(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188350
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】翼付き鋼管杭設置装置及び翼付き鋼管杭の設置法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/56 20060101AFI20221214BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20221214BHJP
E02D 5/72 20060101ALI20221214BHJP
E02D 7/22 20060101ALI20221214BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20221214BHJP
E02D 7/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E02D5/56
E02D5/28
E02D5/72
E02D7/22
E02D7/20
E02D7/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096312
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】500435470
【氏名又は名称】有限会社丸高重量
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 節夫
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA11
2D041BA33
2D041BA35
2D041CA05
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D050AA06
2D050AA07
2D050CB05
2D050CB23
(57)【要約】
【課題】ケーシングの回転を妨害することなく簡易な構造でケーシングをフィンから離脱させる。
【解決手段】本開示に係る翼付き鋼管杭設置装置は、上下方向に延びるケーシング20と、ケーシング20に傾動可能に支持されるフック部材30と、フック部材30を介してケーシング20に着脱可能に支持されるフィン10とを備え、フック部材30は、通常位置と、フック部材30の先端側が通常位置よりも上方及び第1回転方向の少なくとも一方側に位置する回避位置との間を傾動可能であり、通常位置のフック部材30は、ケーシング20を第1回転方向に回転させると係止状態となり、ケーシング20を第2回転方向に回転させると解除状態となり、解除状態のフック部材30が、ケーシングを第2回転方向に回転させた際にフィン10に当接すると、フック部材が、フィンからの力によって通常位置から回避位置へ傾動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びて、鋼管杭を挿入可能な杭挿入空間を区画する中空管状のケーシングと、
前記ケーシングの前記所定方向の一側の一端部の外周面に設けられて、前記ケーシングに所定のフック回転軸を中心として傾動可能に支持されるフック部材と、
前記ケーシングの前記一側の一側開口を覆う中央部と、前記中央部から前記所定方向の他側へ突出して前記鋼管杭に接続可能な杭接続部と、前記中央部から外側へ延びる翼状部とを有し、前記フック部材を介して前記ケーシングに着脱可能に支持されるフィンと、を備え、
前記フック部材は、前記フック回転軸側から前記ケーシングの径方向外側へ向かって延びる通常位置と、前記フック部材の先端側が前記通常位置よりも前記所定方向の前記他側及び前記ケーシングの第1回転方向の少なくとも一方側に位置する回避位置との間を、前記フック回転軸を中心として傾動可能であり、
前記通常位置の前記フック部材は、前記フィンの前記中央部によって前記ケーシングの前記一側開口を覆う状態で前記ケーシングを前記第1回転方向に回転させると、前記フィンの前記翼状部を係止した係止状態となり、前記ケーシングを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させると、前記フィンの係止を解除した解除状態となり、
前記フィンは、前記係止状態では、前記ケーシングの前記第1回転方向の回転に伴って前記第1回転方向に回転し、前記解除状態では、前記ケーシングを前記第2回転方向に回転させても回転せず、
前記解除状態の前記フック部材は、前記ケーシングを前記第2回転方向に回転させた際に前記フィンの前記翼状部に当接すると、前記フィンからの力によって前記フック回転軸を中心として前記通常位置から前記回避位置へ傾動する、翼付き鋼管杭設置装置。
【請求項2】
前記係止状態の前記フィンの前記翼状部は、前記第1回転方向側の端部が前記第2回転方向側の端部よりも前記所定方向の前記一側に配置されるように、前記ケーシングの回転軸に直交する面に対して傾斜し、
前記フック部材の前記フック回転軸は、前記ケーシングの径方向から視た状態で、前記所定方向の前記他側から前記所定方向の前記一側の前記第1回転方向へ向かって延びて、前記ケーシングの前記回転軸に対して傾斜する、請求項1に記載の翼付き鋼管杭設置装置。
【請求項3】
前記フック部材は、前記通常位置で前記ケーシング側から径方向外側へ延びるアーム部と、前記アーム部の先端から前記所定方向の前記一側へ曲折する爪部とを有し、
前記フック部材の前記爪部のうち前記通常位置における前記所定方向の前記一側かつ前記第2回転方向の端部は、前記爪部の前記所定方向の前記一側の端縁及び前記第2回転方向の端縁に対して傾斜している、請求項1又は請求項2に記載の翼付き鋼管杭設置装置。
【請求項4】
前記フィンの前記杭接続部は、前記鋼管杭の前記所定方向の前記一側の端部の挿入を許容する筒状に形成され、
前記ケーシングの内周面は、前記一側開口から前記所定方向の前記他側へ延びる大径領域と、前記大径領域よりも小径に形成されて前記大径領域から前記所定方向の前記他側へ延びる小径領域とを有し、
前記ケーシングの前記内周面の前記大径領域は、前記フィンの前記杭接続部の挿入を許容する空間を区画し、
前記ケーシングの前記内周面の前記小径領域の径は、前記杭接続部の内径以下の大きさに形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の翼付き鋼管杭設置装置。
【請求項5】
前記ケーシングの前記所定方向の前記他側から前記杭挿入空間に挿入され、前記杭挿入空間に挿入された状態の前記鋼管杭の前記所定方向の前記他側の端部に取り外し可能に支持される回転確認部材を備え、
前記回転確認部材の前記所定方向の前記他側の端部は、前記回転確認部材が前記鋼管杭に支持された状態で前記ケーシングの前記杭挿入空間から前記所定方向の前記他側へ露出し、
前記鋼管杭に支持された状態の前記回転確認部材は、前記鋼管杭が回転すると回転し、前記鋼管杭が回転しないときは回転しない、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の翼付き鋼管杭設置装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の翼付き鋼管杭設置装置を用いた翼付き鋼管杭の設置法であって、
前記係止状態の前記ケーシング及び前記フィンを前記第1回転方向に回転させて地中に回転圧入する回転圧入工程と、
前記フィンが所望の位置に到達した後、回転を止めて、前記鋼管杭を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入し、前記鋼管杭を前記フィンの前記杭接続部に接続する接続工程と、
前記フィン及び前記鋼管杭を残置したまま、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く引抜き工程と、を含む翼付き鋼管杭の設置法。
【請求項7】
請求項5に記載の翼付き鋼管杭設置装置を用いた翼付き鋼管杭の設置法であって、
前記係止状態の前記ケーシング及び前記フィンを前記第1回転方向に回転させて地中に回転圧入する回転圧入工程と、
前記フィンが所望の位置に到達した後、回転を止めて、前記鋼管杭を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入し、前記鋼管杭を前記フィンの前記杭接続部に接続する接続工程と、
前記回転確認部材を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入して前記鋼管杭に取り付けた後、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させることによって、前記ケーシングを回転させても前記フィンが回転しないことを確認する確認工程と、
前記フィン及び前記鋼管杭を残置したまま、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く引抜き工程と、を含む翼付き鋼管杭の設置法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、翼付き鋼管杭設置装置及び翼付き鋼管杭の設置法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物を建造する際に回転圧入工法によって杭基礎を地盤中に設置する場合がある。鋼管杭を杭とする回転圧入工法においては、施工中は回転による圧入を容易にし、施工後は地盤の支持力を高めるため、鋼管杭の地盤側端部にフィン(翼)を装着することが有効な手段として知られている。そして、フィンと径の細い鋼管杭を別個に地盤中に貫入して、翼付き鋼管杭とすることが知られている。
【0003】
特許文献1には、地盤の支持力を改良する翼付き鋼管杭を設置する方法が記載されている。この方法で用いられるケーシングは、中空の管であるケーシング本体と、ケーシング本体の地盤側端部の外周に固定して取り付けられた第1のフィンと、ケーシング本体の地盤側端部の底面にその開口を覆うように着脱可能に係合された第2のフィンと、第2のフィンをケーシング本体に着脱可能に係合するための少なくとも1つのフック機構とから構成されている。同公報には、フック機構の2つの例が開示されている。
【0004】
第一例のフック機構は、第1のフィンの表面下部に取り付けられた基体部と、基体部の先端に設けられ第2のフィンを係合する爪部とから構成されている。ケーシングが回転圧入工法によって地盤中に回転圧入する際には、その正回転によってフック機構の爪部は自動的に第2のフィンに係合し、ケーシングが地上に引き抜かれるため逆回転する際には、フック機構の爪部は自動的に第2のフィンから離脱する。
【0005】
第二例のフック機構は、ケーシング本体の内部の支点に垂直方向に回動可能に軸支された第1の腕部と、第1の腕部の外側の端部に関節結合されケーシング本体の外側に延伸する第2の腕部と、第2の腕部の先端に設けられ第2のフィンを係合する爪部とから構成されている。ケーシングを回転圧入工法によって地盤中に回転圧入する際、及び、何らかの理由により中途でケーシングを逆回転させて引き抜く際には、このフック機構によって係合された第のフィンはケーシング本体とともに同一方向に回転することとなる。フック機構の第1の腕部の内側の端部は、小さい径の鋼管杭が第2のフィンの中央部に突設された突出部にガイドされた際に、鋼管杭の円周部が接触するように位置決めされている。ケーシングが地盤中の所定の位置に達し、鋼管杭がケーシング本体の中空部分に挿入されると、鋼管杭の円周部がフック機構の第1の腕部の内側の端部を押し込むことにより、第2の腕部が持ち上がり、爪部が第2のフィンから離脱することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の第一例のケーシングのフック機構では、基体部が第1のフィンの表面下部に取り付けられて第2のフィン(フィン)側へ延びているので、ケーシング本体(ケーシング)を逆回転(圧入方向とは反対方向に回転)させると、基体部が第2のフィンの反対側の羽根に干渉して、フック機構がケーシングの回転を妨害してしまうおそれがある。また、特許文献1に記載の第二例のケーシングのフック機構では、ケーシング本体(ケーシング)を第2のフィン(フィン)から離脱させるために、小さい径の鋼管杭の円周部がフック機構の第1の腕部の内側の端部に接触するように、第1の腕部の内側の端部を位置決めしている。このため、複雑な構造となってしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本開示は、ケーシングの回転を妨害することなく簡易な構造でケーシングをフィンから離脱させることが可能な翼付き鋼管杭設置装置及び翼付き鋼管杭の設置法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の翼付き鋼管杭設置装置は、所定方向に延びて、鋼管杭を挿入可能な杭挿入空間を区画する中空管状のケーシングと、前記ケーシングの前記所定方向の一側の一端部の外周面に設けられて、前記ケーシングに所定のフック回転軸を中心として傾動可能に支持されるフック部材と、前記ケーシングの前記一側の一側開口を覆う中央部と、前記中央部から前記所定方向の他側へ突出して前記鋼管杭に接続可能な杭接続部と、前記中央部から外側へ延びる翼状部とを有し、前記フック部材を介して前記ケーシングに着脱可能に支持されるフィンと、を備え、前記フック部材は、前記フック回転軸側から前記ケーシングの径方向外側へ向かって延びる通常位置と、前記フック部材の先端側が前記通常位置よりも前記所定方向の前記他側及び前記ケーシングの第1回転方向の少なくとも一方側に位置する回避位置との間を、前記フック回転軸を中心として傾動可能であり、前記通常位置の前記フック部材は、前記フィンの前記中央部によって前記ケーシングの前記一側開口を覆う状態で前記ケーシングを前記第1回転方向に回転させると、前記フィンの前記翼状部を係止した係止状態となり、前記ケーシングを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させると、前記フィンの係止を解除した解除状態となり、前記フィンは、前記係止状態では、前記ケーシングの前記第1回転方向の回転に伴って前記第1回転方向に回転し、前記解除状態では、前記ケーシングを前記第2回転方向に回転させても回転せず、前記解除状態の前記フック部材は、前記ケーシングを前記第2回転方向に回転させた際に前記フィンの前記翼状部に当接すると、前記フィンからの力によって前記フック回転軸を中心として前記通常位置から前記回避位置へ傾動する。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の翼付き鋼管杭設置装置であって、前記係止状態の前記フィンの前記翼状部は、前記第1回転方向側の端部が前記第2回転方向側の端部よりも前記所定方向の前記一側に配置されるように、前記ケーシングの回転軸に直交する面に対して傾斜し、前記フック部材の前記フック回転軸は、前記ケーシングの径方向から視た状態で、前記所定方向の前記他側から前記所定方向の前記一側の前記第1回転方向へ向かって延びて、前記ケーシングの前記回転軸に対して傾斜する。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の翼付き鋼管杭設置装置であって、前記フック部材は、前記通常位置で前記ケーシング側から径方向外側へ延びるアーム部と、前記アーム部の先端から前記所定方向の前記一側へ曲折する爪部とを有し、前記フック部材の前記爪部のうち前記通常位置における前記所定方向の前記一側かつ前記第2回転方向の端部は、前記爪部の前記所定方向の前記一側の端縁及び前記第2回転方向の端縁に対して傾斜している。
【0012】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかの翼付き鋼管杭設置装置であって、前記フィンの前記杭接続部は、前記鋼管杭の前記所定方向の前記一側の端部の挿入を許容する筒状に形成され、前記ケーシングの内周面は、前記一側開口から前記所定方向の前記他側へ延びる大径領域と、前記大径領域よりも小径に形成されて前記大径領域から前記所定方向の前記他側へ延びる小径領域とを有し、前記ケーシングの前記内周面の前記大径領域は、前記フィンの前記杭接続部の挿入を許容する空間を区画し、前記ケーシングの前記内周面の前記小径領域の径は、前記杭接続部の内径以下の大きさに形成される。
【0013】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかの翼付き鋼管杭設置装置であって、前記ケーシングの前記所定方向の前記他側から前記杭挿入空間に挿入され、前記杭挿入空間に挿入された状態の前記鋼管杭の前記所定方向の前記他側の端部に取り外し可能に支持される回転確認部材を備え、前記回転確認部材の前記所定方向の前記他側の端部は、前記回転確認部材が前記鋼管杭に支持された状態で前記ケーシングの前記杭挿入空間から前記所定方向の前記他側へ露出し、前記鋼管杭に支持された状態の前記回転確認部材は、前記鋼管杭が回転すると回転し、前記鋼管杭が回転しないときは回転しない。
【0014】
本発明の第6の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかの翼付き鋼管杭設置装置を用いた翼付き鋼管杭の設置法であって、前記係止状態の前記ケーシング及び前記フィンを前記第1回転方向に回転させて地中に回転圧入する回転圧入工程と、前記フィンが所望の位置に到達した後、回転を止めて、前記鋼管杭を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入し、前記鋼管杭を前記フィンの前記杭接続部に接続する接続工程と、前記フィン及び前記鋼管杭を残置したまま、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く引抜き工程と、を含む。
【0015】
本発明の第7の態様は、上記第5の態様の翼付き鋼管杭設置装置を用いた翼付き鋼管杭の設置法であって、前記係止状態の前記ケーシング及び前記フィンを前記第1回転方向に回転させて地中に回転圧入する回転圧入工程と、前記フィンが所望の位置に到達した後、回転を止めて、前記鋼管杭を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入し、前記鋼管杭を前記フィンの前記杭接続部に接続する接続工程と、前記回転確認部材を前記ケーシングの前記他側から前記杭挿入空間に挿入して前記鋼管杭に取り付けた後、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させることによって、前記ケーシングを回転させても前記フィンが回転しないことを確認する確認工程と、前記フィン及び前記鋼管杭を残置したまま、前記ケーシングを前記第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く引抜き工程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ケーシングの回転を妨害することなく簡易な構造でケーシングをフィンから離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る翼付き鋼管杭設置装置の外観図である。
【
図2】フィンの製作工程を示す図であって、(a)は切込みを入れた状態を、(b)は折り曲げる前の状態を、(c)は折り曲げた後の状態をそれぞれ示す。
【
図4】
図3をIV方向から視た状態の外観図である。
【
図5】係止状態のフック部材及びフィンの下方からの斜視図である。
【
図6】フック部材の説明図であって、(a)はフィンの翼状部から離れた状態を、(b)は翼状部の上面に当接した状態を、(c)は傾動した状態をそれぞれ示す。
【
図7】ケーシング、フィン、及び鋼管杭の接続部分を示す上方からの斜視図である。
【
図8】確認棒を挿入した状態のケーシングの外観図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る翼付き鋼管杭の設置法の説明図であって、(a)はフィンを所望の位置まで回転圧入した状態を、(b)はケーシングを引き抜いている状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、UPは上方を示す。また、各図において、CL1はケーシング20の回転軸(軸心)を、CL2はフック部材30のフック回転軸(軸心)をそれぞれ示す。また、所定方向を上下方向とし、上記所定方向の一側を下側とし、上記所定方向の他側を上側として説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る翼付き鋼管杭設置装置1の外観図である。
図2は、フィン10の製作工程を示す図であって、(a)は切込みを入れた状態を、(b)は折り曲げる前の状態を、(c)は折り曲げた後の状態をそれぞれ示す。
図3は、ケーシング20及びフック部材30の外観図である。
図4は、
図3をIV方向から視た状態の外観図である。
図5は、係止状態のフック部材30及びフィン10の下方からの斜視図である。
図6は、フック部材30の説明図であって、(a)はフィン10の翼状部12から離れた状態を、(b)は翼状部12の上面14に当接した状態を、(c)は傾動した状態をそれぞれ示す。
図7は、ケーシング20、フィン10、及び鋼管杭50の接続部分を示す上方からの斜視図である。
図8は、確認棒40を挿入した状態のケーシング20の外観図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る翼付き鋼管杭の設置法の説明図であって、(a)はフィン10を所望の位置まで回転圧入した状態を、(b)はケーシング20を引き抜いている状態をそれぞれ示す。なお、
図7では、フック部材30の図示を省略している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る翼付き鋼管杭設置装置1は、建物を建造する際に杭基礎となる翼付き鋼管杭を地中に設置するための装置である。翼付き鋼管杭を地中に設置する際には、先ず、フィン10(翼)を地中に設置し、その後、地中に設置されたフィン10に対して鋼管杭50を接続する(
図9(b)参照)。すなわち、翼付き鋼管杭は、フィン10と、フィン10に対して接続された鋼管杭50とによって構成される。
【0021】
鋼管杭50は、施工後の所定の支持力を得られる範囲内で可能な限り小さい径の鋼管杭50であって、下端部に接続部50aを有する(
図7及び
図9(b)参照)。接続部50aには、接続部50aの外周面から突出する突起部51が設けられる。突起部51は、鋼管杭50の径方向内側から径方向外側へ向かって付勢された状態で鋼管杭50に支持される。突起部51は、径方向外側から押圧されることによって付勢力に抗して径方向内側へ引っ込み、径方向外側からの力の入力がなくなると、径方向内側から付勢されて径方向外側へ突出する。なお、鋼管杭50としては、ケーシング20の中に挿入できる外径R2を有し、施工後の強度を保てるものであれば特に限定はないが、例えば、単管パイプを好適な一例として使用することができる。
【0022】
本実施形態に係る翼付き鋼管杭設置装置1は、地中に埋設するためのフィン10と、上下方向に延びる中空管状のケーシング20と、フィン10を係止するフック部材30と、フィン10の回転を確認可能な確認棒(回転確認部材)40とを備える。なお、以下の説明において、第1回転方向は、掘削する際にケーシング20を回転させる方向(本実施形態では、上方から視た状態における時計回りの方向)であり、第2回転方向は、第1回転方向とは反対の方向(本実施形態では、上方から視た状態における時計回りとは反対の方向)である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、フィン10は、ケーシング20の下端部(一端部)20aの底面に当接してケーシング20の下端開口(一側開口)20b(
図7参照)を覆う略正方形をなす中央部11と、中央部11の4つの辺の各々から外側に延びる4個の翼状部12と、中央部11の略中央に一体的に設けられる筒状の杭接続部13とを有する。フィン10の中央部11及び4個の翼状部12は、後述するように1枚の板状部材16によって形成される(
図2(a)参照)。
【0024】
フィン10の中央部11は、所定方向(本実施形態では、上下方向)と交叉する板状に形成される。中央部11は、後述するように、フィン10をケーシング20に対して取り付けた係止状態では、ケーシング20の回転軸CL1と交叉する(
図1参照)。
【0025】
フィン10の筒状の杭接続部13は、中央部11の上面の略中央に配置されて上方へ突出する。杭接続部13は、上方へ開放される空間15を区画する。杭接続部13の空間15は、鋼管杭50の接続部50aの挿入を許容する大きさに形成される。杭接続部13には、内側の空間15と外部とを径方向に連通する開口13aが設けられる。杭接続部13の開口13aは、鋼管杭50の突起部51(
図7参照)を係止可能な大きさに形成される。鋼管杭50の接続部50aを杭接続部13の空間15に挿入する際には、鋼管杭50の突起部51は、杭接続部13に接触することにより、径方向内側へ押圧されて引っ込み、杭接続部13の開口13aの位置に到達すると、径方向内側から付勢されて径方向外側へ突出し、杭接続部13の開口13aに係止される。これにより、鋼管杭50とフィン10とが接続される。鋼管杭50とフィン10とが接続された状態では、鋼管杭50とフィン10との相対的な回転は、鋼管杭50の突起部51と杭接続部13の開口13aとの係止によって規制される。
【0026】
フィン10の4個の翼状部12は、中央部11に対して交互に上方及び下方に曲折されて形成される。具体的には、第1の翼状部12aは中央部11に対して上方に、第1の翼状部12aに隣接する第2の翼状部12bは中央部11に対して下方に、第2の翼状部12bの対角線上に位置する第3の翼状部12cは中央部11に対して下方に、第3の翼状部12cに隣接する第4の翼状部12dは中央部11に対して上方に、それぞれ曲折されている(
図2(b)及び
図2(c)参照)。換言すると、対角線上に位置する翼状部12が同じ方向に、すなわち、第1及び第4の翼状部12a、12dはともに中央部11に対して上方に、第2及び第3の翼状部12b、12cはともに中央部11に対して下方に、それぞれ曲折されている。各翼状部12は、第1回転方向(
図2(c)に白抜き矢印で示す方向)側の端部が第2回転方向(
図2(c)の白抜き矢印とは反対方向)側の端部よりも下方に位置するように、中央部11に対して傾斜している。すなわち、各翼状部12は、後述するように、フィン10をケーシング20に対して取り付けた係止状態では、第1回転方向側の端部が第2回転方向側の端部よりも下方に位置するように、ケーシング20の回転軸CL1に直行する面に対して傾斜する。なお、フィン10の形状はここで述べた形状に限定されるものではなく、例えば、中央部11は正方形でなくても、ケーシング20の下端開口20bを覆うことができれば、任意の形状で差し支えない。翼状部12についても、長方形を斜めに曲折した形状でなくても、扇形状や環形状であってもよく、翼状部の枚数も適宜とすることができる。また、フィン10を形成する材質は、金属製(例えば、鋼製)や塩化ビニル製などであってもよく、ケーシング20の材質を勘案して適切なものを選択すればよい。
【0027】
図3~
図7に示すように、ケーシング20は、中空管状(本実施形態では、円筒形状)の部材であって、内部に鋼管杭50を挿入可能な杭挿入空間21を区画する。ケーシング20の外周面61には、複数の切削羽根22が螺旋状にそれぞれ設けられる。
図7に示すように、ケーシング20の内周面23は、下端開口20bから連続して上方へ延びる大径領域23aと、大径領域23aから上方へ延びる小径領域23bとを有する。ケーシング20の内周面23の大径領域23aの内径r1は、フィン10の杭接続部13の外径R1よりも僅かに大きい。すなわち、ケーシング20の内周面23の大径領域23aは、フィン10の杭接続部13の挿入を許容する空間24を区画する。ケーシング20の内周面23の大径領域23aの上下方向の長さL1は、杭接続部13の上下方向の長さL2以上に(本実施形態では、杭接続部13の上下方向の長さL2よりも僅かに長く)設定される。ケーシング20の内周面23の小径領域23bは、大径領域23aよりも小径に形成される。ケーシング20の内周面23の小径領域23bの内径(径)r2は、フィン10の杭接続部13の内径r3以下の大きさ(本実施形態では、杭接続部13の内径r3と同じ大きさ)に形成される。ケーシング20の内周面23の小径領域23bの内径r2及び杭接続部13の内径r3は、鋼管杭50の外径R2よりも大きい。なお、本実施形態では、ケーシング20の外周面61に複数の切削羽根22を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば上下に連続する螺旋状の切削羽根22を設けてもよい。あるいは、ケーシング20の外周面61に切削羽根22を設けなくてもよい。また、本実施形態では、ケーシング20は、円筒形状をなしているが、中空の筒状をなしている限り、ケーシング20の横断面の外形は円形には限定されない。例えば、ケーシング20の横断面の外形は、正方形などであってもよい。また、ケーシング20を形成する材質は、金属製(例えば、鋼製)や塩化ビニル製であってもよい。塩化ビニル製のケーシング20の強度は、例えば鋼管からなるケーシング20の強度よりも若干低いが、工事現場の地盤の状況などに適応したものを選択すればよい。
【0028】
図3~
図5に示すように、ケーシング20の下端部20aには、フック支持部25が固定的に設けられる。本実施形態では、2つのフック支持部25が設けられる。2つのフック支持部25は、ケーシング20に対して回転軸CL1と交叉する方向の両側に設けられ、ケーシング20の外周面61から径方向外側へ突出する。フック支持部25は、上板部25a、下板部25b、及び連結板部25cとを有する。上板部25a及び下板部25bは、上下方向と交叉する板部であって、上下に互いに離間して配置される。上板部25a及び下板部25bは、第1回転方向側の端部が第2回転方向側の端部よりも上側に位置するように、ケーシング20の回転軸CL1に直行する面に対して傾斜している。連結板部25cは、上板部25a及び下板部25bの第2回転方向側の端部を連結する板部である。上板部25a、下板部25b、及び連結板部25cは、フック部材30を挿入可能な空間29を区画する。フック支持部25の空間29は、ケーシング20の径方向外側及び第1回転方向側へ開放される。
図5に示すように、本実施形態では、連結板部25cの下端縁と下板部25bの第2回転方向側の端縁とが交叉する部分は、面取りされており、連結板部25cの第2回転方向側の面26及び下板部25bの下面27に対して傾斜する傾斜面28となっている。フック支持部25は、ケーシング20の下端部20aの底面をフィン10の中央部11の上面に当接させた状態でケーシング20を回転させても、フィン10の翼状部12(本実施形態では第1及び第4の翼状部12a、12d)に当接しない(干渉しない)高さ位置に配置される。
【0029】
図3~
図6に示すように、フック部材30は、ケーシング20とフィン10を着脱可能に係止する部材であって、フック回転軸CL2を中心としてケーシング20(本実施形態ではフック支持部25)に傾動可能に支持される。本実施形態では、2つのフック部材30が設けられる。フック部材30は、フック回転軸CL2側からケーシング20の径方向外側へ延びた通常位置(
図6(a)及び
図6(b)に図示されたフック部材30の位置)と、フック部材30の先端側が通常位置よりも上方及び第1回転方向の少なくとも一方(本実施形態では、上方かつ第1回転方向)側に位置する回避位置(
図6(c)に図示されたフック部材30の位置)との間を、フック回転軸CL2を中心として傾動可能である。フック部材30のフック回転軸CL2は、フック支持部25の上板部25a及び下板部25bに直交する回転軸であって、ケーシング20の径方向から視た状態で、上側から第1回転方向の下側へ向かって延びて、ケーシング20の回転軸CL1に対して傾斜する(
図4及び
図5参照)。なお、以下の説明では、フック部材30に関する方向は、特に説明のない限り、通常位置での方向を示す。また、フック部材30の説明における径方向は、ケーシング20の径方向を示す。
【0030】
フック部材30は、ケーシング20側のフック回転軸CL2側から径方向外側へ延びるアーム部31と、アーム部31の先端から下方へ曲折して折り返される爪部32とを一体的に有する。アーム部31は、フック支持部25の空間29に挿入可能な板厚の上下方向と交叉する板状に形成され、フック支持部25の空間29に挿入される。アーム部31は、フック支持部25の上板部25a及び下板部25bにフック回転軸CL2を中心として傾動可能に支持される。爪部32は、アーム部31の径方向外側の端縁から下方へ折り返される。
図5に示すように、爪部32の下端縁(所定方向の一側の端縁)34と第2回転方向の端縁35が交叉する部分は、面取りされており、爪部32の下端縁34及び爪部32の第2回転方向の端縁35に対して傾斜する傾斜面33(本実施形態では、湾曲面)となっている。すなわち、爪部32のうち下方かつ第2回転方向の端部(傾斜面33)は、爪部32の下端縁34及び爪部32の第2回転方向の端縁35に対して傾斜している。通常位置のフック部材30は、アーム部31がフック回転軸CL2側から径方向外側へ延び、回避位置のフック部材30は、アーム部31がフック回転軸CL2側から第1回転方向の上側へ延びる。フック部材30は、フック回転軸CL2を中心として、フック支持部25の上板部25aの下面及び下板部25bの上面に沿って傾動可能である。すなわち、フック部材30の先端側(爪部32側)は、フック回転軸CL2を中心として、通常位置から第1回転方向の上側の回避位置へ傾動可能である。フック支持部25の上板部25a及び下板部25bは、第2回転方向側の端部が第1回転方向側の端部よりも下側に位置するように傾斜しているので、フック部材30のアーム部31は、外力を受けていない状態で自重によって通常位置に配置される。
【0031】
フィン10をフック部材30によってケーシング20側へ係止する場合には、フィン10の杭接続部13をケーシング20の下端開口20bから内周面23の大径領域23aが区画する空間24に挿入した状態で、ケーシング20を第1回転方向へ回転させる。フィン10の杭接続部13をケーシング20の下端開口20bから内周面23の大径領域23aが区画する空間24に挿入した状態では、ケーシング20の下端開口20bがフィン10の中央部11によって覆われる。すなわち、フィン10をフック部材30によってケーシング20側へ係止する場合には、フィン10の中央部11によってケーシング20の下端開口20bを覆う状態で、ケーシング20を第1回転方向へ回転させる。ケーシング20を第1回転方向へ回転させると、その回転によって通常位置のフック部材30の爪部32が自動的にフィン10の翼状部12を係止して係止状態となる(
図1及び
図5参照)。本実施形態では、係止状態のフック部材30の爪部32は、中央部11に対して上方の位置する第1及び第4の翼状部12a、12dを係止する。係止状態では、ケーシング20の下端部20aの底面がフィン10の中央部11の上面に当接し、ケーシング20の下端開口20bがフィン10の中央部11に覆われる。係止状態のフィン10は、ケーシング20を第1回転方向へ回転させると、ケーシング20の回転に伴って第1回転方向に回転する。フック部材30によるフィン10の係止を解除する場合には、係止状態からケーシング20を第2回転方向へ回転させる。係止状態からケーシング20を第2回転方向へ回転させると、通常位置のフック部材30の爪部32が自動的にフィン10の翼状部12から離脱し、ケーシング20側へのフィン10の係止が解除された解除状態となる(
図6(a)参照)。すなわち、フィン10は、フック部材30を介してケーシング20に着脱可能に支持される。更にケーシング20を第2回転方向へ回転させて、通常位置の解除状態のフック部材30が、フィン10の翼状部12の上面14に当接すると(
図6(b)参照)、フック部材30の先端側(爪部32側)が、フィン10の翼状部12からの力によってフック回転軸CL2を中心として、通常位置から第1回転方向の上側の回避位置へ傾動する(
図6(c)参照)。すなわち、解除状態では、ケーシング20を第2回転方向に回転させても、フィン10は回転しない。なお、本実施形態では、フック部材30を2つ設けたが、これに限定されるものではなく、地盤の状況、フィン10の形状などを勘案して、フック部材30を1つ又は3つ以上設けてもよい。
【0032】
図8に示すように、確認棒40は、フィン10の回転を確認するための棒状部材であって、ケーシング20の上端開口20c(所定方向の他側の開口20c)から杭挿入空間21(
図7参照)に挿入されて使用される。ケーシング20の杭挿入空間21に挿入された確認棒40の下端部40aは、杭挿入空間21内の鋼管杭50の上端部52に対して取り外し可能に接続される。確認棒40と鋼管杭50との接続とは、鋼管杭50が回転すると、確認棒40が従動して回転可能に連続している状態を意味し、例えば、確認棒40の下端面が鋼管杭50の上端面に載置され、鋼管杭50が回転すると確認棒40が摩擦によって従動して回転する状態であってもよい。確認棒40と鋼管杭50とが接続された状態では、確認棒40は、鋼管杭50によって下方から支持される。本実施形態では、確認棒40の下端部40aは、鋼管杭50の上端部52の内径部に挿入可能に細く形成される。確認棒40をケーシング20から上方へ引き抜くことによって、確認棒40の下端部40aは、鋼管杭50の上端部52に対して取り外し可能である。確認棒40をケーシング20の上端開口20cから杭挿入空間21に挿入して、確認棒40の下端部40aを鋼管杭50の上端部52の内径部に挿入して取り付けると、確認棒40は、鋼管杭50に下方から支持される。鋼管杭50をケーシング20の杭挿入空間21に挿入してフィン10に接続した状態の鋼管杭50の上端から確認棒40の上端までの長さL3は、鋼管杭50の上端からケーシング20の上端開口20cまでの長さL4よりも長く設定される。すなわち、確認棒40の上端部は、確認棒40の下端部40aが鋼管杭50の上端部52に支持された状態で、ケーシング20の杭挿入空間21から上方へ露出する。確認棒40の上端部には、軸方向と交叉する方向へ張り出した頭部41が設けられる。頭部41の軸方向と交叉する方向の長さは、確認棒40をケーシング20の杭挿入空間21に挿入した状態で、ケーシング20の外形よりも径方向外側へ張り出すように設定される。鋼管杭50に支持された状態の確認棒40は、フィン10の回転に伴って鋼管杭50が回転すると回転し、フィン10及び鋼管杭50が回転しないときは回転しない。
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る翼付き鋼管杭の設置法を、
図7~
図9に基づいて説明する。翼付き鋼管杭の設置法は、地盤を改良するために、翼付き鋼管杭設置装置1を用いて、杭基礎となる翼付き鋼管杭(フィン10及び鋼管杭50)を地中に設置する工法である。なお、
図7では、フック部材30の図示を省略している。また、
図9では、ケーシング20の複数の切削羽根22の図示を省略している。
【0034】
先ず、ケーシング20の上端部を重機(図示省略)に搭載された回転圧入装置(図示省略)に連結する。すなわち、ケーシング20は、重機の回転圧入装置によって駆動されて回転する。そして、フィン10の杭接続部13をケーシング20の下端開口20bから内周面23の大径領域23aが区画する空間24に挿入した状態で、ケーシング20を第1回転方向へ回転させて、フィン10をフック部材30によってケーシング20側へ係止した係止状態にする。係止状態では、ケーシング20の下端部20aの底面がフィン10の中央部11の上面に当接し、ケーシング20の下端開口20bがフィン10の中央部11に覆われる。ここまでが、準備行為である。
【0035】
以上の構成及び準備行為を踏まえて、以下の方法により、翼付き鋼管杭設置装置1を用いて翼付き鋼管杭を設置する。
【0036】
本実施形態に係る翼付き鋼管杭の設置法は、回転圧入工程と接続工程と確認工程と引抜き工程とを含む。
【0037】
先ず、
図9(a)に示すように、係止状態のケーシング20及びフィン10を第1回転方向に回転させて地中に回転圧入する(回転圧入工程)。
【0038】
次に、フィン10が所望の位置に到達した後、ケーシング20の回転を止めて、鋼管杭50をケーシング20の上側の上端開口20cから杭挿入空間21に挿入し、鋼管杭50の接続部50aをフィン10の杭接続部13に接続する(接続工程)。本実施形態では、鋼管杭50をフィン10の杭接続部13に接続した状態で、鋼管杭50とフィン10との相対的な回転は、鋼管杭50の突起部51と杭接続部13の開口13aとの係止によって規制される。
【0039】
次に、
図8に示すように、確認棒40をケーシング20の上側の上端開口20cから杭挿入空間21に挿入して、確認棒40の下端部40aを鋼管杭50の上端部52に取り付けた後、ケーシング20を第2回転方向へ回転させることによって、ケーシング20を回転させてもフィン10が回転しないことを確認する(確認工程)。作業者は、確認棒40の上端部(例えば頭部41)を目視することによって、確認棒40が回転しないことを確認することができる。これにより、ケーシング20とフィン10とが離脱していることを確認することができる。このとき、ケーシング20を第2回転方向へ回転させると、通常位置のフック部材30の爪部32が自動的にフィン10の翼状部12から離脱し、ケーシング20側へのフィン10の係止が解除された解除状態となる(
図6(a)参照)。更にケーシング20を第2回転方向へ回転させて、通常位置の解除状態のフック部材30が、フィン10の翼状部12の上面14に当接すると(
図6(b)参照)、フック部材30の先端側(爪部32側)が、フィン10の翼状部12からの力によってフック回転軸CL2を中心として、通常位置から第1回転方向の上側の回避位置へ傾動する(
図6(c)参照)。すなわち、回避位置とは、フィン10の翼状部12の回転軌跡から回避した位置である。なお、確認棒40は、フィン10が回転していないことを確認した後、ケーシング20から引き抜いてもよいし、あるいは、後述するように、引抜き工程において自動的に取り外されてもよい。
【0040】
次に、
図9(b)に示すように、フィン10及び鋼管杭50(フィン10に接続された鋼管杭50)を地中に残置したまま、ケーシング20を第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く(引抜き工程)。この引抜き工程の過程において、ケーシング20を第2回転方向へ回転させながら、回転圧入工程において形成された掘削孔内に土砂を埋戻す。ケーシング20を第2回転方向へ回転させて上方へ移動させると、ケーシング20の上端部が確認棒40の頭部41に引っ掛かるので、確認棒40は、引抜き工程において自動的に取り外される。引き抜いたケーシング20は、再使用することができる。
【0041】
これにより、地中に残置されたフィン10とそれに接続された小さい径の鋼管杭50は、翼付き鋼管杭として作用することとなる。
【0042】
上記のように構成された翼付き鋼管杭設置装置1及び翼付き鋼管杭の設置法では、ケーシング20の下端部20aの外周面61に設けられたフック部材30は、フィン10の杭接続部13をケーシング20の下端開口20bに挿入した状態でケーシング20を第1回転方向に回転させると、フィン10の翼状部12を係止した係止状態となり、ケーシング20を第2回転方向に回転させると、フィン10の係止を解除した解除状態となる。このように、フック部材30をケーシング20の下端部20aの外周面61に設け、ケーシング20を第2回転方向に回転させるという簡易な構造でケーシング20をフィン10から離脱させることができる。
【0043】
また、ケーシング20を第2回転方向へ回転させた際に、通常位置の解除状態のフック部材30が、フィン10の翼状部12の上面14に当接すると、フック部材30の先端側が、フィン10の翼状部12からの力によってフック回転軸CL2を中心として、通常位置よりも上方及び第1回転方向の少なくとも一方(本実施形態では、上方かつ第1回転方向)側に位置する回避位置へ傾動する。このように、ケーシング20を第2回転方向へ回転させた際に、解除状態のフック部材30がフィン10の翼状部12の上面14に当接しても、通常位置のフック部材30がフィン10からの力を受け流す方向(上方及び第1回転方向の少なくとも一方)に傾動するので、フック部材30がケーシング20の回転を妨害することがない。
【0044】
また、フィン10の翼状部12は、係止状態で第1回転方向側の端部が第2回転方向側の端部よりも下方に位置するように、ケーシング20の回転軸CL1に直行する面に対して傾斜するので、回転圧入工程において、フィン10の翼状部12によって掘削することができる。また、フック部材30のフック回転軸CL2が、ケーシング20の径方向から視た状態で、上側から第1回転方向の下側へ向かって延びて、ケーシング20の回転軸CL1に対して傾斜するので、解除状態のフック部材30がフィン10の翼状部12の上面14に当接した際に、フック部材30をフィン10からの力を受け流す方向へ傾動させることができる。
【0045】
また、フック部材30の爪部32のうち下方かつ第2回転方向の端部には、傾斜面33が設けられる。爪部32の傾斜面33は、爪部32の下端縁34及び爪部32の第2回転方向の端縁35に対して傾斜する。このため、解除状態のフック部材30がフィン10の翼状部12の上面14に当接する際に、爪部32の下方かつ第2回転方向の端部が傾斜面33であるので、翼状部12の上面14への爪部32の引っ掛かりを抑えることができ、フック部材30をスムーズに傾動させることができる。
【0046】
また、フック支持部25は、ケーシング20の下端部20aの底面をフィン10の中央部11の上面に当接させた状態でケーシング20を回転させても、フィン10の翼状部12に当接しない高さ位置に配置される。このため、フック支持部25は、ケーシング20を第2回転方向へ回転させた際にフィン10の翼状部12に干渉しないので、ケーシング20の回転を妨害することがない。
【0047】
従って、本実施形態によれば、ケーシング20の回転を妨害することなく簡易な構造でケーシング20をフィン10から離脱させることができる。
【0048】
また、フック支持部25の連結板部25cの下端縁と下板部25bの第2回転方向側の端縁とが交叉する部分は、面取りされており、連結板部25cの第2回転方向側の面26及び下板部25bの下面27に対して傾斜する傾斜面28となっている。このため、仮に、フィン10の翼状部12が変形し(例えば、下方の土砂からの力によって上方へ変形し)、ケーシング20を第2回転方向へ回転させた際に、フック支持部25がフィン10の翼状部12に当接するとしても、フック支持部25の連結板部25cの下端縁と下板部25bの第2回転方向側の端縁とが交叉する部分が傾斜面28となっているので、翼状部12の上面14へのフック支持部25の引っ掛かりを抑えることができる。
【0049】
また、ケーシング20の内周面23は、下端開口20bから連続して上方へ延びる大径領域23aと、大径領域23aから上方へ延びる小径領域23bとを有する。ケーシング20の内周面23の大径領域23aは、フィン10の杭接続部13の挿入を許容する空間24を区画し、ケーシング20の内周面23の小径領域23bの内径(径)r2は、フィン10の杭接続部13の内径r3以下の大きさに形成される。このため、フィン10が所望の位置に到達した後、ケーシング20の回転を止めて、鋼管杭50をケーシング20の上側の上端開口20cから杭挿入空間21に挿入し、鋼管杭50の接続部50aをフィン10の杭接続部13に接続する接続工程において、鋼管杭50の接続部50aをフィン10の杭接続部13に容易に挿入することができる。
【0050】
また、ケーシング20の杭挿入空間21に挿入された確認棒40の下端部40aは、杭挿入空間21内の鋼管杭50の上端部52に対して接続されるので、確認棒40は、鋼管杭50が回転すると回転し、鋼管杭50が回転しないときは回転しない。このため、確認棒40をケーシング20の上側の上端開口20cから杭挿入空間21に挿入して、確認棒40の下端部40aを鋼管杭50の上端部52に接続することによって、ケーシング20を第2回転方向へ回転させてもフィン10が回転しないことを確認することができる。このため、引抜き工程において、ケーシング20を第2回転方向へ回転させて地中から引き抜く際に、フィン10及び鋼管杭50を確実に地中に残すことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、フィン10の回転を確認するための確認棒40の下端部40aを、鋼管杭50の上端部52の内径部に挿入可能に細く形成したが、これに限定されるものではなく、確認棒40の下端部40aの形状は、鋼管杭50の上端部52に接続可能な様々な形状を適用することができる。
【0052】
また、本実施形態では、確認棒40の上端部に、軸方向と交叉する方向へ張り出した頭部41を設けたが、これに限定されるものではなく、確認棒40の上端部には、確認棒40の回転を目視しによって確認し易い構成(例えば、確認棒40の表面に記載された柄など)を適用することができる。
【0053】
また、本実施形態では、ケーシング20を第2回転方向へ回転させた際にフィン10が回転しないことを確認するための回転確認部材としての確認棒40を設けたが、確認棒40を設けなくてもよい。また、本実施形態に係る翼付き鋼管杭の設置法には、確認工程を含めたが、確認棒40を設けない場合には、確認工程を含めなくてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、鋼管杭50の接続部50aに突起部51を設け、係る突起部51を係止可能な開口13aをフィン10の杭接続部13に設け、鋼管杭50とフィン10との相対的な回転を規制した状態で、鋼管杭50の接続部50aとフィン10の杭接続部13とを接続したが、これに限定されるものではない。鋼管杭50の接続部50aとフィン10の杭接続部13との接続態様は、様々な構成を適用することができる。
【0055】
また、本実施形態では、フィン10の杭接続部13への鋼管杭50の挿入を容易にするために、ケーシング20の内周面23に大径領域23aと小径領域23bとを設け、小径領域23bの内径(径)r2を、フィン10の杭接続部13の内径r3以下の大きさに形成したが、これに限定されるものではない。例えば、フィン10の杭接続部13の内径r3を、ケーシング20の外径よりも大きくして、ケーシング20の下端部20aをフィン10の杭接続部13に挿入してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、フック部材30の爪部32のうち下方かつ第2回転方向の端部に傾斜面33を設け、爪部32の下端縁34及び爪部32の第2回転方向の端縁35に対して傾斜させたが、例えば、翼状部12の上面14への爪部32の引っ掛かりが気にならない場合には、傾斜面33を設けなくてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、フック支持部25の連結板部25cの下端縁と下板部25bの第2回転方向側の端縁とが交叉する部分に、傾斜面28を設けたが、傾斜面28を設けなくてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、フック部材30を、アーム部31と爪部32とによって構成したが、これに限定されるものではなく、フック部材30は、ケーシング20を第1回転方向に回転させると係止状態となり、ケーシング20を第2回転方向に回転させると解除状態となる形状であればよい。
【0059】
また、本実施形態では、フック部材30の先端側を、通常位置から上方かつ第1回転方向の回避位置へ傾動させたが、傾動方向及び回避位置はこれに限定されるものではなく、上方及び第1回転方向の少なくとも一方側に位置する回避位置へ傾動させればよい。例えば、フック部材30の先端側を、通常位置から上方への回避位置へ傾動させてもよく、あるいは、フック部材30の先端側を、通常位置から第1回転方向の回避位置へ傾動させてもよい。すなわち、回避位置は、フィン10の翼状部12から受ける力によって、翼状部12の回転軌跡から回避した位置であればよい。
【0060】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1:翼付き鋼管杭設置装置
10:フィン
11:中央部
12:翼状部
13:杭接続部
20:ケーシング
20a:ケーシングの下端部(一端部)
20b:ケーシングの下端開口(一側開口)
21:杭挿入空間
23:内周面
23a:大径領域
23b:小径領域
24:空間
30:フック部材
31:アーム部
32:爪部
33:傾斜面
34:爪部の下端縁(所定方向の一側の端縁)
35:爪部の第2回転方向の端縁
40:確認棒(回転確認部材)
50:鋼管杭
61:ケーシングの外周面