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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186999
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20221208BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B66B3/00 T
B66B5/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172718
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2022032179の分割
【原出願日】2015-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】502250178
【氏名又は名称】ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 克史
(72)【発明者】
【氏名】関根 忍
(72)【発明者】
【氏名】柴田 徹
(57)【要約】
【課題】エレベーターに対する信頼性の向上を図ることができるエレベーターの通話管理を実現すること。
【解決手段】昇降路を移動するカゴ102内に設けられたインターフォン102bが設けられ、たとえばカゴの停止位置が当該カゴの扉を開閉可能な位置ではない場合(S403:No)などカゴの扉が開閉可能でない場合に、インターフォンが備える非常通話ボタン102cの操作の有無を判断し(S405)、非常通話ボタンが操作された場合(S405:Yes)に、架電先の電話機140との接続を確立し(S413)、インターフォンと電話機との接続が確立された状態で、インターフォンのマイクに入力された音声を電話機に出力させ、電話機から入力された音声をインターフォンのスピーカーから出力させるようにするので、地震などによりエレベーターが途中で停止して閉じ込めにあったカゴを優先してインターフォンの接続をすることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動するカゴ内に設けられたインターフォンを備えたエレベーターであって、
前記カゴの扉が開閉可能でない場合に、前記インターフォンが備える非常通話ボタンの操作の有無を判断し、
前記非常通話ボタンが操作された場合に、架電先の電話機との接続を確立し、
前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記インターフォンのマイクに入力された音声を前記電話機に出力させ、
前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記電話機から入力された音声を前記インターフォンのスピーカーから出力させる、
制御部を備えたことを特徴とするエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インターフォン通話が可能なエレベーターの通話管理システム、エレベーター、エレベーターの通話管理方法およびエレベーターの通話管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベーターのカゴには、緊急時などに、カゴの中の利用者とカゴの外(たとえば、エレベーターが設置された建物とは別の場所にある保守管理会社)にいるオペレーターとが通話ができるように、インターフォンが設けられている。このインターフォンは、たとえば、非常通話ボタンが操作された場合など、カゴの中の利用者の必要に応じて保守管理会社に接続され、当該利用者と保守管理会社のオペレーターとの通話を実現する。
【0003】
関連する技術として、従来、たとえば、エレベーターのカゴ内に設けられた非常通話ボタンが操作された場合に、カゴ内の利用者と保守管理会社のオペレーターとの会話が可能となるようにインターフォンと保守管理会社とを電話回線を介して接続するとともに、インターフォンの音声を記録するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0004】
また、関連する技術として、従来、たとえば、エレベーターの利用者がカゴ内に閉じ込められたとき、保守管理会社などによる遠隔操作によって運転モードを手動モードとし、閉じ込められた利用者の操作によって所定の乗り場まで低速で運転できるようにした技術(たとえば、下記特許文献2を参照。)や、エレベーターにおいて異常が発生した時にカゴ内の画像および音声を自動的に監視センタ側へ伝送し、双方向の伝送をおこなうことができるようにした技術(たとえば、下記特許文献3を参照。)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-26036号公報
【特許文献2】特開平6-298462号公報
【特許文献3】特開平7-257842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、利用者による非常通話ボタンの操作を必要とする。このため、利用者が、カゴが階床間で停止するという意図しない事態に遭遇したために気持ちが動転して、非常通話ボタンの操作を失念したり操作するまでに時間がかかったりすると、その分利用者とオペレーターとの通話開始が遅れ、利用者の不安を増長させてしまうという問題があった。
【0007】
また、上述した特許文献2に記載された従来の技術は、利用者が運転可能になる手動モードに切り替えるためには保守管理会社における遠隔操作を必要とする。このため、オペレーターが別のインターフォン通話に対応している場合などにおいては、その分オペレーターとの通話開始あるいは手動モードへの切換操作が遅れ、利用者の不安を増長させてしまうという問題があった。また、上述した特許文献3に記載された従来の技術は、インターフォンの端末装置の他、カゴ内を撮影するカメラを設置しなくてはならず、運用可能となる設備の整備が煩わしいという問題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、エレベーターに対する信頼性の向上を図ることができるエレベーター、エレベーターの通話管理方法およびエレベーターの通話管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるエレベーターは、昇降路を移動するカゴ内に設けられたインターフォンの通話要求の操作により、架電先の電話機との接続を確立し、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記インターフォンのマイクに入力された音声を前記電話機に出力させ、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記電話機から入力された音声を前記インターフォンのスピーカーから出力させ、前記マイクに音声の入力がない状態が所定時間以上継続した場合に、前記インターフォンと前記電話機との間で通話中ではないと判断し、前記インターフォンと前記電話機との接続を遮断する、制御部を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるエレベーターの通話管理方法は、昇降路を移動するカゴ内に設けられたインターフォンの通話要求の操作により、架電先の電話機との接続を確立し、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記インターフォンのマイクに入力された音声を前記電話機に出力させ、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記電話機から入力された音声を前記インターフォンのスピーカーから出力させ、前記マイクに音声の入力がない状態が所定時間以上継続した場合に、前記インターフォンと前記電話機との間で通話中ではないと判断し、前記インターフォンと前記電話機との接続を遮断する、処理をコンピューターが実行することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるエレベーターの通話管理プログラムは、昇降路を移動するカゴ内に設けられたインターフォンの通話要求の操作により、架電先の電話機との接続を確立し、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記インターフォンのマイクに入力された音声を前記電話機に出力させ、前記インターフォンと前記電話機との接続が確立された状態で、前記電話機から入力された音声を前記インターフォンのスピーカーから出力させ、前記マイクに音声の入力がない状態が所定時間以上継続した場合に、前記インターフォンと前記電話機との間で通話中ではないと判断し、前記インターフォンと前記電話機との接続を遮断する、処理をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかるエレベーター、エレベーターの通話管理方法およびエレベーターの通話管理プログラムによれば、エレベーターに対する信頼性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システムのシステム構成を示す説明図である。
図2】この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システムを構成する遠隔監視支援装置のハードウエア構成を示す説明図である。
図3】この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システムを構成する遠隔監視支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】この発明にかかる実施の形態の遠隔監視支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるエレベーターの通話管理システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(遠隔監視システムのシステム構成)
まず、この発明にかかる実施の形態のエレベーターの通話管理システムを実現する、エレベーターの遠隔監視システムのシステム構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システムのシステム構成を示す説明図である。
【0016】
図1において、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100は、たとえば、制御基板(制御装置)110と、遠隔監視支援装置120と、管理サーバコンピュータ130と、電話機140と、によって構成することができる。遠隔監視システム100は、エレベーター101の動作を、当該エレベーター101の遠隔地に設置された管理サーバコンピュータ130を用いて監視する。管理サーバコンピュータ130は、遠隔監視支援装置120を介して、エレベーター101の動作を監視する。
【0017】
管理サーバコンピュータ130は、監視対象となるエレベーター101が設置されている場所とは異なる、当該エレベーター101が設置されている場所から離れた遠隔地に設置されている。具体的には、管理サーバコンピュータ130は、たとえば、エレベーター101の保守管理を担う保守管理会社150などに設置することができる。
【0018】
電話機140は、たとえば、管理サーバコンピュータ130が設置された保守管理会社150に設置される。管理サーバコンピュータ130および電話機140を保守管理会社150に設置することにより、エレベーター101のカゴ102の中にいる者と保守管理会社150のオペレーターとが直接通話することができる。
【0019】
エレベーター101は、複数階建てのビル内などに設置され、人や物品を搭載するカゴ(乗りかご)102を備えている。カゴ102は、1台のエレベーター101に1つずつ設けられている。カゴ102は、建物における各階床を、鉛直方向に沿って貫通する昇降路(図示を省略する)内に設けられている。エレベーター101は、たとえば、ロープ式(トラクション式)のエレベーターによって実現することができる。
【0020】
この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100により監視可能なエレベーター101は、ロープ式のエレベーターに限るものではない。この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100においては、ロープ式のエレベーター101に代えて、あるいは、ロープ式のエレベーター101に加えて、たとえば、油圧式のエレベーター101を監視対象としてもよい。
【0021】
カゴ102には、行先階ボタンや扉開閉ボタンなどを含む操作ボタン、カゴ102が位置する階床などを表示する表示器などを備えた操作盤102aが設けられている。カゴ102に設けられた操作盤102aは、操作盤102a用の制御基板を備えており、当該操作盤102a用の制御基板を介して制御基板110に接続されている。
【0022】
また、カゴ102には、インターフォンの端末装置102bが設けられている。インターフォンの端末装置102bは、呼出ボタンとマイクとスピーカーとを備えている(いずれも図示を省略する)。インターフォンの端末装置102bは、遠隔監視支援装置120に接続されている。
【0023】
上記の操作ボタンは、カゴ102の外部の管理人やオペレーターなどとの通話時に操作される非常通話ボタン102cを含んでいる。操作盤102a用の制御基板は、非常通話ボタン102cが操作された場合に、非常通話ボタン102cが操作されたことを示す信号を、インターフォンの端末装置102bの外部(この実施の形態においては、遠隔監視支援装置120)に出力する。
【0024】
この実施の形態においては、非常通話ボタン102cの操作によって、この発明にかかる通話要求の操作を実現することができる。これにより、遠隔監視システム100は、エレベーター101のカゴ102に設けられたインターフォンの通話要求の操作がされた場合に所定の架電先へ架電することができる。
【0025】
昇降路には、カゴ102の昇降動作にかかわる駆動機構104が設けられている。駆動機構104は、たとえば、昇降路における上部に設けることができる。駆動機構104は、巻上機、滑車、ロープ104a、カウンタウエイト104bなどによって構成されている。駆動機構104は、さらに、電磁ブレーキや調速機などを備えている(いずれも図示を省略する)。
【0026】
駆動機構104は、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。駆動機構104は、昇降路における上部に設けられるものに限らない。駆動機構104は、たとえば、油圧式のエレベーター101の場合は、昇降路における底部(ピット)に設けられていてもよい。
【0027】
カゴ102はロープ104aの一端に連結され、カウンタウエイト104bはロープ104aの他端に連結されている。ロープ式のエレベーター101においては、両端にカゴ102およびカウンタウエイト104bが連結されたロープ104aをつるべ式に滑車および巻上機にかけた状態で当該巻上機を駆動し、ロープ104aと滑車との間の摩擦力(トラクション)を利用してカゴ102を昇降させる。昇降路には、カゴ102の昇降位置をガイドするガイドレール(図示を省略する)が設けられている。
【0028】
昇降路における各階床に対応した位置(乗り場)105およびカゴ102には、それぞれ扉105a、102dが設けられている。カゴ102には、当該カゴ102に設けられた扉102dおよび乗り場105に設けられた扉105aを開閉させるモーター(図示を省略する)が設けられている。扉105a、102dを開閉させるモーターは、制御基板110に接続されている。
【0029】
制御基板110は、たとえば、カゴ102が走行を開始する場合に、走行開始信号を出力する。制御基板110は、たとえば、走行中のカゴ102が走行を停止した場合に、走行停止信号を出力する。走行開始信号は、たとえば、カゴ102が走行を開始したことを通知する専用の信号によって実現することができる。あるいは、走行開始信号や走行停止信号は、たとえば、巻上機に対して出力される駆動信号によって実現してもよい。
【0030】
乗り場105に設けられた扉105aは、インターロックなどと称される装置で施錠されている。エレベーター101が停止階に到着した状態でモーターを駆動すると、カゴ102に設けられた扉102dの駆動機構部分とインターロックとがかみ合ってインターロックによる施錠が解放され、カゴ102に設けられた扉102dおよび乗り場105に設けられた扉105aが連動して開閉する。これにより、乗り場105に設けられた扉105aは、カゴ102が各階床における停止位置に停止していない場合は閉じた状態とされる。
【0031】
昇降路には、カゴ102の位置に応じて出力が変化するセンサが設けられていてもよい。センサは、たとえば、近接センサや光電センサによって実現することができる。たとえば、近接センサによって昇降路に設けられたセンサを実現する場合、各階床に停止した状態のカゴ102の位置に応じた位置にそれぞれ近接センサを設け、金属製の検出用の片をカゴ102に設ける。この場合、検出用の片が近接センサに接近することによって変化する近接センサからの出力信号に基づいて、カゴ102の位置を特定することができる。
【0032】
また、たとえば、光電センサによって昇降路に設けられたセンサを実現する場合も、上記の近接センサの場合と同様に、各階床に停止した状態のカゴ102の位置に応じた位置にそれぞれ光電センサを設け、検出用の片をカゴ102に設ける。検出用の片は、光電センサが発する光を遮る(あるいは反射する)材料を用いて形成する。この場合、検出用の片が光電センサの光軸を遮る(あるいは反射する)ことによって変化する光電センサからの出力信号に基づいて、カゴ102の位置を特定することができる。
【0033】
エレベーター101は、扉102d、105aの開閉を検出する扉開閉センサ(図示を省略する)を備えている。扉開閉センサは、扉102d、105aが開状態にあるか閉状態にあるかに応じて出力が変化する。扉開閉センサは、たとえば、マイクロスイッチや光電センサなどによって実現することができる。扉開閉センサは配線を介して制御基板110に接続されており、扉開閉センサから出力された信号は当該配線を介して制御基板110に入力される。
【0034】
各乗り場105には、乗り場呼びボタン(図示を省略する)やカゴ102が位置する階床などを表示する表示器などを備えた操作盤105bが、それぞれ設置されている。各乗り場105に設けられた操作盤105bは、それぞれ、操作盤105b用の制御基板を備え、当該操作盤105b用の制御基板を介して制御基板110に接続されている。
【0035】
遠隔監視支援装置120は、たとえば、エレベーター101の制御基板110を収容する筐体や、昇降路の壁などに取り付けることができる。遠隔監視支援装置120は、主制御基板121と音声通信基板122とを備えている。主制御基板121は、制御基板110に接続されている。また、主制御基板121は、インターネットなどのネットワーク160を介して、管理サーバコンピュータ130に接続されている。主制御基板121と管理サーバコンピュータ130とを電話回線などの公衆音声網170ではなくインターネットを介して接続することにより、緊急時に電話回線がパンクすることによってエレベーター101の状況把握が遅延することを防止し、迅速な対応をとることができる。
【0036】
音声通信基板122は、インターフォンの端末装置102bおよび公衆音声網170に接続されている。音声通信基板122は、具体的には、たとえば、PHS(Personal Handy-phone System)基板によって実現することができる。公衆音声網170は、固定電話網(公衆交換電話網)および携帯電話網を含む。公衆音声網170は、電話線を収容する加入者線交換機、加入者線交換機を束ねる中継交換機、ほかの事業者の電話網と接続する関門交換機など、図示を省略する複数の交換機によって構成されている。公衆音声網170については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0037】
上記の主制御基板121は、音声通信基板122が備えるPHS基板を用いて通信をおこなってもよい。この場合、遠隔監視支援装置120は、PHS基板を、音声通信に用いるとともにデータ通信にも用いる。エレベーター101の設置場所は固定であるため、PHSを利用した通信をおこなうことにより、通信の品質を確保するとともに通信にかかるコストを抑えることができる。
【0038】
管理サーバコンピュータ130は、たとえば、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置によって実現することができる。管理サーバコンピュータ130には、操作用の端末装置131が接続されていてもよい。管理サーバコンピュータ130と操作用の端末装置131とは、同じ場所に設置されていてもよく、異なる場所に設置されていてもよい。
【0039】
操作用の端末装置131は、1台であってもよく、複数台であってもよい。操作用の端末装置131は、たとえば、キーボードやマウスなどの入力デバイスや、ディスプレイなどを備えたパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置によって実現することができる。また、操作用の端末装置131には、エレベーター101の状態を記載した報告書などを出力するためのプリンタ(図示を省略する)が接続されていてもよい。
【0040】
保守管理会社150には、管理サーバコンピュータ130および電話機140に加えて、PBX(Private Branch eXchange、図2における符号205を参照)を設置することができる。電話機140は、PBXを介して公衆音声網170に接続されている。遠隔監視システム100においてはPBXを設けず、電話機140を公衆音声網170に直接接続してもよい。
【0041】
(遠隔監視システム100のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100を構成する遠隔監視支援装置120のハードウエア構成について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100を構成する遠隔監視支援装置120のハードウエア構成を示す説明図である。
【0042】
図2において、制御基板110は、エレベーター101を構成する各部を駆動制御することにより、エレベーター101の運行動作を制御する。制御基板110は、エレベーター101が備える各部に対して制御用の信号を出力するとともに、当該各部から出力された信号に基づいて、エレベーター101の運行動作を制御する。
【0043】
上述した操作盤102a用の制御基板は、エレベーター101の利用者などによる操作ボタンに対する入力操作を受け付けるごとに、当該入力操作に応じた呼び信号を生成し、生成した呼び信号を制御基板110に出力する。制御基板110は、たとえば、操作盤102a用の制御基板から出力された呼び信号に基づいて、駆動機構104を駆動制御する制御用の信号を出力することによってエレベーター101の運行動作を制御する。
【0044】
具体的には、制御基板110は、たとえば、操作盤102a用の制御基板から出力された呼び信号に基づいて、巻上機に対する制御用の信号を生成し、生成した制御用の信号を巻上機に対して出力する。これにより、巻上機は、カゴ102を上昇あるいは下降させる方向に回転駆動する。巻上機は、たとえば、インバーターを用いて制御されており、カゴ102を停止させる階床において回転を停止するように制御基板110によって駆動制御される。
【0045】
制御基板110は、巻上機に制御用の信号を出力するごとに、当該制御用の信号にしたがって動作した巻上機や各モーターの回転数を取得する。巻上機や各モーターの回転数は、たとえば、エンコーダなどを用いて取得することができる。これにより、制御基板110は、巻上機に対して出力した制御用の信号にしたがって、当該巻上機が正常に動作したか否かを判断することができる。
【0046】
また、具体的には、制御基板110は、たとえば、操作盤102a用の制御基板から出力された呼び信号に基づいて、カゴ102を所定の階床において停止させるようにブレーキを動作させる制御用の信号を生成し、生成した制御用の信号をブレーキに対して出力する。ブレーキは、制御基板110から出力された制御用の信号にしたがって、カゴ102の昇降動作を停止させ、当該カゴ102を所定の階床において停止させるように動作する。これにより、カゴ102を所定の階床において停止させることができる。
【0047】
制御基板110は、ブレーキに対して制御用の信号を出力するごとに、ブレーキの動作に応じて出力が変化するブレーキセンサからの出力信号を取得する。ブレーキセンサは、たとえば、マイクロスイッチや光電センサなどによって実現することができる。これにより、制御基板110は、ブレーキに対して出力した制御用の信号にしたがって、当該ブレーキが正常に動作したか否かを判断することができる。
【0048】
また、具体的には、制御基板110は、たとえば、操作盤102a用の制御基板から出力された呼び信号に基づいて、ブレーキによってカゴ102を停止させた階床において扉102d、105aを開閉させる制御用の信号を生成し、生成した制御用の信号をカゴ102の扉102dや乗り場105の扉105aを開閉させるモーターに対して出力する。これにより、カゴ102が停止した階床において、扉102d、105aを開閉させることができる。上記のように、扉105aを開閉させるモーターは、インターロックなどと称される装置で施錠されているため、扉105aが完全に閉まっていない場合は動作しない。
【0049】
制御基板110は、扉102d、105aを開閉させるモーターに制御用の信号を出力するごとに、扉開閉センサからの出力信号を取得する。これにより、制御基板110は、該当する扉102d、105aを開閉させるモーターに対して出力した制御用の信号にしたがって、当該扉102d、105aが正常に動作したか否かを判断することができる。
【0050】
また、制御基板110は、たとえば、操作盤102a用の制御基板に対して、カゴ102が位置する階床を示す階床信号を含む制御用の信号を出力する。カゴ102が位置する階床は、たとえば、昇降路中において階床ごとに設けられたセンサ(図示を省略する)からの出力信号に基づいて特定することができる。操作盤102a用の制御基板は、階床信号を含む制御用の信号を受け付けると、受け付けた制御用の信号に基づいて表示器を制御して、カゴ102が位置する階床や移動方向(上昇中か下降中か)などを表示する。
【0051】
制御基板110は、操作盤102a用の制御基板や操作盤105b用の制御基板に対して、たとえば、カゴ102の位置が切り替わるごとに階床信号を含む制御用の信号を出力する。あるいは、制御基板110は、操作盤102a用の制御基板や操作盤105b用の制御基板に対して、たとえば、カゴ102の位置にかかわらず、定期的に階床信号を含む制御用の信号を出力するものであってもよい。
【0052】
操作盤105b用の制御基板は、操作盤102a用の制御基板と同様に、エレベーター101の利用者などによる乗り場呼びボタンに対する入力操作を受け付けるごとに、当該入力操作に応じた呼び信号を生成し、生成した呼び信号を制御基板110に出力する。操作盤105b用の制御基板から呼び信号が出力された場合、制御基板110は、操作盤102a用の制御基板から信号が出力された場合と同様に、操作盤105b用の制御基板から出力された信号に基づいて各種の制御用の信号を生成し、生成した制御用の信号を該当する各部に出力することによってエレベーター101の運行動作を制御する。
【0053】
制御基板110は、操作盤102aや操作盤105bから出力された信号に応じてカゴ102を昇降動作させるごとに、当該カゴ102を昇降動作させるために各部を起動したことを示す起動信号を出力する。制御基板110は、たとえば、1階から2階に移動した場合、起動信号を1回出力する。また、制御基板110は、たとえば、1階から途中で停止することなく5階に移動した場合、起動信号を1回出力する。また、制御基板110は、たとえば、1階から、途中の3階で停止した(扉の開閉をおこなった)後に、5階に移動する場合、起動信号を2回出力する。
【0054】
制御基板110は、カゴ102を昇降動作させるごとに、カゴ102の走行距離や走行時間を算出してもよい。カゴ102の走行距離は、たとえば、起動回数に基づいて算出することができる。また、カゴ102の走行時間は、たとえば、上記の階床信号に基づいて算出することができる。具体的には、たとえば、カゴ102が1階にいる状態で4階の乗り場105の操作盤105bから呼びの操作を受け付けた場合、カゴ102は1階から4階までの3階床分を移動する。
【0055】
制御基板110は、図示を省略するメモリを備え、起動信号が出力されるごとに、当該起動信号が出力された回数すなわち起動回数をメモリに記憶する。制御基板110は、起動回数に代えて、あるいは起動回数に加えて、カゴ102の昇降動作や扉105a、102dの開閉動作に際して駆動した各部の運行動作の履歴をメモリに記憶してもよい。具体的には、制御基板110は、たとえば、起動回数、カゴ102の走行距離、カゴ102の走行時間、カゴ102の昇降動作や扉105a、102dの開閉動作に際して動作した各種リレーの動作回数などに関する情報を運行動作の履歴としてメモリに記憶してもよい。
【0056】
また、制御基板110は、扉開閉センサの出力値に基づいて、扉102d、105aが開状態にあるか閉状態にあるかを判断する。制御基板110は、自身が出力した扉102d、105aを開閉させる制御用の信号と扉開閉センサの出力値とに基づいて、扉102d、105aを開閉させる制御用の信号を出力したことに応じて、当該扉102d、105aが実際に開閉したかどうかを判断することができる。
【0057】
また、制御基板110は、エレベーター101の運転モードが変化した場合に、当該運転モードが切り替わったことを示す信号を出力する。制御基板110は、具体的には、たとえば、エレベーター101の運転モードが、通常の運転モードから通常の運転モード以外の運転モードに切り替わった場合に、当該運転モードの切り替わりがあったことを外部に通知する信号、あるいは、切り替わった後の運転モード(通常の運転モード以外の運転モードであること)を通知する信号を出力する。また、制御基板110は、具体的には、たとえば、エレベーター101の運転モードが、通常の運転モード以外の運転モードから通常の運転モードに切り替わった場合に、当該運転モードの切り替わりがあったことを外部に通知する信号、あるいは、切り替わった後の運転モード(通常の運転モードであること)を通知する信号(発報用の信号)を出力(発報)する。
【0058】
また、制御基板110は、エレベーター101において障害を検知した場合に、当該障害の発生を通知する信号(発報用の信号)を出力(発報)する。具体的には、制御基板110は、たとえば、扉105a、102dを開閉動作させる制御用の信号を出力したにもかかわらず、扉開閉センサの出力値に基づいて該当する扉105a、102dが動作しないことを検出した場合に、エレベーター101における該当する扉105a、102dにかかる障害が発生したことを通知する信号(発報用の信号)を出力する。
【0059】
制御基板110は、たとえば、制御基板110と外部装置とを接続する配線を介して、発報用の信号を、制御基板110の外部に出力(発報)することができる。より具体的には、制御基板110は、たとえば、制御基板110と外部装置とを接続する配線が、制御基板110に接続される接点を介して、発報用の信号を、制御基板110の外部に出力(発報)することができる。
【0060】
制御基板110は、たとえば、制御基板110に設けられた端子を介して、発報用の信号を、制御基板110の外部に出力してもよい。具体的には、制御基板110は、たとえば、エレベーター101の外部装置との間で通信をおこなう通信用の端子を介して、発報用の信号を、制御基板110の外部に出力することができる。あるいは、具体的には、御基板110は、たとえば、制御基板110に設けられて、当該制御基板110に診断用の端末装置を接続可能な端子(以下「保守点検用の端子」という)を介して、発報用の信号を、制御基板110の外部に出力してもよい。
【0061】
インターフォンの端末装置102bは、呼出ボタンが操作された場合に、当該操作があったことを示す呼出信号を、遠隔監視支援装置120に出力する。遠隔監視支援装置120は、インターフォンの端末装置102bから出力された呼出信号が音声通信基板122に入力された場合、公衆音声網170やPBX205を介して電話機140に呼出信号を送出する。これにより、インターフォンの端末装置102bと電話機140との間において音声通信(通話)をおこなうことができる。
【0062】
インターフォンの端末装置102bは、遠隔監視支援装置120(音声通信基板122)と保守管理会社150に設置された電話機140との接続が確立された状態で、マイクに入力された音声信号を、遠隔監視支援装置120に出力する。また、インターフォンの端末装置102bは、遠隔監視支援装置120(音声通信基板122)と電話機140との接続が確立された状態で、遠隔監視支援装置120から出力された音声信号を、スピーカーを介して出力する。これにより、カゴ102の中の利用者は、インターフォンの端末装置102bを介して、保守管理会社150における電話機140のオペレーターと直接会話(直話)をすることができる。
【0063】
遠隔監視支援装置120は、制御基板110からエレベーター101が備える各部に対して出力された信号(制御用の信号)を取得し、取得した制御用の信号に基づいて通知情報を生成し、生成した通知情報を管理サーバコンピュータ130へ送信する。通知情報は、エレベーター101の状態に関する情報や、当該通知情報の送信元となるエレベーター101の識別情報などを含む。
【0064】
エレベーター101の状態に関する情報は、たとえば、カゴ102の昇降方向やカゴ102の移動先となる階床、移動先となる階床においてカゴ102が停止したか否か、扉105a、102dを開閉させるモーターの動作の有無、などを示す。また、エレベーター101の状態に関する情報は、たとえば、カゴ102が現在位置する階床、各種の安全装置の作動の有無などを示す。
【0065】
エレベーター101の識別情報は、たとえば、当該エレベーター101の製造番号であってもよいし、当該エレベーター101の設置場所(住所など)に基づいて設定される番号であってもよいし、当該エレベーター101の保守点検をおこなう作業者などが任意に設定した番号であってもよい。エレベーター101の識別情報は、所定桁数の数字やアルファベットなどの文字を組み合わせて構成することができる。
【0066】
遠隔監視支援装置120が備える主制御基板121は、たとえば、中継基板201と、監視制御基板202と、メモリ203と、通信I/F(インターフェイス)204と、によって構成することができる。遠隔監視支援装置120は、制御基板110から出力された制御用の信号を、主制御基板121における中継基板201を介して取得する。
【0067】
遠隔監視支援装置120は、たとえば、制御基板110に設けられたリレーと中継基板201とを接続し、制御基板110から出力された制御用の信号に応じて出力(出力状態)が変化するリレーからの出力を、主制御基板121において取得する。この場合、遠隔監視支援装置120は、制御基板110から出力された制御用の信号を、リレーから、中継基板201を介して、主制御基板121において取得することができる。
【0068】
リレーは、制御基板110による制御対象となる各部に対応して設けられ、エレベーター101が備える各部の状態に応じて出力状態が変化する(たとえばON/OFFする)。リレーは、たとえば、電磁石により接点を物理的に動かして開閉する電磁リレーを用いることができる。電磁リレーの接点は、たとえば、メーク(電流を流したときに接点が閉じる)接点であってもよく、ブレーク(電流を流したときに接点が開く)接点であってもよい。また、電磁リレーの接点は、たとえば、トランスファ(電流を流すことで複数の接点を切り替える)接点であってもよく、ラチェット(電流を流すたびに接点の開閉を切り替える)接点であってもよい。また、リレーは、たとえば、ソリッドステートリレーやプグラムリレーを用いてもよい。
【0069】
遠隔監視支援装置120は、たとえば、リレーに接続された配線に接続され、当該配線からの出力を、主制御基板121において取得してもよい。この場合も、遠隔監視支援装置120は、制御基板110から出力された制御用の信号を、リレー(リレーに接続された配線)から、中継基板201を介して、主制御基板121において取得することができる。
【0070】
具体的には、遠隔監視支援装置120は、たとえば、制御基板110に対してリレーを支持する足(制御基板110とリレーとを接続する配線)に、制御基板110と主制御基板121(中継基板201)との接点を設け、当該接点を介して制御基板110に接続することができる。接点は、制御基板110からリレーに入力する信号用の足(制御基板110とリレーとを接続する配線)に設けることができる。この接点は、リレーから制御基板110に出力される信号用の足(制御基板110とリレーとを接続する配線)に設けてもよい。これにより、制御基板110から出力された制御用の信号に応じて出力(出力状態)が変化するリレーからの出力を、接点を介して取得し、当該接点から中継基板201を介して主制御基板121において取得することができる。
【0071】
また、遠隔監視支援装置120は、制御基板110からエレベーター101が備える各部に対して出力した制御用の信号(以下、適宜「下り信号」という)や、当該下り信号に応じてエレベーター101が備える各部から出力されて制御基板110に入力された信号(以下、適宜「上り信号」という)を取得してもよい。
【0072】
この場合、具体的には、遠隔監視支援装置120は、たとえば、エレベーター101が備える各部に対応して制御基板110に設けられたICチップの足(制御基板110とICチップとを接続する配線)に、制御基板110と主制御基板121(中継基板201)との接点を設け、当該接点を介して制御基板110に接続する。この場合の接点は、制御基板110からICチップに入力する信号用の足(制御基板110とICチップとを接続する配線)に設けてもよく、ICチップから制御基板110に出力される信号用の足(制御基板110とICチップとを接続する配線)に設けてもよい。これにより、遠隔監視支援装置120は、下り信号や上り信号を接点を介して取得し、当該接点から中継基板201を介して主制御基板121において取得することができる。
【0073】
制御基板110においては、エレベーター101が備える各部の動作状態を作業者などが目視によって確認できるように、エレベーター101が備える各部の動作に連動して点灯したり消灯したりするLEDが設けられている場合がある。この場合、遠隔監視支援装置120は、たとえば、LEDの点灯/消灯に応じて出力が変化する光電センサ(図示を省略する)を備え、当該光電センサと中継基板201とを接続し、中継基板201を介して当該光電センサの出力値を主制御基板121において取得することにより、制御基板110から出力された制御用の信号を取得するようにしてもよい。
【0074】
また、遠隔監視支援装置120における主制御基板121(中継基板201)は、たとえば、制御基板110と制御用の信号の出力先となる各部とを接続する配線が制御基板110に接続される接点(ターミナル)に接続することができる。これにより、遠隔監視支援装置120は、制御基板110における配線との接点(ターミナル)から、中継基板201を介して、制御用の信号を取得することができる。この場合の接点(ターミナル)は、制御基板110上に設けられているものに限らず、制御基板110と制御用の信号の出力先となる各部とを接続する配線の途中において、遠隔監視支援装置120における中継基板201と接続されるものであってもよい。
【0075】
あるいは、遠隔監視支援装置120における主制御基板121(中継基板201)は、制御基板110と、当該制御基板110からの制御用の信号の出力先となる各部とを接続する配線を分岐させる配線(分岐線)に接続してもよい。エレベーター101が備える各部と制御基板110とを接続する配線(信号線)111aと分岐線との分岐位置には、制御基板110から出力された制御用の信号を2方向へ分岐する分岐コネクタを設けてもよい。これにより、遠隔監視支援装置120を、分岐コネクタを介して、制御基板110に容易に接続することができる。
【0076】
具体的には、たとえば、制御基板110からの制御用の信号の出力先となる各部(たとえば駆動機構104)と制御基板110とを接続する配線111aに取り付けられて、当該配線111aによって伝達される各種の信号を取得する基板123aを設け、当該基板123aと主制御基板121(中継基板201)とを配線200を介して接続してもよい。これによって、たとえば駆動機構104と、遠隔監視支援装置120の主制御基板121とを接続することができる。このように接続することにより、遠隔監視支援装置120は、駆動機構104と制御基板110との間における下り信号や上り信号を取得することができる。
【0077】
また、具体的には、たとえば、乗り場105の操作盤105bと制御基板110とを接続する信号線111bに取り付けられて、当該信号線111bによって伝達される各種の信号を取得する基板123bを設け、当該基板123bと主制御基板121(中継基板201)とを配線200を介して接続してもよい。これによって、遠隔監視支援装置120の主制御基板121と乗り場105の操作盤105bとを接続することができる。このように接続することにより、遠隔監視支援装置120は、制御基板110と乗り場105の操作盤105bとの間における下り信号や上り信号を取得することができる。
【0078】
また、具体的には、たとえば、カゴ102の操作盤102aと制御基板110とを接続する信号線111cに取り付けられて、当該信号線111cによって伝達される各種の信号を取得する基板123cを設け、当該基板123cと主制御基板121(中継基板201)とを配線200を介して接続してもよい。これによって、遠隔監視支援装置120の主制御基板121とカゴ102の操作盤102aとを接続することができる。このように接続することにより、遠隔監視支援装置120は、制御基板110とカゴ102の操作盤102aの間における下り信号や上り信号を取得することができる。
【0079】
中継基板201は、入力を受け付けた信号を解析し、解析結果を監視制御基板202に出力する。監視制御基板202は、中継基板201から出力された解析結果に基づいて通知情報を生成し、生成した通知情報を、通信I/F204を介して管理サーバコンピュータ130へ送信する。また、監視制御基板202は、中継基板201から出力された解析結果を、メモリ203に記憶する。監視制御基板202は、中継基板201が入力を受け付けた信号を、直接メモリ203に記憶してもよい。
【0080】
メモリ203は、電源の供給が絶たれた場合にも記憶した情報を保持する不揮発性の記憶媒体によって実現することができる。具体的には、メモリ203は、たとえば、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などによって実現することができる。
【0081】
制御基板110から出力される各種の信号は、エレベーター101の機種などに応じて異なる。中継基板201は、解析に際して、制御基板110から出力される各種の信号を、監視制御基板202が処理可能なフォーマットに変換する。遠隔監視支援装置120は、中継基板201において入力を受け付けた信号を解析して監視制御基板202が処理可能なフォーマットに変換することにより、エレベーター101の機種の違いにかかわらず、当該エレベーター101の遠隔監視をおこなうことができる。
【0082】
また、遠隔監視支援装置120は、主制御基板121において監視制御基板202によって制御される中継基板201を介して、制御基板110に対して各種の運行指令信号を出力する。遠隔監視支援装置120は、制御基板110を介してエレベーター101が備える各部を駆動制御する際に運行指令信号を出力する。
【0083】
運行指令信号は、たとえば、操作盤102aや操作盤105bにおいて、所定の階床への移動を指示する入力操作を受け付けた場合に当該操作盤102aや操作盤105bから出力される信号と同様の信号(呼び信号など)によって実現することができる。具体的には、運行指令信号は、たとえば、エレベーター101のカゴ102を所定の階床に移動させたり、移動させたカゴ102を該当する階床において停止させたり、停止させた階床においてカゴ102の扉102dおよび乗り場105の扉105aを開閉させたりする信号を含む。
【0084】
制御基板110は、主制御基板121から出力された運行指令信号を受信すると、受信した運行指令信号に基づいて上述した各種の制御用の信号を生成し、生成した各種の制御用の信号をエレベーター101が備える各部に対して出力する。主制御基板121は、中継基板201を介して監視制御基板202から出力した各種の運行指令信号を、たとえば、エレベーター101が備える保守点検用の端子(図示を省略する)を介して当該制御基板110に入力する。
【0085】
保守点検用の端子は、制御基板110に設けられている。あるいは、保守点検用の端子は、制御基板110の入力端子に電気的に接続され、制御基板110とは別体であってもよい。保守点検用の端子は、たとえば、作業員がエレベーター101が設置されている現地においておこなう保守点検作業に際して、当該保守点検作業に用いる端末装置(保守診断用端末)を接続するために設けられている。保守点検用の端子は、遠隔監視を目的として設置されたエレベーター101に限らず、また、既設新設あるいは新旧にかかわらず、幅広い種類のエレベーター101が一般的に備えている。
【0086】
保守点検用の端子を介して中継基板201と制御基板110とを接続する場合、遠隔監視支援装置120は、保守点検用の端子に対して切断可能に接続される接続端子(図示を省略する)を備えていてもよい。このような遠隔監視支援装置120においては、たとえば、接続端子を保守点検用の端子に挿入して嵌合させることによって、接続端子と保守点検用の端子とを接続することができる。
【0087】
また、遠隔監視支援装置120は、通信I/F204を介して、管理サーバコンピュータ130から送信された各種の指示信号を受信する。管理サーバコンピュータ130は、たとえば、保守管理会社150においてオペレーターによる管理サーバコンピュータ130への入力操作を受け付けた場合に、遠隔監視支援装置120に対して指示信号を出力する。
【0088】
具体的には、管理サーバコンピュータ130は、管理サーバコンピュータ130において受け付けた入力操作に応じて、たとえば、エレベーター101において実行した診断動作の結果に関する通知情報の送信を指示する指示信号(通知情報の送信指示)を送信する。この場合、管理サーバコンピュータ130は、通知情報の送信指示に加えて、エレベーター101に対して診断動作の実行指示を送信する。
【0089】
診断動作は、制御基板110からエレベーター101が備える各部に対して、当該各部を所定の順序で動作させる信号を出力させ、出力させた信号にしたがって当該各部が正常に動作したか否かを示す信号を制御基板110から出力させることによって実現される。管理サーバコンピュータ130は、定期的、すなわち、診断指示を出力してから所定時間が経過した場合(1ヶ月ごとなどの所定期間ごと)に、つぎの診断指示を出力してもよい。
【0090】
また、具体的には、管理サーバコンピュータ130は、たとえば、管理サーバコンピュータ130において受け付けた入力操作に応じて、あるいは定期的に、制御基板110において記憶した運行動作の履歴に関する通知情報の送信を指示する指示信号(通知情報の送信指示)を送信してもよい。運行動作の履歴に関する通知情報は、たとえば、起動回数、カゴ102の走行距離、カゴ102の走行時間、カゴ102の昇降動作や扉105a、102dの開閉動作に際して動作した各種リレーの動作回数などに関する情報によって実現することができる。
【0091】
遠隔監視支援装置120は、管理サーバコンピュータ130から送信された各種の指示信号を受信した場合に、受信した指示信号に基づいて上記の運行指令信号を生成し、生成した運行指令信号を制御基板110に対して出力する。また、遠隔監視支援装置120は、管理サーバコンピュータ130から送信された各種の指示信号に基づく運行指令信号を制御基板110に対して出力した結果、当該制御基板110から出力された信号(制御用の信号など)を取得した場合に、当該信号に基づいて応答情報を生成し、生成した応答情報を管理サーバコンピュータ130に出力する。
【0092】
あるいは、遠隔監視支援装置120は、管理サーバコンピュータ130からの各種の指示信号の送信の有無にかかわらず、あらかじめ指定された日時が到来するごとに、上記の運行指令信号を生成し、生成した運行指令信号を制御基板110に対して出力してもよい。また、あるいは、遠隔監視支援装置120は、管理サーバコンピュータ130からの各種の指示信号の送信の有無にかかわらず、前回運行指令信号を出力してから、あらかじめ指定された時間が経過するごとに、上記の運行指令信号を生成し、生成した運行指令信号を制御基板110に対して出力してもよい。これらの場合も、遠隔監視支援装置120は、運行指令信号を制御基板110に対して出力した結果、当該制御基板110から出力された信号(制御用の信号など)を取得した場合に、当該信号に基づいて応答情報を生成し、生成した応答情報を管理サーバコンピュータ130に出力する。
【0093】
また、遠隔監視支援装置120は、管理サーバコンピュータ130からの各種の指示信号の送信の有無にかかわらず、制御基板110から出力された発報用の信号を取得するごとに、当該信号に基づいて上記と同様の応答情報を生成し、生成した応答情報を管理サーバコンピュータ130に出力してもよい。このように、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100は、エレベーター101の遠隔診断のみならず、エレベーター101の遠隔監視をおこなうことができる。
【0094】
遠隔監視支援装置120は、エレベーター101のカゴ102に設けられた非常通話ボタン102cが操作された場合に、所定の架電先へ架電する。具体的には、遠隔監視支援装置120は、非常通話ボタン102cが操作されたことを示す信号の入力を受け付けた場合、公衆音声網170(加入者線交換機)に対して発信信号を出力する。そして、遠隔監視支援装置120は、発信信号に応じて加入者線交換機から送信されたダイヤルトーンを受信すると、あらかじめ設定された、保守管理会社150などに設置された電話機140に割り当てられた電話番号に応じたプッシュ信号を、加入者線交換機に出力する。これにより、上記の複数の交換機を介して電話機140が発呼され、当該電話機140とインターフォンの端末装置102bとの間で通話回線が接続される。
【0095】
管理サーバコンピュータ130は、遠隔監視支援装置120に対して送信した各種の指示信号に応じて当該遠隔監視支援装置120から送信された応答情報に基づいて、報告書情報を生成する。管理サーバコンピュータ130は、たとえば、診断指示および通知情報の送信指示を送信した結果、遠隔監視支援装置120から受信した通知情報に基づいて、報告書情報を生成する。この場合、管理サーバコンピュータ130は、たとえば、エレベーター101の走行距離や起動回数に関する情報を含む報告書情報を生成する。
【0096】
また、管理サーバコンピュータ130は、生成した報告書情報に基づいて、報告書(図示を省略する)を発行する機能を備えている。報告書は、たとえば、エレベーター101に診断動作をおこなわせるごと、すなわち、遠隔監視支援装置120に対して送信した診断動作の実行を指示する指示信号(診断指示)に応じた応答情報を受信するごとに発行することができる。具体的には、管理サーバコンピュータ130は、たとえば、生成した報告書情報に基づいて、当該報告書情報を紙などの記録媒体に印刷するための印刷情報を生成し、生成した印刷情報を、管理サーバコンピュータ130に接続された操作用の端末装置131に出力する。操作用の端末装置131は、印刷情報を受け付けた場合、当該操作用の端末装置131に接続されたプリンタを駆動制御することによって報告書を発行させることができる。
【0097】
(遠隔監視システム100の機能的構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100の機能的構成について説明する。図3は、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100を構成する遠隔監視支援装置120の機能的構成を示すブロック図である。
【0098】
(遠隔監視支援装置120の機能的構成)
図3において、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視システム100を構成する遠隔監視支援装置120の各機能は、特定部301と、開閉判断部302と、計時部303と、昇降判断部304と、通話判断部305と、操作判断部306と、架電制御部307と、架電部308と、によって実現される。
【0099】
特定部301は、カゴ102が停止した場合、当該カゴ102の位置(停止位置)を特定する。特定部301は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。カゴ102の停止位置は、たとえば、直前にカゴ102が移動を開始した位置、カゴ102の走行量、停止する直前のカゴ102の走行方向などに基づいて特定することができる。
【0100】
直前にカゴ102が移動を開始した位置は、たとえば、カゴ102が移動して停止するごとにメモリ203に記憶しておき、当該メモリ203に記憶された情報に基づいて特定することができる。カゴ102の走行量は、たとえば、巻上機の駆動量に基づいて特定することができる。巻上機の駆動量は、たとえば、当該巻上機の回転数や、当該巻上機の駆動を開始してから停止するまでの時間、停止する直前のカゴ102の走行方向は、巻上機の、停止する直前の駆動方向に基づいて特定することができる。
【0101】
開閉判断部302は、カゴ102が停止した場合、特定部301が特定したカゴ102の停止位置に基づいて、当該停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置であるか否かを判断する。開閉判断部302は、たとえば、昇降路に設けられたセンサからの出力信号に基づいて、いずれかの階床に対応するセンサがカゴ102を検出しているか否かを判断することによって、カゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置であるか否かを判断することができる。開閉判断部302は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。
【0102】
計時部303は、特定部301によって特定されたカゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置ではない場合に、カゴ102が停止してからの経過時間を計時する。計時部303は、開閉判断部302の判断結果に基づいて、当該開閉判断部302が、特定部301によって特定されたカゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置ではないと判断するごとに、直前にカゴ102が停止してからの経過時間を計時する。計時部303は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。
【0103】
昇降判断部304は、カゴ102が上昇または下降を再開したか否かを判断する。昇降判断部304は、たとえば、巻上機の駆動の有無に基づいて、カゴ102が上昇または下降を再開したか否かを判断する。昇降判断部304は、計時部303による経過時間の計時中、すなわち、カゴ102が扉102dを開閉可能な位置ではない位置に停止している状況において、巻上機の駆動の有無を判断することにより、カゴ102が上昇または下降を再開したか否かを判断するものであってもよい。昇降判断部304は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。
【0104】
通話判断部305は、インターフォンによる通話(以下、「インターフォン通話」)中であるか否かを判断する。通話判断部305は、たとえば、電話機140とインターフォンの端末装置102bとの間で通話回線が接続されているか否かを判断することによって、インターフォン通話中であるか否かを判断することができる。通話判断部305は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。
【0105】
通話判断部305は、インターフォンを介してエレベーター101の利用者と、保守管理会社150のオペレーターとが実際にインターフォン通話中であるか否かを判断するものであってもよい。この場合、通話判断部305は、たとえば、電話機140とインターフォンの端末装置102bとの間で通話回線が接続されている状況において、当該端末装置102bにおける音声の入出力がない状態が所定時間以上継続したか否かを判断することによって、インターフォン通話中であるか否かを判断することができる。
【0106】
あるいは、この場合、通話判断部305は、たとえば、電話機140とインターフォンの端末装置102bとの間で通話回線が接続されている状況において、当該端末装置102bに対する音声の入力がない状態が所定時間以上継続したか否かを判断することによって、インターフォン通話中であるか否かを判断してもよい。これにより、カゴ102が無人の状態で、電話機140とインターフォンの端末装置102bとの間で通話回線が接続され、オペレーターがカゴ102内に話しかける状況であっても、カゴ102の中から利用者の応答がない場合にはインターフォン通話中ではないと判断し、接続されている回線を切断することができる。
【0107】
そして、これにより、不急の回線が電話機140に接続されることにより、緊急性の高いインターフォン通話を希望する利用者との回線が接続されにくい状況が生じることを防止することができる。これによって、利用者に安心してエレベーター101を利用させることができ、エレベーター101に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0108】
操作判断部306は、非常通話ボタン102cの操作の有無を判断する。操作判断部306は、少なくとも、カゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置ではない場合に、インターフォンの端末装置102bが備える非常通話ボタン102cの操作の有無を判断する。これにより、たとえば、階床と階床との間などのように扉102dを開閉できない位置にカゴ102が停止した後における非常通話ボタン102cの操作の有無を判断することができる。操作判断部306は、たとえば、操作盤102a用の制御基板から、非常通話ボタン102cが操作されたことを示す信号が出力されたか否かを判断する。操作判断部306は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。
【0109】
架電制御部307は、計時部303によって計時される経過時間が所定の通報開始時間に達した場合、架電部308を制御して、架電先への架電を開始する。架電部308は、たとえば、音声通信基板122によって実現することができる。架電制御部307は、たとえば、主制御基板121によって実現することができる。通報開始時間は、保守管理会社150に設置された電話機140にインターフォンを接続するための架電を開始するか否かを判断するための時間であり、遠隔監視システム100の管理者などが任意に設定することができる。
【0110】
架電制御部307は、計時部303によって計時される経過時間が所定の通報開始時間に達した場合、計時部303による経過時間の計時中における操作判断部306による判断結果、すなわち、カゴ102が扉102dを開閉可能な位置ではない位置に停止している状況における非常通話ボタン102cの操作の有無にかかわらず、架電先への架電を開始する。
【0111】
架電先は、あらかじめ設定された電話番号によって特定される。あらかじめ設定された電話番号は、たとえば、保守管理会社150に設置された電話機140に割り当てられた電話番号によって実現することができる。これにより、カゴ102が扉102dを開閉可能な位置ではない位置に、所定の通報開始時間以上停止している場合は、カゴ102における利用者の有無にかかわらず、保守管理会社150に設置された電話機140への架電がおこなわれる。
【0112】
架電制御部307は、昇降判断部304の判断結果に基づいて、経過時間が通報開始時間に達する前にカゴ102が上昇または下降を再開したときに、さらに通話判断部305の判断結果に基づいて、通話中ではないと判断した場合、架電を中止してもよい。あるいは、架電制御部307は、昇降判断部304の判断結果に基づいて、経過時間が通報開始時間に達する前にカゴ102が上昇または下降を再開したときに、通話判断部305の判断結果に基づいて、通話中ではないと判断し、かつ、操作判断部306の判断結果に基づいて、カゴ102が停止した後から経過時間が通報開始時間に達するまでの間における非常通話ボタン102cの操作がないと判断した場合、架電を中止してもよい。
【0113】
この実施の形態においては、特定部301、計時部303、開閉判断部302、昇降判断部304、通話判断部305、操作判断部306、架電制御部307、架電部308の機能を遠隔監視支援装置120によって実現するようにしたが、これらの各部の機能は、エレベーター101の制御基板110によって実現してもよい。あるいは、特定部301、計時部303、開閉判断部302、昇降判断部304、通話判断部305、操作判断部306、架電制御部307、架電部308の機能の一部を遠隔監視支援装置120によって実現し、残りの一部を制御基板110によって実現してもよい。
【0114】
(遠隔監視支援装置120の処理手順)
図4は、この発明にかかる実施の形態の遠隔監視支援装置120の処理手順を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、まず、エレベーター101のカゴ102が停止するまで待機する(ステップS401:No)。
【0115】
ステップS401において、エレベーター101のカゴ102が停止した場合(ステップS401:Yes)、カゴ102の停止位置を特定する(ステップS402)。ステップS402においては、たとえば、上記のように、直前にカゴ102が移動を開始した位置、カゴ102の走行量、停止する直前のカゴ102の走行方向などに基づいて特定することができる。
【0116】
つぎに、ステップS402において特定した、カゴ102の停止位置に基づいて、当該停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置であるか否かを判断する(ステップS403)。ステップS403において、カゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置である場合(ステップS403:Yes)、一連の処理を終了する。
【0117】
ステップS403において、カゴ102の停止位置がカゴ102の扉102dを開閉可能な位置ではない場合(ステップS403:No)、経過時間の計時を開始する(ステップS404)。ステップS404により、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した時点からの経過時間を計時することができる。経過時間は、たとえば、メモリ203などを用いて計時することができる。
【0118】
つぎに、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後に、非常通話ボタン102cの操作があったか否かを判断する(ステップS405)。ステップS405においては、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後、操作盤102a用の制御基板から、非常通話ボタン102cが操作されたことを示す信号が出力されたか否かを判断することにより非常通話ボタン102cの操作があったか否かを判断することができる。
【0119】
ステップS405においては、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後、操作盤102a用の制御基板から、非常通話ボタン102cが操作されたことを示す信号が出力された場合に、非常通話ボタン102cが操作されたと判断する。ステップS405において、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後、上記の通報開始時間が経過する前に、非常通話ボタン102cが操作された場合(ステップS405:Yes)、ステップS413へ移行する。
【0120】
ステップS405において、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後、非常通話ボタン102cが操作されていない場合(ステップS405:No)、ステップS404において計時を開始した経過時間が、上記の通報開始時間に達したか否かを判断する(ステップS406)。
【0121】
ステップS406において、経過時間が、上記の通報開始時間に達していない場合(ステップS406:No)、ステップS401:Yesにおいて停止したカゴ102が、上昇または下降を再開したか否かを判断する(ステップS407)。ステップS407においては、たとえば、上記のように、巻上機の駆動の有無に基づいて、カゴ102が上昇または下降を再開したか否かを判断することができる。
【0122】
ステップS407において、ステップS401:Yesにおいて停止したカゴ102が、上昇または下降を再開していない場合(ステップS407:No)、ステップS405へ戻る。一方、ステップS407において、カゴ102が上昇または下降を再開した場合(ステップS407:Yes)、図4のフローチャートに示した一連の処理を終了する。そして、遠隔監視支援装置120は、図4のフローチャートに示した処理を開始し、カゴ102が次回停止するまで待機する。制御基板110は、図4のフローチャートに示した処理の実行の状況にかかわらず、エレベーター101の制御プログラムにしたがって、エレベーター101を駆動制御する。
【0123】
ステップS406において、カゴ102が停止してから、非常通話ボタン102cの操作がなく、カゴ102が上昇または下降を再開することなく、経過時間が通報開始時間に達した場合(ステップS406:Yes)、保守管理会社150に設置された電話機140への架電を開始する(ステップS408)。そして、カゴ102が上昇または下降を再開したか否かを判断する(ステップS409)。
【0124】
ステップS409において、カゴ102が上昇または下降を再開した場合(ステップS409:Yes)、インターフォン通話中であるか否かを判断する(ステップS410)。ステップS408においてインターフォンの端末装置102b側から架電を開始した後、電話機140との回線が接続される前に、ステップS409においてカゴ102が上昇または下降を再開した場合、回線を接続する処理を継続したままとなっている。ステップS410においては、このように回線を接続する処理を継続したままとなっている状況、あるいは、回線が接続されたと判断する前にカゴ102が上昇または下降を再開した状況を想定して、インターフォン通話中であるか否かを判断する。
【0125】
あるいは、ステップS410においては、たとえば、上記のように、電話機140との間で通話回線が接続されているインターフォンの端末装置102bにおける音声の入出力がない状態が所定時間以上継続したか否かによって、インターフォン通話中であるか否かを判断してもよい。あるいは、ステップS410においては、たとえば、上記のように、電話機140との間で通話回線が接続されているインターフォンの端末装置102bに対する音声の入力がない状態が所定時間以上継続したか否かによって、インターフォン通話中であるか否かを判断してもよい。
【0126】
ステップS410において、インターフォン通話中である場合(ステップS410:Yes)、ステップS414へ移行する。ステップS410において、インターフォン通話中ではない場合(ステップS410:No)、架電を中止して(ステップS411)、一連の処理を終了する。ステップS411においては、インターフォンの端末装置102bと電話機140との間で通話回線が接続されていれば、当該回線を切断することにより架電を中止する。また、インターフォンの端末装置102bから電話機140への架電の途中であれば、架電の処理を中止する。さらに、ステップS410においては、たとえば、経過時間の計時を停止し、メモリ203における経過時間の計時にかかる情報を消去する。
【0127】
ステップS409において、カゴ102が上昇または下降を再開していない場合(ステップS409:No)、インターフォンの端末装置102bと電話機140との間で通話回線が接続されたか否かを判断する(ステップS412)。ステップS412において、カゴ102が上昇または下降を再開しておらず、かつ、インターフォンの端末装置102bと電話機140との間で通話回線が接続されていない場合(ステップS412:No)、ステップS409へ戻る。一方、ステップS412において、カゴ102が上昇または下降を再開する前に、インターフォンの端末装置102bと電話機140との間で通話回線が接続された場合(ステップS412:Yes)、ステップS414へ移行する。
【0128】
上記のステップS405において、ステップS401:Yesにおいてカゴ102が停止した後、非常通話ボタン102cが操作された場合(ステップS405:Yes)、架電処理をおこなう(ステップS413)。ステップS413においては、たとえば、主制御基板121によって音声通信基板122を制御して、電話機140に割り当てられた電話番号に応じたプッシュ信号を、加入者線交換機に出力することにより架電処理をおこなう。
【0129】
公衆音声網170においては、加入者線交換機に出力されたプッシュ信号に応じて、電話機140の加入者線交換機を含む交換機を介して、音声通信基板122と電話機140との間において通信回線を接続する。これにより、インターフォンの端末装置102と電話機140との間における通信回線が接続され、インターフォンの端末装置102と電話機140との間での会話が可能になる。
【0130】
ステップS414においては、ステップS413において接続した回線が切断されたか否かを判断する(ステップS414)。ステップS414においては、たとえば、電話機140側あるいはインターフォンの端末装置102b側のいずれかにおいて、回線を切断する操作がおこなわれたか否かを判断することによって判断する。
【0131】
ステップS414においては、たとえば、上記のように、電話機140との間で通話回線が接続されているインターフォンの端末装置102bにおける音声の入出力がない状態が所定時間以上継続したか否かによって、インターフォン通話中であるか否かを判断してもよい。あるいは、ステップS410においては、たとえば、上記のように、電話機140との間で通話回線が接続されているインターフォンの端末装置102bに対する音声の入力がない状態が所定時間以上継続したか否かによって、インターフォン通話中であるか否かを判断してもよい。その後、回線が切断されるまで待機し(ステップS414:No)、切断された場合(ステップS414:Yes)、一連の処理を終了する。ステップS414:Yesにおいて、回線が切断された場合、切断処理などの処理をおこなってから一連の処理を終了してもよい。
【0132】
上述した実施の形態においては、ステップS407やステップS409において、たとえば、ステップS401:Yesにおいて停止する直前のカゴ102の走行方向と同一の方向に限らず、カゴ102が、当該直前の走行方向と逆の方向への走行を開始したか否かを判断してもよい。具体的には、たとえば、所定震度以上の地震などの非常事態においては最寄りの階床に停止するように制御されるエレベーター101においては、たとえば、2階から3階へ向かって走行中に停止したカゴ102の停止位置が、2階よりも3階に近ければ3階(最寄りの階床)へ向かって走行する。
【0133】
このようなエレベーター101においては、たとえば、2階から3階へ向かって走行中に所定震度以上の地震を検知したためにカゴ102を階床間で停止させた場合、当該カゴ102が走行を再開する際には、当該カゴ102の停止位置が、3階よりも2階に近ければ、停止する直前の走行方向とは反対方向の、2階(最寄りの階床)へ向かって走行するように制御する。このため、ステップS407において、停止する直前の走行方向にかかわらず、扉102dの開閉ができない位置で停止した後の走行の有無(走行の再開)を検出することにより、エレベーター101のメーカーや機種に左右されることなく、遠隔監視支援装置120によって、インターフォン通話にかかる制御をおこなうことができる。
【0134】
上述した実施の形態においては、階床間でカゴ102が停止してからの経過時間が通報開始時間に達した場合、非常通話ボタン102cの操作の有無にかかわらず、保守管理会社150の電話機140に架電するようにしたが、これに限るものではない。たとえば、階床間でカゴ102が停止してからの経過時間が通報開始時間に達した場合、架電を開始する前に遠隔監視支援装置120から管理サーバコンピュータ130に対して、エレベーター101におけるカゴ102が階床間で停止したことを発報し、その後に架電(自動架電)するようにしてもよい。
【0135】
この場合の発報は、インターネットなどのネットワーク160を介しておこなう。これにより、運用上、オペレーターは、非常通話ボタン102cが操作されていない状態での架電であることを推測することができ、同時に複数の架電があった場合に応対の順序を考慮することができる。
【0136】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のエレベーターの通話管理システムを実現する、エレベーター101の遠隔監視システム100は、エレベーター101のカゴ102が停止した場合、遠隔監視支援装置120が当該カゴ102の停止位置を特定し、特定された停止位置がカゴ102の扉を開閉可能な位置ではない場合は、カゴ102が停止してからの経過時間が所定の通報開始時間に達すると、非常通話ボタン102cの操作の有無にかかわらず、保守管理会社150に設置された電話機140への架電を開始するようにしたことを特徴としている。
【0137】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100によれば、カゴ102が階床間で通報開始時間以上停止した場合は、非常通話ボタン102cの操作の有無にかかわらず所定の保守管理会社150に設置された電話機140への架電を開始することにより、非常通話ボタン102cを押した利用者が、オペレーターと通話を開始するまでの時間を短縮することができる。これにより、カゴ102が階床間で停止した場合に、利用者とオペレーターとの早期の通話開始を支援することができ、利用者の不安軽減を図ることができる。
【0138】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100によれば、非常通話ボタン102cに対する操作の有無にかかわらず、カゴ102が停止してからの経過時間が通報開始時間に達すると架電を開始するため、カゴ102が階床間で停止するという意図しない事態に遭遇したために気持ちが動転して、利用者が非常通話ボタン102cを操作することを忘れていた場合にも、当該利用者に対するオペレーターからの状況説明などの対応を早期に開始することができ、これによって利用者の不安軽減を図ることができる。
【0139】
このように、この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100によれば、カゴ102が階床間で停止した場合にも利用者の不安軽減を図ることができる。そして、これにより、エレベーター101に対する信頼性の向上を図り、利用者の安全性を確保し、当該利用者に安心してエレベーター101を利用させることができる。
【0140】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100は、経過時間が通報開始時間に達する前にカゴ102が上昇または下降を再開した場合、インターフォン通話中であるか否かを判断し、インターフォン通話中ではない場合は架電を中止するようにしたことを特徴としている。
【0141】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100によれば、カゴ102が階床間で停止したもののすぐにカゴ102が動き出した場合などにおいて、インターフォン通話中でなければ架電を中止することができる。これにより、オペレーターが不要な電話対応をおこなうこと(不必要なオペレーターの占有)をなくし、オペレーターを有効に稼働させ、真に通話を必要とする利用者が、オペレーターと通話しやすくなる。
【0142】
そして、これにより、エレベーター101の利用者の不安軽減を図り、エレベーター101に対する信頼性の向上を図り、利用者の安全性を確保し、当該利用者に安心してエレベーター101を利用させることができる。
【0143】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター101の遠隔監視システム100は、カゴ102が階床間で停止してからの経過時間が通報開始時間に達するまでに上昇または下降を再開した場合、インターフォンによる通話中ではないと判断し、かつ、カゴ102が階床間で停止してから非常通話ボタン102cの操作がなければ架電を中止するようにしたことを特徴としている。
【0144】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター101によれば、カゴ102が階床間で停止したもののすぐにカゴ102が動き出したときに、インターフォン通話中でなくても、それまでに非常通話ボタン102cが操作されている場合は架電を中止することなく、非常通話ボタン102cを押した利用者が、オペレーターと通話をすることができ、かつ、オペレーターと通話を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0145】
これにより、エレベーター101の利用者の不安軽減を図り、エレベーター101に対する信頼性の向上を図り、利用者の安全性を確保し、当該利用者に安心してエレベーター101を利用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上のように、この発明にかかるエレベーターの通話管理システムは、インターフォン通話が可能なエレベーターの通話管理システムに有用であり、特に、遠隔地から動作状態を監視しているエレベーターの通話管理システムに適している。
【符号の説明】
【0147】
100 遠隔監視システム
101 エレベーター
102 カゴ
102b インターフォンの端末装置
102c 非常通話ボタン
120 遠隔監視支援装置
121 主制御基板
122 音声通信基板
130 管理サーバコンピュータ
140 電話機
150 保守管理会社
301 特定部
302 開閉判断部
303 計時部
304 昇降判断部
305 通話判断部
306 操作判断部
307 架電制御部
308 架電部
図1
図2
図3
図4