終了したら、施術者1は、右眉毛3bに対する癖付け(ST13b)を行わず、直ちに左眉毛3aに対するグルー塗布ステップST14aの処理を行う。なお、これ以外にも、保湿クリーム32を塗った右眉毛3bの癖付け(ST13b)は、左眉毛3aの癖付けに続いて行うようにしてもよい。
【0031】
施術者1は、左眉毛3aを癖付けした状態で固めるために、グルー34を付けた刷毛44を、癖付けした左眉毛3aの毛流れに沿って動かしてグルー34を塗布し、グルー34を塗布した箇所を、施術者1の指または所定の押さえ具(不図示)により押さえる(グルー塗布ステップST14a)。施術者1は、グルー34の塗布を、左眉毛3aの全体に対して一時に行わず、施術者1の指等により押さえることができる範囲の左眉毛3aの一部の領域に対して行い、グルー34を塗布した一部の領域を直ちに指等により押さえる。次いで、施術者は、この一部の領域とは別の一部の領域に対して、グルー34を塗布し、直ちに指等により押さえる。例えば、施術者1は、眉頭6、眉中7、眉尻8の3つの部位(図3(a)参照)に分けて、順次、グルー塗布ステップST14aを行う。施術者1は、グルー34を塗布した箇所を施術者1の指等で押さえる際、左眉毛3aの毛が短い部分および毛質が固い部分は強く押さえ、また、左眉毛3aの下向きの癖が強い部分は逆毛方向に毛流れを押さえる。施術者1は、すべての部位に対してグルー34の塗布を完了したら、左眉毛3aに浮いた毛があるかを確認する(ST15a)。左眉毛3aに浮いた毛があった場合(ST15aがYesの場合)は、ST14aに戻り、グルー34の塗布および押さえを追加的に行う。左眉毛3aに浮いた毛がない場合(ST15aがNoの場合)、施術者1は、次の定着用処理ステップST16aに移る。
【0032】
定着用処理ステップST16aにおいて、施術者1は、グルー34を塗布した左眉毛3aの全体をラップフィルム45で覆い、さらにラップフィルム45の上に冷却ジェル46を置く。そして、左眉毛3aは、この状態で所定時間tWa放置される(放置時間ST17a)。この放置時間ST17aによって、左眉毛3aの癖付けが定着する。
【0033】
施術者1は、上記放置時間ST17aの間に、右眉毛3bに対する癖付けステップST13bから定着用処理ステップST16bまでの処理を行うことができる。なお、所定時間tWaは、必ずしも厳格に管理することを要するものでないので、定着処理ステップST16bの終了まで延ばすことが可能である。すなわち、放置時間ST17aにおける所定時間tWaは、右眉毛3bに対して、癖付けステップST13bから定着用処理ステップST16bまでの処理を行うのに十分な時間とすることができる。
【0034】
右眉毛3bの処理である癖付けステップST13bから定着用処理ステップST16bまでの処理は、左眉毛3aの処理である癖付けステップST13aから定着用処理ステップST16aまでの処理と同じ内容である。定着用処理ステップST16bにおいて、グルー34を塗布した右眉毛3bの全体がラップフィルム47で覆われ、さらにラップフィルム47の上に冷却ジェル48が置かれる。右眉毛3bは、この状態で所定時間tWb放置される(定着時間ST17b)。
【0035】
施術者1は、上記定着時間ST17bの間に、左眉毛3aに対するグルー除去ステップST18aおよび拭き取りステップST19aの処理を行うことができる。なお、所定時間tWbは、必ずしも厳格に管理することを要するものでないので、グルー除去ステップST18aおよび拭き取りステップST19aの終了まで延ばすことが可能である。すなわち、定着時間ST17bにおける所定時間tWbは、左眉毛3aに対して、グルー除去ステップST18aおよび拭き取りステップST19aの処理を行うのに十分な時間とすることができる。
【0036】
施術者1は、所定時間tWaが経過し、かつ右眉毛3bに対する癖付けステップST13bから定着用処理ステップST16bまでの処理が終了したら、ラップフィルム45および冷却ジェル46を左眉毛3a上から外し、左眉毛3aに保湿クリーム37をたっぷり塗り、綿棒49で下から上に撫でることによって、保湿クリーム37とともにグルー34を左眉毛3aから丁寧に取り除く(グルー除去ステップST18a)。
【0037】
グルー除去ステップST18aの後、施術者は、精製水または化粧水を含ませたコットンパフ50を用いて、左眉毛3aおよび周辺をきれいに拭き取る(拭き取りステップST19a)。
【0038】
施術者1は、所定時間tWbが経過し、かつ左眉毛3aに対するグルー除去ステップST18aおよび拭き取りステップST19aが終了したら、ラップフィルム47および冷却ジェル48を右眉毛3b上から外し、保湿クリーム37をたっぷり塗り、綿棒49で下から上に撫でることによって、保湿クリーム37とともにグルー34を右眉毛3bから丁寧に取り除く(グルー除去ステップST18b)。
【0039】
グルー除去ステップST18bの後、施術者は、精製水または化粧水を含ませたコットンパフ50を用いて、右眉毛3bおよび周辺をきれいに拭き取る(拭き取りステップST19b)。
【0040】
以上、ST11~ST19(ST19a,ST19b)の処理によって、施術者1は、被施術者2の左右両眉毛3a,3bに対する施術を終了する。本実施形態にかかる眉毛の施術方法による施術に要する時間は、施術者の熟練度に依るものの、おおよそ30分以下である。これは、2種のローションによる処理のたびに所定時間の放置を行う従来の施術方法による施術の半分以下の時間である。
【0041】
図3は、上記の眉毛の施術方法による施術前後の眉毛の状態を示す図である。図3(a)に示す施術前の眉毛3は、各毛の向きがバラバラであるのに対して、図3(b)に示す施術後の眉毛3は、各毛が眉頭6では上向きに、眉中7から眉尻8がほぼ横向きに、互いにほぼ平行に流れている。すなわち、施術後の眉毛3は、完全に眉毛が上向きになる従来の眉毛の施術方法の仕上がり(図5参照)とは異なり、同一方向に毛流れが整った自然な仕上がりになる。毛流れが整うことでまばらな眉毛が濃く見えるという効果もある。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。具体的には、本発明の眉毛の施術方法は、下記に示すような態様であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、左右両眉毛3a,3bに対して効率的に施術を施す手順を採用しているが、片方ずつ確実に行ってもよいことは、言うまでもない。また、上記実施形態では左眉毛3a、右眉毛3bの順番で施術を行う場合を示したが、これとは逆に右眉毛3b、左眉毛3aの順番で施術を行うことも可能である。
【0044】
上記実施形態で説明した保湿クリームおよびグルーは、好適な例であるものの、説明したもの以外でも化粧品として市販されているものは、概ね、本発明の眉毛の施術方法に使用することができる。上記天然成分に特化した保湿クリームは、眉毛や皮膚への親和性がよく、化学品に対して過敏な人にも安全に使用できる点で好ましい。上記グルーも、化学品に対して過敏な人にも安全に使用できる点で好ましい。
【0045】
上記実施形態で説明したスティックタイプのホットビューラーは、好適な例であるものの、他の形状のホットビューラーも、概ね、本発明の眉毛の施術方法に使用することができる。本発明の眉毛の施術方法では、上記のとおり、ホットビューラーの加熱部分を、保湿クリームを塗った眉毛3に押し当てながら額の方向に引き上げることによって、眉毛3を根もとから引っ張り上げる。眉毛3に押し当てる部分の面積が小さすぎると、被施術者が痛みを感じ易い。一方、眉毛3に押し当てる部分の面積が大きすぎると、力が分散し、眉毛3を根もとからうまく引っ張り上げることができない。被施術者の眉毛3の状態にも依るものの、ホットビューラーは、スティックタイプのもので、その加熱部分を押し付けた際に、被施術者の眉毛の1/4~1/3に対してしっかり接するものが望ましい。
【0046】
施術者は、グルー34を塗布した後に直ちに指等で押さえることができる範囲の複数の領域に眉毛3を分けて、グルー塗布ステップST14aを行うが、前記複数の領域は、眉頭6、眉中7、眉尻8の3つの部位(図3(a)参照)であることが望ましい。眉頭6、眉中7、眉尻8の3つの部位の整形前の毛流れは、通常、部位内では共通または類似し、部位間では差異がある。このように構成することによって、整形前の毛流れが共通または類似する範囲で、グルー34の塗布とこれに続く指等による押さえという一連の作業を行うことになるので、作業が行い易い。さらに、眉毛3の隣接する部位は、互いに毛流れが比較的類似するので、眉頭6、眉中7、眉尻8の順またはその逆順で、前記一連の作業を行うようにすることがより好ましい。さらに、眉頭6、眉中7、眉尻8の順に、整形後の毛流れに沿って前記一連の作業を行うようにすることは、整形後の眉毛3が、各毛が眉頭6では上向きに、眉中7から眉尻8がほぼ横向きに、互いにほぼ平行に流れている、自然な仕上がりになるので、最も望ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 施術者
2 被施術者
3(3a,3b) 眉毛
4 睫毛
5 眉間
6 眉頭
7 眉中
8 眉尻
9 額
31 クレンジング水
32,37 保湿クリーム
34 グルー
41,50 コットンパフ
42,49 綿棒
43 ホットビューラー
44 刷毛
45,47 ラップフィルム
46,48 冷却ジェル
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図2(g)】
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5