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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187426
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電力変換装置、分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221212BHJP
   G01R 21/133 20060101ALI20221212BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H02M7/48 R
G01R21/133 C
G01R35/00 F
G01R21/133 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095458
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA15
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770CA06
5H770CA10
5H770DA01
5H770DA10
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770JA20Z
(57)【要約】
【課題】電力変換装置で、低コストで高精度な電力計測を実現する。
【解決手段】制御部15は、電圧検出部14により検出された電圧値と、電流検出部13により検出された電流値をもとに、電力変換装置10から出力される電力量、または系統2から電力変換装置10に入力される電力量を演算する。電源回路16は、制御部15の電源電圧を生成する。基準電圧生成回路17は、電源回路16により生成された電源電圧をもとに基準電圧を生成す。制御部15は、予め設定された基準電圧検出値と、基準電圧生成回路17から供給される基準電圧に基づく基準電圧検出値との関係に基づき、電源電圧の変動による誤差が補正された電力量を演算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力の電圧を制御するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータと、電力系統に接続された分電盤との間の配電線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記配電線に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部により検出された電圧値と、前記電流検出部により検出された電流値をもとに、本電力変換装置から出力される電力量、または前記電力系統から本電力変換装置に入力される電力量を演算する制御部と、
前記制御部の電源電圧を生成する電源回路と、
前記電源回路により生成された電源電圧をもとに基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、を備え、
前記制御部は、予め設定された基準電圧検出値と、前記基準電圧生成回路から供給される基準電圧に基づく基準電圧検出値との関係に基づき、前記電源電圧の変動による誤差が補正された前記電力量を演算することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、演算した電力量を計量用の電力量として、外部に出力することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電圧検出部により検出された電圧、前記電流検出部により検出された電流、前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、それぞれデジタル値に変換するAD変換器を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記予め設定された基準電圧検出値は、出荷前に、前記基準電圧生成回路から供給された基準電圧を前記AD変換器で変換した得られた値に基づき設定されることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記予め設定された基準電圧検出値と、前記基準電圧生成回路から供給される基準電圧が前記AD変換器によりデジタル値に変換された基準電圧検出値と、を比較して補正係数を算出する補正係数算出部と、
前記電圧検出部により検出された電圧値が前記AD変換器によりデジタル値に変換された電圧値に前記補正係数を乗算し、前記電流検出部により検出された電流値が前記AD変換器によりデジタル値に変換された電流値に前記補正係数を乗算し、補正した電圧値と電流値を乗算して電力値を算出し、算出した電力値を積算して電力量を算出する電力量演算部を、
さらに含むことを特徴とする請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記直流電源は、太陽電池、蓄電池、または燃料電池であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
直流電源と、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分散型電源から供給される電力を変換するための電力変換装置、分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーへの注目が集まる中、太陽光発電システムや蓄電システムの普及が拡大している。日本では2020年6月にエネルギー供給強靭化法が成立した。エネルギー供給強靭化法には、分散型リソースの活用促進に向けた環境整備のため、特定計量制度が盛り込まれた。
【0003】
特定計量制度は、一定の条件の下、計量法に基づく検定を受けない計量器の使用を特例として許可する制度である。事前に届出を行った事業者(アグリゲータ等)は特定計量制度の適用を受けることができ、事業者は、需要家(家庭等)への説明義務、適切な精度の計量器で適切な計量を実施する義務を負う。
【0004】
特許文献1の図1には、発電システムと商用系統との間に、売電電力計及び買電電力計が設置される構成が開示されている。特定計量制度の適用を受ける事業者は、これらの電力計の設置を省略して、パワーコンディショナを特例計量器として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-192485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
計量器として一般に使用されるスマートメータは自己温度上昇が小さく、温度が電力計測値に与える影響は小さい。これに対して、パワーコンディショナは自己温度上昇が大きく、温度が電力計測値に与える影響が大きい。特にAD変換器は、温度ドリフトによる電源電圧の変動の影響を大きく受ける。電源電圧のずれにより、ビット誤りが発生する。
【0007】
これに対して、温度ドリフトが小さい温度特性に優れた電源回路を使用することが考えられるが、高コストになったり、電流供給能力が低下したりする。また、パワーコンディショナ内に大規模な冷却システムを搭載することも考えられるが、コスト高とシステムの大型化を招く。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストで高精度な電力計測を実現する電力変換装置、分散型電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、直流電源から供給される直流電力の電圧を制御するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータと、電力系統に接続された分電盤との間の配電線の電圧を検出する電圧検出部と、前記配電線に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電圧検出部により検出された電圧値と、前記電流検出部により検出された電流値をもとに、本電力変換装置から出力される電力量、または前記電力系統から本電力変換装置に入力される電力量を演算する制御部と、前記制御部の電源電圧を生成する電源回路と、前記電源回路により生成された電源電圧をもとに基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、を備える。前記制御部は、予め設定された基準電圧検出値と、前記基準電圧生成回路から供給される基準電圧に基づく基準電圧検出値との関係に基づき、前記電源電圧の変動による誤差が補正された前記電力量を演算する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電力変換装置で、低コストで高精度な電力計測を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る分散型電源システムを説明するための図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置による温度ドリフト補正処理の具体例を示す波形チャートである。
図3】実施の形態1に係る電力変換装置による温度ドリフト補正処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施の形態2に係る分散型電源システムを説明するための図である。
図5】実施の形態3に係る分散型電源システムを説明するための図である。
図6図6(a)-(b)は、実施の形態1に係る分散型電源システムのシステム構成と、従来の分散型電源システムのシステム構成を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態1に係る分散型電源システム1を説明するための図である。図1に示す分散型電源システム1は太陽光発電システムであり、太陽電池20a、電力変換装置10及び外部接続管理装置30を備える。
【0013】
電力変換装置10は、DC/DCコンバータ11、インバータ12、CTセンサ13a、電流検出部13、電圧検出部14、制御部15、電源回路16及び基準電圧生成回路17を備える。
【0014】
太陽電池20aは光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池20aとして、ヘテロ接合太陽電池(HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer)太陽電池)、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池等を使用することができる。
【0015】
太陽電池20aは、電力変換装置10のDC/DCコンバータ11と接続され、発電した電力を電力変換装置10に出力する。DC/DCコンバータ11は、太陽電池20aと直流バスとの間に接続され、太陽電池20aから供給される直流電力の電圧を制御可能なコンバータである。DC/DCコンバータ11は例えば、昇圧チョッパで構成することができる。
【0016】
コンバータ制御回路(不図示)は、太陽電池20aの出力電力が最大になるようDC/DCコンバータ11をMPPT(Maximum Power Point Tracking) 制御する。具体的にはコンバータ制御回路は、太陽電池20aの出力電圧及び出力電流である、DC/DCコンバータ11の入力電圧及び入力電流を計測して太陽電池20aの発電電力を推定する。コンバータ制御回路は、計測した太陽電池20aの出力電圧と推定した発電電力をもとに、太陽電池20aの発電電力を最大電力点(最適動作点)にするための電圧指令値を生成する。コンバータ制御回路は例えば、山登り法に従い動作点電圧を所定のステップ幅で変化させて最大電力点を探索し、最大電力点を維持するように電圧指令値を生成する。DC/DCコンバータ11は、生成された電圧指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0017】
インバータ12は、直流バスと分電盤3との間に接続される。インバータ12は、直流バスを介してDC/DCコンバータ11から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を分電盤3に出力する。分電盤3には、商用電力系統(以下、単に系統2という)が接続される。分電盤3にはさらに負荷4が接続される。負荷4は宅内の負荷の総称である。
【0018】
インバータ制御回路(不図示)は、直流バスの電圧が目標値を維持するようにインバータ12を制御する。具体的にはインバータ制御回路は、直流バスの電圧を検出し、検出したバス電圧を目標値に一致させるための電流指令値を生成する。インバータ制御回路は、直流バスの電圧が目標値より高い場合はインバータ12の出力電力を上げるための電流指令値を生成し、直流バスの電圧が目標値より低い場合はインバータ12の出力電力を下げるための電流指令値を生成する。インバータ12は、生成された電流指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0019】
インバータ12と分電盤3との間の配電線にCTセンサ13aが設置される。電流検出部13は、CTセンサ13aの磁気コアに巻かれたコイルに流れる電流を、シャント抵抗により電圧値として取り出した電流検出値Io(アナログ値)を制御部15に出力する。なお、CT方式の代わりに、ホール素子方式、ロゴスキーコイル方式等を用いて、配電線に流れる電流を計測してもよい。
【0020】
電圧検出部14は、インバータ12と分電盤3との間の配電線の電圧を検出する。図1に示す例では、U相-W相間の電圧を検出する。電圧検出部14は、分圧抵抗と誤差増幅器を含み、配電線の電圧(通常、200V程度)を、分圧抵抗と誤差増幅器で小さな電圧に変換し、得られた電圧検出値Vo(アナログ値)を制御部15に出力する。
【0021】
電源回路16は、制御部15の電源電圧VDDを生成する。図1に示す例では、電源回路16は、太陽電池20aの出力電圧(例えば、250V程度)を降圧して電源電圧VDD(例えば、3.3~5V程度)を生成する。電源回路16は電源ICで構成することができ、例えば、降圧型のスイッチングレギュレータで構成される。電源回路16は2段で構成されてもよく、その場合、1段目で太陽電池20aの出力電圧を24Vまたは12Vに降圧し、2段目で24Vまたは12Vの電圧を電源電圧VDDに降圧する。
【0022】
図1には示していないが、電源回路16は、制御部15以外にも電源電圧VDDを供給している。具体的には、電流検出部13及び電圧検出部14に用いられる一部の増幅器にも電源電圧VDDを供給している。したがって、ある程度の電流供給能力が必要である。また、消費電力削減の観点から、変換効率が高い電源回路16が使用されることが望まれる。したがって、電源回路16には基本的に、リニアレギュレータではなく、スイッチングレギュレータが使用される。なお、スイッチングレギュレータとリニアレギュレータ(例えば、LDO(Low Dropout Regulator)を組み合わせて使用される場合もある。
【0023】
電源回路16は、太陽電池20aの出力電圧からではなく、インバータ12と分電盤3との間の配電線の電圧から電源電圧VDDを生成してもよい。この場合、電源回路16は、DC/DCコンバータ(例えば、降圧型のスイッチングレギュレータ)の前段にAC/DCコンバータを備える必要がある。なお電源回路16は、太陽電池20aの出力電圧または配電線の電圧から選択的に電圧を取得できる構成であってもよい。
【0024】
基準電圧生成回路17は、電源回路16により生成された電源電圧VDDをもとに基準電圧Vrefを生成する。図1に示す例では、基準電圧生成回路17は、電源電圧VDDを降圧して基準電圧Vrefを生成する。基準電圧生成回路17は電源ICで構成することができ、例えば、シャントレギュレータで構成される。
【0025】
シャントレギュレータは、電源電圧VDDの変動や温度変動に対して出力電圧を一定に保つことができる電源ICである。シャントレギュレータは、スイッチングレギュレータとして比較して、電流供給能力が低く、変換効率も低い。ただし、基準電圧生成回路17は基本的に、制御部15のAD変換器151に基準電圧Vrefを供給するだけの電流供給能力があれば足りるため、高い電流供給能力は必要ない。一般に、電源ICにおいて電流供給能力と温度特性はトレードオフの関係にあり、シャントレギュレータは電流供給能力が低い代わりに、温度特性に優れた電源ICである。
【0026】
なお、シャントレギュレータより温度特性が下がるが、基準電圧生成回路17としてツェナーダイオードを使用してもよい。
【0027】
制御部15は、マイクロコントローラで構成される。マイクロコントローラは、電源回路16により生成された電源電圧VDDの供給を受けて動作する。制御部15は、電圧検出部14により検出された電圧検出値Voと、電流検出部13により検出された電流検出値Ioをもとに、電力変換装置10から出力される電力量を演算する。その際、制御部15は、予め設定された基準電圧計測値Drefと、基準電圧生成回路17から供給される基準電圧Vrefに基づく基準電圧検出値Drefとの関係に基づき、電源電圧VDDの変動による誤差が補正された電力量を演算する。以下、具体的に説明する。
【0028】
制御部15は、AD変換器151、補正係数算出部152、記憶部153、電力量演算部154、及び出力部155を含む。
【0029】
AD変換器151は、電圧検出部14により検出された電圧検出値Vo(アナログ値)、電流検出部13により検出された電流検出値Io(アナログ値)、及び基準電圧生成回路17により生成された基準電圧Vrefをそれぞれ、電圧検出値Dvo(デジタル値)、電流検出値Dio(デジタル値)、及び基準電圧値Dref(デジタル値)に変換する。AD変換器151には例えば、逐次比較型のAD変換器を使用することができる。
【0030】
AD変換器151で変換後の値は、例えば、分解能が10ビットの場合は0-1023の範囲の値をとり、分解能が12ビットの場合は0-4095の範囲の値をとる。AD変換器151に、電源電圧VDDを上限とした電圧が入力される場合、変換後の値は下記(式1)のように定義される。
変換後の値=変換前の値×分解能÷電源電圧VDD ・・・(式1)
【0031】
例えば、電源電圧VDDが5Vで、分解能が12ビットのAD変換器151が使用される場合、変換後の値は下記(式2)のように定義される。
変換後の値=変換前の値×4096÷5 ・・・(式2)
【0032】
電力変換装置10内の温度が変化すると、電源回路16により生成される電源電圧VDDが変化する。AD変換器151で変換された各検出値には、電源電圧VDDの変化に反比例した誤差分が含まれる。
【0033】
そこで本実施の形態では、電源電圧VDDの温度ドリフトを補正する仕組みを導入している。電力変換装置10のメーカは、出荷前に、常温状態で基準電圧生成回路17から供給される基準電圧値Vref(アナログ値)をAD変換器151で変換した基準電圧検出値Dref(デジタル値)を取得し、工場出荷値として記憶部153に登録する。
【0034】
なお、基準電圧検出値Drefの工場出荷値は、制御部15内の記憶部153(即ち、マイクロコントローラに内蔵のROM)ではなく、制御部15の外の不揮発メモリ(例えば、EEPROMやフラッシュメモリ)に保存されてもよい。その場合、基準電圧検出値Drefの工場出荷値は、使用時に制御部15内のRAMに取り込まれて使用される。
【0035】
補正係数算出部152は、記憶部153に登録されている基準電圧検出値Drefの工場出荷値と、基準電圧生成回路17から供給される基準電圧VrefをAD変換器151で変換して得られた基準電圧検出値Dref(デジタル値)とを比較し、補正係数を算出する。補正係数は、両者の比率で規定される。
【0036】
電力量演算部154は、電圧検出部14により検出された電圧検出値Vo(アナログ値)をAD変換器151で変換して得られた電圧検出値Dvo(デジタル値)に、上記補正係数を乗算して補正後の電圧検出値Dvo(デジタル値)を算出する。同様に電力量演算部154は、電流検出部13により検出された電流検出値Io(アナログ値)をAD変換器151で変換して得られた電流検出値Dio(デジタル値)に、上記補正係数を乗算して補正後の電流検出値Dio(デジタル値)を算出する。
【0037】
電力量演算部154は、補正後の電圧検出値Dvo(デジタル値)と補正後の電流検出値Dio(デジタル値)を乗算して電力値を算出する。電力量演算部154は、各時刻で算出した電力値を積算して電力量Dpを算出する。出力部155は、電力量演算部154で算出された電力量Dpを、外部接続管理装置30(リモコン設定器とも称される)に送信する。
【0038】
外部接続管理装置30と電力変換装置10との間は有線(例えば、RS-485規格に準拠したケーブル)で接続されてもよいし、無線(例えば、Wi-Fi(登録商標)、小電力無線)で接続されてもよい。外部接続管理装置30はルータ装置5に接続される。外部接続管理装置30とルータ装置5との間は有線(例えば、LANケーブル)または無線(例えば、Wi-Fi)で接続される。外部接続管理装置30は、電力変換装置10を操作するための操作端末としての機能と、外部のネットワーク6に接続するためのゲートウェイとしての機能を担う。
【0039】
ネットワーク6は、インターネット、専用線、VPN(Virtual Private Network)などの通信路の総称であり、その通信媒体やプロトコルは問わない。通信媒体として例えば、光ファイバ網、ADSL網、CATV網、モバイル通信網、無線LAN、有線LANなどを使用することができる。通信プロトコルとして例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)/IP、イーサネット(登録商標)などを使用することができる。
【0040】
外部接続管理装置30は、電力変換装置10の制御部15から受信した電力量Dpを計量用の電力量として、ネットワーク6を経由して外部のサーバ7に送信する。外部のサーバ7は、小売電気事業者、アグリゲータ、送配電事業者などにより管理・運営されるサーバである。これらの事業者は、電力変換装置10により計測された電力量Dpをベースに、電気料金を算出することができる。
【0041】
外部接続管理装置30は、電力変換装置10とサーバ7との間で、計量用の電力量以外の情報の授受も中継することができる。例えば外部接続管理装置30は、送配電事業者により管理・運営されるサーバ7から受信した制御信号(例えば、出力制御指令)を電力変換装置10に送信することができる。また、外部接続管理装置30は、電力変換装置10から受信した太陽電池20aの電圧、電流、電力のログデータを、分散型電源システム1のメーカにより管理・運営されるサーバ7に送信することができる。なお、外部接続管理装置30の機能が、電力変換装置10に内蔵されていてもよい。
【0042】
図2は、実施の形態1に係る電力変換装置10による温度ドリフト補正処理の具体例を示す波形チャートである。図2には、電源回路16により生成される電源電圧が、温度ドリフトの影響により工場出荷時の電源電圧に対して低下していく例が示されている。基準電圧生成回路17には温度特性が高いシャントレギュレータが使用されているため、基準電圧生成回路17は電力変換装置10内の温度が上昇しても、一定の基準電圧を出力し続ける。
【0043】
電源回路16により生成される電源電圧が低下すると、基準電圧生成回路17からAD変換器151に入力される基準電圧値(アナログ値)が一定にも関わらず、AD変換器151から出力される基準電圧検出値(デジタル値)が上昇する。これにより、補正係数算出部152により算出される補正係数は、1より低い値に低下していく。
【0044】
AD変換器151から出力される電圧検出値(デジタル値)は電源電圧の低下に応じて上昇するが、電圧検出値(デジタル値)に補正係数が乗算されることにより、電圧検出値(デジタル値)が温度ドリフトの影響が除去された値に補正される。同様に、AD変換器151から出力される電流検出値(デジタル値)は電源電圧の低下に応じて上昇するが、電流検出値(デジタル値)に補正係数が乗算されることにより、電流検出値(デジタル値)が温度ドリフトの影響が除去された値に補正される。これにより、温度ドリフトの影響が除去された電力演算値(デジタル値)が算出される。
【0045】
図3は、実施の形態1に係る電力変換装置10による温度ドリフト補正処理の流れを示すフローチャートである。電流検出部13、電圧検出部14、及び基準電圧生成回路17からそれぞれAD変換器151に、電圧検出値Vo(アナログ値)、電流検出値Io(アナログ値)、及び基準電圧が入力される(S10)。
【0046】
AD変換器151は、それぞれの変換用の複数のAD変換器が並列に設けられていてもよいし、一つのAD変換器が時分割に共有されてもよい。
【0047】
AD変換器151は、サンプリングトリガが入力されたタイミングで(S11のY)、電圧検出値Vo(アナログ値)、電流検出値Io(アナログ値)、及び基準電圧Vrefをそれぞれ、サンプル・ホールド回路にサンプリングする(S12)。AD変換器151は、サンプル・ホールド回路にサンプリングした電圧検出値Vo(アナログ値)、電流検出値Io(アナログ値)、及び基準電圧をそれぞれ、電圧検出値Dvo(デジタル値)、電流検出値Dio(デジタル値)、及び基準電圧検出値Dref(デジタル値)に変換して出力する(S13)。
【0048】
補正係数算出部152は、記憶部153に登録されている基準電圧検出値Drefの工場出荷値と、AD変換器151から供給される基準電圧検出値Dref(デジタル値)の現在値をもとに、補正係数を算出する(S14)。
【0049】
電力量演算部154は、AD変換器151から供給される電圧検出値Dvo(デジタル値)に上記補正係数を乗算した補正後の電圧検出値Dvo(デジタル値)と、AD変換器151から供給される電流検出値Dio(デジタル値)に上記補正係数を乗算した補正後の電流検出値Dio(デジタル値)を乗算して、電力演算値を算出する(S15)。電力量演算部154は、各サンプリングタイミングで算出した電力演算値を時間積分して電力量Dpを算出する(S16)。
【0050】
図4は、実施の形態2に係る分散型電源システム1を説明するための図である。図4に示す分散型電源システム1は蓄電システムであり、図1に示した太陽電池20aの代わりに、蓄電池20bが設置される。蓄電池20bは電力を充放電可能であり、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池などが使用される。蓄電池20bは定置型の蓄電池であってもよいし、電動車に搭載された蓄電池であってもよい。なお蓄電池の代わりに、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタを使用することもできる。
【0051】
蓄電池20bは、DC/DCコンバータ11と接続され、DC/DCコンバータ11により充放電制御される。実施の形態2ではDC/DCコンバータ11は、蓄電池20bと直流バスとの間に接続され、蓄電池20bを充放電するための双方向DC/DCコンバータである。
【0052】
コンバータ制御回路(不図示)は、制御部15から送信されてくる指令値をもとにDC/DCコンバータ11を充放電制御する。充放電制御として例えば、定電流(CC)制御や定電圧(CV)制御が可能である。
【0053】
実施の形態2ではインバータ12は双方向インバータである。インバータ12は、直流バスから入力される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を分電盤3に出力することができるとともに、系統2から分電盤3を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バスに出力することもできる。実施の形態2では、分電盤3から電力変換装置10の方向へ電流が流れているとき買電になり、電力変換装置10から分電盤3の方向へ電流が流れているとき売電になる。
【0054】
電力変換装置10の温度ドリフト補正機能に関連する構成要素は、実施の形態1と同様である。
【0055】
図5は、実施の形態3に係る分散型電源システム1を説明するための図である。図5に示す分散型電源システム1は、ハイブリッド蓄電システム(創蓄連携システムとも呼ばれる)であり、太陽電池20a、蓄電池20b、電力変換装置10、及び外部接続管理装置30を備える。実施の形態3に係る電力変換装置10は、太陽電池20a用のDC/DCコンバータ11a、蓄電池20b用のDC/DCコンバータ11b、インバータ12、CTセンサ13a、電流検出部13、電圧検出部14、制御部15、電源回路16、及び基準電圧生成回路17を備える。太陽電池20a用のDC/DCコンバータ11aと蓄電池20b用のDC/DCコンバータ11bは、直流バスに対して並列に接続される。
【0056】
電力変換装置10の温度ドリフト補正機能に関連する構成要素は、実施の形態1と同様である。
【0057】
以上説明したように実施の形態1-3によれば、電力変換装置10に温度ドリフト補正機能を追加することにより、電力変換装置10で、低コストで高精度な電力計測を実現することができる。これにより、電力変換装置10と分電盤3との間に独立した電力量計を設置する必要がなくなる。
【0058】
図6(a)-(b)は、実施の形態1に係る分散型電源システム1のシステム構成と、従来の分散型電源システム1のシステム構成を比較した図である。図6(b)に示す従来の分散型電源システム1では、電力変換装置10と分電盤3との間に、電力量計8が設置される。電力量計8がスマートメータで構成される場合、電力量計8は、電力変換装置10で使用されるCTセンサ13a、電流検出部13、電圧検出部14、制御部15、及び電源回路16に相当する構成要素を含む。
【0059】
電力量計8は、電力変換装置10内に設けられるDC/DCコンバータ11及びインバータ12を含まない。したがって、電力量計8では、DC/DCコンバータ11及びインバータ12に含まれるスイッチング素子(MOSFET、IGBT等)のスイッチングによる発熱が生じない。これに対して、電力変換装置10では、DC/DCコンバータ11及びインバータ12に含まれるスイッチング素子のスイッチング時に発生する熱が筐体内に籠もる。したがって、電力量計8と電力変換装置10とで、同程度の電源回路を使用した場合、電力変換装置10内の電源回路16により生成される電源電圧の方が、精度が低くなる。
【0060】
実施の形態1-3に係る電力変換装置10には、電源回路16により生成される電源電圧の精度低下を補うための温度ドリフト補正機能が追加される。したがって、電力変換装置10は、CTセンサ13a、電流検出部13、電圧検出部14、制御部15、及び電源回路16に既存のハードウエア性能と同じ性能の部品や部材を使用しても、電力量計8と同等の精度で電力を計測することができる。したがって、電力量計8を省略して、電力計測機能を、電力変換装置10の電力計測機能に一本化することができる。これにより、コストを削減することができ、システム構成を簡素化することができる。
【0061】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
上記実施の形態1-3では、電力変換装置10に直流電源として、太陽電池20a及び蓄電池20bの少なくとも一方が接続された構成の分散型電源システム1を説明した。この点、直流電源として燃料電池を使用することもできる。燃料電池が単独で使用される分散型電源システム1にも、本開示に係る温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10を使用することができる。また、燃料電池と、太陽電池20a及び蓄電池20bの少なくとも一方が使用される分散型電源システム1にも、本開示に係る温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10を使用することができる。
【0063】
上記実施の形態1-3では、補正係数算出部152は補正係数を常時算出した。この点、補正係数算出部152は、AD変換器151から供給される基準電圧検出値Dref(デジタル値)が設定値以上変化したときのみ補正係数を更新し、基準電圧検出値Dref(デジタル値)が設定値未満しか変化していないときは使用中の補正係数を継続して使用してもよい。
【0064】
上記実施の形態1-3では、温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10で計測された電力量を、計量用の電力量として外部に送信する例を説明した。この点、温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10で計測された電力量を、電力変換装置10内の電力制御に使用してもよい。この場合、電力変換装置10による電力制御の精度が向上する。また、温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10で計測された電力量を、モニタ表示に使用してもよい。この場合、モニタに表示される電力量の正確性が向上する。このように、既存の電力量計8と、温度ドリフト補正機能付きの電力変換装置10が併存するシステム構成も、本開示の範囲に含まれる。
【0065】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0066】
[項目1]
直流電源(20)から供給される直流電力の電圧を制御するDC/DCコンバータ(11)と、
前記DC/DCコンバータ(11)から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ(12)と、
前記インバータ(12)と、電力系統(2)に接続された分電盤(3)との間の配電線の電圧を検出する電圧検出部(14)と、
前記配電線に流れる電流を検出する電流検出部(13)と、
前記電圧検出部(14)により検出された電圧値と、前記電流検出部(13)により検出された電流値をもとに、本電力変換装置(10)から出力される電力量、または前記電力系統(2)から本電力変換装置(10)に入力される電力量を演算する制御部(15)と、
前記制御部(15)の電源電圧を生成する電源回路(16)と、
前記電源回路(16)により生成された電源電圧をもとに基準電圧を生成する基準電圧生成回路(17)と、を備え、
前記制御部(15)は、予め設定された基準電圧検出値と、前記基準電圧生成回路(17)から供給される基準電圧に基づく基準電圧検出値との関係に基づき、前記電源電圧の変動による誤差が補正された前記電力量を演算することを特徴とする電力変換装置(10)。
これによれば、電力変換装置(10)で、低コストで高精度な電力計測を実現することができる。
[項目2]
前記制御部(15)は、演算した電力量を計量用の電力量として、外部に出力することを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、電力量計の設置を省略することができる。
[項目3]
前記制御部(15)は、
前記電圧検出部(14)により検出された電圧、前記電流検出部(13)により検出された電流、前記基準電圧生成回路(17)により生成された基準電圧を、それぞれデジタル値に変換するAD変換器(151)を含むことを特徴とする項目1または2に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、電力量を、デジタル演算により高精度に算出することができる。
[項目4]
前記予め設定された基準電圧検出値は、出荷前に、前記基準電圧生成回路(17)から供給された基準電圧を前記AD変換器(151)で変換した得られた値に基づき設定されることを特徴とする項目3に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、各電力変換装置(10)の個体差も反映した基準電圧検出値の参照値を準備することで、温度ドリフトの影響を高精度に推定することができる。
[項目5]
前記制御部(15)は、
前記予め設定された基準電圧検出値と、前記基準電圧生成回路(17)から供給される基準電圧が前記AD変換器(151)によりデジタル値に変換された基準電圧検出値と、を比較して補正係数を算出する補正係数算出部(152)と、
前記電圧検出部(14)により検出された電圧値が前記AD変換器(151)によりデジタル値に変換された電圧値に前記補正係数を乗算し、前記電流検出部(13)により検出された電流値が前記AD変換器(151)によりデジタル値に変換された電流値に前記補正係数を乗算し、補正した電圧値と電流値を乗算して電力値を算出し、算出した電力値を積算して電力量を算出する電力量演算部(154)を、
さらに含むことを特徴とする項目3または4に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、電力変換装置(10)の制御部(15)で、温度ドリフトの影響が除去された高精度な電力量を算出することができる。
[項目6]
前記直流電源(20)は、太陽電池(20a)、蓄電池(20b)、または燃料電池であることを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、分散型電源から供給される電力量を、分散型電源に接続された電力変換装置(10)で計測することができる。
[項目7]
直流電源(20)と、
項目1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置(10)と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム(1)。
これによれば、電力変換装置(10)で、低コストで高精度な電力計測を実現することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 分散型電源システム、 2 系統、 3 分電盤、 4 負荷、 5 ルータ装置、 6 ネットワーク、 7 サーバ、 8 電力量計、 10 電力変換装置、 11 DC/DCコンバータ、 12 インバータ、 13 電流検出部、 13a CTセンサ、 14 電圧検出部、 15 制御部、 151 AD変換器、 152 補正係数算出部、 153 記憶部、 154 電力量演算部、 155 出力部、 16 電源回路、 17 基準電圧生成回路、 20a 太陽電池、 20b 蓄電池、 30 外部接続管理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
太陽電池セルC1は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。